JP2017145156A - 酸化亜鉛粒子及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

酸化亜鉛粒子及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】嵩が低く充填性がよく、組成物に配合して用いた場合に実用上充分な流動性を示す酸化亜鉛粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】多面体形状の酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリで処理して、多面体を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点に相当する部分を溶解して曲面で構成されている角丸多面体形状酸化亜鉛粒子とする。この酸化亜鉛粒子を放熱フィラーとして配合すると、実用上充分な流動性をもち、熱伝導率の高い放熱性組成物とすることができる。
【選択図】図8

Description

本発明は、酸化亜鉛粒子及びその製造方法並びにその用途に関する。
酸化亜鉛は、白色顔料、紫外線遮蔽材、充填剤、高熱伝導性材料、赤外線反射材料、吸着剤、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、ガスセンサー、電子写真感光材料、バリスタ、蛍光体、エミッタ、電子デバイス等種々の用途に用いられており、また、化粧料、外用剤、塗料、グリース、樹脂組成物等に配合して用いられている。
酸化亜鉛はその製造において、pH値を調整したり、有機物を添加したりするなどの製造条件を種々変化させることにより、様々な形状の粒子を製造可能であることが知られている。
例えば、特許文献1には、六角形面のわたり径が0.5〜40μmで垂直方向の高さが0.05〜20μmにある六角柱状形状酸化亜鉛が開示されている。また、特許文献2には、一次粒子径が1.1μm以上であり、粒度分布におけるD90/D10が3.0以下である六角板状酸化亜鉛粒子が開示されている。特許文献3には、多層構造を有する10μm程度の六角錐状/六角板状酸化亜鉛結晶が開示されている。特許文献4には、メジアン径が0.1μm以上の四面体状及び/又は四面体対状酸化亜鉛粒子が開示されている。
特開2014−148568号公報 WO2015/118777パンフレット 特開2013−245139号公報 WO2013/133411パンフレット
酸化亜鉛粒子はそれぞれの用途に応じて、形状、大きさ、結晶性等の制御が求められている。例えば、充填剤、セラミックス原料等に用いる場合は、嵩が低く、充填性のよい酸化亜鉛が求められている。また、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、高熱伝導性材料等に用いる場合は、充填性に加えて結晶性のよい酸化亜鉛が求められている。また、化粧料、外用剤、塗料、グリース、樹脂組成物等に配合して組成物として用いる場合は、該組成物が充分な流動性を示すような酸化亜鉛が求められている。
前述の特許文献1〜4に代表されるような多面体形状を有する酸化亜鉛は、嵩が低くて充填性がよいものの、組成物として用いる場合に実用上充分な流動性が得られず、組成物が扱い難くなったり、加工が行い難くなったりするという問題があった。
本発明者らは、多面体形状を有する酸化亜鉛粒子について、嵩が低く充填性がよいという長所を生かしつつ、組成物として用いた場合に実用上充分な流動性を示すことができる酸化亜鉛粒子を鋭意検討した結果、表面部が特定の形態をとる多面体形状酸化亜鉛粒子とすることにより上記課題を解決できることなどを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)多面体形状であって、多面体を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点に相当する部分が曲面で構成されている角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(2)前記多面体形状が六角柱状である(1)の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(3)電子顕微鏡法で測定した六角形の面の平均わたり径L(μm)と、六角形の面に略垂直方向の高さH(μm)とのアスペクト比H/Lが0.5〜2である請求項2に記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(4)レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが1〜100μmである(1)〜(3)のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(5)タップ密度が2g/cm以上である(1)〜(4)のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(6)多面体形状を基本形状とし、その表面に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する外観である(1)〜(5)のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(7)表面に有機化合物及び/又は無機化合物を含む被覆を有する(1)〜(6)のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子である。
(8)(1)〜(7)に記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子と、メジアン径の異なる他のフィラーを含む混合粉末である。
(9)多面体形状酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリと接触させる、酸化亜鉛粒子の製造方法である。
(10)(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子又は(8)に記載の混合粉末を含む化粧料である。
(11)(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子又は(8)に記載の混合粉末を含む塗料組成物である。
(12)(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子又は(8)に記載の混合粉末を含む樹脂組成物である。
(13)(1)〜(7)のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子又は(8)に記載の混合粉末を含む放熱性組成物である。
(14)更に、メジアン径が異なる他の放熱フィラーを含む(13)に記載の放熱性組成物である。
本発明の酸化亜鉛粒子は角丸多面体形状であるため、充填性がよく、且つ、組成物として用いた場合に実用上充分な流動性を示す。例えば、化粧料、外用剤、塗料、グリース、繊維、樹脂組成物等に充填剤、白色顔料、熱伝導材料等として配合する際に、あるいはセラミックス原料、導電材等に使用する際に、高濃度(高充填率)としても実用上充分な流動性を確保することができ、酸化亜鉛の特性を充分活用することができる。具体例を挙げると、化粧料に配合したときに、肌へのすべり感がよくなる。別の例では、放熱性組成物に配合すると、高い充填率でもハンドリングや加工が容易な粘度とすることができる。付随して、更に充填率を高めても実用的な粘度範囲を保つことができるため、より熱伝導率の高い放熱性組成物が得られる。
また、前記アスペクト比H/Lが特定の範囲にある六角柱状酸化亜鉛粒子の場合、角丸形状を持つことにより、同一充填率としたときであっても、特異的に熱伝導率が高まる。
