以下、本開示の一側面に係る画像処理システム、画像処理方法及びコンピュータプログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本開示の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は、実施形態に従った電磁界測定システムの概略構成を示す図である。
図1に示すように、電磁界測定システム1は、電磁界センサ100、第1電流センサ140、第2電流センサ150、第1A/D変換器160、第2A/D変換器170、第3A/D変換器180及び情報処理装置200等を有する。
電磁界センサ100は、アンテナ部110及び軸部120等を有し、アンテナ部110の周囲に存在している電界又は磁界を測定する。本実施形態の電磁界センサ100は、シールデッドループアンテナであり、アンテナ部110の周囲に存在している磁界、即ちアンテナ部110の周囲に配置された測定対象の電子電気機器から発生した磁界を測定する。
アンテナ部110は、環状の構造体により形成され、開口111を有する。アンテナ部110には、軸部120がアンテナ部110の二つの端部(環状の構造体において相互に近接する端部)から延伸するように形成され、開口111は軸部120から最も離れた位置に設けられる。なお、開口111が設けられる位置は、軸部120から最も離れた位置に限定されず、アンテナ部110の任意の位置でよい。
軸部120は、アンテナ部110の二つの端部からそれぞれ延伸する二つの直線状の構造体により形成される。二つの直線状の構造体の長さは、略同一であり、一方の構造体においてアンテナ部110から最も離れた端部123にはケーブル124を介して第1A/D変換器160が接続され、他方の構造体においてアンテナ部110から最も離れた端部は終端されている。
図2は、アンテナ部110及び軸部120の構造について説明するための模式図である。なお、アンテナ部110及び軸部120は、同様の構造体で一体に形成されているため、図2には、代表して軸部120の構造についてのみ示す。
図2に示すように、アンテナ部110及び軸部120は、内部導体131を絶縁体132を介して外部導体133で覆った構造体で形成された同軸ケーブルである。内部導体131及び外部導体133は、金属等の伝導体で形成され、電流を伝搬する。一方、絶縁体132は、ポリエチレン等の絶縁体で形成され、電流を伝搬しない。なお、内部導体131と外部導体133の間を中空とし、内部導体131と外部導体133が相互に接触しないようにしてもよい。即ち、絶縁体132として、固体でなく気体(空気)が用いられてもよい。
電磁界センサ100において、外部導体133の外側面136には、電磁界センサ100の外部に存在する電磁界によるノイズが誘起し、そのノイズによる電流(N)が流れる。このノイズとは、測定対象の電子電気機器から発生した電磁界を含む全ての電磁界によって軸部120に誘起したノイズを意味する。一方、外部導体133の内側面135、及び、内部導体131の外側面134には、アンテナ部110の周囲に存在している磁界により内部導体131に誘起した電流と、ノイズにより外部導体133から開口111を介して内部導体131に流入した電流とが流れる。なお、外部導体133の内側面135と内部導体131の外側面134には、それぞれ大きさが同じであり且つ向きが逆である電流(A、−A)が流れる。
なお、シールデッドループアンテナでは、外部の電界による影響を受けないように、内部導体131は外部導体133により遮蔽されている。しかしながら、内部導体131を外部導体133で完全に遮蔽すると、磁界が発生したときにその磁界によって内部導体131に電流が流れ、その電流によってさらに磁界が発生するため、適切に磁界を測定できなくなる。これを防ぐために、シールデッドループアンテナには、開口が設けられている。なお、開口111は、外部導体133のみを切断し、絶縁体132を露出させるものである。または、開口111は、外部導体133及び絶縁体132を切断し、内部導体131を露出させるものでもよい。
図1に戻って、第1電流センサ140は、第1フェライトコア141及び第1磁界センサ142等を有する。第1フェライトコア141は、軸部120の外部導体133の第1位置121の周囲に設けられる。第1磁界センサ142は、第1環状部143及び第1軸部144を有する。第1環状部143は、電磁界センサ100のアンテナ部110及び軸部120と同様の同軸構造を有し、且つ、開口部を有している。第1軸部144の一端には第1環状部143が接続され、第1軸部144の他端には第1ケーブル145を介して第2A/D変換器170が接続される。第1環状部143及び第1フェライトコア141は、第1環状部143が第1フェライトコア141の上端から下端まで通過し、且つ、第1フェライトコア141が第1環状部143の中空部を通過するように、設けられている。
電磁界センサ100の軸部120の第1位置121に電流が流れると、第1フェライトコア141の円周方向に磁界が発生し、その発生した磁界により第1磁界センサ142に電流が流れる。第1磁界センサ142は、その電流により生じた電圧を第2A/D変換器170に出力する。なお、図2で説明したように、外部導体133の外側面136にノイズによる電流(N)が流れ、外部導体133の内側面135と内部導体131の外側面134には、それぞれ大きさが同じであり且つ向きが逆である電流(A、−A)が流れる。これらの電流の内、内部導体131に流れる電流(A、−A)は打ち消し合うため、第1電流センサ140は、第1位置121において、ノイズによる第1電流(N)のみを測定することができる。
