JP6665398B2 - 酸化亜鉛粒子及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

酸化亜鉛粒子及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Description

本発明は、酸化亜鉛粒子及びその製造方法並びに該酸化亜鉛粒子を配合した組成物に関する。
CPUやLSI等の電子部品は、その動作により発熱し、その熱のために性能が低下することが懸念される。そこで、放熱グリースや放熱シート等の熱伝導性の高い材料を、発熱源である電子部品とヒートシンクの間に介在させて、これらの熱を除去する対策が一般的にとられている。
放熱グリースや放熱シート(以降、総称して「放熱性組成物」と記載する)は、放熱フィラーをグリースや樹脂の中に分散させたものである。そのような放熱フィラー材料のひとつの候補として酸化亜鉛がある。酸化亜鉛は、一般的な放熱フィラーであるアルミナや窒化アルミニウムのほぼ中間の値の熱伝導率をもち、線膨張係数、硬度等の粉体物性、価格の面で比較的バランスのとれた材料であることから、放熱フィラー用材料として種々検討がなされている(特許文献1〜3参照)。
特許文献2では、一次粒子径が0.01μm以上、アスペクト比が2.5以上で、特定形状の六角面を有する粒子が50%以上である六角板状酸化亜鉛粒子が提案されており、放熱性フィラーとして使用した場合に優れた放熱性能を発揮するとされている。特許文献3では、六角形面のわたり径が0.5〜40μmで垂直方向の高さが0.05〜20μmにある六角柱状形状酸化亜鉛を含む放熱性組成物が提案されており、優れた熱伝導性を確保することができるとされている。また、放熱フィラー用途ではないが、特許文献4では、10μm程度の多層構造を有する六角錐状や六角板状の酸化亜鉛結晶が記載されている。
特開2009−249226号公報 WO2012/147886パンフレット 特開2014−148568号公報 特開2013−245139号公報
近年、電子機器においては、その小型化・高集積化に伴う熱源の集中や電流容量の増加により発熱量の増大が生じており、発生する熱を如何に効率的に除去するかが重要な課題となってきている。そのため、放熱性組成物にもさらなる熱伝導性の向上が求められている。
放熱性組成物の熱伝導性向上の手段としては、粒子径の大きいフィラーを使用すること、フィラー自体の熱伝導性を高めること、組成物中のフィラーの含有率(充填率)を高めること等が有効であると考えられる。そして、フィラー自体の熱伝導性向上のためにはフィラー材料の結晶性を高めることが有効であると考えられる。
一方、放熱フィラーは樹脂等と混合して組成物として使われるため、組成物としたときの良好なハンドリング性や加工性も同時に求められる。この性質は組成物の流動性を指標として表すことができ、低粘度であると好ましいとされる。組成物の流動性向上の手段としては、粒子径の大きいフィラーを使用することが有効であることから、放熱フィラーの粒子径を大きくすることは、熱伝導性、流動性の両者に貢献する。
ところで、六角柱形状のような特異な形状の粒子の合成は一般に、形状制御剤の存在下、液相法で行われる。しかし、粒子径の大きい特異形状粒子の合成は、核生成と粒子成長のバランス上、困難なことが多く、六角形状を基本としたメジアン径が大きい酸化亜鉛粒子の報告例は特許文献4のような特殊な構造のものに限られる。また、その製造方法も水熱合成法であり、工業的には適していない。
特許文献2では、六角板状酸化亜鉛粒子を用いているが、アスペクト比が2.5以上であるため、組成物の流動性が低下してしまう。その結果、組成物中の酸化亜鉛粒子の充填率を高くして使用することが実質的にできず、組成物の熱伝導性を上げることができないという問題がある。しかも、特許文献2では、具体的に実施例で開示されているのは一次粒子径が0.11〜1.12μmの範囲の六角板状酸化亜鉛粒子である。このような粒径の小さい粒子を配合した組成物は熱伝導性に劣り、また、その流動性も低い。なお、実施例で開示されている一次粒子径0.11μmの六角板状酸化亜鉛粒子の結晶子径は0.07μmであると記載されており、比較的結晶性が高い粒子であるといえる。しかし、粒子径が大きく、かつ、結晶性の高い六角板状酸化亜鉛粒子は具体的に開示されておらず、それを得る方法も明確ではない。
特許文献3の明細書には、粉末X線回折での半価幅が0.2以下の六角柱状形状酸化亜鉛が好ましいと記載されている。しかし、実施例で具体的に開示されているのは、わたり径1.4μm/高さ2.2μmで半価幅不明の粒子であり、粒子径が大きく、かつ、結晶性の高い放熱フィラーは開示されておらず、その実現方法も記載されていない。
特許文献4の技術では、多層構造を有する10μm程度の六角錐状や六角板状の酸化亜鉛結晶を水熱合成法で作製している。この酸化亜鉛は、粒子径は大きいものの、多層構造であり、層間に隙間が開いていたり、結晶性、及びその連続性が低いことから、熱伝導が阻害され、放熱フィラーとしては適さない。また、製造方法も工業的に適しているとは言い難い。
放熱フィラーとして用いる酸化亜鉛粒子に関して、上述のとおり、より一層熱伝導率を向上させることが課題になっている。また、添加剤、充填材、吸着剤、顔料、セラミックス原料等に用いる場合でも充填性を向上させることが課題になっている。そのために、酸化亜鉛の粒子制御(粒子の形状や大きさの制御)を行い、酸化亜鉛の粒子径をより大きくし、結晶性を高めること、充填性を高めることなどが考えられるが、このような所望の酸化亜鉛粒子は製造できていない。
本発明者らは上記の問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、粒子径(メジアン径)が比較的大きな酸化亜鉛粒子において、平均結晶子径の値を特定値以上とすることにより上記課題が解決できることなどを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
(1)レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが10μm以上であり、粉末X線回折法で求めた平均結晶子径rが0.06μm以上である酸化亜鉛粒子、
(2)前記メジアン径R(μm)と前記平均結晶子径r(μm)との比(R/r)が100〜200である請求項1に記載の酸化亜鉛粒子、
(3)酸化亜鉛粒子の形状が六角柱状であり、電子顕微鏡法で測定した六角形の面の平均わたり径L(μm)と、六角形の面に略垂直方向の高さH(μm)とのアスペクト比H/Lが0.5〜2である請求項1又は請求項2に記載の酸化亜鉛粒子、
(4)タップ密度が2g/cm以上である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、
(5)六角柱形状を基本形状とし、その表面に台錐状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する外観である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、
(6)六角柱を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点に相当する部分が曲面で構成されている請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、