試料a(比較例1)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料A(実施例1)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料b(比較例2)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料B(実施例2)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料c(比較例3)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料C(実施例3)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料d(比較例4)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。 試料D(実施例4)の酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真である。
本発明の酸化亜鉛は、六方晶、立方晶、立方晶面心構造いずれかのX線回折パターンを示すZnOを少なくとも50質量%含むものであり、水酸化亜鉛や製造の際に使用する硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が含まれていてもよい。また、製造の際に使用する亜鉛化合物を構成していた硫酸根、硝酸根、塩素、酢酸等が含まれていてもよく、また、カルボン酸、その塩、アミン化合物等の材料が含まれていてもよい。
本発明の酸化亜鉛粒子の特徴である角丸多面体形状とは、該多面体を構成する隣接する面同士の稜線(辺)及び頂点に相当する部分が曲面で構成されているものをいう。別の表現をすると、多面体形状粒子の平面部の一部は維持しつつ多面体の角が丸まった形状とも言え、4つ以上の複数の平面とそれらをつなぐ曲面に囲まれた立体とも言える。なお、酸化亜鉛粒子全体の全ての稜線や頂点に相当する部分が曲面になっている必要はなく、一部が稜線や頂点として存在していてもよい。
多面体としては例えば、正多面体、半正多面体、デルタ多面体、角柱、反角柱、角錐、双角錐、角錐柱、菱面体及びそれらの複合体や集合体などが挙げられるが、これらに限定されない。また、角柱等のいわゆる底面を持つものについて、その底面形状には例えば、三角形、四角形、六角形、八角形などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明でいう多面体形状とは、前述の多面体形状を基本形状として、その一部の形状が変更されていたり、多面体に別の微細構造が付加されているような形状であっても、およそ多面体形状であると認識可能なものも含む。
酸化亜鉛粒子が多面体形状であると、球状粒子と比べて酸化亜鉛粒子を多く充填することができるものの、粒子同士の稜線や頂点が干渉し合うため流動性に劣る。そこで本発明のように多面体の稜線や頂点相当部が曲面で構成されている形状の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を用いることで、組成物中において、稜線や頂点が接触したときの粒子同士の干渉が抑制され、粒子自体の動きに自由度が増すことから、組成物の流動性を向上させることができる。その結果、例えば、化粧料に配合すると、肌へのすべり感がよくなり、別の例では、放熱性組成物に配合すると、酸化亜鉛粒子の配合量が多くても実用上充分な流動性、具体的には10〜500Pa・s/1rpm程度の領域の粘度とすることができる。また、角丸多面体形状粒子はある程度平面部を有しているため、多面体形状の粒子の持つ良好な充填性という特徴も併せ持っている。そのため、放熱性組成物に配合すると、組成物の熱伝導性と流動性を高度に両立できる。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子は、特に六角柱状を基本とする形状であると好ましい。面の数が多い場合は流動性の点では有利であるが、充填性の点では不利になる。六角柱状であると、該六角柱を構成する隣接する面同士の稜線(辺)及び頂点に相当する部分を曲面で構成した形態としたときに、充填性と流動性のバランスがより高まるため好ましい。ここで、「六角柱状」とは、一般的に六角板状、六角短柱状、六角棒状と呼ばれる形状を含む。また、これら以外にも、六角柱を基本形状として、その一部の形状が変更されていたり、六角柱に別の微細構造が付加された形状であって、大まかには六角柱状であると認識できるものも含む。例えば、六角柱状の柱部の中央部にくびれがあり、その部分の径は両端部に比べ小さい粒子、いわゆる鼓状粒子であってもよい。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子が角丸六角柱状粒子である場合、六角形の面の平均わたり径L(μm)と、六角形の面に略垂直方向の高さH(μm)とのアスペクト比H/Lが0.5以上であると好ましい。H/Lをこの範囲とした角丸六角柱状粒子は角丸でない同範囲の六角柱状粒子と比較して、タップ密度を高くすることができ、特に、充填率が同じであっても熱伝導率を著しく高くすることができる。また、この範囲とすることで、組成物に配合したときの組成物の流動性を更に高めることができる。その結果、化粧料に配合すると、肌へのすべり感がよくなる。また、組成物の粘度をある一定値に合わせようとする場合、酸化亜鉛粒子の配合量を多くすることができる。その結果、放熱性組成物に配合すると、酸化亜鉛粒子の配合量を多くしても流動性を維持することができ、組成物の熱伝導性と流動性をより高度に両立できる。H/Lの上限は2程度とすると特に前記効果が高いため好ましい。H/Lは0.7〜1.5の範囲であると特に好ましい。
前記「わたり径」とは、六角形の面の「対向する頂点を結ぶ線の長さ」のことを言う。また、「高さ」とは、「六角形の面に略垂直方向の高さ」を言い、六角柱の縦の長さを言う。前記寸法は電子顕微鏡法で求めることができる。具体的には、酸化亜鉛粒子の平均わたり径L(μm)、平均高さH(μm)は、少なくとも20個の粒子の六角面のわたり径、高さを電子顕微鏡写真から計測して、下記式によって算出した平均わたり径、平均高さとする。
平均わたり径=Σ(L・n)/Σn
平均高さ=Σ(H・n)/Σn
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lは第n番目の粒子のわたり径、Hは第n番目の粒子の高さをそれぞれ表す。
本発明の酸化亜鉛粒子の多面体を構成する各面は、必ずしも平坦な面でなくてもよい。角丸多面体形状を基本形状とし、その平面部や稜線部に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が存在する外観である。このような凸部は他の凸部と重なり合わないように単独で存在してもよく、積層していてもよく、特に、互いの位置を少しずつずらしながら凸部が積層している態様であってもよい。このような凸部についても、その輪郭が明確な錐台状や鱗状でなくてもよく、輪郭が曲面で構成された(角が取れた)形状、瘤状であってもよい。そのような形状の例として、図8に角丸六角柱状酸化亜鉛粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子は、レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが1〜100μmであると好ましい。Rがこの範囲内であれば、特に流動性が高くハンドリング性に優れた組成物を得ることができる。シート状の製品等の厚みに制約がある用途に使用する場合などもあるので、Rは用途に応じて適宜設定してよい。Rが40μm以下であれば幅広い用途に用いることができるため好ましい。
本発明の酸化亜鉛粒子は、JIS R 1639−2に従い測定を行ったタップ密度が2g/cm以上とすると好ましく、酸化亜鉛の真密度(5.6g/cm程度)を考慮すると、2〜5.5g/cmの範囲であることが好ましい。この範囲とすると、より嵩が低くまた充填性のよい酸化亜鉛粒子となり、充填剤、セラミックス原料、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、高熱伝導性材料等に用いる場合に好適である。例えば、このような角丸多面体形状で、且つ、タップ密度が高い酸化亜鉛粒子は、粒子同士が接触し易く、粒子間で熱を伝導し易くなる。更に、組成物への酸化亜鉛粒子充填率を高くすることができるという利点があり、組成物の熱伝導性を一層高めることができる。
