JP2017138260A - 整相器および整相処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】整相器は、アレイを構成する複数のセンサに到来する信号を示すセンサ出力信号に基づき、共分散行列を算出する共分散行列算出部と、共分散行列に基づき、空間を信号部分空間および雑音部分空間に分離するとともに、信号部分空間または雑音部分空間に属する固有ベクトルを取得する固有値分解処理部と、センサ出力信号の到来方位を推定する方位推定処理部と、推定された方位と、信号部分空間に属する固有ベクトルとを対応付けるとともに、各方位に対応する適応重みを算出する重み算出部とを備え、重み算出部は、所定の方位に対応する適応重みを算出する際に、所定の方位に対応付けられた固有ベクトルの成分を除外して適応重みを算出する。
【選択図】図5
Description
整相処理は、整相処理の重み付き加算における重みの与え方に応じて、例えば、重みが固定的な「従来整相」と、周囲の環境に応じて重みを動的に変化させる「適応整相」との2つの処理に大別して分類することができる。
そこで、複数の信号が近接している場合であっても、虚像の発生を抑制し、実際の信号の検出精度を向上させることが可能な整相器および整相処理方法が望まれている。
以下、本実施の形態1に係る整相器について説明する。
本実施の形態1に係る整相器では、従来のEBAE方式を改善した、虚像の発生を抑制可能な改善型EBAE方式を用いた整相処理を行う。
本実施の形態1に係る整相器について説明する前に、本実施の形態1で用いられる改善型EBAE方式の前提となる従来のEBAE方式の概略について説明する。
EBAE方式は、センサ出力の共分散行列の固有値分解によって得られる固有ベクトルと、方位を示すとともに整相方位を決定するステアリングベクトルとを対応付ける。そして、このステアリングベクトルを用いて整相処理を行う際に、対応する固有ベクトルの情報を除外して重み計算を行う。なお、以下の説明においては、数式中で「R」などの文字の上に「^」がつけられた文字を「R^」と記載するものとする。
アレイを構成するm番目のセンサ出力において、離散化されたセンサ出力をsm[n]とし、センサ出力sm[n]に対して離散フーリエ変換を適用した場合のk番目の周波数の出力をxm[k]とする。ここで、「n」は時刻を表すインデックスを示す。
このとき、DMR方式におけるk番目の周波数の出力y[p,k]は、式(1)で表される。ここで、「p」は、適応整相を行う方位インデックスを示し、「[・]H」は、共役転置の操作を示す。
共分散行列の推定値R^[k]は、固有値分解処理により、式(6)に示すような行列の加算形式で表すことができる。ここで、「λm[k]」は、周波数kにおけるm番目の固有値を示す。また、「qm[k]」は、λm[k]に対応する固有ベクトルを示す。
固有値λm[k]には、信号または雑音のパワーに関する情報が含まれている。また、固有ベクトルqm[k]には、信号または雑音の到来方位に関する情報が含まれている。
次に、固有値分解の結果を示す式(6)は、信号部分空間および雑音部分空間の2つの空間に分離することができる。
信号部分空間は、M個の固有値のうち、D個の大きな固有値に対応する固有ベクトルによって形成される空間である。雑音部分空間は、M個の固有値のうち、残りの固有値に対応する固有ベクトルによって形成される空間である。
したがって、式(6)は、分離された信号部分空間および雑音部分空間の2つの空間を考慮することにより、式(8)のように表すことができる。式(8)における右辺の第1項は、信号部分空間の固有値および固有ベクトルの集まりを示し、第2項は、雑音部分空間の固有値および固有ベクトルの集まりを示す。
このようにして、DMR方式においては、適応重みw[p,k]を算出することができる。
次に、EBAE方式による適応重みの算出方法について説明する。
EBAE方式は、上述したDMR方式を改良した方式であり、このEBAE方式では、基本的には、式(14)に示すDMR方式による適応重みの算出方法に基づいて、適応重みを算出する。
このように、ステアリングベクトルに対応付けられた固有ベクトルおよび固有値を除外することにより、除外した固有ベクトルに対応する信号を整相器の出力から除去しないようにすることができる。
適応重みを計算する際に用いられる固有ベクトルは、q1[k]〜qD[k]のD個だけ存在する。例えば、周波数kの固有ベクトルq1[k]に対応するステアリングベクトルの方位インデックスp1は、式(15)に基づき算出される。