(7)表面に有機化合物被覆及び/又は無機化合物被覆を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、
(8)液状の樹脂組成物に含有させた場合の粘度が500Pa・s以下であり、且つ、固形物状の樹脂組成物に含有させた場合の熱伝導率が2.0W/m・K以上である、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、
(9)塩基性化合物が存在した溶液で、層間にアニオンが配位された層状亜鉛化合物を熟成して酸化亜鉛粒子を得、次いで、得られた酸化亜鉛粒子を焼成して、メジアン径Rが10μm以上であり、平均結晶子径rが0.06μm以上である酸化亜鉛粒子を製造する、酸化亜鉛粒子の製造方法、
(10)前記焼成を850℃以上で行う請求項9に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法、
(11)請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む放熱性組成物、
(12)酸化亜鉛粒子を含む液状の樹脂組成物の粘度が500Pa・s以下であり、且つ、固形物状の樹脂組成物の熱伝導率が2.0W/m・K以上である、請求項11に記載の放熱性組成物、
(13)更に、前記酸化亜鉛粒子よりもメジアン径が小さい小粒径放熱フィラーを含む請求項11に記載の放熱性組成物、
(14)請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む化粧料、
(15)請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む塗料組成物、
(16)請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む樹脂組成物、などである。
本発明の酸化亜鉛粒子は、粒子径が大きく、結晶性が高いため、熱伝導性に優れ、充填性にも優れる。このため、樹脂等に配合して放熱性組成物(放熱性樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物など)とすると、実用上充分な流動性をもちつつ、熱伝導率の高い放熱性組成物が得られるため、放熱フィラーとして有用である。
また、本発明の酸化亜鉛粒子を配合することにより、実用上充分な流動性、充填性をもつため、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等の用途に用いられる。
実施例1の酸化亜鉛粒子(試料A)の粉末X線回折スペクトルである。 実施例1の酸化亜鉛粒子(試料A)の電子顕微鏡写真である。 実施例2の酸化亜鉛粒子(試料B)の電子顕微鏡写真である。 実施例3の酸化亜鉛粒子(試料C)の電子顕微鏡写真である。 実施例4の酸化亜鉛粒子(試料D)の電子顕微鏡写真である。 実施例5の酸化亜鉛粒子(試料E)の電子顕微鏡写真である。 比較例1の酸化亜鉛粒子(試料F)の電子顕微鏡写真である。 比較例2の酸化亜鉛粒子(試料G)の電子顕微鏡写真である。
本発明の酸化亜鉛粒子は、六方晶、立方晶、立方晶面心構造いずれかのX線回折パターンを示す酸化亜鉛(ZnO)を少なくとも50質量%含むものであり、水酸化亜鉛や製造の際に使用する硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が含まれていてもよい。また、製造の際に使用する亜鉛化合物を構成していた硫酸根、硝酸根、塩素、酢酸等が含まれていてもよく、また、カルボン酸、その塩、アミン化合物等の材料が含まれていてもよい。
本発明の酸化亜鉛粒子は、レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが10μm以上であり、粉末X線回折法で求めた平均結晶子径rが0.06μm以上である。すなわち、従来の酸化亜鉛粒子に比べて粒子径が大きく、且つ、平均結晶子が大きい(結晶性が高い)ことを特徴とするものである。
本発明の酸化亜鉛粒子は、レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが10μm以上である。放熱フィラーとしての使用には粒子径が大きい方が熱伝導は生じ易く、良好に放熱することができ、また、組成物に配合したときに組成物の流動性を確保できることから、メジアン径は10μm以上とする。メジアン径が12μm以上であると本発明の効果が高くなり好ましく、14μm以上であるとより好ましい。メジアン径の上限には特に制限はなく、放熱性組成物の使用態様に応じて適宜設定することができる。尚、酸化亜鉛粒子のメジアン径が40μm以下であれば、幅広い用途に汎用的に用いることができるため好ましい。メジアン径Rは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製 Partica LA−950V2)を用いて酸化亜鉛粒子の粒度分布を測定し、頻度の累積が50%となる粒子径をメジアン径Rとする。
本発明の酸化亜鉛粒子は、粉末X線回折法で求めた平均結晶子径rが0.06μm以上である。平均結晶子径rは0.06〜0.15μmの範囲であると好ましく、0.08〜0.1μmの範囲であるとより好ましい。平均結晶子径rは、Rigaku社製試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IVを用いて測定したX線回折パターンに基づき、シェラーの式を用いて算出する。
なお、図1に示したように、本発明の酸化亜鉛粒子の粉末X線回折スペクトルには、特許文献4に見られるような層状構造に起因するピークの存在は認められない。
本発明の酸化亜鉛粒子は、前記メジアン径Rと粉末X線回折法で求めた平均結晶子径rとの比R/rが100〜200であると好ましい。本発明の酸化亜鉛粒子は多結晶体であるため、粒子内に存在する結晶粒界が熱伝導等の性能を阻害する障壁として作用してしまう。従って、たとえ粒子径が大きい粒子であっても結晶粒界が多く存在してしまうと粒子径に見合うだけの熱伝導率の向上が発現しなくなる。R/rは粒子内における結晶粒界の平均存在数の指標であり、R/rを200以下とすることで、熱伝導の粒界障壁を減少させ、粒子自体の熱伝導性を高めることができる。ただし、R/rはRを小さくすることによっても小さくなり、Rの影響によって組成物としたときの熱伝導性が低下してしまうため、R/rは100以上であることが好ましい。
本発明の酸化亜鉛粒子は、その形状が六角柱状であるのが好ましい。そのため、組成物中に充填されたときに隣接する粒子と面で接触することができ、粒子間で熱を伝導し易くなる。また、特許文献1のような球状粒子と比べて組成物中に酸化亜鉛粒子を多く充填することができる。その結果、組成物の熱伝導性を高めることができる。酸化亜鉛粒子の形状は、電子顕微鏡で確認できる。本発明でいう六角柱状とは、六角形の面を有し、その面に略垂直方向にのびた柱状の形状を指し、一般的に六角板状、六角短柱状、六角棒状と呼ばれる形態も包含する。また、六角柱状とは、正六角柱のみを意味するものではなく、六角柱を基本形状として、その一部の形状が変更されていたり、六角柱に別の微細構造が付加されているような形状であって、大まかには六角柱状であると認識可能なものも含む。
本発明の六角柱状粒子は特に、六角形の面の平均わたり径L(μm)と、六角形の面に略垂直方向の高さH(μm)とのアスペクト比H/Lが0.5〜2の範囲であると好ましい。この範囲とすることで、組成物に配合したときの組成物の流動性を高めることができる。言い換えると、組成物の粘度をある一定値にする場合、酸化亜鉛粒子の配合量を多くすることができる。その結果、放熱性組成物としたとき実用上充分な流動性をもちつつ、熱伝導率を更に高めることができる。
