A1.第1実施形態:
A1−1.半導体装置の構成:
図1は、第1実施形態における半導体装置100の構成を模式的に示す図である。図1には、本実施形態における半導体装置100の断面の一部を簡略化して示している。なお、図1は、半導体装置100の技術的特徴をわかりやすく示すための図であり、各部の寸法を正確に示すものではない。
図1には、説明を容易にするために、相互に直交するXYZ軸が図示されている。図1のXYZ軸のうち、X軸は、図1の紙面左から紙面右に向かう軸であり、+X軸方向は、紙面右に向かう方向であり、−X軸方向は、紙面左に向かう方向である。図1のXYZ軸のうち、Y軸は、図1の紙面手前から紙面奥に向かう軸であり、+Y軸方向は、紙面奥に向かう方向であり、−Y軸方向は、紙面手前に向かう方向である。図1のXYZ軸のうち、Z軸は、図1の紙面下から紙面上に向かう軸であり、+Z軸方向は、紙面上に向かう方向であり、−Z軸方向は、紙面下に向かう方向である。
本実施形態における半導体装置100は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置100は、トレンチ型の縦型MISFETである。半導体装置100は、縦型トランジスタであり、絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。
半導体装置100は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域31と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、第1の電極12となるボディ電極8及びソース電極9と、ドレイン電極11と、を備える。なお、各半導体層又は半導体領域が積層される方向(+Z軸方向)を「上方」とも呼び、Z軸に沿った−Z軸方向を「下方」とも呼ぶ。各半導体層、半導体領域及び構造のそれぞれの表面のうち上方側の表面を「上面」とも呼び、下方側の表面を「下面」とも呼ぶ。X軸及びY軸に沿った方向を「面方向」とも呼び、Z軸方向を「基板の厚み方向」又は「厚み方向」とも呼ぶ。
基板1は、上面である第1の面1uと、下面である第2の面1sと、を有し、面方向に広がる。本実施形態では、基板1は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。なお、本明細書において、「主に形成される」とは、モル分率において90%以上含有することを示す。本実施形態では、基板1は、n型不純物を含むn型半導体層である。本実施形態では、基板1は、シリコン(Si)をドナーとして含む。基板1に含まれるシリコン(Si)平均濃度は、約1×1018cm−3である。
第1の半導体層2は、基板1の厚み方向において、基板1と、ボディ電極8及びソース電極9からなる第1の電極12との間に位置する。本実施形態では、第1の半導体層2は、基板1の上面に接する。本実施形態では、第1の半導体層2は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、第1の半導体層2は、n型不純物を含むn型半導体層である。本実施形態では、第1の半導体層2は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1の半導体層2に含まれるシリコン(Si)平均濃度は、約1×1016cm−3であり、第1の半導体層2のZ軸方向に沿った厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1の半導体層2は、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法とも呼ぶ)によるエピタキシャル成長によって形成されている。なお、基板1の面方向の格子定数と、第1の半導体層2の面方向の格子定数と、の差は、5%以下であることが好ましい。
第1のp型半導体領域31は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極12との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、第1の半導体層2の上面に接する。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域31は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域31に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×1018cm−3であり、第1のn型半導体領域4の上面から第1のp型半導体領域31の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.6μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域31は、MOCVD法によって形成されている。なお、第1のp型半導体領域31に含まれるp型不純物の平均濃度は、1×1018cm−3以上であることが好ましく、5×1018cm−3以上であることがより好ましい。また、第1のp型半導体領域31に含まれるp型不純物の平均濃度は、1×1020cm−3以下であることが好ましく、5×1019cm−3以下であることがより好ましい。
第2のp型半導体領域52は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極12との間に位置しており、第1のp型半導体領域31の上面に接する。本実施形態では、第2のp型半導体領域52は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のp型半導体領域52は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。第2のp型半導体領域52は、第1のp型半導体領域31にn型不純物をイオン注入することによって形成されている。本実施形態では、第2のp型半導体領域52は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域52に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、5×1018cm−3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域52は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域52に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×1018cm−3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域52の上面から下面までのZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。なお、第2のp型半導体領域52のアクセプタ濃度を高める観点から、第2のp型半導体領域52に含まれるp型不純物の濃度に対する、第2のp型半導体領域52に含まれるn型不純物の濃度の比は、0.1以上かつ2.0以下であることが好ましく、0.5以上かつ1.5以下であることがより好ましく、0.8以上1.0以下であることがいっそう好ましい。
第1のn型半導体領域4は、第1のp型半導体領域31の上面に形成されており、面方向における第2のp型半導体領域52と制御領域C(詳細は後述)との間に位置する。第1のn型半導体領域4は、第1のp型半導体領域31の上面であって、第2のp型半導体領域52とは異なる領域に位置する。本実施形態では、第2のp型半導体領域52と第1のn型半導体領域4とは面方向において接しているが、他の実施形態では、第2のp型半導体領域52と第1のn型半導体領域4とは面方向において離れていてもよい。すなわち、面方向において、第2のp型半導体領域52と第1のn型半導体領域4との間に、第1のp型半導体領域31が位置していてもよい。本実施形態では、第1のn型半導体領域4は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のn型半導体領域4は、n型不純物を含むn型半導体からなる領域である。第1のn型半導体領域4は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体領域4に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約2×1020cm−3であり、第1のn型半導体領域4のZ軸方向に沿った厚さは、約0.2μm(マイクロメートル)である。第1のn型半導体領域4は、第1のp型半導体領域31の一部にn型不純物をイオン注入することによって形成されている。第1のn型半導体領域4に含まれるn型不純物の平均濃度は、第1のp型半導体領域31に含まれるp型不純物の平均濃度よりも高い。第1のn型半導体領域4に含まれるn型不純物の平均濃度は、第1のp型半導体領域31に含まれるp型不純物の平均濃度の2倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。また、第1のn型半導体領域4の良好な結晶性を確保する観点から、第1のn型半導体領域4に含まれるn型不純物の平均濃度は、1×1022cm−3以下であることが好ましい。
トレンチ6は、第1のn型半導体領域4の上面から第1のn型半導体領域4及び第1のp型半導体領域31を貫通し、第1の半導体層2にまで落ち込んだ溝部である。本実施形態では、トレンチ6は、ドライエッチングによって形成されている。
絶縁膜7は、トレンチ6と、トレンチ6周縁の第1のn型半導体領域4の上面と、を連続的に覆うように形成された膜である。本実施形態では、絶縁膜7は、二酸化シリコン(SiO2)により形成されている。
ゲート電極10は、絶縁膜7を介してトレンチ6の内側に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極10は、トレンチ6の内側に加え、トレンチ6の外側にわたって形成されている。本実施形態では、ゲート電極10は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。ゲート電極を、「制御電極」とも呼ぶ。
ボディ電極8は、第2のp型半導体領域52の少なくとも一部に接する。ボディ電極8は、第2のp型半導体領域52にオーミック接触する電極である。本実施形態では、ボディ電極8は、パラジウム(Pd)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。ボディ電極8を、「第4の電極」とも呼ぶ。
ソース電極9は、第1のn型半導体領域4にオーミック接触する電極である。ソース電極9を、「第3の電極」とも呼ぶ。本実施形態では、ソース電極9は、ボディ電極8の上面から第1のn型半導体領域4の上面にわたって形成されている。本実施形態では、ソース電極9は、チタン(Ti)から主に形成される層にアルミニウム(Al)から主に形成される層を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
ボディ電極8とソース電極9とは、互いに同電位で動作するように電気的に接続されている。このボディ電極8とソース電極9とを合わせた構造を、「第1の電極12」とも呼ぶ。
ドレイン電極11は、基板1の下面にオーミック接触する電極である。本実施形態では、ドレイン電極11は、チタン(Ti)から主に成る層にアルミニウム(Al)から主に成る層を積層した後に熱処理を加えた電極である。ドレイン電極11を「第2の電極」とも呼ぶ。
図1には、制御領域Cが示されている。制御領域Cは、第1の電極12と第2の電極11との間に流れる電流を制御するための領域である。制御領域Cは、基板1の第1の面1u側の上方に位置し、トレンチ6のX軸方向における幅と等しい幅を有する。制御領域Cは、絶縁膜7の一部とゲート電極10の一部とを含む。ゲート電極10に電圧が印加された場合、第1のp型半導体領域31に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、第1の電極12と第2の電極11との間に導通経路が形成される。第1のp型半導体領域31を、「チャネル層」とも呼ぶ。制御領域Cと第2のp型半導体領域52とは、図1に示すように、距離Lだけ離れている。なお、チャネル移動度を高める観点から、距離Lは0.1μm(マイクロメートル)以上であることが好ましい。半導体装置を微細化させる観点から、距離Lは10μm(マイクロメートル)以下であることが好ましい。
A1−2.半導体装置の製造方法:
図2は、本実施形態の半導体装置100の製造方法を示す工程図である。半導体装置100の製造では、まず、基板1と第1の半導体層2とが積層された積層体が用意される(ステップS100)。
