JP2017139351A - 太陽電池素子の製造方法および太陽電池素子 - Google Patents

太陽電池素子の製造方法および太陽電池素子 Download PDF

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豊治 松原
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誠一 中谷
靖彦 粟飯原
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靖彦 粟飯原
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Satoru Tomekawa
悟 留河
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永嗣 阿部
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Abstract

【課題】 製造工程の煩雑化を招くことなく、取出し電極の配線抵抗およびコンタクト抵抗を良好に低減して、より高効率化を図ることが可能な太陽電池素子の製造方法を提供する。【解決手段】 拡散層12を有するとともに表面11aに反射防止膜13が形成された半導体基板11に対してレーザ加工を施す。これにより、半導体基板11の表面状態を保持しつつ反射防止膜13を配線パターン状に除去して、パターン状貫通孔10bを形成する。表面11aに対して、少なくともパターン状貫通孔10bを充填するように、導電性ペースト30を配線パターン状に印刷して、パターン状画線部31を形成する。パターン状画線部31を焼成することにより焼結させて、フィンガー電極21等の取出し電極を表面11a上に形成する。【選択図】 図2

Description

本発明は、導電性ペーストを用いて取出し電極を形成する太陽電池素子の製造方法および太陽電池素子に関する。
一般的な太陽電池素子は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンの半導体基板の一方の面を受光面として、この受光面にpn接合を形成した上で、光電流を取り出す取出し電極(集電電極)が形成される。pn接合としては、代表的には、P型シリコンの表面に不純物としてリン(P)を拡散させたn型の拡散層が挙げられる。また、シリコンは屈折率が高く入射光の大部分を反射するので、受光面には、通常、受光した光を効率的に吸収するために反射防止膜(反射防止層)が形成される。
代表的な取出し電極の構成としては、フィンガー電極およびバスバー電極(またはタブ電極)が挙げられる。フィンガー電極は、受光面上に多数並列配置された細長い電極であって、半導体基板から発生した光電流を収集する。バスバー電極は、フィンガー電極に対して交差するように配置された帯状の電極であり、個々のフィンガー電極で収集された光電流をさらに集約して外部に出力する。このような取出し電極は、一般的には、導電性粉末を含有する導電性ペーストを所定の配線パターンで半導体基板上にスクリーン印刷し、所定の条件で焼成等の処理を施すことによって形成される。
また、反射防止膜は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の成膜方法を用いて半導体基板の受光面上に形成される。代表的な反射防止膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、酸化チタン膜等が挙げられる。これら反射防止膜は電気絶縁性であるため、反射防止膜上から取出し電極を形成するためには、配線パターン状に印刷した導電性ペースト(印刷前の導電性ペーストと区別する便宜上「パターン状画線部」と称する。)を焼成する際に、当該パターン状画線部の直下の部分だけ反射防止膜を除去する必要性が生じる。
このように導電性ペーストの焼成時に、直下の反射防止膜を除去することをファイヤスルー(FT)と称する。導電性ペーストの焼成によりファイヤスルーが生じると、導電性粉末が焼結して取出し電極となる低抵抗配線が形成されるとともに、反射防止膜が除去されて低抵抗配線が下層の拡散層と電気的に接続される。
このような導電性ペーストのファイヤスルーは、代表的には、鉛系ガラス、二酸化テルル、またはテルル系ガラス等の成分(便宜上「ファイヤスルー成分」と称する。)を導電性ペーストに配合することにより実現できることが知られている。例えば、特許文献1には、ファイヤスルー成分としてテルルまたはセレン等の低融点金属もしくはその化合物を配合した、太陽電池素子の電極形成用導電性ペーストが開示されている。
ところで、発電のさらなる高効率化を図る観点から、取出し電極に対しては、発生した光電流をより効率的に取り出せるとともに、入射光の受光面積をできる限り確保できるように、受光面に設けられることが求められている。より効率的に光電流を取り出すためには、取出し電極が受光面上にできるだけ均一に設けられることが望ましい。しかしながら、取出し電極は、導電性粉末の焼結体であるため、受光面上で太陽光を遮蔽してしまう。それゆえ、効率的な光電流の取出しと受光面積の確保とを両立させる観点では、取出し電極をより微細化することが望まれる。
このような取出し電極の微細化に関しては、例えば、特許文献2または特許文献3に開示されるように、半導体基板の受光面にフィルムを貼り付けてからレーザ加工して開口部を形成し、この開口部に導電性ペーストを埋め込んでからフィルムを除去して、当該導電性ペーストを焼成する方法が提案されている。
特許文献2に開示される電極の形成方法では、反射防止膜の上に例えばポリイミドフィルムを貼り付け、所定条件でレーザ加工することにより、ポリイミドフィルムにのみ開口部を設けている。一方、特許文献3に開示される太陽電池の製造方法では、反射防止膜である酸化チタン膜の上にリンガラス(PSG)膜を形成し、さらにその上に例えばポリイミドフィルムを貼り付け、所定条件でレーザ加工することにより、ポリイミドフィルムに開口部を形成するだけでなく、PSG膜、反射防止膜、パッシベーション膜、および拡散層を貫通して半導体基板にまで及ぶ溝を形成している。
国際公開第2010/016186号公報 特開平05−036998号公報 特開平05−326989号公報
しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、ファイヤスルー性を有する導電性ペーストを用いて取出し電極を形成する方法では、当該取出し電極の微細化およびコンタクト抵抗の低減に限界があることが明らかとなった。
具体的には、取出し電極となるパターン状画線部を、スクリーン印刷により受光面に印刷すると、当該パターン状画線部の横断面は、受光面に接触する側(下側)が大きい台形状となる。それゆえ、焼成後の取出し電極の横断面も台形状になるため、受光面積および取出し電極の微細化に影響を及ぼす。