本発明の酸化亜鉛粒子は、粉末X線回折法で算出した平均結晶子径r(μm)が、0.050〜0.120μmの範囲であると好ましく、0.080〜0.100μmの範囲であるとより好ましい。このような結晶性の高い酸化亜鉛は、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、高熱伝導性材料等に用いる場合に好適である。平均結晶子径rは、Rigaku社製試料水平型多目的X線回折装置(Ultima IV)を用いて測定したX線回折パターンに基づき、シェラーの式を用いて算出する。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を、本酸化亜鉛粒子と異なる他のフィラーとの混合物としてもよい。特に本酸化亜鉛粒子とはメジアン径が異なる他のフィラーを用いた混合物とすると、組成物としたときの流動性を高めることができるため好ましい。他のフィラーとしては特に限定されず、公知のものを任意に用いることができる。例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属シリコン、金属粒子、炭素化合物(ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブなど)等を挙げることができる。他のフィラーは、一種類に限定されず、複数種類のフィラーを併用してもよい。他のフィラーの形状には特に制限がなく、球状、粒状、立方体状、棒状、六角板状、鱗片状、不定形状を挙げることができる。また、これらのフィラーにも、後述の無機化合物や有機化合物の被覆を施してもよい。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を放熱フィラーとして用いる場合には、本酸化亜鉛粒子と異なる他の放熱フィラーとの混合物としてもよい。特に本酸化亜鉛粒子とはメジアン径が異なる他の放熱フィラーを用いた混合物とすると、放熱性組成物としたときの流動性と熱伝導性を高めることができるため好ましい。他の放熱フィラーとしては特に限定されず、熱伝導性を有するものであれば公知のものを任意に用いることができる。例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属シリコン、金属粒子、炭素化合物(ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブなど)等を挙げることができる。他の放熱フィラーは、一種類に限定されず、複数種類の放熱フィラーを併用してもよい。他の放熱フィラーの形状には特に制限がなく、球状、粒状、立方体状、棒状、六角板状、鱗片状、不定形状を挙げることができる。また、これらの放熱フィラーにも、後述の無機化合物や有機化合物の被覆を施してもよい。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を粒子径の大きい主放熱フィラーとして用いる場合には、メジアン径Rは5〜100μmとするのが好ましく、5〜40μmとするとより好ましい。主放熱フィラーとして角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を使用すると、樹脂等の媒体への充填性が良好(高い充填率での配合が可能)であり、放熱性組成物中に熱伝導パスが形成され易いため、熱伝導は生じ易く、良好に放熱することができる。また、組成物に配合したときに、粒子の表面エネルギーが小さいため、樹脂等になじみ易くなる結果、組成物の流動性を確保できる。この場合、小粒径の副放熱フィラーの粒子径は、主放熱フィラーのメジアン径Rに対して、R/40〜R/2(μm)の範囲とすると好ましい。このような小粒径放熱フィラーを併用することで、主放熱フィラーの隙間を埋めることができる。ひいては、放熱性組成物への充填性を高めることができ、熱伝導性を向上させることができる。加えて、主放熱フィラーの隙間に小粒径放熱フィラーが介在することで、これらが潤滑剤の役割を果たし、放熱性組成物の流動性をより維持し易くすることができる。本発明の酸化亜鉛粒子と小粒径放熱フィラーとの配合比率には特に制限がなく、適宜調整することができ、例えば、体積比で7:3〜9:1の範囲が好適である。
一方、本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を粒子径の小さい副放熱フィラーとして用いる場合には、メジアン径Rは1〜10μmとするのが好ましい。副放熱フィラーとして角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を使用すると、組成物に配合したときに、粒子の表面エネルギーが小さいため、樹脂等になじみ易くなる結果、組成物の流動性を確保できる。この場合、大粒径の主放熱フィラーの粒子径は、副放熱フィラーのメジアン径Rに対して2R〜40R(μm)の範囲とすると好ましい。本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を副放熱フィラーとして使用することで、主放熱フィラーの隙間を埋めることができる。ひいては、放熱性組成物への充填性を高めることができ、熱伝導性を向上させることができる。加えて、主放熱フィラーの隙間に副放熱フィラーが介在することで、これらが潤滑剤の役割を果たし、放熱性組成物の流動性をより維持し易くすることができる。大粒径の主放熱フィラーと本発明の酸化亜鉛粒子との配合比率には特に制限がなく、適宜調整することができ、例えば、体積比で7:3〜9:1の範囲が好適である。
本発明の酸化亜鉛粒子は、前記Rと粉末X線回折法で求めた平均結晶子径r(μm)との比R/rが40〜200であると好ましい。本発明の酸化亜鉛粒子は多結晶体であるため、粒子内に存在する結晶粒界が熱伝導等の性能を阻害する障壁として作用してしまう。従って、たとえ粒子径が大きい粒子であっても結晶粒界が多く存在してしまうと粒子径に見合うだけの熱伝導率の向上が発現しなくなる。R/rは粒子内における結晶粒界の平均存在数の指標であり、R/rを200以下とすることで、熱伝導の粒界障壁を減少させ、粒子自体の熱伝導性を高めることができる。ただし、R/rはRを小さくすることによっても小さくなり、Rが小さくなると粒子の充填性低下や凝集により組成物としたときの熱伝導性が低下してしまうため、R/rは40以上であると好ましい。
次に、本発明は、多面体形状酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリと接触させる、酸化亜鉛粒子の製造方法である。こうした処理を行うことで、多面体形状酸化亜鉛粒子の平面部をある程度残しながら、多面体を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点に相当する部分が溶解して曲面状になった角丸多面体形状に変化する。その結果、酸化亜鉛粒子同士の干渉が抑制され、組成物の流動性を高めることができる。
多面体形状酸化亜鉛粒子と酸又はアルカリとを接触させる方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、多面体形状酸化亜鉛粒子の分散液に酸又はアルカリを添加する方法が挙げられる。また、低濃度の酸又はアルカリ溶液中に、多面体形状酸化亜鉛粒子やその分散液を一括で添加する方法でも可能である。
多面体形状酸化亜鉛粒子の分散液は、多面体形状酸化亜鉛粒子の粉末と溶媒を混合し、分散させることで得ることができる。多面体形状酸化亜鉛粒子を含むケーキと溶媒を混合し、分散させることでも得ることができる。
分散液の溶媒には特に制限はなく、任意の液体を用いてよい。例えば、水系溶媒又はアルコール等の有機溶媒を用いることができる。水系溶媒を用いると有機溶媒含有の廃液が発生しないため好ましい。