図3は、基板1と第1の半導体層2とが積層された積層体100aを示す図である。本実施形態では、第1の半導体層2は、MOCVD法によって第1の半導体層2上に形成される。積層体100aにおける第1の半導体層2の厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
次に、第1のp型半導体領域31が形成される(図2,ステップS110)。図4は、第1のp型半導体領域31が形成された製造過程における半導体装置100bを示す図である。本実施形態では、MOCVD法によって、第1の半導体層2の上面に、Z軸方向に沿った厚さが約0.6μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が5×1018cm−3である第1のp型半導体領域31が形成される。
次に、第1のn型半導体領域4が形成される。なお、図2には示されていないが、第1のn型半導体領域4が形成される工程を、「ステップS115」とも呼ぶ。図5は、第1のn型半導体領域4が形成された製造過程における半導体装置100cを示す図である。本工程では、まず、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって半導体装置100b(第1のp型半導体領域31)の上面に、二酸化シリコン(SiO2)からなる膜が積層される。積層された二酸化シリコン(SiO2)からなる膜は、不純物分布を調整するための膜である。次に、第1のn型半導体領域4が形成される領域上を除く領域の二酸化シリコン(SiO2)上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成された半導体装置100bに対し、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、シリコン(Si)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域31の上面から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでのシリコン(Si)の平均濃度が、約2×1020cm−3となるように、イオン注入が行われる。シリコン(Si)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、パターンが形成された半導体装置100bに対し、複数回にわけて注入される。シリコン(Si)イオンの全ドーズ量は、5.2×1015cm−2である。イオン注入の後にパターンが除去されることによって、図5に示す半導体装置100cが形成される。
次に、第2のp型半導体領域52が形成される(図2、ステップS120)。図6は、第2のp型半導体領域52が形成された製造過程における半導体装置100dを示す図である。本工程では、第2のp型半導体領域52が形成される領域上を除く領域の半導体装置100c上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域52とが離れるように形成される。パターンが形成された半導体装置100cに対し、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、半導体装置100cにおける第1のp型半導体領域31の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1018cm−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、半導体装置100cの第1のp型半導体領域31に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、6.5×1013cm−2である。イオン注入の後にパターンが除去されることによって、図6に示す半導体装置100dが形成される。本工程を、「工程(a)」とも呼ぶ。
なお、ステップS110及びステップS120では、第2のp型半導体領域52に含まれるp型不純物の濃度に対する、第2のp型半導体領域52に含まれるn型不純物の濃度の比が、0.1以上かつ2.0以下となるように、p型不純物の濃度とn型不純物の濃度との少なくとも一方が調整される。
ステップS120が行われた後、半導体装置100dに対し、イオン注入された不純物を活性化させるための熱処理が行われる。熱処理は、例えば、1150℃の温度において、アンモニア(NH3)を含む雰囲気下で、2分間行われる。熱処理の温度は、不純物をより確実に活性化させる観点から、1000℃以上であることが好ましく、1050℃以上であることがより好ましい。また、熱処理温度は1200℃以下であることが好ましく、1150℃以下であることがより好ましい。熱処理の時間は、1分以上であることが好ましく、10分以下であることが好ましい。熱処理はアンモニア(NH3)を含む雰囲気下で行われることが好ましい。なお、熱処理の前に、予め、半導体装置100dに保護膜を形成することが好ましい。このようにすることにより、熱処理時において半導体装置100dの上面が荒れることを抑制できる。保護膜の材料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。保護膜が形成されている場合、保護膜は熱処理後に除去される。例えば、保護膜として窒化アルミニウム(AlN)が用いられる場合、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)などを用いたウェットエッチングにより、保護膜が除去される。なお、熱処理は、アンモニアを含む雰囲気、水素を含む雰囲気、アンモニア及び水素を含む雰囲気、窒素を含む雰囲気で行われてもよい。また、不純物を活性化させるための熱処理は、各不純物(シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、酸素(O))に対して別々に行われてもよく、シリコン(Si)と、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)と、に分けて行われてもよい。
ステップS120が行われた後、エッチングによってトレンチ6が形成される。トレンチ6は、図6に示す制御領域Cが形成される領域において、第1のn型半導体領域4の上面から第1のn型半導体領域4、第1のp型半導体領域31を貫通して第1の半導体層2に到達するまで、半導体装置100dに対してドライエッチングが行われることによって形成される。その後、絶縁膜7が形成される。絶縁膜7は、例えば原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により形成される。
絶縁膜7が形成された後、ゲート電極10と、ボディ電極8と、ソース電極9と、ドレイン電極11と、が形成される(図2,ステップS130)。ステップS130では、電極が形成された後、各電極が接する半導体層又は半導体領域とのオーム性接触を得るための熱処理が行われる。これらの工程を経て、図1に示す半導体装置100が完成する。なお、上記工程の順序は、半導体装置の構成によって、入れ替えることが可能である。また、上記工程のうち、例えば第1のn型半導体領域が形成される工程(ステップS115)は、半導体装置の構成によっては、省略されてもよい。また、半導体装置の構成によっては、ステップS120が行われた後、ステップS110が再度行われ、次に、ステップS120が行われて、最後にステップS130が行われてもよい。
以上で説明した本実施形態の半導体装置100と、比較用の半導体装置と、のチャネル移動度を測定した。比較用の半導体装置は、以下のように作製した。まず、本実施形態の第1のp型半導体領域31と同程度のアクセプタ濃度が得られるように、上述の製造方法の第1のp型半導体領域31を形成する工程(図2,ステップS110)及び第2のp型半導体領域52を形成する工程(図2、ステップS120)に代えて、第1の半導体層2の上面に、p型不純物であるマグネシウム(Mg)とn型不純物である酸素(O)とをイオン注入することによって、n型不純物を含むp型半導体層を形成した。次に、第1のn型半導体領域4、絶縁膜7及び各電極10、11、12を形成し、比較用の半導体装置を作製した。このように作製された比較用の半導体装置では、n型不純物を含むp型半導体層と、制御領域Cとが離れていない。
本実施形態の半導体装置100及び比較用の半導体装置のチャネル移動度を、同じ測定方法により測定した。ここで、チャネル移動度は、ドレイン−ソース間に一定電圧を印加し、ゲート電圧を掃引して測定した、ドレイン電流のゲート電圧依存性より算出される、いわゆる電界効果移動度である。測定の結果、本実施形態の半導体装置100のチャネル移動度は、比較用の半導体装置のチャネル移動度よりも高かった。
また、本実施形態の半導体装置100において、チャネル層内で電流(制御領域Cのゲート電極10に、正バイアスを印加した場合に、ゲート電極10及び絶縁膜7の直下に形成される反転層を流れる電子)が流れる領域及びその近傍におけるドナー不純物(O)を、二次イオン質量分析計(SIMS:Secondary Ion-microprobe Mass Spectrometer)により測定したところ、ドナー不純物は検出されなかった。
以上の結果より、本実施形態の半導体装置100では、比較用の半導体装置と比較して、チャネル移動度が高いことが示された。また、チャネル層内で電流が流れる領域及びその近傍において、ドナー不純物が存在しないことが示された。
A1−3.効果:
効果1:
以上で説明した第1実施形態の半導体装置100によれば、第2のp型半導体領域52はn型不純物を含むため、第2のp型半導体領域52のホール濃度を高めることができる。また、第2のp型半導体領域52と、第1の電極12と第2の電極11との間に流れる電流を制御するための制御領域Cと、は離れているため、チャネル形成領域にn型不純物が存在することによってチャネル移動度が低下することを抑制することができ、良好なチャネル移動度を有する半導体装置を提供することができる。そのため、電力用半導体に適した半導体装置を提供することができる。
効果2:
また、第2のp型半導体領域52にはボディ電極8(第1の電極12)が接するため、コンタクト形成領域において高いアクセプタ濃度を実現することができ、第2のp型半導体領域52とボディ電極8(第1の電極12)との接触抵抗を低減させることができる。
効果3:
また、半導体装置100は、第1のn型半導体領域4に接するソース電極9と、第2のp型半導体領域52に接するボディ電極8と、が積層された第1の電極12を備えるため、半導体装置100において、ボディ電極8とソース電極9とに同じ電位の電圧を印加することができる。
効果4:
本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、第2のp型半導体領域52と制御領域Cとが離れるように第1のp型半導体領域31の少なくとも一部にn型不純物(O)をイオン注入することによって、第2のp型半導体領域52を形成することができる。そのため、チャネル層において電流が流れる領域及びその近傍に、ドナー不純物となり得る元素が存在しないようにすることができるので、高いチャネル移動度を有する半導体装置を提供することができる。
効果5:
また、本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、結晶成長によって第1のp型半導体領域31を成長させるので、チャネル層において電流が流れる領域及びその近傍に、ドナー不純物となり得る元素をより存在しないようにすることができ、より高いチャネル移動度を有する半導体装置を提供することができる。
効果6:
また、本実施形態の半導体装置100の製造方法によれば、結晶成長によって形成された第1のp型半導体領域31に対して、n型不純物(O)を注入することによって第2のp型半導体領域52を形成することができるので、第1のp型半導体領域をイオン注入によって形成する場合と比較して、半導体装置100の製造におけるイオン注入の工程数を削減することができる。
効果7:
また、第1のp型半導体領域31は結晶成長によって形成され、その後、第1のp型半導体領域31の第2のp型半導体領域52が形成される領域に対してn型不純物を注入することによって第2のp型半導体領域52が形成される。そのため、イオン注入によって注入された不純物を活性化するための熱処理において、p型不純物(マグネシウム(Mg))の影響を考慮しなくともよいため、熱処理における自由度を高めることができ、より適切な熱処理を行うことができる。
A2.第1実施形態の変形例1:
