JP2018036190A - テラヘルツ波領域で識別可能な真偽判別印刷物とその真偽判別方法 - Google Patents

テラヘルツ波領域で識別可能な真偽判別印刷物とその真偽判別方法 Download PDF

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Abstract

【課題】機械読取りによりテラヘルツスペクトルの特徴を検出して真偽判別を行う技術分野において、赤外分光法やラマン分光法では識別不可能なフラーレンを含有するペアインキにより基材に情報を形成し、材料の秘匿性の高い真偽判別印刷物を提供する。【解決手段】本発明は、基材上の少なくとも一部に、フラーレン(C2n)を含有する第一のインキにより印刷された第一の印刷領域と、リチウム内包フラーレン塩((Li@+C2n)/(PF6−))を含有する第二のインキにより印刷された第二の印刷領域から成る印刷画像を備え、印刷画像に所定の周波数領域のテラヘルツ波を照射した場合の、テラヘルツ波の周波数が2.5THz近傍において、第一の印刷領域と第二の印刷領域の吸収スペクトル及び/又はテラヘルツ透過画像が、異なることを特徴とする真偽判別印刷物である。【選択図】図1

Description

本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等の貴重印刷物の分野において、フラーレンを用いた機械読取りにより真偽判別を行うことができる真偽判別印刷物に関する。
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー等のデジタル機器の発展により、身分証明書や証券等に代表される貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。その対策の一つとして、従来からホログラム、磁気記録媒体又は導電性インキにより情報を表記し、表記した情報の磁気又は電圧を機械により検出して真偽判別を行う、真偽判別印刷物とその製造方法がある。
その対策の一つとして、テラヘルツ波領域で応答する材料により情報を表記し、表記した情報のテラヘルツスペクトルの特徴により物品を識別する方法がある。
その一例として、 本出願人は、テラヘルツ波応答材料として有機化合物を印刷や塗布等の手段を用いて印刷物やカード等の一部又は全面に付与し、テラヘルツスペクトルの特徴から印刷物やカード等の真偽判別を行う方法を開示している(例えば、特許文献1参照)。
特開2015−137913号公報
しかし、特許文献1のテラヘルツ波領域において応答する有機化合物材料は、中赤外吸収及び/又はラマン吸収に活性があるため、赤外分光法やラマン分光法を用いても識別可能であり、有機化合物材料の材質を特定される恐れがあった。
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、機械読取りによりテラヘルツスペクトルの特徴を検出して真偽判別を行う技術分野において、赤外分光法やラマン分光法では識別不可能なフラーレンを含有するペアインキにより基材に情報を形成し、材料の秘匿性の高い真偽判別印刷物を提供する。
本発明は、基材上の少なくとも一部に、フラーレン(C2n)を含有する第一のインキにより印刷された第一の印刷領域と、リチウム内包フラーレン塩((Li@+C2n)/(PF ))を含有する第二のインキにより印刷された第二の印刷領域から成る印刷画像を備え、印刷画像に所定の周波数領域のテラヘルツ波を照射した場合の、テラヘルツ波の周波数が2.5THz近傍において、第一の印刷領域と第二の印刷領域の吸収スペクトル及び/又はテラヘルツ透過画像が、異なることを特徴とする真偽判別印刷物である。
また、本発明は、第一の印刷領域と第二の印刷領域が、等色であることを特徴とする真偽判別印刷物である。
本発明は、真偽判別印刷物の真偽判別方法であって、印刷画像に所定の周波数領域のテラヘルツ波を照射する工程と、印刷画像における第一の印刷領域と第二の印刷領域のテラヘルツ波のそれぞれの吸収スペクトル及び/又はそれぞれのテラヘルツ透過画像を検出する工程と、第一の印刷領域と第二の印刷領域の吸収スペクトルのピーク波形及び/又はテラヘルツ透過画像と、真正品のピーク波形及び/又はテラヘルツ透過画像を比較して真偽判別を行う工程から成ることを特徴とする真偽判別印刷物の真偽判別方法である。
本発明は、フラーレンとリチウム内包フラーレンの二種類の赤外分光法やラマン分光法により識別不可能な材料をそれぞれ印刷インキに配合し、テラヘルツ吸収特性及び透過特性の異なるインキにより形成した二つの領域を有するため、材料の秘匿性が高く、セキュリティレベルの高い真偽判別要素を付与できるという効果を奏する。
