以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
(A:第1実施形態)
図1はこの発明の第1実施形態である無線端末装置の構成を示す図である。この無線端末装置は、例えばスマートフォンであり、第1の無線通信網である無線LANと第2の無線通信網である携帯電話網(より正確には、携帯電話網に含まれる移動パケット通信網)の2つの通信経路を各々別個に使用することができるように構成されている。
無線LANを介した通信は、アンテナ106、無線LAN無線部107、チャネル選択部108、キャリア検出部109、復調部112、復号化部113、無線LAN認証制御部128、符号化部119、および変調部120により実現される。
無線LANにおいてはMAC(Media Access Control)フレームと呼ばれるデータブロック単位でデータの送受信が行われる。図1の無線端末装置から無線LANのアクセスポイントへMACフレームを送信する場合、符号化部119は、送信対象のMACフレームを表すデジタルビット列を通信経路選択部127から受け取り、そのMACフレームに無線LANの規格に準じた符号化を施して変調部120に与える。変調部120は、符号化部119から与えられるデジタルビット列に無線LANの規格に準じて変調(例えば、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調など)を施し、この変調により得られた回路信号を無線LAN無線部107に与える。無線LAN無線部107は、変調部120の出力信号を通信電力へ変換してアンテナ106に与え、アンテナ106はその通信電力を空間へ放射する。これにより、無線端末装置からアクセスポイントへのMACフレームの送信が実現される。
これに対してアクセスポイントから送信されたMACフレームの受信は以下の要領で実現される。アンテナ106は、無線LANのアクセスポイントから受信した通信電力を無線LAN無線部107に与え、無線LAN無線部107は、この通信電力を回路信号に変換して、チャネル選択部108へ出力する。チャネル選択部108は、無線LAN無線部107の出力信号から特定チャネルのキャリア信号およびサブキャリア信号を抽出し、キャリア検出部109へ出力する。キャリア検出部109は、チャネル選択部108から出力されるキャリア信号およびサブキャリア信号の各々について通信電力が一定の閾値を超えているか否かを判定し、当該閾値を超える通信電力を有する信号のみを復調部112へ出力する。復調部112は、キャリア検出部109から出力される信号からデジタルビット列を復調し、復号化部113に与える。
復号化部113は、上記デジタルビット列に復号化を施し、符号化前のデジタルビット列(すなわち、無線LANのアクセスポイントから送信されたMACフレーム)を復元する。また、復号化部113は、復元したMACフレームについてCRC誤りの有無の判定、および再送フレームであるか否かの判定を行い、CRCエラー率およびフレーム再送率を算出して記憶部(図示略)に書き込む。ここで、CRC誤りとは、復元したMACフレームから算出されるチェックサムと当該MACフレームのヘッダ部に書き込まれているチェックサムとが一致しないことを言い、CRCエラー率とは、復元したMACフレームの個数に対するCRC誤りの発生したMACフレームの数を言う。また、フレーム再送率とは、復元したMACフレームの個数に対する再送処理により再送されたMACフレームの数を言い、再送処理により再送されたフレームであるか否かは当該フレームのヘッダ部を参照して判定することができる。復号化部113はフレーム再送率の算出を行う際には、送信先MACアドレス毎にその算出を行い、記憶部へのフレーム再送率の書き込みを行う場合には送信先MACアドレス毎に(すなわち、送信先MACアドレスと対応付けて)その書き込みを行う。
一般に無線LANのアクセスポイントから送信されるMACフレームは、無線LANへの参加のための認証手順に関わるコントロールフレームと、データ伝送に関わるデータフレームとに大別される。復号化部113は、復号化により自装置宛ての(すなわち、送信先MACアドレスが自装置のMACアドレスと一致する)コントロールフレームが得られた場合には、当該コントロールフレームを無線LAN認証制御部128に与え、自装置宛のデータフレームが得られた場合には当該データフレームを通信経路選択部127に与える。また、復号化部113は、復元されたMACフレームの送信先MACアドレスが自装置のものと一致しない場合には、当該フレームは自装置に宛てて送信されたものではないため、後段の各部への引渡しを行わずに当該フレームを破棄する。
無線LAN認証制御部128は、無線LANのBSS(Basic Service Set)へ参加のための認証手順、または、参加中のBSSから離脱するための処理を実行する。通信経路選択部127は、復号化部113や後述する復号化部124、或いは無線端末装置の制御部からMACフレームを与えられたことを契機として、その送信先MACアドレスに応じた転送制御等を行う。そして、実行履歴保持手段129には、無線LANのアクセスポイントとの無線通信のために、上記各部に実行させた制御イベント等を示す制御内容データ(特に、データリンク層における制御内容を示すデータ)が保持される。
一方、携帯電話網を介したデータ通信は、アンテナ121、携帯電話無線部122、復調部123、復号化部124、符号化部125および変調部126により実現される。
携帯電話網の基地局へデータを送信する場合、送信対象のデータを表すデジタルビット列が通信経路選択部127を経て符号化部125に与えられる。符号化部125は、通信経路選択部127から与えられるデジタルビット列に携帯電話網に適した符号化を施して変調部126へ与える。変調部126は、符号化部125から与えられるデジタルビット列を用いて携帯電話網のキャリア信号に変調を施して回路信号を生成し携帯電話網無線部122へ与える。携帯電話網無線部122は、上記回路信号を通信電力へ変換してアンテナ121に与える。アンテナ121はその通信電力を空間へ放射する。これにより無線端末装置から基地局へのデータの送信が実現される。
また、アンテナ121は、携帯電話網における基地局アンテナから送信された通信電力を受信すると、その通信電力を携帯電話無線部122に与える。携帯電話網無線部122は、アンテナ121から与えられる通信電力を回路信号へ変換して復調部123へ与える。復調部123は、入力された回路信号を復調して変調前のデジタルビット列を取り出し、復号化部124に与える。復号化部124は、復調部123から与えられるデジタルビット列から符号化前のデータを表すデジタルビット列を復号する。これにより、基地局から送信されたデータの受信が実現される。