図7は、第1実施形態の変形例1における半導体装置101を示す図である。半導体装置101は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域32、33と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極19と、ドレイン電極11と、を備える。
第1のp型半導体領域32は第1の半導体層2の上面に接する。第1のp型半導体領域33は、第1のp型半導体領域32の上面に接する。第1のp型半導体領域32、33は、MOCVD法によって形成されている。第1のp型半導体領域32、33は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域32に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約5×1018cm−3であり、第1のp型半導体領域33に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は約5×1019cm−3である。第1のp型半導体領域32のZ軸方向に沿った厚さは、約0.45μm(マイクロメートル)であり、第2のp型半導体領域52の上面から第1のp型半導体領域33の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。
第2のp型半導体領域52は、第1のp型半導体領域33の上面に接する。第2のp型半導体領域52は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域52に含まれるマグネシウム(Mg)平均濃度は、5×1019cm−3である。また、第2のp型半導体領域52は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域52に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×1019cm−3である。
第1の電極19は、第2のp型半導体領域52の少なくとも一部に接する。本変形例では、第1の電極19は、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、に接する一つの電極である。第1の電極19は、パラジウム(Pd)から主に形成される層と、チタン(Ti)から主に形成される層と、アルミニウム(Al)から主に形成される層と、を積層した後に、熱処理を加えた電極である。本変形例における半導体装置101のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
半導体装置101の製造では、上述の半導体装置100の製造方法における第1のp型半導体領域31を形成する工程(図2,ステップS100)においてMOCVD法によって1層からなる第1のp型半導体領域31が形成されたのに代えて、MOCVD法によって第1のp型半導体領域32と、第1のp型半導体領域32よりもアクセプタ濃度の高い第1のp型半導体領域33との2層が積層される。具体的には、第1の半導体層2の上面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.45μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が5×1018cm−3である第1のp型半導体領域32が形成される。続いて、第1のp型半導体領域32の上面の全面にわたって、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.15μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が5×1019cm−3である第1のp型半導体領域33が形成される。本変形例における第2のp型半導体領域52は、第1のp型半導体領域33の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、上述の第1実施形態と同様の方法でイオン注入が行われることによって形成される。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域32に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、6.5×1014cm-2である(図2、ステップS120)。
なお、上述の製造方法における半導体装置100の電極を形成する工程(図2,ステップS130)において、ボディ電極8及びソース電極9が形成されたのに代えて、本変形例では、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極19が形成される。本変形例における半導体装置101のその他の製造方法は、上述の第1の実施形態における半導体装置100の製造方法と同様であるため説明を省略する。
以上のような半導体装置101によれば、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、本変形例によれば、第2のp型半導体領域52は、比較的アクセプタ濃度が高い第1のp型半導体領域33にn型不純物がイオン注入されることによって形成されるため、第2のp型半導体領域52におけるアクセプタ濃度をより高めることができる。
さらに、第1の電極19は、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4とに接して一連に形成されているため、第2のp型半導体領域52に接するボディ電極8と、第1のn型半導体領域4に接するソース電極9と、を別々に形成する場合と比較して、電極を形成するための工程数を削減することができる。
A3.第1実施形態の変形例2:
図8は、第1実施形態の変形例2における半導体装置102を示す図である。半導体装置102は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域3と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極8及びソース電極9(第1の電極12)と、ドレイン電極11と、を備える。
上述の第1実施形態の半導体装置100では、MOCVD法によって第1のp型半導体領域31が形成されたのに対し、本変形例における第1のp型半導体領域3は、第1のp型半導体領域を形成する工程(図2、ステップS110)において、第1の半導体層2の上面から、p型不純物がイオン注入されることによって形成される。具体的には、基板1上にMOCVD法によって厚さ10.6μm(マイクロメートル)の第1の半導体層2が形成され(図2、ステップS100)、形成された第1の半導体層2の上面から−Z軸方向に0.6μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×1018cm−3となるように、第1の半導体層2の上面の全面に対してマグネシウム(Mg)イオンが注入される。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1の半導体層2に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、4.0×1014cm−2である。このようにして、第1の半導体層2の上面の全面に第1のp型半導体領域3が形成される。
本変形例における第2のp型半導体領域52は、第1のp型半導体領域3の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1018cm−3となるように、上述の第1実施形態と同様の方法でイオン注入が行われることによって形成される。(図2、ステップS120)。本変形例における半導体装置102のその他の製造方法は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
なお、本変形例の半導体装置102においても、第1のp型半導体領域3のチャネル領域におけるドナー不純物(O)をSIMSによって測定したところ、ドナー不純物(O)は検出されなかった。なお、本変形例における第1のp型半導体領域3は、n型不純物を含む第1の半導体層2にイオン注入することによって形成されるものの、第1の半導体層2に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、1×1016cm−3であり、形成された第1のp型半導体領域3に含まれるシリコン(Si)の濃度が、マグネシウム(Mg)の濃度に比べて非常に低い。そのため、このドナー不純物(Si)は、チャネル移動度には影響を与えない。
以上のような半導体装置102であれば、上述の第1実施形態の効果1〜4と同様の効果を奏する。
A4:第1実施形態の変形例3:
図9は、第1実施形態の変形例3における半導体装置103を示す図である。半導体装置103は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域3と、第1のp型半導体領域51と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極8及びソース電極9(第1の電極12)と、ドレイン電極11と、を備える。
本変形例における第1のp型半導体領域3は、上述の第1実施形態の変形例2と同様に、第1のp型半導体領域を形成する工程(図2、ステップS110)において、第1の半導体層2の上面から、p型不純物がイオン注入されることによって形成される。
第1のp型半導体領域51は、第1のp型半導体領域3の上面に接する。第1のp型半導体領域51は、p型不純物がイオン注入されることによって形成されている。本変形例では、第1のp型半導体領域51は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本変形例では第1のp型半導体領域51は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域51に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×1019cm−3であり、第1のn型半導体領域4の上面から第1のp型半導体領域51の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.15μm(マイクロメートル)である。
本変形例における第2のp型半導体領域52は、第1のp型半導体領域51の上面に接する。本変形例では、第2のp型半導体領域52に含まれるマグネシウム(Mg)平均濃度は、5×1019cm−3である。また、第2のp型半導体領域52に含まれる酸素(O)平均濃度は、5×1019cm−3である。本変形例における半導体装置103のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
本変形例では、第1のp型半導体領域31を形成する工程(図2、ステップS110)において、上述の第1実施形態の変形例2と同様に、第1の半導体層2にp型不純物がイオン注入されることによって第1のp型半導体領域3が形成されるのに加え、さらに第1のp型半導体領域51が形成される。具体的には、第1のp型半導体領域51が形成される領域を除く第1のp型半導体領域3上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンが形成された第1のp型半導体領域3の上面から−Z軸方向に0.15μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、イオン注入が行われることによって、第1のp型半導体領域51が形成される。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域3に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、1.0×1015cm-2である。
次に、第2のp型半導体領域52が形成される領域を除く第1のp型半導体領域51上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。なお、第2のp型半導体領域52を形成するためのパターンとして、第1のp型半導体領域51を形成するために用いられたパターンが用いられてもよい。第1のp型半導体領域51の上面から−Z軸方向に0.10μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、第1実施形態と同様にイオン注入が行われることによって、第2のp型半導体領域52が形成される。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域51に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、6.5×1014cm-2である。本変形例における半導体装置103のその他の製造方法は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