同様に、第2電流センサ150は、第2フェライトコア151及び第2磁界センサ152等を有する。第2フェライトコア151は、軸部120の外部導体133の第2位置122の周囲に設けられる。第2位置122は、第1電流センサ140(第1位置121)とアンテナ部110の間の位置であり、特に、第1電流センサ140と開口111の間の位置である。第2磁界センサ152は、第2環状部153及び第2軸部154を有する。第2環状部153は、電磁界センサ100のアンテナ部110及び軸部120と同様の同軸構造を有し、開口部を有している。第2軸部154の一端には第2環状部153が接続され、第2軸部154の他端には第2ケーブル155を介して第3A/D変換器180が接続される。第2環状部153及び第2フェライトコア151は、第2環状部153が第2フェライトコア151の上端から下端まで通過し、且つ、第2フェライトコア151が第2環状部153の中空部を通過するように、設けられている。
電磁界センサ100の軸部120の第2位置122に電流が流れると、第2電流センサ150の第2フェライトコア151の円周方向に磁界が発生し、その発生した磁界により第2磁界センサ152に電流が流れる。第2磁界センサ152は、その電流により生じた電圧を第3A/D変換器180に出力する。なお、上記の通り、外部導体133の外側面136にノイズによる電流(N)が流れ、外部導体133の内側面135と内部導体131の外側面134には、それぞれ大きさが同じであり且つ向きが逆である電流(A、−A)が流れる。これらの電流の内、内部導体131に流れる電流(A、−A)は打ち消し合うため、第2電流センサ150は、第2位置122において、ノイズによる第2電流(N)のみを測定することができる。
なお、後述するように、情報処理装置200は、第1電流センサ140が測定した第1電流の位相と第2電流センサ150が測定した第2電流の位相の内の何れの位相が進んでいるかを判定する。したがって、情報処理装置200が正しく判定できるように、第1電流センサ140と第2電流センサ150の間の距離は、電磁界センサ100に誘起すると想定されるノイズの波長の4分の1波長以下になるように設定される。
第1A/D変換器160は、電磁界センサ100と接続され、電磁界センサ100から出力された電圧を示すアナログ信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成し、情報処理装置200に出力する。
同様に、第2A/D変換器170は、第1電流センサ140と接続され、第1電流センサ140から出力された電圧を示すアナログ信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成し、情報処理装置200に出力する。
同様に、第3A/D変換器180は、第2電流センサ150と接続され、第2電流センサ150から出力された電圧を示すアナログ信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を生成し、情報処理装置200に出力する。
情報処理装置200は、例えばパーソナルコンピュータ等である。情報処理装置200は、第1A/D変換器160、第2A/D変換器170及び第3A/D変換器180を介して、電磁界センサ100、第1電流センサ140及び第2電流センサ150と接続される。情報処理装置200は、電磁界センサ100、第1電流センサ140及び第2電流センサ150から出力される電圧に基づいて、電磁界センサ100のアンテナ部110の周囲に存在している電界又は磁界の値を算出する。
図3は、情報処理装置200のハードウェア構成図である。図3に示すように、情報処理装置200は、インタフェース装置201、入力装置202、表示装置203、記憶装置210及びCPU(Central Processing Unit)220等を有する。以下、情報処理装置200の各部について詳細に説明する。
インタフェース装置201は、例えばUSB(Universal Serial Bus)等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、第1A/D変換器160、第2A/D変換器170及び第3A/D変換器180と電気的に接続する。インタフェース装置201は、電磁界センサ100、第1電流センサ140及び第2電流センサ150から出力される電圧を示す信号を受信する。
入力装置202は、キーボード等の入力装置及び入力装置から信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者の操作に応じた信号をCPU220に出力する。
表示装置203は、液晶、有機EL(Electro−Luminescence)等から構成されるディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、CPU220から出力されたデータを表示する。
記憶装置210は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性半導体メモリ、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性半導体メモリ等を有する。また、記憶装置210には、情報処理装置200の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル、各種画像等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置210にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD−ROM(compact disk read only memory)、DVD−ROM(digital versatile disk read only memory)等である。また、記憶装置210には、電磁界センサ100において事前に電圧を測定した測定結果が記憶される。
CPU220は、インタフェース装置201、入力装置202、表示装置203及び記憶装置210と接続され、これらの各部を制御する。CPU220は、インタフェース装置201を介した第1A/D変換器160、第2A/D変換器170及び第3A/D変換器180からの受信制御、入力装置202の入力制御、表示装置203の表示制御、記憶装置210の制御等を行う。