本発明における真偽判別印刷物の正面図を示す。 本発明における判別方法の工程図を示す。 テラヘルツ波の吸収スペクトルの一例図を示す。 実施例1の真偽判別印刷物の平面図を示す。 実施例1のテラヘルツ吸収スペクトルを示す。 実施例1のテラヘルツ透過画像を示す。
本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他、様々な形態が実施可能である。
(真偽判別印刷物)
図1に、本発明における真偽判別印刷物(1)を示す。図1(a)に示す真偽判別印刷物(1)は、基材(2)の上に、ペアインキにより形成された第一の印刷領域(3)と第二の印刷領域(4)から成る印刷画像(11)を有する。基材(2)は、後述するテラヘルツ波に影響を与えなければ特に限定されず、紙又はプラスティックであってもよく、その材質は、問わない。また、各印刷領域(3、4)を形成する大きさ、形状、色彩は、目視において視認可能であればよく、特に限定されることはない。また、図1(a)に示すように、第一の印刷領域(3)と第二の印刷領域(4)は、離れて印刷画像(11)を形成しているが、互いの印刷領域(3、4)は、重なり合ってさえいなければよく、図1(b)に示すように隣接して、印刷画像(11)を形成してもよい。なお、第一の印刷領域(3)と第二の印刷領域(4)の色彩は、互いに異なる色彩でもよいが、互いに等色であることがより好ましい。等色であることによって、いずれの領域にも後述するフラーレンを含有していることが分かることを防ぐためであり、図1(b)に示す隣接する形態において、含有している材料の隠蔽性が高まるためである。
第一の印刷領域(3)は、公知のフラーレン(以下「C2n」という。)を含有する第一のインキにより印刷されて成る。「C2n」であれば、テラヘルツ領域で同一の特性を有し、印刷用ワニスとの相溶性がよいこと及びインキに混合してもインキの印刷適性を維持することができる。「C2n」は、直径約0.7〜1.0nmのサッカーボールやラグビーボールのような対称性のよい形状をした、特異な立体構造(ケージ構造)をとる炭素の分子構造体であり、12個の炭素五員環と2個以上の炭素六員環から成る。また、「C2n」は、「C60」以上のサイズの球殻状に閉じた一般式C2n(2n≧60)で表わされる一群の炭素分子の総称である。なお、「C2n」の他のフラーレンの具体例としては、C60、70、C76、C82、C90、C96がある。
第一のインキに対する「C2n」の量は、0.01%から5%までである。0.01%未満では、テラヘルツ分光分析装置の検出下限以下となり、明瞭なピークを検出できない。5%を超えた場合は、検出ピークが飽和して精密な識別が困難となる。また、後述する第二のインキとの色彩が、等色となりにくく、隠蔽性に欠ける。
第二の印刷領域(4)は、第一のインキに含有したC2nにLiが内包され(Li@+C2n)、対陰イオン(PF )を付加した塩を含有した公知のリチウム内包フラーレン塩(以下「(Li@+C2n)/(PF )」という。)を配合した第二のインキにより印刷されて成る。「C2n」の内部空洞に原子(以下「M」で表わす)を内包したものは、原子内包フラーレンと呼ばれ、一般式M@C2n(2n≧60)で表わされる分子の総称である。ここで「M」は、単一若しくは複数の原子又はそれらを含む原子団であり、必ずしも単一の原子でなくてもよい。
第二のインキに対する「(Li@+C2n)/(PF )」の量は、0.01%から5%までである。0.01%未満では、テラヘルツ分光分析装置の検出下限以下となり、明瞭なピークを検出できない。5%を超えた場合は、検出ピークが飽和して精密な識別が困難となる。
第一のインキと第二のインキを、基材に印刷又はコーティングにより付与する方法(以下「付与方法」という。)としては、公知の凹版、凸版、オフセット、スクリーン、インクジェット、グラビア、フレキソ等による印刷か、又はコーティング等の塗工方法を用いることができる。また、これらの印刷及び塗工方法の組合せにより付与してもよい。