しかも、導電性ペーストは粘性を有するため、パターン状画線部に印刷ダレが生じてしまう。印刷ダレは、印刷幅を広くするだけでなく、印刷厚みの低減にもつながる。印刷幅が広くなると、取出し電極の線幅が広くなり、受光面積にさらなる影響を及ぼすとともに、印刷厚みの低減は取出し電極の厚みを小さくするので、取出し電極の配線抵抗を十分に低減できないおそれがある。
さらに、ファイヤスルー成分によるファイヤスルーの実現は、パターン状画線部の印刷厚み方向に含まれるファイヤスルー成分の絶対量に依存する。パターン状画線部の横断面は、前記の通り、台形状であって印刷ダレも生じてしまう。そのため、横断面の印刷厚みは、中央部が大きく(厚く)、側部(周縁部、裾野部)が小さく(薄く)なる。したがって、パターン状画線部の中央部ではファイヤスルーが可能な所定量以上のファイヤスルー成分が含まれるとしても、厚みの小さい側部では、所定量のファイヤスルー成分を確保することができない。
これにより、パターン状画線部を焼成した場合には、実際には、中央部近傍でしかファイヤスルーが生じず、結果として、印刷幅の半分程度しかファイヤスルーされない場合がある。印刷幅方向全体でファイヤスルーが十分に生じなければ、得られる取出し電極と半導体基板との間には、反射防止膜が部分的に残存することになる。そのため、取出し電極のコンタクト抵抗を十分に低減することができない。
また、特許文献2に開示される電極の形成方法は、パターン状画線部を微細に形成することは可能であるとしても、マスクを用いている点ではスクリーン印刷と同様であるため、台形状の横断面を回避することはできず、印刷ダレおよび側部でのファイヤスルーの未発生について十分に対応することができない。
一方、特許文献3では、フィルムだけでなく、半導体基板に及ぶまでレーザ加工が施されているので、特許文献2と同様にフィルムに開口部が形成されるだけでなく、反射防止膜を貫通して半導体基板にまで達する溝が形成される。そのため、導電性ペーストにファイヤスルー性を付与する(ファイヤスルー成分を添加する)必要が無い。しかしながら、この方法では、半導体基板に拡散層を形成してから後に、予め第二の導電性のドーパントを含む材料(リン不純物を含む塗布液)を塗布し、レーザ加工により溝を形成すると同時に溝周辺部に第二の拡散層を形成することになる。したがって、拡散層を二重に形成するという冗長な工程が必要となるので、製造工程の煩雑化を招くことになる。また、第二の拡散層の形成に際して、レーザ加工処理された以外の部位にPGS膜が残存し、光の透過性が低下するおそれがあるため、高効率化が妨げられてしまう。さらに、レーザ加工は短時間のパルスで加工されるため、第二の拡散層の厚みを制御することが難しい。例えば、拡散層の厚みが薄い部分が発生すると、p型シリコン層のショートによりシャント抵抗(並列抵抗)が低下して、FF(曲線因子)が低下するおそれがある。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、製造工程の煩雑化を招くことなく、取出し電極の配線抵抗およびコンタクト抵抗を良好に低減して、より高効率化を図ることが可能な太陽電池素子の製造方法および太陽電池素子を提供することを目的とする。
前記の課題に鑑みて本発明者らが鋭意検討した結果、レーザ加工により半導体基板の表面(受光面)に影響を及ぼすことなく、反射防止膜に配線パターン状の開口部を形成することができ、これにより、反射防止膜をパターン状画線部の印刷用マスクとして用いることができるとともに、ファイヤスルーによる反射防止膜の除去が不要になり、さらには、その横断面がより矩形に近い取出し電極を形成することができるとともに、当該取出し電極の配線抵抗およびコンタクト抵抗を良好に低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る太陽電池素子の製造方法は、前記の課題を解決するために、拡散層を有するとともに表面に反射防止膜が形成された半導体基板に対して、レーザ加工により当該半導体基板の表面状態を保持しつつ前記反射防止膜を配線パターン状に除去することにより、パターン状貫通孔を形成し、前記表面に対して、少なくとも前記パターン状貫通孔を充填するように、導電性ペーストを前記配線パターン状に印刷して、当該導電性ペーストのパターン状画線部を形成し、前記パターン状画線部を焼成することにより焼結させて、取出し電極を前記表面上に形成する構成である。
前記構成によれば、反射防止膜をレーザ加工してパターン状貫通孔を形成することにより、微細な配線パターンに対応した貫通孔を形成することができる。また、このパターン状貫通孔を充填するように導電性ペーストを配線パターン状に印刷するので、反射防止膜を印刷用マスクとして利用することができるとともに、ファイヤスルーによる反射防止膜の除去が不要になる。さらに、焼成時には、反射防止膜のパターン状貫通孔内で導電性ペーストの印刷形状が保持されるので、その横断面がより矩形に近い取出し電極を形成することができるとともに、当該取出し電極の配線抵抗およびコンタクト抵抗を良好に低減できる。その結果、製造工程の煩雑化を招くことなく、取出し電極の配線抵抗およびコンタクト抵抗を良好に低減して、より高効率化を図ることが可能になる。
前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記反射防止膜上に剥離可能な被覆層を形成し、前記被覆層の上から前記レーザ加工することにより、当該被覆層の少なくとも一部ととともに前記反射防止膜を前記配線パターン状に除去する構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記取出し電極には、前記半導体基板で発生した光電流を収集するフィンガー電極と、当該フィンガー電極で収集された光電流を集約するバスバー電極と、が含まれ、前記レーザ加工に際しては、前記配線パターンのうち、前記フィンガー電極に相当する部分については、前記被覆層および前記反射防止膜を除去し、前記バスバー電極に相当する部分については、前記被覆層のみを除去する構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記被覆層が離型フィルムである構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記パターン状画線部を焼成する前に、当該パターン状画線部を乾燥するとともに、乾燥後の当該パターン状画線部上に、さらに前記導電性ペーストを前記配線パターン状に重ねて印刷して乾燥することを、1回または複数回繰り返して行う構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記導電性ペーストが、銀を含む導電性粉末と、ガラスフリットと、有機バインダと、溶剤とを含有するとともに、当該導電性ペースト中における前記ガラスフリットの含有量が0.5質量%以下であり、かつ、前記溶剤の含有量が5質量%以下である構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記ガラスフリットは、鉛、テルル、およびビスマス、またはこれらの酸化物を含まないものである構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記導電性粉末が銀粉末である構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子の製造方法においては、前記半導体基板が、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンで構成されるとともに、前記反射防止膜が、窒化シリコン、酸化シリコン、および酸化チタンから選択される少なくともいずれかで構成されてもよい。
