JP2017145345A - 熱硬化性樹脂組成物、その製造方法および用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)マレイミド化合物、および(B)フェノール化合物を含有し、前記(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数が、前記(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きく、前記熱硬化性樹脂組成物100質量部中のエポキシ樹脂含有量が0〜30質量部である熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、熱硬化により線熱膨張係数が小さい熱硬化物となり、回路基板を構成する部材に好適に用いることができる熱硬化性樹脂組成物、その製造方法および用途を提供することを目的とする。
[1](A)マレイミド化合物、および(B)フェノール化合物を含有し、前記(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数が、前記(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きく、前記熱硬化性樹脂組成物100質量部中のエポキシ樹脂含有量が0〜30質量部である熱硬化性樹脂組成物。
[2]前記マレイミド基当量数が前記水酸基当量数の1.2〜25倍である[1]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[4]前記(C)は、前記(A)と前記(B)とを、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒およびアルコール系溶媒からなる群から選ばれる1または複数の反応溶媒中における反応によって生成されたものである[3]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[5]前記反応溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選ばれる1または複数である[4]に記載の熱硬化性樹脂組成物。
−O−Ar ・・・(5)
−Ar−OH ・・・(6)
(一般式(5)および一般式(6)中、Arはベンゼン環またはナフタレン環を一つ以上有し、その環上は置換基で修飾されていてもよい。)
[8]エポキシ樹脂を含有しない[1]〜[7]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[9]重合可能な不飽和基を1分子中に少なくとも1価以上有する化合物をさらに含む[1]〜[8]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
[11]前記反応溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選ばれる1または複数である[10]に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
[13]封止材として用いる[12]記載の絶縁材料。
[14]熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグとして用いる[12]記載の絶縁材料。
[15][14]記載のプリプレグを積層して得られる積層板または金属張積層板。
[16][1]〜[9]のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させてなる、ガラス転移温度が180℃以上である熱硬化物。
(熱硬化性樹脂組成物)
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物、および(B)フェノール化合物を含有している。
(A)マレイミド化合物
マレイミド化合物(A)は下記一般式(7)で示される1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物である。熱硬化性樹脂組成物中に含有されるマレイミド化合物(A)は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
一般式(7)で示される(ポリ)マレイミド化合物としては、例えば、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(4−マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等を挙げることができる。
本発明で用いられる(B)フェノール化合物としては、下記一般式(12)で表されるフェノール化合物を挙げることができる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数が、(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きい。マレイミド基当量数を水酸基当量数よりも大きくすることにより、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる熱硬化物の線熱膨張係数が小さくなる。熱硬化物の線熱膨張係数を低くする観点から、マレイミド基当量数は、水酸基当量数の1.2倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、2.3倍以上であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、マレイミド基当量数は、水酸基当量数の25倍以下であることが好ましく、4倍以下であることがより好ましく、3.3倍以下であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂は、高接着性、多様性、価格が比較的廉価であるというメリットがあることから、熱硬化性樹脂組成物に含まれる代表的な成分として、長年、様々な産業において広汎に使用されている。このため、例えば、特許文献1〜3に記載されている熱硬化性樹脂はいずれも、エポキシ樹脂を高い割合で含有している。これに対して、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数を(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きくするとともに、エポキシ樹脂の含有量を従来の熱硬化性樹脂よりも低くしている。熱硬化物の線熱膨張係数を低くする観点から、エポキシ樹脂含有量は、熱硬化性樹脂100質量部中に、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。熱硬化物の線熱膨張係数を低くする観点からは、エポキシ樹脂を含有しない熱硬化性樹脂組成物として本発明を実施しても良い。