本実施形態の無線端末装置は、無線LANを介したデータ通信を行う機能と携帯電話網を介したデータ通信を行う機能の他に、無線LANのアクセスポイントから送信される通信電力を測定する通信電力測定機能を有している。本実施形態では、この通信電力測定機能を利用して無線端末装置の利用者の勤務場所に敷設された無線LANのサイトサーベイ(すなわち、当該無線LANについての通信状態の良否の計測)が実現される。より詳細に説明すると、本実施形態の無線端末装置は、上記サイトサーベイを実現するための構成として、加速度センサ101、移動判定部102、計時部103、測定制御部104、無線制御部105、通信電力測定部110、BSSID判定部114、測定結果記録手段111、メール送信制御部115、メール送信部116、およびメール送信先情報保持手段118を有している。
無線制御部105と通信電力測定部110は、アンテナ106、無線LAN無線部107、チャネル選択部108、キャリア検出部109、復調部112、復号化部113、無線LAN認証制御部128、符号化部119、および変調部120とともに、無線LANの通信電力を測定する機能を実現する。つまり、本実施形態では、アンテナ106、無線LAN無線部107、チャネル選択部108、キャリア検出部109、復調部112、復号化部113、無線LAN認証制御部128、符号化部119、変調部120、アンテナ121、携帯電話無線部122、復調部123、復号化部124、符号化部125、変調部126、無線制御部105および通信電力測定部110は、無線LANの通信電力を測定する通信電力測定機能と、無線LANを介してデータの送受信を行う機能と、携帯電話網を介してデータの送受信を行う機能とを実現する無線通信手段の役割を果たす。
加速度センサ101、移動判定部102、および計時部103は、当該無線端末装置が移動中であるか否かを判定する判定手段の役割を果たす。また、計時部103、測定制御部104、無線制御部105、通信電力測定部110、BSSID判定部114、測定結果記録手段111、メール送信制御部115、メール送信部116、およびメール送信先情報保持手段118は、上記判定手段によって移動中ではないと判定されたことを契機としてその時点の無線端末装置の所在場所における通信電力を上記無線通信手段に周期的に計測させ、計測された通信電力の値とその測定位置を特定するための情報とを上記無線通信手段に所定の宛先へ送信させる測定制御手段の役割を果たす。以下、上記判定手段および上記判定制御手段を構成する各構成要素について説明する。
加速度センサ101は、例えば3軸加速度センサであり、無線端末装置に加わった外力に応じて生じる加速度を周期的に検出し、その加速度の大きさを示す加速度データを移動判定部102へ出力する。移動判定部102は、加速度センサ101から与えられる加速度データに基づいて、無線端末装置が移動しているか否かを判定し、その判定結果を示す判定結果信号を測定制御部104に与える。例えば、当該無線端末装置が移動していないと判定した場合には移動判定部102は、信号値が1の判定結果信号を測定制御部104に与え、その他の場合は信号値が0の判定結果信号を測定制御部104に与えるといった具合である。より詳細に説明すると、移動判定部102は、重力加速度の大きさを中心とする所定範囲に収まる大きさの加速度を表す加速度データを加速度センサ101から受け取ったことを契機として計時部103による計時を開始し、その状態(すなわち、加速度センサ101により検出される加速度の大きさが重力加速度を中心とする所定範囲に収まっている状態)が予め定められた時間(例えば、30分)に亘って継続した場合に、当該無線端末装置は移動していないと判定する。詳細については後述するが、測定制御部104は、信号値が1の判定結果信号を移動判定部102から受け取ったことを契機として通信電力の計測のための制御を実行する。
本実施形態において、加速度センサ101により検出された加速度の大きさが重力加速度を中心とする所定範囲に収まっている状態が予め定められた時間に亘って継続した場合に無線端末装置は移動していないと判定して通信電力の計測を行うようにした理由は以下の通りである。本実施形態の無線端末装置はスマートフォンであり、その電源をオンにした状態で利用者に携帯されることが多い。無線端末装置を携帯している利用者が歩行などの運動を行うと、その運動に応じた外力が無線端末装置に加わり、その外力に応じて生じる加速度が加速度センサ101によって検出される。一方、無線端末装置を携帯している利用者がデスクに着き業務を行っている場合や会議室の机に着き会議に参加している場合、休憩フロアで休憩をしている場合など、当該利用者がひとつの場所に留まっている場合には、上記加速度データの表す加速度の大きさは重力加速度の大きさと等しいか、またはその近傍の値となる。したがって、本実施形態では、無線端末装置を携帯している利用者が予め定められた時間にわたって一箇所に留まっている場合に通信電力の計測が行われる。前述したように、職場などにおいて利用者が移動せずにある場所に留まっている場合、自分のデスクに着いて業務を行っている状態にあることや、会議室で会議に参加中であることが考えられる。ここで、利用者が業務を行うデスクや会議室は、職場に敷設された無線LANを当該利用者が利用する可能性が高い場所と言える。つまり、本実施形態では、無線端末装置の利用者が無線LANを利用する可能性が高い場所の通信電力を効率よく測定することができるようにするために、加速度センサ101により検出された加速度の大きさが重力加速度を中心とする所定の範囲に収まっている状態が予め定められた時間にわたって継続したことを契機として通信電力の計測を行うようにしたのである。
本実施形態において、加速度データの表す加速度の大きさが重力加速度の大きさと等しい状態が予め定められた時間にわたって継続した場合のみならず、その近傍の値である場合も含むようにしたのは、利用者が資料に手を伸ばすなどの微細な運動を行った場合にその運動に起因して生じる微細な加速度によって当該利用者(当該利用者に携帯されている無線端末装置)が移動していると誤判断されることを回避するためである。なお、このような誤判断の発生を回避するために、加速度センサ101による検出値をそのまま用いるのではなく、加速度センサ101により周期的に検出される検出値の移動平均を用いるようにしても良い。