各インキに使用するバインダーとしては、特に限定されるものではない。例えば、アマニ油、オリーブ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等の油脂類、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリアワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、エステルワックス、低分子量ポリエチレン等の合成ワックス類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロメン酸、ヘベニン酸等の高級脂肪酸類、ステアリルアルコール、ヘベニルアルコール等の高級アルコール類、グルコース、エチレングルコース、アミロース等の炭化水素類、脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリンアミド、オレインアミド等のアミド類、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニル系樹脂、石油系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルビン樹脂等の樹脂類、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等のエラストマー類、アクリレート、メタクリレートのオリゴマー及びモノマーからなる紫外線硬化樹脂、水添石油樹脂、シリコーン、流動パラフィン、フッ素樹脂等のタッキファイヤー類等を単独又は複数含有させたものから成るバインダーを使用することができる。
さらに、バインダーは、必要に応じて界面活性剤、充填剤、酸化防止剤、乾燥剤、光重合開始剤等を添加して使用してもよい。なお、各インキには、インキの粘性を整え、印刷適性を向上させる目的で、炭酸カルシウム、アルミナ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機顔料を体質顔料として配合してもよい。また、識別を妨げない範囲であれば、公知の色材、機能性材料等を混合してもよい。
(判別方法)
次に、本発明の真偽判別印刷物の真偽判別方法について説明する。図2は、本発明の真偽判別方法である。本発明は、テラヘルツ分光分析装置を用いて真偽判別印刷物の真偽判別を行う方法であって、図2に示すように、基材上に付与された第一の印刷領域と第二の印刷領域から成る印刷画像(11)に所定の周波数領域のテラヘルツ波を連続的に照射する照射工程(S1)と、印刷画像(11)を形成する第一の印刷領域と第二の印刷領域の各領域にて反射されたテラヘルツ波の吸収スペクトルを検出する検出工程(S2)と、検出した吸収スペクトルのピーク波形と、真正品の吸収スペクトルのピーク波形を比較照合及び/又は2.5THzにおける透過画像を取得し、透過及び吸収を濃淡で示した画像を比較照合して真偽判別を行う判別工程(S3)と、を少なくとも有することを特徴とする真偽判別方法である。
照射工程(S1)は、テラヘルツ分光分析装置から、周波数が0.1THz〜7THzのテラヘルツ波を連続的に印刷画像(11)に照射する。なお、本明細書におけるテラヘルツ波とは、波長が25μm〜10mm(=周波数が12THz〜30GHz)の周波数領域の電磁波のことをいう。テラヘルツ波は、テラヘルツ光、テラヘルツ電磁波などとも称されることがあるが、本明細書では、テラヘルツ波として説明する。使用するテラヘルツ波の周波数は、0.1THz〜7THzである。好ましくは、テラヘルツ波の周波数は、0.5THz〜4THzのものを用いる。当該領域の周波数領域が、金属内包フラーレンの検出において、良好な感度を示すためである。
検出工程(S2)は、印刷画像(11)を形成する第一の印刷領域(3)と第二の印刷領域(4)の各領域にて反射されたテラヘルツ波の吸収スペクトルをテラヘルツ分光分析装置により検出する。テラヘルツ波吸収スペクトルは、「C2n」及び「(Li@+C2n)/(PF )」で形状が異なるため、成分の特徴的なピークを検出し、テラヘルツ領域でのみ両者の識別を行うためである。
判別工程(S3)は、検出した第一の印刷領域(3)と第二の印刷領域(4)における吸収スペクトル波形及び/又はテラヘルツ透過画像と、真正品としてあらかじめ登録した吸収スペクトル波形及び/又はテラヘルツ透過画像とそれぞれ比較照合して、「真」又は「偽」の判定を行う。吸収スペクトル波形により判定を行う手段としては、基準の二つの波形パターンと検出された二つの波形パターンにパターンマッチングを行い、基準パターンと一致した場合には、対象が「真」であるとして判定し、一方でも一致しない場合には、「偽」として判定する。なお、パターンマッチングについては、両方の領域の重ね合わせ具合により、完全な潜像画像が形成されないことも有り得るため、ある閾値以上の類似度であれば、同一であることとする判断基準を設定してもよい。ここで、閾値については、適宜、設定すればよい。あるいは、それぞれの検出波形を光電変換により電圧に変換し、あらかじめ定めた基準値と比較演算して真偽判別を行ってもよい。例えば、検出された二つの波形パターンのそれぞれの出力電圧と、あらかじめ定めた基準の二つの波形パターン出力電圧を基準値として比較演算して基準値内か否かの双方により判別する。
