以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した病気診断装置の概略ブロック図である。なお、以下に示す構造は本発明の一例であり、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
図1に示すように本発明を適用した病気診断装置の一例である病気診断装置39は、バイタル計測部2と、情報管理部3、表示部12を備えている。また、情報管理部3は、バイタル異常判定部1と、病気判定部42を備えている。
バイタル異常判定部1は、対象者のバイタル情報に基づき、計測した日の対象者のバイタル値が異常か否かを判定する部分である。また、バイタル値の異常判定は、条件の設定により、正常との判定と、注意または警告の2段階からなる異常の判定でなされるものとなっている。なお、バイタル値の異常判定の詳細については後述する。
また、病気判定部42は、対象者から得たバイタル情報、健康観察情報が所定の条件を満たした場合に、バイタル情報、健康観察情報及び病気解析フロー情報に基づき、対象者が特定の病気にかかった状態か否かを判定する部分である。判定は、病気解析フロー情報に沿って、病気ごとに規定された確認項目の内容の条件を満たすか否かを確認して、病気解析フローが最後まで行き着くか否かで行われる。この点の詳細は後述する。また、本発明での病気解析フロー情報は、高齢者がかかりやすい病気に特化して病気解析を行っていくものとなっている。
ここで、病気診断装置39は必ずしも表示部12を備える必要はない。例えば、外部の端末等に病気診断装置39が取り扱う情報を送信し、その外部端末等で情報を表示する構成であってもよい。即ち、情報の表示信号を外部端末に送信することが可能な構成となっていれば充分である。
バイタル計測部2は、対象者の各種バイタル情報を計測する機器から構成され、情報管理部3に接続されている。
バイタル計測部2は、体温計4、パルスオキシメーター5、血圧計6、体組成計7、血糖計8を有している。
体温計4は体温を、パルスオキシメーター5は酸素飽和度(SpO2)と脈拍を、血圧計6は最高血圧及び最低血圧を、体組成計7は体重、体脂肪、筋肉量及び骨量を、血糖計8は血糖値を計測する。
また、バイタル計測部2は、呼吸数の計測を行う呼吸数センサー9を有している。また、バイタル計測部2は、歩行強度計10と接続可能となっている。歩行強度計10は、歩行の強度や一定の歩行強度で歩いた時間を計測するものである。
ここで、必ずしも、バイタル計測部2が情報管理部3に接続される必要はなく、バイタル計測部2が計測した計測値の情報が情報管理部3に入力可能な構成となっていれば充分である。例えば、各バイタル計測部が情報管理部3から独立した計測機器であり、計測値が使用者によって入力される構成や、無線の通信を介して情報が情報管理部3に送信される構成であってもよい。
また、少なくとも血圧、脈拍、体温、酸素飽和度、呼吸数については計測したバイタル値が情報管理部3に自動的に送信される仕組みとなっていることが好ましい。これらのバイタル情報は、体調の異常や病理因子の有無の判定に関わる頻度が高いためである。
また、バイタル計測部2のバイタル計測機器の種類が上述した機器に限定されるものではない。必要に応じて、対象者の体調管理に使用可能なバイタル情報を計測する機器を採用することが可能である。
情報管理部3は、各種の情報の制御処理を行う情報処理部11を有する情報処理端末である。情報管理部3で管理する情報は表示部12で表示可能となっている。
ここで、情報管理部3は、各種の情報の制御処理が可能な構成となっていればよく、情報管理部3のみで情報の記録や処理を行うようなスタンドアローンでの使用が可能なものであってよい。また、一方で、インターネット回線を通じて、サーバ上で情報処理を行う構成も採用しうる。
情報管理部3の情報処理部11は、計測対象者の個人情報を記録する個人情報データベース13を有する。個人情報データベース13には、バイタル値の異常の判定対象となる対象差個人の氏名、性別、年齢、身長、体重が記録されている。
また、個人情報データベース13には、健康基礎情報43が記録されている。健康基礎情報43には、対象者が過去に受けた健康診断の情報が含まれている。健康診断の情報とは、例えば、一般的な健康診断で受診する身長、体重、腹囲、視力、聴力の情報、胸部X線検査、血圧計測、尿検査、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査及び心電図検査等の情報である。また、対象者個人の氏名、性別、年齢の情報も含まれている。
また、健康基礎情報43には、基礎疾患、既往歴、喫煙歴、服薬歴、家族の疾病等の情報や、喫煙の有無等の生活習慣の情報、自覚症状及び他覚症状の有無の情報も含まれている。また、健康診断の際に計測した体温の情報である健診時体温情報14も記録されている。
上述した個人情報データベース13に記録された健康基礎情報43に体温、酸素飽和度、脈拍、脈圧、血圧、体重、呼吸数、血糖値の情報が含まれている場合には、対象者の初期のバイタル情報値としての取扱いが可能である。
ここで、個人情報データベース13に記録される情報は上述した内容に限定されるものではない。対象者の初期情報として必要な情報や、バイタル値の異常の判定に使用可能な情報を更に記録可能に設定しうるものである。
また、必ずしも、個人情報データベース13に記録された健康基礎情報43を初期のバイタル情報値として使用する必要はない。即ち、対象者のバイタル情報として入力可能な情報であれば、健康診断の情報に変えて採用することができる。
情報管理部3の情報処理部11は、バイタル計測部2の各計測装置が計測したバイタル情報の値を記録するバイタル情報データベース15を有している。各バイタル情報は、バイタル計測を行った日付の情報と共に記録される。
バイタル情報データベース15には、バイタル情報として、体温(℃)、酸素飽和度(%)、脈拍(回/分)、脈圧(mmHg)、血圧(mmHg)、体重(kg)、呼吸数(回/分)を記録する。
また、バイタル情報データベース15には、体組成計7で計測した体脂肪率(%)、筋肉量(%)及び骨塩量(kg)や、歩行強度計10で計測した歩行の強度や一定の歩行強度で歩いた時間(分)の数値が記録される。
また、バイタル情報データベース15には、尿量(mL/kg/時)、血糖値(mg/dL)、及び対象者の意識レベルが記録される。なお、ここで、尿量、血糖値及び意識レベルの記録がなされるのは、医師からの指示のあった対象者に限定されるものとなっている。
なお、意識レベルとは、開眼の状態、会話した際の言語による応答、呼びかけや痛みに対する反応等の運動等で判断され、意識がはっきりしているか否かを正常または異常と判定し、記録されるものである。なお、意識レベルや尿量は後述する健康観察情報で記録されるものであってもよい。
ここで、必ずしも、バイタル情報データベース15に尿量、血糖値及び意識レベルの記録がなされるのは、医師からの指示のあった対象者に限定される必要はない。但し、これらの項目は、より厳密な病態解析を行う際に求められる情報であり、医師の指示のない対象者に対しても記録することは介護者の負担につながるため、限定される構成とすることが好ましい。
情報管理部3の情報処理部11は、健康観察情報データベース16を有している。健康観察情報データベース16には、対象者に対する問診や問診に対する回答を含む問診情報44、対象者を観察する観察項目とその観察結果を含む観察情報45、対象者の食事量や排泄の状態等に関する介護記録の情報である介護記録情報46が記録されている。
健康観察情報データベース16の問診情報44には、対象者に対して行った問診の結果について、観察者が項目ごとに正常または異常と判定した判定結果の情報が項目別健康観察判定情報として、問診を行った日付の情報と共に記録される。
なお、ここで観察者とは、例えば、病院の看護士や介護施設の職員等、対象者の日常生活を支援する人等である。問診の内容や、その結果の情報は、個人情報データベース13にて、個別の対象者に紐付けて記録されるものとなる。
健康観察情報データベース16の問診情報44には、対象者がいつもと違うと思われる問診の回答を行った際に、観察者が「正常」または「異常」の判定をしたものが記録される。例えば、問診の項目として、食欲やその日の気分、五感の感覚や意識レベルに関する問いかけ等、対象者が回答する自身の体調に関する問いが含まれる。
また、問診を行う際には、病気診断装置39の表示部12に問診内容を表示して、問診に対する回答の選択や、正常又は異常の判定をタッチパネル上で入力する構成であってもよい。また、別途のタブレット端末を連動させ、タブレット端末を介して問診内容の表示と入力が可能な構成としてもよい。食欲、気分、意識レベルの3項目を挙げた場合には、それぞれの問診の回答に対して、正常か異常の判定をして記録する。
例えば、食欲の項目であれば、「食欲がある」、「食欲があまりない」、「食欲が全くない」等、食欲の項目に対する対象者の回答を得て、観察者が正常または異常を判定したものが記録される。気分や意識レベルについても同様である。
また、1つの項目に対して、複数の質問を設定していてもよい。例えば、意識レベルの項目について、呼びかけに対する目の動き、会話時の呂律、呼びかけに対する手の動き等、複数の内容で確認を行い、その結果、正常または異常の判定をして記録するものであってもよい。
ここで、必ずしも、問診の内容が食欲や気分、意識レベルに関するものに限定される必要はなく、対象者の健康状態に関する内容の問いかけとなっていれば採用することができる。
健康観察情報データベース16の観察情報45には、対象者の外観上の様子等を確認し、観察者が項目ごとに正常または異常と判定した判定結果の情報が項目別健康観察判定情報として、観察を行った日付の情報と共に記録される。
健康観察情報データベース16の観察情報45には、対象者がいつもと違うと思われる様子を示した際に、観察者が「正常」または「異常」の判定をしたものが記録される。例えば、観察の項目として、発汗の有無、皮膚の色、意識レベル、むくみ等が含まれる。
また、観察を行う際には、病気診断装置39の表示部12に観察内容を表示して、観察項目の選択や、正常又は異常の判定をタッチパネル上で入力する構成であってもよい。また、別途のタブレット端末を連動させ、タブレット端末を介して観察内容の表示と入力が可能な構成としてもよい。
例えば、発汗の有無の項目であれば、「多量の発汗がみられる」、「やや発汗が見られる」、「全く発汗が見られない」等、発汗の有無の項目に対する観察結果を得て、観察者が正常または異常を判定したものが記録される。皮膚の色、意識レベル、むくみについても同様である。
ここで、必ずしも、観察の内容が発汗の有無、皮膚の色、意識レベル、むくみに関するものに限定される必要はなく、対象者の健康状態に関する外観上の様子や反応を示すものとなっていれば採用することができる。
健康観察情報データベース16の介護記録情報46には、対象者の介護に伴い得られる介護記録について、観察者が項目ごとに正常または異常と判定した判定結果の情報が項目別健康観察判定情報として、介護記録の結果を得た日付の情報と共に記録される。
健康観察情報データベース16の介護記録情報46には、対象者がいつもと違うと思われる状態を示した際に、観察者が「正常」または「異常」の判定をしたものが記録される。例えば、介護記録の項目として、食事量、接種水分量、尿量、排便の内容、呼吸数、血糖値、睡眠の内容等が含まれる。
また、この際、介護記録の情報を記録する際には、病気診断装置39の表示部12に観察内容を表示して、項目に対する結果や正常又は異常の判定をタッチパネル上で入力する構成であってもよい。また、別途のタブレット端末を連動させ、タブレット端末を介して介護記録の内容の表示と入力が可能な構成としてもよい。特に意識レベルや尿量等の対象者のバイタルデータにも含まれる情報については、タブレット端末を介した入力を行うことで、健康観察情報と介護記録情報の共有が容易化し、かつ、従来行われていた同一内容の転記の作業がなくなるため介護担当者の作業を軽減につながるものとなる。
介護記録の情報は、例えば、接種水分量の項目であれば、「多量」、「普通」、「少量」等の程度の情報、または、「半日で300mlの水分摂取」といったように具体的な数値の情報を得て、観察者が正常または異常を判定したものが記録される。食事量、尿量、排便の内容、呼吸数、血糖値、睡眠の内容等についても同様である。
ここで、必ずしも、介護記録の内容が食事量、接種水分量、尿量、排便の内容、呼吸数、血糖値、睡眠の内容等に関するものに限定される必要はなく、対象者の健康状態に関わる介護記録を示すものとなっていれば採用することができる。
また、必ずしも、健康観察情報データベース16に、問診情報44、観察情報45及び介護記録情報46の全てが記録される必要はなく、例えば、この中の1つのみが記録される構成であってもよい。但し、対象者の健康状態の判定や、病理の診断の精度を高めることができる点から、健康観察情報データベース16に、問診情報44、観察情報45及び介護記録情報46の全てが記録されることが好ましい。また、各内容は重複するものであってもよい。例えば、問診情報44と観察情報45の両方で意識レベルが確認されてもよい。
情報管理部3の情報処理部11は、病気情報データベース47を有している。病気情報データベース47は、病気診断装置39で診断が可能な病気に関する情報が記録されている。より詳細には、病気情報データベース47は、更に細分化された、診断対象病気情報データベース48を有している。
診断対象病気情報データベース48には、診断対象病気情報51として、病気の名称や主な症状、その病気であることを特定するために確認すべき病理因子の情報が記録されている。
また、診断対象病気情報51には、病理因子の情報に基づき規定された病気の特定に必要な確認項目の情報と、病気の種類ごとの確認項目を確認する順番の情報が含まれている。この確認項目の情報と順番の情報を「高齢者向け病気解析フロー情報」とする。なお、ここでの高齢者とは年齢が65歳以上の対象者を指すものである。
確認項目の情報とは所定の条件の情報であり、例えば、体温に基づき確認する「体温の上昇の有無(または所定の温度範囲以上の変位)」観察や問診に基づき確認する「むくみの有無」等が存在する。対象者のバイタル情報、健康観察情報や、その病気に固有の固有問診情報に対する回答の内容から、確認項目の条件を満たすか否かが判断される。
1つの病気の特定にあたって、複数の確認項目が設定され、また病気の種類ごとに確認項目の順番も規定されている。確認項目について、条件を満たすか否かの判定を、順を追って進めていき、最終的に確認項目の最後の内容の条件まで満たした病気について、病気判定部42がその病気に対象者がかかっていると判定する。また、途中で確認項目の条件を満たさなくなり、それ以上解析が進まなくなった段階で、特定の病気であるとの判定がなされない結果となる。即ち、病気の特定まで行き着かなかった結果となる。
この確認項目の確認作業を、「高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析」とする。高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析は、解析が進行する方法であれば特に解析手法が限定されるものではない。例えば、既知の病気診断で使用されるマトリックス法、枝分かれ法、スコア法及び消去法といった論理診断の手法が採用される。
また、上記は、本発明の内容を明確化するために、1つの病気の解析を元に説明を行っているが、実際の装置においては、複数の病気に対する高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析が同時進行でなされる構成とされることが考えられる。
