JP2017137914A - クラッチユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】 ブレーキ側クラッチ部で異音や微振動が発生することを防止し、操作フィーリングの向上を図る。
【解決手段】 レバー操作により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御するレバー側クラッチ部と、レバー側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部12とからなり、ブレーキ側クラッチ部12は、回転が拘束された外輪23と、回転が出力される出力軸22と、外輪23と出力軸22との間に配置され、レバー側クラッチ部からの回転トルクが入力される保持器15cと、外輪23と出力軸22との間での係合および離脱により、出力軸22から逆入力される回転トルクの遮断と保持器15cから入力される回転トルクの伝達とを制御する円筒ころ27とを備え、保持器15cと出力軸22との間に、円筒ころ27の離脱時に回転抵抗を出力軸22に付与する制動部材32を介在させる。
【選択図】 図3
【解決手段】 レバー操作により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御するレバー側クラッチ部と、レバー側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部12とからなり、ブレーキ側クラッチ部12は、回転が拘束された外輪23と、回転が出力される出力軸22と、外輪23と出力軸22との間に配置され、レバー側クラッチ部からの回転トルクが入力される保持器15cと、外輪23と出力軸22との間での係合および離脱により、出力軸22から逆入力される回転トルクの遮断と保持器15cから入力される回転トルクの伝達とを制御する円筒ころ27とを備え、保持器15cと出力軸22との間に、円筒ころ27の離脱時に回転抵抗を出力軸22に付与する制動部材32を介在させる。
【選択図】 図3
Description
本発明は、レバー操作により回転トルクが入力されるレバー側クラッチ部と、そのレバー側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とを備えたクラッチユニットに関する。
一般に、円筒ころやボール等の係合子を用いるクラッチユニットにおいては、入力部材と出力部材との間にクラッチ部が配設される。このクラッチ部は、前述の入力部材と出力部材との間で円筒ころやボール等の係合子を係合および離脱させることによって、回転トルクの伝達および遮断を制御する構成になっている。
本出願人は、レバー操作により座席シートを上下調整する自動車用シートリフタ部に組み込まれるクラッチユニットを先に提案している(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示されたクラッチユニットは、レバー操作により回転トルクが入力されるレバー側クラッチ部と、そのレバー側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側からの回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とを備えている。
レバー側クラッチ部は、レバー操作により回転トルクが入力される外輪と、その外輪から入力される回転トルクをブレーキ側クラッチ部に伝達する内輪と、外輪と内輪との間の楔すきまでの係合および離脱により外輪からの回転トルクの伝達および遮断を制御する複数の円筒ころと、円筒ころを円周方向等間隔に保持する保持器と、外輪からの回転トルクで弾性力を蓄積し、回転トルクの入力がなくなると、蓄積された弾性力で保持器および外輪を中立状態に復帰させる二つのセンタリングばねとで主要部が構成されている。
ブレーキ側クラッチ部は、回転が拘束された外輪と、回転トルクが出力される出力軸と、外輪と出力軸との間に配置された保持器と、外輪と出力軸との間の楔すきまでの係合および離脱により出力軸から逆入力される回転トルクの遮断と保持器から入力される回転トルクの伝達とを制御する複数対の円筒ころ、および各対の円筒ころ同士に離反力を付勢する板ばねとで主要部が構成されている。
なお、ブレーキ側クラッチ部の保持器は、レバー側クラッチ部の内輪と一体的に形成され、レバー側クラッチ部からの回転トルクをブレーキ側クラッチ部に伝達する機能と、外輪と出力軸との間に配された各対の円筒ころおよび板ばねを円周方向等間隔に保持する機能とを備えている。