透過画像により判定を行う手段としては、検出工程(S2)のテラヘルツ分光分析装置によりテラヘルツ透過画像を取得し、「C2n」及び「(Li@+C2n)/(PF )」の2.5THzにおける透過及び吸収を画像の明暗(濃淡も含む。)で示した二次元画像として、肉眼により判別を行う。「C2n」は、テラヘルツ波に吸収特性がないため透過し、「(Li@+C2n)/(PF )」は、Liに吸収特性を有するため濃淡画像として表示されるためである。なお、判別工程(S3)は、吸収スペクトル波形、テラヘルツ透過画像の比較照合いずれの手段を用いてもよいが、双方の手段を併用した方が、より明確に真偽判別を行うことができる。
前述した図1の真偽判別印刷物(1)の第一の印刷領域(3)と第二の印刷領域(4)の各領域に、周波数が0.5THz〜4THzのテラヘルツ波を連続的に照射した場合は、図3に示す吸収スペクトルが得られる。
図3に示すように、第一の印刷領域(3)の吸収スペクトル(5)は、2.5THzに吸収ピーク(7)がほぼないのに対し、第二の印刷領域(4)の吸収スペクトル(6)は、顕著な吸収ピーク(8)を有する。この両者の吸収ピーク(7、8)の有無を、真正品としてあらかじめ登録した波形パターンとそれぞれパターンマッチングにより比較照合して真偽判別を行う。あるいは、検出された二つの波形パターンのそれぞれの出力電圧と、あらかじめ定めた基準の二つの波形パターンの出力電圧を基準値として比較演算を行い、基準値内か否かにより判別する。
次に、テラヘルツ透過画像について説明する。第一の印刷領域(3)のテラヘルツ透過画像は、2.5THzに吸収ピーク(7)がほぼないため淡く表示される。一方、第二の印刷領域(4)のテラヘルツ透過画像は、2.5THzに吸収ピーク(8)を有するため、第一の印刷領域(3)のテラヘルツ透過画像より濃く表示される。よって、本発明の真偽判別印刷物(1)は、2.5THzのテラヘルツ波において、顕著な濃淡の画像の組合せとして比較照合できる。
よって、第一の印刷領域(3)の吸収スペクトル(5)のピーク波形(7)及び第二の印刷領域(4)の吸収スペクトル(6)のピーク波形(8)は、Li内包の有無に特化した形状の違いがみられるため、測定対象物の吸収スペクトル(5、6)のピーク波形(7、8)を比較し、ピーク波形(7、8)の有無を確認することにより真偽を判別できるとともに、テラヘルツ透過画像を確認することで瞬時に真偽判定を行うことができる。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
実施例を以下に示す。実施例は、第一の印刷領域(3’)と、第二の印刷領域(4’)を隣接して形成した印刷画像(11’)から成る真偽判別印刷物(1’)である。
図4に、真偽判別印刷物(1’)を示す。真偽判別印刷物(1’)は、基材(2’)の上に、印刷画像(11’)が形成されて成る。基材(2’)は、市販のPPC用紙(FUJI Xerox社製 GR100)を使用した。真偽判別印刷物(1’)の印刷画像(11’)は、産業用インクジェット印刷機を使用して第一の印刷領域(3’)と、第二の印刷領域(4’)を隣接して形成した。
本発明に使用する第一のインキと第二のインキは、それぞれ表1に示す混合比により、スターラーを使用して1時間撹拌して作製した。
Figure 2018036190
イエローインキは、市販のインクジェットインキ(TOYOINK社製 LIOJETFV03 YELLOW)を使用した。フラーレンは、市販の「C60」(和光純薬工業(株)製)と市販の「(Li@+C60)/(PF )」(株式会社イデア・インターナショナル製)を使用した。
基材(2’)に、産業用インクジェット印刷機を使用して、第一のインキにより第一の印刷領域(3’)と、第二のインキにより第二の印刷領域(4’)を印刷し、可視光領域では、第一の印刷領域(3’)と第二の印刷領域(4’)が等色として視認される印刷画像(11’)から成る、真偽判別印刷物(1’)を作製した。