図4は、記憶装置210及びCPU220の概略構成を示す図である。
図4に示すように、記憶装置210には、補正電圧生成プログラム211及び算出プログラム212等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。CPU220は、記憶装置210に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、CPU220は、補正電圧生成部221及び算出部222として機能する。
以下、電磁界センサ100による磁界の値の算出方法について説明する。
電磁界センサ100の角周波数ω毎の、磁界に対する特性は、次の式(1)により表される。
F1〔ω〕=EM1〔ω〕/V1〔ω〕 (1)
ここで、EM1〔ω〕[A/m]は、アンテナ部110の周囲に存在している磁界の値であり、V1〔ω〕[V]は、情報処理装置200により測定される測定電圧の値である。また、F1〔ω〕[V・m/A]は、複素変換係数であり、電磁界センサ100毎に予め定められている。
図5は、電磁界センサ100の複素変換係数の一例を示すグラフである。
図5の横軸は各周波数を示し、縦軸は複素変換係数の値を示す。図5に示すように、電磁界センサ100の複素変換係数は、角周波数に応じて異なる値を有する。
一方、電磁界センサ100の角周波数ω毎の、ノイズに対する特性は、次の式(2)により表される。
G1〔ω〕=VC1〔ω〕/IC1〔ω〕 (2)
ここで、IC1〔ω〕[A]は、ノイズにより電磁界センサ100に誘起された電流の値であり、VC1〔ω〕[V]は、その電流によって生じた電圧の値である。また、G1〔ω〕[V/A]は、複素変換係数であり、事前測定により角周波数ω毎に算出される。
情報処理装置200により測定される測定電圧にはノイズにより生じた電圧が含まれるため、測定電圧からノイズにより生じた電圧による影響を除去することにより、アンテナ部110の周囲に存在している磁界の値を高精度に算出することができる。即ち、次の式(3)により磁界の値EM1〔ω〕を算出することにより、磁界の値を高精度に算出することができる。
EM1〔ω〕=F1〔ω〕(V1〔ω〕−VC1〔ω〕) (3)
図6は、電磁界センサ100を用いた事前測定システム2について説明するための模式図である。
図6に示すように、事前測定システム2では、電磁界センサ100及び第2電流センサ150が、それぞれ解析装置190に接続される。解析装置190は、例えばネットワークアナライザ等の公知の信号計測装置である。第2電流センサ150の第2ケーブル155は、解析装置190の出力端191に接続され、電磁界センサ100のケーブル124は、解析装置190の入力端192に接続される。
事前測定時に、解析装置190は、出力端191から事前測定用電流SP1を出力する。出力端191から出力された事前測定用電流SP1は第2磁界センサ152に流れ、第2磁界センサ152に流れた事前測定用電流SP1により、第2フェライトコア151の円周方向に磁界TP1が発生する。この第2フェライトコア151に発生した磁界TP1により電磁界センサ100の外部導体133の第2位置122に電流SP2が流れ、外部導体133の外側面136から開口111を介して内部導体131に流入する。この内部導体131に流れる電流SP3により、内部導体131には事前測定電圧が発生する。この事前測定電圧は、電磁界センサ100のケーブル124を介して解析装置190の入力端192に出力される。
解析装置190は、出力端191から出力した事前測定用電流と、入力端192から入力された事前測定電圧の関係を、事前測定電圧の測定結果として不図示の通信装置を介して情報処理装置200に出力する。例えば、解析装置190は、事前測定用電流の振幅及び位相と、事前測定電圧の振幅及び位相を、事前測定電圧の測定結果として情報処理装置200に出力する。または、解析装置190は、事前測定用電流の振幅に対する事前測定電圧の振幅の比率及び事前測定用電流の位相に対する事前測定電圧の位相の差を、事前測定電圧の測定結果として情報処理装置200に出力してもよい。情報処理装置200は、解析装置190から出力された測定結果を記憶装置210に記憶する。
なお、解析装置190は、事前測定電圧の測定結果を不図示の表示装置に表示し、情報処理装置200の利用者が、その表示装置に表示された測定結果を入力装置202を用いて情報処理装置200に入力してもよい。
このように、記憶装置210は、事前に第2位置122の周囲に事前測定用電流を流すことにより発生させた磁界により外部導体133から開口111を介して内部導体131に流入した電流によって内部導体131に生じた事前測定電圧の測定結果を記憶する。
図7は、電磁界センサ100に誘起したノイズが伝搬する様子の一例を示す模式図である。図7では、電磁界センサ100において、第1電流センサ140が設けられた第1位置121と端部123の間の位置a1にノイズが誘起した場合について説明する。
電磁界センサ100は、アンテナ部110の周囲に存在している電磁界により内部導体131に誘起した誘起電圧を第1A/D変換器160を介して情報処理装置200に出力する。
一方、外部導体133の外側面136の位置a1にノイズが誘起すると、誘起したノイズにより、ノイズ電流SNAが発生し、外側面136を伝搬していく。ノイズ電流SNAが第1位置121に流れると、第1電流センサ140の第1フェライトコア141の円周方向に磁界TNA1が発生し、発生した磁界TNA1により第1磁界センサ142に電流SNA1が流れる。そして、その電流SNA1により生じた電圧が第2A/D変換器170を介して情報処理装置200に入力される。このように、第1電流センサ140は、ノイズにより第1位置121に流れる第1電流を測定する。