レバー側クラッチ部では、レバー操作により外輪に回転トルクが入力されると、円筒ころが外輪と内輪との間の楔すきまに係合する。この楔すきまでの円筒ころの係合により、内輪に回転トルクが伝達されて内輪が回転する。この時、外輪および保持器の回転に伴って両センタリングばねに弾性力が蓄積される。
回転トルクの入力がなくなると、両センタリングばねの弾性力により保持器および外輪が中立状態に復帰する一方で、内輪は、与えられた回転位置をそのまま維持する。従って、外輪の回転繰り返し、つまり、操作レバーのポンピング操作により、内輪は寸動回転する。
ブレーキ側クラッチ部では、座席シートへの着座により出力軸に回転トルクが逆入力されると、円筒ころが出力軸と外輪との間の楔すきまに係合して出力軸が外輪に対してロックされる。このようにして、出力軸から逆入力された回転トルクは、ブレーキ側クラッチ部でロックされてレバー側クラッチ部への還流が遮断される。これにより、座席シートは上下調整が不可となる。
一方、レバー側クラッチ部の内輪から回転トルクがブレーキ側クラッチ部の保持器に入力されると、保持器が回転し円筒ころと当接して板ばねの弾性力に抗して押圧することにより、その円筒ころが外輪と出力軸間の楔すきまから離脱する。この楔すきまからの円筒ころの離脱により、出力軸のロック状態が解除され、出力軸は回転可能となる。
そして、ブレーキ側クラッチ部の保持器がさらに回転することにより、保持器からの回転トルクが出力軸に伝達され、出力軸が回転する。つまり、保持器が寸動回転すると、出力軸も寸動回転することになる。この出力軸の寸動回転により、座席シートの上下調整が可能となる。
ところで、特許文献1で開示された従来のクラッチユニットでは、ブレーキ側クラッチ部において出力軸のロック状態を解除するに際し、レバー側クラッチ部の内輪から入力された保持器の回転でもってその保持器が円筒ころを楔すきまから押し出すことにより円筒ころを楔すきまから離脱させる。この楔すきまからの円筒ころの離脱により出力軸を回転可能な状態にし、保持器の孔が出力軸の突起に接触することにより保持器からの回転トルクを出力軸に伝達するようにしている。
しかしながら、保持器の回転に対して、座席シートへの着座により出力軸に保持器の回転と同一方向の回転トルクが負荷され、出力軸の回転が保持器の回転に追従する場合がある。この場合、出力軸の回転速度が保持器の回転速度よりも大きいと、保持器の回転により円筒ころを楔すきまから押し出して離脱させると略同時に、保持器の回転に出力軸が追従して回転することにより、円筒ころが楔すきまに瞬時に噛み込んで係合する。そして、再度、保持器が円筒ころを楔すきまから押し出して離脱させることになる。
このように、円筒ころが楔すきまに対して押し出しによる離脱と瞬時の噛み込みによる係合を繰り返す現象が発生する。楔すきまでの円筒ころの離脱と係合の繰り返し現象が発生すると、出力軸のロック状態を解除するに際して、ブレーキ側クラッチ部で異音や微振動が発生する可能性がある。ブレーキ側クラッチ部での異音や微振動が発生すると、出力軸のロック状態を解除するレバー操作時、操作フィーリングの悪化を招くことになる。
そこで、本発明は前述の改善点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、出力軸のロック解除時、円筒ころが楔すきまに瞬時に噛み込んで係合する現象を回避し得る構造を具備したクラッチユニットを提供することにある。
本発明に係るクラッチユニットは、入力側に設けられ、レバー操作により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、レバー側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなる基本構成を具備する。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明のブレーキ側クラッチ部は、回転が拘束された静止部材と、回転が出力される出力部材と、静止部材と出力部材との間に配置され、レバー側クラッチ部からの回転トルクが入力される入力部材と、静止部材と出力部材との間での係合および離脱により、出力部材から逆入力される回転トルクの遮断と入力部材から入力される回転トルクの伝達とを制御する係合子とを備え、入力部材と出力部材との間に、係合子の離脱時に回転抵抗を出力部材に付与する制動部材を介在させたことを特徴とする。
本発明では、入力部材と出力部材との間に制動部材を介在させたことにより、係合子の離脱時、入力部材の回転に追従して回転する出力部材に回転抵抗を付与することができる。この出力部材への回転抵抗の付与により、出力部材が回転し難くなり、出力部材に対する入力部材の係合子離脱位置を保持することができるので、再度、係合子が瞬時に係合する現象を回避できる。このことから、ブレーキ側クラッチ部での係合子の離脱時、係合子の離脱と係合の繰り返し現象による異音や微振動の発生を防止でき、レバー操作時における操作フィーリングの向上が図れる。