判別には、テラヘルツ分光分析装置(アドバンテスト社製TAS7400SP)を使用して、真偽判別印刷物(1’)の真偽判別を行った。真正品か否かの判定は、あらかじめ定めた図3に示す真正品の印刷画像(11)における第一の印刷領域(3)の吸収スペクトル(5)及び第二の印刷領域(4)の吸収スペクトル(6)と、印刷画像(11’)から検出した第一の印刷領域(3’)の吸収スペクトル(5’)及び第二の印刷領域(4’)の吸収スペクトル(6’)をパターンマッチングさせ、一致したものを真正品と判定することとした。また、図6に示すように、印刷画像(11’)のテラヘルツ透過画像(9、10)を検出して、肉眼により更に明確に判別することとした。
照射工程では、0.1THz〜4THzのテラヘルツ波を印刷画像(11’)に対して連続照射した。検出工程では、図5に示すように、第一の印刷領域(3’)の吸収スペクトル(5’)と、第二の印刷領域(4’)の吸収スペクトル(6’)を検出した。
判別工程では、まず、両者の吸収スペクトルを比較した。吸収スペクトルは,図5に示すように、第一の印刷領域(3’)の吸収スペクトル(5’)のピークの強度(任意単位)は、2.5THz付近において0.01であった。一方、第二の印刷領域(4’)の吸収スペクトル(6’)の吸収ピーク(8’)の強度(任意単位)は、2.5THz付近において0.5であり、「C60」と「(Li@+C60)/(PF )」のそれぞれ異なる吸収スペクトルを確認した。
次に、図3に示す真正品の吸収スペクトル(5、6)の波形と、図5に示す印刷画像(11’)から検出した吸収スペクトル(5’、6’)のピーク波形を、パターンマッチングしたところ、図3の真正品である吸収スペクトル(5、6)のピーク波形と同一波形であることから、真偽判別印刷物(1’)を真正品と判定した。
次に、2.5THzにおいて、真偽判別印刷物(1’)における印刷画像(11’)のテラヘルツ透過画像(9、10)を取得した。
判別には、テラヘルツカメラ(NEC社製IRV-TM100―Q28)を使用し、照射工程においてテラヘルツレーザ光源を用いて、2.5THzにおける印刷画像(11’)のテラヘルツ透過画像(9、10)を取得した。図6に示すように、第一の印刷領域(3’)と第二の印刷領域(4’)のテラヘルツ透過画像(9、10)を得て両者の明確な差異を確認した。第一の印刷領域(3’)は、「C60」に2.5THzのテラヘルツ波に吸収特性がないことからテラヘルツ透過画像(9)を視認できなかった。一方、第二の印刷領域(4’)は、Liに2.5THzのテラヘルツ波に吸収特性があるため、濃淡画像としてテラヘルツ透過画像(10)を視認できた。
よって、「(Li@+C60)/(PF )」を含有するインキが付与されている領域は、「C60」を含有するインキと比較して、2.5THzのテラヘルツ波における吸収特性が高く、テラヘルツ透過画像(9、10)を目視により判別することによって、真偽判別印刷物(1’)が真性品であることが確認できた。
1、1’ 真偽判別印刷物
2、2’ 基材
3、3’ 第一の印刷領域
4、4’ 第二の印刷領域
5、5’ 第一の印刷領域の吸収スペクトル
6、6’ 第二の印刷領域の吸収スペクトル
7、7’ 第一の印刷領域の吸収スペクトルの吸収ピーク
8、8’ 第二の印刷領域の吸収スペクトルの吸収ピーク
9 第一の印刷領域のテラヘルツ透過画像
10 第二の印刷領域のテラヘルツ透過画像
11、11’ 印刷画像

Claims (3)

  1. 基材上の少なくとも一部に、フラーレン(C2n)を含有する第一のインキにより印刷された第一の印刷領域と、リチウム内包フラーレン塩((Li@+C2n)/(PF ))を含有する第二のインキにより印刷された第二の印刷領域から成る印刷画像を備え、
    前記印刷画像に所定の周波数領域のテラヘルツ波を照射した場合の、前記テラヘルツ波の周波数が2.5THz近傍において、前記第一の印刷領域と前記第二の印刷領域の吸収スペクトル及び/又はテラヘルツ透過画像が、異なることを特徴とする真偽判別印刷物。
  2. 前記第一の印刷領域と前記第二の印刷領域が、等色であることを特徴とする請求項1記載の真偽判別印刷物。
  3. 請求項1又は請求項2記載の真偽判別印刷物の真偽判別方法であって、
    前記印刷画像に所定の周波数領域のテラヘルツ波を照射する工程と、
    前記印刷画像における前記第一の印刷領域と前記第二の印刷領域の前記テラヘルツ波のそれぞれの前記吸収スペクトル及び/又はそれぞれの前記テラヘルツ透過画像を検出する工程と、
    前記第一の印刷領域と前記第二の印刷領域の前記吸収スペクトルのピーク波形及び/又は前記テラヘルツ透過画像と、真正品のピーク波形及び/又はテラヘルツ透過画像を比較して真偽判別を行う工程から成ることを特徴とする真偽判別印刷物の真偽判別方法。
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