JP2017132884A - 加硫ゴム、加硫ゴムの製造方法およびタイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
[1]合成ゴムおよび天然ゴムから選ばれる少なくとも1種の固形ゴム(A)と、炭素数14以下の共役ジエンの少なくとも1種に由来する単量体単位を含み、38℃における溶融粘度が3,000Pa・s以下である液状重合体(B)とを含有し、かつ固形ゴム(A)と液状重合体(B)との溶解度パラメータの差Δδが1.0(J/cm3)1/2以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、
加硫ゴム中に、直径200nm以上の前記液状重合体(B)に由来する島状相分離構造が存在する加硫ゴム。
[2]前記液状重合体(B)の炭素数14以下の共役ジエンがブタジエン、イソプレンおよびミルセンから選ばれる少なくとも1種である、[1]の加硫ゴム。
[3]さらにフィラー(C)を含有する、[1]または[2]の加硫ゴム。
[4]前記液状重合体(B)の重量平均分子量が30,000〜500,000である、[1]〜[3]のいずれかの加硫ゴム。
[5]前記液状重合体(B)が、ミルセンに由来する単量体単位(b2)を含む重合体であり、ミルセン以外の炭素数14以下の共役ジエンに由来する単量体単位(b1)および単量体単位(b2)の合計に対する単量体単位(b2)の割合が1〜100質量%である、[1]〜[4]のいずれかの加硫ゴム。
[6]前記ゴム組成物中に含まれる、分子量が10,000以上、200,000以下である低分子量ゴム成分の含有量が10質量%以上である、[1]〜[5]のいずれかの加硫ゴム。
[7]前記ゴム組成物中の前記液状重合体(B)の含有量が、前記固形ゴム(A)100質量部に対して0.1〜50質量部である、[1]〜[6]のいずれかの加硫ゴム。
[8]加硫ゴムとなる前記ゴム組成物中に含まれる固形ゴム(A)および液状重合体(B)の質量比と同じ質量比で固形ゴム(A)および液状重合体(B)を含む混合物中に、直径300nm以上、2μm以下の液状重合体(B)に由来する島状相分離構造が存在する、[1]〜[7]のいずれかの加硫ゴム。
[9]合成ゴムおよび天然ゴムから選ばれる少なくとも1種の固形ゴム(A)と、炭素数14以下の共役ジエンの少なくとも1種に由来する単量体単位を含み、38℃における溶融粘度が3,000Pa・s以下である液状重合体(B)とを含有し、かつ固形ゴム(A)と液状重合体(B)との溶解度パラメータの差Δδが1.0(J/cm3)1/2以下であるゴム組成物を加硫する加硫ゴムの製造方法。
[10][1]〜[8]のいずれかの加硫ゴムを少なくとも一部に用いたタイヤ。
本発明は、合成ゴムおよび天然ゴムから選ばれる少なくとも1種の固形ゴム(A)と、炭素数14以下の共役ジエンの少なくとも1種に由来する単量体単位を含み、38℃における溶融粘度が3,000Pa・s以下である液状重合体(B)とを含有し、かつ固形ゴム(A)と液状重合体(B)との溶解度パラメータの差Δδが1.0(J/cm3)1/2以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、加硫ゴム中に、直径200nm以上の前記液状重合体(B)に由来する島状相分離構造が存在する加硫ゴムである。
本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物は固形ゴム(A)を含有する。本発明で固形ゴムとは、20℃において固形状で取り扱うことができるゴムをいい、固形ゴムの100℃におけるムーニー粘度 ML1+4は通常20〜200の範囲にある。固形ゴム(A)としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(以下、「SBR」ともいう。)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム、および天然ゴム等のゴムが挙げられる。これらの中でも、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴムがより好ましく、天然ゴムがさらに好ましい。固形ゴム(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明において固形ゴム(A)として合成ゴムを用いる場合、SBR、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリル共重合体ゴム、クロロプレンゴム等が好ましく、中でも、イソプレンゴム、ブタジエンゴムがより好ましい。
イソプレンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン−トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド−コバルト系、トリアルキルアルミニウム−三弗化ホウ素−ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド−ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム−有機酸ネオジウム−ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、または有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のイソプレンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたイソプレンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のイソプレンゴムを用いてもよい。