さらに、本発明には、拡散層を有する半導体基板と、当該半導体基板の表面上に形成される反射防止膜と、当該半導体基板の表面上に所定の配線パターンで形成され、導電性粉末の焼結体により構成されている取出し電極と、を備え、前記取出し電極は、前記反射防止膜に前記配線パターンとなるように形成されたパターン状貫通孔を充填した状態で、前記表面上に設けられているとともに、その厚みは、線幅の70%以上である構成の太陽電池素子も含まれる。
前記構成の太陽電池素子においては、前記取出し電極は、銀を含む導電性粉末の焼結体であり、ガラス成分を0.5質量%以下で含有する構成であってもよい。
また、前記構成の太陽電池素子においては、前記取出し電極には、前記半導体基板で発生した光電流を収集するフィンガー電極と、当該フィンガー電極で収集された光電流を集約するバスバー電極と、が含まれ、前記フィンガー電極および前記バスバー電極は同一組成の焼結体であり、前記フィンガー電極は、前記半導体基板の前記表面に直接接続するように設けられているとともに、前記バスバー電極は、前記半導体基板の前記表面上に形成される前記反射防止膜上に設けられている構成であってもよい。
本発明では、以上の構成により、製造工程の煩雑化を招くことなく、取出し電極の配線抵抗およびコンタクト抵抗を良好に低減して、より高効率化を図ることが可能な太陽電池素子の製造方法および太陽電池素子を提供することができる、という効果を奏する。
(A)および(B)は、本発明の実施の形態に係る太陽電池素子の概略構成を示す模式的断面図である。 (A)〜(F)は、本発明の実施の形態に係る太陽電池素子の製造方法の一例を示す模式的工程図である。 (A)〜(F)は、本発明の実施の形態に係る太陽電池素子の製造方法の他の例を示す模式的工程図である。 (A)〜(F)は、本発明の実施の形態に係る太陽電池素子の製造方法のさらに他の例を示す模式的工程図である。 (A)は、本実施の形態に係る太陽電池素子における取出し電極の構成の一例を示す模式的横断面図であり、(B)〜(D)は、従来の太陽電池素子における取出し電極の一例を示す模式図である。
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
[太陽電池素子の構成]
まず、本発明の実施の形態に係る太陽電池素子の構成例について、図1(A)・(B)を参照して具体的に説明する。図1(A)・(B)に示すように、本実施の形態に係る太陽電池素子10(太陽電池セル)は、拡散層12を表面11aに有する半導体基板11と、半導体基板11の表面11a上に形成される反射防止膜13と、半導体基板11の表面11a上に設けられるフィンガー電極21およびバスバー電極22と、半導体基板11の裏面11bに設けられる裏面電極23と、を備えている。
本実施の形態では、拡散層12はN型であり半導体基板11はP型シリコン基板であるが、これに限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。半導体基板11の一例であるP型シリコン基板は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンにより構成される。P型シリコン基板は、例えば、引き上げ法や鋳造法によって形成されたインゴットを100〜300μm程度の厚みにスライスすることにより得られる。
拡散層12は、例えば、半導体基板11(P型シリコン基板)の表面11aに、リンなどの不純物を拡散させることにより形成される、P型シリコン基板の逆の導電型であるN型を呈する層である。この拡散層12は、例えば、P型シリコン基板を炉中に配置して、オキシ塩化リン(POCl3 )などの中で加熱することによって形成される。なお、半導体基板11がN型シリコン基板であれば、拡散層12はボロン(B)を不純物として拡散させたP型とすればよい。なお、本実施の形態では、前記の通り、拡散層12は、半導体基板11aの表面に拡散処理により形成されるので、「拡散層12の表面」が半導体基板11の表面11aとなる。
反射防止膜13は、反射防止機能と併せて太陽電池素子10の保護機能を有し、拡散層12の上側に形成される。したがって、反射防止膜13はパッシベーション膜を兼ねていてもよい。反射防止膜13としては、窒化シリコン(SiNx )膜(Si34を中心にして組成xには幅がある)、酸化チタン(TiO2 )膜、酸化シリコン(SiO2 )膜、酸化マグネシウム(MgO)膜、酸化インジウムスズ(ITO)膜、酸化スズ(SnO2 )膜、酸化亜鉛(ZnO)膜等が挙げられるが特に限定されない。本実施の形態では、反射防止膜13として窒化シリコン膜が用いられる。
反射防止膜13の形成方法は特に限定されない。反射防止膜13が窒化シリコン膜である場合には、例えば、シラン(SiH4 )とアンモニア(NH3 )の混合ガスをグロー放電分解でプラズマ化して堆積させるプラズマCVD法等で形成される。例えば、反射防止膜13は半導体基板11との屈折率差などを考慮して、例えば、屈折率が1.8〜2.3程度になるようにされればよい。また、反射防止膜13の厚みは特に限定されず、前述した屈折率(およびパッシベーション機能)を実現できる範囲内であればよい。具体的には、例えば、0.05〜1.0μmの範囲内の厚みを挙げることができるが、特に限定されない。
なお、図示しないが、拡散層12を形成する前に、半導体基板11の表面11aにはテクスチャ構造が形成されてもよい。例えば、アルカリ水溶液で拡散層12が形成される前の表面11aをエッチングすることにより、表面11aに微細なダイヤモンド構造を凹凸(テクスチャ構造)を形成することができる。これにより、表面11aの反射率を低減することができる。
フィンガー電極21およびバスバー電極22は、半導体基板11の表面11a(拡散層12)の上に形成されており、反射防止膜13を貫通して半導体基板11の表面11aとの間で電気的に接続されている。フィンガー電極21は、受光面10aからの入射光によって半導体基板11に発生した光電流を収集する電極であり、受光面10a全体に亘って並列配置している。バスバー電極22は、フィンガー電極21に接続されており、個々のフィンガー電極21で収集された光電流をさらに集約して外部に出力する。なお、受光面10aは、半導体基板11の表面11aとは異なり、太陽電池素子10全体として見たときの「表面」であり、図1(A)・(B)では、反射防止膜13上の面を指す。
