JP6665397B2 - 酸化亜鉛粒子の製造方法及び放熱性組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明では例えば、粒子径が比較的大きく(例えばメジアン径で10〜40μm程度の)、しかも、六角柱状の酸化亜鉛粒子を、再現性よく、且つ、効率よく合成することが可能であること、このような酸化亜鉛粒子は、流動性を維持しながら高充填が可能であり、高い熱伝導率を実現可能であることを見出し、本発明を完成した。
(1)塩基性化合物が存在した溶液で、層間にアニオンが配位された層状亜鉛化合物を熟成する工程を含む、酸化亜鉛粒子の製造方法、
(2)大気圧下、90℃以上溶媒の沸点以下の温度で熟成する、(1)に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法、
(3)前記層状亜鉛化合物の前記アニオンが硫酸イオン[SO4 2−]である、(1)又は(2)に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法、
(4)前記塩基性化合物は酸解離定数(pKa)が9〜10である、(1)〜(3)の何れかに記載の酸化亜鉛粒子の製造方法、
(5)(1)〜(4)の何れかに記載の酸化亜鉛粒子を酸又は塩基で処理する工程を含む、酸化亜鉛粒子の製造方法、
(6)(1)〜(5)の何れかに記載の酸化亜鉛粒子を700℃以上で焼成する工程を含む、酸化亜鉛粒子の製造方法、
(7)(1)〜(6)の何れかに記載の方法で製造された酸化亜鉛粒子と、樹脂又は基油とを混合する、放熱性組成物の製造方法、
(8)前記酸化亜鉛粒子よりもメジアン径が小さい小粒径放熱フィラーを更に混合する、(7)に記載の放熱性組成物の製造方法、などである。
一般に、放熱性組成物では、粘度が概ね10〜500Pa・s(/1rpm)の領域が実用領域(取り扱いや加工が行い易い領域)とされる。本発明の方法で製造した酸化亜鉛粒子を用いて放熱性組成物を調製した場合に、上記実用領域で高い熱伝導率を実現することができる。このようなことから、本発明の製造方法は、放熱性組成物に用いる酸化亜鉛粒子の製造方法として特に好適である。
層状亜鉛化合物の積層構造に対応する部分は、亜鉛のみを金属元素として含む化合物で構成されていてもよいし、亜鉛以外の金属元素を更に含む化合物で構成されていてもよい。もっとも、製造される酸化亜鉛粒子の純度を確保する観点からすれば、上記積層構造に対応する部分は、金属元素として亜鉛のみを含む化合物であることが好ましい。特に、当該積層構造に対応する部分が水酸化亜鉛で構成される場合、六角柱状で、且つ粒子径の大きな酸化亜鉛粒子を再現性よく、且つ、効率よく製造することができるので、より好ましい。
尚、本発明の製造方法においては、上述のZn4SO4(OH)6・nH2Oの組成式で表される層状亜鉛水酸化物(水酸化亜鉛の層間に硫酸イオンや水分子が配位したもの)を用いた場合、六角柱状で且つ粒子径の大きな酸化亜鉛粒子が特に効率よく得られるので、より好ましい。
また、上述のZn5(OH)8Cl2・nH2Oの組成式で表される化合物は、例えば塩化亜鉛に水酸化ナトリウムやアンモニア水などのアルカリを添加する方法によって得ることができる(Yan Li, Yunling Zou, Yanyan Hou (2011):Synthesis and characterization of simonkolleite nanodisks and their conversion into ZnO nanostructures, CRYSTAL Research&Technology, 46, 305-308)。
更に、Zn5(OH)8(CH3COO)2・nH2Oの組成式で表される化合物は、例えば酢酸亜鉛二水和物にヘキサメチレンテトラミン溶液やアルカリ溶液を加えて加熱する方法やアルカリを添加する方法によって得ることができる(Zhenbo Xia, Jian Sha, Yanjun Fang, Yuting Wan, Zongli Wang, Yewu Wang(2010):Purposed Built ZnO/Zn5(OH)8Ac2・2H2O Architectures by Hydrothermal Synthesis, Crystal Growth & Design, 10, 2759-2765)。