診断対象病気情報データベース48は、バイタル情報データベース15、健康基礎情報43が記録された個人情報データベース13及び健康観察情報データベース16と連動しており、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析に利用される。
また、診断対象病気情報データベース48には、固有問診情報データベース55が含まれている。固有問診情報データベース55は、高齢者向け病気解析フロー情報の確認項目の条件を満たすか否かを判定するために確認すべき固有問診情報と、その問診結果から決定される病理因子の有無の判定結果の情報が記録されている。
なお、固有問診情報データベース55に記録された固有問診情報は、上述した健康観察情報データベース16に記録された情報とその内容が重複するものであってもよい。また、固有問診情報に対する回答が健康観察情報データベース16に記録された問診情報等から得られる場合、その内容をもって病気判定部42が確認項目の判定を行ってもよい。
更に、健康観察情報の中に固有問診情報の回答に該当する情報がない場合に、表示部12に固有問診情報と、その回答を促すメッセージ情報が表示される構成としてもよい。これにより、高齢者向け病気解析フロー情報の確認項目の判定を効率よく、かつ、不足なく進めることが可能となる。
病気情報データベース47は、病態鑑別フローチャートデータベース49を有している。病態鑑別フローチャートデータベース49は、対象者の病状に対するフローチャート形式の病状確認問診情報と、その問診への回答に対して結び付けられる予測病態情報が記録されている。この病状確認問診情報と予測病態情報は、病気判定部42が高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析を行い、病気を特定できなかった場合に起動させ、問診への回答をもって対象者の病態を予測するものである。また、病気が特定できた場合にも、特定された病気であるかを医師が後に検定する場合にも利用できるものである。
なお、本発明における病態鑑別フローチャートデータベース49では、何等かの「病状」を起点に作成されたフローチャート形式の病状確認問診情報だけでなく、何等かの「バイタル異常」を起点としたものも内容に含まれている。即ち、例えば、「発熱している」という「症状」を起点としたものと、「熱が38℃以上ある」という「バイタル異常」を起点とした内容も含まれている。これにより、従来の病状のみが起点となっている病態鑑別フローチャートよりも、病態鑑別の対応範囲が広いものとなっている。
上述したように、病態鑑別フローチャートデータベース49は、対象者にバイタル値の異常が見られるが、病気判定部42が、特定の病気であると判定できなかった際や、病気の特定ができた際に、結果を医師が検定する際に利用できるものである。病態鑑別フローチャートの起点には「バイタル値の異常」または何等かの「病状」から始まる内容となっている。
病態鑑別フローチャートデータベース49に記録された所定の病状確認問診(バイタル異常を起点とするもの含む)を対象者に行うことで、何らかの病態の可能性を提示可能となっている。即ち、フローチャート形式の問診に対して、「はい」または「いいえ」の回答や、「顔色」の複数の選択肢からの回答に対する結果の選択を進めていくことで、何らかの病態に行き着くことができる構成となっている。また、フローチャート形式の確認項目には、バイタル値が所定の条件を満たすか否かという項目も含まれている。また、この結果をもって、実際の医師の診断の際の参考情報として利用することができる。
病気情報データベース47は、各種疾病の詳細な情報が記録された病気情報辞書データベース56を有している。病気情報辞書データベース56は、病気の名称、概念、原因、鑑別、病態、症状、検査、治療及びその病気に結びつくバイタル値の条件の情報を含む情報が記載された辞書として機能する部分である。また、病気情報辞書データベース56では、バイタル値の条件とバイタル情報記録部に記録されたバイタル情報を照合して病理を検索可能に構成されている。即ち、バイタル異常に基づいて病名や病状の情報が検索可能な病気辞書となり、この点は既存の「症状」や「病名」から検索する病気辞書と異なるものとなっている。また、本装置で診断が可能な病気をはじめ、予測される病気の内容をより詳細に確認できる部分である。また、何らかの病気の詳細な情報を知りたい際にも活用することができる。また、病気が特定できた場合にも、特定された病気であるかを医師が後に検定する場合にも利用できるものである。
病気情報辞書データベース56は、一定の情報を蓄積したデータベースとする構成や、外部のサーバと連動させて、都度、情報の更新が可能な構成としてもよい。
情報管理部3の情報処理部11は、病態警戒レベル処理部101と、警戒病態チェック部102を有している。これらは対象者の健康基礎情報に基づき、病態別に警戒レベルを設定し、警戒レベルの高い病態の病理因子に関するバイタル情報の「注意」や、健康観察情報の「異常」を確認する部分である。
病態警戒レベル処理部101は、個人情報データベース13に記録された健康基礎情報43の内容、特に既往歴、疾病、血液検査及び生活習慣の情報に基づき、各病態の警戒レベルを設定する。即ち、対象者の健康基礎情報43と、病態の病理因子との関係から、病態ごとに警戒レベルを設定し、健康基礎情報43の一部として個人情報データベース13に反映させる。
ここでの警戒レベルは、警戒レベル「高」または「低」の二段階で判定して設定するものであってよい。例えば、対象者の生活習慣に「喫煙有り」と記録されている場合には、肺炎に関して、警戒レベルが「高」と判定され、記録されるものとなる。
警戒病態チェック部102は、病態警戒レベル処理部101が、警戒レベルが「高」と記録された病態の病理因子に関連するバイタル情報と健康観察情報をチェックする処理を行う。即ち、警戒レベルが高く設定された病態については、その対象者がかかる可能性が高いものである。その病態の病態解析を開始するか否かの前提として、病理因子の内容を優先的にチェックする構成となっている。
警戒病態チェック部102は、病理因子に関するバイタル情報が「注意」となっているかをチェックする。また、病理因子に関する健康観察情報のうち、項目別健康観察判定情報、項目別観察判定情報または項目別介護記録情報の内容で「異常」が記録されたかをチェックする。いずれかに該当する場合に、対象者が所定の条件を満たすものと判定し、病気判定部42による高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析が開始される。
ここで、必ずしも、病態警戒レベル処理部101が設定する警戒レベルが「高」、「低」の二段階となる必要はない。例えば、より細分化した警戒レベルを設定してもよい。警戒病態チェック部のチェック対象となる病態の特定ができれば充分であるので、最低でも二段階の設定がなされていればよい。
[診断対象となる病気]
続いて、本装置で高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析により病気の特定が可能な内容について説明する。病気診断装置39が高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析により診断対象とする病気は、例えば、次のようなものである。
(1)循環器系疾患である虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症含む)、心不全、ショック(血流が不充分となることで生じる臓器障害)、高血圧症、低血圧症、肺性心。
(2)呼吸器系疾患である肺炎、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎。
(3)神経系疾患である脳血管障害
(4)内分泌である糖尿病
(5)消化器系疾患である下痢
(6)バイタル異常の疾患である低体温、高血圧
(7)その他脱水等
上述した各病気は、高齢者がかかりやすいものが中心となっている。なお、上述した例以外の病気でも、高齢者向け病気解析フロー情報が規定できる病気については、随時、その病気に関する情報を診断対象病気情報データベース48及び固有問診情報データベース55に記録して、診断可能な病気を増やすことができるものとなっている。
また、上述したように、病気を特定するための確認項目及びその順番が、病気の種類ごとに、高齢者向け病気解析フロー情報として、診断対象病気情報データベース48に記録されている。
また、病気の種類によっては、診断対象病気情報51として、その病気の重症度を判定するための重症度判定情報も併せて記録されている。この重症度判定情報を用いることで、疾病の有無の判定だけでなく、その重症度が判定可能となる。例えば、肺炎であれば、年齢、合併症の有無、意識レベルや呼吸数等の身体所見等、更に細かい項目をチェックすることで重症度を判定する。重症度は、複数の段階に分けた数値または通院、入院レベル等の求められる対応の表示で示すことができる。
[候補病態群の表示]
また、本装置では、バイタルの異常の検知等、対象者についての情報が所定の条件を満たした場合に、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析が行われるものとなるが、その前提として、バイタル情報に基づき、対象者を以下の3つの候補病態群に分類するものとなっている。
(1)カテコラミンリリース病態群
(2)ショック病態群
(3)その他の病態群
例えば、対象者のバイタル情報に関して、脈圧が収縮期血圧(最高血圧)の50%以上の脈圧となり、脈圧のバイタル値の異常を示す場合には、(1)カテコラミンリリース病態群の代表的な5病態を有している可能性が高まるため、その病態群に対象者を分類する。これにより、仮に、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析において、病気の特定ができなかった場合にも、対象者が分類された候補病態群に含まれる病態を有している可能性を情報として提示することが可能となる。また、結果として出された候補病態群の内容について、更に病態鑑別フローチャートデータベース49や、病気情報辞書データベース56を利用して、病態を予測することができる。また、また、本発明においては、対象者のバイタル情報や健康観察情報に基づき、病気判定部42が、3つの病態群の分類から更に限定して病態の種類を絞りこんでいくことが可能である。
上記(1)〜(3)に含まれる病態群は高齢者においてかかりやすいものとなっている。上記(1)〜(3)の具体例を以下に記載する。
(1)カテコラミンリリースを伴う病態であり、例えば、呼吸不全(低酸素血症、高二酸化炭素血症)、心不全・循環不全(ショック、有効循環血液量低下)、低血糖、発熱(敗血症含む)、疼痛や不安・運動後。
(2)ショックを伴う病態であり、例えば、敗血症性ショック、低容量性ショック、閉塞性ショック、心原性ショック及び分配性ショック。
(3)頭頸部の問題である脳出血、くも膜下出血、高血圧脳症、脳幹梗塞、小脳梗塞や、呼吸器系の問題である肺塞栓、心原性肺水腫や、循環器系の問題である心嚢水、心タンポナーデ、解離性大動脈瘤、迷走神経反射性失神、洞不全症候群、房室ブロック、洞性頻脈、心房細動、上室性頻拍症、期外収縮、心室頻拍や、消化器系の問題である急性尿閉や、検査データの異常から見る糖尿病性ケトアシドーシス、熱中症や、全身の問題である甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症。
[病気判定部が解析を開始する所定の条件]
病気判定部42は、以下のパターンに該当する際に、対象者が所定の条件を満たしたものと判定する。そして、上述したように、対象者のバイタル情報に基づき、対象者を3つの候補病態群に分類した上で、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析を開始する。
(1)バイタル情報で「警告」の判定がされる異常値が確認されたとき。
(2)複数のバイタル情報の中で一定数を超える「注意」の判定がされる異常値が確認されたとき。
(3)所定のバイタル情報の組み合わせにおいて「注意」の判定がされる異常値が確認されたとき。
(4)複数のバイタル情報を組み合わせて算出した数値が所定の条件を満たしたとき。
(5)項目別健康観察判定情報で「異常」の判定が記録されたとき。
(6)健康基礎情報に基づき、警戒レベルが「高」に設定された病気の確認項目のバイタル情報の「注意」や、健康観察情報の「異常」が記録されたとき。
ここで、上記の(1)〜(6)の条件を挙げたが、特に、解析の開始の条件をバイタル情報の注意や警告を元に解析が開始される(1)〜(4)のパターンに限定した場合には、バイタルの異常のみに特化した解析を行うものとなる。この結果、より一層個人のバイタル状態を精度高く捉えることが可能な病気診断装置とすることができる。
また、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析が開始される際、病気判定部42は、判定する対象となる複数の病気について、以下のような内容で、解析対象の絞り込みを行うことが可能となっている。
(1)対象者の健康基礎情報の中の既往歴の情報または生活習慣の情報に基づき、複数の病気のうち対象者がかかりやすい病気へと絞り込む。
(2)バイタル情報の「注意」または「警告」と判定された内容と、項目別健康観察判定情報で異常と判定された根拠となる健康観察情報の内容との組み合わせから、複数の病気のうち対象者がかかりやすい病気へと絞り込む。
(3)「注意」または「警告」と判定されたバイタル情報の内容が、確認項目の内容の条件を満たす病気へと絞り込む。
(4)項目別健康観察判定情報で異常と判定された根拠となる健康観察情報の内容が、確認項目の内容の条件を満たす病気へと絞り込む。
病気判定部42は、上記の内容で解析対象の絞り込みを行い、該当する病気の全てについて高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析を行うものとなっている。
また、本発明の病気診断装置では、病気の種類によっては、診断対象病理情報51に記録された重症度判定情報に基づき、病気の重症度を分類して提示することが可能な構成となっている。
重症度判定情報は特定の病気に関して、その重症度を分類するために確認すべき複数の項目の情報を含んでいるそして、対象者のバイタル情報、健康基礎情報、問診等の結果の情報及び病理固有問診の結果の情報が、重症度判定情報の各項目を満たしているかを病気判定部42が確認し、その結果に応じて病気の重症度を判定する。
病気判定部42が判定した重症度は、「軽症群」、「重症群」等の程度やレベル等の数値、「通院」、「即入院」等の対応すべき内容によって分類する構成とすることができる。この重症度判定により、対象者が疾病であると判定された後の処置を提示することが可能となる。
また、重症度判定情報は、新たに情報を追加することが可能な構成となっている。即ち、それまでは病態の有無の判定までしかできなかったものに関しても、重症度の分類が可能となるだけの病態に関する知見が得られた時に、新たに重症度分類情報を追加して、重症度を判定可能な対象の病態とすることができる。
病気判定部42は、解析対象となった病気の全てについて、その病気にかかっているか否かの判定を行うものである。また、その結果は判定を行った日付の情報と共に、対象者の個人需要法データベース13に記録される。更に、病気ごと判定結果の情報は、表示部12で表示させることや、外部端末に送信して表示させることが可能となっている。
また、本発明の病気診断装置では、実際に医師の診断を受けた診断結果についても、その情報を対象者の情報に紐付けて記録可能な構成となっている。例えば、診断を受けた際の日付や、結果、診断を受ける理由となった本装置における診断結果や、その時の病状等を記録することができる。これにより、本装置の診断の検定に用いることができるだけでなく、医師の診断結果を対象者の既往歴として含め、対象者に関する情報量を増やし、診断やバイタル異常の検知に反映させることが可能となる。
