JP2017140792A - セキュリティーマーカー、情報記録媒体、情報記録媒体の判定装置及び複製装置 - Google Patents

セキュリティーマーカー、情報記録媒体、情報記録媒体の判定装置及び複製装置 Download PDF

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Abstract

【課題】紙幣や機密文書などの情報記録媒体の偽造や複製を防止する技術として、炭酸カルシウムや澱粉等を含む特殊インクによる印刷が試みられてきたが、犯罪者がこれらの材料を入手することは容易であり、偽造を確実に防止することは困難であった。
【解決手段】内包フラーレンを含むイオン化合物をセキュリティーマーカーとして情報記録媒体の一部あるいは全体に印刷することにした。純度の高い内包フラーレンは、特殊な製造装置により人工的に合成したものが知られているが、一般に容易に入手可能なものではない。従って、購入者やその利用形態を容易に管理することが可能になり、情報記録媒体の偽造や複製を効率的に防止することが可能になった。
【選択図】 図1

Description

本発明は、セキュリティーマーカー、情報記録媒体、情報記録媒体の判定装置及び複製装置に係り、より詳細には、例えば、銀行券、有価証券や書籍などの情報記録媒体の偽造防止、複製防止に用いることができるセキュリティーマーカー、情報記録媒体、情報記録媒体の判定装置及び複製装置に関する。
カラーコピー機やスキャナーなど、オフィス機器の普及、高性能化に伴い、紙幣や機密文書などの情報記録媒体が偽造あるいは複製される危険性が増えている。これらの偽造あるいは複製を防止するために、特殊インクによる印刷や潜像の印刷が試みられてきた。
特許文献1には、テラヘルツ波応答材料を含む印刷層を情報記録媒体上に形成し、応答材料に固有のテラヘルツ波吸光スペクトルを利用し、検査対象品の真偽を判定する方法が開示されている。固有のテラヘルツ波吸光スペクトルを有するテラヘルツ波応答材料としては、炭酸カルシウム、澱粉、乳酸が使用されている。図9(a)乃至(c)は、それぞれ、炭酸カルシウム、澱粉、乳糖のテラヘルツ光吸収スペクトルを示すグラフである。しかし、炭酸カルシウム、澱粉、乳酸は、一般人が容易に入手できる材料であり、犯罪者がこれらの材料を容易に入手して情報記録媒体の偽造に用いるおそれがあるという問題があった。
特許文献2には、スクリーン線数の異なる領域を設けることにより可視光下の目視では視認できず、複写時には印刷される潜像を利用して、複写物であることを示すパターンを印刷する技術が開示されている。しかし、この技術は偽造を防止する目的には有効であるが、情報漏洩を防止する目的には使用できないという問題があった。
特開2009−226635号公報 特開2008−143117号公報
本発明は、犯罪者による情報記録媒体の偽造、複写を困難とすることが可能なセキュリティーマーカー、情報記録媒体、情報記録媒体の判定装置及び複製装置防止を提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、テラヘルツ波長領域における吸光スペクトルが温度変化する物質を含む材料からなるセキュリティーマーカーである。
請求項2に係る発明は、前記物質は、内包フラーレンをカチオンとするイオン化合物である請求項1記載のセキュリティーマーカーである。
請求項3に係る発明は、前記カチオンは[M@C2n]である請求項2記載のセキュリティーマーカーである。ただし、Mは原子であり、nは30以上の整数であるである。
請求項4に係る発明は、前記Mはアルカリ金属である請求項3記載のセキュリティーマーカーである。
請求項5に係る発明は、前記Mはリチウムである請求項4記載のセキュリティーマーカーである。
請求項6に係る発明は、フラーレンはC60である請求項1ないし5のいずれか1項記載のセキュリティーマーカーである。
請求項7に係る発明は、フラーレンはC70である請求項1ないし5のいずれか1項記載のセキュリティーマーカーである。
請求項8に係る発明は、前記イオン化合物のアニオンは[PF、[NTF、[SbClのいずれか一つのである請求項2ないし7のいずれか1項記載のセキュリティーマーカーである。
請求項9に係る発明は、前記請求項1ないし8のいずれか1項記載のセキュリティーマーカーを有する情報記録媒体である。