本発明における制動部材は、入力部材に設けられ、出力部材との接触による摩擦力でもって出力部材に回転抵抗を付与する構造が望ましい。
このような構造を採用すれば、出力部材との接触による摩擦力でもって出力部材に回転抵抗を付与することができるので、係合子の離脱と係合の繰り返し現象を簡易な構造でもって回避することができる。
本発明において、制動部材における出力部材との接触面、および出力部材における制動部材との接触面の少なくとも一方に、両接触面間に介在する潤滑油の油膜を切る凹溝が形成されている構造が望ましい。
このような構造を採用すれば、制動部材と出力部材との接触面間に潤滑油が介在する場合であっても、その潤滑油の油膜を凹溝で切ることができる。これにより、出力部材との接触による摩擦力が低下することを防止でき、その摩擦力でもって出力部材に回転抵抗を確実に付与することができる。
本発明に係るクラッチユニットは、レバー側クラッチ部およびブレーキ側クラッチ部を自動車用シートリフタ部に組み込むことで自動車用途として適している。
本発明によれば、入力部材と出力部材との間に制動部材を介在させたことにより、係合子の離脱時、出力部材に回転抵抗を付与することができ、出力部材に対する入力部材の係合子離脱位置を保持することができるので、係合子の離脱と係合の繰り返し現象による異音や微振動の発生を防止することができる。その結果、レバー操作時における操作フィーリングの向上が図れ、使用者にとって快適なレバー操作を実現したクラッチユニットを提供することができる。
本発明に係るクラッチユニットの実施形態を図面に基づいて詳述する。図1はこの実施形態のクラッチユニットの全体構成を示す断面図、図2は図1のP−P線に沿う断面図、図3は図1のQ−Q線に沿う断面図である。この実施形態の特徴的な構成を説明する前にクラッチユニットの全体構成を説明する。
この実施形態のクラッチユニット10は、図1に示すように、入力側に設けられたレバー側クラッチ部11と、出力側に設けられたブレーキ側クラッチ部12とをユニット化した構造を具備する。レバー側クラッチ部11は、レバー操作により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御する。ブレーキ側クラッチ部12は、レバー側クラッチ部11からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断する逆入力遮断機能を有する。
レバー側クラッチ部11は、図1および図2に示すように、レバー操作により回転トルクが入力される側板13および外輪14と、外輪14から入力される回転トルクをブレーキ側クラッチ部12に伝達する内輪15と、外輪14と内輪15との間での係合および離脱により外輪14からの回転トルクの伝達および遮断を制御する複数の円筒ころ16と、各円筒ころ16を円周方向等間隔に保持する保持器17と、保持器17を中立状態に復帰させるための内側センタリングばね18と、外輪14を中立状態に復帰させるための外側センタリングばね19とを具備する。
レバー側クラッチ部11において、側板13の外周縁部に形成された爪部13aを、外輪14の外周縁部に形成された切欠き凹部14aに挿入して加締めることにより、側板13を外輪14に固定し、レバー側クラッチ部11の入力部材として一体化している。外輪14の内周には、複数のカム面14bが円周方向等間隔に形成されている。外輪14への回転トルクの入力は、側板13にねじ止め等により取り付けた上下方向揺動可能な操作レバー43(図10参照)により行われる。
内輪15は、出力軸22が挿通される筒状部15aと、その筒状部15aのブレーキ側端部を径方向外側に延在させた拡径部15bと、その拡径部15bの外周端部を軸方向に屈曲させることにより突出した複数の柱部15c(図3参照)とからなる。内輪15の筒状部15aの外周に形成された円筒面15dと、外輪14の内周に形成されたカム面14bとの間に楔すきま20が形成され、その楔すきま20に前述の円筒ころ16が保持器17により円周方向等間隔で配設されている。
内側センタリングばね18は、保持器17とブレーキ側クラッチ部12の静止部材であるカバー24との間に配設された断面円形のC字状弾性部材で、その両端部を保持器17およびカバー24の一部に係止させている。この内側センタリングばね18は、レバー操作により外輪14から入力される回転トルクの作用時、静止状態にあるカバー24に対して、外輪14に追従する保持器17の回転に伴って押し拡げられて弾性力が蓄積され、外輪14から入力される回転トルクの開放時、その弾性力により保持器17を中立状態に復帰させる。