ブタジエンゴムとしては、例えば、四ハロゲン化チタン−トリアルキルアルミニウム系、ジエチルアルミニウムクロライド−コバルト系、トリアルキルアルミニウム−三弗化ホウ素−ニッケル系、ジエチルアルミニウムクロライド−ニッケル系等のチーグラー系触媒;トリエチルアルミニウム−有機酸ネオジム−ルイス酸系等のランタノイド系希土類金属触媒、または有機アルカリ金属化合物を用いて重合された、市販のブタジエンゴムを用いることができる。チーグラー系触媒により重合されたブタジエンゴムが、シス体含量が高く好ましい。また、ランタノイド系希土類金属触媒を用いて得られる超高シス体含量のブタジエンゴムを用いてもよい。
なお、本発明の固形ゴム(A)に用いるゴムの製造方法に特に制限はなく、市販のものを用いてもよい。
本発明の固形ゴム(A)で用いる天然ゴムとしては、例えば、SMR、SIR、STR等のTSR、RSS等のタイヤ工業において一般的に用いられる天然ゴム、高純度天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、水酸基化天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムが挙げられる。中でも、品質のばらつきが少ない点、および入手容易性の点から、SMR20、STR20やRSS#3が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物は液状重合体(B)を含有する。本発明で液状重合体とは、20℃で液状の重合体である。
炭素数14以下の共役ジエンとしては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−フェニル−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3,7−オクタトリエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの中でも、ブタジエン、イソプレン、ミルセンが好ましく、ミルセンがより好ましい。なお、ミルセンは、典型的には、β−ミルセン(7−メチル−3−メチレンオクタ−1,6−ジエン)を意味する。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−4−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4−メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましい。
液状重合体(B)は、乳化重合法、または国際公開第2010/027463号パンフレット、国際公開第2010/027464号パンフレットに記載の方法等により製造することができる。これらの中でも、乳化重合法または溶液重合法が好ましく、溶液重合法がより好ましい。
液状重合体(B)を得るための乳化重合法としては公知の方法を適用できる。例えば、所定量の炭素数14以下の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
得られる液状重合体(B)の重量平均分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
液状重合体(B)を得るための溶液重合法としては、公知の方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、アニオン重合可能な活性金属を使用して、所望により極性化合物の存在下、炭素数14以下の共役ジエンを含む単量体を重合する。
極性化合物は、アニオン重合において、反応を失活させず、共役ジエンに由来する単量体単位のミクロ構造を調整するため用いられ、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物等が挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物に対して好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で使用される。
重合反応は、重合停止剤としてメタノール、イソプロパノール等のアルコールを添加して、反応を停止できる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで液状重合体(B)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより液状重合体(B)を単離できる。
前記液状重合体(B)は変性して用いてもよい。官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、アルコキシシリル基、水酸基、エポキシ基、エーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、メルカプト基、イソシアネート基、ニトリル基、酸無水物基等が挙げられる。