前記「わたり径」とは、六角形の面の「対向する頂点を結ぶ線の長さ」のことを言う。また、「高さ」は「六角形の面に略垂直方向の高さ」のことを言い、六角柱の縦の長さを言う。前記寸法は電子顕微鏡法で求めることができる。具体的には、酸化亜鉛粒子の平均わたり径L、平均高さHは、少なくとも20個の粒子の六角面のわたり径、高さを電子顕微鏡写真から計測して、下記式によって算出した平均わたり径、平均高さとする。
平均わたり径=Σ(L・n)/Σn
平均高さ=Σ(H・n)/Σn
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lは第n番目の粒子のわたり径、Hは第n番目の粒子の高さをそれぞれ表す。
本発明の酸化亜鉛粒子の好ましい形状は六角柱状であるが、六角柱状の柱部の中央部にくびれがあり、その部分の径は両端部に比べ小さい粒子があってもよい。このような六角柱の柱の両端部と中央部の径が、両端部に比し中央部の径が小さい形状を本発明では鼓に類似した形状(鼓形状)という。(中央部の径)/(両端部の径)は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。このような鼓形状は、中央部のくびれ部分に存在する六角板状核晶を対称面とした成長双晶が起こったような形状を有する。
本発明の酸化亜鉛粒子の好ましい形状は六角柱状であるが、六角柱を構成する各面は必ずしも平坦な面でなくてもよい。例えば、図2、3に示すように、六角柱形状を基本形状とし、その表面や稜線部に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が存在する外観である。このような凸部は単独で存在してもよく、積層していてもよく、特に、少しずつずれながら積層した態様であってもよい。このような形態をとることにより、多面体的な効果によって、酸化亜鉛粒子どうしの接触確率(接触頻度)を増やすことができる。その結果、放熱性組成物中で熱伝導パスがより形成され易くなり、組成物の熱伝導性を向上させることができる。
本発明の酸化亜鉛粒子の好ましい形状は六角柱状であるが、六角柱を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点は必ずしも明確でなくてもよい。例えば、図4〜6に示すように、稜線及び頂点に相当する部分が曲面で構成されていてもよい。また、前段落で述べた凸部の輪郭が明確な錐台状や鱗状ではなく曲面で構成されていてもよい。別の表現をすると、「角を落とした形状」とも言える。このような形状の酸化亜鉛粒子を用いることで、組成物に配合したときの組成物の流動性を更に向上させることができ、酸化亜鉛粒子の配合量を多くしても流動性を維持することができる。その結果、組成物の熱伝導性と流動性をより高度に両立できる。酸化亜鉛粒子全体の全ての稜線や頂点が曲面になっている必要はなく、一部が線や点として残っていてもよい。
本発明の酸化亜鉛粒子は、JIS R 1639−2に従い測定を行ったタップ密度が2g/cm以上であることが好ましく、酸化亜鉛自体の密度(真密度:5.6g/cm程度)を考慮するに、2〜5.5g/cmの範囲であることが好ましい。このようなタップ密度が高い酸化亜鉛粒子は、粒子同士の接触面積を多く取れることから粒子間で熱を伝導し易くなり、更に、組成物への酸化亜鉛粒子充填率を高くすることができる、という利点を有する。その結果、組成物の熱伝導性を高めることができる。
本発明の酸化亜鉛粒子は、必要に応じてその粒子表面にケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物あるいはそれらのリン酸塩等の無機化合物の被覆層を設けることもできる。これらの無機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いてもよい。また、溶媒、塗料やプラスチックス等への分散性を付与するなどの目的で、有機化合物を被覆してもよく、前記の無機化合物と有機化合物の両者を被覆してもよい。有機化合物としては、例えば、(1)有機ケイ素化合物((a)オルガノポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体)、(b)オルガノシラン類(アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等又はそれらの加水分解生成物)、(c)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)等)、
(2)有機金属化合物((a)有機チタニウム化合物(アミノアルコキシチタニウム、リン酸エステルチタニウム、カルボン酸エステルチタニウム、スルホン酸エステルチタニウム、チタニウムキレート、亜リン酸エステルチタニウム錯体等)、(b)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート等)、(c)有機ジルコニウム化合物(カルボン酸エステルジルコニウム、ジルコニウムキレート等)等)、
(3)ポリオール類(トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等)、
(4)アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)又はその誘導体(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等)、
(5)高級脂肪酸類(ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等)又はその金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、
(6)高級炭化水素類(パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等)又はその誘導体(パーフルオロ化物等)が挙げられる。これらの有機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いてもよい。無機化合物、有機化合物の被覆量は、酸化亜鉛粒子に対し、0.1〜50質量%の範囲が好ましく、0.1〜30質量%の範囲が更に好ましい。
上述したような本発明の酸化亜鉛粒子は、その製造方法を特に限定するものではないが、例えば、以下のような方法で製造することができる。
例えば、本発明の酸化亜鉛粒子は、層状亜鉛化合物を、塩基性化合物の存在下で、溶液中で加熱、熟成させることで製造することができる。具体的には、ZnSO(OH)・5HOの組成式で表される層状亜鉛化合物の水溶液に、塩基性化合物として好ましいアミン化合物(例えばモノエタノールアミン)を添加し、撹拌機で撹拌しながら、好ましくは90℃以上溶媒の沸点以下の温度条件下4〜12時間かけて熟成する。アミン化合物の添加量は、層状亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.2〜1.0の範囲であることが好ましい。
尚、ZnSO(OH)・5HOの組成式で表される層状亜鉛化合物は、公知の各種製法(例えば、特開2007−223873号、特開平5−070124号、あるいは特開昭54−38298号などに記載の方法)によって得ることができる。また、上記層状亜鉛化合物は鉱物として天然に存在するので、これを用いることもできる。