内側センタリングばね18の径方向外側に位置する外側センタリングばね19は、外輪14と前述のカバー24との間に配設されたC字状帯板弾性部材で、その両端部を外輪14およびカバー24の一部に係止させている。外側センタリングばね19は、レバー操作により外輪14から入力される回転トルクの作用時、静止状態にあるカバー24に対して、外輪14の回転に伴って押し拡げられて弾性力が蓄積され、外輪14から入力される回転トルクの開放時、その弾性力により外輪14を中立状態に復帰させる。
保持器17は、円筒ころ16を収容する複数のポケット17aが円周方向等間隔に形成された樹脂製の円筒状部材である。なお、この保持器17の一方の軸方向端部、つまり、ブレーキ側クラッチ部12のカバー24側の軸方向端部には、前述の内側センタリングばね18の両端部を係止させている。保持器17は、径方向で外輪14と内輪15との間に配され、軸方向で前述の外輪14とブレーキ側クラッチ部12のカバー24との間に挟み込まれている。
ロック型と称されるタイプで逆入力遮断機能を有するブレーキ側クラッチ部12は、図1および図3に示すように、レバー側クラッチ部11からの回転トルクが入力される入力部材としての内輪15の柱部15cと、レバー側クラッチ部11からの回転トルクが出力される出力部材としての出力軸22と、回転が拘束された静止部材としての外輪23、カバー24および側板25と、外輪23と出力軸22との間での係合および離脱により、出力軸22から逆入力される回転トルクの遮断と内輪15の柱部15cから入力される回転トルクの伝達とを制御する複数対の円筒ころ27、および各対の円筒ころ27同士に円周方向への離反力を付勢する断面N字形の板ばね28と、出力軸22に回転抵抗を付与する摩擦リング39とで主要部が構成されている。
出力軸22は、内輪15の筒状部15aが外挿された軸部22aの軸方向中央部位に、径方向外側に延びて拡径した大径部22bが一体的に形成されている。軸部22aの出力側端部には、シートリフタ部と連結するためのピニオンギヤ22dが同軸的に形成されている。また、軸部22aの入力側端部にウェーブワッシャ30を介してワッシャ31を圧入することにより、レバー側クラッチ部11の構成部品を抜け止めしている。
出力軸22の大径部22bの外周には複数(例えば6つ)の平坦なカム面22eが円周方向等間隔に形成されている。大径部22bのカム面22eと外輪23の円筒状内周面23aとの間で設けられた楔すきま26に、二つの円筒ころ27とそれら円筒ころ27間に介挿された一つの板ばね28とがそれぞれ配されている。
円筒ころ27および板ばね28は、内輪15の柱部15cにより円周方向等間隔に配設されている。内輪15の柱部15cは、レバー側クラッチ部11の外輪14から入力される回転トルクを出力軸22に伝達することによりブレーキ側クラッチ部12の入力部材としての機能と、円筒ころ27および板ばね28をポケット15fに収容して円周方向等間隔に保持することにより保持器としての機能を有する。以下、この内輪15の柱部15cを保持器15cと称す。
出力軸22の大径部22bには、内輪15からの回転トルクを出力軸22に伝達するための突起22fが設けられている。突起22fは、内輪15の拡径部15bに形成された孔15eに円周方向のクリアランスをもって挿入配置されている。
外輪23、カバー24および側板25は、厚肉板状の外輪23の外周縁部に形成された切欠き凹部23bと、カバー24の外周縁部に形成された切欠き凹部24aとに、側板25の外周縁部に形成された爪部25aを挿入して加締めることにより、外輪23およびカバー24に側板25を固定し、ブレーキ側クラッチ部12の静止部材として一体化されている。
摩擦リング39は、例えば、樹脂材を射出成形などによりリング状に形成した部材であり、側板25に固着されている。この摩擦リング39は、出力軸22の大径部22bに形成された環状凹部22cの内周面22gに締め代をもって圧入される。摩擦リング39の外周面39bと出力軸22の環状凹部22cの内周面22gとの間に生じる摩擦力によって、レバー操作時、出力軸22に回転抵抗が付与される。
以上の構成からなるレバー側クラッチ部11およびブレーキ側クラッチ部12の動作例を以下に説明する。
レバー側クラッチ部11では、レバー操作により外輪14に回転トルクが入力されると、円筒ころ16が外輪14と内輪15との間の楔すきま20に係合する。この楔すきま20での円筒ころ16の係合により、内輪15に回転トルクが伝達されて内輪15が回転する。この時、外輪14および保持器17の回転に伴って両センタリングばね18,19に弾性力が蓄積される。