同様に、ノイズ電流SNAが第2位置122に流れると、第2電流センサ150の第2フェライトコア151の円周方向に磁界TNA2が発生し、発生した磁界TNA2により第2磁界センサ152に電流SNA2が流れる。そして、その電流SNA2により生じた電圧が第3A/D変換器180を介して情報処理装置200に入力される。このように、第2電流センサ150は、ノイズにより第2位置122に流れる第2電流を測定する。
さらに、ノイズ電流SNAは開口111を介して内部導体131に流入し、内部導体131の外側面134及び外部導体133の内側面135にはノイズ電流SNAにより電流SNA3が流れる。電流SNA3は、アンテナ部110及び軸部120の内部導体131の外側面134及び外部導体133の内側面135と、ケーブル124とを伝搬して第1A/D変換器160まで流れ、その電流SNA3により生じた電圧が情報処理装置200に出力される。以下では、ノイズにより外部導体133から開口111を介して内部導体131に流入した電流によって内部導体131に生じた電圧をノイズ電圧と称する場合がある。
このように、電磁界センサ100から情報処理装置200に出力される測定電圧には、誘起電圧とノイズ電圧が含まれている。
図8Aは、位置a1にノイズが誘起した場合に各位置に流れる電流の関係を示すグラフである。
図8Aの横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示す。図8Aにおいて、グラフ801は位置a1における電流値を示し、グラフ802は第1位置bにおける電流値を示し、グラフ803は第2位置cにおける電流値を示し、グラフ804は開口位置(ノイズ侵入位置)dにおける電流値を示す。
図8Bは、位置a1にノイズが誘起した場合に各位置に流れる電流の位相関係図である。
図8Bにおいて、矢印811〜814の大きさは電流の大きさを示し、矢印811〜814の方向は位相を示す。図8Bにおいて、原点Oからx軸の正値に向かう方向が位相0に対応し、反時計周りに回転していくにつれて位相が大きくなっていく。矢印811は位置a1における電流に対応し、矢印812は第1位置bにおける電流に対応し、矢印813は第2位置cにおける電流に対応し、矢印814は開口位置dにおける電流に対応する。
位置a1に誘起した電流は、位置a1から、第1位置b、第2位置c、開口位置dへと進んでいく。そのため、図8A、8Bに示すように、グラフ801、グラフ802、グラフ803、グラフ804の順に、又は、矢印811、矢印812、矢印813、矢印814の順に位相が遅れていく。
図9は、電磁界センサ100に誘起したノイズが伝搬する様子の他の例を示す模式図である。図9では、電磁界センサ100において、第2電流センサ150が設けられた第1位置121と開口111の間の位置a2にノイズが誘起した場合について説明する。
図9においても、図7と同様に、電磁界センサ100は、アンテナ部110の周囲に存在している電磁界により内部導体131に誘起した誘起電圧を情報処理装置200に出力する。
一方、外部導体133の外側面136の位置a2にノイズが誘起すると、誘起したノイズにより、ノイズ電流SNBが発生し、外側面136を伝搬していく。ノイズ電流SNBが第2位置122に流れると、第2電流センサ150の第2フェライトコア151の円周方向に磁界TNB2が発生し、発生した磁界TNA2により第2磁界センサ152に電流SNB2が流れる。そして、その電流SNB2により生じた電圧が第3A/D変換器180を介して情報処理装置200に入力される。このように、第2電流センサ150は、ノイズにより第2位置122に流れる第2電流を測定する。
同様に、ノイズ電流SNBが第1位置121に流れると、第1電流センサ140の第1フェライトコア141の円周方向に磁界TNB1が発生し、発生した磁界TNB1により第1磁界センサ142に電流SNB1が流れる。そして、その電流SNB1により生じた電圧が第2A/D変換器170を介して情報処理装置200に入力される。このように、第1電流センサ140は、ノイズにより第1位置121に流れる第1電流を測定する。
一方、ノイズ電流SNBは、開口111を介して内部導体131に流入し、内部導体131の外側面134及び外部導体133の内側面135にはノイズ電流SNBにより電流SNB3が流れる。電流SNB3は、アンテナ部110及び軸部120の内部導体131の外側面134及び外部導体133の内側面135と、ケーブル124とを伝搬して第1A/D変換器160まで流れ、その電流SNB3により生じたノイズ電圧が情報処理装置200に入力される。
このように、位置a2にノイズが誘起した場合も、電磁界センサ100は、誘起電圧とノイズ電圧とを含む測定電圧を情報処理装置200に出力する。
図10Aは、位置a2にノイズが誘起した場合に各位置に流れる電流の関係を示すグラフである。
図10Aの横軸は時間を示し、縦軸は電流値を示す。図10Aにおいて、グラフ1001は位置a2における電流値を示し、グラフ1002は第2位置cにおける電流値を示し、グラフ1003は第1位置bにおける電流値を示し、グラフ1004は開口位置(ノイズ侵入位置)dにおける電流値を示す。
図10Bは、位置a2にノイズが誘起した場合に各位置に流れる電流の位相関係図である。
図10Bにおいて、矢印1011〜1014の大きさは電流の大きさを示し、矢印1011〜1014の方向は位相を示す。図10Bにおいて、原点Oからx軸の正値に向かう方向が位相0に対応し、反時計周りに回転していくにつれて位相が大きくなっていく。矢印1011は位置a1における電流に対応し、矢印1012は第2位置cにおける電流に対応し、矢印1013は第1位置bにおける電流に対応し、矢印1014は開口位置dにおける電流に対応する。