フィンガー電極21およびバスバー電極22は、太陽電池素子10で発生した光電流を集約して外部に取り出すための取出し電極(集電電極)であり、所定の配線パターンで形成され、導電性粉末の焼結体により構成されればよい。本実施の形態では、図示しないが、バスバー電極22は、半導体基板11を横断するように配置される帯状の電極であって、その端部がタブ接続可能に構成されていればよい。したがって、バスバー電極22はタブ電極として構成されてもよい。
バスバー電極22の配置方向を横方向としたときに、フィンガー電極21は、横断配置されたバスバー電極22から縦方向に多数延伸して配置される線状の電極であればよい。図1(A)では、説明の便宜上、フィンガー電極21の断面のみを図示しているが、前記の通り、本実施の形態では、フィンガー電極21およびバスバー電極22の延伸方向は交差(直交)しているので、図1(B)では、図中左側にフィンガー電極21を図示し、図中右側にバスバー電極22を図示している。つまり、図1(A)および図1(B)の左側は、太陽電池素子10の横方向の模式的断面図であり、図1(B)の右側は、太陽電池素子10の縦方向の模式的部分断面図である。
なお、取出し電極の具体的構成および配線パターンは、前述したフィンガー電極21およびバスバー電極22の組合せに限定されず、公知のさまざまな構成および配線パターンを採用することができる。
取出し電極は、本実施の形態では、後述するように、導電性ペーストを用いて形成される。導電性ペーストの具体的な構成は特に限定されず、導電性粉末を含有するペースト状またはインク状の組成物であればよい。一般的には、銀を含む導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクル(有機バインダおよび溶剤)とを含有する組成であって、半導体基板11とともに焼成することにより、脱バインダして導電性粉末が焼結する焼成型のものが用いられる。
導電性粉末としては、銀粉末が用いられてもよいし、銀粉末とともに銀を含む他の導電性粉末が併用されてもよいし、銀粉末とともに銀以外の導電性粉末が併用されてもよい。さらに、導電性粉末は、銀を含む粉末に限定されず、銀以外の金属等で構成された粉末であってもよい。導電性粉末の具体的な構成は特に限定されず、その粒径、タップ密度、比表面積等の諸条件は適宜設定することができる。ガラスフリットおよび有機ビヒクルについても特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。
本実施の形態では、後述するように、少なくとも反射防止膜13にのみ形成された溝状の開口部(パターン状貫通孔)を埋めるように導電性ペーストが印刷された上で焼成されることにより、取出し電極が形成される。それゆえ、導電性ペーストにファイヤスルー性を付与する必要がないので、導電性ペーストには、各種のファイヤスルー成分を添加しなくてよく、導電性粉末の含有率を上げることができる。
言い換えれば、導電性ペーストにおいては、ガラスフリットおよび有機ビヒクルの配合量を低減させることができる。具体的には、例えば、導電性ペースト中におけるガラスフリットの含有量を0.5質量%以下、かつ、溶剤の含有量を5質量%以下にすることができる。したがって、取出し電極は、好ましくは銀を含む導電性粉末の焼結体であって、ガラス成分を0.5質量%以下で含有するものであればよい。また、ファイヤスルー成分を添加しなくてもよいため、ガラスフリットとしては、鉛、テルル、およびビスマス、またはこれらの酸化物を含まないものを好適に用いることができる。
本実施の形態では、取出し電極の断面は、従来のように台形状ではなく、実質的に矩形となっている。また、取出し電極の厚みは従来よりも相対的に大きくすることができる。後述するように、取出し電極(特にフィンガー電極21)の厚みは線幅の70%以上とすることができる。
また、フィンガー電極21およびバスバー電極22は、同時に形成可能であるため、フィンガー電極21およびバスバー電極22は同一組成の焼結体として構成することができる。ここで、図1(B)に示すように、フィンガー電極21は、半導体基板11の表面11aに直接接続するように設けられているが、バスバー電極22は、反射防止膜13上に設けられてもよい。言い換えれば、光電流を収集する取出し電極は、半導体基板11の表面11aに直接接続されるように設けられるが、収集された光電流をさらに集約して外部に取り出す取出し電極は、半導体基板11の表面11a上に形成される必要はなく、反射防止膜13(または他の表面膜)上に形成されてもよい。
半導体基板11の表面11aには、前記の通り、取出し電極が形成されるが、半導体基板11の裏面11bには、裏面電極23が形成される。裏面電極23は、例えば、アルミニウム製の平板状電極を挙げることができる。その形成方法は特に限定されないが、アルミニウム粉末を含有するペーストを用いて取出し電極と同様に焼成することにより、アルミニウム粉末の焼結体として形成することができる。なお、裏面11bには、太陽電池素子10の出力を向上させるために、必要に応じてBSF(Back Surface Field)層を形成してもよい。この場合、裏面電極23は、BSF層の上に形成されればよい。
[太陽電池素子の製造方法]
次に、本発明の実施の形態に係る太陽電池素子の製造方法の一例について、図2(A)〜(F)、図3(A)〜(F)、図4(A)〜(F)を参照して具体的に説明する。なお、図2(A)〜(F)、図3(A)〜(F)、および図4(A)〜(F)では、半導体基板11の表面11aに対する各種処理を説明する便宜上、裏面電極23の図示は省略している。
まず、図2(A)〜(F)の製造方法について説明する。図2(A)に示すように、半導体基板11の表面11aに拡散層12を形成し、拡散層12の上に(表面11aに対して)反射防止膜13を形成する。次に、図2(B)に示すように、反射防止膜13の上に離型フィルム14を貼り付ける。その後、図2(C)に示すように、離型フィルム14の上から所定条件でレーザ(図中ブロック矢印)を照射することによりレーザ加工を施す。これにより、離型フィルム14および反射防止膜13に対して、配線パターン状の開口部であるパターン状貫通孔10bを形成する。
次に、図2(D)に示すように、導電性ペースト30をスキージ15等によりパターン状貫通孔10bに充填するように印刷し、図2(E)に示すように、離型フィルム14を剥離する。これにより、半導体基板11の表面11aには、反射防止膜13を貫通した状態で、配線パターン状に描画された導電性ペースト30が形成される。なお、配線パターン状に描画された導電性ペースト30を、描画前の導電性ペースト30と区別する便宜上、パターン状画線部31と称する。その後、図示しないが、パターン状画線部31が形成された半導体基板11を加熱することにより乾燥処理を施す。そして、半導体基板11を焼成炉等により焼成することで、パターン状画線部31(導電性ペースト30)を焼結させて、フィンガー電極21等の取出し電極を上に形成する。