請求項10に係る発明は、前記セキュリティーマーカーを含有するインクまたは塗料で、全体または一部の領域を印刷または塗布した請求項9記載の情報記録媒体である。
請求項11に係る発明は、前記情報記録媒体は紙製の本であり、前記セキュリティーマーカーを本の背表紙に有する請求項9又は10記載の情報記録媒体である。
請求項12に係る発明は、前記内包フラーレンをカチオンとするイオン化合物の含有量は、1mg/cm以上である請求項9ないし11のいずれか1項記載の情報記録媒体である。
請求項13に係る発明は、情報記録媒体にテラヘルツを照射するための手段と、前記情報記録媒体からのテラヘルツ波長領域における吸光スペクトルを測定するための測定手段と、前記測定手段で測定した吸収スペクトルが、請求項9ないし12のいずれか1項記載の情報記録媒体におけるセキュリティーマーカーの有する吸収スペクトルか否かを判断するための手段とを有する情報記録媒体の判定装置である。
請求項14に係る発明は、情報記録媒体に温度変化を与えるための手段を設けた請求項13記載の情報記録媒体の判定装置である。
請求項15に係る発明は、前記記録媒体の一部の領域のみに温度変化を与えるようにした請求項14記載の情報記録媒体の判定装置。
請求項16に係る発明は、請求項13ないし15のいずれか1項記載の情報記録媒体の判定装置を有し、前記セキュリティーマーカーの有無に応じて、複製動作を開始又は停止するようにした複製防止可能な複製装置である。
内包フラーレンイオン化合物はテラヘルツ波領域において固有の吸収スペクトル、及び吸収スペクトルの温度依存性を有し、情報記録媒体の偽造や複製防止に有効に利用可能である。内包フラーレンイオン化合物は化学的に安定した物質であり、高耐久性を有する。従って情報記録媒体に取り込んでも経年変化が小さい。また内包フラーレンイオン化合物の購入者や購入目的を管理することは容易であり、犯罪者による違法な使用を防止できる。
テラヘルツ波が非電離、非熱作用の電磁波であり、被検査物に対し化学変化を引き起こさないので安全である。また、空気中では水蒸気による吸収により減衰が大きく、伝搬距離が限られるため複数の検査機器間での干渉が起きないという利点もある。内包フラーレンイオン化合物をセキュリティーマーカーとして用いているので、犯罪者による違法な使用を防止できる。
(a)、(b)は、本発明の具体例に係る情報記録媒体の概略図である。 本発明の具体例に係る情報記録媒体の真偽判定装置の概略図である。 (a)、(b)は、本発明の具体例に係る情報記録媒体の概略図である。 本発明の具体例に係る情報記録媒体の複製防止装置の概略図である。 内包フラーレン[Li@C60](PFの分子構造図である。 (a)乃至(c)は、それぞれ、[Li@C60](PF、[Li@C60](NTF、[Li@C60](SbClのテラヘルツ光吸収スペクトルを示すグラフである。 [Li@C60](PFのテラヘルツ光吸収スペクトルの温度依存性を示すグラフである。 [Li@C60](PFのテラヘルツ光吸収スペクトルの温度依存性を示すグラフである。 (a)乃至(c)は、それぞれ、炭酸カルシウム、澱粉、乳糖のテラヘルツ光吸収スペクトルを示すグラフである。
以下、本発明の最良形態について説明する。
内包フラーレンは、1995年に放射光X線観察によりその存在が初めて確認された新規の物質である。純度の高い内包フラーレンを人工的に合成する方法については、真空中で発生させた内包原子イオンを含むプラズマを、バイアス電圧を印加した基板上でフラーレンと反応させるプラズマシャワー法が知られている。
本願発明者等は、内包フラーレンの物性を研究する過程で、内包フラーレンをカチオンとするイオン化合物がテラヘルツ波長領域において固有の吸収スペクトルを示すこと、及び低温条件で係る吸収スペクトルが顕著な変化を示すことを初めて見出した。なお、本願明細書では、テラヘルツ波を0.1THz〜10THzの電磁波として定義する。テラヘルツ波は、光の直進性と電波の透過性を備え、例えば、金属や水を透過しないが、布、紙、木、プラスティック、陶磁器を透過するという性質を持つ。これらの知見に基づいて、本願発明者等は、内包フラーレンをカチオンとするイオン化合物がセキュリティーマーカーとして応用できることを見出した。テラヘルツ波は、非電離、非熱作用の電磁波であり、被検査物に対し化学変化を引き起こさないので安全である。また、空気中では水蒸気による吸収により減衰が大きく、伝搬距離が限られるため複数の検査機器間での干渉が起きないという利点もある。