分散液中の酸化亜鉛粒子の濃度は250g/L以下の範囲とするのが好ましい。この範囲とすることで、酸又はアルカリと接触させた際に、元の多面体形状をある程度維持しながら、稜線及び頂点が選択的に溶解された、角丸多面体形状の粒子が得られ易い。濃度がこの範囲を超えると、反応の際に形状が崩れた粒子が発生し易くなる。
添加する酸又はアルカリの態様は特に制限がなく、固体状、液体状、気体状等、任意の状態でよい。添加量を制御し易いという理由で、酸又はアルカリを溶媒に溶解させたものを用いるのが好ましい。溶媒には水、有機溶媒が挙げられる。経済性、環境負荷の観点から水を用いることが好ましい。
酸としては、無機酸、有機酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。有機酸としては、酢酸、クエン酸、シュウ酸などのカルボン酸化合物やメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、フルオロスルホン酸などのスルホン酸化合物が挙げられる。酸としては、無機酸を用いるのが反応後の廃液処理の観点から好ましく、中でも、硫酸が二価の酸で添加量を抑えることができ、かつ低価格であるため、コストの観点から特に好ましい。
水溶液とする場合の酸の濃度は硫酸に換算して0.5〜70質量%の範囲であると好ましい。特に、2〜10質量%の範囲であると、元の多面体形状をある程度維持しながら、稜線及び頂点が選択的に溶解された、角丸多面体形状の粒子が得られ易いという点でより好ましい。濃度がこの範囲を超えると、反応の際に形状が崩れた粒子が発生し易くなる。濃度がこの範囲より低いと、反応が遅くなり、生産効率が落ちる。
酸化亜鉛粒子分散液に酸性水溶液を添加する場合、酸の添加速度には特に制限はなく、分散液中の酸化亜鉛粒子の濃度や酸性水溶液の濃度、生産効率等を考慮して任意に設定してよい。例えば0〜360分としてよい。添加速度が遅いほうが、元の多面体形状を維持し、且つ、稜線及び頂点が選択的に溶解された、角丸多面体形状の粒子が得られ易い。分散液中の酸化亜鉛粒子の濃度や酸性水溶液の濃度が高いときも、添加速度は遅めのほうが好ましい。生産効率と粒子形状を考慮すると、10〜120分が好ましく、30〜90分がより好ましい。添加中は必要に応じて撹拌を行ってもよい。
酸と酸化亜鉛を接触させる温度は40℃以下とするのが好ましい。特に、20〜30℃の範囲であると、元の多面体形状をある程度維持しながら、稜線及び頂点が選択的に溶解された、角丸多面体形状の粒子が得られ易いという点でより好ましい。温度が高いと、反応の際に形状が崩れた粒子が発生し易くなる。温度が低すぎると反応が遅くなり、生産効率が落ちる。
酸化亜鉛粒子と酸とを水系溶媒中で反応させるとき、反応中のpHは6〜8の範囲で維持するのが好ましい。この範囲とすると、元の多面体形状をある程度維持しながら、稜線及び頂点が選択的に溶解された、角丸多面体形状の粒子が得られ易く、また、溶解させた亜鉛イオンの再析出を防げるという理由で好ましい。特にpH7付近が好ましい。
添加する酸の量は、Hとして、ZnOに対し10〜25モル%とすると好ましい。この範囲の添加量で前記反応条件を調整することにより、元の多面体形状を維持し、且つ、稜線及び頂点が選択的に溶解された、角丸多面体形状の粒子が得られ易い。添加する酸の量が多すぎると、過度に酸化亜鉛粒子が溶解し、多面体形状が維持しづらくなる。添加する酸の量が少なすぎると、稜線及び頂点が残存し易くなる。
アルカリとしては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の公知のアルカリ化合物を使用することができる。酸化亜鉛粒子をアルカリと接触させて角丸多面体形状の酸化亜鉛粒子を製造する場合、添加するアルカリの量は、OHとして、ZnOに対し40〜100モル%とすると好ましい。また、アルカリと酸化亜鉛を接触させる温度は40℃以上とするのが好ましい。アルカリ水溶液を用いる場合の濃度やその添加速度は適宜調整することができる。
酸でもアルカリでも角丸多面体形状酸化亜鉛粒子は製造可能であるが、水酸化物などの沈殿物の生成や添加量を抑えることができること、材料使用量などの経済的な理由から、酸を用いるのが好ましい。
このようにして得られた酸化亜鉛粒子は、必要に応じて濾過・洗浄して固液分離し、乾燥、乾式粉砕を行う。固液分離手段には特に制限はなく、重力濾過、加圧濾過、真空濾過、吸引濾過、遠心濾過、自然沈降などの手段をとり得る。工業的には加圧濾過、真空濾過、吸引濾過が好ましく、脱水能力が高く大量に処理できるので、フィルタープレス、ロールプレス等の濾過機を用いるのが好ましい。乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター、噴霧乾燥機等を用いることができる。乾燥温度は適宜設定することができるが、80〜200℃程度が適当である。乾式粉砕には、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルペライザー、解砕機等の摩砕粉砕機、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等の圧縮粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等を用いることができる。
原料となる多面体形状酸化亜鉛粒子の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2014−148568号公報の方法で六角柱状形状酸化亜鉛を製造できる。WO2015/118777パンフレットに記載の方法で六角板状酸化亜鉛粒子を製造できる。特開2013−245139号公報の方法で六角錐状/六角板状酸化亜鉛結晶を製造できる。WO2013/133411パンフレットに記載の方法で四面体状及び/又は四面体対状酸化亜鉛粒子を製造できる。メジアン径が5μm以上の六角柱状酸化亜鉛粒子は、例えば、以下の方法により製造できる。層状亜鉛化合物を、塩基性化合物の存在下で、溶液中で加熱、熟成させることで製造することができる。具体的には、ZnSO(OH)・5HOの組成式で表される層状亜鉛化合物の水溶液に、塩基性化合物として好ましいアミン化合物(例えばモノエタノールアミン)を添加し、撹拌機で撹拌しながら、好ましくは90℃以上溶媒の沸点以下の温度条件下4〜12時間かけて熟成する。アミン化合物の添加量は、層状亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.2〜1.0の範囲であることが好ましい。なお、ZnSO(OH)・5HOの組成式で表される層状亜鉛化合物は、公知の各種製法(例えば、特開2007−223873号、特開平5−070124号、あるいは特開昭54−38298号などに記載の方法)によって得ることができる。また、上記層状亜鉛化合物は鉱物として天然に存在するので、これを用いることもできる。
また、必要に応じて前記の酸化亜鉛粒子を焼成してもよい。焼成条件は特に限定されないが、焼成温度を300〜1500℃、焼成時間は10分〜10時間程度が適当である。焼成は静置焼成で行ってもよく回転式の炉内で行ってもよい。静置焼成は、ムライト製、ムライト・コージライト製の匣鉢中で行うことができる。焼成は通常、空気、酸素、窒素等の雰囲気下で行うことができる。それらの気体のフロー下で行ってもよい。このような焼成処理によって、メジアン径を殆ど変化させずに結晶子径を大きくすることができ、酸化亜鉛粒子の熱伝導性を更に高めることができる。酸化亜鉛粒子の焼成は、700〜1200℃で焼成することが好ましく、850〜1200℃の温度で焼成することがより好ましい。焼成温度が高いほど結晶子径が大きくなり易く、酸化亜鉛粒子の熱伝導性をより一層高めることができる。焼成処理は、酸又はアルカリと接触させた後で行ってもよく、それに先立って行ってもよい。