位置a2に誘起した電流は、第2位置cの方向と、開口位置dの方向のそれぞれに向かって進んでいく。そのため、図10A、10Bに示すように、グラフ1001、グラフ1002、グラフ1003、グラフ1004の順、又は、矢印1011、矢印1012、矢印1013、矢印1014の順に位相が遅れていく。なお、図10A、10Bに示す例は、位置a2と第1位置bの間の距離が、位置a2と開口位置dの間の距離より短い例を示している。位置a2と第1位置bの間の距離が、位置a2と開口位置dの間の距離より長い場合、図10A、10Bにおいて、グラフ1004及び矢印1014の位相は、グラフ1002及び矢印1012の位相より進んだものとなる。
図7の位置a1にノイズが誘起した場合、ノイズによる電流は、第2位置122及び開口111を介して内部導体131に流入し、第1A/D変換器160まで流れる。即ち、第2電流センサ150によって第2位置122で測定された第2電流は、その後、開口111を介して内部導体131に流入し、第1A/D変換器160まで流れる。したがって、第2電流とノイズ電圧の関係は、図5で測定した事前測定用電流と事前測定電圧の関係と略同等になる。即ち、第2電流の振幅に対するノイズ電圧の振幅の比率は、事前測定用電流の振幅に対する事前測定電圧の振幅の比率と略同等になり、第2電流の位相とノイズ電圧の位相の差は、事前測定用電流の位相と事前測定電圧の位相の差と略同等になる。
なお、第2電流センサ150と第3A/D変換器180の間には第2ケーブル155が存在するため、第2電流が第2位置122に到達してから情報処理装置200で実際に測定されるまでに一定の時間が経過する。また、図5において、第2電流センサ150と解析装置190の間にも第2ケーブル155が存在するため、解析装置190が事前測定用電流を出力してから第2位置122に到達するまでに一定の時間が経過する。第2ケーブル155は、これらの時間により生じる位相差を十分に無視できるように短く設定される。または、解析装置190は、実際に計測された電圧に対して、これらの時間により生じる位相差の分だけ、位相を進めた電圧を事前測定電圧として求めてもよい。
一方、図9の位置a2にノイズが誘起した場合、ノイズによる電流は、開口111側と第2位置122側へ別々に流れていく。即ち、第2電流センサ150によって第2位置122で測定された第2電流は、その後、端部123側に流れていき、開口111側には流れていかない。したがって、第2電流とノイズ電圧の位相関係は、図5で測定した事前測定用電流と事前測定電圧の位相関係と略同等にならない。なお、開口111の位置と第2位置122の間の距離は十分に短く、距離による信号の減衰は無視できるため、第2電流とノイズ電圧の振幅関係は、図6で測定した事前測定用電流と事前測定電圧の振幅関係と略同等になる。即ち、第2電流の振幅に対するノイズ電圧の振幅の比率は、事前測定用電流の振幅に対する事前測定電圧の振幅の比率と略同等になるが、第2電流の位相とノイズ電圧の位相の差は、事前測定用電流の位相と事前測定電圧の位相の差と略同等にならない。
図11は、情報処理装置200による電磁界算出処理の動作を示すフローチャートである。以下、図10に示したフローチャートを参照しつつ、電磁界算出処理の動作を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置210に記憶されているプログラムに基づき主にCPU220により情報処理装置200の各要素と協働して実行される。
補正電圧生成部221は、まず、インタフェース装置201を介して第1A/D変換器160から測定電圧を取得する(ステップS101)。
次に、補正電圧生成部221は、インタフェース装置201を介して第2A/D変換器170から第1電流を取得する(ステップS102)。
次に、補正電圧生成部221は、インタフェース装置201を介して第3A/D変換器180から第2電流を取得する(ステップS103)。
次に、補正電圧生成部221は、記憶装置210から事前測定電圧の測定結果を読み出す(ステップS104)。
次に、補正電圧生成部221は、測定電圧から電界又は磁界の値を算出するために用いる補正電圧を生成する(ステップS105)。なお、ステップS105〜S107の処理は、所定の角周波数毎に実行される。
補正電圧は、ノイズ電圧に相当する電圧であり、第2電流、事前測定用電流及び事前測定電圧から算出される。補正電圧生成部221は、上記した式(2)を変形した次の式(4)により補正電圧を算出する。
VC1〔ω〕=G1〔ω〕・IC1〔ω〕 (4)
ここで、IC1〔ω〕[A]は、ノイズにより誘起された第2電流の値であり、VC1〔ω〕[V]は、ノイズ電圧の値、即ち補正電圧の値である。また、G1〔ω〕[V/A]は、事前測定用電流と事前測定電圧から算出される。
しかしながら、図6〜図10を用いて説明したように、電磁界センサ100においてノイズが誘起する位置によって、第2電流とノイズ電圧の関係(位相差)は、図6で測定した事前測定用電流と事前測定電圧の関係(位相差)と略同等にならない場合がある。
そこで、補正電圧生成部221は、まず、電磁界センサ100においてノイズが誘起した位置を特定する。補正電圧生成部221は、第2電流の位相が第1電流の位相より進んでいるか否かを判定する。補正電圧生成部221は、第2電流の位相が第1電流の位相より遅れている場合、ノイズ誘起位置は、第2電流センサ150が設けられた第2位置122より第1電流センサ140が設けられた第1位置121に近い第3位置(図7の位置a1側)であると判定する。一方、補正電圧生成部221は、第2電流の位相が第1電流の位相より進んでいる場合、ノイズ誘起位置は、第1位置121より第2位置122に近い第4位置(図9の位置a2側)であると判定する。
補正電圧生成部221は、ノイズ誘起位置が第3位置である場合、第2電流と補正電圧の振幅関係及び位相関係が、それぞれ事前測定用電流と事前測定電圧の振幅関係及び位相関係と一致するように補正電圧を生成する。この場合、補正電圧生成部221は、事前測定用電流及び事前測定電圧をそれぞれ式(2)のIC1〔ω〕及びVC1〔ω〕に代入することにより複素変換係数G1〔ω〕を算出し、この複素変換係数G1〔ω〕を用いて式(4)により補正電圧を算出する。これにより、補正電圧の振幅は、第2電流の振幅に、事前測定用電流の振幅に対する事前測定電圧の振幅の比率を乗じた値となり、補正電圧の位相は、第2電流の位相に、事前測定用電流の位相に対する事前測定電圧の位相の差を加えた値となる。