図1に示す例は、3個の受波器で構成されたアレイにおいて、2つの信号を受信した場合の信号のベクトル、雑音のベクトルおよび固有ベクトルのイメージを示している。この例では、1つの固有ベクトルが1つの信号に対応することが示されている。具体的には、固有ベクトルq1が信号#1のベクトルx1(以下、「信号ベクトルx1」と適宜称する)に対応し、固有ベクトルq2が信号#2のベクトルx2(以下、「信号ベクトルx2」と適宜称する)に対応している。
また、この例では、信号ベクトルx1と信号ベクトルx2とが互いに直交関係にある。そのため、これらのベクトルx1およびベクトルx2には、それぞれ1つの固有ベクトルが対応する。具体的には、信号ベクトルx1に固有ベクトルq1が対応し、信号ベクトルx2に固有ベクトルq2が対応する。
固有ベクトルq1は信号#1に対応するため、図2(a)に示すように、信号#1の方位のステアリングベクトルが示す方位において、内積の値が最大となる。また、固有ベクトルq2は信号#2に対応するため、図2(b)に示すように、信号#2の方位のステアリングベクトルが示す方位において、内積の値が最大となる。
図3は、EBAE方式において、1つの固有ベクトルが複数の信号に対応する場合について説明するための概略図である。
図3に示す例は、図1の例と同様に、3個の受波器で構成されたアレイにおいて、2つの信号を受信した場合の信号のベクトル、雑音のベクトルおよび固有ベクトルのイメージを示している。
図3に示す例において、固有ベクトルq1は信号#1および信号#2の中間方位を示すステアリングベクトルに対応するため、図4(a)に示すように、信号#1および信号#2の中間方位のステアリングベクトルが示す方位において、内積の値が最大となる。その結果、固有ベクトルq1は、信号#1および信号#2の中間方位と対応付けられることになる。
また、固有ベクトルq2についても同様に、図4(b)に示すように、実際の信号が存在しない方位のステアリングベクトルが示す方位において、内積の値が最大となる。その結果、固有ベクトルq2は、実際の信号が存在しない方位と対応付けられることになる。
しかし、本来は、信号部分空間における固有ベクトルと、信号の到来方位に最も近いステアリングベクトルとを対応付ける必要がある。
本実施の形態1に係る整相器は、複数のセンサを有するアレイによって得られたセンサ出力に基づき、信号の到来方位を推定する方位推定処理を行うとともに、各方位および周波数に対応する適応重みを算出するようにしている。
整相器10は、乗算器1、共分散行列算出部2、固有値分解処理部3、MUSIC処理部4および適応重み算出部5を備えている。
なお、一般的なMUSIC処理は、センサ出力に基づく共分散行列の算出、共分散行列に対する固有値分解および後述するMUSIC処理のすべてを含むもののことをいうが、本実施の形態1では、共分散行列に対する固有値分解の後の処理をMUSIC処理と称して説明することとする。また、MUSIC処理部4におけるMUSIC処理の詳細については、後述する。
次に、整相器10の動作について説明する。
アレイを構成するセンサから整相器10に対してセンサ出力x[k]が入力されると、入力されたセンサ出力x[k]は、乗算器1および共分散行列算出部2に供給される。
適応重み算出部5は、固有値分解処理部3から供給された信号部分空間に属する固有ベクトルおよび固有値、ならびに雑音部分空間に属する固有値と、MUSIC処理部4から供給されたMUSIC出力とに基づき、各方位および周波数に対応する適応重みを算出する。算出された適応重みは、乗算器1に供給される。
共分散行列算出部2で行われる共分散行列推定処理では、供給されたセンサ出力x[k]に基づき、式(5)を用いて共分散行列の推定値R^[k]を算出する。なお、共分散行列の具体的な推定方法は、DMR方式を用いた場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
固有値分解処理部3で行われる固有値分解処理では、共分散行列算出部2から供給された共分散行列の推定値R^[k]に基づき、式(6)〜式(8)を用いて空間を信号部分空間および雑音部分空間に分離するとともに固有値分解処理を行う。そして、信号部分空間の固有ベクトルおよび固有値、雑音部分空間の固有ベクトルおよび固有値を取得する。なお、固有値分解処理の具体的な方法は、DMR方式を用いた場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