(テラヘルツ波長領域における吸光スペクトルが温度変化する物質)
テラヘルツ波長領域における吸光スペクトルが温度変化する物質としては例えば、カチオンが[M@C2nであるイオン化合物があげられる。Mは原子であり、nは30以上の整数である。このカチオンは、フラーレンの中に金属イオンが内包されており、金属がプラスイオンとして内包されているため全体としてカチオンとなっている。Mはアルカリ金属が好ましい。Na,Li,Bその他の金属が内包される。
フラーレンとしては、C60は全体として球形であり、等方性を有するため好ましい。
また、C70の場合、全体として楕円形であり、内包金属の安定位置が2か所考えられる。そのため、より高温領域で(室温に近いところで)、大きくTHzスペクトルを変化させることが可能である。
より詳細に述べる。1.25THzと7.75THzのピーク強度変化は,[Li@C60](PFの場合,100K以下で起こる。このピーク強度変化は,フラーレン内部でのLiイオンの局在化(秩序化)によって引き起こされる。この秩序化がどの温度で起こるかは,球状のフラーレンがLiイオンに及ぼす等方的なポテンシャルと、外部のPF イオンがクーロン相互作用を介して及ぼす非等方的なポテンシャルとのバランスで決まる。前者の影響で、Liイオンの秩序化はより低温で起こるようになり、後者の影響で,より高温側で起こると考えられることから、C70フラーレンのように,ケージそのものが非等方的であると、Liイオンの秩序化はより高温で起こると考えられる。つまり、[Li@C60](PFのときは,100K以下で起こった、1.25THzや7.75 THzのピーク強度変化が液体窒素温度やドライアイス温度で引き起こせるようにできるのである。
イオン化合物のアニオンとしては、例えば、[PF、[NTF、[SbClのいずれか一つを用いればよい。
(情報記録媒体の偽造防止)
その性質上、偽造防止を望まれる情報記録媒体としては、例えば、紙幣、印紙、証紙、郵便切手、株券、債権、小切手、商品券、宝くじが挙げられる。また、パスポート、IDカード、キャッシュカード、免許証、定期券なども偽造防止を望まれる媒体である。さらに、絵画や骨董品などの美術品も偽造防止が強く要求される物品であり、本願明細書では情報記録媒体の範疇に含まれるものとして定義する。
図1(a)、(b)は、本発明の具体例に係る情報記録媒体の概略図である。図1では情報記録媒体1の例として、紙幣に本願発明によるセキュリティーマーカーを適用する例が示されている。最初に、顔料4を溶剤3に分散させたインク2に内包フラーレンイオン化合物5を分散させ、偽造防止用インクを用意する。その後、紙幣1全体を係る偽造防止用のインクで印刷する(図1(a))。また、材料コストを低減するためには、紙幣の一部の領域に限定して偽造防止用インクを用いた印刷を行ってもよい(図1(b))。紙幣6において、予め指定した領域をセキュリティーマーカー印刷領域7とし、他の領域をセキュリティーマーカー非印刷領域8とする。セキュリティーマーカー非印刷領域8については、通常のインク13で印刷を行い、セキュリティーマーカー印刷領域7は偽造防止用インク9で印刷する。
本発明の実施対用に係る情報記録媒体の判定装置を図2に示す。
本例では、情報記録媒体23にテラヘルツを照射するための手段(テラヘルツ照射モジュール)22と、情報記録媒体23からのテラヘルツ波長領域における吸光スペクトルを測定するための測定手段(テラヘルツ光測定モジュール)24と、測定手段24で測定した吸収スペクトルが、情報記録媒体23におけるセキュリティーマーカーの有する吸収スペクトルか否かを判断するための手段(真偽判定モジュール)26とを有する。なお、情報記録媒体23に温度変化を与える手段は図示していないが、情報記録媒体の周辺に設けておけばよい。
また、記録媒体23に温度変化を与える場合、セキュリティーマーカーを含有する領域にのみ温度変化を与えればよい。一部領域にのみ温度変化を与えればよいため、瞬間的に温度変化を与えることが可能となる。
図2に示す例では、判定結果を表示するための判定結果表示モジュール27が設けてある。この判定結果表示モジュール27は必ずしも必要はなく、真偽判定モジュール26から信号を何らかの制御装置に送る構成としてもよい。
以下詳細に説明する。