本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物中に含まれる固形ゴム(A)および液状重合体(B)の質量比と同じ質量比で固形ゴム(A)および液状重合体(B)を混合した混合物中に、直径300nm以上の重合体(B)に由来する島相(島状相分離構造)が存在することが好ましい。なお、前記混合物中の液状重合体(B)に由来する島状相分離構造とは、その混合物中、液状重合体(B)を主体として含み、この液状重合体(B)と相溶するその他の成分(例えば固形ゴム(A)の低分子量ゴム成分)の少なくとも一部をさらに含む成分が、固形ゴム(A)の高分子量ゴム成分を主体とする成分と相分離して形成された島状の相分離構造である。
液状重合体(B)が島相に多く存在することを確認する方法としては、固形ゴム(A)単体より得られた二次元像と、固形ゴム(A)と液状重合体(B)とを混練して得られた混合物より得られた二次元像とを比較し、固形ゴム(A)単体より得られた二次元像には観察されなかった島相が、固形ゴム(A)と液状重合体(B)を混練して得られた混合物より得られた二次元像に観察された場合は、その島相は液状重合体(B)が多く存在すると判断できる。また、評価対象である固形ゴム(A)と液状重合体(B)を混練して得られた混合物に対して、液状重合体(B)の割合を変化させた参照試料を作製し、その二次元像を評価し、液状重合体(B)の割合に応じて島相の占める割合が変化している場合も、その島相は重合体(B)が多く存在すると判断できる。なお、本発明の実施例においては、前者の方法で液状重合体(B)が島相に多く存在することを確認した。
本発明の加硫ゴムでは、その加硫ゴムとなるゴム組成物中の低分子量ゴム成分の含有量が10質量%以上であることが好ましい。低分子量ゴム成分の含有量が10質量%以上であると、加硫前のゴム組成物の加工性が良好になり、さらに液状重合体(B)により高い転がり抵抗性能を維持することが可能となる。
本発明の加硫ゴムにはフィラー(C)が含まれていてもよい。フィラーが加硫ゴム中に含まれることにより、例えば、得られる加硫ゴムの、機械強度、耐熱性、または耐候性等の物性の改善をすることができる。フィラー(C)としては、加硫ゴムの機械強度の向上等の物性の改善などの観点からカーボンブラックおよびシリカ等を好ましく用いることができる。加硫ゴム中にフィラー(C)を含ませるためには、例えば、加硫前の上記ゴム組成物を作製する際にフィラー(C)を含ませればよい。
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、およびケッチェンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、加硫速度や機械強度向上の観点から、ファーネスブラックが好ましい。
なお、カーボンブラックの平均粒径は、透過型電子顕微鏡により粒子の直径を測定してその平均値を算出することにより求めることができる。
シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等を挙げることができる。中でも、加工性、機械強度および耐摩耗性を一層向上させる観点から、湿式シリカが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フィラー(C)が、カーボンブラックおよびシリカから選ばれる少なくとも1つである場合には、固形ゴム(A)100質量部に対するフィラー(C)の含有量は、5〜150質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましく、15〜100質量部がさらに好ましい。カーボンブラックおよびシリカから選ばれる少なくとも1つの含有量が前記範囲内であると、得られる加硫ゴムの転がり抵抗性能、機械強度および耐摩耗性が向上する。また、加硫前のゴム組成物にフィラー(C)を含ませる場合には、その加工性が向上する。
本発明の加硫ゴムは、機械強度の向上、耐熱性や耐候性等の物性の改良、硬度調整、増量剤を配合することによる経済性の改善等を目的として、必要に応じて、カーボンブラックおよびシリカ以外のフィラーをさらに含有していてもよい。
本発明の加硫ゴムは、固形ゴム(A)および液状重合体(B)と、さらに加硫剤(D)とを含有するゴム組成物を加硫してなる加硫ゴムであることが好ましい。加硫剤(D)としては、例えば、硫黄および硫黄化合物が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。加硫剤(D)として硫黄または硫黄化合物を用いる場合には、前記ゴム組成物中の加硫剤(D)の含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、0.8〜5質量部がさらに好ましい。
前記加硫剤(D)として、硫黄および硫黄化合物などを用いる場合などには、本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物は、さらに加硫促進剤(E)を含有していてもよい。加硫促進剤(E)としては、例えば、グアニジン系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、チウラム系化合物、チオウレア系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、アルデヒド−アミン系化合物またはアルデヒド−アンモニア系化合物、イミダゾリン系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記ゴム組成物中の加硫促進剤(E)の含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