以上のような半導体装置103によれば、上述の第1実施形態の効果1〜4と同様の効果を奏する。
また、本変形例によれば、第2のp型半導体領域52は、比較的アクセプタ濃度が高い第1のp型半導体領域51にn型不純物がイオン注入されることによって形成されるため、第2のp型半導体領域52におけるアクセプタ濃度をより高めることができる。
A5:第1実施形態の変形例4:
図10は、第1実施形態の変形例4における半導体装置104を示す図である。半導体装置104は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域3と、第1のp型半導体領域51と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極19と、ドレイン電極11と、を備える。本変形例における第1の電極19は、上述の第1実施形態の変形例1と同様に、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、に接する一つの電極である。本変形例における半導体装置104のその他の構成は、上述の第1実施形態の変形例3における半導体装置103と同様であるため説明を省略する。
以上のような半導体装置104によれば、上述の第1実施形態の効果1〜4と同様の効果を奏する。また、上述の第1実施形態の変形例3と同様に、第2のp型半導体領域52は、比較的アクセプタ濃度が高い第1のp型半導体領域51にn型不純物がイオン注入されることによって形成されるため、第2のp型半導体領域52におけるアクセプタ濃度をより高めることができる。
また、第1実施形態の変形例1と同様に、第1の電極19は、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4とに接して一連に形成されているため、第2のp型半導体領域52に接するボディ電極8と、第1のn型半導体領域4に接するソース電極9と、を別々に形成する場合と比較して、電極を形成するための工程数を削減することができる。
A6:第1実施形態の変形例5:
図11は、第1実施形態の変形例5における半導体装置105を示す図である。半導体装置105は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域31と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域41と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、リセス15と、ボディ電極8及びソース電極9(第1の電極12)と、ドレイン電極11と、絶縁膜7と、を備える。
第1のn型半導体領域41は、第1のp型半導体領域31の上面に形成されている。本変形例では、第1のn型半導体領域41は、MOCVD法によって形成されている。リセス15は、第1のn型半導体領域41の上面から第1のn型半導体領域41を貫通し第1のp型半導体領域31に達する段差部である。リセス15は、ドライエッチングによって形成されている。本変形例における半導体装置105のその他の構成は、上述の第1実施形態における半導体装置100と同様であるため説明を省略する。
本変形例の半導体装置105では、上述の第1実施形態と同様に、MOCVD法によって、第1の半導体層2の上面に、Z軸方向に沿った厚さが約0.4μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が5×1018cm−3である第1のp型半導体領域31が形成される(図2、ステップS110)。
次に、MOCVD法によって、第1のp型半導体領域31の上面の全面に、Z軸方向に沿った厚さが約0.2μm(マイクロメートル)であり、シリコン(Si)の平均濃度が1×1018cm−3である第1のn型半導体領域41が形成される(ステップS115)。
次に、形成された第1のn型半導体領域41の上面から、第1のn型半導体領域41を貫通し第1のp型半導体領域31に達するまでドライエッチングすることによって、リセス15が形成される。リセス15が形成された後、リセス15の領域内部に、酸素(O)イオンが注入されて、第2のp型半導体領域52が形成される(図2、ステップS120)。第2のp型半導体領域52は、リセス15領域内の下面から、第1のp型半導体領域51に対して、−Z軸方向に0.10μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1018cm−3となるように、第1実施形態と同様にイオン注入が行われることによって形成される。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域51に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、6.5×1013cm-2である。
次に、リセス15の領域内部に、ボディ電極8が形成される。ボディ電極8は、リセス15の領域内部に形成された第2のp型半導体領域52に接する。その後、ボディ電極8の上にソース電極9が積層され、各種電極が形成される(図2,ステップS130)。以上のようにして半導体装置105が製造される。
以上のようなリセス15を有する半導体装置105においても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第1のn型半導体領域41はイオン注入ではなく、MOCVD法によって形成されるため、半導体装置105を製造するためのイオン注入の工程の回数を削減することができる。
B1.第2実施形態:
B1―1.半導体装置の構成:
図12は、第2実施形態における半導体装置106を示す図である。半導体装置106は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置106は、トレンチ型の縦型MISFETである。半導体装置106は、縦型トランジスタであり、絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。
半導体装置106は、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域32,33と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極19と、ドレイン電極11と、第1のp型半導体領域61と、第2のp型半導体領域62と、を備える。本実施形態の半導体装置106と、第1実施形態の半導体装置(第1実施形態の変形例1における半導体装置101)とが異なる主な点は、第1の半導体層2内に第2のp型半導体領域62が位置する点である。また、第1の半導体層2内に、第1のp型半導体領域61が位置する点である。
第1のp型半導体領域61は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極19との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、第1の半導体層2の上に形成されている。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域61は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域61に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×1019cm−3であり、第1のp型半導体領域32の下面から第1のp型半導体領域61の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.4μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域61は、第1の半導体層2にp型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第2のp型半導体領域62は、基板1の厚み方向において、基板1と第1の電極19との間に位置する。本実施形態では、第2のp型半導体領域62は第1のp型半導体領域61の上に形成されている。本実施形態では、第2のp型半導体領域62は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のp型半導体領域62は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第2のp型半導体領域62は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域62に含まれるマグネシウム(Mg)平均濃度は、5×1019cm−3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域62は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域62に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×1019cm−3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域62のZ軸方向に沿った距離は、約0.2μm(マイクロメートル)である。第2のp型半導体領域62の位置する第1の半導体層2内には、制御領域Cの備えるトレンチ6(絶縁膜7)の下面が位置する。図12に示すように、制御領域Cと第2のp型半導体領域62とは離れている。第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62を、「電界緩和領域」とも呼ぶ。
第1の電極19は、第1実施形態の変形例1における半導体装置101及び第1実施形態の変形例4における半導体装置104と同じく、p型半導体領域(第1のp型半導体領域33)と第1のn型半導体領域4とに接しており、一連に形成されている。なお、本変形例における半導体装置106において、第1の電極19には、第2のp型半導体領域が接していない。本実施形態におけるその他の半導体装置106の構成は、上述の第1実施形態の変形例1における半導体装置101と同様であるため説明を省略する。
B1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置106の製造では、上述の第1実施形態と同様に、基板1と第1の半導体層2とが積層された積層体100aが用意される(図2、ステップS100)。第1の半導体層2は、MOCVD法によって基板1上に形成される。第1の半導体層2の厚さは、約10μm(マイクロメートル)である。
次に、第1のp型半導体領域61が形成される(図2、ステップS110)。本工程では、第1のp型半導体領域61が形成される領域上を除く領域の第1の半導体層2上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、第1の半導体層2上にp型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物として、マグネシウム(Mg)イオンが用いられる。本実施形態では、第1の半導体層2の上面から−Z軸方向に0.4μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1の半導体層2に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.6×1015cm−2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。
次に、第2のp型半導体領域62が形成される(図2、ステップS120)。本工程においても、上述の第1実施形態において第2のp型半導体領域52が形成されたのと同様の方法により、第2のp型半導体領域62が形成される。具体的には、第2のp型半導体領域62が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域62との距離が離れるように、形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、第1の半導体層2の上面(イオン注入することによって形成された第1のp型半導体領域61の上面)から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域61に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×1015cm−2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62が形成された後に、不純物を活性化させるための熱処理が行われる。