このようにして得られた酸化亜鉛粒子は、必要に応じて濾過・洗浄して固液分離し、乾燥、乾式粉砕を行う。固液分離には、フィルタープレス、ロールプレス等の通常工業的に用いられる濾過器を用いることができる。乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター、噴霧乾燥機等が、乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルペライザー、解砕機等の摩砕粉砕機、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等の圧縮粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等を用いることができる。乾燥温度は適宜設定することができるが、80〜200℃程度が適当である。
また、必要に応じて前記の酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリで処理してもよい。こうした処理を行うことで、酸化亜鉛粒子の六角柱の稜線及び頂点に相当する部分を曲面状に面取りすることができる。その結果、放熱性組成物などの組成物に配合した場合に、組成物中での酸化亜鉛粒子同士の干渉が抑制され、組成物の流動性を維持することができる。
酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリで処理する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、酸化亜鉛粒子の分散液に酸又はアルカリを添加する方法が挙げられる。また、低濃度の酸・アルカリ溶液中に酸化亜鉛粒子を添加することもできる。
上記酸化亜鉛粒子の分散液は、酸化亜鉛粒子の粉末やケーキと、溶媒とを混合して得ることができる。溶媒には、水系溶媒や有機溶媒を用いることができる。
上記分散液中の酸化亜鉛粒子の濃度は250g/L以下とするのが好ましい。
添加する酸又はアルカリの態様は特に制限がなく、固体状、液体状、気体状など、任意の状態のものを用いることができる。
酸を用いる場合、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸、カルボン酸(酢酸、クエン酸、シュウ酸)、スルホン酸(メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フルオロスルホン酸)などの有機酸を用いることができる。酸又はアルカリは、固体状、液体状、気体状等、任意の状態のものを添加することができる。酸性水溶液を用いる場合、当該水溶液の酸の濃度は硫酸に換算して0.5〜70質量%の範囲であることが好ましい。また、酸化亜鉛粒子の分散液に酸性水溶液を添加する場合、添加時間は例えば0〜360分としてよく、10〜120分が好ましい。添加中は適宜撹拌してもよい。酸化亜鉛粒子を上記方法で酸処理する際の処理温度は40℃以下とするのが好ましく、20〜30℃の範囲とするのがより好ましい。酸処理中の反応溶液のpHは6〜8の範囲に維持することが好ましく、pH7付近に維持することがより好ましい。添加する酸の量は、HとしてZnOに対して10〜25モル%とするのが好ましい。
アルカリを用いる場合、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の公知のアルカリ化合物を用いることができる。添加するアルカリの量は、OHとしてZnOに対して40〜100モル%とするのが好ましい。アルカリ水溶液を用いる場合、その濃度や添加時間は適宜調整することができる。
酸及びアルカリの何れを用いた場合でも、酸化亜鉛粒子の面取りをすることが可能であるが、酸を用いることが好ましい。酸を用いることで、水酸化物などの沈殿物の生成を抑制できる。また、アルカリを用いる場合に比べて酸の添加量を少なくすることができるからである。
また、必要に応じて前記の酸化亜鉛粒子を焼成してもよい。焼成条件は特に限定されるものではないが、焼成温度を300〜1500℃、焼成時間を10分〜10時間程度とするのが適当である。焼成は静置焼成によって行ってもよく回転式の炉内で行ってもよい。上記静置焼成は、ムライト製、ムライト・コージライト製等の匣鉢中で行うことができる。焼成雰囲気は通常、空気、酸素、窒素等の雰囲気下で行うことができる。それらの気体のフロー下で行ってもよい。尚、メジアン径が10μm以上の六角柱状酸化亜鉛粒子を用いて上述した方法によって焼成を行うと、粒子同士の融着が抑制されてメジアン径Rはほとんど変化しない一方、平均結晶子径rを大きくすることができるため、酸化亜鉛粒子の熱伝導性を更に高めることができる。前記焼成温度は850℃以上とするのが好ましく、1000℃以上とするのがより好ましい。焼成温度が高いほど平均結晶子径rが大きくなり易く、酸化亜鉛粒子の熱伝導性をより一層高めることができるためである。
また、必要に応じて前記の酸化亜鉛粒子の表面に無機化合物や有機化合物を被覆してもよい。酸化亜鉛粒子の水性スラリー中で、無機化合物原料あるいは有機化合物を添加し中和するなどして被覆することができる。また、有機化合物を被覆するには別の方法として、酸化亜鉛粒子の乾式粉砕の際に有機化合物を添加し混合することもできる。
本発明の放熱性組成物は、上記の酸化亜鉛粒子を放熱フィラーとして含有したものであり、放熱性樹脂組成物、放熱性グリース組成物、放熱性塗料組成物などが挙げられる。また、それらを用いて形成するシート、ゲル、エラストマー、プラスチックなどであってもよい。
本発明の放熱性組成物に包含される放熱性樹脂組成物に使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、液晶樹脂(LCP)、シリコーン樹脂等の樹脂を挙げることができる。
本発明の放熱性樹脂組成物は、(1)熱可塑性樹脂と上記酸化亜鉛粒子とを溶融状態で混練することによって得られた熱成型用の樹脂組成物(2)熱硬化性樹脂と上記酸化亜鉛粒子とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物、等のいずれの形態であってもよい。
本発明の放熱性樹脂組成物中の上記酸化亜鉛粒子の配合量は、目的とする熱伝導率や樹脂組成物の硬度等、樹脂組成物の性能に合わせて任意に決定することができる。上記酸化亜鉛粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性樹脂組成物中の固形分全量に対して5体積%以上含有することが好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、10体積%以上がより好ましく、20体積%以上が更に好ましく、40体積%以上が最も好ましい。このようにして、放熱性樹脂組成物の熱伝導率を好ましくは1.0W/m・K以上とすることができ、より好ましくは2.0W/m・K以上とすることができる。具体的な例として、上記酸化亜鉛粒子とエポキシ樹脂とを含む樹脂組成物において、酸化亜鉛粒子の体積充填率が樹脂組成物中の固形分全量に対して50体積%となるように配合した場合に、粘度・粘弾性測定装置を用いて回転数1rpmにて測定した液状の樹脂組成物の粘度が500Pa・s以下であり、且つ、これを固化した固形物状の樹脂組成物について、熱拡散率評価装置を用いてレーザーフラッシュ法で測定した樹脂組成物の熱伝導率が2.5W/m・K以上である放熱性組成物とすることができる。