MUSIC処理は、MUSIC処理部4で行われる。固有ベクトルによって張られる信号部分空間および雑音部分空間の2つの空間は、互いに直交補空間の関係にある。したがって、雑音部分空間に属する固有ベクトルは、信号部分空間に属するすべての固有ベクトルと直交関係となる。本実施の形態1では、このような固有ベクトル間の直交関係を、信号の到来方位の推定に利用する。ここでは、信号の到来方位を推定するための処理の一例として、MUSIC処理を用いる。
また、このMUSIC処理では、式(16)に基づいて得られた結果を最大値で正規化した値をMUSIC出力とし、MUSIC処理部4から出力している。
適応重みの算出処理は、適応重み算出部5で行われる。この適応重みの算出処理は、基本的には上述した従来のEBAE方式と同様に、式(15)に基づいて固有ベクトルとステアリングベクトルとを対応付ける。そして、式(14)を用いて適応重みを計算する。このとき、特定のステアリングベクトルを用いて適応重みを算出する際には、このステアリングベクトルに対応付けられた固有ベクトルおよび固有値を除外して計算する。
また、本実施の形態1では、固有ベクトルとステアリングベクトルとの内積を算出した結果と、MUSIC処理部4から供給されるMUSIC出力とを組み合わせる。
図6に示す例は、図3に示す例と同様に、2つの信号#1および信号#2の到来方位が近接している場合を示す。
このような場合において、固有ベクトルとステアリングベクトルとの内積を算出すると、図6(a)に示すように、内積の大きさが2つの信号#1および信号#2の中間方位において最大となる。これは、図4(a)に示す状態と同様である。
一方、MUSIC出力は、図6(b)に示すように、信号#1および信号#2の到来方位が近接した場合であっても、各信号の方位にピークが出現する。これにより、MUSIC出力に基づいてステアリングベクトルの情報を得ることができる。
図7は、本実施の形態1による改善型EBAE方式を用いた場合の整相処理の結果について説明するための概略図である。
図7において、図7(a)は、従来のEBAE方式を用いた場合の整相処理の結果を示し、図7(b)は、本実施の形態1による改善型EBAE方式を用いた場合の整相処理の結果を示す。また、図7(c)は、複数のセンサで構成されたアレイに対する信号#1および信号#2の入射の様子を示す。
この例では、0dBのレベルの信号#1が方位90°である方位0(=cos90°)から入射すると共に、0dBのレベルの信号#2が方位85°である方位0.0872(=cos85°)から入射した場合を示す。
このように、本実施の形態1に係る整相器では、改善型EBAE方式を用いることにより、従来のEBAE方式を用いた場合に出現する虚像を抑制することができる。
次に、本実施の形態2に係る整相器について説明する。
本実施の形態2では、適応重みを算出する方法が実施の形態1と相違する。
上述した実施の形態1では、従来のEBAE方式を用いた場合と比較して、虚像を抑制することができるが、図7(b)に示すように、信号#2のレベルが10dB程度劣化している。そこで、本実施の形態2では、このような信号レベルの劣化を改善するようにしている。
なお、以下の説明において、実施の形態1に係る整相器10と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
ここで、本実施の形態2では、固有ベクトルとステアリングベクトルとの内積を算出した結果と、MUSIC処理部4から供給されるMUSIC出力とを組み合わせて得られる結果に基づき、固有ベクトルを、最大となるピークが示す方位(MUSIC出力によって修正した内積の大きさが最大となる方位)に対応付けるとともに、2番目の大きさのピークが示す方位についても対応付ける。
図9に示す例は、図6に示す例と同様に、2つの信号#1および信号#2の到来方位が近接している場合を示す。
このような場合において、固有ベクトルとステアリングベクトルとの内積を算出すると、図9(a)に示すように、内積の大きさが2つの信号#1および信号#2の中間方位において最大となる。これは、図4(a)および図6(a)に示す状態と同様である。
ここで、図9(a)において、修正前の内積の大きさは、1つのピークのみを示すが、このピークには、信号#1および信号#2に関する2つの情報が含まれている。そのため、図9(c)に示す内積とMUSIC出力との乗算値において、2つのピークが示す方位に対して固有ベクトルを対応付けることが有効である。
図10において、図10(a)は、実施の形態1による改善型EBAE方式を用いた場合の整相処理の結果を示す。この図は、図7(b)と同じ結果を示す。図10(b)は、本実施の形態2による改善型EBAE方式を用いた場合の整相処理の結果を示す。また、図10(c)は、複数のセンサで構成されたアレイに対する信号#1および信号#2の入射の様子を示す。