本発明の酸化亜鉛粒子は、その粒子表面に必要に応じてケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物あるいはそれらのリン酸塩等の無機化合物の被覆層を設けることもできる。これらの無機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いてもよい。また、溶媒、塗料やプラスチックス等への分散性を付与するなどの目的で、有機化合物を被覆してもよく、前記の無機化合物と有機化合物の両者を被覆してもよい。有機化合物としては、例えば、(1)有機ケイ素化合物((a)オルガノポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体)、(b)オルガノシラン類(アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等又はそれらの加水分解生成物)、(c)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)等)、
(2)有機金属化合物((a)有機チタニウム化合物(アミノアルコキシチタニウム、リン酸エステルチタニウム、カルボン酸エステルチタニウム、スルホン酸エステルチタニウム、チタニウムキレート、亜リン酸エステルチタニウム錯体等)、(b)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート等)、(c)有機ジルコニウム化合物(カルボン酸エステルジルコニウム、ジルコニウムキレート等)等)、
(3)ポリオール類(トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等)、
(4)アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)又はその誘導体(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等)、
(5)高級脂肪酸類(ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等)又はその金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、
(6)高級炭化水素類(パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等)又はその誘導体(パーフルオロ化物等)が挙げられる。これらの有機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いてもよい。無機化合物、有機化合物の被覆量は、酸化亜鉛粒子に対し、0.1〜50質量%の範囲が好ましく、0.1〜30質量%の範囲が更に好ましい。
酸化亜鉛粒子の粒子表面に前記の無機化合物や有機化合物を被覆させるには、酸化亜鉛粒子の水性スラリー中で、無機化合物あるいは有機化合物を添加し中和するなどして被覆することができる。また、有機化合物を被覆するには別の方法として、酸化亜鉛粒子に有機化合物を添加してミキサーで乾式処理を行い、熱処理を施すなどして被覆することもできる。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子や他のフィラーとの混合物(以降、総称して酸化亜鉛粒子と記載する)は、その他の成分と混合して、化粧料、インキ、塗料、プラスチック等に配合することができる。
上記化粧料としては特に限定されず、本発明の酸化亜鉛粒子の粉体を紫外線遮蔽材、白色顔料、充填材等として、化粧品原料と混合することによって、日焼け止め化粧料、ファンデーション等の基礎化粧料、口紅等のポイントメイク化粧料等を得ることができる。本発明の酸化亜鉛粒子は化粧品に使用した場合に肌へのすべり感がよくなり好適である。
本発明の化粧料には、前記酸化亜鉛粒子以外に、通常化粧料に用いられる公知の成分、例えば、(1)溶媒(水、低級アルコール類等)、(2)油剤(高級脂肪酸類、高級アルコール類、オルガノポリシロキサン類(シリコーンオイル)、炭化水素類、油脂類等)、(3)界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性等)、(4)保湿剤(グリセリン類、グリコール等のポリオール系、ピロリドンカルボン酸類等の非ポリオール系等)(5)有機紫外線吸収剤(ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等)、(6)酸化防止剤(フェノール系、有機酸又はその塩、酸アミド系、リン酸系等)、(7)増粘剤、(8)香料、(9)着色剤(顔料、色素、染料等)、(10)生理活性成分(ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類等)、(11)抗菌剤等が配合されていてもよい。化粧料の様態は、固形状、液状、ジェル状等特に制限なく、液状やジェル状の場合、その分散形態も油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油型等のいずれでもよい。化粧料中の酸化亜鉛粒子の配合量は、0.1〜50質量%の範囲が好ましい。
本発明の放熱性組成物は、上記の酸化亜鉛粒子を放熱フィラーとして含有したものであり、樹脂組成物、グリース組成物、塗料組成物などが挙げられる。また、それらを用いて形成するシート、ゲル、エラストマー、プラスチックなどであってもよい。
本発明の樹脂組成物は、前記酸化亜鉛粒子と樹脂成分を少なくとも含む組成物であり、前記放熱性組成物に包含される放熱性樹脂組成物も含む。樹脂組成物に使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂等の樹脂を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物は、(1)熱可塑性樹脂と上記酸化亜鉛粒子とを溶融状態で混練することによって得られた熱成型用の樹脂組成物(2)熱硬化性樹脂と上記酸化亜鉛粒子とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物、等のいずれの形態であってもよい。
本発明の樹脂組成物を放熱性樹脂組成物として用いる場合、組成物中の上記酸化亜鉛粒子の配合量は、目的とする熱伝導率や樹脂組成物の硬度等、樹脂組成物の性能に合わせて任意に決定することができる。上記酸化亜鉛粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性樹脂組成物中の固形分全量に対して1体積%以上含有することが好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が更に好ましい。このようにして、放熱性樹脂組成物の熱伝導率を好ましくは0.5W/m・K以上とすることができ、より好ましくは2.0W/m・K以上とすることができる。具体的には、上記酸化亜鉛粒子50体積%:エポキシ樹脂50体積%で配合した液状の樹脂組成物において、粘度を実用領域である10〜500Pa・sとすることができ、これを固化した固形物状の樹脂組成物において、熱伝導率を2.5W/m・K以上とすることができる。
本発明の樹脂組成物は、用途によって樹脂成分を自由に選択することができる。例えば、熱源と放熱板の間に装着し密着させる場合には、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、アクリル樹脂のような接着性が高く硬度の低い、かつ、耐熱性の高い樹脂を選択すればよい。
本発明の樹脂組成物が熱成型用の樹脂組成物である場合、熱可塑性樹脂と上記酸化亜鉛粒子を、例えば、スクリュー型二軸押出機を用いた溶融混練によって、樹脂組成物をペレット化し、その後射出成型等の任意の成形方法によって所望の形状に成型する方法等によって製造することができる。
本発明の樹脂組成物が熱硬化性樹脂と上記酸化亜鉛粒子とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物である場合、例えば、加圧成形等によって成形するものであることが好ましい。このような樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をトランスファー成型により成型し、製造することができる。