測定制御部104は、例えばCPUであり、無線端末装置の記憶部(図示略)に予め格納されている測定制御プログラムにしたがって測定制御手段を構成する他の構成要素の作動制御を行う。より詳細に説明すると、測定制御部104は、信号値が1の判定結果信号を移動判定部102から受け取ったことを契機として、当該無線端末装置が無線LANのBSSに参加しているか否かを無線LAN認証制御部128へ問い合せ、参加している場合にはそのBSSからの一時離脱を無線LAN認証制御部128へ指示をする。次いで、測定制御部104は、全無線チャネルについての通信電力の測定を無線制御部105へ指示をするとともに、通信電力の測定開始を移動判定部102へ通知をする。この通知を受けた移動判定部102は、それまでに計時した時間(移動判定のために計時した時間)のリセットを計時部103に対して指示し、計時部103はこのリセット指示に応じて、それまでに計時した時間をリセットする。
無線制御部105は、全無線チャネルの通信電力の測定指示を受け取ったことを契機として、チャネル選択部108および通信電力測定部110の作動制御を行う。チャネル選択部108は、無線制御部105による制御の下、全無線チャネルのうちの1つの無線チャネルを選択しその状態を一定時間に亘って維持する処理を全ての無線チャネルが選択されるまで繰り返す。通信電力測定部110は、チャネル選択部108により無線チャネルの選択が行われる毎にその無線チャネルにおける通信電力を測定する。より詳細に説明すると、チャネル選択部108によって無線チャネルの選択が為されると、まず、その無線チャネルにおける通信電力について所定の閾値を上回る通信電力を有する周波数成分を含んでいるか否かがキャリア検出部109によって判定される。キャリア信号検出部109は、上記閾値を上回る通信電力を有すると判定した周波数成分の信号を通信電力測定部110と復号化部113とへ出力する。通信電力測定部110は、無線制御部105による制御の下、キャリア検出部109から出力される信号の通信電力を測定し、その値を示す情報を測定制御部104に与える。
また、各無線チャネルにおける通信電力の測定と同時に、各無線チャネルにおける受信信号は、復号化部113によりMACフレームへ復号された後、BSSID判定部114へ出力される。BSSID判定部114は、入力されたMACフレームの内容を解釈し、このMACフレームが何れのアクセスポイントから送信されたものであるかを示す情報を測定制御部104へ出力する。より詳細に説明すると、BSSID判定部114は、復号化部113から与えられたMACフレームのヘッダ部に含まれるアクセスポイントのアドレス(BSSID)を読み出し、当該BSSIDを当該MACフレームの送信元を示す情報として測定制御部104へ出力する。
測定制御部104には、チャネル選択部108によって無線チャネルの選択が行われる毎に、通信電力測定部110により測定された通信電力の値を示す情報とその通信電力を放射したアクセスポイントのBSSIDとが入力される。測定制御部104は、通信電力を示す情報およびBSSIDを受け取る毎にその時点の時刻(すなわち、通信電力の測定時刻)を示す情報を計時部(図示略)から取得し、通信電力の値を示す情報とBSSIDとその測定時刻を示す情報とを無線チャネル毎に対応付けて測定結果記録手段111へ出力する。測定結果記録手段111は、例えばEEPROMであり、測定制御部104から与えられる通信電力の値を示す情報、BSSID、および測定時刻を示す情報を相互に対応付け、無線チャネル毎に記録する。
測定制御部104は、全ての無線チャネルの通信電力の測定を完了したことを契機として、測定が完了した旨の通知をメール送信制御部115に与える。メール送信制御部115は、上記通知を受け取ったことを契機として、測定結果に関する情報を所定の宛先へメールにより送信することをメール送信部116へ指示する。この測定結果に関する情報の送信先としては、例えば、無線LANの運用管理者のメールアドレスを指定しておけば良く、当該メールアドレスはメール送信情報保持手段118に予め記憶されている。
メール送信部116は、メール送信制御部115から与えられた指示に応じて測定結果記録手段111から測定結果に関する情報(すなわち、各無線チャネルについての通信電力、BSSIDおよび測定時刻を示す情報)を読み出し、当該情報を本文に書き込んだメールデータを作成し、電子メールまたはショートメールなどのメールシステムに応じたプロトコルを用いて所定の宛先へ送信する。メール送信部116から送信されたメールは、無線LAN通信網と携帯電話網のうち通信経路選択部127により選択される通信網を介して送信される。より詳細に説明すると、通信経路選択部127は、BSSへの参加状況に応じて無線LANまたは携帯電話網のいずれかの通信経路を選択する。すなわち、通信経路選択部127は無線LANのBSSに参加中であれば無線LANを選択し、無線LANのBSSに不参加であれば携帯電話網を選択する。本実施形態では、無線LANのアクセスポイントからの通信電力の測定中はBSSから離脱しているため、メールを送信する通信経路として携帯電話網が選択される。
このように、本実施形態では、通信状態の測定対象となる無線LANとは異なる携帯通信網を介して、通信状態の良否を示す指標(本実施形態では、通信電力)の測定結果が無線LANの運用管理者にメールで送信される。無線LANの運用管理者は、当該メールの本文を閲覧し、各無線チャネルの通信電力の測定が行われた時刻にどの場所に居たのかを無線端末装置の利用者に問い合わせることによって、その測定位置を特定し、当該測定位置における無線チャネルの通信状態(通信電力およびBSSの状況)を把握することができる。つまり、本実施形態において通信電力の測定時刻を示す情報は、その測定場所を上記運用管理者が特定することを可能にする、という役割を担っているのである。また、本実施形態では、通信状態の測定対象となる無線LANとは異なる無線通信網を介してその無線LANの運用管理者への測定結果の通知が行われる。このため、無線LANのアクセスポイントから送信される通信電力が充分ではない場合や他のアクセスポイントから送信される通信電力との干渉がある場合など、無線LANの通信状態が芳しくない場合であっても、測定結果を上記運用管理者へリアルタイムで通知することが可能になる。なお、携帯電話網を介した通信を行えない場合には、メール送信部116におけるメール送信処理はタイムアウトにより失敗することになる。この場合は、一定時間経過後に再度メール送信処理をメール送信部116に実行させるようにすれば良い。さらに、本実施形態においては無線端末装置が移動していないことを契機として通信状態の測定およびその測定結果の所定の宛先への送信が行われるため、これらの実行のために無線端末装置の利用者が何らかの操作を行う必要はない。