次に、図3(A)〜(F)の製造方法について説明する。図3(A)に示すように、前述した製造方法と同様に、半導体基板11の表面11aに拡散層12を形成し、拡散層12の上に(表面11aに対して)反射防止膜13を形成する。次に、図3(B)に示すように、反射防止膜13に離型フィルム14を貼り付けることなく直接レーザ加工を施し、反射防止膜13に対してパターン状貫通孔10bを形成する。
次に、図3(C)に示すように、公知の印刷用マスク16等を用いて、導電性ペースト30をパターン状貫通孔10bに充填する。これにより、図3(D)に示すように、半導体基板11の表面11aには、反射防止膜13を貫通した状態で、パターン状画線部31が形成される。なお、離型フィルム14を用いないためにパターン状画線部31の厚みが十分でない場合には、図3(D)に示すように、印刷用マスク16等を用いて、導電性ペースト30をパターン状画線部31上に重ねるように印刷してもよい。もちろん、1回目の印刷(図3(C)の段階)で十分な厚みが得られていれば、2回目以降の印刷は不要である。ここで、導電性ペースト30としては、反射防止膜13とレーザ加工により開口された拡散層12の表面との表面張力の違いを利用して、反射防止膜13に濡れ難い溶剤を用いたものを用いることができる。これにより、導電性ペースト30の粘性が高くても反射防止膜13に濡れが広がらない構成とすることが可能である。
少なくとも1回の印刷処理により、図3(E)に示すように、所定の厚みのパターン状画線部31が形成されれば、前述した製造方法と同様に、パターン状画線部31が形成された半導体基板11を加熱することにより乾燥処理を施す。その後、半導体基板11を焼成炉等により焼成することで、パターン状画線部31(導電性ペースト30)を焼結させて、フィンガー電極21等の取出し電極を上に形成する。
このように、本実施の形態に係る太陽電池素子10の製造方法では、レーザ加工により少なくとも反射防止膜13にパターン状貫通孔10bを形成するレーザ加工工程と、パターン状貫通孔10bを充填するように導電性ペースト30を配線パターン状に印刷する印刷工程と、印刷工程で得られたパターン状画線部31を焼成することにより焼結させて取出し電極を形成する焼成工程とを含んでいる。
レーザ加工工程では、半導体基板11の表面状態が保持されるため、半導体基板11の表面11aにはレーザ加工に寄り溝などの凹部が形成されることがない。それゆえ、半導体基板11に形成された拡散層12はレーザ加工工程後も維持される。また、レーザ加工工程では、図3(B)に示すように、反射防止膜13に対して直接レーザ加工が施されてもよいが、図2(B)・(C)に示すように、反射防止膜13上に剥離可能な被覆層を形成し、この被覆層の上からレーザ加工が施されてもよい。これにより、反射防止膜13を被覆層の少なくとも一部とともに配線パターン状に除去して、パターン状貫通孔10bを形成することができる。
印刷工程では、少なくとも反射防止膜13に(被覆層が形成される場合には被覆層にも)形成されたパターン状貫通孔10bを充填するように、導電性ペースト30を配線パターン状に印刷するが、図3(D)に示すように、パターン状貫通孔10bを充填して形成されたパターン状画線部31上に、さらに導電性ペースト30を配線パターン状に重ねて印刷してもよい。このとき、パターン状画線部31を印刷する毎に、当該パターン状画線部31を乾燥してもよい。これにより、パターン状貫通孔10bから外に位置するパターン状画線部31に印刷ダレが生じる可能性を抑制することができる。
なお、パターン状画線部31を重ねて印刷する工程は、図3(A)〜(F)に示すような被覆層を用いない製造方法に限定されず、図2(A)〜(F)に示すような被覆層を用いる製造方法にも適用される。例えば、図2(E)に示すような離型フィルム14(被覆層)を剥離した後のパターン状画線部31に対して、図3(D)に示すような印刷用マスク16を用いて導電性ペースト30を重ねて印刷してもよい。また、導電性ペースト30を重ねて印刷して乾燥する工程は、取出し電極の厚みに応じて所望の回数(1回または複数回)繰り返して行えばよい。
ここで、被覆層としては、図2(B)〜(D)に示す例では離型フィルム14を用いているが、これに限定されず、離型フィルム14以外の被覆層を採用することもできる。例えば、公知のコーティング剤を反射防止膜13上に塗布して被覆層として用いてもよい。このコーティング剤は、レーザ加工が施される時点でペースト状のままで合ってもよいし、乾燥または化学反応などにより硬化するものであってもよい。あるいは、太陽電池の分野で公知の積層方法により、反射防止膜13の上に形成される他の層が被覆層として用いられてもよい。
また、被覆層が離型フィルム14である場合、離型フィルム14の具体的な構成は特に限定されず、公知の構成を好適に用いることができる。したがって、離型フィルム14の材質、厚み、単層または積層構造、反射防止膜13に貼り付けた状態での固定方法または剥離方法等の諸条件も特に限定されない。材質としては、レーザ加工に好適なエンジニアリングプラスチック等が挙げられるが特に限定されない。厚みについても、取出し電極(パターン状画線部31)に求められる厚みに応じて適切な厚みのものを選択することができる。
また、離型フィルム14は、反射防止膜13に対して貼り付けたときに安定した密着性を有する材質のみで構成される単層構造であってもよいし、被覆用の層と貼付用の層とを含む多層構造であってもよい。また、反射防止膜13に対する接着方法は、材質の親和性による密着であってもよいし、接着性材料による接着であってもよいし、反射防止膜13の表面状態に対応する物理的な固定であってもよい。離型フィルム14の剥離は、物理的に引き剥がすことによって実現されてもよいし、乾燥時または焼成時の加熱により剥離が生じてもよいし、加熱以外の手法で剥離が生じてもよい。
さらに、前述した例では、図2(E)に示すように、パターン状画線部31が形成された後に、離型フィルム14を反射防止膜13から剥離しているが、離型フィルム14は必ずしも剥離される構成でなくてもよい。例えば、半導体基板11の焼成時に分解除去される構成であってもよいし、アルカリ溶液または溶剤等によって分解される(または剥離が生じる)構成であってもよい。
また、図2(C)に示す模式的な例では、被覆層である離型フィルム14と反射防止膜13とは、配線パターンに応じて全て除去される。ここで、図1(B)に示すように、例えば、バスバー電極22については、反射防止膜13の上に形成されてもよいので、この場合には、反射防止膜13を除去しなくてもよい。したがって、本実施の形態では、レーザ加工に際しては、配線パターンのうち、フィンガー電極21に相当する部分については、離型フィルム14(被覆層)および反射防止膜13を除去し、バスバー電極22に相当する部分については、離型フィルム14(被覆層)のみを除去してもよい。
このような製造方法の一例について、図4(A)〜(F)を参照して説明する。なお、図4(A)〜(F)に示す模式的断面では、同一断面上にフィンガー電極21およびバスバー電極22の断面を示しているが、これは、製造工程を説明する便宜上の図示である。前述したように、フィンガー電極21およびバスバー電極22の延伸方向は、通常、交差(直交)している。