回転トルクの入力がなくなると、両センタリングばね18,19の弾性力により保持器17および外輪14が中立状態に復帰する。一方で、内輪15は、与えられた回転位置をそのまま維持する。従って、外輪14の回転繰り返し、つまり、操作レバーのポンピング操作により、内輪15は寸動回転する。
ブレーキ側クラッチ部12では、座席シートへの着座により出力軸22に回転トルクが逆入力されても、円筒ころ27が出力軸22と外輪23との間の楔すきま26に係合して出力軸22が外輪23に対してロックされる。このようにして、出力軸22から逆入力された回転トルクは、ブレーキ側クラッチ部12によってロックされてレバー側クラッチ部11へ逆入力される回転トルクの還流が遮断される。これにより、座席シートは上下調整が不可となる。
一方、レバー操作によりレバー側クラッチ部11からの回転トルクが保持器15cに入力されると、保持器15cが円筒ころ27と当接して板ばね28の弾性力に抗して円筒ころ27を押圧する。これにより、円筒ころ27が楔すきま26から離脱し、この楔すきま26からの円筒ころ27の離脱により出力軸22のロック状態が解除され、出力軸22は回転可能となる。この出力軸22のロック状態の解除時、摩擦リング39により出力軸22に回転抵抗が付与される。
保持器15cがさらに回転すると、内輪15の拡径部15bの孔15eと出力軸22の大径部22bの突起22fとのクリアランスが詰まって内輪15の拡径部15bが出力軸22の突起22fに回転方向で当接する。これにより、レバー側クラッチ部11からの回転トルクは、突起22fを介して出力軸22に伝達されて出力軸22が回転する。つまり、保持器15cが寸動回転すると、出力軸22も寸動回転することになる。これにより、座席シートの上下調整が可能となる。
この実施形態におけるクラッチユニット10の全体構成は、前述のとおりであるが、その特徴的な構成について以下に詳述する。
ブレーキ側クラッチ部12では、出力軸22のロック状態を解除するに際して、レバー側クラッチ部11の内輪15から入力された保持器15cの回転でもってその保持器15cが円筒ころ27を楔すきま26から押し出すことにより円筒ころ27を楔すきま26から離脱させる。この楔すきま26からの円筒ころ27の離脱により出力軸22を回転可能な状態にし、保持器15cの孔15eが出力軸22の突起22fに接触することにより保持器15cからの回転トルクを出力軸22に伝達する。
ここで、保持器15cの回転に対して、座席シートへの着座により出力軸22に保持器15cの回転と同一方向の回転トルクが負荷され、出力軸22の回転が保持器15cの回転に追従する場合がある。この場合、出力軸22の回転速度が保持器15cの回転速度よりも大きいと、保持器15cの回転により円筒ころ27を楔すきま26から押し出して離脱させると略同時に、保持器15cの回転に出力軸22が追従して回転することにより、摩擦リング39による回転抵抗だけでは、円筒ころ27が楔すきま26に瞬時に噛み込んで係合する可能性がある。
そこで、この実施形態のブレーキ側クラッチ部12は、円筒ころ27が楔すきま26に対して押し出しによる離脱と瞬時の噛み込みによる係合を繰り返す現象を回避するため、図3に示すように、出力軸22のロック解除時、摩擦リング39による回転抵抗に加えてさらに回転抵抗を出力軸22に付与する制動部材32を保持器15cと出力軸22との間に介在させた構造を具備する。
制動部材32は、図4および図5に示すように、保持器15cの内周に形成された凹部に圧入あるいは接着等により取り付けられ、出力軸22の外周面との接触による摩擦力でもって出力軸22に回転抵抗を付与する構造を有する。
制動部材32の出力軸22との接触面32aの全面が、出力軸22の大径部22bの外周面、つまり、制動部材32との接触面22hの全面と摺動可能に密着している。この制動部材32は、摩擦力でもって出力軸22に回転抵抗を付与できるように、PA66、POMまたはPBTにグラスファイバーを25%程度添加したもの等の樹脂材で構成することが好ましい。
この実施形態のブレーキ側クラッチ部12では、出力軸22のロック状態を解除するに際して、保持器15cに制動部材32を設けたことにより、保持器15cの回転に対して、座席シートへの着座により出力軸22に保持器15cの回転と同一方向の回転トルクが負荷され、出力軸22の回転が保持器15cの回転に追従する場合、出力軸22の回転速度が保持器15cの回転速度よりも大きくても、以下のような作用を呈する。