本発明の放熱性樹脂組成物の用途は、電子部品の放熱部材、熱伝導性充填剤、温度測定用等の絶縁性充填剤等がある。例えば、本発明の放熱性樹脂組成物は、MPU、パワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に伝熱させるために使用することができ、発熱性電子部品と放熱部品の間に挟み込まれて使用することができる。これによって、発熱性電子部品と放熱部品間の伝熱が良好となり、長期的に発熱性電子部品の誤作動を軽減させることができる。ヒートパイプとヒートシンクの接続や、種々の発熱体の組込まれたモジュールとヒートシンクとの接続に好適に用いることもできる。
本発明の放熱性組成物には、鉱油又は合成油を含有する基油と上記酸化亜鉛粒子が混合された放熱性樹脂組成物である放熱性グリースが包含される。
本発明の放熱性グリース中の上記酸化亜鉛粒子の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記酸化亜鉛粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性グリース中の全量に対して1体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が更に好ましい。
上記基油は、鉱油、合成油、シリコーンオイル、フッ素系炭化水素油等の各種油性材料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。合成油としては特に炭化水素油がよい。合成油としてα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどが使用できる。
本発明の放熱性グリースには、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。上記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤の配合により、高熱伝導率化を図ることができる。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエチレンジアミン、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリトリットモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステルが挙げられる。
非イオン系界面活性剤の添加の効果は、上記酸化亜鉛粒子の種類、配合量、及び親水性と親油性のバランスを示すHLB(親水親油バランス)によって異なる。また、高放熱性グリース等の電気絶縁性や電気抵抗の低下を重視しない用途では、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。
本発明の放熱性グリースは、前述した成分をドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機器を用いて混合することによって調製することができる。
本発明の放熱性グリースは、発熱体や放熱体に塗布することによって使用される。発熱体としては、例えば、一般の電源;電源用パワートランジスタ、パワーモジュール、サーミスタ、熱電対、温度センサなどの電子機器;LSI、CPU等の集積回路素子などの発熱性電子部品などが挙げられる。放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク等の放熱部品;ヒートパイプ、放熱板などが挙げられる。塗布は、例えば、スクリーンプリントによって行うことができる。スクリーンプリントは、例えば、メタルマスクもしくはスクリーンメッシュを用いて行うことができる。前記放熱性グリースを発熱体及び放熱体の間に介在させて塗布することにより、上記発熱体から上記放熱体へ効率よく熱を伝導させることができるので、上記発熱体から効果的に熱を取り除くことができる。
本発明の塗料組成物は、前記酸化亜鉛粒子が樹脂溶液又は分散液中に分散された樹脂組成物である塗料組成物であり、前記放熱性組成物に包含される放熱性樹脂組成物も含む。この場合、使用する樹脂は硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであってもよい。上記樹脂として具体的には、上述した樹脂組成物において使用することができる樹脂として例示した樹脂を挙げることができる。塗料は、有機溶剤を含有する溶剤系のものであっても、水中に樹脂が溶解又は分散した水系のものであってもよい。
上記塗料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ディスパーやビーズミル等を使用し、必要とする原料及び溶剤を混合・分散することによって製造することができる。
本発明の塗料組成物を放熱性塗料組成物として用いる場合、組成物中の上記酸化亜鉛粒子の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記酸化亜鉛粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、塗料組成物全量に対して1体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が更に好ましい。
本発明の放熱性塗料組成物は、前述の放熱性樹脂組成物の項に記載した用途に用いることができる。その他、建築物の外壁、建材や、ボイラー等の熱を発する産業設備、家電製品等にも用いることができる。
前記の本発明のすべての放熱性組成物は、本発明の酸化亜鉛粒子以外の他の放熱フィラーを含有してもよい。他の放熱フィラーとしては特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属シリコン、金属粒子、炭素化合物(ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等)等を挙げることができる。本発明の酸化亜鉛粒子と組み合わせる場合は、他の放熱フィラーは一種類に限定されることはなく、複数種類の放熱フィラーを併用してもよい。
前記他の放熱フィラーとして、粒子サイズの異なる酸化亜鉛粒子や、粒子サイズの異なる他物質の放熱フィラーを用いてもよい。本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を粒子径の大きい主放熱フィラーとして用いる場合には、メジアン径Rは5〜100μmとするのが好ましく、5〜40μmとするとより好ましい。主放熱フィラーとして角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を使用すると、樹脂等の媒体への充填性が良好(高い充填率での配合が可能)であり、放熱性組成物中に熱伝導パスが形成され易いため、熱伝導は生じ易く、良好に放熱することができる。また、組成物に配合したときに、粒子の表面エネルギーが小さいため、樹脂等になじみ易くなる結果、組成物の流動性を確保できる。特に、メジアン径がR/40〜R/2(μm)の範囲の粒子サイズの小さい副放熱フィラーを本発明の酸化亜鉛粒子と組成物中に配合して用いると、本発明の多面体形状酸化亜鉛粒子同士の間の空隙を埋めて組成物中のフィラー充填率を高めることができるとともに、潤滑剤様に機能して組成物の流動性を高めることができる。その他の放熱フィラーには特に制限は無く任意の材料を用いることができる。中でも金属酸化物が好ましく、酸化亜鉛及び又は酸化アルミニウムがより好ましい。本発明の酸化亜鉛粒子とその他の放熱フィラーの配合比率には特に制限はなく適宜調整すればよい。体積比で7:3〜9:1の範囲が好適である。その他の放熱フィラーの形状には特に限定はなく、球状、粒状、立方体状、棒状、六角板状、鱗片状、不定形状等を挙げることができる。当該その他の放熱フィラーにも無機化合物や有機化合物を被覆してもよい。