次に、第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62が形成された第1の半導体層2上に、第1のp型半導体領域32、33が形成される。本実施形態では、第1の半導体層2の上面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.45μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が5×1018cm−3である第1のp型半導体領域32が形成される。続いて、第1のp型半導体領域32の上面の全面にわたって、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.15μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均能度が5×1019cm−3である第1のp型半導体領域33が形成される。さらに、第1実施形態と同様の方法により、第1のp型半導体領域32の上面に第1のn型半導体領域4が形成され(ステップS115)、各電極が形成される(図2、ステップS130)。
B1−3.効果:
以上のような半導体装置106によれば、n型不純物を含む第2のp型半導体領域62と制御領域Cとは離れているため、上述の第1実施形態と同様に、チャネル移動度が低下することを抑制することができる。
さらに、半導体装置106によれば、制御領域Cのトレンチ6の下面が存在する第1の半導体層2内に、n型不純物を含む第2のp型半導体領域62が位置するため、第2のp型半導体領域62によって、トレンチ6の下面に発生する電界集中を緩和することができる。
B2.第2実施形態の変形例1:
上述の第2実施形態における半導体装置106は、上述の第1実施形態と同様に、第1の電極19に接する第2のp型半導体領域を備えていてもよい。このような形態の半導体装置であれば、上述の第2実施形態と同様の効果を奏するのに加え、コンタクト形成領域において高いアクセプタ濃度が得られるため、第2のp型半導体領域と第1の電極19との接触抵抗を低減させることができる。
C1.第3実施形態:
C1−1.半導体装置の構成:
図13は、第3実施形態における半導体装置107を示す図である。半導体装置107は、窒化ガリウム(GaN)を用いて形成されたGaN系の半導体装置である。本実施形態では、半導体装置107は、横型MISFETである。半導体装置107は、横型トランジスタである。
半導体装置107は、基板71と、バッファ層72と、第1の半導体層93と、第1のp型半導体領域73、751と、第1のn型半導体領域74、741と、第2のp型半導体領域752と、絶縁膜771と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極79と、ゲート電極801と、ドレイン電極81と、を備える。
基板71は、基板71の上面である第1の面71uと、下面である第2の面71sと、を有し、面方向に広がる。本実施形態では、基板71は、シリコン(Si)から主に形成されている。
バッファ層72は、基板71の上面に接する。バッファ層72は、多層構造を有する窒化物半導体層である。バッファ層72は、比較的薄いアンドープ窒化アルミニウム(AlN)から主に構成された層に、比較的厚いアンドープ窒化ガリウム(GaN)から主に構成された層が積層されて形成されている。
第1の半導体層93は、基板71の厚み方向において、基板71と第1の電極79との間に位置する。本実施形態では、第1の半導体層93は、バッファ層72の上面に接する。本実施形態では、第1の半導体層93は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。本実施形態では、第1の半導体層93は、真性半導体層である。本実施形態では、第1の半導体層93のZ軸方向に沿った厚さは、約1.5μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1の半導体層93は、MOCVD法によって形成されている。
第1のp型半導体領域73は、基板71の厚み方向において、基板71と第1の電極79との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域73は、第1の半導体層93の上面に接する。本実施形態では、第1のp型半導体領域73は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域73は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域73は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域73に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×1017cm−3であり、第1のp型半導体領域73のZ軸方向に沿った厚さは、約0.5μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域73は、第1の半導体層93にp型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第1のp型半導体領域751は、基板71の厚み方向において、基板71と第1の電極79との間に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域751は、第1のp型半導体領域73上に位置する。本実施形態では、第1のp型半導体領域751は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域751は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第1のp型半導体領域751は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域751に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×1019cm−3であり、第2のp型半導体領域752の上面から第1のp型半導体領域751の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.4μm(マイクロメートル)である。本実施形態では、第1のp型半導体領域751は、第1のp型半導体領域73にp型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第2のp型半導体領域752は、基板71の厚み方向において、基板71と第1の電極79との間に位置する。第2のp型半導体領域752は、本実施形態では第1のp型半導体領域751の上面に接する。本実施形態では、第2のp型半導体領域752は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第2のp型半導体領域752は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。本実施形態では、第2のp型半導体領域752は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域752に含まれるマグネシウム(Mg)平均濃度は、5×1019cm−3である。また、本実施形態では、第2のp型半導体領域752は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域752に含まれる酸素(O)の平均濃度は、5×1019cm−3である。本実施形態では、第2のp型半導体領域752のZ軸方向に沿った厚さは、約0.2μm(マイクロメートル)である。第2のp型半導体領域752は、第1のp型半導体領域751にn型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第1のn型半導体領域74は、第1のp型半導体領域73の上面に形成されており、面方向における第2のp型半導体領域52と制御領域Cとの間に位置する。第1のn型半導体領域74は、第1のp型半導体領域73の上面であって、第2のp型半導体領域752とは異なる領域に位置する。本実施形態では、第1のn型半導体領域74は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のn型半導体領域74は、n型不純物を含むn型半導体からなる領域である。第1のn型半導体領域74は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体領域に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約2×1020cm−3であり、第1のn型半導体領域74のZ軸方向に沿った距離は、約0.2μm(マイクロメートル)である。第1のn型半導体領域74は、第1のp型半導体領域73にn型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第1のn型半導体領域741は、第1のp型半導体領域73の上面に形成されている。第1のn型半導体領域741は、第1のp型半導体領域73の上面であって、第2のp型半導体領域752とは異なる領域に位置する。本実施形態では、第1のn型半導体領域741は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のn型半導体領域741は、n型不純物を含むn型半導体からなる領域である。第1のn型半導体領域741は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体領域741に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約3×1017cm−3であり、第1のn型半導体領域741のZ軸方向に沿った距離は、約0.1μm(マイクロメートル)である。第1のn型半導体領域741は、第1のp型半導体領域73にn型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
絶縁膜771は、半導体領域(第1のp型半導体領域73、第1のn型半導体領域74、741、第2のp型半導体領域752及び第1のp型半導体領域751)の上面であって、第1の電極79又はドレイン電極81と接していない半導体領域を連続的に覆うように形成された膜である。本実施形態では、絶縁膜771は、二酸化シリコン(SiO2)により形成されている。
ゲート電極801は、絶縁膜771を介して第1のn型半導体領域74、第1のn型半導体領域741、第1のp型半導体領域73の上面に形成された電極である。本実施形態では、ゲート電極801は、本実施形態では、アルミニウム(Al)から主に形成されている。
第1の電極79は、第2のp型半導体領域752と第1のn型半導体領域74と、にオーミック接触する、一つの電極である。第1の電極79は、パラジウム(Pd)から主に形成される層と、チタン(Ti)から主に形成される層と、アルミニウム(Al)から主に形成される層と、を積層した後に、熱処理を加えた電極である。
ドレイン電極81は、第1のn型半導体領域74にオーミック接触する電極である。本実施形態では、ドレイン電極81は、パラジウム(Pd)から主に形成される層と、チタン(Ti)から主に形成される層と、アルミニウム(Al)から主に形成される層と、を積層した後に、熱処理を加えた電極である。ドレイン電極81を「第2の電極」とも呼ぶ。
図13には、制御領域Cが示されている。制御領域Cは、ゲート電極801の下方の第1のp型半導体領域73のX軸方向における幅、すなわち、ゲート電極801の下面における第1のn型半導体領域74と第1のn型半導体領域741との距離と等しい幅を有する。制御領域Cは、ゲート電極801と、絶縁膜771の一部とを含む。ゲート電極801に電圧が印加された場合、第1のp型半導体領域73に反転層が形成され、この反転層がチャネルとして機能することによって、第1の電極79と第2の電極81との間に導通経路が形成される。制御領域Cと第2のp型半導体領域752とは、X軸方向において図13に示す距離Lだけ離れている。なお、チャネル移動度を高める観点から、距離Lは0.1μm(マイクロメートル)以上であることが好ましい。半導体装置を微細化させる観点から、距離Lは10μm(マイクロメートル)以下であることが好ましい。
C1−2.半導体装置の製造方法:
半導体装置107の製造では、まず、基板71とバッファ層72と第1の半導体層93とが積層された積層体が用意される(図2、ステップS100)。本実施形態では、基板71上に積層されたバッファ層72の上面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約2.0μm(マイクロメートル)の第1の半導体層93が形成される。