本実施形態では、無線端末装置が移動中ではないと判定したことを契機として、全無線チャネルの通信電力の測定を行ったが、無線端末装置が移動中ではないと判定される間は一定時間が経過する毎に通信電力の計測および計測結果の所定の宛先への送信を行うようにしても良い。このような態様によれば、利用者が一箇所に留まって業務を行っている間に各無線チャネルの通信電力が時々刻々変化する(すなわち、各無線チャネルの通信状態が時々刻々変化する)といった事象が発生したとしても、その事象を的確に捉えることが可能になる。なお、上記一定時間の計時については、計時部103に行わせて良く、当該一定時間の計時を行う第2の計時部を計時部103とは別個に設け、当該第2の計時部に行わせても良い。
また、本実施形態では、通信状態の良否を表す指標としてアクセスポイントから送信された通信電波の通信電力を用いたが、同アクセスポイントから送信されたフレーム(例えば、ビーコンフレーム)についてのCRCエラー率を用いても良く、また、同アクセスポイントから他の無線端末装置へ送信されたフレームについてのフレーム再送率を用いても良い。ここで、フレーム再送率として、アクセスポイントから他の無線端末装置へ送信されたフレームについてのフレーム再送率を用いるのは、本実施形態の無線端末装置は通信状態の良否を示す指標の計測に先立って参加中のBSSから離脱するため、指標の測定を開始した後に当該無線端末装置がアクセスポイントとの間でデータ通信を行うことはなく、当該無線端末装置宛にフレームの再送信が行われることはないからである。
例えば、通信状態の良否を示す指標としてCRCエラー率を用いる場合には、測定制御部104に以下の処理を実行させるようにすれば良い。すなわち、上記指標として通信電力を用いる場合と同様に、信号値が1の判定結果信号を移動判定部102から受け取ったことを契機として、参加中のBSSからの一時離脱を無線LAN認証部128に対して指示する処理、および通信状態の良否を示す指標の測定開始を移動判定部102に通知する処理を測定制御部104に実行させ、さらに記憶部に記憶されているCRCエラー率を初期化(ゼロクリア)する処理を実行させる。これは、通信状態の測定の開始以降に発生するCRCエラー率を集計するためである。以降、測定制御部104は、BSSID判定部114からBSSIDを受け取る毎に記憶部に記憶されているCRCエラー率を参照し、その測定時刻を示す情報とともに、当該BSSIDおよびCRCエラー率を測定結果記録手段111に与える。以降の処理は通信状態の良否を示す指標として通信電力を用いた場合と同一である。
また、通信状態の良否を示す指標としてフレーム再送率を用いる場合には、測定制御部104に以下の処理を実行させるようにすれば良い。すなわち、上記指標として通信電力を用いる場合と同様に、信号値が1の判定結果信号を移動判定部102から受け取ったことを契機として、無線LAN認証部128に対して参加中のBSSからの一時離脱を指示する処理、および通信状態の良否を示す指標の測定開始を移動判定部102に通知する処理を測定制御部104に実行させ、さらに記憶部に記憶されているフレーム再送率を初期化(ゼロクリア)する処理を実行させる。これは、通信状態の測定の開始以降に発生するフレーム再送率を集計するためである。以降、測定制御部104は、BSSID判定部114からBSSIDを受け取る毎に記憶部に送信先MACアドレス毎に記憶されているフレーム再送率を参照し、その測定時刻を示す情報とともに、当該BSSID、送信先MACアドレスおよびフレーム再送率を測定結果記録手段111に与える。以降の処理は通信状態の良否を示す指標として通信電力を用いた場合と同一である。ここで、測定結果記録手段111に与える情報に送信先MACアドレスを含めるようにしたのは、フレーム再送の発生している場所を無線LANの運用管理者が特定できるようにするためである。より詳細に説明すると、無線LANの運用管理者は、フレーム再送率とともに送信された送信先MACアドレスに基づいて無線端末装置およびその利用者を特定し、当該フレーム再送率とともに送信された測定時刻を示す情報に基づいて当該利用者に対してその測定時刻に何処に居たのかを問い合せることで、当該無線端末装置の位置を特定することができる。
通信状態の良否を示す指標としてCRCエラー率を用いると、通信状態の測定位置における他のアクセスポイントから送信された通信電波による干渉の有無を把握することが可能になる。CRCエラーは、他のアクセスポイント或いは他の無線端末装置から送信された通信電波による干渉に起因してフレームが破壊された場合に発生することが多いからである。また、通信状態の良否を示す指標としてフレーム再送率を用いると、本発明に係る無線端末装置の周囲でアクセスポイントとの通信を行っている他の無線端末装置の位置における電波状況を把握することが可能になる。つまり、通信状態の良否を示す指標として通信電力或いはCRCエラー率を用いた場合には、その測定位置における通信状態を把握することが可能になり、当該指標としてフレーム再送率を用いた場合にはその測定位置の周辺における通信状態を把握することが可能になる。つまり、通信電力とCRCエラー率は、無線端末装置の利用者による無線LANの利用頻度が高いと推定される場所(一点)における通信状態の良否を各々異なる観点(電波が充分な強度で届いているか否かという観点と他のアクセスポイントからの干渉を受けていないかという観点)から表す指標であり、フレーム再送率は無線端末装置の利用者による無線LANの利用頻度が高いと推定される場所の周囲における通信状態の良否を表す指標である。したがって、通信電力、CRCエラー率およびフレーム再送率の3つの指標のうちの任意の2つ或いは3つ全てを測定することで、当該無線LANの通信状態の評価を精度良くかつ多面的に行うことが可能になる。
(B:第2実施形態)
図2は本実施形態の第2実施形態の無線端末装置の構成を示す図である。図2に示す無線端末装置も前掲図1の無線端末装置と同様に、無線LANの通信状態の良否を示す指標として当該無線LANのアクセスポイントから送信された通信電波の通信電力を測定する装置である。なお、本実施形態においても通信状態の良否を示す指標としてCRCエラー率やフレーム再送率を用いても良いことは言うまでも無い。図2では、図1におけるものと同一の構成要素には同一の符号が付されている。図2と図1とを比較すれば明らかなように、本実施形態の無線端末装置は測定結果判断手段130を有する点が第1実施形態の無線端末装置と異なる。