例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合よるアラルキル樹脂のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物、ジヒドロナフタレン型エポキシ、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸含有エポキシ樹脂、グリコールウリル含有エポキシ樹脂などの2価以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物と(B)フェノール化合物との反応によって生成される(C)反応生成物を含有するものとして実施することができる。この場合、(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数が、(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きい熱硬化性樹脂組成物とする。
(C)反応生成物を含有する熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、(A)マレイミド化合物と(B)フェノール化合物とを反応溶媒中で反応させて(C)反応生成物とする反応工程を含むものが挙げられる。反応工程において、(A)および(B)を溶解する反応溶媒としては、汎用されている溶媒を用いることができる。汎用されている溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。これらの中では、線熱膨張係数が低い熱硬化物が得られるという観点から、DMAc、NMPおよびシクロヘキサノンが好ましい。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させた熱硬化物としては、熱硬化性樹脂組成物をワニスとして加熱して熱硬化させた樹脂フィルムや、プリプレグを加熱して熱硬化させたものなどが挙げられる。ワニスには樹脂成分の溶剤として、アセトン、メチルエチルケトンのような汎用されているものを用いることができ、溶剤の配合量は特に限定されない。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述した樹脂成分(A)マレイミド化合物、(B)フェノール化合物、(A)と(B)との(C)反応生成物、およびエポキシ樹脂以外に、重合可能な不飽和基を1分子中に少なくとも1価以上有する化合物をさらに含んでも良い。
例えば、スチレン系、ビニルベンゼン系、アクリル系、メタクリル系、ジシクロペンタジエン系の化合物が挙げられる。これらの不飽和基を有する化合物は単独もしくは2種類以上を併用してよい。中でもエチレン性不飽和基を含有するポリフェニレンエーテル、イソシアヌル酸、グリコールウリル、グリシジルエーテルが好ましい。エチレン性不飽和基としては、エテニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセル基、ビニルベンジル基、ビニルナフチル基等が挙げられる。1分子中に2価以上のエチレン性不飽和基を含有する場合は、同一の不飽和基であっても、異なる不飽和基であってもよい。また1分子中に2価以上の官能基を含有する場合は、少なくとも1価以上がエチレン性不飽和基であって残りは他の官能基であってもよい。他の官能基として、例えば、グリシジル基、エポキシ基等が挙げられる。
上述した化合物としては、例えば、ポリフェニレンエーテル型スチレン樹脂、グリコールウリル型アリル樹脂、イソシアヌル酸型アリル樹脂、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
実施例および比較例の性能評価において用いた試験方法は次のとおりである。
(1)ガラス転移温度
実施例で得られたプリプレグ1枚の上下部分にセパニウム(アルミニウム箔表面を耐熱離型皮膜で処理した離型剤)を配し、1〜4MPa、180〜230℃で120〜240分間加熱し、熱硬化させた。得られた試料(サンプル)のガラス転移温度を測定した。測定装置、測定条件等は以下のとおりであった。
測定機器:リガク社製「TMA8310evo」
雰囲気:窒素中
測定温度:30〜300℃
昇温速度:10℃/min
荷重:47mN
(2)線熱膨張係数
樹脂フィルムはその状態のままで、プリプレグは1枚の上下部分にセパニウムを配し、1〜4MPa、180〜230℃で120〜240分加熱し、熱硬化させた。得られた成形品の線熱膨張係数を測定した。測定装置、測定条件等は以下のとおりであった。
測定機器:リガク社製「TMA8310evo」
雰囲気:窒素中
測定温度:50〜100℃
昇温速度:10℃/min
荷重:47mN
(1)マレイミド化合物A:4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、BMI−1000(商品名、大和化成工業(株)社製、一般式(9)におけるsが0であるマレイミド化合物)
(2)マレイミド化合物B:フェニルメタンマレイミド、BMI−2000(商品名、大和化成工業(株)社製、一般式(9)におけるsの平均値が1以上であるマレイミド化合物)
(3)マレイミド化合物C:フェニルメタンマレイミド、BMI−2300(商品名、大和化成工業(株)社製、一般式(9)におけるsの平均値が1以上であるマレイミド化合物)
(4)マレイミド化合物D:フェニルメタンマレイミド、BMI−4000(商品名、大和化成工業(株)社製、式(15)で表されるマレイミド化合物)
(5)フェノール樹脂A:ナフトールアラルキル樹脂、SN−485(商品名、新日鉄住金化学(株)社製)
(6)フェノール樹脂B:フェノールアラルキル樹脂、HE100C−10(商品名、エア・ウォーター(株)社製)
(7)エポキシ樹脂:ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、NC3000(商品名、日本化薬(株)社製)
(8)アリル化合物:グリコールウリル型アリル樹脂、TA−G(商品名、四国化成工業(株)社製)
(9)熱硬化促進剤:U−CAT 3513N(商品名、三洋化成工業(株)社製)
攪拌機、温度計、冷却管を設置した丸底フラスコに4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(マレイミド化合物A、BMI−1000)385部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)202部を仕込み、内温が125℃に到達した後5時間混合攪拌した。その後、ナフトールアラルキル樹脂(フェノール樹脂A、SN−485)165部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)165部添加し、110℃を17時間保持した。