次に、第1のp型半導体領域73が形成される(図2、ステップS110)。本実施形態では、第1の半導体層93の上面から−Z軸方向に0.5μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×1017cm−3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1の半導体層93の上面全面に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、6.5×1012cm−2である。
次に、第1のn型半導体領域74が形成される(ステップS115)。本工程では、まず、上述の第1実施形態において第1のn型半導体領域4が形成される工程と同様に、プラズマCVD法によって第1のp型半導体領域73の上面に、二酸化シリコン(SiO2)からなる膜が積層される。積層された二酸化シリコン(SiO2)からなる膜は、不純物分布を調整するための膜である。次に、第1のn型半導体領域74が形成される領域上を除く領域の二酸化シリコン(SiO2)上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、シリコン(Si)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域73の上面から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでのSiの平均濃度が、約2×1020cm−3となるように、イオン注入が行われる。シリコン(Si)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1の半導体層93上に形成された第1のp型半導体領域73上から、複数回にわけて注入される。シリコン(Si)イオンの全ドーズ量は、5.2×1015cm−2である。イオン注入の後には、積層された二酸化シリコン(SiO2)が残されたまま、パターンのみが除去される。
続いて、第1のn型半導体領域741が形成される(ステップS115)。本工程では、第1のn型半導体領域741が形成される領域上を除く領域の二酸化シリコン(SiO2)上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、シリコン(Si)イオンが用いられる。本実施形態では、第1の半導体層93上に形成された第1のp型半導体領域73上から、の上面から−Z軸方向に0.1μm(マイクロメートル)の深さまでのSiの平均濃度が、約3×1017cm−3となるように、イオン注入が行われる。シリコン(Si)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域73に対し、複数回にわけて注入される。シリコン(Si)イオンの全ドーズ量は、4.0×1012cm−2である。イオン注入の後には、積層された二酸化シリコン(SiO2)及びパターンが除去される。
次に第1のp型半導体領域751が形成される(図2、ステップS120)。まず、第1のp型半導体領域751が形成される領域を除く第1のp型半導体領域73上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、p型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるp型不純物として、マグネシウム(Mg)イオンが用いられる。本実施形態では、第1の半導体層93上に形成された第1のp型半導体領域73の上面から−Z軸方向に0.4μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1の半導体層93上に形成された第1のp型半導体領域73に対し、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.6×1015cm−2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。
次に、第2のp型半導体領域752が形成される(図2、ステップS130)。本工程では、第2のp型半導体領域752が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。本工程では、パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域752とが離れるように、形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、第1のp型半導体領域751上に、n型不純物がイオン注入される。本実施形態では、イオン注入されるn型不純物として、酸素(O)イオンが用いられる。本実施形態では、第1のp型半導体領域751の上面から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1019cm−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域751に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×1015cm−2である。イオン注入の後にパターンが除去される。本工程を、「工程(a)」とも呼ぶ。
なお、ステップS110及びステップS120では、第2のp型半導体領域752に含まれるp型不純物の濃度に対する、第2のp型半導体領域752に含まれるn型不純物の濃度の比が、0.1以上かつ2.0以下となるように、p型不純物の濃度とn型不純物の濃度との少なくとも一方が調整される。ステップS120が行われた後に、上述の第1実施形態と同様に、不純物を活性化させるための熱処理が行われる。
第2のp型半導体領域752が形成された後に、第1の電極79及びドレイン電極81が形成される領域以外の領域に絶縁膜771が形成されて、第1の電極79、ドレイン電極81、ゲート電極801が形成される(図2、ステップS130)。なお、本実施形態では、制御領域C以外における絶縁膜771は、各半導体領域を保護する保護膜としての機能を有する。ステップS130では、各電極が形成された後、上述の第1実施形態と同様に、各電極が接する半導体領域とのオーム性接触を得るための熱処理が行われる。これらの工程を経て、図13に示す半導体装置107が完成する。
以上で説明した第3実施形態の半導体装置107においても、上述の第1実施形態と同様の効果を奏する。
C2.第3実施形態の変形例1:
上記第3実施形態において、第1のp型半導体領域73は、バッファ層72の上面から−Z軸方向に0.5μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約1×1017cm−3となるように、イオン注入が行われて形成されている。これに代えて、結晶成長によって第1のp型半導体領域73が形成されてもよい。例えば、MOCVD法によって、バッファ層72の上に厚さ1.5μm(マイクロメートル)の第1の半導体層93が形成され、続いて、MOCVD法によって、第1の半導体層93上に厚さ0.5μm(マイクロメートル)の第1のp型半導体領域73が形成されてもよい。
このような半導体装置であれば、MOCVD法によって第1のp型半導体領域73を形成させるので、チャネル層(第1のp型半導体領域73)において電流が流れる領域及びその近傍に、ドナー不純物となり得る元素がより存在しないようにすることができ、より高いチャネル移動度を有する半導体装置を提供することができる。
C3.第3実施形態の変形例2:
図14は、第3実施形態の変形例2における半導体装置108を示す図である。半導体装置108は、基板71と、バッファ層72と、第1の半導体層93と、第1のp型半導体領域73、751、753と、第1のn型半導体領域74、91と、第2のp型半導体領域752と、絶縁膜771と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極79と、ゲート電極801と、ドレイン電極81と、を備える。
第1のp型半導体領域751、753は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。第1のp型半導体領域753は、ゲート電極801に接する。本変形例では、第1のp型半導体領域751、753は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域751、753に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×1018cm−3であり、第1のp型半導体領域753のZ軸方向に沿った厚さは、約0.4μm(マイクロメートル)である。また、第2のp型半導体領域752の上面から第1のp型半導体領域751の下面までのZ軸方向に沿った距離は、約0.4μm(マイクロメートル)である。本変形例では、第1のp型半導体領域751、753は、第1のp型半導体領域73にp型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第2のp型半導体領域752は、第1のp型半導体領域751の上面に接する。本変形例では、第2のp型半導体領域752は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域752に含まれるマグネシウム(Mg)平均濃度は、5×1018cm−3であり、第2のp型半導体領域752のZ軸方向に沿った距離は、約0.2μm(マイクロメートル)である。また、本変形例では、第2のp型半導体領域752は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域752に含まれる酸素(O)平均濃度は、5×1018cm−3である。第2のp型半導体領域752は、第1のp型半導体領域751にn型不純物がイオン注入されることによって形成されている。
第1のn型半導体領域91は、第1のp型半導体領域73の上面に形成されている。本変形例では、第1のn型半導体領域91は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のn型半導体領域91は、n型不純物を含むn型半導体からなる領域である。第1のn型半導体領域91は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体領域91に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約5×1016cm−3であり、第1のn型半導体領域91のZ軸方向に沿った距離は、約0.5μm(マイクロメートル)である。本変形例における半導体装置108のその他の構成は、上述の第3実施形態の半導体装置107の構成と同様であるため、説明を省略する。
半導体装置108の製造では、上述の第3実施形態の半導体装置107と同様に、バッファ層72の上面に第1の半導体層93が形成される(図2,ステップS100)。次に、第1の半導体層93の上面全面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.4μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が約1×1017cm−3である第1の半導体層93が形成される。さらに、第1の半導体層93の上面全面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.1μm(マイクロメートル)であり、シリコン(Si)の平均濃度が約5×1016cm−3である第1のn型半導体領域91が形成される(ステップS115)。
次に、上述の第3実施形態において第1のp型半導体領域73の上面に二酸化シリコン(SiO2)が積層されたのに代えて、第1のn型半導体領域91の上面に二酸化シリコン(SiO2)が積層される。その後、第3実施形態と同様に、パターンが形成され第1のn型半導体領域91の上面からイオン注入が行われることによって、第1のn型半導体領域74が形成される(ステップS115)。
次に、第1のp型半導体領域751、第1のp型半導体領域753が形成される(図2、ステップS110)。本変形例では、第1のp型半導体領域751、第1のp型半導体領域753が形成される領域を除いて、フォトレジストを用いてパターンが形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、p型不純物がイオン注入される。本変形例では、第1のp型半導体領域73上に形成された第1のn型半導体領域91の上面から−Z軸方向に0.4μm(マイクロメートル)の深さまでのマグネシウム(Mg)の平均濃度が、約5×1018cm−3となるように、イオン注入が行われる。マグネシウム(Mg)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、複数回にわけて注入される。マグネシウム(Mg)イオンの全ドーズ量は、2.6×1014cm−2である。イオン注入の後には、パターンが除去される。