測定結果判断手段130は、測定結果記録手段111に記録されている情報を参照し、通信状態の良否を示す指標の測定結果に異常があるか否かを判定する。測定結果に異常がある場合としては、通信状態の良否を示す指標の測定を行えなかった場合(通信電力の大きさやCRCエラー率、フレーム再送率を示す情報が記録されていない場合)や、異常な値の指標が測定された場合(予め定められた閾値を下回るなど極端に低い通信電力が測定された場合や、予め定められた閾値を上回るなど極端に高いCRCエラー率や極端に高いフレーム再送率が測定された場合)が考えられる。そして、測定結果判断手段130は、異常ありと判定した場合には、さらに、どのような種類の異常(通信電力が全く測定されない、極端に低い通信電力が測定されたなど)であるかを分類し、その異常の種類に応じた管理情報を作成する。この管理情報には、例えば、異常の発生を知らせる情報、電波状況の変化を管理者へ促す情報、問題に対処する優先度を示す情報などがある。測定結果判断手段130は、上記の要領で生成した管理情報を測定結果記録手段111へ追記するとともに管理情報を所定の宛先へ送信する旨の指示を測定制御部104に対して与える。以下、測定結果の送信と同様に、管理情報についてメールが作成され所定の宛先へ送信される。
本実施形態によれば、通信状態の良否を示す指標の測定を行えないなどの異常が発生した場合に、その異常に対処するための管理情報が所定の宛先(無線LANの運用管理者の端末など)へ速やかに送信される。このため、本実施形態によれば、無線LANの運用管理者は自身の管理対象の無線LANにおける異常の発生を速やかに把握し、上記管理情報を参考にしつつその異常に対して速やかに対処することが可能になる。また、無線LANを介した通信の制御に関する実行履歴や無線端末装置の機器情報などを、上記管理情報に含めても良く、管理者からの指示があった場合にのみこれら実行履歴や機器情報を管理者へ送信するようにしても良い。
(C:第3実施形態)
上述した第1実施形態では、通信状態の良否を示す指標の測定位置を無線LANの運用管理者に特定させるための情報としてその測定を行った時刻を示す情報を用い、その測定時刻にどの場所に居たのかを無線端末装置の利用者に問い合わせることで、その測定場所の特定を実現した。しかし、このような特定方法では、上記指標を測定した場所を正確に特定することが難しい場合もある。そこで、通信状態の良否を示す指標の測定場所を示す情報を取得する構成を無線端末装置に付加しても良い。図3は本発明の第3実施形態の無線端末装置の構成例を示す図である。図3においても図1におけるものと同一の構成要素には同一の符号が付されている。図3と図1とを対比すれば明らかなように、本実施形態の無線端末装置は、自装置の現在位置を示す情報を取得する現在位置取得手段117を有している点が第1実施形態の無線端末装置と異なる。なお、以下では、通信状態の良否を示す指標として無線LANのアクセスポイントから送信される通信電波の通信電力を用いる場合について説明するが、当該通信電力に換えて(或いは当該通信電力とともに)CRCエラー率またはフレーム再送率(或いは、CRCエラー率とフレーム再送率の両者)を用いても良いことは勿論である。
図4は、現在位置取得手段117の構成の詳細を示す図である。相対位置保存手段302は、ある原点に対する相対的な無線端末装置の現在位置(すなわち無線端末装置を所持している利用者の現在位置)を示す座標情報を保持する。原点とは、各位置で測定した通信電力を物理的な地図にマッピングする際の基準となる位置のことをいう。この原点は、例えば、利用者の職場の部屋の隅あるいは中心など、利用者が無線LANを利用する無線利用範囲内のどこか一箇所に無線LANの運用管理者によって予め定められる。原点リセット手段301は、上記原点を設定する操作を利用者に行わせるためのものである。この原点リセット手段301としては、例えば通信電力の測定を実現するアプリケーションプログラムにしたがって実現されるソフトウェアボタンが挙げられる。本実施形態の無線端末装置の利用者は、職場へ出勤すると、まず、無線LANの運用管理者によって定められた原点に対応する場所へ行き、原点リセット手段301に対して原点設定のための操作を行う。すると、相対位置保持手段302は、それまで保持していた座標情報を、原点を示す所定の座標情報(例えば、(0,0))にリセットする。
上記のようにして原点のリセットが行なわれると、以後、ノイズ除去部304は、加速度センサ101から出力される加速度データの移動平均値を計算し、移動距離計算部307と移動方向判定部306へ出力する。前述したように、加速度の値の移動平均値を計算することで、利用者の微細な運動に伴って生じる加速度の影響を取り除くことができるからである。移動距離計算部307は、重力加速度を中心とする所定範囲には収まらない加速度を表すデータがノイズ除去部304より与えられたことを契機として時間計測手段305による計時を開始し、上記所定範囲に収まる加速度を表すデータがノイズ除去部304から与えられるまで(すなわち、無線端末装置の利用者が移動を止めるまで)に計時された時間とその間にノイズ除去部304から受け取った情報とから、利用者の移動距離を計算し、現在位置計算部308および移動方向判定部306へ出力する。
方位センサ303は、例えば、地磁気センサであり、無線端末装置が向いている方向を周期的に検出し、その方位を示す情報を移動方向判定部306へ順次に出力する。移動方向判定部306は、方位センサ303から周期的に出力される情報の示す方位とノイズ除去部304から与えられる加速度の移動平均値とから、相対位置保存手段302に保持されている情報の示す位置から見た利用者の移動方向を判定し、現在位置計算部308へ出力する。
現在位置計算部308は、移動距離計算部307から入力された移動距離を示す情報と移動方向判定部306から入力された移動方向を示す情報とから、相対位置保存手段302に保持されている情報の示す位置から見た相対的な現在位置を計算し、相対位置保存手段302へ出力する。例えば、南北方向を一方の座標軸とし東西方向を他方の座標軸とする二次元座標平面を用い、原点から見て北方向および東方向の移動をプラス方向の移動としてサイトサーベイの結果を表示する場合には、上記移動距離を南北方向の移動距離と東西方向の移動距離とに分解して現在位置を算出する処理を現在位置計算部308に実行させるようにすれば良い。相対位置保存手段302は、新たな現在位置を示す情報を受け取ったことを契機として、それまで保持していた情報を当該新たな情報で更新する。このように、無線端末装置を携帯する利用者の現在位置(予め定めた原点から見た相対位置)を示す情報が相対位置保持手段302に格納されているため、通信状態の良否を示す指標の測定位置を特定する際には、相対位置保持手段302に格納されている情報を参照すれば良い。
なお、本実施形態では、加速度センサ101により検出された加速度の大きさおよび方位センサ303により検出された無線端末装置の向きに基づいて無線端末装置の利用者の現在位置を計算より算出したが、全地球測位システム(GPS)を使用して現在位置を特定する構成としても良い。