[熱型表の作成]
病気診断装置39の情報管理部3は、熱型表処理部57を有している。熱型表処理部57は、対象者の健康基礎情報43に記録された情報に基づき、バイタル情報及び健康観察情報の中から、その対象者について特に注意して観察すべき情報を抽出して、熱型表を作成する部分である。図7は、熱型表の例を示す概略図である。
熱型表処理部57は、対象者の健康基礎情報43に記録された情報のうち、既往歴の情報、疾患の情報及び生活習慣の情報に基づいて、その対象者の有する情報のうち、特に注意して観察すべき情報を要観察情報として抽出する。
例えば、生活習慣の情報に「喫煙の習慣あり」の記録がある場合には、喫煙の習慣からリスクが高まりやすい病態と、その病態を特定する病理因子を抽出する。そして、その病理因子の有無の判定に用いられるバイタル情報と、健康観察情報を要観察情報として抽出して、その内容で対象者独自の熱型表を作成する。喫煙の習慣の場合、虚血性心疾患や肺炎等の病態のリスクが高まるため、それらの病態の病理因子と関連のあるバイタル情報と健康観察情報を抽出して熱型表を作成する。
図7に示すように、熱型表に68は、抽出されたバイタル情報と、そのバイタル情報を測定した日付の情報がグラフ化されて表示される。また、関連する健康観察情報における項目別健康観察判定情報等が表示される。また、必要に応じて、対象者に個別の特記事項を設け、熱型表処理部57が抽出した以外の情報で注意すべき観察情報等を併せて記載することも可能である。作成された熱型表68は個人情報データベース13に記録される。
また、熱型表68には、個別の病態の病理因子の有無の判定結果や、病態の有無の判定結果を併せて表示するような構成とすることもできる。
熱型表68を作成することで、例えば、脱水の症状が心配される対象者であれば、バイタルの「体重」と、介護記録の「接種水分量」を同時に確認できるものとなる。この熱型表から、体重が減少し、接種水分量が増えている傾向が確認されれば、脱水の恐れがあることを確認することができる。
[バイタル平均値の算出]
情報管理部3の情報処理部11は、バイタル平均値処理部17を有している。バイタル平均値処理部17は、バイタル情報データベース15に記録されたバイタル情報の値を元に、計測日ごとの対象者個別のバイタル情報の平均値を算出する部分である。
計測日ごとのバイタル情報の平均値は対象者のバイタル値の異常の判定の1つの指標となる。バイタル平均値処理部17が算出した計測日ごとのバイタル情報の平均値は対象者に紐付けられバイタル情報データベース15に記録される。以下、計測日ごとのバイタル情報の平均値について説明する。なお、バイタル値の異常の判定については後述する。
バイタル平均値処理部17は、バイタル情報データベース15に記録されたバイタル情報の値のうち、健康観察情報データベース16の項目に1つでも「異常」が記録された日のバイタル情報と、前日の値から急な変化があった日のバイタル情報を除き、その日のバイタル情報の計測値を含めて直近7日分のデータ値から平均値を算出する。なお、ここでの「前日の値から急な変化」は計測するバイタル情報の種類によって設定可能な値であり、この点は後述する。
健康観察情報データベース16の項目に1つでも「異常」が記録された日のバイタル情報とは、上述した構成でいえば、問診情報、観察情報または介護記録の項目の判定に1つでも「異常」があった場合を意味する。即ち、どれか1つでも異常と記録された日に計測されたバイタル情報の値が平均値の算出のための数値から除かれる。
図2及び図4には、健康観察情報データベース16に記録された介護記録の結果の判定の一例を示している。図2及び図4の下段には、日付ごとの食事、排尿、排便に関する介護記録についての判定結果が表示されている。
例えば、10月8日にバイタル情報の平均値を出す場合には、まず10月8日に計測したバイタル情報の値を含めて、10月2日までのバイタル情報の値が平均値の算出に含めてよい値か否かが確認される。なお、10月8日に計測したバイタルの値が、その前日のバイタルの値から急な変化がなかったことを前提とする。また、10月8日の問診で異常が見られなかったことも前提となる。即ち、直近7日分のバイタル情報とは、平均値を出すその日のバイタル情報が含まれて算出されるケースと、含まれないで算出されるケースがあり得るものとなる。
直近7日分のバイタル情報の値の採用にあたって、介護記録での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日のバイタル情報は除かれる。除かれた日数分のバイタル情報が得られるまでバイタル情報及び介護記録の情報を元に数値の採用可否がなされる。
例えば、10月2日〜10月8日の7日分のバイタル情報の値に、除去対象となる数値が2日分含まれていた場合には、平均値の算出に2日分のバイタル情報が必要となる。そこで、更に10月1日、9月30日と過去の情報に遡り、平均値の算出に採用可能な7日分のデータが揃うまで、平均値処理部17が過去の記録を確認する。
また、仮に、10月8日に計測したバイタルの値が、その前日のバイタルの値から急な変化があった場合や、10月8日の問診で異常が見られた場合には、10月8日のバイタルの値を除いて、その1日分を過去の日付から補うものとなる。
ここで、健康観察情報データベース16の項目の異常の数が1つであることに限定される必要はなく、例えば、問診情報、観察情報または介護記録において、一定数の異常の数が確認された日に計測されたバイタル情報の値が平均値の算出から除かれる構成であってもよい。但し、バイタル情報の平均値を出す際に、問診情報、観察情報または介護記録の結果の情報をより一層反映しやすくなる点から、健康観察情報データベース16のいずれかの項目の異常の数が1つである際に、その日のバイタル情報の値を平均値の算出から除く構成であることが好ましい。
また、必ずしも、バイタル情報の平均値を算出するための日数が7日間に限定される必要はなく、例えば、2週間分や5日分といった日数に設定を変更可能な構成であってもよい。但し、算出のための日数が少なすぎるとバイタル情報の平均値としての信頼性が低くなることや、長期間の日数すぎると直近の平均値になりにくくなるため、バイタル情報の平均値を算出するための日数は7日間に設定されることが好ましい。
また、必ずしも、バイタル情報の平均値を算出するために前日の値から急な変化があった日のバイタル情報を除く必要はない。但し、介護記録の結果の異常が記録されただけでなく、前日の値から急な変化があった日のバイタル情報を除くことで、体調に変化を来している可能性のある日のバイタル情報が除かれ、対象者の健全な状態のバイタル情報を反映したバイタル情報の平均値が得やすいものとなる。
また、上述した例では、バイタル情報を毎日計測したことを前提に、バイタル情報の平均値を算出するものとしているが、必ずしも、バイタル情報が毎日計測されている必要はない。例えば、1日おきの計測におけるバイタル情報が採用できないものではない。但し、精度高くバイタル情報の平均値を算出するには、バイタル情報が毎日計測されることが好ましい。なお、この点は平均値に限らず、後述する帯幅情報の設定や、異常の判定においても同様である。
続いて、以下、バイタル情報の種類ごとに平均値の算出の内容を説明する。
(1)体温の平均値
体温は体温計4で計測され、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。ここでの体温は例えば、36.5℃のように小数点第一位の値まで計測されるものでよい。体温の平均値(以下、「平熱」と称する。)の算出においては、上述したように介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、体温では、前日の計測値からの変位の値が0.5℃以上である体温の計測値が平熱の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の体温が35.9℃で、その次の日の体温が36.4℃である場合、前日の値からの変位が0.5℃以上であるため36.4℃の体温の値が、平熱の算出の根拠値から外されるものとなる。また、前日からの体温が0.5℃以上下がった値についても同様に平熱の算出の根拠値から外される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が0.5℃以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が1.0℃以上であってもよく、その他の数値に設定されてもよい。但し、0.5℃の変位は体温の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が0.5℃以上に設定されることが好ましい。
(2)酸素飽和度(SpO2)の平均値
酸素飽和度はパルスオキシメーター5で計測される血液中のヘモグロビンのうち酸素と結びついているヘモグロビンの割合を示すバイタル情報であり、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。
ここでの酸素飽和度は例えば、98%のように2ケタの値で示されるものとなる。酸素飽和度の平均値の算出においては、上述したように問診情報、観察情報または介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、酸素飽和度では、前日の計測値からの変位の割合が2%以上の酸素飽和度の計測値が平均値の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の体温が98%で、その次の日の体温が96%である場合、前日の値からの変位の割合が2%以上であるため96%の酸素飽和度の値が、平均値の算出の根拠値から外されるものとなる。一方、前日からの酸素飽和度の変位の割合が2%以内の場合には、平均値の算出の根拠の値として採用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の割合が2%以上に限定される必要はない。例えば、変位の割合が3%以上とする設定や、その他の数値に設定されてもよい。但し、2%以上の変位は酸素飽和度の1日での変位の割合としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の割合が2%以上に設定されることが好ましい。
(3)脈拍の平均値
脈拍はパルスオキシメーター5で計測される安静時の1分間の心拍数を示すバイタル情報であり、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。
ここでの脈拍は例えば、60(回/分)や80(回/分)のように示されるものとなる。脈拍の平均値の算出においては、上述したように問診情報、観察情報または介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、脈拍では、前日の計測値からの変位の値が10以上である脈拍の計測値が平均値の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の脈拍が60で、その次の日の脈拍が70である場合、前日の値からの変位の値が10以上であるため70の脈拍の値が、平均値の算出の根拠値から外されるものとなる。一方、前日からの脈拍の変位の値が10未満の場合には、平均値の算出の根拠の値として採用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が10以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が20以上の設定や、その他の数値に設定されてもよい。但し、10以上の変位は脈拍の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が10以上に設定されることが好ましい。
(4)脈圧の平均値
脈圧は血圧計6で計測される最高血圧及び最低血圧から求められ、最高血圧と最低血圧の差を示すバイタル情報であり、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。
ここでの脈圧は例えば、45(mmHg)や60(mmHg)のように示されるものとなる。脈圧の平均値の算出においては、上述したように問診情報、観察情報または介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、脈圧では、前日の計測値からの変位の値が10以上である脈圧の計測値が平均値の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の脈圧が45で、その次の日の脈圧が55である場合、前日の値からの変位の値が10以上であるため55の脈圧の値が、平均値の算出の根拠値から外されるものとなる。一方、前日からの脈圧の変位の値が10未満の場合には、平均値の算出の根拠の値として採用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が10以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が20以上の設定や、その他の数値に設定されてもよい。但し、10以上の変位は脈圧の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が10以上に設定されることが好ましい。
(5)最高血圧及び最低血圧の平均値
最高血圧及び最低血圧は血圧計6で計測されるバイタル情報であり、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。
ここでの最高血圧及び最低血圧は例えば、最高血圧125(mmHg)や最低血圧80(mmHg)のように示されるものとなる。最高血圧及び最低血圧の平均値の算出においては、上述したように問診情報、観察情報または介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、最高血圧及び最低血圧では、前日の計測値からの変位の値が20以上である最高血圧及び最低血圧の計測値が平均値の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の最高血圧が125で、その次の日の最高血圧が105である場合、前日の値からの変位の値が20以上であるため105の最高血圧の値が、平均値の算出の根拠値から外されるものとなる。一方、前日からの最高血圧の変位の値が20未満の場合には、平均値の算出の根拠の値として採用される。最低血圧も同様に設定される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が20以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が30以上の設定や、その他の数値に設定されてもよい。但し、20以上の変位は、最高血圧または最低血圧の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が20以上に設定されることが好ましい。
(6)血糖値の平均値
血糖値は血糖計8で計測されるバイタル情報であり、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。