加えて、Zn5(OH)8(CO3)2・nH2Oの組成式で表される化合物は、例えば亜鉛イオンを含む溶液に炭酸ナトリウム水溶液を添加する方法によって得ることができる(田中春彦、松田善信、古賀信吉、古川義宏(2004),化学教材の開発における熱分析の意義 亜鉛塩の沈殿生成反応とその熱分解反応を例として,熱分析,31 108−116)。
更に加えて、Zn4SO4(OH)6・nH2Oでの組成式であらわされる化合物は、例えば特開2007−223873号、特開平5−070124号、あるいは特開昭54−38298号などに記載の方法によって得ることができる。尚、Zn4SO4(OH)6・nH2Oの組成式で表される化合物は、硫酸亜鉛とカルボン酸(例えばクエン酸)とを混合した水溶液にアミン化合物を添加して、水溶液を緩やかに中和することで、当該化合物を調製することもできる。
尚、前駆体としての層状亜鉛化合物を公知の方法等を用いて合成する場合には、合成時の温度を適切に調整することで、層状亜鉛化合物の粒子数が多く、且つ凝集の程度が小さい状態を実現することができる。
尚、層状亜鉛化合物の粒子の数は、粉末X線回折スペクトルにおいて2θが8〜9度のピーク強度と相関があるものと考えられ、前記ピーク強度が大きいほど層状亜鉛化合物の粒子の数が多いと考えられる。従って、粉末X線回折スペクトルにおいて2θが8〜9度のピーク強度は大きいことが好ましい。例えば、Rigaku社製UltimaIVで粉末X線回折スペクトルを測定した場合、2θが8〜9度にあるピーク強度が、100,000以上であることが好ましく、150,000以上であることがより好ましい。
塩基性化合物の添加のタイミングとしては、層状亜鉛化合物を含む溶液の温度保持中(熟成中)に添加してもよいし、昇温中及び熟成中の期間に亘って添加してもよい。もっとも、安定した温度条件下で酸化亜鉛粒子の成長を行ったほうが、均質な(粒子径、結晶子径などが揃った)酸化亜鉛粒子が得られると考えられる。従って、塩基性化合物は熟成中に添加することが好ましい。
酸化亜鉛粒子を酸又はアルカリで処理する方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、酸化亜鉛粒子の分散液に酸又はアルカリを添加する方法が挙げられる。また、低濃度の酸/アルカリ溶液中に酸化亜鉛粒子を添加することもできる。
上記酸化亜鉛粒子の分散液は、酸化亜鉛粒子の粉末やケーキと、溶媒とを混合して得ることができる。溶媒には、水系溶媒や有機溶媒を用いることができる。上記分散液中の酸化亜鉛粒子の濃度は250g/L以下とするのが好ましい。添加する酸又はアルカリの態様は特に制限がなく、固体状、液体状、気体状など、任意の状態のものを用いることができる。
メジアン径が小さい(例えば5μm程度の)六角柱状の酸化亜鉛粒子を高い温度で焼成すると、粒子同士が融着してしまい、組成物に配合したときの流動性が著しく低下する。この点で、本発明の方法で製造された酸化亜鉛粒子は、メジアン径が10μm以上の比較的大きな粒子であるため、これを上記温度で焼成しても粒子同士の融着が起こり難い。従って、上記焼成処理によって、メジアン径を殆ど変化させずに結晶子径を大きくすることができ、酸化亜鉛粒子の熱伝導性を更に高めることができる。
酸化亜鉛粒子の焼成温度は、700〜1200℃で焼成することが好ましく、850〜1200℃の温度で焼成することがより好ましい。焼成温度が高いほど結晶子径が大きくなり易く、酸化亜鉛粒子の熱伝導性をより一層高めることができる。
尚、このような焼成処理は、上述の酸又は塩基による処理の前に行ってもよいし、酸又は塩基による処理の後に行ってもよいが、酸又は塩基による処理の後に焼成を行うことが好ましい。
(1)有機ケイ素化合物((a)オルガノポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体)、(b)オルガノシラン類(アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、フェニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等又はそれらの加水分解生成物)、(c)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)等)、