また、本実施形態のように現在位置取得手段117を無線端末装置に設ける場合には、通信状態の測定を行う領域を予め定めておき、現在位置取得手段117により取得された情報の表わす現在位置が当該領域内である場合にのみ、測定制御部104に通信状態の測定を行わせるようにしても良い。例えば、上記領域として、利用者の職場に相当する領域を定めておくといった具合である。このようにすれば、利用者が特定の領域(例えば職場内)にいる場合にのみ通信状態の測定が行われ、特定の領域以外(例えば自宅など)にいる場合は測定が行われず、無駄な通信状態の測定を回避することが可能になる。
(D:第4実施形態)
上述した各実施形態では、無線LANの通信状態の良否を示す指標として当該無線LANのアクセスポイントから送信される通信電波の通信電力を用い、当該指標の測定制御を測定制御部104に実行させるための測定制御プログラムが無線端末装置の記憶部(図示略)に予め記憶されていた。しかし、無線LAN或いは携帯電話網に設けられたサーバ装置からのダウンロードにより測定制御プログラムを取得して記憶部に記憶させる(或いは、既存の測定制御プログラムに上書きする)処理を無線端末装置に実行させても良い。このような態様によれば、測定対象の指標の切り換えや測定制御プログラムのバージョンアップ、本発明に係る通信状態測定機能の新規追加などを容易に行うことが可能になる。また、無線LANの運用管理者から与えられる指示に応じて、測定制御プログラムや測定結果の分析等を行うプログラム(以下、両者をまとめて「測定プログラム」と総称する)をダウンロードして実行する測定プログラム管理機能を無線端末装置に付与しても良い。本発明の第4実施形態は、上記測定プログラム管理機能を無線端末装置に設けたことを特徴とする。以下、携帯電話網に設けられた上記サーバ装置から新たな測定プログラムをダウンロードする場合を例にとって本発明の第4実施形態を説明する。
図5は、本実施形態の無線端末装置の構成例を示す図である。IPパケット送受信部201は、携帯電話網に接続されている他の装置(例えば、無線LANの運用管理者が使用する管理者用端末や上記サーバ装置)との間でIPパケットの送受信を行う。IPパケット送受信部201は、新たな測定プログラムのダウンロードの実行を指示するIPパケットを受信すると、このIPパケットを測定プログラム管理部202に引き渡す。
測定プログラム管理部202は、測定プログラムの記憶および実行を管理する機能部である。測定プログラム管理部202は、新たな測定プログラムのダウンロードの実行を指示するIPパケットを受け取ると、アプリケーションプログラム管理部205に対し、当該IPパケットによりダウンロードを指示されたプログラムを上記サーバ装置からダウンロードするように指示をする。
アプリケーションプログラム管理部205は、無線端末装置に記憶されている全てのアプリケーションプログラムの管理を行う機能部である。アプリケーションプログラム管理部205は、測定プログラム管理部202から新たなプログラムのダウンロードを指示されると、ファイル転送制御部203に対し、当該プログラムを上記サーバ装置からダウンロードするように指示をする。
ファイル転送制御部203は、FTPなどのファイル転送制御を行う機能部である。ファイル転送制御部203は、アプリケーションプログラム管理部205から指示されたプログラムのダウンロードを実行する。このとき、不当なサーバ装置から不当なプログラムを取得しないよう、インストール認証制御部204は、正当なサーバ装置であることおよび正当なプログラムであることを証明する旨の電子署名を確認する。ファイル転送制御部203によってダウンロードされたプログラムは、アプリケーションプログラム保持手段206に保持される。
アプリケーションプログラム管理部205は、プログラムのダウンロードに成功すると、測定プログラム管理部202へダウンロードが完了した旨を通知する。ダウンロードが完了した旨の通知を受けた測定プログラム管理部202は、ダウンロードが完了すると即座に或いはアプリケーションプログラム管理部205から与えられる指示に応じて、測定プログラム実行制御部207に対し当該プログラムの実行を指示し、測定プログラム実行制御部207はアプリケーションプログラム実行制御部208に対し当該プログラムの実行を指示する。この指示を受けたアプリケーションプログラム実行制御部208は、その時点で実行中の他のプログラムの実行を止めてダウンロードしたプログラムを実行するか、または、マルチタスキングにより他のプログラムと並列に当該ダウンロードしたプログラムを実行する。
例えば、上記サーバ装置から新たな測定プログラムをダウンロードする前は、無線LANの通信状態の良否を示す指標として通信電力を用い、その測定の際に、受信した無線フレームが当該BSSからのビーコンであるか判断する処理(図6参照)、およびBSSの参加状態を解除する処理(図7参照)、を測定制御部104に実行させる測定プログラムが無線端末装置に記憶されていたとする。この測定プログラムを実行中の無線端末装置では、無線フレームの受信を契機として以下の処理が実行される。まず、受信した無線フレームについてCRC誤りの有無が判定され(図6:ステップSA100)、その判定結果が“Yes”である場合(すなわち、CRC誤りがあると判定された場合)には、当該フレームは破棄される。(ステップSA110)。逆に、ステップSA100の判定結果が“No”である場合は、受信した無線フレームがコントロールフレームである否かの判定が為され(ステップSA120)、その判定結果が“No”である場合(すなわち、受信した無線フレームがデータフレームである場合)には、データフレームに関する処理が実行される(ステップSA130)。ステップSA120の判定結果が“Yes”である場合には、当該無線端末装置が参加しているBSSからのビーコンであるか否かが受信した無線フレームの内容に基づいて判定され(ステップSA140)、その判定結果が“No”である場合には、他のBSSからのビーコンであるとして参加状態の判断を終了する。逆に、ステップSA140の判定結果が“Yes”である場合には、接続保護カウンタを予め定めた値にリセットする処理が実行される(ステップSA160)。
接続保護カウンタとは、図7に示すように、BSSに参加している状態を維持するか否かを判断するために用いられるカウンタである。図7に示すように、接続保護カウンタはインターバルタイマにしたがってカウントダウンされ(ステップSB100)、一定値を下回ると(図7:ステップSB110:No)、BSSへの参加状態が解除される(ステップSB120)。逆に、接続保護カウンタの値が一定値まで達していない場合(図7:ステップSB110:Yes)、BSSに参加している状態は維持される。接続保護カウンタの値が一定値までカウントダウンされる前に、参加中のBSSから送信されるビーコンを正常に受信すれば、接続保護カウンタのカウントダウンが所定の値にリセットされ、当該BSSへの参加状態が継続される。