ここでの血糖値は例えば、90(mg/dL)のように示されるものとなる。血糖値の平均値の算出においては、上述したように問診情報、観察情報または介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、血糖値では、前日の計測値からの変位の値が10以上である血糖値の計測値が平均値の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の血糖値が80で、その次の日の血糖値が90である場合、前日の値からの変位の値が10以上であるため90の血糖値の値が、平均値の算出の根拠値から外されるものとなる。一方、前日からの血糖値の変位の値が10未満の場合には、平均値の算出の根拠の値として採用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が10以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が20以上の設定や、その他の数値に設定されてもよい。但し、10以上の変位は、血糖値の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が10以上に設定されることが好ましい。
(7)呼吸数の平均値
血糖値は呼吸数センサー9で計測される安静時の1分間の呼吸の回数を示すバイタル情報であり、計測日の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。なお、呼吸数は、必ずしも呼吸数センサー9で計測される必要はなく、目視や聴診器による計測、心電図での計測等、他の計測方法で値が計測されるものであってもよい。
ここでの呼吸数は例えば、15(回/分)のように示されるものとなる。呼吸数の平均値の算出においては、上述したように問診情報、観察情報または介護記録の結果での異常が見られた日または前日の値からの急な変化があった日の計測値が除かれる。
また、呼吸数では、前日の計測値からの変位の値が5以上である呼吸数の計測値が平均値の算出の根拠となる値から除かれる。例えば、前日の呼吸数が12で、その次の日の呼吸数が17である場合、前日の値からの変位の値が5以上であるため17の呼吸数の値が、平均値の算出の根拠値から外されるものとなる。一方、前日からの呼吸数の変位の値が5未満の場合には、平均値の算出の根拠の値として採用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が5以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が10以上の設定や、その他の数値に設定されてもよい。但し、5以上の変位は、呼吸数の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が5以上に設定されることが好ましい。
続いて、本発明を適用したバイタル異常判定部1でのバイタル値の異常の判定の1つの基準となる帯幅情報について説明する。
情報管理部3の情報処理部11は、帯幅情報処理部18を有している。帯幅情報処理部18はバイタル情報データベース15に記録されたバイタル情報と、計測日ごとのバイタル平均値の情報を元に、計測日ごとの対象者個別のバイタル情報の上下幅を算出する部分である。このバイタル情報の上下幅とは、バイタル値の異常の判定対象者が健全な状態であるとみなせるバイタル情報値の範囲を示すものであり、これを帯幅情報19と称する。
帯幅情報処理部18が算出した計測日ごとの帯幅情報19は対象者に紐付けられバイタル情報データベース15に記録される。帯幅情報19は、バイタル値の異常の判定を行う際に、その日に計測したバイタル情報の値と、計測日の前日のバイタル情報の平均値と組み合わせて、対象者のバイタル値の異常の判定の1つの指標となる。なお、バイタル値の異常の判定については後述する。
情報管理部3の情報処理部11は、対象者が実際に医師の診断を受けた際の診断結果の情報を記録する医師診断結果情報記録部103を有している。医師診断結果情報記録部103では、病気診断装置39で情報が管理されている対象者が、実際に医師の診察を受けて、診断の結果を少なくとも、「異常有り(特定の病態である)」、「異常なし(特定の病態ではない)」の2段階の情報が記録される。
また、情報管理部3の情報処理部11は、帯幅情報修正処理部104を有している。帯幅情報修正処理部104は、バイタル情報データベース15、帯幅情報処理部18及び医師診断結果情報記録部103と連動して、帯幅情報19の内容を医師の診断結果に基づき修正する部分である。帯幅情報の修正の具体的な内容については後述する。
[帯幅情報の出し方]
帯幅情報処理部18は、バイタル情報データベース15に記録されたバイタル情報の値のうち、一定の期間のバイタル情報の最大の値または最小の値と、バイタルの異常の判定を行う日の前日のバイタル情報の平均値との差を算出し、平均値より上側の幅または下側の幅となる範囲を特定する。即ち、帯幅情報19は、バイタルの異常の判定を行う日の前日のバイタル情報の平均値より値が大きくなる数値の範囲と、値が小さくなる数値の範囲で構成される情報となる。
また、項目別健康観察判定情報の少なくとも1つに異常が記録された日に計測した日のバイタル情報は、最大の値または最小の値となる対象から除かれる。更に、前日の値から急な変化があった日のバイタル情報についても最大の値または最小の値となる対象から除かれる。なお、バイタル情報の平均値とは上述した直近7日分のバイタル情報から算出される値である。また、一定の期間のバイタル情報とは、例えば、バイタル値の異常の判定を行う日を基準に過去30日分のバイタル情報を確認するものとして設定する。更に「前日の値からの急な変化」の部分は、バイタル情報の種類によって設定可能な値であり、この点は後述する。
ここで、必ずしも、帯幅情報19を算出するための一定の期間のバイタル情報が、バイタル値の異常の判定を行う日を基準に過去30日分のバイタル情報である必要はない。例えば、2週間や1か月前後、半年及び記録がなされた全期間等適宜設定可能である。但し、約30日程度の期間であれば、対象者の直近1か月の体調の変化を反映した情報に基づき帯幅情報が設定可能となる。
上記のような構成では、項目別健康観察判定情報に異常が記録された日や、前日からの急な変化となっている数値が除かれるため、対象者の体調が健全な状態であるとみなされる範囲での帯幅情報19の設定が可能となる。なお、ここでの「前日の値から急な変化」は計測するバイタル情報の種類によって設定可能な値であり、この点は後述する。
例えば、バイタル情報が体温である場合を例に帯幅情報について説明する。
図2に対象者の体温の変動を示すグラフを示す。
図2に示す体温の例では、10月5日の帯幅情報の算出について説明する。ここでは、10月5日の前日である10月4日における体温のバイタル情報の平均値である平熱20が直近7日分の体温の情報から「36.5℃」になったものとする。そして、10月4日の帯幅情報が、過去約30日分、即ち、9月5日までの体温の値からの範囲で算出される。
また、体温で帯幅を算出する際に、バイタル情報の対象から除くための前日の値からの急な変化は0.5℃以上の変位とする。
また、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が0.5℃以上に限定される必要はない。例えば、変位の値が1.0℃以上であってもよく、その他の数値に設定されてもよい。但し、0.5℃の変位は体温の1日での変位の値としては大きく、体調の変化を反映している可能性が高いものと見なされるため、前日の計測値からの変位の値が0.5℃以上に設定されることが好ましい。
図2に示すように、9月5日から10月4日までの体温の情報のうち、9月9日の体温21の値である37.3℃は、前日の9月8日の体温22の値である36.7℃から0.6℃の体温上昇となる。即ち、前日の体温の値からの変位が0.5℃以上であるため、9月9日の体温21の値である37.3℃が、帯幅情報の算出の値から除かれる。
同様に、9月16日の体温23の値である35.9℃は、前日の9月15日の体温24の値である36.6℃から0.7℃の体温低下となる。即ち、前日の体温の値からの変位が0.5℃以上であるため、9月16日の体温23の値である35.9℃が、帯幅情報の算出の値から除かれる。
そして、残りの体温の値のうち、9月10日の体温25である36.9℃が最大値、9月26日の体温26である36.1℃が最小値となる。体温25と平熱20の差が0.4℃、平熱20と体温26の差が0.4℃となるため、10月4日の帯幅情報として、その日の平熱20である36.5℃から上側に0.4℃の範囲(上側帯幅27)と、36.5℃から下側に0.4℃の範囲(下側帯幅28)が算出される。
このように設定された帯幅情報を元に、10月5日の対象者のバイタル値の異常を判定することができる。例えば、図2の10月5日の体温の計測値は「36.4℃」であり、前日の平熱20は「36.5℃」であるが、平熱20と、その日の計測値との差が「−0.1℃」であり、この数値は上側帯幅27及び下側帯幅28の範囲内に収まる値であるため、本指標においては、対象者は異常がなく「健康」と判定できるものとなる。
一方、仮に、10月5日の体温の計測値が「37.0℃」であった場合には、前日の平熱20と計測値との差が「+0.5℃」となり、上側帯幅27の範囲を超える値となる。この結果、その日の帯幅情報を指標とした判定において「異常」と判定されるものとなる。
[診断結果に基づく帯幅情報の修正]
上述した帯幅情報修正処理部104による医師の診断結果の情報の内容に基づいた帯幅情報18の修正とは、例えば、次のようなものである。
図3は、帯幅情報の自動修正の概要を示すグラフである。
一の例として、ある測定日における対象者の体温の前日のバイタル平均値(即ち、前日平熱)が36.5℃で、体温における前日帯幅が前日平熱から上下0.4℃の範囲であるとする。この対象者の体温の測定値が37.1℃(+0.6℃)であると、前日帯幅を超える体温のため、バイタル異常判定部は体温を異常(警告)と判定する。そして、この対象者が、実際に医師の診断を受けて、異常なしと診断されると、医師診断結果情報記録部103に「正常」と記録される。
この時点で、帯幅情報修正処理部104が、対象者の前日帯幅を前日平熱から上下0.4℃の範囲から、上下0.6℃の範囲へと修正し、新たな帯幅情報18として記録する。即ち、異常なしとの診断結果を得た際の体温の値と、その際の基準となった前日平熱との差を、対象者の新たな帯幅情報18に反映するように修正する。
なお、ここでは、上下0.4℃の範囲から上下0.6℃の範囲へと上下の温度範囲を修正したが、この設定範囲は、更に詳細に修正されるものであってもよい。即ち、前日平熱よりも上側の温度の範囲のみが修正され、修正後には、前日平熱から上に0.6℃、下側に0.4℃の範囲が修正後の帯幅情報18として記録されるものでもよい。つまり、前日平熱を基準に実際に帯幅情報18の範囲を上回った側のみを修正するものである。なお、体温を例にしたが、同様の構成は、その他のバイタル情報でも同様に、医師の診断結果の記録に基づき、帯幅情報18が修正される構成とすることができる。特に、血圧や脈圧については、帯幅情報の修正がバイタル異常の検知の精度向上に寄与するものとなる。
他の例として、ある測定日における対象者の体温の前日バイタル平均値(即ち、前日平熱)が36.5℃で、体温における帯幅が前日平熱から上下0.4℃の範囲であるとする。この対象者の体温の測定値が36.8℃(+0.3℃)であると、前日帯幅を超えない体温のため、バイタル異常判定処理部は体温を正常(異常なし)と判定する。そして、この対象者が、実際に医師の診断を受けて、炎症反応(発熱)を原因とする病気であると診断されると、診断結果情報記録部に「異常あり(何らかの病態である)」と記録される。
この時点で、帯幅情報修正処理部104が、対象者の前日帯幅を前日平熱から上下0.4℃の範囲から、上下0.3℃の範囲へと修正し、新たな帯幅情報18として記録する。即ち、異常ありとの診断結果を得た際の体温の値と、その際の基準となった前日平熱との差を、対象者の新たな帯幅情報18に反映するように修正する。
なお、ここでは、上下0.4℃の範囲から上下0.3℃の範囲へと上下の温度範囲を修正したが、この設定範囲は、更に詳細に修正されるものであってもよい。即ち、前日平熱よりも上側の温度の範囲のみが修正され、修正後は前日平熱から上に0.3℃、下側に0.4℃の範囲が修正後の帯幅情報18として記録されるものでもよい。つまり、前日平熱を基準に実際に帯幅情報18の範囲を上回った側のみを修正するものである。
図3に帯幅情報の修正を概念的に示すが、元々設定されていた帯幅範囲105が、医師の診断の結果の情報に基づき修正され、その対象者の修正後の帯幅106または帯幅107が、新たにバイタル異常の検知の基準として設けられるものとなる。
ここで、帯幅情報18の範囲の修正については、必ずしも、1回の医師の診断結果が反映されるものである必要はない。例えば、所定の回数の診察後の結果をもってはじめて帯幅情報が修正されるように設定してもよい。特に上述した例で、修正後に帯幅の範囲が広がる場合の修正においては注意を要するためである。帯幅の範囲が広がることで、その後の対象者のバイタルの異常が検知されにくくなることが考慮される。なお、この場合にも、更に修正が行われることで、対応が可能な構成になっているものといえる。
このように、帯幅情報修正処理部104が、医師診断結果情報記録部103に記録された診断結果の情報の内容に基づき、帯幅情報18の内容を修正することで、帯幅情報18に基づくバイタル異常の検知の精度をより一層高め、個体差を反映した内容とすることができる。
ここで、必ずしも、医師の診断の結果が、異常有りとなしの二段階で分類される必要はなく、より細分化した内容で記録する構成であってもよい。例えば、異常有りの内容を更に、「異常有り(特定の病態である)」、「異常が疑われる(要観察)」と分けて、「異常有り(特定の病態である)」または「異常なし(特定の病態でない)」の診断結果が記録された際に、帯幅情報修正処理部104が帯幅情報18を修正する構成であってもよい。
上述した帯幅情報の修正は病気判定部の結果によって、自動修正される構成も採用しうる。即ち、実際の医師の診断の結果の部分が、病気判定部42が特定の病態と判定した結果、または複数の病態を絞り込んだ結果をもって修正を行うとする内容である。このように、医師の診断結果でなく、病気判定部42の出した結果をもって帯幅情報18を修正する機能を採用することもできる。
上記の例では、バイタル情報が「体温」である時の帯幅情報の設定について説明したが、その他、脈拍、脈圧、最高血圧及び最低血圧、血糖値、呼吸数についても、同様に帯幅情報を算出することが可能である。また、これら以外の情報も同様に帯幅情報を設定しうる。
帯幅情報の算出にあたってバイタル情報の種類で異なるのは、最大値及び最小値を選定する際に、バイタル情報の値を取り除くための基準となる数値である。以下この点を説明する。
例えば、脈拍であれば、前日の値からの10以上の変位が見られた脈拍の数値も除外対象となる。
また、脈圧であれば、前日の値からの10以上の変位が見られた脈圧の数値も除外対象となる。
また、最高血圧及び最低血圧であれば、前日の値からの20以上の変位が見られた最高血圧及び最低血圧の数値も除外対象となる。
また、血糖値であれば、前日の値からの10以上の変位が見られた血糖値の数値も除外対象となる。
更に、呼吸数であれば、前日の値からの5以上の変位が見られた呼吸数の数値も除外対象となる。
以上のようにバイタル情報の種類が異なっても、同様に帯幅情報が算出可能なものとなっている。なお、各バイタルにおいて設定される変位の値が上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
続いて、本発明を適用したバイタル異常判定部1によるバイタル値の異常の判定の内容について説明する。
バイタル値の異常の判定については、バイタル情報の種類ごとに説明を行う。
(8)体温に基づくバイタル値の異常の判定