(2)有機金属化合物((a)有機チタニウム化合物(アミノアルコキシチタニウム、リン酸エステルチタニウム、カルボン酸エステルチタニウム、スルホン酸エステルチタニウム、チタニウムキレート、亜リン酸エステルチタニウム錯体等)、(b)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート等)、(c)有機ジルコニウム化合物(カルボン酸エステルジルコニウム、ジルコニウムキレート等)等)、
(3)ポリオール類(トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等)、
(4)アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)又はその誘導体(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等)、
(5)高級脂肪酸類(ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等)又はその金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、
(6)高級炭化水素類(パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等)又はその誘導体(パーフルオロ化物等)が挙げられる。
酸化亜鉛粒子の粒子表面に前記の無機化合物や有機化合物を被覆させるには、酸化亜鉛粒子の水性スラリー中で、無機化合物あるいは有機化合物を添加し中和するなどして被覆することができる。また、有機化合物を被覆するには別の方法として、酸化亜鉛粒子に有機化合物を添加してミキサーで乾式処理を行い、熱処理を施すなどして被覆することもできる。
ここで、「六角柱状」とは、一般的に六角板状、六角短柱状、六角棒状と呼ばれる形状を含む。また、これら以外にも、六角柱を基本形状として、その一部の形状が変更されていたり、六角柱に別の微細構造が付加された形状であって、大まかには六角柱状であると認識できるものも含む。例えば、六角柱状の中央部にくびれがあり、その部分の径が両端部の径に比べて小さい形状(鼓形)であってもよい。
また、六角柱を構成する面同士の稜線及び頂点は必ずしも明確でなくてもよく、例えば図8に示すように、六角柱の隣接する面の稜線及び頂点に相当する部分が曲面状となっている形状(六角柱の角が曲面状に面取りされた形状)であってもよい。尚、このような形状においては、全ての稜線や頂点が曲面状となっている必要は無く、一部が線や点として残っていてもよい。
更に、六角柱を構成する各面は必ずしも平坦な面でなくてもよい。例えば、図3〜5に示すように、六角柱を基本形状として、その表面(側面、上面、及び底面)に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する形状も、本発明の「六角柱状」に含まれる。このような凸部は単独で(他の凸部と重なり合わないように)存在していてもよく、凸部が重なり合っていてもよい。特に互いの位置を少しずつずらしながら凸部が重なり合っている態様であってもよい。もちろん、このような凸部についても、その輪郭が明確な錐台状や鱗状でなくてもよく、輪郭が曲面で構成された(角が取れた)形状であってもよい(図8を参照)。
メジアン径Rは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製 Partica LA−950V2)を用いて酸化亜鉛粒子の粒度分布を測定し、頻度の累積が50%となる粒子径をメジアン径Rとする。
一般に、酸化亜鉛粒子の多結晶体では、粒子内に存在する結晶粒界が熱伝導等の性能を阻害する障壁として作用する。従って、たとえ粒子径が大きい粒子であっても、結晶粒界が多く存在すると、粒子径に見合うだけの熱伝導率を発現しなくなる。上述のR/rは、粒子内における結晶粒界の平均存在数の指標である。本発明の酸化亜鉛粒子では、R/rを200以下とすることで結晶粒界を減少させ、粒子自体の熱伝導性を高めることができる。もっとも、R/rの値は、R(メジアン径)を小さくすることによっても小さくなるが、Rが小さくなりすぎると、放熱性組成物中での酸化亜鉛粒子の充填性が低下したり、酸化亜鉛粒子が凝集したりすることにより、組成物の熱伝導性が低下するおそれがある。このようなことを勘案するに、R/rは100以上であることが好ましい。
酸化亜鉛粒子の上記寸法(L及びH)は、電子顕微鏡法で求めることができる。具体的には、酸化亜鉛粒子の平均わたり径L、平均高さHは、少なくとも20個の粒子のわたり径及び高さを電子顕微鏡写真から計測して、下記式によって算出した平均わたり径、平均高さとする。