本発明の放熱性樹脂組成物は、用途によって樹脂成分を自由に選択することができる。例えば、熱源と放熱板の間に装着し密着させる場合には、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、アクリル樹脂のような接着性が高く硬度の低い、かつ、耐熱性の高い樹脂を選択すればよい。
本発明の放熱性樹脂組成物が熱成型用の樹脂組成物である場合、熱可塑性樹脂と上記酸化亜鉛粒子を、例えば、スクリュー型二軸押出機を用いた溶融混練によって、樹脂組成物をペレット化し、その後射出成型等の任意の成形方法によって所望の形状に成型する方法等によって製造することができる。
本発明の放熱性樹脂組成物が熱硬化性樹脂と上記酸化亜鉛粒子とを混練後、加熱硬化させることによって得られた樹脂組成物である場合、例えば、加圧成形等によって成形するものであることが好ましい。このような樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物をトランスファー成型により成型し、製造することができる。
本発明の放熱性樹脂組成物の用途は、電子部品の放熱部材、熱伝導性充填剤、温度測定用等の絶縁性充填剤等がある。例えば、本発明の放熱性樹脂組成物は、MPU、パワートランジスタ、トランス等の発熱性電子部品からの熱を放熱フィンや放熱ファン等の放熱部品に伝熱させるために使用することができ、発熱性電子部品と放熱部品の間に挟み込まれて使用することができる。これによって、発熱性電子部品と放熱部品間の伝熱が良好となり、長期的に発熱性電子部品の誤作動を軽減させることができる。ヒートパイプとヒートシンクの接続や、種々の発熱体の組込まれたモジュールとヒートシンクとの接続に好適に用いることもできる。
本発明の放熱性組成物には、鉱油又は合成油を含有する基油と上記酸化亜鉛粒子が混合された放熱性樹脂組成物である放熱性グリースが包含される。
本発明の放熱性グリース中の上記酸化亜鉛粒子の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記酸化亜鉛粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、放熱性グリース中の全量に対して1体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が更に好ましい。
上記基油は、鉱油、合成油、シリコーンオイル、フッ素系炭化水素油等の各種油性材料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。合成油としては特に炭化水素油がよい。合成油としてα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテルなどが使用できる。
本発明の放熱性グリースには、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。上記界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤の配合により、高熱伝導率化を図ることができる。
非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールエチレンジアミン、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、エチレングリコールモノ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ペンタエリトリットモノ脂肪酸エステル、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンセスキ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステルが挙げられる。
非イオン系界面活性剤の添加の効果は、上記酸化亜鉛粒子の種類、配合量、及び親水性と親油性のバランスを示すHLB(親水親油バランス)によって異なる。また、高放熱性グリース等の電気絶縁性や電気抵抗の低下を重視しない用途では、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を使用することができる。
本発明の放熱性グリースは、前述した成分をドウミキサー(ニーダー)、ゲートミキサー、プラネタリーミキサーなどの混合機器を用いて混合することによって調製することができる。
本発明の放熱性グリースは、発熱体や放熱体に塗布することによって使用される。発熱体としては、例えば、一般の電源;電源用パワートランジスタ、パワーモジュール、サーミスタ、熱電対、温度センサなどの電子機器;LSI、CPU等の集積回路素子などの発熱性電子部品などが挙げられる。放熱体としては、例えば、ヒートスプレッダ、ヒートシンク等の放熱部品;ヒートパイプ、放熱板などが挙げられる。塗布は、例えば、スクリーンプリントによって行うことができる。スクリーンプリントは、例えば、メタルマスクもしくはスクリーンメッシュを用いて行うことができる。前記放熱性グリースを発熱体及び放熱体の間に介在させて塗布することにより、上記発熱体から上記放熱体へ効率よく熱を伝導させることができるので、上記発熱体から効果的に熱を取り除くことができる。
本発明の放熱性組成物には、上記酸化亜鉛粒子が樹脂溶液又は分散液中に分散された放熱性樹脂組成物である放熱性塗料組成物が包含される。この場合、使用する樹脂は硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであってもよい。上記樹脂として具体的には、上述した樹脂組成物において使用することができる樹脂として例示した樹脂を挙げることができる。塗料は、有機溶剤を含有する溶剤系のものであっても、水中に樹脂が溶解又は分散した水系のものであってもよい。
上記塗料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、ディスパーやビーズミル等を使用し、必要とする原料及び溶剤を混合・分散することによって製造することができる。
本発明の放熱性塗料組成物中の上記酸化亜鉛粒子の配合量は、目的とする熱伝導率に合わせて任意に決定する事ができる。上記酸化亜鉛粒子の放熱性能を充分に発現させるためには、塗料組成物全量に対して1体積%以上含有する事が好ましい。上記配合量は必要とされる放熱性能に応じて配合量を調整して使用することができ、より高い放熱性が要求される用途においては、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が更に好ましい。
本発明の放熱性塗料組成物は、前述の放熱性樹脂組成物の項に記載した用途に用いることができる。その他、建築物の外壁、建材や、ボイラー等の熱を発する産業設備、家電製品等にも用いることができる。
前記の本発明のすべての放熱性組成物は、本発明の酸化亜鉛粒子以外の他の放熱フィラーを含有してもよい。他の放熱フィラーとしては特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属シリコン、金属粒子、炭素化合物(ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ等)等を挙げることができる。本発明の酸化亜鉛粒子と組み合わせる場合は、他の放熱フィラーは一種類に限定されることはなく、複数種類の放熱フィラーを併用してもよい。