まず、図4(A)・(B)に示すように、前述した図2(A)・(B)と同様にして、半導体基板11の表面11aにおける拡散層12の上に反射防止膜13を形成し、その上に離型フィルム14を貼り付ける。その後、図4(C)に示すように、離型フィルム14の上から所定条件でレーザ(図中ブロック矢印)を照射することによりレーザ加工を施すが、このとき、フィンガー電極21に相当する部分では、離型フィルム14および反射防止膜13を除去してパターン状貫通孔10bを形成し、バスバー電極22に相当する部分では、離型フィルム14のみを除去して、パターン状貫通孔10cを形成する。
次に、図4(D)に示すように、導電性ペースト30をスキージ15等によりパターン状貫通孔10bに充填し、図4(E)に示すように、離型フィルム14を剥離する。これにより、半導体基板11の表面11aには、反射防止膜13を貫通した状態で描画された導電性ペースト30すなわちパターン状画線部31と、反射防止膜13を貫通せず、当該反射防止膜13上に描画された導電性ペースト30すなわちパターン状画線部32とが形成される。
その後、図示しないが、パターン状画線部31およびパターン状画線部32が形成された半導体基板11を加熱することにより乾燥処理を施し、さらにその後、半導体基板11を焼成炉等により焼成することで、パターン状画線部31およびパターン状画線部32を焼結させて、半導体基板11の表面11aに電気的に接続されるフィンガー電極21と、反射防止膜13により表面11aから隔離されるバスバー電極22とが形成される。
[従来の製造方法との対比]
次に、従来の一般的な製造方法に関する検討事項、並びに、本実施の形態に係る製造方法と従来の製造方法との対比について、図5(A)〜(D)を参照して説明する。
一般的に、太陽電池素子10には、結晶シリコン系の単結晶もしくは多結晶型の半導体基板11が用いられる。半導体基板11には、典型的にはpn接合が形成され、このpn接合に光が入射することにより、電子とホールとの対が形成され、光起電力が生じる。この光起電力により生じた光電流は、半導体基板11の表面11aおよび裏面11bに形成された取出し電極から取り出される。
通常、半導体基板11の表面11aに設けられる取出し電極の形成には、焼成型の導電性ペースト30が用いられる。この導電性ペースト30としては、典型的には、ガラスフリット、導電性粉末(例えば、銀粉末)および有機ビヒクル(有機バインダおよび溶剤)を含有する。導電性ペースト30は、グリッドライン状の配線パターンとなるように半導体基板11の表面11aに印刷され、焼成されることにより焼結して、取出し電極(フィンガー電極21およびバスバー電極22等)となる。この取出し電極は、半導体基板11との間で電気的なコンタクトを形成する。
このような取出し電極に要求される特性としては、まず、電流を効率よく取り出すために配線抵抗が低いことが挙げられ、次いで、前述したファイヤスルーによる反射防止膜13の除去度合いに優れていることが挙げられ、望ましくは、n型層のシリコンと取出し電極との間のショットキー障壁が小さいことが挙げられる。ファイヤスルーによる反射防止膜13の除去度合いと、ショットキー障壁とに基づく抵抗をコンタクト抵抗と称する。このコンタクト抵抗は、発電効率を良好なものとする観点から、取出し電極の配線抵抗と同様に、できる限り低い方がよいとされている。
また、取出し電極のうちフィンガー電極21を形成する際には、焼成時のファイヤスルー性が良好であるほど望ましいが、バスバー電極22(タブ電極)については、フィンガー電極21で収集された光電流を集約して外部に取り出すことが主たる目的であるため、焼成時のファイヤスルー性は必須ではなく、むしろ光電流の集約性から見れば焼成時にはファイヤスルー性を発揮しないことが望ましい。
導電性ペースト30により所望の配線パターンの取出し電極を形成する際には、一般的には、スクリーン印刷が用いられる。スクリーン印刷では、特定の金属メッシュによるスクリーン版が用いられる。このスクリーン版には、配線パターンを反転させたパターンを有するレジストが形成されている。したがって、レジストの開口部(レジストが形成されていないメッシュ部分)パターンが配線パターンと同一形状となっている。このようなスクリーン版の開口部に導電性ペースト30をスキージ15で印刷面に塗布することにより、導電性ペースト30を所定の配線パターンに印刷することができる。
ところで、近年、太陽電池は、再生可能エネルギーとして特に注目され、飛躍的に市場拡大が進んでおり、さらなる高効率化が望まれている。高効率化の観点では、取出し電極に対する要望としては、(1)受光面積をできるだけ大きくできる配線幅(配線幅の好適化)、(2)半導体基板11へのコンタクト抵抗のさらなる低減(コンタクト抵抗の低減)、(3)取出し電極そのものの抵抗値のさらなる低減(配線抵抗の低減)が挙げられる。
まず、(1)配線幅の好適化については、効率よく光電流を収集するためには、受光面10a上にできるだけ均一な取出し電極(特にフィンガー電極21)が設けられることが望ましい。しかしながら、取出し電極は、金属配線であるため、受光面10a上で太陽光を遮蔽してしまうことになる。それゆえ、取出し電極は、より細い電極幅とすることが望ましいが、電極幅が細くなると配線抵抗が上昇するので、受光面積を大きくする観点では、配線抵抗の上昇を抑制できる程度に電極幅を細くした取出し電極が望まれる。
次に、(2)コンタクト抵抗の低減については、前記の通り、コンタクト抵抗は、反射防止膜13の除去度合いとショットキー障壁とに基づくものであり、反射防止膜13が十分に除去され、ショットキー障壁が十分に小さければ、光起電力により生じた電子が取出し電極(特にフィンガー電極21)に移動する際に受ける抵抗を小さくできる。そのため、コンタクト抵抗が小さい方が、光電流を効率的に収集できるため望ましい。
次に、(3)配線抵抗の低減については、例えば、フィンガー電極21で収集された光電流はバスバー電極22で集約されて外部に取り出されるため、フィンガー電極21およびバスバー電極22で光電流が流れる間に受ける抵抗が小さければ、集電効率を上昇できるため望ましい。
なお、これら(1)〜(3)の要望以外にも、取出し電極に対しては、耐湿性または耐薬品性などについて信頼性が高いこと、使用量を可能な限り削減できること、環境負荷物質をできるだけ含有しないことなども望まれる。
しかしながら、本発明者らが検討した結果、取出し電極を所定の配線パターンで形成するためにスクリーン印刷を用いる方法では、前述した(1)受光面積をできるだけ大きくできる好適な配線幅を実現することが困難であり、さらに、(2)コンタクト抵抗の低減および(3)取出し電極の配線抵抗の低減を両立することも困難であることが明らかとなった。