ここで、BSSへの参加状態が誤って解除されるという障害が発生した場合を考える。BSSへの参加状態が誤って解除されるという現象は、接続保護カウンタが上記一定値を下回る値までカウントダウンされた場合に発生し、その原因としては以下の(a)、(b)、および(c)が考えられる。
(a)無線端末装置の位置にアクセスポイントからの通信電力が届いておらず、参加中のBSSのビーコンを検出できなかった。
(b)通信電力は届いているものの、CRC誤りが発生し、上記ビーコンを検出できなかった。前述したように、このような事象は他のBSSからの干渉により他のBSSの無線フレームと当該BSSの無線フレームとの衝突が生じた場合などに起こり得る。
(c)上記ビーコンは正しく検出されたものの、無線端末装置側の端末制御において予期せぬ不具合が発生し、接続保護カウンタが上記一定値を下回る値までカウントダウンされた。
無線LANの運用管理者が、無線端末装置から送信されたメールを管理者用端末を用いて閲覧し、当該メールに含まれている管理情報に基づいて上記障害の発生を把握すると、その障害の原因が上記(a)、(b)および(c)の何れであるのかを切り分けるため、新たな測定プログラム(図6に示す処理に換えて図8に示す処理を無線端末装置に実行させるプログラム)のダウンロードを指示するIPパケットを当該管理者用端末から上記無線端末装置へ送信させる。上記無線端末装置では、このIPパケットの受信を契機として測定プログラムの更新が実行される。
図8と図6とを対比すれば明らかなように、図8に示す処理は、ステップSA100の判定結果が“Yes”である場合に、ステップSA110の処理に先立ってステップSC100〜ステップSC150の処理が実行される点と、ステップSA140の判定結果が“Yes”である場合に、ステップSA160の処理に先立ってステップSC160およびステップSC170の処理が実行される点が図6に示す処理と異なる。図8のステップSC100では、CRCエラーの発生を示すバックトレース情報が記録される。次に実行されるステップSC110では、受信したフレームに対するCRC誤りの割合であるCRCエラー率の計算および当該CRCエラー率をバックトレース情報として記録する処理が実行される。つまり、図8に示すプログラムは、通信状態の良否を示す指標としてCRCエラー率を計測するためのプログラムである。次に実行されるステップSC120では、CRC誤りがあると判定されたフレームから可能な限りMACヘッダ情報を取り出すことが試みられる。そして、MACヘッダ情報を取得できない場合(図8:ステップSC130:No)には、前述したステップSA110の処理が実行され、MACヘッダ情報を取得できた場合(ステップSC130:Yes)は、さらに、そのMACヘッダ情報から当該参加しているBSSのビーコンの取り出しが試みられる。当該BSSからのビーコンを取り出せなかった場合(ステップSC140:No)には前述したステップSA110の処理が実行され、逆に取り出せた場合には、そのビーコンを示す情報をバックトレース情報として記録(ステップSC150)した後に当該フレームを破棄する処理が実行される。また、図8に示す処理において、ステップSA140の判定結果が“Yes”である場合に後続して実行されるステップSC160では、参加中のBSSのビーコンが取得された旨のバックトレース情報が記録され、このステップSC160に後続して実行されるステップSC170では、その時点の保護カウンタ値(すなわち、前回のビーコンの検出からの経過時間を示す値)をバックトレース情報として記録する処理が実行され、その後、ステップSA160の処理が実行される。
図8に示す処理を実行させた結果、バックトレース情報が全く記録されていないのであれば、無線端末装置は無線フレームを全く受信していないということであるから、無線端末装置によって通信電力の測定が行われた位置にアクセスポイントからの通信電力が届いていないと判断することができる。したがって、バックトレース情報の記録の有無によってBSSの参加状態の解除の原因が上記原因(a)であるか否かを切り分けることが可能になる。
これに対してバックトレース情報が記録されている場合には、そのバックトレース情報を参照して原因(b)および原因(c)の切り分けをすることができる。例えば、CRCエラーが検出された旨およびCRCエラー率が記録されているのであれば、原因(b)によってBSSの参加状態が解除されたと判断することができる。CRCエラーが発生した場合であっても、フレームのMACヘッダ情報が破壊されていない限り、当該BSSからのフレームであるか否かの判断をすることができ、原因(b)による参加解除であるか否かの補助情報とすることができる。また、ビーコンが検出された旨のバックトレース情報が記録されている場合には、原因(c)によりBSSの参加状態が解除されたと判定することができる。この場合は、さらに、前回のビーコンを検出してからどれくらいの時間が経過したかを示す情報も記録されており、さらに詳細に原因切り分けするための補助情報として利用することもできる。
このように本実施形態によれば、BSSの接続状態が解除されるといった障害の発生をトリガとして測定プログラムの更新が実行され、接続解除の原因を追究するための追加情報(通信電力とは異なる観点で無線LANの通信状態の良否を示す指標、本実施形態ではCRCエラー率)を自動的に収集することが可能になり、異常や障害の原因の特定および切り分けを迅速に行うことが可能になる。また、得られた追加情報に基づいてさらに詳しい調査を行う測定プログラムを無線端末装置にダウンロードさせて実行させることにより詳細な情報を得ることも可能である。
(E:第5実施形態)
上記各実施形態では、通信状態の良否を示す指標の測定結果の通知先が管理者用端末である場合について説明した。しかし、上記第4実施形態におけるサーバ装置を上記測定結果の通知先としても勿論良い。このような態様によれば、無線端末装置から通知された測定結果に基づいて詳細分析の必要の有無を上記サーバ装置に判定させ、詳細分析のためのプログラムのダウンロードおよび実行を自動化することが可能になる。図9は、本実施形態のサーバ装置の構成を示すブロック図である。なお、図9では、無線端末装置から送られるメールは外部のメールサーバへ蓄積され、図9に示すサーバ装置はそのメールサーバからメールを取得する構成となっている。
IPパケット送受信部402は、ネットワーク通信部401を通じて、無線端末装置またはメールサーバとの間でネットワーク層の通信を行う。メール取得制御部403は、POP3などのメール取得プロトコルを用いてIPパケット送受信部402を介してメールサーバからメールを取得し、メール解析部404へ送る。メール解析部404は、メールのヘッダおよび本文を解析し、当該メールに記載されている情報を通信状態の測定結果を示す情報、警告を示す情報、および実行履歴を示す情報に分類する。そして、メール解析部404は、通信状態の測定結果を示す情報を測定結果解析部405へ、警告を示す情報を警告情報解析部406へ、実行履歴を示す情報を端末実行履歴解析部407へそれぞれ出力する。