平均わたり径=Σ(Ln・n)/Σn
平均高さ=Σ(Hn・n)/Σn
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lnは第n番目の粒子のわたり径、Hnは第n番目の粒子の高さをそれぞれ表す。
アスペクト比が上述の範囲であると、酸化亜鉛粒子を放熱性組成物に配合した場合の流動性を高めることができる。換言すれば、放熱性組成物の粘度をある一定値とする場合に、酸化亜鉛粒子を高い充填率で配合することができる。その結果、放熱性組成物としたときに実用上十分な流動性を維持しつつ、熱伝導率を更に高めることができる。
先ず、次のようにして層状亜鉛化合物を準備した。硫酸亜鉛七水和物0.6モルとクエン酸三ナトリウム二水和物0.002モルとを、5Lのビーカー中で700mlの純水に溶解した。この水溶液を撹拌機で撹拌しながら、1.23モルのモノエタノールアミン(pKa=9.64)を水560mlに溶解した水溶液を10分かけて室温で添加し、60分間保持して沈殿物を析出させた。この沈殿物について、粉末X線回折スペクトルのデータを採取した。図1にその粉末X線回折スペクトルを示す。粉末X線回折スペクトルにおいて、2θが8〜9度の範囲に層状亜鉛化合物に特徴的なピーク(層状亜鉛化合物の(002)面に対応するピーク)が検出されていることから、上記沈殿物は層状亜鉛化合物であることが確認された。この層状亜鉛化合物aの粉末X線回折スペクトルのパターンを、国際回折データセンター(ICDD)提供のX線回折パターンのデータベースであるPDFデータベース(ICDD PDF−2/Release2012RDB,カード番号00−0600655)で照合したところ、層状亜鉛化合物aは、Zn4SO4(OH)6・5H2Oの組成式で表される層状亜鉛化合物であることが確認された。
尚、上述の層状亜鉛化合物aは、粉末X線回折パターンの2θ=8.6度での半価幅が0.8752度であった。粉末X線回折スペクトルのデータは、試料水平型多目的X線回折装置(Rigaku社製 Ultima IV)を用いて測定した。詳細な測定条件は以下のとおりである。
(1)光学系
(ア)入射スリット 1°
(イ)長手制限スリット 2mm
(ウ)受光スリット1 1°
(エ)Kβフィルター あり
(オ)受光スリット 0.3mm
(2)測定範囲:5〜50deg
(3)走査方法
(ア)スキャン速度 8.000deg/min
(イ)ステップ幅 0.0200deg
(4)X線の波長 CuKα線 1.541Å
実施例1を基本として、硫酸亜鉛水溶液へのモノエタノールアミンの水溶液の添加時間を60分に変更することで沈殿物を得た。この沈殿物についても、粉末X線回折パターンの照合結果から、Zn4SO4(OH)6・5H2Oの組成式で表される層状亜鉛化合物(層状亜鉛化合物b)であることが確認された。尚、上述の層状亜鉛化合物bは、粉末X線回折パターンの2θ=8.7度での半価幅が0.8525度であった。
次に、実施例1と同様の条件で、層状亜鉛化合物bを含む水溶液を、モノエタノールアミンの存在下で昇温し、8時間熟成して、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Bを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料Bは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
実施例1を基本として、熟成中に添加する塩基性化合物の種類をモノエタノールアミンからイソプロパノールアミン(pKa=9.4)に変更した。それ以外は実施例1と同様の条件として試料Cを得た。X線回折の結果、試料Cは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
硫酸亜鉛七水和物0.6モルとクエン酸三ナトリウム二水和物0.002モルとを、5Lのビーカー中で700mlの純水に溶解した。この水溶液を撹拌機で撹拌しながら、1.55モルのモノエタノールアミンを水700mlに溶解した水溶液を10分間かけて室温で添加し、60分間保持した。その後水溶液を加熱して、95℃まで昇温させた。水溶液の温度を95℃に保持し、撹拌機で撹拌しながら、4時間の間熟成を行い、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Dを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料Dは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