体温に基づくバイタル値の異常の判定は、以下に示す3つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの判定は、その程度によって、2段階の表示によって通知されるものとする。2段階の表示とは、「警告」または「注意」の2つの表示である。「警告」は、バイタル情報の値が重度もしくは重要な異常値を示しており、そのバイタル情報の値の項目の結果だけで医師のチェックを求めるレベルの通知である。また、「注意」は、正常値ではないが、警告よりも平穏状態からの変化が小さいものを示す通知である。
体温に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の体温の計測値からの変位が1.0℃以上となった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の体温が35.8℃で、計測した体温が36.8℃であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。
この体温に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、体温の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、本発明を構成するバイタル異常判定部1では、表示部12の「警告」の表示をもって、異常であること記録及び通知する構成となっているが、この態様に限定されるものでない。例えば、体温の値で「警告」となった場合、情報管理部と接続した通信手段を介して、別途の端末等に、対象者が体温について「警告」の出る状態にあることを送信する構成であってもよい。即ち、インターネットを介して、病院等に設置された外部端末に対象者の異常を通知する構成も採用しうる。また、表示部12の「警告」の表示を、バイタル異常判定部1のある介護施設の職員が確認して、異常を知る仕組みであってもよい。異常の通知に関しては、その他のバイタル情報についても同様である。
また、体温の1)急な変化に基づく判断では、前日の体温の計測値からの変位が0.5℃以上となった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の体温が35.8℃で、計測した体温が36.3℃であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。
この体温に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、体温の値が「注意」である旨が表示される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が0.5℃以上で「注意」、変位の値が1.0℃以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、0.5℃や1.0℃の変位は体温の1日での変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
上記では、「警告」が出た場合、外部の端末等にその旨の情報を送信する例を示したが、「注意」では表示部12への表示に留められるものとなる。これにより、対象者の体調の異常ではあるが、重度というほどではない「注意」の状態について頻繁に外部端末に通知がなされてしまうことを防ぐことができる。一方、対象者によっては、「注意」であっても、表示に留まらず、外部端末への情報の送信がなされるように設定することも可能である。
体温に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断とは、上述した前日平熱、つまり項目別健康観察情報に異常が見られる日の値と、前日の体温からの変位が0.5℃以上の日の値を除いた直近7日分の体温の値から算出された、バイタル異常の判定を行う日の前日の体温の平均値(前日平熱)を利用する。また、上述した、対象者のバイタル異常の判定を行う日の前日の体温の前日帯幅である上側帯幅と下側帯幅も利用する。
即ち、バイタル値の異常を判定するその日に計測した体温の値と、前日平熱との差が、前日帯幅の上側帯幅または下側帯幅の温度範囲を超えているか否かで、異常の判定を行う。
例えば、上述した図2の10月5日の例でいえば、前日である10月4日の前日平熱20が36.5℃であり、上側帯幅27の範囲は前日平熱20である36.5℃から上側に0.4℃の範囲、下側帯幅28は36.5℃から下側に0.4℃の範囲となる。また、10月5日の体温の計測値は36.4℃である。この場合、前日平熱20とその日の計測値36.4℃の差は「−0.1℃」であり、この値は、前日平熱20と下側帯幅28との間の範囲内にあるものである。つまり、10月5日の対象者の体温は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記の10月5日の例において、10月5日に計測した体温の値が「35.9℃」であったと仮定する。この場合、前日平熱20とその日の計測値35.9℃の差は「−0.5℃」であり、この値は、前日平熱20と下側帯幅28との間の範囲を超えるものである。つまり、10月5日の対象者の体温は異常とみなされ、体温の値が「警告」である旨が表示される。即ち、日々変動する対象者の平熱及び帯幅情報に基づく判断で異常とみなされた場合、「注意」にはならず「警告」に相当するものと判断される。
また、体温に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断では、上述した対象者の帯幅情報が算出されるだけの体温の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、帯幅情報が設定される前の段階における基準が設定可能となっている。更に、対象者の前日平熱が算出されるだけの体温の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、前日平熱が設定される前の段階における基準も設定可能である。
まず、帯幅情報が設定される前の段階における基準では、これまでにも述べた直近7日分の体温の値から算出された前日平熱が算出されていることを前提とする。そして、上側帯幅として前日平熱を基準に0.5℃以上または1.0℃以上の範囲と、下側帯幅として前日平熱を基準に0.5℃以下または1.0℃以下の範囲を、決め打ちの帯幅範囲として設定する。
帯幅情報が設定される前の段階における判定の例として、前日平熱が「36.5℃」であり、その日に計測した体温の値が「36.4℃」であった場合、前日平熱と計測値の差は「−0.1℃」であり、この値は、前日平熱を基準に0.5℃以下の範囲よりも内側にあるものとなる。つまり、その日の対象者の体温は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記の例において、その日に計測した体温の値が「35.8℃」であったと仮定する。この場合、前日平熱とその日の計測値35.8℃の差は「−0.6℃」であり、この値は、前日平熱を基準に0.5℃以下の範囲を超えるものとなり、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。
更に、上記の例において、その日に計測した体温の値が「35.4℃」であったと仮定する。この場合、前日平熱とその日の計測値35.4℃の差は「−1.1℃」であり、この値は、前日平熱を基準に1.0℃以下の範囲を超えるものとなり、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。
このように、帯幅情報が設定される前の段階における基準では、前日平熱と、前日平熱を基準に上下0.5℃以内または上下1.0℃以内の温度範囲を超えるかという点を利用して、異常とみなす場合には、注意または警告の2段階の表示を行うものとして設定される。
ここで、必ずしも、前日平熱を基準に0.5℃以上で「注意」、1.0℃以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
続いて、前日平熱が設定される前の段階における基準では、個人情報データベース13に記録された健康診断の際に計測した体温の情報である健診時体温情報14を利用する。そして、上側帯幅として健診時体温情報14を基準に0.5℃以上または1.0℃以上の範囲と、下側帯幅として健診時体温情報14を基準に0.5℃以下または1.0℃以下の範囲を、決め打ちの帯幅範囲として設定する。
前日平熱が設定される前の段階における判定の例として、健診時体温情報14が「36.2℃」であり、その日に計測した体温の値が「36.7℃」であった場合、健診時体温情報14と計測値の差は「+0.5℃」であり、この値は、健診時体温情報14を基準に0.5℃以上の範囲内にあるものとなる。つまり、その日の対象者の体温は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記の例において、その日に計測した体温の値が「36.8℃」であったと仮定する。この場合、健診時体温情報14とその日の計測値36.8℃の差は「+0.6℃」であり、この値は、健診時体温情報14を基準に0.5℃以上の範囲を超えるものとなり、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。
更に、上記の例において、その日に計測した体温の値が「35.1℃」であったと仮定する。この場合、健診時体温情報14とその日の計測値35.1℃の差は「−1.1℃」であり、この値は、健診時体温情報14を基準に1.0℃以下の範囲を超えるものとなり、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。
このように、前日平熱が設定される前の段階における基準では、健診時体温情報14と、健診時体温情報14を基準に上下0.5℃以内または上下1.0℃以内の温度範囲を超えるかという点を利用して、異常とみなす場合には、注意または警告の2段階の表示を行うものとして設定される。
ここで、必ずしも、健診時体温情報14を基準に0.5℃以上で「注意」、1.0℃以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
体温に基づくバイタル値の異常の判定における、3)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日の計測値が35℃以下または40℃以上になった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。この絶対値となる35℃及び40℃は、通常の人間の体温の範囲では、ほとんど記録しえない値であり、体調の異常と即判断しうる値である。このような場合は、第3の判断基準として「警告」に相当するものとして設定できる。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、体温に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、体温に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の3つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、1)急な変化に基づく判断、または、2)平均値に基づく判断において「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の体温の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
以下、更に、体温以外のバイタル情報に基づくバイタル値の異常の判定について説明する。
(9)酸素飽和度に基づくバイタル値の異常の判定
酸素飽和度に基づくバイタル値の異常の判定は、以下に示す2つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの通知は、その程度によって、「警告」または「注意」の2段階の表示でなされるものとする。
酸素飽和度に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の酸素飽和度の計測値からの変位の割合が4%を超えるものとなった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の酸素飽和度が99%で、計測した酸素飽和度が94%であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。
この酸素飽和度に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診等の判定結果と共に、酸素飽和度の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
また、酸素飽和度の1)急な変化に基づく判断では、前日の酸素飽和度の計測値からの変位の割合が2%を超えるものとなった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の酸素飽和度が99%で、計測した酸素飽和度が96%であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。
この酸素飽和度に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、体温の値が「注意」である旨が表示される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の割合が2%を超えるもので「注意」、変位の割合が4%を超えるもので「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、2%や4%の変位の割合は酸素飽和度の1日での変位の割合としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
酸素飽和度に基づくバイタル値の異常の判定における、2)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日に計測値が92%未満の値である場合には「注意」にあたるとする。また、酸素飽和度の計測値が90%未満の値である場合には「警告」の状態とされる。このように、2回の酸素飽和度の計測値と絶対値により、異常か否かの判定を行うものとする。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、酸素飽和度に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)絶対値に基づく判断の2つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、酸素飽和度に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の2つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の酸素飽和度の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
(10)脈拍に基づくバイタル値の異常の判定
脈拍に基づくバイタル値の異常の判定は、体温に基づく判定と同様に、以下に示す3つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの通知は、その程度によって、「警告」または「注意」の2段階の表示でなされるものとする。
脈拍に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の脈拍の計測値からの変位が20以上となった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の脈拍が65で、計測した脈拍が85であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。