次に、係る方法で印刷した情報記録媒体の偽造防止方法について説明する。図2は、本発明の具体例に係る情報記録媒体の真偽判定装置の概略図である。真偽判定装置21は、テラヘルツ光照射モジュール22、テラヘルツ光測定モジュール24、吸収スペクトル解析モジュール25、真偽判定モジュール26、判定結果表示モジュール27から構成される。被検査物である情報記録媒体23をテラヘルツ光照射モジュール22とテラヘルツ光測定モジュール24の間に設けられた検査テーブルに置き、テラヘルツ光照射モジュール22により情報記録媒体23にテラヘルツ光を照射する。テラヘルツ光測定モジュール24により検出された光強度信号を吸収スペクトル解析モジュール25により解析する。その後、図示しないデータベースに保存した内包フラーレンに固有の吸光スペクトルと解析で得られた吸光スペクトルを照合し、許容範囲を考慮してスペクトルが一致する場合は被検査物を真正の情報記録媒体と判断し、一致しない場合は被検査物を偽造された情報記録媒体と判断して、判定結果表示モジュール27により結果を表示する。
また、図2に図示しない冷却器と温度制御手段を設けて被検査物を冷却すれば、内包フラーレンイオン化合物に固有の温度依存性の高い吸収スペクトルを検出することにより、さらに精度の高い真偽判定を行うことが可能になる。液体窒素温度まで被検査物を冷却する必要があるが、例えば、抜き取り検査を実施することにより検査コストの低減が可能である。
内包フラーレンの合成には、特殊な高真空のプラズマ生成装置を用いる必要がある。さらに、高純度の内包フラーレンの抽出には高度の精製技術が必要である。従って、炭酸カルシウム、澱粉、乳糖などの一般に入手が容易な材料と異なり、入手が容易ではない。内包フラーレンの製造業者側からみれば、内包フラーレンの購入者名や使用目的を把握するのは容易であり、犯罪者が入手して紙幣などの偽造に用いることは困難である。
また、図1では、顔料を溶剤に分散させた顔料インクを例に挙げて説明したが、染料を溶剤に溶かした染料インクを用いた場合でも本願発明を適用することは可能である。またインクにセキュリティーマーカーを混ぜずに、例えば溶剤や固着剤にセキュリティーマーカーを混合する場合でも、情報記録媒体にセキュリティーマーカーを取り込むことは可能である。また、例えば、美術品に本願発明を適用することも可能であり、インクに限らず、塗料にセキュリティーマーカーを混合することも可能である。また、セキュリティーマーカー印刷領域あるいはセキュリティーマーカー塗布領域が、無色でも着色でもよく、透明でも不透明でもよいことは言うまでもない。
(情報記録媒体の複製防止)
その性質上、複製防止を望まれる情報記録媒体としては、機密書類や貴重な書籍などが挙げられる。
図3(a)、(b)は、本発明の具体例に係る情報記録媒体の概略図である。図3では情報記録媒体41の例として、書籍に本願発明によるセキュリティーマーカーを適用する例が示されている。最初に、顔料46を溶剤45に分散させたインク44に内包フラーレンイオン化合物47を分散させ、複製防止用インクを用意する。その後、書籍41の背表紙の予め指定された領域を係る複製防止用のインクで印刷する(図3(a))。書籍の表紙の一部の領域を複製防止用インクで印刷してもよいし(図3(b))、裏表紙の一部の領域を複製防止用インクで印刷してもよい。
次に、本発明係る方法で印刷した情報記録媒体の複製防止方法について説明する。
図4は、本発明の具体例に係るコピー機/スキャナー兼用機の概略図である。コピー機/スキャナー兼用機61は、テラヘルツ光照射モジュール62、テラヘルツ光測定モジュール64、吸収スペクトル解析モジュール65、複製防止判定モジュール66、コピー機能制御モジュール67、スキャナー機能制御モジュール68から構成される。被検査物である情報記録媒体63をテラヘルツ光照射モジュール62とテラヘルツ光測定モジュール64の間に設けられた検査テーブルに置き、テラヘルツ光照射モジュール62により情報記録媒体63にテラヘルツ光を照射する。テラヘルツ光測定モジュール64により検出された光強度信号を吸収スペクトル解析モジュール65により解析する。その後、図示しないデータベースに保存した内包フラーレンに固有の吸光スペクトルと解析で得られた吸光スペクトルを照合し、許容範囲を考慮してスペクトルが一致する場合は複製が禁止された情報記録媒体と判断し、コピー機能制御モジュール67を用いてコピーを禁止する、あるいは、スキャナー機能制御モジュール68を用いてスキャニングを禁止する。スペクトルが一致しない場合は複製が許可された情報記録媒体と判断し、コピー機能制御モジュール67を用いてコピーを許可する、あるいは、スキャナー機能制御モジュール68を用いてスキャニングを許可する。