実施例1を基本として、層状亜鉛化合物aの代わりに酸化亜鉛(ハクスイテックス社製:一種酸化亜鉛)を用いた。それ以外は実施例1と同様の条件で、酸化亜鉛を含む水溶液を、モノエタノールアミンの存在下で昇温、熟成し、水溶液中に白色沈殿を得た。吸引ろ過によって上記白色沈殿を回収し、150℃、3時間乾燥し、試料Eを得た。X線回折パターンの測定の結果、試料Eは酸化亜鉛粒子であることが確認された。
上述の実施例の製造方法及び比較例の製造方法で得られた酸化亜鉛粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図3〜図7に示す。図3〜図5に示すように、実施例1〜3の製造方法で得られた酸化亜鉛粒子は、何れも略六角柱状の形状を有している。六角柱状の中央部にくびれがあり、その部分の径が両端部の径に比べて小さい形状(鼓形)や、六角柱を基本形状として、その表面(側面、上面、及び底面)に錐台状、瘤状又は鱗状から選ばれる少なくとも一種類の凸部が複数存在する形状などが含まれている。また、粒子径が10μm以上の比較的大きな粒子である。このように、本発明の製造方法によって、六角柱状で且つ比較的粒子径の大きな酸化亜鉛粒子が効率よく合成されていることが分かる。一方で、比較例1の製造方法では、図6に示すように、六角柱状の酸化亜鉛粒子は得られるものの、その粒子径は実施例のものよりは小さいことが分かる。また、図7に示すように、比較例2の製造方法では、粒子の形状が不定形であり、粒子の成長がほとんど起こらず、やはり実施例のような大きな粒子は合成されないことが分かる。
また、平均結晶子径rは、試料水平型多目的X線回折装置(Rigaku社製 Ultima IV)を用いて測定した。詳細な測定条件は上述のとおりである。各試料のX線回折パターンを測定し、その2θ=34度における回折ピーク(酸化亜鉛の(002)面の回折ピーク)の半価幅の値を用いて、シェラーの式(式1)を用いて算出した。
(式1)・・・r=(K・λ)/βcosθ
r:平均結晶子径(Å)
λ:X線の波長(CuKα線 1.541Å)
β:回折ピークの半価幅
θ:ブラッグ角
K:定数(=0.94)
尚、小粒径の酸化亜鉛を焼結させて大粒径の酸化亜鉛粒子を得ることも可能であるが、焼結工程を経ている関係上、結晶粒界の数が多くなると考えられ、R/rの値も200を超えると推測される。この点で、本発明の酸化亜鉛粒子の製造方法では、粒子径が比較的大きなものであっても、結晶粒界の数を少なくすることができる点で、有利である。
上述の実施例及び比較例での方法で製造した酸化亜鉛粒子を用いて、これを配合した放熱性樹脂組成物の性能(流動性、熱伝導性)の評価を行った。
先ず、上述の実施例1で得た試料Aについて、以下の前処理を行った。即ち、試料Aを100g/Lのスラリーとし、試料Aに対して10モル%量の希硫酸(濃度2%)を添加して酸処理を行った。酸処理後のスラリーをろ過して前処理済みの試料Aを回収し、これを洗浄、乾燥し、700℃で2時間焼成した。更に、焼成後の試料Aに対して0.5質量%のエポキシシラン(KBM−403、信越化学社製)を添加し、ミキサーで乾式処理を行い、150℃で3時間、熱処理して有機物被覆を施して、試料A1を得た。
これらの樹脂組成物について、粘度・粘弾性測定装置(HAAKE RheoStress 6000、サーモサイエンティフィック社製)を用いて樹脂組成物の粘度を測定した。測定は下記条件で行い、コーン上に0.5mL程度の樹脂組成物を載せ、各回転数での粘度を測定した。流動性評価には、回転数が1rpmのときの粘度の値を使用し、比較を行った。
コーン:MP−20,C20/1H
測定温度:25℃
ギャップ:0.052 mm
回転数:1,2,5,10,20rpm
樹脂組成物を円形の型に流し込んで一晩静置した後、100℃で3時間加熱して硬化させて固化し、熱伝導率測定用ペレットを作製した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