図6に示すように、制動部材32が出力軸22の外周面と接触することにより発生する摩擦力Fでもって、保持器15cの回転(図中の矢印参照)に追従して回転する出力軸22に回転抵抗を付与することができる。この出力軸22への回転抵抗の付与により、出力軸22が回転し難くなり、出力軸22に対する保持器15cの円筒ころ離脱位置を保持することができるので、再度、円筒ころ27が瞬時に係合する現象を回避し易くなる。
これにより、ブレーキ側クラッチ部12での円筒ころ27の離脱による出力軸22のロック解除時、円筒ころ27が楔すきま26に対して押し出しによる離脱と瞬時の噛み込みによる係合を繰り返す現象を回避することができる。その結果、円筒ころ27の離脱と係合の繰り返し現象による異音や微振動の発生を防止でき、出力軸22のロック状態を解除するレバー操作時、操作フィーリングの向上が図れ、使用者にとって快適なレバー操作を実現することができる。
このように、出力軸22との接触による摩擦力でもって出力軸22に回転抵抗を付与する制動部材32を保持器15cに取り付けた構造を採用したことにより、出力軸22のロック解除時、円筒ころ27が楔すきま26に対して押し出しによる離脱と瞬時の噛み込みによる係合を繰り返す現象を簡易な構造でもって回避することができる。
以上の実施形態では、制動部材32の出力軸22との接触面32a、および出力軸22の制動部材32との接触面22hが摺動可能に密着したフラット面としている。一般的に、ブレーキ側クラッチ部12の内部には、グリース等の潤滑油が封入されている。そのため、制動部材32の接触面32aと出力軸22の接触面22hとの間に潤滑油が介在すると、その潤滑油により制動部材32の摩擦力が低下するおそれがある。
そこで、制動部材32の接触面32aと出力軸22の接触面22hとの間に潤滑油が介在する場合、図7〜図9に示す実施形態の構造が好ましい。同図に示す実施形態では、制動部材32における出力軸22との接触面32a、および出力軸22における制動部材32との接触面22hの少なくとも一方に、両接触面間に介在する潤滑油の油膜を切る凹溝33,34が形成されている。凹溝33,34は、保持器15cおよび出力軸22の回転方向(周方向)に延びるように、軸方向に沿って複数条に形成されている。
図7の実施形態は、周方向に延びる複数条の凹溝33が制動部材32の出力軸22との接触面32aに形成された構造を例示する。図8の実施形態は、周方向に延びる複数条の凹溝34が出力軸22の制動部材32との接触面22hに形成された構造を例示する。図9の実施形態では、周方向に延びる複数条の凹溝33,34が制動部材32の出力軸22との接触面32aおよび出力軸22の制動部材32との接触面22hの両方に形成された構造を例示する。
このように、制動部材32における出力軸22との接触面32a、および出力軸22における制動部材32との接触面22hの少なくとも一方に凹溝33,34を形成した構造を採用することにより、制動部材32と出力軸22との接触面間に潤滑油が介在する場合であっても、その潤滑油の油膜を凹溝33,34で切ることができる。これにより、出力軸22との接触による摩擦力が低下することを防止でき、その摩擦力でもって出力軸22に回転抵抗を確実に付与することができる。
最後に、この実施形態のクラッチユニット10の適用例を説明する。以上で詳述した構造を具備するクラッチユニット10は、レバー操作により座席シートの高さ調整を行う自動車用シートリフタ部41に組み込まれて使用される。図10は自動車の乗員室に装備される座席シート40を示す。
座席シート40は、図10に示すように、着座シート48と背もたれシート42とで構成され、シートリフタ部41により着座シート48の座面を高さ調整する。着座シート48の高さ調整は、クラッチユニット10におけるレバー側クラッチ部11の側板13(図1参照)に取り付けられた操作レバー43によって行う。
シートリフタ部41は、以下の構造を具備する。スライド可動部材44にリンク部材45,46の一端がそれぞれ回動自在に枢着されている。リンク部材45,46の他端はそれぞれ着座シート48に回動自在に枢着されている。リンク部材45の他端にはセクターギヤ47が一体的に設けられている。セクターギヤ47はクラッチユニット10の出力軸22のピニオンギヤ22dに噛合している。
例えば、着座シート48の座面を低くする場合、レバー側クラッチ部11でのレバー操作、つまり、操作レバー43を下側へ揺動させることにより、ブレーキ側クラッチ部12(図1参照)のロック状態を解除する。このブレーキ側クラッチ部12でのロック解除時、摩擦リング39(図1参照)により出力軸22に適正な回転抵抗を付与することで、着座シート48の座面をスムーズに低くすることができる。