この例では、図7(c)に示す状態と同様に、0dBのレベルの信号#1が方位90°である方位0(=cos90°)から入射すると共に、0dBのレベルの信号#2が方位85°である方位0.0872(=cos85°)から入射した場合を示す。
このように、本実施の形態2に係る整相器では、信号の到来方位を推定する方位推定処理を用いて、各方位および周波数に対応する適応重みを算出する際に、固有ベクトルを、内積とMUSIC出力との乗算値の大きさが最大となる方位に対応付けるとともに、2番目の大きさのピークが示す方位についても対応付ける。これにより、虚像を抑制することができるとともに、信号のレベルを実際のレベルと同等にすることができる。
ただし、使用する雑音部分空間の固有ベクトルを減らすと、MUSIC出力において各信号に対応しない方位にピークが生じる可能性がある。しかしながら、そのような場合であっても、信号部分空間に属する固有ベクトルとステアリングベクトルとの内積の結果と、MUSIC出力の結果とを乗算するため、内積の結果およびMUSIC出力の結果に共通していないピーク、または大きな値を抑制することができる。
Claims (5)
- アレイを構成する複数のセンサに到来する信号を示すセンサ出力信号に基づき、前記アレイの周囲に存在する信号源に関する情報を取得する整相器であって、
前記センサ出力信号に基づき、共分散行列を算出する共分散行列算出部と、
前記共分散行列に基づき、空間を信号部分空間および雑音部分空間に分離するとともに、前記信号部分空間または前記雑音部分空間に属する固有ベクトルを取得する固有値分解処理部と、
前記センサ出力信号の到来方位を推定する方位推定処理部と、
前記推定された方位と、前記信号部分空間に属する固有ベクトルとを対応付けるとともに、各方位に対応する適応重みを算出する重み算出部と
を備え、
前記重み算出部は、
所定の方位に対応する適応重みを算出する際に、前記所定の方位に対応付けられた固有ベクトルの成分を除外して前記適応重みを算出する
ことを特徴とする整相器。 - 前記方位推定処理部は、
前記固有値分解処理部で得られた前記雑音部分空間に属する固有ベクトルに基づき、MUSIC処理によって前記センサ出力信号の到来方位を推定し、
前記重み算出部は、
前記MUSIC処理によって得られた推定結果と、前記信号部分空間に属する固有ベクトルおよび方位を示すステアリングベクトルの内積の結果とを乗算し、
前記乗算の結果を示す乗算値の大きさが最大となるピークが示す方位と前記信号部分空間に属する前記固有ベクトルとを対応付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の整相器。 - 前記重み算出部は、
前記信号部分空間に属する前記固有ベクトルを、前記内積の大きさが最大となる前記ピークの次に大きい1または複数のピークが示す方位とさらに対応付ける
ことを特徴とする請求項2に記載の整相器。 - 前記方位推定処理部は、
前記固有値分解処理部で得られた前記雑音部分空間に属する固有ベクトルに基づき、MUSIC処理によって前記センサ出力信号の到来方位を推定し、
前記重み算出部は、
前記信号部分空間に属する固有ベクトルおよび方位を示すステアリングベクトルの内積を算出し、
前記MUSIC処理によって得られた推定結果に含まれるピークが示す方位に最も近い方位にピークを有する前記内積の大きさに対応する固有ベクトルを選択し、
選択された前記固有ベクトルと前記推定結果に含まれる前記ピークが示す方位とを対応付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の整相器。 - アレイを構成する複数のセンサに到来する信号を示すセンサ出力信号に基づき、前記アレイの周囲に存在する信号源に関する情報を取得する整相処理方法であって、
前記センサ出力信号に基づき、共分散行列を算出する共分散行列算出ステップと、
前記共分散行列に基づき、空間を信号部分空間および雑音部分空間に分離するとともに、前記信号部分空間または前記雑音部分空間に属する固有ベクトルを取得する固有値分解ステップと、
前記センサ出力信号の到来方位を推定する方位推定ステップと、
前記推定された方位と、前記信号部分空間に属する固有ベクトルとを対応付けるとともに、各方位に対応する適応重みを算出する重み算出ステップと
を有し、
前記重み算出ステップは、
所定の方位に対応する適応重みを算出する際に、前記所定の方位に対応付けられた固有ベクトルの成分を除外して前記適応重みを算出する
ことを特徴とする整相処理方法。
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