上述の実施例2で得た試料Bを用いること以外は実施例4と同様にして酸処理、焼成、及び有機物被覆による前処理を行い、試料B1を得た。尚、試料Bの酸処理後の電子顕微鏡写真を図8に示す。図示したように、酸処理を行うことで六角柱の隣接する面の稜線及び頂点に相当する部分が曲面状となっている(六角柱の角が曲面状に面取りされている)ことが分かる。
試料B1を用いて、実施例4と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
上述の実施例5において、酸処理、焼成、及び有機物被覆を施した試料B1と、小粒径酸化亜鉛粒子(ハクスイテック社製、メジアン径0.5μm)とを体積比8:2の割合で混合した。これを用いて、実施例4と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
上述の実施例5において、酸処理、焼成、及び有機物被覆を施した試料B1と、小粒径酸化アルミニウム粒子(アドマテックス社製、メジアン径0.6μm)とを体積比8:2の割合で混合したものを調製した。これを用いて、実施例4と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
上述の実施例5において試料Bの焼成温度を700℃から900℃に変更した以外は、実施例5と同様にして、試料B2を得た。続いて、実施例6と同様にして、試料B2と小粒径酸化亜鉛粒子とを体積比8:2の割合で混合したものを調製した。これを用いて、実施例4と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
上述の実施例5において試料Bの焼成温度を700℃から1100℃に変更した以外は、実施例5と同様にして、試料B3を得た。続いて、実施例6と同様にして、試料B3と小粒径酸化亜鉛粒子とを体積比8:2の割合で混合したものを調製した。これを用いて、実施例4と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
上述の比較例1で得た試料Dについて、上述の実施例4と同様にして酸処理、焼成、及び有機物被覆を施し試料D1を得た。続いて、試料D1を用いて、実施例4と同様にして樹脂組成物を作製して、粘度及び熱伝導率を測定した。
上述の実施例4〜9、及び比較例3の結果から得られた、各実施例及び比較例の放熱性樹脂組成物の粘度を表4に示し、熱伝導率を表5に示す。
図示したように、実施例8又は実施例9の放熱性樹脂組成物のように、六角柱状で大粒径の酸化亜鉛粒子とともに小粒径酸化亜鉛粒子を併用し、且つ、六角柱状で大粒径の酸化亜鉛粒子の焼成温度を高めに設定(900℃、1100℃)することで、実用粘度領域(500Pa・s以下)での熱伝導率、中でも実用粘度領域のより低粘度の領域(200Pa・s以下)での熱伝導率を更に向上させることができる。特に、実施例9のように、六角柱状で大粒径の酸化亜鉛粒子の焼成温度を1100℃とすることで、実用粘度領域のより低粘度の領域(200Pa・s以下)で、3W/m・K程度の高い熱伝導率を実現することができる。
Claims (8)
- 塩基性化合物が存在した水系溶液で、層間にアニオンが配位された層状亜鉛化合物を熟成する工程を含む、酸化亜鉛粒子の製造方法。
- 大気圧下、90℃以上溶媒の沸点以下の温度で熟成する、請求項1に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
- 前記層状亜鉛化合物の前記アニオンが硫酸イオン[SO4 2−]である、請求項1又は請求項2に記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
- 前記塩基性化合物は酸解離定数(pKa)が9〜10である、請求項1ないし請求項3の何れかに記載の酸化亜鉛粒子の製造方法。
- 請求項1ないし請求項4の何れかに記載の方法で製造した酸化亜鉛粒子を酸又は塩基で処理する工程を含む、酸化亜鉛粒子の製造方法。
- 請求項1ないし請求項5の何れかに記載の方法で製造した酸化亜鉛粒子を700℃以上で焼成する工程を含む、酸化亜鉛粒子の製造方法。
- 請求項1ないし請求項6の何れかに記載の方法で製造された酸化亜鉛粒子と、樹脂又は基油とを混合する、放熱性組成物の製造方法。
- 前記酸化亜鉛粒子よりもメジアン径が小さい小粒径放熱フィラーを更に混合する、請求項7に記載の放熱性組成物の製造方法。
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