本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を粒子径の小さい副放熱フィラーとして用いる場合には、そのメジアン径Rは1〜10μmとするのが好ましい。副放熱フィラーとして角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を使用すると、組成物に配合したときに、粒子の表面エネルギーが小さいため、樹脂等になじみ易くなる結果、組成物の流動性を確保できる。この場合、大粒径の主放熱フィラーの粒子径は、副放熱フィラーのメジアン径Rに対して2R〜40R(μm)の範囲とすると好ましい。本発明の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子を副放熱フィラーとして使用することで、主放熱フィラーの隙間を埋めることができる。ひいては、放熱性組成物への充填性を高めることができ、熱伝導性を向上させることができる。加えて、主放熱フィラーの隙間に副放熱フィラーが介在することで、これらが潤滑剤の役割を果たし、放熱性組成物の流動性をより維持し易くすることができる。大粒径の主放熱フィラーと本発明の酸化亜鉛粒子との配合比率には特に制限がなく、適宜調整することができ、例えば、体積比で7:3〜9:1の範囲が好適である。
このようにして、メジアン径が異なる放熱フィラーを併用することにより、放熱性樹脂組成物の熱伝導率を好ましくは0.5W/m・K以上とすることができ、より好ましくは2.5W/m・K以上とすることができる。具体的には、上記酸化亜鉛粒子50体積%以上で配合した液状の樹脂組成物において、粘度を実用領域である10〜500Pa・sとすることができ、これを固化した固形物状の樹脂組成物において、熱伝導率を3.0W/m・K以上とすることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<比較例1>
硫酸亜鉛七水和物0.6モルとクエン酸三ナトリウム二水和物0.002モルとを、5Lのビーカー中で700mLの純水に溶解した。この水溶液を撹拌機で撹拌しながら、この水溶液に室温で、1.55モルのモノエタノールアミンを700mLの水に溶解させた水溶液を10分間かけて添加し、60分間保持した。その後水溶液を加熱して、95℃まで昇温させた。水溶液の温度を95℃に保持し、撹拌機で撹拌しながら、4時間の間熟成を行い、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料aを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料aは酸化亜鉛粒子であることが確認された。試料aの走査電子顕微鏡写真を図1に示す。
<比較例2>
クエン酸三ナトリウム二水和物とモノエタノールアミンの添加量をそれぞれ、0.006モルと1.80モルに変更した以外は比較例1と同様にして試料bを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料bは酸化亜鉛粒子であることが確認された。試料bの走査電子顕微鏡写真を図3に示す。
<比較例3>
モノエタノールアミンの添加量を1.80モルに変更した以外は比較例1と同様にして試料cを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料cは酸化亜鉛粒子であることが確認された。試料cの走査電子顕微鏡写真を図5に示す。
<比較例4>
ZnSO(OH)・5HOの組成式で表される層状亜鉛化合物82gを1400mLの水に分散させた。そしてこの分散液を加熱して、95℃まで昇温させた。昇温後は、水溶液の温度を95℃に保持し、撹拌機で撹拌しながら、0.31モルのモノエタノールアミンを140mLの水に溶解させた水溶液を添加した。95℃で8時間の間熟成を行い、水溶液中に白色沈殿を得た。上記白色沈殿を吸引ろ過によって回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Aを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料dは酸化亜鉛粒子であることが確認された。試料dの走査電子顕微鏡写真を図7に示す。
<実施例1>
試料aを3Lビーカーに100g秤量し、 純水1Lを加えてスラリー化した。このスラリーを撹拌機で撹拌しながら室温下、酸化亜鉛のモル数に対して10%相当の希硫酸(濃度2%)を1時間かけて添加した。溶液のpHは6〜8の範囲であった。酸添加後、生じた白色沈殿を吸引ろ過で回収後、乾燥して、700℃で2時間焼成して、酸化亜鉛粒子(試料A)を得た。試料Aの走査電子顕微鏡写真を図2に示す。
<実施例2>
試料aに代えて試料bを用いた以外は実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子(試料B)を得た。試料Bの走査電子顕微鏡写真を図4に示す。
<実施例3>
試料aに代えて試料cを用いた以外は実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子(試料C)を得た。試料Cの走査電子顕微鏡写真を図6に示す。
<実施例4>
試料aに代えて試料dを用いた以外は実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子(試料D)を得た。試料Dの走査電子顕微鏡写真を図8に示す。
試料A〜D及び試料a〜dについて、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製 Partica LA−950V2)を用いてメジアン径Rを測定した。詳細には、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.2%溶解させた水溶液を分散媒とし、その中に各試料を混合し、装置内で循環・撹拌しながら、超音波を3分照射した後、粒度分布を測定し、粒度分布における頻度の累積が50%となる粒子径をメジアン径Rとした。
また、試料A〜D及び試料a、dについて、平均結晶子径rを求めた。また、求めたrとメジアン径Rの比R/rを算出した。平均結晶子径rは、試料水平型多目的X線回折装置(Rigaku社製 Ultima IV)を用いて測定した。詳細には、前記装置によって下記条件で各試料のX線回折パターンを測定し、その2θ=34°における回折ピーク(酸化亜鉛の(002)面の回折ピーク)の半価幅の値を用いて、シェラーの式(式1)を用いて算出した。
(式1)・・・r=(K・λ)/βcosθ
r:平均結晶子径(Å)
λ:X線の波長(CuKα線 1.541Å)
β:回折ピークの半価幅
θ:ブラッグ角
K:定数(=0.94)
(1) 光学系
(ア)入射スリット 1°
(イ)長手制限スリット 2mm
(ウ)受光スリット1 1°
(エ)Kβフィルター あり
(オ)受光スリット 0.3mm
(2) 測定範囲:5〜50deg
(3) 走査方法
(ア)スキャン速度 8.000deg/min
(イ)ステップ幅 0.0200deg
また、試料A〜D及び試料a〜dについて、走査電子顕微鏡写真から、20個の粒子を用いて平均わたり径L、平均高さH、アスペクト比H/Lを求めた。
また、試料A、D及び試料a、dについてはタップ密度も測定した。タップ密度は、JIS R 1639−2に従い、各試料それぞれ50gを100ミリリットルのメスシリンダーにいれ、100回タッピングして測定した。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2017145156