次に、第2のp型半導体領域752が形成される(図2、ステップS120)。本工程においても、第2のp型半導体領域752が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。また、パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域752とが離れるように、形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、形成された第1のp型半導体領域751上に、n型不純物がイオン注入される。本変形例では、第1のp型半導体領域751の上面から、−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約5×1018cm−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域751に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、1.3×1014cm−2である。イオン注入の後にパターンが除去される。本工程を、「工程(a)」とも呼ぶ。本変形例における半導体装置108のその他の製造方法は、上述の第3実施形態における半導体装置107の製造方法と同じであるため、説明を省略する。
以上で説明した半導体装置108においても、上述の第3実施形態と同様の効果を奏する。
また、MOCVD法によって第1のp型半導体領域73を成長させるので、チャネル層(第1のp型半導体領域73)において電流が流れる領域及びその近傍に、ドナー不純物となり得る元素がより存在しないようにすることができ、より高いチャネル移動度を有する半導体装置を提供することができる。
C4.第3実施形態の変形例3:
図15は、第3実施形態の変形例3における半導体装置110を示す図である。本変形例における半導体装置110は、RESURF(REduced SURface Field)構造を有する横型のMISFETである。半導体装置110は、基板71と、バッファ層72と、第1のp型半導体領域731、751、753と、第1のn型半導体領域74、911と、第2のp型半導体領域752、662と、絶縁膜771と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極79と、ゲート電極801と、ドレイン電極81と、を備える。本変形例においては、バッファ層72を、「第1の半導体層」とも呼ぶ。本変形例においては、制御領域Cと第2のp型半導体領域752とは、距離L1だけ離れており、制御領域Cと第2のp型半導体領域662とは、距離L2だけ離れている。
第1のp型半導体領域731は、基板71の厚み方向において、基板71と第1の電極79との間に位置する。本変形例では、第1のp型半導体領域731は、バッファ層72の上面に接する。本変形例では、第1のp型半導体領域731は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のp型半導体領域731は、p型不純物を含むp型半導体からなる領域である。本変形例では、第1のp型半導体領域731は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域731に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約1×1018cm−3であり、第1のp型半導体領域731のZ軸方向に沿った厚さは、約0.4μm(マイクロメートル)である。第1のp型半導体領域731は、バッファ層72の上面に、MOCVD法による結晶成長によって形成されている。
第2のp型半導体領域662は、第1のp型半導体領域731の上面に接する。第2のp型半導体領域662は、p型不純物と、n型不純物と、を含んでおり、p型の特性を有するp型半導体からなる領域である。本変形例では、第2のp型半導体領域662は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第2のp型半導体領域662に含まれるマグネシウム(Mg)平均濃度は、1×1018cm−3であり、第2のp型半導体領域662のZ軸方向に沿った厚さは、約0.2μm(マイクロメートル)である。また、本変形例では、第2のp型半導体領域662は、酸素(O)をn型不純物として含む。第2のp型半導体領域662に含まれる酸素(O)平均濃度は、1×1018cm−3である。本変形例では、第2のp型半導体領域662は、第1のp型半導体領域731にn型不純物がイオン注入されることによって形成されている。第2のp型半導体領域662を、「電界緩和領域」とも呼ぶ。
第1のn型半導体領域911は、第1のp型半導体領域731の上面に形成されている。本変形例では、第1のn型半導体領域911は、窒化ガリウム(GaN)から主に形成されている。第1のn型半導体領域911は、n型不純物を含むn型半導体からなる領域である。第1のn型半導体領域911は、シリコン(Si)をドナーとして含む。第1のn型半導体領域911に含まれるシリコン(Si)の平均濃度は、約1×1017cm−3であり、第1のn型半導体領域911のZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。本変形例における半導体装置110のその他の構成は、上述の第3実施形態の変形例2における半導体装置108の構成と同様であるため、説明を省略する。
半導体装置110の製造では、基板71の上にバッファ層72が形成され(図2、ステップS100)、さらに、バッファ層72の上面全面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.4μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が約1×1018cm−3である第1のp型半導体領域731が形成される(図2、ステップS120)。
次に、第2のp型半導体領域662が形成される(図2、ステップS130)。本工程においては、第2のp型半導体領域662が形成される領域上を除く領域上に、フォトレジストを用いてパターンが形成される。また、パターンは、後に形成される制御領域Cと第2のp型半導体領域662とが離れるように、形成される。次に、パターンをマスクとして用いて、形成された第1のp型半導体領域731上に、n型不純物がイオン注入される。本変形例では、第1のp型半導体領域731の上面から−Z軸方向に0.2μm(マイクロメートル)の深さまでの酸素(O)の平均濃度が、約1×1018cm−3となるように、イオン注入が行われる。酸素(O)イオンは、イオン注入の加速電圧を異ならせて、第1のp型半導体領域731に対し、複数回にわけて注入される。酸素(O)イオンの全ドーズ量は、2.6×1013cm−2である。イオン注入の後にパターンが除去される。本工程は、「工程(a)」に含まれる。
次に、第2のp型半導体領域662が形成された第1のp型半導体領域731の上面の全面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが0.1μm(マイクロメートル)であり、シリコンの平均濃度が約1×1017cm−3である第1のn型半導体領域911が形成される。本変形例の110におけるその他の製造方法は、上述の第3実施形態の変形例2における半導体装置108の製造方法と同様であるため、説明を省略する。
以上で説明した半導体装置110においても、上述の第3実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、半導体装置110では、アクセプタ濃度の高い第2のp型半導体領域662により、ゲート電極801付近の電界集中を緩和することができる。
C5.第3実施形態の変形例4:
図16は、第3実施形態の変形例4における半導体装置111を示す図である。半導体装置111は、横型MISHFET(Metal-Insulator-Semiconductor Heterostructure Field-Effect Transistor)である。半導体装置111は、横型トランジスタである。
半導体装置111は、基板71と、バッファ層72と、第1のp型半導体領域73、751、753と、キャリア走行層94と、障壁層95と、第2のp型半導体領域752と、絶縁膜77と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極79と、ゲート電極80と、ドレイン電極81と、を備える。本変形例において、バッファ層72を、「第1の半導体層72」とも呼ぶ。
第1のp型半導体領域73は、バッファ層72の上面に接する。本変形例では、第1のp型半導体領域73は、マグネシウム(Mg)をアクセプタとして含む。第1のp型半導体領域73に含まれるマグネシウム(Mg)の平均濃度は、約5×1017cm−3であり、第1のp型半導体領域73のZ軸方向に沿った厚さは、約0.5μm(マイクロメートル)である。本変形例では、第1のp型半導体領域73は、MOCVD法によって形成されている。
キャリア走行層94は、バッファ層72の上面に接する。キャリア走行層94は、真性半導体層である。キャリア走行層94のZ軸方向に沿った厚さは、約0.1μm(マイクロメートル)である。本変形例ではキャリア走行層94は、MOCVD法によって形成されている。
障壁層95は、キャリア走行層94の上面に接する。障壁層95は、真性半導体層である。障壁層95は、主に窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)により形成されている。障壁層95のZ軸方向に沿った厚さは、約20nm(ナノメートル)である。障壁層95は、MOCVD法によって形成されている。
絶縁膜77は、各半導体(障壁層95、第1のp型半導体領域751、753、第2のp型半導体領域752)の上面であって、第1の電極79又はドレイン電極81と接していない半導体を連続的に覆うように形成された膜である。絶縁膜77は、二酸化シリコン(SiO2)により形成されている。制御領域C以外の領域における絶縁膜77は、各半導体の上面を覆う保護膜として機能する。
半導体装置111の製造では、まず、基板71の上にMOCVD法によって、バッファ層72が形成される(図2、ステップS100)。続いて、バッファ層72の上面全面に、MOCVD法によって、Z軸方向に沿った厚さが約0.5μm(マイクロメートル)であり、マグネシウム(Mg)の平均濃度が約5×1017cm−3である第1のp型半導体領域73が形成される(ステップS110)。さらに、第1のp型半導体領域73の上面には、Z軸方向に沿った厚さが約0.1μm(マイクロメートル)のキャリア走行層94が、MOCVD法によって形成される。キャリア走行層94上には、Z軸方向に沿った厚さが約20nmの障壁層95が、MOCVD法によって形成される。本変形例における半導体装置111のその他の製造方法は、上述の第3実施形態の変形例2における半導体装置108の製造方法と同じであるため、説明を省略する。
以上で説明した半導体装置111においても、上述の第3実施形態と同様の効果を奏する。
C6.第3実施形態の変形例5:
図17は、第3実施形態の変形例5における半導体装置112を示す図である。半導体装置112は、横型のHFET(Heterostructure Field-Effect Transistor)である。半導体装置112は、横型トランジスタである。
半導体装置112は、基板71と、バッファ層72と、第1のp型半導体領域73、751、753と、キャリア走行層94と、障壁層95と、第2のp型半導体領域752と、絶縁膜77と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極79と、ゲート電極80と、ドレイン電極81と、を備える。本変形例において、バッファ層72を、「第1の半導体層72」とも呼ぶ。
半導体装置112と、上述の第3実施形態の変形例4における半導体装置111と異なる点は、ゲート電極80が障壁層95上に形成されている点である。絶縁膜77は、障壁層95上の第1の電極79、ゲート電極80、ドレイン電極81が形成されていない領域上に形成されている。絶縁膜77は、障壁層95の保護膜として機能する。本変形例における半導体装置111のその他の構成は、上述の第3実施形態の変形例4における半導体装置111と同様であるため、説明を省略する。