検査可能な内包フラーレンの重量や重量/面積はセンサーの感度にもよりますが。
また、図4に図示しない冷却器と温度制御手段を設けて被検査物を冷却すれば、内包フラーレンイオン化合物に固有の温度依存性の高い吸収スペクトルを検出することにより、さらに精度の高い複製可否の判定を行うことが可能になる。液体窒素温度まで被検査物を冷却する必要があるが、例えば、抜き取り検査を実施することにより検査コストの低減が可能である。
内包フラーレンの製造業者側からみれば、内包フラーレンの購入者名や使用目的を把握するのは容易であることは上述した通りであり、犯罪者が入手して機密書類などの違法な複製に用いることは困難である。
また、図3では、顔料を溶剤に分散させた顔料インクを例に挙げて説明したが、染料を溶剤に溶かした染料インクを用いた場合でも本願発明を適用することは可能である。またインクにセキュリティーマーカーを混ぜずに、例えば溶剤や固着剤にセキュリティーマーカーを混合する場合でも、情報記録媒体にセキュリティーマーカーを取り込むことは可能である。また、セキュリティーマーカー印刷領域あるいはセキュリティーマーカー塗布領域が、無色でも着色でもよく、透明でも不透明でもよいことは言うまでもない。
本願発明による複製防止方法は、従来の潜像を用いた複製防止方法と異なり、単なる複製物であることを表示するのではなく、コピーやスキャンを禁止するものであり、情報の漏洩を防止することが可能である。
以上のように、内包フラーレンイオン化合物をセキュリティーマーカーとして用いることにより、例えば、偽札製造使用等の犯罪防止、機密文書の複写・複製防止による機密情報の漏洩防止に効果がある。
以下に、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)
純度88%(重量%)の内包フラーレンイオン化合物の塩[Li@C60PF(イデア・インターナショナル株式会社製)を含む直径4mm、厚さ0.1mmの試料を用意して、常温(300K)で、テラヘルツ波長領域での分光測定を行った。
F−NMR法により求めた試料の純度は88%であった。分光測定は厚さ0.1mmのペレット状に成形した試料について行い、分光器は、フーリエ変換遠赤外分光器(FT−FIR;1−10THz; JASCO社製FARIS及びTHz時間領域分光器(THz−TDS; 0.1−3THz;自作)を用いた。なお、[Li@C60](PFは、単位面積当たりでは、2.23mg/cmである。
図6(a)乃至(c)は、それぞれ、[Li@C60](PF、[Li@C60](NTF、[Li@C60](SbClのテラヘルツ光吸収スペクトルの測定結果を示すグラフである。それぞれのイオン化合物に固有のテラヘルツ光吸収スペクトルが観測された。例えば、[Li@C60](PFについて言えば、1.25THz、2.25THz、8.05THz、9.30THzに特徴的な吸収ピークがみられた。とりわけ1.25THz、2.25THzの2つのピークが大きく、1.25THzのピークは2.25THzのピークよりも著しくブロードなピークであった。
(実施例2)
純度88%の内包フラーレンイオン化合物[Li@C60](PFを含む直径4mm、厚さ0.1mmの試料を用意して、テラヘルツ波長領域での分光測定を行った。測定温度を4K〜300Kの範囲で変化させ、テラヘルツ光吸収スペクトルの温度変化を測定した。試料は、イデア・インターナショナル(株)で合成されたものを用いた。F−NMR法により求めた試料の純度は88%であった。分光測定は厚さ0.1mmのペレット状に成形した試料について行い、分光器は、フーリエ変換遠赤外分光器(FT−FIR;1−10THz; JASCO社製FARIS及びBomen社製DA8PC.25CV)及びTHz時間領域分光器(THz−TDS; 0.1−3THz;自作)を用いた。
図7、図8は、[Li@C60](PFのテラヘルツ光吸収スペクトルの温度依存性の測定結果を示すグラフである。測定結果から二つの特徴的な現象が観測された。一つは、図7に示すように140Kより低温では、常温で観察されなかった7.75THz付近の顕著な吸収ピークが観察されたことである。もう一つは、図8に示されるように、常温で観察される1.25THzの吸収ピークが温度降下に伴う大幅な低周波数側へのシフトが100Kから200Kの温度領域で観察されたことである。