前記他の放熱フィラーとして、粒子サイズの異なる酸化亜鉛粒子や、粒子サイズの異なる他物質の放熱フィラーを用いてもよい。特に、メジアン径がR/40〜R/2の範囲の放熱フィラーを本発明の酸化亜鉛粒子と組成物中に配合して用いると、本発明の酸化亜鉛粒子同士の間の空隙を埋めて組成物中のフィラー充填率を高めることができるとともに、潤滑剤様に機能して組成物の流動性を高めることができる。その他の放熱フィラーには特に制限は無く任意の材料を用いることができる。特に酸化亜鉛及び又は酸化アルミニウムが好ましい。本発明の酸化亜鉛粒子とその他の放熱フィラーの配合比率には特に制限はなく適宜調整すればよい。体積比で7:3〜9:1の範囲が好適である。その他の放熱フィラーの形状には特に限定はなく、球状、粒状、立方体状、棒状、六角板状、鱗片状、不定形状等を挙げることができる。当該その他の放熱フィラーにも無機化合物や有機化合物を被覆してもよい。
このようにして、メジアン径が異なる放熱フィラーを併用することにより、放熱性樹脂組成物の熱伝導率を好ましくは0.5W/m・K以上とすることができ、より好ましくは2.5W/m・K以上とすることができる。具体的には、上記酸化亜鉛粒子50体積%以上で配合した液状の樹脂組成物において、粘度を実用領域である10〜500Pa・sとすることができ、これを固化した固形物状の樹脂組成物において、熱伝導率を3.0W/m・K以上とすることができる。
なお、本発明の酸化亜鉛粒子は、放熱性組成物の用途に限らず、紫外線遮蔽材、白色顔料、充填材等として、各種組成物(日焼け止め化粧料、基礎化粧料等の化粧料、塗料、その他樹脂組成物)にも適用することが可能である。こうすることで、各種組成物の流動性を維持しながら酸化亜鉛粒子を高い充填率で組成物に配合することができる。
化粧料に適量配合して用いる場合、例えば、前記の酸化亜鉛粒子以外に、通常化粧料の用いられる公知の成分、例えば、(1)溶媒(水、低級アルコール類等)、(2)油剤(高級脂肪酸類、高級アルコール類、オルガノポリシロキサン類(シリコーンオイル)、炭化水素類、油脂類等)、(3)界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性等)、(4)保湿剤(グリセリン類、グリコール等のポリオール系、ピロリドンカルボン酸類等の非ポリオール系等)(5)有機紫外線吸収剤(ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等)、(6)酸化防止剤(フェノール系、有機酸又はその塩、酸アミド系、リン酸系等)、(7)増粘剤、(8)香料、(9)着色剤(顔料、色素、染料等)、(10)生理活性成分(ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類等)、(11)抗菌剤等が配合されていてもよい。化粧料の様態は、固形状、液状、ジェル状等特に制限なく、液状やジェル状の場合、その分散形態も油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油型等のいずれでもよい。化粧料中の酸化亜鉛粒子の配合量は、0.1〜50質量%の範囲が好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
<実施例1>
0.15モルの層状亜鉛化合物(ZnSO(OH)・5HO)を1400mlの水に分散させた水溶液を準備した。この水溶液を加熱して、95℃まで昇温させた。昇温後は、水溶液の温度を95℃に保持し、撹拌機で撹拌しながら、0.31モルのモノエタノールアミンを140mlの水に溶解させた水溶液を添加した。95℃で4時間の間熟成を行い、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Aを得た。試料Aの粉末X線回折スペクトルのデータを図1に示す。X線回折パターンの測定の結果、試料Aは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
<実施例2>
実施例1を基本として、層状亜鉛化合物(ZnSO(OH)・5HO)を含む水溶液の熟成時間を8時間として、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Bを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料Bは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
<実施例3>
実施例2で得た酸化亜鉛粒子(試料B)を100g/Lのスラリーとし、室温下、試料Bに対して10モル%量の希硫酸(濃度2%)を添加して酸処理を行った。酸処理後のスラリーをろ過して酸処理済みの試料Bを回収し、これを洗浄、乾燥し、700℃で2時間焼成して、酸化亜鉛粒子(試料C)を得た。
<実施例4>
酸処理済み試料Bの焼成温度を900℃に変更する以外は実施例3と同様にして、酸化亜鉛粒子(試料D)を得た。
<実施例5>
酸処理済み試料Bの焼成温度を1100℃に変更する以外は実施例3と同様にして、酸化亜鉛粒子(試料E)を得た。
<比較例1>
硫酸亜鉛七水和物0.6モルとクエン酸三ナトリウム二水和物0.002モルとを、5Lのビーカー中で700mlの純水に溶解した。この水溶液を撹拌機で撹拌しながら、1.55モルのモノエタノールアミンを含む水溶液を10分間かけて室温で添加し、60分間保持した。その後水溶液を加熱して、95℃まで昇温させた。水溶液の温度を95℃に保持し、撹拌機で撹拌しながら、4時間熟成し、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Fを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料Fは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
<比較例2>
比較例1で得た酸化亜鉛粒子(試料F)を100g/Lのスラリーとし、室温下、試料Fに対して10モル%量の希硫酸(濃度2%)を添加して酸処理を行った。酸処理後のスラリーをろ過して酸処理済みの試料Fを回収し、これを洗浄、乾燥し、700℃で2時間焼成して、酸化亜鉛粒子(試料G)を得た。
<酸化亜鉛粒子の物性>
上述の実施例及び比較例の酸化亜鉛粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2〜図8に示す。図2〜図6に示したように、実施例1〜5の酸化亜鉛粒子は、何れも略六角柱状の形状を有している。六角柱状の中央部にくびれがあり、その部分の径が両端部の径に比べて小さい形状(鼓形)や、六角柱を基本形状として、その表面(側面、上面、及び底面)に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する形状などが含まれている。また、粒子径が10μm以上の比較的大きな粒子である。このように、本発明の酸化亜鉛粒子は、六角柱状で且つ粒子径が比較的大きな酸化亜鉛粒子であることが分かる。一方で、比較例1、2の酸化亜鉛粒子では、図7、8に示したように、六角柱状の粒子は得られるものの、その粒子径は実施例のものよりは小さいことが分かる。
また、上述の実施例及び比較例の酸化亜鉛粒子のメジアン径R、平均結晶子径r、メジアン径と平均結晶子径との比R/rを表1に示す。
Figure 0006665398