この脈拍に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、脈拍の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
また、脈拍の1)急な変化に基づく判断では、前日の脈拍の計測値からの変位が10以上となった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の脈拍が65で、計測した脈拍が75であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。
この脈拍に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、脈拍の値が「注意」である旨が表示される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が10以上で「注意」、変位の値が20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、10や20の変位は脈拍の1日での変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
脈拍に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断とは、上述した脈拍の平均値、つまり項目別健康観察情報に異常が見られる日の値と、前日の脈拍からの変位が10以上の値を除いた直近7日分の脈拍の値から算出された、バイタル異常の判定を行う日の前日の脈拍の平均値を利用する。また、上述した、対象者のバイタル異常の判定を行う日の前日の脈拍の前日帯幅である上側帯幅と下側帯幅も利用する。
即ち、バイタル値の異常を判定するその日に計測した脈拍の値と、前日の脈拍平均値との差が、前日帯幅の上側帯幅または下側帯幅の範囲を超えているか否かで、異常の判定を行う。
例えば、バイタル値の異常を判定する日の前日の脈拍平均値が67.7であり、上側帯幅の範囲が前日の脈拍平均値である67.7から上側に14.3の範囲、下側帯幅が67.7から下側に9.7の範囲であったとする。また、バイタル値の異常を判定するその日の脈拍の計測値が74とする。この場合、前日の脈拍平均値とその日の計測値74の差は「+6.3」であり、この値は、前日の脈拍平均値と上側帯幅との間の範囲内にあるものである。つまり、バイタル値の異常を判定するその日の対象者の脈拍は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記のバイタル値の異常を判定する日の例において、その日に計測した脈拍の値が「55」であったと仮定する。この場合、前日の脈拍平均値とその日の計測値55の差は「−12.7」であり、この値は、前日の脈拍平均値と下側帯幅との間の範囲を超えるものである。つまり、その日の対象者の脈拍は異常とみなされ、脈拍の値が「警告」である旨が表示される。即ち、日々変動する対象者の脈拍の平均値及び帯幅情報に基づく判断で異常とみなされた場合、「注意」にはならず「警告」に相当するものと判断される。
また、脈拍に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断では、体温に基づく判断と同様に、上述した対象者の帯幅情報が算出されるだけの脈拍の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、帯幅情報が設定される前の段階における基準が設定可能となっている。更に、対象者の脈拍の平均値が算出されるだけの脈拍の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、前日の脈拍平均値が設定される前の段階における基準も設定可能である。
上記の場合、基本的な構成は体温に基づく判断と同様であり、決め打ちの帯幅範囲となる数値が、前日の脈拍平均値を基準に上下10以内または上下20以内となるものである。上下10以上である値については「注意」に、上下20以上である値については「警告」にあたるものと判定する。
ここで、必ずしも、前日の脈拍平均値を基準に10以上で「注意」、20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
また、脈拍の平均値が算出できるだけの脈拍の値の情報の蓄積がない場合には、対象者の健康診断の際の脈拍の計測値等、あらかじめ対象者の情報として取得した数値を基準に設定することができる。
ここで、必ずしも、健康診断の際の脈拍の計測値を基準に10以上で「注意」、20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
脈拍に基づくバイタル値の異常の判定における、3)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日の計測値が50以下または100以上になった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。この絶対値となる50及び100の値は、通常の人間の正常時の脈拍の範囲では、ほとんど記録しえない値であり、体調の異常と即判断しうる値である。このような場合は、第3の判断基準として「警告」に相当するものとして設定できる。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、脈拍に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、脈拍に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の3つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の脈拍の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
(11)脈圧に基づくバイタル値の異常の判定
脈圧に基づくバイタル値の異常の判定は、体温に基づく判定と同様に、以下に示す3つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの通知は、その程度によって、「警告」または「注意」の2段階の表示でなされるものとする。
脈圧に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の脈圧の計測値からの変位が20以上となった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の脈圧が40で、計測した脈圧が65であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。
この脈圧に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、脈圧の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
また、脈圧の1)急な変化に基づく判断では、前日の脈圧の計測値からの変位が10以上となった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の脈圧が45で、計測した脈圧が35であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。
この脈圧に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、脈圧の値が「注意」である旨が表示される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が10以上で「注意」、変位の値が20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、10や20の変位は脈圧の1日での変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
脈圧に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断とは、上述した脈圧の平均値、つまり項目別健康観察情報に異常が見られる日の値と、前日の脈圧からの変位が10以上の値を除いた直近7日分の脈圧の値から算出された、バイタル異常の判定を行う日の前日の脈圧の平均値を利用する。また、上述した、対象者のバイタル異常の判定を行う日の前日の脈圧の前日帯幅である上側帯幅と下側帯幅も利用する。
即ち、バイタル値の異常を判定するその日に計測した脈圧の値と、前日の脈圧平均値との差が、前日帯幅の上側帯幅または下側帯幅の範囲を超えているか否かで、異常の判定を行う。
例えば、バイタル値の異常を判定する日の前日の脈圧の平均値が47.1であり、上側帯幅の範囲が前日の脈圧平均値である47.1から上側に15.9の範囲、下側帯幅が47.1から下側に12.1の範囲であったとする。また、バイタル値の異常を判定するその日の脈圧の計測値が56とする。この場合、前日の脈圧平均値とその日の計測値56の差は「+8.9」であり、この値は、前日の脈圧平均値と上側帯幅との間の範囲内にあるものである。つまり、バイタル値の異常を判定するその日の対象者の脈圧は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記のバイタル値の異常を判定する日の例において、その日に計測した脈圧の値が「33」であったと仮定する。この場合、前日の脈圧平均値とその日の計測値33の差は「−14.1」であり、この値は、前日の脈圧平均値と下側帯幅との間の範囲を超えるものである。つまり、その日の対象者の脈圧は異常とみなされ、脈圧の値が「警告」である旨が表示される。即ち、日々変動する対象者の脈圧の平均値及び帯幅情報に基づく判断で異常とみなされた場合、「注意」にはならず「警告」に相当するものと判断される。
また、脈圧に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断では、体温に基づく判断と同様に、上述した対象者の帯幅情報が算出されるだけの脈圧の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、帯幅情報が設定される前の段階における基準が設定可能となっている。更に、対象者の脈圧の平均値が算出されるだけの脈圧の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、前日の脈圧平均値が設定される前の段階における基準も設定可能である。
上記の場合、基本的な構成は体温に基づく判断と同様であり、決め打ちの帯幅範囲となる数値が、前日の脈圧平均値を基準に上下10以内または上下20以内となるものである。上下10以上である値については「注意」に、上下20以上である値については「警告」にあたるものと判定する。
ここで、必ずしも、前日の脈圧平均値を基準に10以上で「注意」、20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
また、脈圧の平均値が算出できるだけの脈圧の値の情報の蓄積がない場合には、対象者の健康診断の際の脈圧の計測値等、あらかじめ対象者の情報として取得した数値を基準に設定することができる。
ここで、必ずしも、健康診断の際の脈圧の計測値を基準に10以上で「注意」、20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
脈圧に基づくバイタル値の異常の判定における、3)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日の計測値が30未満になった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。この絶対値となる30未満の値は、通常の人間の正常時の脈圧の範囲では、ほとんど記録しえない値であり、体調の異常と即判断しうる値である。このような場合は、第3の判断基準として「警告」に相当するものとして設定できる。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、脈圧に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、脈圧に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の3つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の脈圧の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
(12)最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定
最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定は、体温に基づく判定と同様に、以下に示す3つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの通知は、その程度によって、「警告」または「注意」の2段階の表示でなされるものとする。
最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の最高血圧及び最低血圧の計測値からの変位が30以上となった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の最高血圧が115で、計測した最高血圧が145であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。
この最高血圧及び最低血圧に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、最高血圧及び最低血圧の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
また、最高血圧及び最低血圧の1)急な変化に基づく判断では、前日の最高血圧及び最低血圧の計測値からの変位が20以上となった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の最低血圧が65で、計測した最低血圧が85であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。
この最高血圧及び最低血圧に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、最高血圧及び最低血圧の値が「注意」である旨が表示される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が20以上で「注意」、変位の値が30以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、20や30の変位は最高血圧及び最低血圧の1日での変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断とは、上述した最高血圧及び最低血圧の平均値、つまり項目別健康観察情報に異常が見られる日の値と、前日の最高血圧及び最低血圧からの変位が10以上の値を除いた直近7日分の最高血圧及び最低血圧の値から算出された、バイタル異常の判定を行う日の前日の最高血圧の平均値及び最低血圧の平均値を利用する。また、上述した、対象者のバイタル異常の判定を行う日の前日の最高血圧及び最低血圧の前日帯幅である上側帯幅と下側帯幅も利用する。