次にメチルエチルケトン(MEK)83部を添加し、均一に溶解した状態の熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
上記ワニスを150℃から230℃で9時間熱硬化し、熱硬化性樹脂組成物の熱硬化物として薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(マレイミド化合物A、BMI−1000)をフェニルメチレンマレイミド(マレイミド化合物B,BMI−2000)に変えたこと、およびSN485とDMFとを反応溶媒に添加した後の110℃での保持時間を15時間にしたこと以外は、実施例1と同じ方法を用いて薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
フェニルメチレンマレイミドの番手(製品番号)をBMI−2000(マレイミド化合物B)からBMI−2300(マレイミド化合物C)に変えたこと以外は、実施例2と同じ方法を用いて薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(マレイミド化合物A、BMI−1000)をビスフェノールAジフェニルジエチルマレイミド(マレイミド化合物D、BMI−4000)に変えたこと、およびSN485とDMFとを添加した後の110℃での保持時間を12時間にしたこと以外は、実施例1と同じ方法を用いて薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
攪拌機、温度計、冷却管を設置した丸底フラスコに4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI−1000)270部、ナフトールアラルキル樹脂(SN−485)82部、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(NC−3000)221部、メチルエチルケトン(MEK)120部を仕込み、内温が80℃に到達後2時間混合攪拌した。その後、反応性希釈剤(アリルグリシジルエーテル)27部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)12部を添加し、80℃を4時間保持した。
次にNMP28部を添加して更に80℃で18時間保持した。MEK200部、NMP40部を添加して2時間攪拌して、均一に溶解した状態のエポキシ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物のワニス(I)を得た。
熱硬化促進剤としてU−CAT3513N:0.2質量部加え、150℃から230℃で6時間熱硬化して、熱硬化物として薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
また、実施例1〜4のうち、一般式(9)で示されるマレイミド化合物を含有する実施例1〜3の線熱膨張係数が小さいことから、マレイミド化合物は一般式(9)で示されるものが好ましい。
一般式(9)で示される(A)マレイミド化合物と(B)フェノール化合物とを加熱して反応させることにより、一般式(1)で示される(C)反応生成物が生成されると考えられる。したがって、熱硬化性樹脂組成物が(C)反応生成物を含有する場合、線熱膨張係数を低くする観点から、一般式(1)で示される(C)反応生成物を含有することが好ましい。
攪拌機、温度計、冷却管を設置した丸底フラスコにフェニルメチレンマレイミド(BMI−2300)713部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)213部を仕込み、内温が125℃に到達した後5時間混合攪拌した。その後、ナフトールアラルキル樹脂(SN−485)38部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)38部添加し、110℃を12時間保持し、均一に溶解した状態の熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
上記ワニスを実施例1と同じ方法で熱硬化して、熱硬化物として薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
攪拌機、温度計、冷却管を設置した丸底フラスコにフェニルメチレンマレイミド(BMI−2300)285部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)95部を仕込み、内温が125℃に到達した後5時間混合攪拌した。その後、ナフトールアラルキル樹脂(SN−485)285部、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)285部添加し、110℃を12時間保持し、次にメチルエチルケトン(MEK)50部を添加し均一に溶解した状態の熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
上記ワニスを実施例1と同じ方法で熱硬化して、熱硬化物として薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
反応溶媒をDMFからN,N−ジメトリアセトアイミド(DMAc)に変更したこと、および110℃での保持時間を11時間にしたこと以外は、実施例3と同じ方法を用いて、薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(実施例8)
反応溶媒をDMFからN−メチルピロリドン(NMP)に変更し、110℃の保持時間を4時間にした以外は実施例3と同じ方法を用いて、薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(実施例9)
反応溶媒をDMFから1−ブタノールに変更し、125℃の保持時間をなくし、110℃の保持時間を4時間にした以外は実施例3と同じ方法を用いて、薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(実施例10)
反応溶媒をDMFからシクロヘキサンに変更し、125℃の保持時間をなくし、110℃の保持時間を4時間にした以外は実施例3と同じ方法を用いて、薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(実施例11)
フェノール樹脂Aのナフトールアラルキル樹脂(SN−485)を、フェノール樹脂Bのフェノールアラルキル樹脂(HE100C−10)に変更し、110℃の保持時間を1.5時間にした以外は実施例3と同じ方法を用いて、薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