一方、補正電圧生成部221は、ノイズ誘起位置が第4位置である場合、第2電流と補正電圧の位相関係が、事前測定用電流と事前測定電圧の位相関係に対してずれるように補正電圧を生成する。但し、補正電圧生成部221は、第2電流と補正電圧の振幅関係が、事前測定用電流と事前測定電圧の振幅関係と一致するように補正電圧を生成する。この場合、補正電圧生成部221は、事前測定電圧を式(2)のVC1〔ω〕に代入し、事前測定用電流の位相を所定の位相分だけ進めた電流をIC1〔ω〕に代入することにより複素変換係数G1〔ω〕を算出する。そして、補正電圧生成部221は、この複素変換係数G1〔ω〕を用いて式(4)により補正電圧を算出する。これにより、補正電圧の振幅は、第2電流の振幅に、事前測定用電流の振幅に対する事前測定電圧の振幅の比率を乗じた値となる。一方、補正電圧の位相は、第2電流の位相に、事前測定用電流の位相に対する事前測定電圧の位相の差を加えた値から、所定の位相の分だけ減じた値となる。
所定の位相は、例えば第2位置cから開口位置dまでの距離に相当する位相(第2位置cから開口位置dまでの距離に(2π/(事前測定用電流の波長))を乗じた値)である。仮に、ノイズ誘起位置が、第2位置cと開口位置dの間の中間位置である場合、ノイズ誘起位置に誘起したノイズが第2位置cと開口位置dに達するタイミングは同時となる。即ち、第2位置cと開口位置dは離れているにも関わらず、第2位置cにおける電流の位相と、開口位置dにおける電流の位相は同じものとなる。そのため、ノイズ誘起位置が第4位置である場合の補正電圧の位相を、ノイズ誘起位置が第3位置である場合の補正電圧の位相に対して、第2位置cから開口位置dまでの距離に相当する分だけ進めることにより、ノイズ電圧により近い補正電圧を生成できる。
なお、ノイズ誘起位置が第4位置であっても、ノイズ誘起位置が第2位置cと開口位置dの間の中間位置であるとは限られない。しかしながら、ノイズ誘起位置が、第2位置cと開口位置dの間の中間位置であるとみなすことにより、補正電圧と実際のノイズ電圧との誤差を最小限に抑えつつ、平均的にノイズ電圧に近い補正電圧を生成することが可能となる。
このように、補正電圧生成部221は、第1電流の位相、第2電流の位相(特に第1電流と第2電流との位相関係)、事前測定用電流及び事前測定電圧に基づいて、第2電流に基づく補正電圧を生成する。
次に、算出部222は、測定電圧から補正電圧を減算することにより、測定電圧からノイズの影響を除去したノイズ除去電圧を生成する(ステップS106)。
算出部222は、次の式(5)により、ノイズ除去電圧VE1〔ω〕を算出する。
VE1〔ω〕=V1〔ω〕−VC1〔ω〕 (5)
ここで、V1〔ω〕[V]は測定電圧の値であり、VC1〔ω〕[V]は補正電圧の値である。
図12Aは、図7の位置a1にノイズが誘起した場合の各信号(電流又は電圧)を示すグラフである。
図12Aの横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示す。図12Aにおいて、グラフ1201は第2位置cにおける第2電流を示し、グラフ1202は測定電圧を示す。また、グラフ1203は、第2電流1201から生成された補正電圧の電圧値の正負を反転させた信号を示す。また、グラフ1204は、測定電圧1202に信号1204を加算することにより生成されたノイズ除去電圧を示す。
図12Bは、位置a1にノイズが誘起した場合の各信号の位相関係図である。
図12Bにおいて、矢印1211〜1214の大きさは各信号の大きさを示し、矢印1211〜1214の方向は各信号の位相を示す。図12Bにおいて、原点Oからx軸の正値に向かう方向が位相0に対応し、反時計周りに回転していくにつれて位相が大きくなっていく。矢印1211は第2電流1201に対応し、矢印1212は測定電圧1202に対応し、矢印1213は補正電圧の電圧値の正負を反転させた信号1203に対応し、矢印1214はノイズ除去電圧1204に対応する。
図12A、12Bに示すように、ノイズ除去電圧は、測定電圧からノイズ成分が除去された信号となる。
図13Aは、図9の位置a2にノイズが誘起した場合の各信号(電流又は電圧)を示すグラフである。
図13Aの横軸は時間を示し、縦軸は信号値を示す。図13Aにおいて、グラフ1301は第2位置cにおける第2電流を示し、グラフ1302は測定電圧を示す。また、グラフ1303は、第2電流1301から生成された補正電圧の電圧値の正負を反転させた信号を示す。また、グラフ1304は、測定電圧1302に信号1304を加算することにより生成されたノイズ除去電圧を示す。
図13Bは、位置a2にノイズが誘起した場合の各信号の位相関係図である。
図13Bにおいて、矢印1311〜1314の大きさは各信号の大きさを示し、矢印1311〜1314の方向は各信号の位相を示す。図13Bにおいて、原点Oからx軸の正値に向かう方向が位相0に対応し、反時計周りに回転していくにつれて位相が大きくなっていく。矢印1311は第2電流1301に対応し、矢印1312は測定電圧1302に対応し、矢印1313は補正電圧の電圧値の正負を反転させた信号1303に対応し、矢印1314はノイズ除去電圧1304に対応する。
図13A、13Bに示す例においても、ノイズ除去電圧は、測定電圧からノイズ成分が除去された信号となる。
次に、算出部222は、ノイズ除去電圧に基づいて、電磁界センサ100のアンテナ部110の周囲に存在している磁界の値を算出し(ステップS107)、算出した磁界の値を表示装置203に表示して一連のステップを終了する。