ブレーキ側クラッチ部12でのロック解除により、レバー側クラッチ部11からブレーキ側クラッチ部12に伝達された回転トルクでもって、ブレーキ側クラッチ部12の出力軸22のピニオンギヤ22dが時計方向(図10の矢印方向)に回動する。そして、ピニオンギヤ22dと噛合するセクターギヤ47が反時計方向(図10の矢印方向)に揺動し、リンク部材45とリンク部材46が共に傾倒して着座シート48の座面が低くなる。
このようにして、着座シート48の座面を高さ調整した後、操作レバー43を開放すると、操作レバー43が両センタリングばね18,19の弾性力によって上側へ揺動して元の位置(中立状態)に戻る。なお、操作レバー43を上側へ揺動させた場合は、前述とは逆の動作で着座シート48の座面が高くなる。着座シート48の高さ調整後に操作レバー43を開放すると、操作レバー43が下側へ揺動して元の位置(中立状態)に戻る。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
10 クラッチユニット
11 レバー側クラッチ部
12 ブレーキ側クラッチ部
15c 入力部材(保持器)
22 出力部材(出力軸)
23 静止部材(外輪)
27 係合子(円筒ころ)
32 制動部材
33,34 凹溝
41 シートリフタ部
11 レバー側クラッチ部
12 ブレーキ側クラッチ部
15c 入力部材(保持器)
22 出力部材(出力軸)
23 静止部材(外輪)
27 係合子(円筒ころ)
32 制動部材
33,34 凹溝
41 シートリフタ部
Claims (5)
- 入力側に設けられ、レバー操作により入力される回転トルクの伝達および遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、レバー側クラッチ部からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に、出力側から逆入力される回転トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなり、
前記ブレーキ側クラッチ部は、回転が拘束された静止部材と、回転が出力される出力部材と、静止部材と出力部材との間に配置され、前記レバー側クラッチ部からの回転トルクが入力される入力部材と、静止部材と出力部材との間での係合および離脱により、出力部材から逆入力される回転トルクの遮断と入力部材から入力される回転トルクの伝達とを制御する係合子とを備え、入力部材と出力部材との間に、係合子の離脱時に回転抵抗を出力部材に付与する制動部材を介在させたことを特徴とするクラッチユニット。 - 前記制動部材は、入力部材に設けられ、出力部材との接触による摩擦力でもって出力部材に回転抵抗を付与する構造を有する請求項1に記載のクラッチユニット。
- 前記制動部材における出力部材との接触面、および出力部材における制動部材との接触面の少なくとも一方に、両接触面間に介在する潤滑油の油膜を切る凹溝が形成されている請求項1又は2に記載のクラッチユニット。
- 前記レバー側クラッチ部と前記ブレーキ側クラッチ部が自動車用シートリフタ部に組み込まれている請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
- 前記制動部材は、樹脂材で構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016017891A JP2017137914A (ja) | 2016-02-02 | 2016-02-02 | クラッチユニット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016017891A JP2017137914A (ja) | 2016-02-02 | 2016-02-02 | クラッチユニット |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017137914A true JP2017137914A (ja) | 2017-08-10 |
Family
ID=59564875
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016017891A Pending JP2017137914A (ja) | 2016-02-02 | 2016-02-02 | クラッチユニット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017137914A (ja) |
-
2016
- 2016-02-02 JP JP2016017891A patent/JP2017137914A/ja active Pending
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