即ち、バイタル値の異常を判定するその日に計測した最高血圧及び最低血圧の値と、前日の最高血圧平均値及び最低血圧平均値との差が、前日帯幅の上側帯幅または下側帯幅の範囲を超えているか否かで、異常の判定を行う。
例えば、バイタル値の異常を判定する日の前日の最高血圧平均値が130.3であり、上側帯幅の範囲が前日の最高血圧平均値である130.3から上側に7.7の範囲、下側帯幅が130.3から下側に8.3の範囲であったとする。また、バイタル値の異常を判定するその日の最高血圧の計測値が130とする。この場合、前日の最高血圧平均値とその日の計測値130の差は「+0.3」であり、この値は、前日の最高血圧平均値と上側帯幅との間の範囲内にあるものである。つまり、バイタル値の異常を判定するその日の対象者の最高血圧は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記のバイタル値の異常を判定する日の例において、その日に計測した最高血圧の値が「121」であったと仮定する。この場合、前日の最高血圧平均値とその日の計測値121の差は「−9.3」であり、この値は、前日の最高血圧平均値と下側帯幅との間の範囲を超えるものである。つまり、その日の対象者の最高血圧は異常とみなされ、最高血圧の値が「警告」である旨が表示される。即ち、日々変動する対象者の最高血圧の平均値及び帯幅情報に基づく判断で異常とみなされた場合、「注意」にはならず「警告」に相当するものと判断される。なお、最低血圧の値についても同様の判定が可能である。
また、最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断では、体温に基づく判断と同様に、上述した対象者の帯幅情報が算出されるだけの最高血圧及び最低血圧の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、帯幅情報が設定される前の段階における基準が設定可能となっている。更に、対象者の最高血圧の平均値及び最低血圧の平均値が算出されるだけの最高血圧及び最低血圧の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、前日の最高血圧平均値及び最低血圧平均値が設定される前の段階における基準も設定可能である。
上記の場合、基本的な構成は体温に基づく判断と同様であり、決め打ちの帯幅範囲となる数値が、前日の最高血圧平均値及び最低血圧平均値を基準に上下10以内または上下20以内となるものである。上下20以上である値については「注意」に、上下30以上である値については「警告」にあたるものと判定する。
ここで、必ずしも、最高血圧の平均値及び最低血圧の平均値を基準に20以上で「注意」、30以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
また、最高血圧の平均値及び最低血圧の平均値が算出できるだけの最高血圧及び最低血圧の値の情報の蓄積がない場合には、対象者の健康診断の際の最高血圧及び最低血圧の計測値等、あらかじめ対象者の情報として取得した数値を基準に設定することができる。
ここで、必ずしも、健康診断の際の最高血圧及び最低血圧の計測値を基準に20以上で「注意」、30以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定における、3)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日の計測値が最高血圧で180以上、最低血圧で50以下になった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。この絶対値となる最高血圧で180以上、最低血圧で50以下の値は、通常の人間の正常時の最高血圧及び最低血圧の範囲では、ほとんど記録しえない値であり、体調の異常と即判断しうる値である。このような場合は、第3の判断基準として「警告」に相当するものとして設定できる。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、最高血圧及び最低血圧に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の3つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の最高血圧及び最低血圧の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
(13)血糖値に基づくバイタル値の異常の判定
血糖値に基づくバイタル値の異常の判定は、体温に基づく判定と同様に、以下に示す3つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの通知は、その程度によって、「警告」または「注意」の2段階の表示でなされるものとする。
血糖値に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の血糖値の計測値からの変位が20mg/dL以上となった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の血糖値が102mg/dLで、計測した脈圧が75mg/dLであった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。なお、以下に記載する例は空腹時血糖の計測についての記載である。
この血糖値に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、血糖値の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
また、血糖値の1)急な変化に基づく判断では、前日の血糖値の計測値からの変位が10mg/dL以上となった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の血糖値が95で、計測した血糖値が82mg/dLであった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。
この血糖値に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、血糖値の値が「注意」である旨が表示される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が10以上で「注意」、変位の値が20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、10や20の変位は血糖値の1日での変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
血糖値に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断とは、上述した血糖値の平均値、つまり項目別健康観察情報に異常が見られる日の値と、前日の血糖値からの変位が10mg/dL以上の値を除いた直近7日分の血糖値の値から算出された、バイタル異常の判定を行う日の前日の血糖値の平均値を利用する。また、上述した、対象者のバイタル異常の判定を行う日の前日の血糖値の帯幅である上側帯幅と下側帯幅も利用する。
即ち、バイタル値の異常を判定するその日に計測した血糖値の値と、前日の血糖値平均値との差が、前日帯幅の上側帯幅または下側帯幅の範囲を超えているか否かで、異常の判定を行う。
例えば、バイタル値の異常を判定する日の前日の血糖値の平均値が92.6mg/dLであり、上側帯幅の範囲が前日の血糖値平均値である92.6mg/dLから上側に17.4の範囲、下側帯幅が92.6mg/dLから下側に24.6の範囲であったとする。また、バイタル値の異常を判定するその日の血糖値の計測値が95mg/dLとする。この場合、前日の血糖値平均値とその日の計測値95mg/dLの差は「+2.6」であり、この値は、前日の血糖値平均値と上側帯幅との間の範囲内にあるものである。つまり、バイタル値の異常を判定するその日の対象者の血糖値は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記のバイタル値の異常を判定する日の例において、その日に計測した血糖値の値が「60」であったと仮定する。この場合、前日の血糖値平均値とその日の計測値60mg/dLの差は「−32.6」であり、この値は、前日の血糖値平均値と下側帯幅との間の範囲を超えるものである。つまり、その日の対象者の血糖値は異常とみなされ、血糖値の値が「警告」である旨が表示される。即ち、日々変動する対象者の血糖値の平均値及び帯幅情報に基づく判断で異常とみなされた場合、「注意」にはならず「警告」に相当するものと判断される。
また、血糖値に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断では、体温に基づく判断と同様に、上述した対象者の帯幅情報が算出されるだけの血糖値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、帯幅情報が設定される前の段階における基準が設定可能となっている。更に、対象者の血糖値の平均値が算出されるだけの血糖値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、血糖値の平均値が設定される前の段階における基準も設定可能である。
上記の場合、基本的な構成は体温に基づく判断と同様であり、決め打ちの帯幅範囲となる数値が、血糖値の平均値を基準に上下10以内または上下20以内となるものである。上下10以上である値については「注意」に、上下20以上である値については「警告」にあたるものと判定する。
ここで、必ずしも、血糖値の平均値を基準に10以上で「注意」、20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
また、血糖値の平均値が算出できるだけの血糖値の情報の蓄積がない場合には、対象者の健康診断の際の血糖値の計測値等、あらかじめ対象者の情報として取得した数値を基準に設定することができる。
ここで、必ずしも、健康診断の際の血糖値の計測値を基準に10以上で「注意」、20以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
血糖値に基づくバイタル値の異常の判定における、3)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日の計測値が200mg/dL以上または50mg/dL未満になった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。この絶対値となる200mg/dL以上または50mg/dL未満の値は、通常の人間の正常時の血糖値の範囲では、ほとんど記録しえない値であり、体調の異常と即判断しうる値である。このような場合は、第3の判断基準として「警告」に相当するものとして設定できる。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、血糖値に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、血糖値に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の3つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の血糖値の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
(14)呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定
呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定は、体温に基づく判定と同様に、以下に示す3つの判断根拠によって異常を判定する。この判断根拠とは、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つである。
また、上記のバイタル値の異常の判定で「異常」と判定された場合、「異常」であることの通知は、その程度によって、「警告」または「注意」の2段階の表示でなされるものとする。
呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定における、1)急な変化に基づく判断とは、前日の呼吸数の計測値からの変位が10回/分以上となった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。例えば、前日の呼吸数が12回/分で、計測した呼吸数が22回/分であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「警告」に相当するものと判定される。
この呼吸数に対する「警告」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、呼吸数の値が「警告」である旨が表示される。また、バイタル値における警告は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が5以上で「注意」、変位の値が10以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、5や10の変位は呼吸数の1日での変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
また、呼吸数の1)急な変化に基づく判断では、前日の呼吸数の計測値からの変位が5回/分以上となった場合、対象者の異常と判定され、「注意」の状態とされる。例えば、前日の呼吸数が12で、計測した呼吸数が17回/分であった場合には、対象者の体調の異常とみなされ、「注意」に相当するものと判定される。また、バイタル値における注意は、対象者に紐付けられ、バイタル情報データベース15に記録され、その後の診断に利用される。
この呼吸数に対する「注意」は、個人情報データベース13及びバイタル情報データベース15に記録される。また、情報管理部2の表示部12に、対象者のバイタル情報や問診の判定結果と共に、呼吸数の値が「注意」である旨が表示される。
呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断とは、上述した呼吸数の平均値、つまり項目別健康観察情報に異常が見られる日の値と、前日の呼吸数からの変位が5回/分以上の値を除いた直近7日分の呼吸数の値から算出された、バイタル異常の判定を行う日の前日の呼吸数の平均値を利用する。また、上述した、対象者のバイタル異常の判定を行う日の前日の呼吸数の前日帯幅である上側帯幅と下側帯幅も利用する。
即ち、バイタル値の異常を判定するその日に計測した呼吸数の値と、前日の呼吸数平均値との差が、前日帯幅の上側帯幅または下側帯幅の範囲を超えているか否かで、異常の判定を行う。
例えば、バイタル値の異常を判定する日の前日の呼吸数の平均値が16.3回/分であり、上側帯幅の範囲が前日の呼吸数平均値である16.3回/分から上側に3.7の範囲、下側帯幅が16.3回/分から下側に4.3の範囲であったとする。また、バイタル値の異常を判定するその日の16.3回/分の計測値が17回/分とする。この場合、前日の呼吸数平均値とその日の計測値17回/分の差は「+0.7」であり、この値は、前日の呼吸数平均値と上側帯幅との間の範囲内にあるものである。つまり、バイタル値の異常を判定するその日の対象者の呼吸数は異常とみなされない「健康」との判定がなされるものとなる。