尚、メジアン径Rは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製 Partica LA−950V2)を用いて測定した。詳細には、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.2%溶解させた水溶液を分散媒とし、その中に各試料を混合し、装置内で循環・撹拌しながら、超音波を3分照射した後、粒度分布を測定した。粒度分布における頻度の累積が50%となる粒子径をメジアン径Rとした。
また、平均結晶子径rは、試料水平型多目的X線回折装置(Rigaku社製 Ultima IV)を用いて測定した。詳細な測定条件は以下のとおりである。
(1)光学系
(ア)入射スリット 1°
(イ)長手制限スリット 2mm
(ウ)受光スリット1 1°
(エ)Kβフィルター あり
(オ)受光スリット 0.3mm
(2)測定範囲:5〜50deg
(3)走査方法
(ア)スキャン速度 8.000deg/min
(イ)ステップ幅 0.0200deg
上記測定条件で各試料のX線回折パターンを測定し、その2θ=34°における回折ピーク(酸化亜鉛の(002)面の回折ピーク)の半価幅の値を用いて、シェラーの式(式1)を用いて算出した。
(式1)・・・r=(K・λ)/βcosθ
r:平均結晶子径(Å)
λ:X線の波長(CuKα線 1.541Å)
β:回折ピークの半価幅
θ:ブラッグ角
K:定数(=0.94)
表1に示したように、実施例1〜5の酸化亜鉛粒子(試料A〜E)は、メジアン径Rが10μm以上と比較的大きな六角柱状酸化亜鉛粒子であり、且つ、平均結晶子径rについても0.06μm以上(好ましくは0.08μm以上)と比較的大きいことが分かる。一方で、比較例1の酸化亜鉛粒子(試料F)では、メジアン径が7μm程度であり、平均結晶子径rは0.06μm未満である。各種実施例の酸化亜鉛粒子の平均結晶子径には達していないことが分かる。また、比較例2の酸化亜鉛粒子(試料G)では、焼成によって、多少平均結晶子径は大きくなるものの、依然としてメジアン径は7μm程度であり、各種実施例の酸化亜鉛粒子のようなメジアン径Rが10μm以上と、平均結晶子径rが0.06μm以上との両方を満たす六角柱状の粒子にはなっていないことが分かる。
また、表1に示したように、実施例1〜5の酸化亜鉛粒子(試料A〜E)は、メジアン径と平均結晶子径との比R/rが100〜200の範囲であることが分かる。上述のように、R/rは、結晶粒界の数を表す指標である。従って、R/rが上記のような比較的小さな数値範囲であることで、メジアン径が10μm以上という比較的大きな六角柱状でありながら、結晶粒界が少なく、ひいては熱伝導性の大きな酸化亜鉛粒子を実現することができる。
尚、小粒径の酸化亜鉛を焼結させて大粒径の酸化亜鉛粒子を得ることも可能であるが、焼結工程を経ている関係上、結晶粒界の数が多くなると考えられ、R/rの値も200を超えると推測される。この点で、本発明の酸化亜鉛粒子は、粒子径が比較的大きなものであっても、結晶粒界の数を少なくすることができる点で、有利である。
また、上述の実施例及び比較例の酸化亜鉛粒子の平均わたり径、平均高さ、及びアスペクト比を表2に示す。平均わたり径、平均高さは、20個の粒子のわたり径、及び高さを電子顕微鏡写真から測定して、それらの数平均により算出した。
Figure 0006665398
表2に示したように、各種実施例の酸化亜鉛粒子は、アスペクト比が0.5〜2であることが分かる。換言すれば、アスペクト比0.5〜2を維持しつつ、粒子径が大きな(メジアン径10μm以上)の六角柱状酸化亜鉛粒子であることが分かる。
また、上述の実施例の製造方法及び比較例の製造方法で得られた酸化亜鉛粒子のタップ密度の測定結果を表3に示す。尚、タップ密度は、JIS R 1639−2に従い、各試料それぞれ50gを100ミリリットルのメスシリンダーにいれ、100回タッピングしてタップ密度を測定した。
Figure 0006665398
表3に示したように、各種実施例の酸化亜鉛粒子は、タップ密度が2〜5.5g/cmの酸化亜鉛粒子が効率よく合成されていることが分かる。また、比較例の酸化亜鉛粒子に比べてもタップ密度が大きくなっており(2.7g/cm以上)、充填性が向上していることが分かる。
<放熱性樹脂組成物の特性評価>
上述の実施例及び比較例の酸化亜鉛粒子を用いて、これを配合した放熱性樹脂組成物の性能(流動性、熱伝導性)の評価を行った。
<実施例6>
先ず、上述の実施例3で得た試料Cについて、0.5質量%のエポキシシラン(KBM−403、信越化学社製)を添加し、ミキサーで乾式処理を行い、150℃で3時間、熱処理して有機物被覆を施して、試料C1を得た。尚、以下の実施例において「有機物処理」という場合には、上記処理条件によって各試料に有機物被覆を施す処理のことをいう。
続いて、上記有機物処理を施した試料C1を用いて、次のようにして流動性評価用の樹脂組成物を作製した。先ず、樹脂(jER(登録商標)−807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学社製)と、試料C1とをスクリュー瓶に秤量し、2000rpmで3分間混練した。続いて、1000rpmで1分間混練することで脱泡し、流動性測定用の樹脂組成物を作製した。樹脂組成物中の固形分全量に対する試料C1の配合量(充填率)は50体積%とした。配合比は表4のとおりである。
この樹脂組成物について、粘度・粘弾性測定装置(HAAKE RheoStress 6000、サーモサイエンティフィック社製)を用いて樹脂組成物の粘度を測定した。測定は下記条件で行い、コーン上に0.5mL程度の樹脂組成物を載せ、各回転数での粘度を測定した。流動性評価には、回転数が1rpmのときの粘度の値を使用し、比較を行った。
コーン:MP−20,C20/1H
測定温度:25℃
ギャップ:0.052 mm
回転数:1,2,5,10,20rpm
また、上記有機物処理した試料C1を用いて、次のようにして熱伝導率測定用のサンプルを作製した。先ず、樹脂(jER(登録商標)−807)及び試料C1と共に、アミン硬化剤(Jeffamine(登録商標) EDR−148、米国ハンツマン社製)をスクリュー瓶に秤量し、上記粘度測定用の樹脂ペースト作製時と同様に混練、脱泡して、樹脂組成物を作製した。樹脂組成物中の固形分全量に対する試料C1の配合量(充填率)は50体積%とした。配合比は表5のとおりである。
熱伝導率測定用の樹脂組成物を円形の型に流し込んで一晩静置した後、100℃で3時間加熱して硬化させて固化し、熱伝導率測定用ペレットを作製した。
上記熱伝導率測定用ペレットを用いて、以下の方法で熱伝導率を測定した。先ず、熱伝導率測定用ペレットを厚さ1mm程度まで研磨して評価用サンプルとした。評価用サンプルを、JIS R 1611に準拠し、熱拡散率評価装置(TC−7000、アルバック理工社製)を用いて、雰囲気温度25℃中、レーザーフラッシュ法にて熱拡散率を測定した。また、JIS K 7123に準拠し、上記ペレットの比熱を、DSC(示差走査熱量測定法 DSC6200 SII製)により測定した。更に、JIS K 7112に準拠し、上記ペレットの比重を水中置換法により測定した。上述の方法で得られた熱拡散率、比熱、及び比重の値に基づいて、以下の式により熱伝導率を算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
<実施例7>