上述の実施前後の酸化亜鉛粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の図1、2を対比して明らかなように、少量の希硫酸を断続的に添加することで、酸化亜鉛試料aの六角柱状形状を維持しながら、頂点や稜線が選択的に溶解され、丸みを帯びた形状になっていることが分かる。試料b、c、dと、処理後の試料B、C、Dの走査型電子顕微鏡(SEM)写真からも同様のことが分かる。試料Aに比べてアスペクト比が小さな試料B、大きな試料Cのどちらも頂点や稜線のみが選択的に溶解され、アスペクト比の大小に関わらず、丸み形状を付与できることが分かる。また、メジアン径が大きく、表面に錐台状や板状の凸部が存在する試料dにおいても、六角柱の頂点や稜線が曲面状になるとともに前記凸部が瘤状や鱗状となり、もとの多面体形状を維持しながら丸み形状を付与できることが分かる。試料Aとaを対比すると、酸処理により六角柱状を角丸六角柱状とすることで、タップ密度が高くなることが確認できた。試料Dとdの対比でも、同様にタップ密度が高くなることが確認できた。
<前処理>
上記試料A〜D及び試料a〜dに対して0.5質量%のエポキシシラン(KBM−403:信越化学社製)を添加し、ミキサーで乾式処理を行い、150℃で3時間熱処理して有機物被覆を施し、各前処理試料を得た。
<流動性評価>
上記前処理を施した試料A〜C、a〜cを用いて、次のようにして流動性評価用の樹脂組成物を作製した。先ず、樹脂(jER(登録商標)−807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学社製)と、試料とをスクリュー瓶に秤量し、2000rpmで3分間混練した。続いて、1000rpmで1分間混練することで脱泡し、流動性測定用の樹脂組成物を作製した。尚、樹脂への試料の配合量(体積充填率)は40%とした。
これらの樹脂組成物について、粘度・粘弾性測定装置(HAAKE RheoStress 6000、サーモサイエンティフィック社製)を用いて粘度測定を行った。測定条件は下記の通りで行い、コーン上に0.5mL程度の樹脂組成物を載せ、各回転数での粘度を測定した。流動性評価には、回転数が1rpmのときの粘度の値を使用し、比較を行った。結果を表2に示す。
・コーン:MP−20, C20/1 H
・測定温度:25 ℃
・ギャップ:0.052 mm
・回転数:1, 2, 5, 10, 20 rpm
Figure 2017145156
アスペクト比によらず、酸処理により頂点や稜線に相当する部分が曲面状になったことで、粒子同士の干渉が抑制されて、1rpmのせん断応力かけたときの樹脂中での粘度が下がることが確認された。これらの結果から、アスペクト比によらず頂点や稜線を曲面状にすることで、流動性が向上することが分かる。
<熱伝導性評価>
上記前処理を施した試料を用いて、次のようにして熱伝導率測定用のサンプルを作製した。先ず、樹脂(jER(登録商標)−807)100質量部及び試料1230質量部と共に、アミン硬化剤(Jeffamine(登録商標) EDR−148、米国ハンツマン社製)22質量部をスクリュー瓶に秤量し、上記粘度測定用の樹脂ペースト作製時と同様に混練、脱泡して、樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を加圧成型器に充填して、加圧させながら150℃に加温して固化し、熱伝導率測定用ペレットを作製した。樹脂への試料の配合量(体積充填率)は70%である。
上記熱伝導率測定用ペレットを用いて、以下の方法で熱伝導率を測定した。先ず、熱伝導率測定用ペレットを厚さ1mm程度まで研磨して評価用サンプルとした。評価用サンプルを、JIS R 1611に準拠し、熱拡散率評価装置(TC−7000、アルバック理工社製)を用いて、雰囲気温度25℃中、レーザーフラッシュ法にて熱拡散率を測定した。また、JIS K 7123に準拠し、上記ペレットの比熱を、DSC(示差走査熱量測定法 DSC6200 SII製)により測定した。更に、JIS K 7112に準拠し、上記ペレットの比重を水中置換法により測定した。上述の方法で得られた熱拡散率、比熱、及び比重の値に基づいて、以下の式により熱伝導率を算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
結果を表3に示す。
Figure 2017145156
角丸六角柱状の酸化亜鉛粒子はいずれも、6.6W/mK以上の高い熱伝導率を示すことが分かる。これは、酸処理で頂点や稜線に相当する部分が曲面状となったことにより、粒子同士が接触し易くなったことから熱伝導性が向上したものと考えられ、丸み形状を帯びさせることで熱伝導性を向上させることができることが分かった。特に、H/Lが0.5以上である、試料A,C,Dでは酸処理前と比較して熱伝導率が向上しており、中でもH/Lが0.7〜1.5である試料A,Dではその増加率が高くなることが確認できた。
本発明の酸化亜鉛粒子は、充填性がよく、且つ、組成物として用いた場合に実用上充分な流動性を示す。そのため、化粧料、外用剤、塗料、グリース、繊維、樹脂組成物等に充填剤、白色顔料、熱伝導材料等として配合したり、あるいはセラミックス原料、導電材等に使用する際に、高濃度(高充填率)としても実用上充分な流動性を確保することができ、酸化亜鉛の特性を充分活用することができる。特に、本発明の酸化亜鉛粒子を放熱フィラーとして配合すると、実用上充分な流動性をもちつつ、熱伝導率の高い放熱性組成物が得ることができる。

Claims (14)

  1. 多面体形状であって、多面体を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点に相当する部分が曲面で構成されている角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  2. 前記多面体形状が六角柱状である請求項1に記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  3. 電子顕微鏡法で測定した六角形の面の平均わたり径L(μm)と、六角形の面に略垂直方向の高さH(μm)とのアスペクト比H/Lが0.5〜2である請求項2に記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  4. レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが1〜100μmである請求項1〜3のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  5. タップ密度が2g/cm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  6. 多面体形状を基本形状とし、その表面に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する外観である請求項1〜5のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  7. 表面に有機化合物及び/又は無機化合物を含む被覆を有する請求項1〜6のいずれかに記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子。
  8. 請求項1〜7に記載の角丸多面体形状酸化亜鉛粒子と、他のフィラーを含む混合粉末。
  9. 多面体形状酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリと接触させる、酸化亜鉛粒子の製造方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子又は請求項8に記載の混合粉末を含む化粧料。
  11. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子又は請求項8に記載の混合粉末を含む塗料組成物。
  12. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子又は請求項8に記載の混合粉末を含む樹脂組成物。
  13. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の酸化亜鉛粒子又は請求項8に記載の混合粉末を含む放熱性組成物。
  14. 更に、他の放熱フィラーを含む請求項13に記載の放熱性組成物。
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