前記加硫剤(D)として、硫黄および硫黄化合物などを用いる場合などには、本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物は、必要に応じて含まれる加硫促進剤(E)に加えて、さらに加硫助剤(F)を含有していてもよい。加硫助剤(F)としては、例えば、ステアリン酸等の脂肪酸、亜鉛華等の金属酸化物、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記ゴム組成物中の加硫助剤(F)の含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
(シランカップリング剤)
本発明の加硫ゴムがシリカを含有する場合、本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物はさらにシランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、スルフィド系化合物、メルカプト系化合物、ビニル系化合物、アミノ系化合物、グリシドキシ系化合物、ニトロ系化合物、クロロ系化合物等が挙げられる。
アミノ系化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
クロロ系化合物としては、例えば、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明の加硫ゴムとなるゴム組成物は、本発明の効果を阻害しない、例えば加硫ゴム中の直径200nm以上の液状重合体(B)に由来する島状相分離構造の形成を阻害しない範囲で、加工性、流動性等の改良を目的として、液状ゴム添加剤を含有していてもよい。液状ゴム添加剤としては、例えば、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、低分子量スチレンブタジエン共重合体、低分子量スチレンイソプレン共重合体などが挙げられる。本発明の組成物が液状ゴム添加剤を含有する場合、その含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して50質量部より少ないことが好ましい。
本発明の加硫ゴムは、発明の効果を阻害しない範囲で、加工性、流動性等の改良を目的とし、必要に応じてシリコンオイル、アロマオイル、TDAE(Treated Distilled Aromatic Extracts)、MES(Mild Extracted Solvates)、RAE(Residual AromaticExtracts)、パラフィンオイル、ナフテンオイル等のプロセスオイル;脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、C9系樹脂、ロジン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂系添加剤を軟化剤として含有していてもよい。本発明の加硫ゴムが軟化剤を含有する場合、その含有量は、固形ゴム(A)100質量部に対して50質量部より少ないことが好ましい。加硫ゴム中にプロセスオイル、樹脂系添加剤等の軟化剤を含ませるためには、例えば、加硫前のゴム組成物を作製する際にこれらを含ませればよい。
前記老化防止剤としては、例えば、アミン−ケトン系化合物、イミダゾール系化合物、アミン系化合物、フェノール系化合物、硫黄系化合物およびリン系化合物等が挙げられる。
本発明の加硫ゴムは、前記各成分を含有するゴム組成物を加硫してなるものである。前記ゴム組成物の調製方法は特に限定されず、前記各成分を均一に混合すればよい。均一に混合するために用いる装置としては、例えば、ニーダールーダー、ブラベンダー、バンバリーミキサー、インターナルミキサー等の接線式もしくは噛合式の密閉式混練機、単軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、ローラー等が挙げられる。ゴム組成物の調製は、通常70〜270℃の温度範囲で行うことができる。
本発明の加硫ゴムは、前記固形ゴム(A)、前記液状重合体(B)、および必要に応じて含まれるその他の成分を含有するゴム組成物を加硫することにより製造することができる。
本発明のタイヤは、本発明の加硫ゴムを少なくとも一部に用いる。そのため優れた転がり抵抗性能を備える。
固形ゴム(A)
天然ゴム「STR20」(タイ産天然ゴム)
液状重合体(B)
後述の製造例1で製造したポリミルセン(B−1)
重合体(X)
後述の製造例2および3で製造したポリミルセン(X−1)および(X−2)
フィラー(C)
カーボンブラック「ダイヤブラックI」(三菱化学株式会社製、平均粒径20nm)
加硫剤(D)
硫黄(微粉硫黄200メッシュ、鶴見化学工業株式会社製)
加硫促進剤(E)
「ノクセラーNS−P」(大内新興化学工業株式会社製)
加硫助剤(F)
ステアリン酸「ルナックS−20」(花王株式会社製)
亜鉛華「酸化亜鉛」(堺化学工業株式会社製)
任意成分
老化防止剤(1):ノクラック6C(大内新興化学工業株式会社製)
老化防止剤(2):アンテージRD(川口化学工業株式会社製)
製造例1:ポリミルセン(B−1)の製造