算出部222は、次の式(6)によりアンテナ部110の周囲に存在している磁界の値を算出する。
EM1〔ω〕=F1〔ω〕・VE1〔ω〕 (6)
このように、算出部222は、測定電圧及び補正電圧に基づいて、アンテナ部110の周囲に存在している磁界の値を算出する。
なお、図6に示した事前測定システム2において、第2電流センサ150の代わりに第1電流センサ140を解析装置190に接続し、第1位置121の周囲に事前測定用電流を流したときの事前測定電圧を測定してもよい。その場合、情報処理装置200は、その事前測定電圧の測定結果を記憶装置210に記憶し、補正電圧生成部221は、ステップS105において、式(4)のIC1〔ω〕に第1電流の値を代入することにより補正電圧を算出する。
また、電磁界測定システム1において、第1A/D変換器160、第2A/D変換器170、第3A/D変換器180及び情報処理装置200の代わりに、オシロスコープ又はシグナルアナライザ等の計測器を用いてもよい。その場合、電磁界センサ100、第1電流センサ140及び第2電流センサ150はその計測器に接続され、その計測器が電磁界を計測する。計測器として、例えばKEYSIGHT社製のオシロスコープ91304A(Infiniium 9000X/Zシリーズ)又はシグナルアナライザN9040B508等を用いることができる。
また、電磁界測定システム1において、第1A/D変換器160、第2A/D変換器170又は第3A/D変換器180は、情報処理装置200と別個に設けられるのではなく、情報処理装置200内部に設けられてもよい。即ち、情報処理装置200が、第1A/D変換器160、第2A/D変換器170又は第3A/D変換器180を有してもよい。
以上詳述したように、電磁界測定システム1は、二つの電流センサで測定した二つの電流の位相関係に基づいて補正電圧を生成し、測定電圧を補正する。これにより、電磁界測定システム1は、電磁界センサ100においてノイズが誘起した位置に応じて適切に測定電圧を補正することができる。したがって、電磁界測定システム1は、外部から電磁界センサ100にノイズが誘起しても、その誘起した位置によらずノイズの影響を抑制し、磁界の値を正しく測定することが可能となった。特に、電磁界測定システム1は、測定対象の磁界を、測定対象でない電界の影響を受けることなく測定することが可能となった。
図14は、他の実施形態に係る情報処理装置230のハードウェア構成図である。
情報処理装置230は、情報処理装置200が有する各部に加えて、処理回路240を有する。処理回路240は、DSP(digital signal processor)又はLSI(large scale integration)等である。または、処理回路240は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programming Gate Array)等である。処理回路240は、CPU220の代わりに、電磁界算出処理を実行する。
図15は、処理回路240の概略構成を示す図である。
処理回路240は、補正電圧生成回路241及び算出回路242等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
補正電圧生成回路241は、補正電圧生成部の一例である。補正電圧生成回路241は、インタフェース装置201を介して電磁界センサ100から測定電圧、第1電流、第2電流を取得し、記憶装置210から事前測定電圧の測定結果を読み出す。補正電圧生成回路241は、取得した各情報に基づいて補正電圧を生成し、測定電圧及び補正電圧を算出回路242に送信する。
算出回路242は、算出部の一例である。算出回路242は、補正電圧生成回路241から測定電圧及び補正電圧を取得し、測定電圧及び前記補正電圧に基づいて、アンテナ部110の周囲に存在している磁界の値を算出し、表示装置203に表示する。
以上詳述したように、情報処理装置230においても、情報処理装置200と同様に、外部から電磁界センサに誘起したノイズの影響を抑制し、磁界の値を正しく測定することが可能となった。
図16は、他の実施形態に係る電磁界センサ300のハードウェア構成図である。
電磁界センサ300は、電磁界測定システムにおいて、電磁界センサ100の代わりに用いられる。電磁界センサ300は、電磁界センサ100と同様に、アンテナ部310及び軸部320等を有するシールデッドループアンテナであり、アンテナ部310の周囲に存在している磁界を測定する。アンテナ部310及び軸部320は、アンテナ部110及び軸部120と同様の構造体で一体に形成される。
アンテナ部310は、アンテナ部110と同様に、環状の構造体により形成され、開口311を有する。アンテナ部310には、軸部320がアンテナ部310の二つの端部から延伸するように形成され、開口311は軸部320から最も離れた位置に設けられる。
軸部320は、軸部120と同様に、アンテナ部310の二つの端部からそれぞれ延伸する二つの直線状の構造体により形成される。但し、二つの直線状の構造体の長さは異なり、長い方の構造体のアンテナ部310から最も離れた端部323には、ケーブル124を介して第1A/D変換器160が接続され、短い方の構造体の端部322は終端されている。
電磁界センサ300を用いる場合も、軸部320において、電磁界センサ100の第1位置121と同様の位置の周囲に第1センサ140が設けられ、電磁界センサ100の第2位置122と同様の位置の周囲に第2電流センサ150が設けられる。
以上詳述したように、電磁界センサ300を用いる場合も、電磁界センサ100を用いる場合と同様に、外部から電磁界センサに誘起したノイズの影響を抑制し、磁界の値を正しく測定することが可能となった。
図17は、他の実施形態に係る電磁界センサ400のハードウェア構成図である。