以上で説明した半導体装置111においても、上述の第3実施形態と同様の効果を奏する。
D.第4実施形態:
図18は、第4実施形態における半導体装置200を示す図である。半導体装置200は、第1実施形態と同様に、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域31と、第2のp型半導体領域52と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極8及びソース電極9(第1の電極12)と、ドレイン電極11と、を備える。半導体装置200は、−X軸方向側における終端構造800として、段差部600と、終端部620とを備える。本実施形態では、半導体装置200は、−X軸方向側と同様に、+X軸方向側に終端構造を有する。半導体装置200は、さらに、配線電極120と、絶縁膜772と、を備える。
半導体装置200の段差部600は、上面601と側面602と底面603とからなる。段差部600は、第1のn型半導体領域4から第1のp型半導体領域31を経て第1の半導体層2に至る段差を形成する。
半導体装置200の終端部620は、半導体装置200の端部である。終端部620は、第1の半導体層2における−X軸方向を向いた界面と、基板1における−X軸方向を向いた界面とを含む。
半導体装置200は、複数のトレンチ6を備えており、それぞれのトレンチ6には、ゲート電極10が形成されている。半導体装置200では、ゲート電極10及び配線電極120は複数であり、ゲート電極10と配線電極120とは、X軸方向において交互に配置されている。本実施形態では、ゲート電極10及び配線電極120は、Y軸方向に沿って延びている。本実施形態では、半導体装置200における複数のゲート電極10は、図示しない部位で並列に接続されている。半導体装置200における複数の制御領域Cは、絶縁膜7の一部とゲート電極10の一部とを含む。各制御領域Cは第2のp型半導体領域52と離れている。
絶縁膜772は、電気絶縁性を有し、段差部600、絶縁膜7、ゲート電極10を覆う。本実施形態では、絶縁膜772は、二酸化シリコン(SiO2)から形成されている。
配線電極120は、導電性を有し、絶縁膜7に積層されている。配線電極120は、複数の電極9のそれぞれに接続する複数の接続部121eを有するソース配線電極である。これによって、複数のゲート電極10に対応する複数の素子が並列に接続される。本実施形態では、配線電極120は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。
段差部600に接する箇所における配線電極120と、段差部600に接する絶縁膜772とは、フィールドプレート構造を構成する。
以上説明した第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、フィールドプレート構造により段差部600における電界集中を緩和することができる。その結果、多数の素子を並列で動作させる半導体装置200の電気的特性を向上させることができる。
E.第5実施形態:
図19は、第5実施形態における半導体装置250を示す図である。半導体装置250は、第2実施形態と同様に、基板1と、第1の半導体層2と、第1のp型半導体領域32、33と、第1のn型半導体領域4と、トレンチ6と、絶縁膜7と、ゲート電極10と、ボディ電極とソース電極とを兼ねる第1の電極19と、ドレイン電極11と、第1のp型半導体領域61と、第2のp型半導体領域62と、を備える。第1のp型半導体領域61及び第2のp型半導体領域62は、第1の半導体層2内に位置する。半導体装置250は、+X軸方向側における終端構造800bとして、段差部600bを備えている。本実施形態では、半導体装置250は、+X軸方向側と同様に、−X軸方向側に終端構造800bを有する。半導体装置250は、さらに、配線電極120と、絶縁膜772と、を備える。
半導体装置250の段差部600bは、上面601bと側面602bと底面603bとからなる。段差部600bは、第1のn型半導体領域4から第1のp型半導体領域32を経て第1の半導体層2に至る段差を形成する。段差部600bの箇所における第1の半導体層2内には、第2のp型半導体領域62が形成されている。段差部600bの箇所における第2のp型半導体領域62の上面は、段差部600bの底面603bと同一平面上に位置する。また、段差部600bの箇所における第1の半導体層2内には、第1のp型半導体領域61が形成されている。段差部600bの箇所における第1のp型半導体領域61の上面は、段差部600bの底面603bと同一平面上に位置する。
半導体装置250は、複数のトレンチ6を備えており、それぞれのトレンチ6には、ゲート電極10が形成されている。半導体装置250では、ゲート電極10及び配線電極120は複数であり、ゲート電極10と配線電極120とは、X軸方向において交互に配置されている。本実施形態では、ゲート電極10及び配線電極120は、Y軸方向に沿って延びている。本実施形態では、半導体装置200における複数のゲート電極10は、図示しない部位で並列に接続されている。半導体装置250における複数の制御領域Cは、絶縁膜7の一部とゲート電極10の一部とを含む。各制御領域Cは、第2のp型半導体領域62と離れている。
絶縁膜772は、電気絶縁性を有し、段差部600、絶縁膜7、ゲート電極10を覆う。本実施形態では、絶縁膜772は、二酸化シリコン(SiO2)から形成されている。
配線電極120は、導電性を有し、絶縁膜7に積層されている。配線電極120は、複数の電極19のそれぞれに接続する複数の接続部121eを有するソース配線電極である。これによって、複数のゲート電極10に対応する複数の素子が並列に接続される。本実施形態では、配線電極120は、アルミニウム(Al)から主に形成されている。
段差部600bに接する箇所における配線電極120と、段差部600bに接する絶縁膜772とは、フィールドプレート構造を構成する。
以上説明した第5実施形態によれば、上述の第2実施形態と同様の効果を奏する。また、上述の第4実施形態と同様にフィールドプレート構造により段差部600bにおける電界集中を緩和することができる。さらに、段差部600bの箇所における第2のp型半導体領域62によって、段差部600bにおける電界集中を緩和することができる。その結果、多数の素子を並列で動作させる半導体装置250の電気的特性を向上させることができる。
F.第6実施形態:
図20は、電力変換装置300の構成を示す説明図である。電力変換装置300は、交流電源Eから負荷Rに供給される電力を変換する装置である。電力変換装置300は、交流電源Eの力率を改善する力率改善回路の構成部品として、制御回路20と、トランジスタTRと、4つのダイオードD1と、コイルLcと、ダイオードD2と、キャパシタCpとを備える。本実施形態では、トランジスタTRは、第4実施形態の半導体装置200と同様である。
電力変換装置300のダイオードD1,D2は、ショットキーバリアダイオードである。電力変換装置300において、4つのダイオードD1は、交流電源Eの交流電圧を整流するダイオードブリッジDBを構成する。ダイオードブリッジDBは、直流側の端子として、正極出力端Tpと、負極出力端Tnとを有する。コイルLcは、ダイオードブリッジDBの正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のアノード側は、コイルLcを介して正極出力端Tpに接続されている。ダイオードD2のカソード側は、キャパシタCpを介して負極出力端Tnに接続されている。負荷Rは、キャパシタCpと並列に接続されている。
電力変換装置300のトランジスタTRは、FET(Field-Effect Transistor)である。トランジスタTRのソース側は、負極出力端Tnに接続されている。トランジスタTRのドレイン側は、コイルLcを介して正極出力端Tpに接続されている。トランジスタTRのゲート側は、制御回路20に接続されている。電力変換装置300の制御回路20は、交流電源Eの力率が改善されるように、負荷Rに出力される電圧、および、ダイオードブリッジDBにおける電流に基づいて、トランジスタTRのソース−ドレイン間の電流を制御する。
以上説明した第6実施形態によれば、トランジスタTRのデバイス特性を向上させることができる。その結果、電力変換装置300による電力変換効率を向上させることができる。
なお、トランジスタTRは、第5実施形態の半導体装置250と同様であってもよいし、上述の他の実施形態及び変形例における半導体装置が用いられてもよい。
G.他の変形例:
本発明は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせを行うことが可能である。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除することが可能である。
本発明が適用される半導体装置は、上述した構造に限られず、制御領域Cを備え、制御電極(ゲート電極)に電圧を印加することによって反転層が形成される原理を用いて電流を制御する半導体装置であればよく、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。
上述の実施形態及び変形例において、基板の材質は、上述した窒化ガリウム(GaN)やシリコン(Si)に限らず、サファイア(Al2O3)、炭化シリコン(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ガリウム(Ga2O3)などのいずれであってもよい。なお、上述したように、半導体装置に含まれるn型不純物及びp型不純物を活性化させる観点から、面方向の格子定数と、第1の半導体層2の面方向の格子定数と、の差は、5%以下とするであることが好ましい。このような基板の材質は、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化シリコン(SiC)であることが好ましく、窒化ガリウム(GaN)であることがより好ましい。
上述の実施形態及び変形例において、各半導体層及び半導体領域の材質は、上述した窒化ガリウム(GaN)に限らず、シリコン(Si)、SiC(窒化シリコン)、またはIII族窒化物(例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)など)などの他の半導体材料であってもよい。
上述の実施形態及び変形例において、n型不純物は、シリコン(Si)、酸素(O)、ゲルマニウム(Ge)などのいずれであってもよい。
上述の実施形態及び変形例において、p型不純物は、マグネシウム(Mg)、ベリリウム(Be)、亜鉛(Zn)および炭素(C)などのいずれであってもよい。
上述の実施形態及び変形例において、絶縁膜の材質は、電気絶縁性を有する材質であればよく、二酸化シリコン(SiO2)の他、窒化シリコン(SiNx)、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸窒化シリコン(SiON)、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸窒化ジルコニウム(ZrON)、酸窒化ハフニウム(HfON)などの少なくとも1つであってもよい。絶縁膜は、単層であってもよいし、2層以上であってもよい。
上述の実施形態及び変形例において、各電極の材質は、上述の実施形態の材質に限らず、他の材質であってもよい。第1の電極は、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)のいずれかを含んでいてもよい。
上述の実施形態及び変形例において、結晶成長によって形成された半導体層は、イオン注入によって形成されてもよく、イオン注入によって形成された半導体層は、結晶成長によって形成されてもよい。例えば、半導体装置における第1のp型半導体領域の一部がイオン注入によって形成され、一部が結晶成長によって形成されてもよい。
上述の実施形態及び変形例において、第1のp型半導体領域51、751を備える半導体装置は、第1のp型半導体領域51、751を備えていなくてもよい。また、第1のp型半導体領域51、751を備えていない半導体装置は、第1のp型半導体領域51、751を備えていてもよい。
上述の実施形態及び変形例において、第1の半導体層内に第2のp型半導体領域62を備えていない半導体装置は、第1の半導体層内に第2のp型半導体領域62を備えていてもよい。さらに、第1の半導体層内に、第1のp型半導体領域61を備えていてもよい。
上述の実施形態及び変形例において、第2のp型半導体領域のアクセプタ濃度は、第1のp型半導体領域のアクセプタ濃度よりも高くなくともよい。第2のp型半導体領域のアクセプタ濃度は、第1のp型半導体領域のアクセプタ濃度と同じであってもよいし、低くてもよい。