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン310g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(1.05Mシクロヘキサン溶液)0.7gを仕込み、50℃に昇温した後、53gのβ−ミルセンを2ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール0.1gを添加して重合を停止した後、水500mlを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、表1に示す物性を有するポリミルセン(B−1)を得た。
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン310g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(1.05Mシクロヘキサン溶液)0.3gを仕込み、50℃に昇温した後、53gのβ−ミルセンを2ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール0.1gを添加して重合を停止した後、水500mlを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、表1に示す物性を有するポリミルセン(X−1)を得た。
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン310g、重合開始剤としてsec−ブチルリチウム(1.05Mシクロヘキサン溶液)10.8gを仕込み、50℃に昇温した後、53gのβ−ミルセンを2ml/分で加えて1時間重合した。得られた重合反応液にメタノール0.5gを添加して重合を停止した後、水500mlを用いて重合反応液を洗浄した。洗浄後の重合反応液と水とを分離して、70℃で12時間減圧乾燥することにより、表1に示す物性を有するポリミルセン(X−2)を得た。
重合体(B)および(X)のMwおよびMw/MnはGPCにより標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置および条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
重合体(B)および(X)50mgを1mlのCDCl3に溶解した溶液を400MHzの1H−NMRを用いて積算回数512回で測定した。測定により得られたチャートの4.94〜5.22ppm部分をビニル構造由来のスペクトル、4.45〜4.85ppmの部分をビニル構造と1,4結合の合成スペクトルとし、以下の式に基づきビニル含量を算出した。
{ビニル含量}=4.94〜5.22ppmの積分値/2/{4.94〜5.22ppmの積分値/2+(4.45〜4.85ppmの積分値−4.94〜5.22ppmの積分値/2)/2}
重合体(B)および(X)の38℃における溶融粘度をブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LABS. INC.社製)により測定した。
重合体(B)および(X)10mgをアルミパンに採取し、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件においてサーモグラムを測定し、DDSCのピークトップの値をガラス転移温度とした。
実施例1ならびに比較例1および2においては、表2に記載した配合割合(質量部)にしたがって、ゴム成分(A)と、重合体(B)または重合体(X)とを、それぞれ密閉式バンバリーミキサーに投入して開始温度60℃、樹脂温度が160℃となるように6分間混練した後、ミキサー外に取り出して室温まで冷却した。次いで、この混合物を再度密閉式バンバリーミキサーに投入し、開始温度50℃、到達温度が110℃となるように75秒間混練することでゴム成分(A)、重合体(B)または重合体(X)からなる評価用のゴム混合物を得た。得られた評価用のゴム混合物の島状相分離構造の有無を下記の方法により測定した。なお、比較例3については、ゴム成分(A)のみを密閉式バンバリーミキサーに投入して、同様の操作を行った後、天然ゴム中の島状相分離構造の有無を確認した。
(1)ゴム成分(A)と重合体(B)とを混合して得られる混合物中の島相の評価
実施例および比較例において、ゴム成分(A)と重合体(B)または重合体(X)とを混合して得られた評価用の混合物から、クライオウルトラミクロトーム(Leica Microsystems GmbH社製 EM UC7、EM FC7)を用いて厚さ約100nmの超薄切片を作製した。得られた切片を4%の四酸化オスミウム水溶液蒸気雰囲気中に5時間曝露した後、加速電圧200kVの透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−2100F)を用い5000倍の倍率で3μm×3μmの領域の観察を行い、二次元像を取得した。重合体(B)相または(X)相の島状相分離構造形成の有無を評価し、島相を形成している場合には前述の方法に従い島相の直径を導出した。
実施例および比較例においてプレス成形することにより作製した加硫ゴムシートから、クライオウルトラミクロトーム(Leica Microsystems GmbH社製 EM UC7、EM FC7)を用いて厚さ約100nmの超薄切片を作製した。得られた切片を4%の四酸化オスミウム水溶液蒸気雰囲気中に5時間曝露した後、加速電圧200kVの透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM−2100F)を用い5000倍の倍率で3μm×3μmの領域の観察を行い、二次元像を取得した。重合体(B)相の島状相分離構造形成の有無を評価し、島相を形成している場合には前述の方法に従い島相の直径を導出した。