実施例6を基本として、流動性測定用の樹脂組成物、及び熱伝導性測定用のサンプルを作製する際に、実施例3の酸化亜鉛粒子(試料C)と小粒径酸化亜鉛との混合物を用いた。即ち、試料C1(試料Cの有機物処理品)と、小粒径酸化亜鉛粒子(ハクスイテック社製、メジアン径0.5μm)とを体積比8:2の割合で混合した。これを用いて、実施例6と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
<実施例8>
実施例6を基本として、流動性測定用の樹脂組成物、及び熱伝導性測定用のサンプルを作製する際に、実施例3の酸化亜鉛粒子(試料C)と小粒径アルミナとの混合物を用いた。即ち、試料C1(試料Cの有機物処理品)と、小粒径アルミナ粒子(アドマテックス社製、メジアン径0.6μm)とを体積比8:2の割合で混合した。これを用いて、実施例6と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
<実施例9>
実施例6を基本として、流動性測定用の樹脂組成物、及び熱伝導性測定用のサンプルを作製する際に、実施例4の酸化亜鉛粒子(試料D)と小粒径酸化亜鉛との混合物を用いた。即ち、試料D1(試料Dの有機物処理品)と、小粒径酸化亜鉛粒子(ハクスイテック社製、メジアン径0.5μm)とを体積比8:2の割合で混合した。これを用いて、実施例6と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
<実施例10>
実施例6を基本として、流動性測定用の樹脂組成物、及び熱伝導性測定用のサンプルを作製する際に、実施例5の酸化亜鉛粒子(試料E)と小粒径酸化亜鉛との混合物を用いた。即ち、試料E1(試料Eの有機物処理品)と、小粒径酸化亜鉛粒子(ハクスイテック社製、メジアン径0.5μm)とを体積比8:2の割合で混合した。これを用いて、実施例6と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
<比較例3>
実施例6を基本として、試料C1の代わりに試料G1(比較例2の試料Gの有機物処理品)を用いて、流動性測定用の樹脂組成物、及び熱伝導性測定用のサンプルを作製した。これを用いて、粘度及び熱伝導率を測定した。
<評価結果>
上述の実施例6〜10、及び比較例3の結果から得られた、各実施例及び比較例の放熱性樹脂組成物の粘度を表4に示し、熱伝導率を表5に示す。
Figure 0006665398
Figure 0006665398
表4に示したように、比較例3の放熱性樹脂組成物は、2W/m・K程度の熱伝導率が得られているものの、高い充填率で酸化亜鉛粒子を配合している関係上、粘度が非常に高くなっており、実用粘度領域の上限(500Pa・s)を超えている。このように粘度が高い組成物では、実用上の取り扱いが困難となる。
一方で、各種実施例の酸化亜鉛粒子を用いた放熱性樹脂組成物では、比較的高い充填率(50体積%)で樹脂に配合しても粘度が高くなり過ぎることが無く、粘度を500Pa・s未満とすることができ、好ましくは粘度を400Pa・s未満とすることができる。また、何れの実施例の放熱性樹脂組成物についても、低粘度を維持しつつ、2W/m・K以上(好ましくは2.5W/m・K以上)の高い熱伝導率を実現できる。特に、六角柱状酸化亜鉛粒子と小粒径酸化亜鉛とを混合した放熱性樹脂組成物(実施例7、9、10)では、2W/m・K以上の高い熱伝導率を維持したまま、非常に低粘度(200Pa・s)の放熱性樹脂組成物を実現可能である。中でも、六角柱状酸化亜鉛粒子を1100℃の高温で焼成したもの(実施例10)については、3W/m・K程度の非常に高い熱伝導率と、200Pa・s未満の非常に低い粘度とを両方実現することができる点で、好ましい。
本発明の酸化亜鉛粒子は、粒子径が大きく、結晶性が高いため、熱伝導性に優れ、充填性にも優れる。このため、樹脂等に配合して放熱性組成物(放熱性樹脂組成物、放熱性グリース、放熱性塗料組成物など)とすると、実用上充分な流動性をもちつつ、熱伝導率の高い放熱性組成物が得られるため、放熱フィラーとして有用である。また、本発明の酸化亜鉛粒子を配合することにより、実用上充分な流動性、充填性をもつため、化粧料、塗料組成物、樹脂組成物等の用途にも用いられる。

Claims (15)

  1. レーザー回折/散乱法で測定したメジアン径Rが10μm以上であり、粉末X線回折法で求めた平均結晶子径rが0.06μm以上であり、且つ、前記メジアン径R(μm)と前記平均結晶子径r(μm)との比(R/r)が100〜200である酸化亜鉛粒子。
  2. 酸化亜鉛粒子の形状が六角柱状であり、電子顕微鏡法で測定した六角形の面の平均わたり径L(μm)と、六角形の面に略垂直方向の高さH(μm)とのアスペクト比H/Lが0.5〜2である請求項1に記載の酸化亜鉛粒子。
  3. タップ密度が2g/cm以上である請求項1または請求項2に記載の酸化亜鉛粒子。
  4. 六角柱形状を基本形状とし、その表面に台錐状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する外観である請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子。
  5. 六角柱を構成する隣接する面同士の稜線及び頂点に相当する部分が曲面で構成されている請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子。
  6. 表面に有機化合物被覆及び/又は無機化合物被覆を有する請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子。
  7. 液状の樹脂組成物に含有させた場合の粘度が500Pa・s以下であり、且つ、固形物状の樹脂組成物に含有させた場合の熱伝導率が2.0W/m・K以上である、請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子。
  8. 塩基性化合物が存在した溶液で、層間にアニオンが配位された層状亜鉛化合物を熟成して酸化亜鉛粒子を得、次いで、得られた酸化亜鉛粒子を焼成して、メジアン径Rが10μm以上であり、平均結晶子径rが0.06μm以上である酸化亜鉛粒子を製造する、酸化亜鉛粒子の製造方法。
  9. 前記焼成を850℃以上で行う請求項に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
  10. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む放熱性組成物。
  11. 酸化亜鉛粒子を含む液状の樹脂組成物の粘度が500Pa・s以下であり、且つ、固形物状の樹脂組成物の熱伝導率が2.0W/m・K以上である、請求項10に記載の放熱性組成物。
  12. 更に、前記酸化亜鉛粒子よりもメジアン径が小さい小粒径放熱フィラーを含む請求項10に記載の放熱性組成物。
  13. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む化粧料。
  14. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む塗料組成物。
  15. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子を含む樹脂組成物。
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