反応溶媒としてシクロヘキサノンを用いた実施例10および11は、フェノール化合物A、B(SN485、HE100C−10)を添加する前に、BMIを溶解するための125℃での加熱工程が不要になった。したがって、反応溶媒として、環状ケトン系溶媒であるシクロヘキサノン等のケトン系溶媒を用いることは、製造効率の観点からも好ましい。
実施例3で合成した熱硬化性樹脂組成物のワニス80部に、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(NC−3000)11部とメチルエチルケトン(MEK)9部を加えた。
上記ワニスを実施例1と同じ方法で熱硬化して、熱硬化物として薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(実施例13)
実施例3で合成した熱硬化性樹脂組成物のワニス90部に、重合可能な不飽和基を1分子中に少なくとも1価以上有する化合物としてのアリル化合物(TA−G)5.5部と、メチルエチルケトン(MEK)4.5部を加えた。
上記ワニスを実施例1と同じ方法で熱硬化して、熱硬化物として薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
上記実施例の結果を以下の表に示す。
(A)マレイミド化合物と(B)フェノール化合物とを所定比率で含有する熱硬化性樹脂組成物100部中のエポキシ樹脂含有量を1〜30部とすることにより、線熱膨張係数が40ppm/℃以下である低線熱膨張係数の熱硬化物が得られた。
上記熱硬化性樹脂組成物にグリコールウリル型アリル樹脂(TA−G)を添加することにより、熱硬化物の線熱膨張係数をさらに低くすることができた。
実施例7で合成した熱硬化性樹脂組成物のワニス:90.7部に、無機充填剤(ベーマイト)50部を加えて均一に攪拌し、熱硬化性樹脂組成物のワニスを調製した。
このワニスをガラスクロス(旭化成イーマテリアル(株)社製2116)に含浸し170℃で5分間乾燥して、プリプレグを得た。このプリプレグを2枚重ね合わせ、さらにその上下(両面)の最外層に18μmの銅箔を配して1〜4MPaの圧力で120〜240分間の加熱条件で成型して銅張積層板(積層板、金属張積層板)を得た。
(実施例15)
実施例11で合成した熱硬化性樹脂組成物のワニス:87.1部に、メチルエチルケトン:3.3部および無機充填剤(ベーマイト)50部を加えて均一に攪拌し、熱硬化性樹脂組成物の樹脂ワニスを調製した。
このワニスを用いて、実施例14と同様に成型して銅張積層板を得た。
熱硬化性樹脂組成物をガラスクロスに含浸したプリプレグを熱硬化させた実施例14および15の熱硬化物は、ガラスクロスに含浸させずに熱硬化させた実施例7および11の熱硬化物であるフィルムよりも、ガラス転移点が高くなった。
Claims (16)
- (A)マレイミド化合物、および(B)フェノール化合物を含有し、
前記(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数が、前記(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きく、
前記熱硬化性樹脂組成物100質量部中のエポキシ樹脂含有量が0〜30質量部である熱硬化性樹脂組成物。 - 前記マレイミド基当量数が前記水酸基当量数の1.2〜25倍である請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- (A)マレイミド化合物と(B)フェノール化合物との反応によって生成される(C)反応生成物を含有しており、
前記(A)マレイミド化合物のマレイミド基当量数が、前記(B)フェノール化合物の水酸基当量数よりも大きい熱硬化性樹脂組成物。 - 前記(C)は、前記(A)と前記(B)とを、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒およびアルコール系溶媒からなる群から選ばれる1または複数の反応溶媒中における反応によって生成されたものである請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 前記を反応溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選ばれる1または複数である請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 上記(C)反応生成物が下記の一般式(1)で示される請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
−O−Ar ・・・(5)
−Ar−OH ・・・(6)
(一般式(5)および一般式(6)中、Arはベンゼン環またはナフタレン環を一つ以上有し、その環上は置換基で修飾されていてもよい。) - 熱硬化させることにより得られる熱硬化物の線熱膨張係数が40ppm/℃以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- エポキシ樹脂を含有しない請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 重合可能な不飽和基を1分子中に少なくとも1価以上有する化合物をさらに含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項3に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法であって、(A)マレイミド化合物と(B)フェノール化合物とを、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒およびアルコール系溶媒からなる群から選ばれる1または複数の反応溶媒中において反応させて(C)反応生成物とする反応工程を含んでいる熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
- 前記反応溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群から選ばれる1または複数である請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する絶縁材料。
- 封止材として用いる請求項12記載の絶縁材料。
- 熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグとして用いる請求項12記載の絶縁材料。
- 請求項14記載のプリプレグを積層して得られる積層板または金属張積層板。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させてなる、ガラス転移温度が180℃以上である熱硬化物。
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