2mm×2mm×2mm程度の大きさに裁断された加硫前のゴム組成物1gを、200mlのトルエン溶媒に浸漬させ、23℃で48時間静置し、ゴム組成物中の可溶成分を抽出する。抽出後、200メッシュのフィルターを用い不溶成分を除去し、抽出液を40℃で12時間以上減圧乾燥して得られた抽出物をGPC測定に用いる。得られた抽出物の分子量分布を下記の測定装置および条件を用い、標準ポリスチレン換算分子量で求めた。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「GPC8020」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgelG4000HXL」
・検出器 :東ソー株式会社製「RI−8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :1.0ml/分
・サンプル濃度:5mg/10ml
・カラム温度 :40℃
測定により得られた分子量分布から、全可溶成分に対する、分子量20万以下で1万以上の占める割合を算出し、低分子量ゴム成分の割合を導出した。
ゴム組成物の加工性の指標として、JIS K6300に準拠し、加硫前のゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)を100℃で測定した。
なお表2におけるムーニー粘度は、比較例3の値を100とした際の相対値である。数値が小さいほど加工性が良好である。
実施例および比較例で作製した加硫ゴムシートから縦40mm×横7mmの試験片を切り出し、GABO社製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度60℃、周波数10Hz、静的歪み10%、動的歪み2%の条件で、tanδを測定し転がり抵抗性能の指標とした。
なお表2における転がり抵抗の指標を表す数値は、比較例3の値を100とした際の相対値である。数値が小さいほど転がり抵抗性能が良好である。
実施例および比較例で作製した加硫ゴムシートを用いて、JIS K6253に準拠して、タイプA硬度計により硬度を測定し、操縦安定性の指標とした。なお表2における硬度は、比較例3の値を100とした際の相対値である。数値が小さい場合は、当該組成物をタイヤに用いた際にタイヤの変形が大きいため、操縦安定性が悪化する。
実施例および比較例で作製したゴム組成物のシートからJIS3に準じてダンベル状試験片を打ち抜き、インストロン社製引張試験機を用いて、JIS K 6251に準じて引張破断強度を測定した。
Claims (10)
- 合成ゴムおよび天然ゴムから選ばれる少なくとも1種の固形ゴム(A)と、炭素数14以下の共役ジエンの少なくとも1種に由来する単量体単位を含み、38℃における溶融粘度が3,000Pa・s以下である液状重合体(B)とを含有し、かつ固形ゴム(A)と液状重合体(B)との溶解度パラメータの差Δδが1.0(J/cm3)1/2以下であるゴム組成物の加硫ゴムであり、
加硫ゴム中に、直径200nm以上の前記液状重合体(B)に由来する島状相分離構造が存在する加硫ゴム。 - 前記液状重合体(B)の炭素数14以下の共役ジエンがブタジエン、イソプレンおよびミルセンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の加硫ゴム。
- さらにフィラー(C)を含有する、請求項1または2に記載の加硫ゴム。
- 前記液状重合体(B)の重量平均分子量が30,000〜500,000である、請求項1〜3のいずれかに記載の加硫ゴム。
- 前記液状重合体(B)が、ミルセンに由来する単量体単位(b2)を含む重合体であり、ミルセン以外の炭素数14以下の共役ジエンに由来する単量体単位(b1)および単量体単位(b2)の合計に対する単量体単位(b2)の割合が1〜100質量%である、請求項1〜4のいずれかに記載の加硫ゴム。
- 前記ゴム組成物中に含まれる、分子量が10,000以上、200,000以下である低分子量ゴム成分の含有量が10質量%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の加硫ゴム。
- 前記ゴム組成物中の前記液状重合体(B)の含有量が、前記固形ゴム(A)100質量部に対して0.1〜50質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の加硫ゴム。
- 加硫ゴムとなる前記ゴム組成物中に含まれる固形ゴム(A)および液状重合体(B)の質量比と同じ質量比で固形ゴム(A)および液状重合体(B)を含む混合物中に、直径300nm以上、2μm以下の液状重合体(B)に由来する島状相分離構造が存在する、請求項1〜7のいずれかに記載の加硫ゴム。
- 合成ゴムおよび天然ゴムから選ばれる少なくとも1種の固形ゴム(A)と、炭素数14以下の共役ジエンの少なくとも1種に由来する単量体単位を含み、38℃における溶融粘度が3,000Pa・s以下である液状重合体(B)とを含有し、かつ固形ゴム(A)と液状重合体(B)との溶解度パラメータの差Δδが1.0(J/cm3)1/2以下であるゴム組成物を加硫する加硫ゴムの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の加硫ゴムを少なくとも一部に用いたタイヤ。
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