電磁界センサ400は、電磁界測定システムにおいて、電磁界センサ100の代わりに用いられる。電磁界センサ400は、アンテナ部410及び軸部420等を有するダイポールアンテナであり、アンテナ部410の周囲に存在している電界、即ちアンテナ部410の周囲に配置された測定対象の電子電気機器から発生した電界を測定する。アンテナ部410及び軸部420は、アンテナ部110と同様の構造体で一体に形成される。
アンテナ部410は、直線状の構造体により形成される。アンテナ部410は、第1直線部411及び第2直線部412を有する。第1直線部411は、アンテナ部110と同様の構造体の内、外部導体414から抜き出された内部導体及び絶縁体413で形成され、第2直線部412は、内部導体及び絶縁体413が抜き出された外部導体414で形成される。なお、第1直線部411は、絶縁体を有さず、内部導体のみで形成されてもよい。このように、第1直線部411は少なくとも内部導体を含み、第2直線部412は少なくとも外部導体を含む。また、アンテナ部410は、測定する信号の波長の1/10以下の長さになるように設けられる。
電磁界センサ400では、アンテナ部410の周囲に存在している電磁界によって、アンテナ部410に電圧が誘起され、第1直線部411と第2直線部412が結合する位置の近傍に電位差が生じる。そして、その電位差によって生じる電流が、ノイズとして軸部420の内部導体に流れていく。即ち、電磁界センサ400では、第1直線部411(及び第2直線部412)が、アンテナ部410の開口として動作する。
軸部420は、第1直線部411及び第2直線部412の端部から延伸する直線状の構造体により形成される。軸部420の、アンテナ部410から最も離れた端部421には、ケーブル124を介して第1A/D変換器160が接続される。
電磁界センサ400を用いる場合も、軸部420において、電磁界センサ100の第1位置121と同様の位置の周囲に第1センサ140が設けられ、電磁界センサ100の第2位置122と同様の位置の周囲に第2電流センサ150が設けられる。
電磁界センサ400は、アンテナ部410の周囲に存在している電磁界により内部導体に誘起した誘起電圧とノイズ電圧とを含む測定電圧を第1A/D変換器160を介して情報処理装置200に出力する。
電磁界センサ400に接続された情報処理装置200は、電磁界センサ100、第1電流センサ140及び第2電流センサ150から出力される電圧に基づいて、電磁界センサ400のアンテナ部410の周囲に存在している電界の値を算出する。
以下、電磁界センサ400による電界の値の算出方法について説明する。
電磁界センサ400の角周波数ω毎の、電界に対する特性は、次の式(7)により表される。
F2〔ω〕=EM2〔ω〕/V2〔ω〕 (7)
ここで、EM2〔ω〕[V/m]は、アンテナ部410の周囲に存在している電界の値であり、V2〔ω〕[V]は、情報処理装置200により測定される測定電圧の値である。また、F2〔ω〕[V・m/V]は、複素変換係数であり、電磁界センサ400毎に予め定められている。
図18は、電磁界センサ400の複素変換係数の一例を示すグラフである。
図18の横軸は周波数を示し、縦軸は複素変換係数の値を示す。図18に示すように、電磁界センサ400の複素変換係数は、角周波数に応じて異なる値を有する。
一方、電磁界センサ400の角周波数ω毎の、ノイズに対する特性は、次の式(8)により表される。
G2〔ω〕=VC2〔ω〕/IC2〔ω〕 (8)
ここで、IC2〔ω〕[A]は、ノイズにより電磁界センサ400に誘起された電流の値であり、VC2〔ω〕[V]は、その電流によって生じた電圧の値である。また、G2〔ω〕[V/A]は、複素変換係数であり、事前測定により角周波数ω毎に算出される。
また、電界の値EM2〔ω〕は、次の式(9)により算出される。
EM2〔ω〕=F2〔ω〕(V2〔ω〕−VC2〔ω〕) (9)
情報処理装置200は、電磁界センサ400に接続された場合も、図11に示したフローチャートに従って、電磁界算出処理を実行する。
但し、図11のステップS105において、補正電圧生成部221は、測定電圧から電界の値を算出するために用いる補正電圧を生成する。補正電圧生成部221は、上記した式(8)を変形した次の式(10)により補正電圧を算出する。
VC2〔ω〕=G2〔ω〕・IC2〔ω〕 (10)
ここで、IC2〔ω〕[A]は、ノイズにより誘起された第2電流の値であり、VC2〔ω〕[V]は、ノイズ電圧の値、即ち補正電圧の値である。また、G2〔ω〕[V/A]は、G1〔ω〕と同様にして、事前測定用電流と事前測定電圧から算出される。
また、図11のステップS106において、算出部222は、次の式(11)により、ノイズ除去電圧VE2〔ω〕を算出する。
VE2〔ω〕=V2〔ω〕−VC2〔ω〕 (11)
ここで、V2〔ω〕[V]は測定電圧の値であり、VC2〔ω〕[V]は補正電圧の値である。
仮に、電磁界センサ400の複素変換係数G2[V/A]が、電磁界センサ100の複素変換係数G1[V/A]と同じである場合、生成される補正電圧及びノイズ除去電圧は、図12Aに示した各電圧と同じになる。同様に、電磁界センサ400の複素変換係数G2[V/A]が、電磁界センサ100の複素変換係数G1[V/A]と同じである場合、生成される補正電圧及びノイズ除去電圧は、図13Aに示した各電圧と同じになる。
また、図11のステップS107において、算出部222は、ノイズ除去電圧に基づいて、電磁界センサ400のアンテナ部410の周囲に存在している電界の値を算出する。算出部222は、次の式(12)によりアンテナ部410の周囲に存在している磁界の値を算出する。
EM2〔ω〕=F2〔ω〕・VE2〔ω〕 (12)
以上詳述したように、電磁界センサ400を用いる場合、外部から電磁界センサ400にノイズが誘起しても、その誘起した位置によらずノイズの影響を抑制し、電界の値を正しく測定することが可能となった。特に、電磁界測定システム1は、測定対象であるダイポールアンテナの長手方向の電界を、その電界と直交する方向の電界の影響を受けることなく測定することが可能となった。