まず、(1)配線幅の好適化に関しては、スクリーン印刷では、金属メッシュおよびレジストを用いてスクリーン版を形成し、このスクリーン版を用いて導電性ペースト30を所望の配線パターンに印刷する。そのため、印刷線(パターン状画線部31)の横断面は、受光面10a側が大きい台形状となる。図5(a)におけるフィンガー電極21の横断面に示すように、取出し電極の横断面は理想的には矩形状であることが望ましいが、印刷線の横断面が台形状となれば、図5(B)における従来のフィンガー電極121に示すように、取出し電極の横断面も台形状となり、良好な矩形の横断面に形成することが困難となる。なお、スクリーン印刷では、スクリーン版の寿命が相対的に短く、仕様変更等も容易ではないため、効率性または応用性に限界がある。
また、導電性ペースト30は粘性を有するため印刷線に印刷ダレが生じてしまう。この印刷ダレは、印刷線の線幅を広くするとともに、印刷厚みを低減させる。その結果、図5(B)における従来のフィンガー電極122に示すように、取出し電極の横断面はその側部(周縁、裾野)が広がってしまう。そこで、導電性ペースト30の粘性挙動を制御して、印刷ダレを抑制して線幅を広くしようとすると、印刷線に凹凸が生じやすくなる。この場合、図5(C)における従来のフィンガー電極123に示すように、上面に凹凸が生じる。
取出し電極に凹凸が生じると、凹凸のうちの凹部分、すなわち、印刷厚みの小さい部分で破断発生の可能性が高くなる傾向にある。また、線幅を広くすると受光面10aに入射する光を遮ることになるため、発電効率の上昇を妨げる。さらに、印刷厚みが小さかったり凹凸が生じたりすると、配線抵抗が高くなり発電効率の上昇を妨げる要因となる。なお、図5(C)では、右図がフィンガー電極123の横断面であり、左図が横断面に対応するフィンガー電極123の側面図である。
次に、(2)コンタクト抵抗の低減および(3)取出し電極の配線抵抗の低減の両立に関しては、導電性ペースト30にファイヤスルー性を付与するために、前述したように、ファイヤスルー成分(鉛ガラス、酸化テルル、テルル系ガラス(テルライトガラス)等)を添加しているが、このファイヤスルー成分は、パターン状画線部31の印刷厚み方向に所定量が含まれていないと、ファイヤスルーを実現することができない。
前記の通り、スクリーン印刷で印刷ダレが生じると、印刷線の中央部に比べて側部では印刷厚みが小さくなるので、図5(D)におけるフィンガー電極122に示すように、中央部では良好なファイヤスルーが生じて反射防止膜13が除去できても、側部では十分なファイヤスルーを生じず、反射防止膜13の残部13aが生じてしまう。それゆえ、得られる取出し電極では、半導体基板11に対する電気的なコンタクトも電極幅の半分程度しか得られないにもかかわらず、取出し電極の電極幅全体で受光面10aへの入射光を遮ってしまう。その結果、コンタクト抵抗を十分に低下させることが難しく、発電効率の上昇を妨げることになる。
そこで、ファイヤスルー性を向上させるために、導電性ペースト30に対するファイヤスルー成分の添加量を多くすると、取出し電極の配線抵抗の上昇を招く。これにより、ファイヤスルー性の向上によるコンタクト抵抗の低減よりも、配線抵抗の上昇が大きくなり、かえって発電効率の上昇を妨げることになる。
これに対して、本実施の形態によれば、反射防止膜13をレーザ加工してパターン状貫通孔10bを形成することにより、微細な配線パターンに対応した貫通孔を形成することができる。また、このパターン状貫通孔10bを充填するように導電性ペースト30を配線パターン状に印刷するので、反射防止膜13を印刷用マスクとして利用することができるとともに、ファイヤスルーによる反射防止膜13の除去が不要になる。
ファイヤスルーが不要になれば、ファイヤスルー成分の存在量に由来する不十分なファイヤスルーについて考慮する必要がなくなる。しかも、レーザ加工により反射防止膜13を除去して半導体基板11の表面11aを露出させてから導電性ペースト30を印刷するため、得られる取出し電極と半導体基板11との電気的なコンタクトを良好に確保することができる。また、導電性ペースト30にファイヤスルー成分を添加する必要がないため、より配線抵抗を低減できるように導電性ペースト30の組成を好適化することもできる。それゆえ、取出し電極の配線抵抗の低減を図ることができるとともにコンタクト抵抗も良好に低減することができる。
さらに、焼成時には、反射防止膜13のパターン状貫通孔10b内で導電性ペースト30の印刷形状(パターン状画線部31の形状)が保持されるので、図5(A)におけるフィンガー電極21に示すように、その横断面がより矩形に近い取出し電極を形成することができる。しかも、パターン状画線部31を形成してから焼成が終了するまでの間、パターン状画線部31における表面11aへの接触面付近は、反射防止膜13(パターン状貫通孔10b)により支持されるので、印刷ダレの発生も実質的に回避することができる。これにより、横断面を実質的に矩形にできるだけでなく、微細な線幅を維持しつつ線幅の広がりを回避し、さらには印刷線の凹凸の発生も抑制することができる。
また、レーザ加工により反射防止膜13にパターン状貫通孔10bを形成するため、スクリーン印刷のように印刷マスクを必要としない。そのため、スクリーン版の寿命に制限を受けることがなく、試作も容易であり、仕様変更にも良好に対応することができる。加えて、レーザ加工装置を工夫することにより、加工サイズを大きくして高スループットを実現することも可能になる。
なお、導電性ペーストを溝状の貫通孔に充填して配線パターン状に印刷する手法としては、グラビア印刷も挙げられる。グラビア印刷では、シリンダ版に形成された溝または凹部に導電性ペーストを充填し、被印刷物に転写する。そのため、印刷直後では、印刷ダレの回避は可能であるが、印刷後の乾燥または焼成時に印刷ダレが発生するため、矩形横断面の取出し電極を得ることは困難である。また、グラビア印刷では、溝または凹部に充填された導電性ペーストを全て転写することができないため、厚みの大きい印刷物(パターン状画線部31)を得ることが難しい。さらに、スクリーン印刷と同様に、シリンダ版を用いるため仕様変更も容易ではない。
ここで、本実施の形態で得られる取出し電極は、その厚みが線幅の70%以上であることが好ましい。例えば、図5(A)には、取出し電極としてフィンガー電極21の横断面を模式的に例示するが、このフィンガー電極21の厚みTは、線幅W1の70%以上であればよい。本実施の形態では、前記の通り、反射防止膜13に形成されたパターン状貫通孔10bを充填するように導電性ペースト30が印刷されて焼成されるので、取出し電極の横断面は台形状にならず、図5(A)の左図に示すように、取出し電極(フィンガー電極21)の横断面を実質的な矩形状にすることができる。