(1)7.75THzピークの低温領域での温度変化を測定することにより、液体窒素(77K)を用いた内包フラーレンイオン化合物の高精度検出が可能であった。
(2)1.25THzピークの低温領域での温度変化を測定することにより、ドライアイス(194K)を用いた内包フラーレンイオン化合物の高精度検出が可能であり、7.75THzピークの測定より簡易化された検出が可能であった。
(実施例3)
本例では、[Li@C60](PFの含有量を0.1−6mg/cmの範囲で変化させて実施例1と同様の試験を行ったところ、0.5mg/cm以上の場合にはそれ未満の場合よりもピークの検出が容易であった。なお。5mg/cmを超えてもピーク検出上の効果は飽和した。
1、6 情報記録媒体
2、9、13 インク
3、10、14 溶媒
4、11、15 顔料
5、12 内包フラーレン
7 セキュリティーマーカー印刷領域
8 セキュリティーマーカー非印刷領域
21 真偽判定装置
22 テラヘルツ光照射モジュール
23 情報記録媒体
24 テラヘルツ光測定モジュール
25 吸収スペクトル解析モジュール
26 真偽判定モジュール
27 判定結果表示モジュール
41、48 情報記録媒体
42 背表紙
43、50 セキュリティーマーカー印刷領域
44、51 インク
45、52 溶媒
46、53 顔料
47、54 内包フラーレン
49 表紙
61 複製装置(コピー機/スキャナー兼用機)
62 テラヘルツ光照射モジュール
63 情報記録媒体
64 テラヘルツ光測定モジュール
65 吸収スペクトル解析モジュール
66 複製防止判定モジュール
67 コピー機能制御モジュール
68 スキャナー機能制御モジュール

Claims (16)

  1. テラヘルツ波長領域における吸光スペクトルが温度変化する物質を含む材料からなるセキュリティーマーカー。
  2. 前記物質は、内包フラーレンをカチオンとするイオン化合物である請求項1記載のセキュリティーマーカー。
  3. 前記カチオンは[M@C2n]である請求項2記載のセキュリティーマーカー。ただし、Mは原子であり、nは30以上の整数である。
  4. 前記Mはアルカリ金属である請求項3記載のセキュリティーマーカー。
  5. 前記Mはリチウムである請求項4記載のセキュリティーマーカー。
  6. フラーレンはC60である請求項1ないし5のいずれか1項記載のセキュリティーマーカー。
  7. フラーレンはC70である請求項1ないし5のいずれか1項記載のセキュリティーマーカー。
  8. 前記イオン化合物のアニオンは[PF、[NTF、[SbClのいずれか一つのである請求項2ないし7のいずれか1項記載のセキュリティーマーカー。
  9. 前記請求項1ないし8のいずれか1項記載のセキュリティーマーカーを有する情報記録媒体。
  10. 前記セキュリティーマーカーを含有するインクまたは塗料で、全体または一部の領域を印刷または塗布した請求項9記載の情報記録媒体。
  11. 前記情報記録媒体は紙製の本であり、前記セキュリティーマーカーを本の背表紙に有する請求項9又は10記載の情報記録媒体。
  12. 前記内包フラーレンをカチオンとするイオン化合物の含有量は、1mg/cm以上である請求項9ないし11のいずれか1項記載の情報記録媒体。
  13. 情報記録媒体にテラヘルツを照射するための手段と、前記情報記録媒体からのテラヘルツ波長領域における吸光スペクトルを測定するための測定手段と、前記測定手段で測定した吸収スペクトルが、請求項9ないし12のいずれか1項記載の情報記録媒体におけるセキュリティーマーカーの有する吸収スペクトルか否かを判断するための手段とを有する情報記録媒体の判定装置。
  14. 情報記録媒体に温度変化を与えるための手段を設けた請求項13記載の情報記録媒体の判定装置。
  15. 前記記録媒体の一部の表面領域のみに温度変化を与えるようにした請求項14記載の情報記録媒体の判定装置。
  16. 請求項13ないし15のいずれか1項記載の情報記録媒体の判定装置を有し、前記セキュリティーマーカーの有無に応じて、複製動作を開始又は停止するようにした複製防止可能な複製装置。
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