測定結果解析部405は、通信状態の測定結果を示す情報の内容をその測定位置毎および測定時刻毎に分類し、再利用可能なファイル形式に変換して測定結果蓄積手段408に記録する。測定結果蓄積手段408に蓄積された情報は、管理者の状況把握のために活用される。電波状況可視化図生成部409は、測定結果蓄積手段408に蓄積された情報を読み出し、例えば無線LANのサービスエリアの地図(利用者の職場に敷設された無線LANである場合には、その職場のフロアマップなど)を示す情報に重ね合わせ、利用者が滞在していた位置および時刻における通信状態の良否を示す指標の値およびその変化の状況を表した図を作成する。電波状況可視化図作成部409にて作成された図は、電波状況表示部410へ出力される。電波状況表示部410は、管理者が操作するグラフィカルユーザインターフェースなどのユーザインターフェイス部411を通じて、上記図を管理者へ表示する。
警告情報解析部406は、警告を示す情報の内容を解析し、再利用可能なファイル形式に変換して警告情報蓄積手段412へ記録する。警告表示部413は、警告情報蓄積手段412に蓄積された情報を読み出し、ユーザインターフェイス部411を通じて、警告を示す情報を管理者へ表示する。
端末実行履歴解析部407は、無線端末装置の実行履歴を示す情報の内容を解析し、再利用可能なファイル形式に変換して端末実行履歴蓄積手段414へ記録する。端末実行履歴手段414に記録された実行履歴を示す情報は、必要に応じて管理者により読み出され参照される。
測定プログラム選択部415には、測定結果解析部405、警告情報解析部406および端末実行履歴解析部407から各々の解析結果を示す情報が入力される。測定プログラム選択部415は、例えばそれまで受信できていたビーコンが突然受信できなくなった場合などの特徴的な状況の変化や異常の発生を上記各解析結果を示す情報を分析して検出する。測定プログラム選択部415は、検出された状況の変化や異常と、測定プログラム選択条件保持手段416に保持されている条件とを照合し、該当する条件に対応する測定プログラムを選択する。測定プログラム選択部415は、測定プログラム転送制御部417に対し、選択した測定プログラムのダウンロードを指示する旨のIPパケットを無線端末装置へ送信するよう指示をする。なお、無線端末装置に対して測定制御プログラムのダウンロードを指示するのではなく、当該測定プログラムを直接無線端末装置へ送信し、その記憶および実行を指示するようにしても良い。
ファイル転送制御部419は、無線端末装置から受信したダウンロード要求、或いは測定プログラム転送制御部417からの指示に応じて、測定プログラム保持手段420から無線端末装置へ送信する測定プログラムを読み出し、IPパケット送受信部402およびネットワーク通信部401を介して無線端末装置へ送信する。インストール認証制御部418は、無線端末装置からの認証要求に対して応答し、認証に関して必要な情報の交換等を行う。
このように本実施形態によれば、無線端末装置にて取得した各種情報に基づいて無線LANの通信状態に特徴的な変化や異常などが現われた場合に、その変化や異常に対処するための測定制御プログラムが無線端末装置へ自動的に送信され、当該変化や異常に迅速に対処することが可能になる。
(F:変形)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、これら実施形態に以下の変形を加えても勿論良い。
(1)上記各実施形態の無線端末装置は無線LAN(第1の無線通信網)と携帯電話網(第2の無線通信網)の両方を使用可能に構成されていた。ここで、第2の無線通信網は、携帯電話網には限定されず、上記無線LANとは異なる規格に準拠した無線LANやこの無線LANに接続されたインターネット網などであっても良い。第2の無線通信網がインターネット網である場合には、第1の無線通信網についての通信状態の測定結果を所定の宛先へ送信するためのメールの送受信についてフリーメールサービスなどを利用しても良い。
(2)上記各実施形態では、第1の無線通信網(上記各実施形態では無線LAN)を介してデータの送受信を行う機能と、この第1の無線通信網における通信電力を測定する機能と、第1の無線通信網とは異なる第2の無線通信網を介してデータの送受信を行う機能を担う無線通信手段を有する無線端末装置に本発明を適用した。しかし、通信電力の測定対象である第1の無線通信網とは異なる第2の無線通信網を介してデータの送受信を行う機能は必ずしも必要ではない。換言すれば、上記各実施形態におけるアンテナ121、携帯電話無線部122、復調部123、復号化部124、符号化部125および変調部126は本発明に係る無線端末装置の必須構成要素ではなく、省略可能である。上記各実施形態の無線端末装置が携帯電話網を介したデータ通信を行う機能を有していない場合には、無線LANにおける通信電力の測定完了後、BSSへ復帰したことを契機として無線LAN経由でその測定結果を示す情報を所定の宛先へ送信するようにすれば良い。つまり、無線通信網における通信状態の良否を示す指標の計測および前記無線通信網を介したデータの送受信を行う無線通信手段を有する無線端末装置であれば、本発明を適用し、自装置が移動中であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により移動中ではないと判定されたことを契機として前記無線通信網の通信状態の良否を示す指標を測定するように前記無線通信手段を制御するとともに、測定位置を特定し得る情報または測定位置を示す情報と測定された指標とを所定の宛先へ送信するように前記無線通信手段を制御する計測制御手段とを設けることで、先に述べた課題を解決することができる。
(3)上記各実施形態では無線端末装置としてスマートフォンを用いる場合について説明した。スマートフォン等の携帯端末は、無線通信網における通信状態の良否を示す指標の計測および前記無線通信網を介したデータの送受信を行う無線通信手段の他に、加速度センサ、方位センサなどを標準的に備えているため、本発明の実施に格別に好適だからである。しかし、本発明の適用対象はスマートフォンに限定されるものではなく、プログラム実行機能を備えた一般的な携帯電話機やタブレット端末などの携帯端末装置であれば適用可能である。要は、無線通信手段の他に、判定手段を実現するための構成(加速度センサや方位センサなど)と測定制御手段を実現するための構成(例えば、プログラム実行手段)とを備えた電子機器であれば良い。