さらに、本実施の形態では、図5(A)の右図に示すように、取出し電極(フィンガー電極21)の横断面は逆台形状であってもよい。半導体基板11(図5(A)には図示せず)に接続している側の面を底面21aとし、当該底面21aの反対側であって前記受光面10aと同一方向に向いている側の面を上面21bとしたときに、上面21bの線幅W2は、底面21aの線幅W1以上であってもよい。図5(A)の左図では、実質的に底面21aの線幅W1と上面21bの線幅W2とが実質的に等しい(W1≒W2)が、図5(A)の右図のように、底面21aの線幅W1は、上面21bの線幅W2よりも小さくてもよい(W1<W2)。したがって、底面21aの線幅W1は、上面21bの線幅W2以下であればよい(W1≦W2)。
これにより、本実施の形態で得られる取出し電極は、図5(B)における従来のフィンガー電極121のように、横断面が正台形状でなく、上面21bの線幅W2が底面21aの線幅W1よりも小さくならない。そのため、取出し電極の線幅が広くなることを抑制し、受光面積の低下を回避することができる。
また、図示しないが、取出し電極の横断面においては、上面21bの少なくとも一方の側縁部が、当該上面21bの中央部よりも突出してもよい。図2(D)・(E)に示すように、パターン状貫通孔10bを充填するように導電性ペースト30を印刷した後には、被覆層である離型フィルム14は剥離される。この剥離時に取出し電極の底面21aの側部が離型フィルム14により削られて小さくなったり(図5(B)に示す逆台形状)、上面21bの側縁部が離型フィルム14により跳ね上がるように突出したりする可能性がある。いずれにしても取出し電極の線幅を広げることなく、微細な線幅を良好に維持することができる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、反射防止膜が設けられた半導体基板を備える太陽電池素子、並びに、当該太陽電池素子を製造する分野に広く好適に用いることができる。
10 太陽電池素子
10a 受光面
10b パターン状貫通孔
10c パターン状貫通孔
11 半導体基板
11a 半導体基板の表面
11b 半導体基板の裏面
12 拡散層
13 反射防止膜
13a 反射防止膜の残部
14 離型フィルム(被覆層)
15 スキージ
16 マスク
21 フィンガー電極(取出し電極)
21a (半導体基板の)表面
21b (半導体基板の)裏面
22 バスバー電極(取出し電極)
23 裏面電極
30 導電性ペースト
31 パターン状画線部
32 パターン状画線部
121 従来のフィンガー電極
122 従来のフィンガー電極
123 従来のフィンガー電極
W1 フィンガー電極の底面の線幅
W2 フィンガー電極の上面の線幅
T フィンガー電極の厚み

Claims (12)

  1. 拡散層を有するとともに表面に反射防止膜が形成された半導体基板に対して、レーザ加工により当該半導体基板の表面状態を保持しつつ前記反射防止膜を配線パターン状に除去することにより、パターン状貫通孔を形成し、
    前記表面に対して、少なくとも前記パターン状貫通孔を充填するように、導電性ペーストを前記配線パターン状に印刷して、当該導電性ペーストのパターン状画線部を形成し、
    前記パターン状画線部を焼成することにより焼結させて、取出し電極を前記表面上に形成することを特徴とする、
    太陽電池素子の製造方法。
  2. 前記反射防止膜上に剥離可能な被覆層を形成し、
    前記被覆層の上から前記レーザ加工することにより、当該被覆層の少なくとも一部ととともに前記反射防止膜を前記配線パターン状に除去することを特徴とする、
    請求項1に記載の太陽電池素子の製造方法。
  3. 前記取出し電極には、前記半導体基板で発生した光電流を収集するフィンガー電極と、当該フィンガー電極で収集された光電流を集約するバスバー電極と、が含まれ、
    前記レーザ加工に際しては、前記配線パターンのうち、前記フィンガー電極に相当する部分については、前記被覆層および前記反射防止膜を除去し、前記バスバー電極に相当する部分については、前記被覆層のみを除去することを特徴とする、
    請求項2に記載の太陽電池素子の製造方法。
  4. 前記被覆層が離型フィルムであることを特徴とする、
    請求項2または3に記載の太陽電池素子の製造方法。
  5. 前記パターン状画線部を焼成する前に、当該パターン状画線部を乾燥するとともに、
    乾燥後の当該パターン状画線部上に、さらに前記導電性ペーストを前記配線パターン状に重ねて印刷して乾燥することを、1回または複数回繰り返して行うことを、特徴とする、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の太陽電池素子の製造方法。
  6. 前記導電性ペーストが、銀を含む導電性粉末と、ガラスフリットと、有機バインダと、溶剤とを含有するとともに、
    当該導電性ペースト中における前記ガラスフリットの含有量が0.5質量%以下であり、かつ、前記溶剤の含有量が5質量%以下であることを特徴とする、
    請求項1から5のいずれか1項に記載の太陽電池素子の製造方法。
  7. 前記ガラスフリットは、鉛、テルル、およびビスマス、またはこれらの酸化物を含まないものであることを特徴とする、
    請求項6に記載の太陽電池素子の製造方法。
  8. 前記導電性粉末が銀粉末であることを特徴とする、
    請求項6または7に記載の太陽電池素子の製造方法。
  9. 前記半導体基板が、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンで構成されるとともに、
    前記反射防止膜が、窒化シリコン、酸化シリコン、および酸化チタンから選択される少なくともいずれかで構成されることを特徴とする、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の太陽電池素子の製造方法。
  10. 拡散層を有する半導体基板と、
    当該半導体基板の表面上に形成される反射防止膜と、
    当該半導体基板の表面上に所定の配線パターンで形成され、導電性粉末の焼結体により構成されている取出し電極と、
    を備え、
    前記取出し電極は、前記反射防止膜に前記配線パターンとなるように形成されたパターン状貫通孔を充填した状態で、前記表面上に設けられているとともに、その厚みは、線幅の70%以上であることを特徴とする、
    太陽電池素子。
  11. 前記取出し電極は、銀を含む導電性粉末の焼結体であり、ガラス成分を0.5質量%以下で含有することを特徴とする、
    請求項10に記載の太陽電池素子。
  12. 前記取出し電極には、前記半導体基板で発生した光電流を収集するフィンガー電極と、当該フィンガー電極で収集された光電流を集約するバスバー電極と、が含まれ、
    前記フィンガー電極および前記バスバー電極は同一組成の焼結体であり、
    前記フィンガー電極は、前記半導体基板の前記表面に直接接続するように設けられているとともに、
    前記バスバー電極は、前記半導体基板の前記表面上に形成される前記反射防止膜上に設けられていることを特徴とする、
    請求項10または11に記載の太陽電池素子。
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