一方、上記のバイタル値の異常を判定する日の例において、その日に計測した呼吸数の値が「22回/分」であったと仮定する。この場合、前日の呼吸数平均値とその日の計測値22回/分の差は「+5.7」であり、この値は、前日の呼吸数平均値と上側帯幅との間の範囲を超えるものである。つまり、その日の対象者の呼吸数は異常とみなされ、血糖値の値が「警告」である旨が表示される。即ち、日々変動する対象者の呼吸数の平均値及び帯幅情報に基づく判断で異常とみなされた場合、「注意」にはならず「警告」に相当するものと判断される。
また、呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定における、2)平均値に基づく判断では、体温に基づく判断と同様に、上述した対象者の帯幅情報が算出されるだけの呼吸数の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、帯幅情報が設定される前の段階における基準が設定可能となっている。更に、対象者の呼吸数の平均値が算出されるだけの呼吸数の値の情報の蓄積がないタイミング、即ち、呼吸数の平均値が設定される前の段階における基準も設定可能である。
上記の場合、基本的な構成は体温に基づく判断と同様であり、決め打ちの帯幅範囲となる数値が、呼吸数の平均値を基準に上下5回/分以内または上下10回/分以内となるものである。上下5回/分以上である値については「注意」に、上下10回/分以上である値については「警告」にあたるものと判定する。
ここで、必ずしも、呼吸数の平均値を基準に5以上で「注意」、10以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
また、呼吸数の平均値が算出できるだけの呼吸数の値の情報の蓄積がない場合には、対象者の健康診断の際の呼吸数の計測値等、あらかじめ対象者の情報として取得した数値を基準に設定することができる。
ここで、必ずしも、健康診断の際の呼吸数の計測値を基準に5以上で「注意」、10以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。
呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定における、3)絶対値に基づく判断とは、バイタル値の異常の判定を行う日の計測値が24回/分以上または12回/分未満になった場合、対象者の異常と判定され、「警告」の状態とされる。この絶対値となる24回/分以上または12回/分未満の値は、通常の人間の正常時の呼吸数の範囲では、ほとんど記録しえない値であり、体調の異常と即判断しうる値である。このような場合は、第3の判断基準として「警告」に相当するものとして設定できる。なお、絶対値の数値もこれに限定されず、適宜変更して設定可能である。
以上のとおり、呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定は、1)急な変化に基づく判断、2)平均値に基づく判断、3)絶対値に基づく判断の3つの判断根拠によってなされるものとなる。また、判断根拠の種類によっては、体調の異常を「注意」または「警告」に分けて表示がなされるものとなっている。
また、呼吸数に基づくバイタル値の異常の判定は、上記の3つの判断根拠のいずれか1つでも「警告」に該当する場合に、異常とみなして表示または通知する構成となっている。また、「注意」に該当する場合があっても、その他の判断根拠で「警告」の判定がでなければ、情報管理部2の表示部12の呼吸数の項目に「注意」の表示がなされるだけの構成となっている。
(15)体重に基づくバイタル値の異常の判定
体重に基づくバイタル値の異常の判定は、その他のバイタル情報と異なり、毎日の定期的な計測が行われないケースが多い。例えば、体重計測を行うのは1か月に1回といった頻度でなされることが多い。そこで、体重に基づくバイタル値の異常の判定は以下のように行う。
まず、対象者の初期の体重の情報として、健康診断の際に計測した体重が初期体重情報として個人情報データベース13に記録されている。そして、月に1回の体重計測の情報が日付の情報と共にバイタル情報データベース15に記録される。
ここで、体重に基づくバイタル値の異常の判定については、体重の値の変位の大きさにより行う。変位の大きさに基づく異常は、前回の計測値からの変位が上下0.5kg以上の場合には「注意」、変位が上下1.0kg以上の場合には「警告」とみなされるようにする。なお、注意または警告と判定された場合の通知はこれまでと同様である。
例えば、対象者がバイタル異常判定部1を用いて体重を最初に計測した際には、その計測値は初期体重情報の値からの変位で判定がなされる。また、それ以降の体重の計測値については、前回の体重の計測値を基準にバイタル値の異常の判定がなされるものとなる。
ここで、必ずしも、前日の計測値からの変位の値が0.5kg以上で「注意」、変位の値が1.0kg以上で「警告」と判定される内容に限定される必要はない。これらの数値と判定内容の表示は適宜設定を変更できるものである。但し、0.5kgや1.0kgの変位は体重の変位の値としては大きく、また、段階的な評価としての基準としやすい数値であるため、判定基準として採用している。
(16)尿量に基づくバイタル値の異常の判定
尿量に基づくバイタル値の異常の判定では、計測した尿量(mL/kg/時)の値と、設定した絶対値によって行う。通常、健康な状態での尿量は0.5〜1.0mL/kg/時とされる。
ここで、尿量が0.5mL/kg/時未満の場合には、異常な状態と判定し、「警告」に当たる状態として記録や通知がなされるものとする。また、尿の排出がない無尿の状態でも異常と判定し、「警告」に当たる状態として記録や通知がなされるものとする。
(17)意識状態に基づくバイタル値の異常の判定
意識状態に基づくバイタル値の異常の判定では、対象者に対して介護者等の観察によって判定を行う。例えば、開眼の状態や、会話した際の言語の状態、呼びかけに対して応答する動作や、痛みへの反応の動作等を観察して判定を行う。これらに対して、異常が認められる場合には、判定者が入力を行い、バイタル情報データベース15に異常と記録する。この結果、意識状態について「警告」に当たる状態として記録や通知がなされるものとする。
続いて、バイタル異常判定部における異常の通知の仕方におけるその他の構成について説明する。
上述した内容では、各種バイタル情報の数値に基づき注意や警告といった表示内容にて判定した異常を示す構成となっていたが、必ずしも、1種類のバイタル情報に基づいて判定がなされる必要はない。
例えば、バイタル情報のうち、体温の情報と、それ以外のバイタル情報を組み合わせて、最低2つのバイタル情報で異常と判定された場合に、医師のチェックを促す「警告」を出す仕組みが考えられる。例として、体温と酸素飽和度、体温と脈拍、体温と脈圧、体温と血圧、体温と血糖値、体温と呼吸数及び体温と体重といった組み合わせである。
体温は簡易に計測できるだけでなく、対象者の日々の体調の変化を如実に示す指標の1つであり、体温を正確かつ適切に捉えることで体調の異常を判定することが可能である。そのため、バイタル情報のうち、体温の情報をベースに、その他のバイタル情報を組み合わせて判定を行うことで、より精度の高いバイタル値の異常の判定が可能となる。また、最低2つのバイタル情報の組み合わせであるため、より複数の種類のバイタル情報を組み合わせた判定であってもよい。
また、異常を判定した際の「注意」または「警告」の出し方についても、以下のような内容が採用しうる。
例えば、バイタル情報の体重に基づくバイタル値の異常の判定について述べたが、体重は月1回の計測が基本となるため、毎日計測するような他のバイタル情報に比べて、変位の大きさが大きい際には警戒レベルを上げる必要がある。一例として、前回の計測からの変位が1.5kg以上の場合には、「警告」ではなく、更にその上の「要診断」等、警戒レベルを上げた異常の通知を行う態様が考えられる。
また、対象者の現病歴や既往歴等の健康基礎情報を元に、特に注視すべきバイタル情報の種類を特定することも可能である。そして、特定したバイタル情報で「警告」が出た場合には、その他のバイタル情報の判定結果が「注意」であったとしても、警戒レベルを上げて、他のバイタル情報の値の「注意」を促す態様が考えられる。
例えば、酸素飽和度を注視すべきバイタル情報として特定した場合で、バイタル値の計測で「警告」と判定され、その他のバイタル情報が「注意」であったとする。その場合、他のバイタル情報の表示において、通常時よりも対象者が健康にリスクを抱えている可能性がある旨を表示したり、「注意」を「要注意」等、表示の変更をしたりする設定にしてもよい。
また、複数のバイタル情報での「注意」の数が一定数を超えた際に警戒レベルを上げる構成であってもよい。例えば、複数のバイタル情報の判定において、「警告」の判定がない場合でも、「注意」の数が3つ以上あった場合には、通常時よりも対象者が健康にリスクを抱えている可能性がある旨を表示したり、「注意」を「要注意」等、表示の変更をしたりする設定にしてもよい。更に、バイタル情報ごとの判定では「警告」はないが、その対象者のバイタル情報の計測値を総合したバイタル値の異常の判定として、注意の数の多さによる「警告」を表示または通知する構成としてもよい。
このように本発明を構成するバイタル異常判定部の判定においては、1種類のバイタル情報の判定だけでなく、複数のバイタル情報を組み合わせて複合的に評価する構成や、異常の判定において、より細分化した判定の表示や通知を行う構成が考えられる。これにより、より精度の高いバイタル値の異常の判定が可能となり、装置の使い勝手も向上するものとなる。
また、本発明を構成するバイタル異常判定部では、複数の対象者について判定結果の健康状態に基づき分類して表示することができる。例えば、その日の判定結果で、警告が出たグループ、注意が出たグループ、警告も注意もない健全な状態のグループに分けて、リスクの高い順にソートする構成とすることができる。また、その場合、警告や注意の数、バイタル情報の種類による優先順位付けを行ってソートすることも可能である。このような内容とすることで、大人数を対象としても、健康リスクの高い人を容易に確認しうるものとなる。
[病気の特定の一連の流れ]
以下、本発明を適用した病気診断装置の一例である病気診断装置39を用いた病気の特定の一連の流れを説明する。以下で記載する内容は、上述した本発明の構成を用いたものである。
最初に、対象者個人の氏名、年齢等も含めて、病気診断装置39の個人情報データベース13に対象者の個人情報を入力する。この際、個人情報データベース13には、健康基礎情報43として、対象者が受けた健康診断の結果の情報と、基礎疾患、既往歴、喫煙歴、服薬歴等の情報や、生活習慣の情報、自覚症状及び他覚症状の有無の情報も入力されるものとする。
対象者の情報が記録されると、病態警戒レベル処理部101が健康基礎情報43の内容である既往歴、疾病、血液検査及び生活習慣の情報に基づき、病態別に警戒レベルの設定を行う。警戒レベルが「高」と記録された病態に関しては、その病態に関する病理因子に関連するバイタル情報における「注意」と、健康観察情報の「異常」の有無がチェックされる。
また、対象者の各種のバイタル情報をバイタル計測部2で計測し、バイタル情報データベース15に記録される。記録されたバイタル情報のうち、体温、酸素飽和度、血圧、脈拍及び呼吸数は、測定後に自動的にバイタル情報データベース15に自動送信される構成となっている。また、医師の指示があった対象者については、更に、尿量、血糖値及意識レベルが入力され、記録されるものとなる。
また、対象者に対する問診、観察を行った結果の情報と、介護記録の結果の情報が、健康観察情報データベース16に入力される。
そして、入力されたバイタル情報については、バイタル異常判定部1がチェックを行い、「正常」、「注意」及び「警告」の判定がなされて記録される。また、健康観察情報16については、対象者の観察者が、問診、観察及び介護記録の結果を確認して、「正常」または「異常」の判定を行い、項目別健康観察判定情報として入力し、記録される。
上述した日々のバイタル情報及び健康観察情報の取得と、健康基礎情報の内容に基づき、以下の条件を満たす際に、病気判定部42が、対象者が所定の条件を満たしたものと判定する。そして、対象者のバイタル情報を元に、対象者を3つの候補病態群に分類した上で、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析を開始する。
(1)バイタル情報で「警告」の判定がされる異常値が確認されたとき。
(2)複数のバイタル情報の中で一定数を超える「注意」の判定がされる異常値が確認されたとき。
(3)所定のバイタル情報の組み合わせにおいて「注意」の判定がされる異常値が確認されたとき。
(4)複数のバイタル情報を組み合わせて算出した数値が所定の条件を満たしたとき。
(5)項目別健康観察判定情報で「異常」の判定が記録されたとき。
(6)健康基礎情報に基づき、警戒レベルが「高」に設定された病気の確認項目のバイタル情報の「注意」や、健康観察情報の「異常」が記録されたとき。
また、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析が開始される際、病気判定部42は、判定する対象となる複数の病気について、以下のような内容で、解析対象の絞り込みを行う。
(1)対象者の健康基礎情報の中の既往歴の情報または生活習慣の情報に基づき、複数の病気のうち対象者がかかりやすい病気へと絞り込む。
(2)バイタル情報の「注意」または「警告」と判定された内容と、項目別健康観察判定情報で異常と判定された根拠となる健康観察情報の内容との組み合わせから、複数の病気のうち対象者がかかりやすい病気へと絞り込む。
(3)「注意」または「警告」と判定されたバイタル情報の内容が、確認項目の内容の条件を満たす病気へと絞り込む。
(4)項目別健康観察判定情報で異常と判定された根拠となる健康観察情報の内容が、確認項目の内容の条件を満たす病気へと絞り込む。
病気判定部42は、上記の内容で解析対象の絞り込みを行い、該当する病気の全てについて高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析を行う。
続いて、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析の具体例を説明する。
図4に示すように、病気診断装置39は、対象者のバイタル情報69及び問診結果等の健康観察情報70を元に病理診断を行っていくものである。また、特定の病気の警戒レベルの設定時には、健康基礎情報43が参照される。
[肺炎の診断の事例]
以下では、病気診断装置39を用いて、高齢者の肺炎の診断を行う流れを記載する。ここでは、既に対象者に関するバイタル情報の異常等に基づき、対象者に関する情報が所定の条件を満たし、肺炎に関する病気解析フロー情報に基づく解析が行われるものとする。
図5は、病気解析フロー情報に基づく肺炎の診断の流れを示す概略図である。
本例では、まず、対象者の健康基礎情報43に悪性腫瘍因子(I)58と、高齢者因子(男性75歳以上)(A)59が記録されている。この状況により、2つの因子と関連性のある病気である「肺炎」の警戒レベルが「高」に設定されるものとなる。また、肺炎の確認項目のバイタル情報の「注意」や、健康観察情報の「異常」が記録されたことで、肺炎の病気解析フロー情報に基づく解析が開始される。
肺炎の病気解析フロー情報では、対象者の「体重が2kg減少60」というバイタル値の異常に基づき、病気判定部42による病気解析フロー情報の確認項目の確認が進む。ステップ1にて「低栄養と脱水71」のどちらが体重減少の要因であるかという確認項目が設定されている。また、この確認項目に対して、「低栄養」であるか否か確認するために、「接種カロリーは正常か?」という確認項目が設定される。病気判定部42は、この点を健康観察情報データベース16に記録された介護記録46の「食事量」の情報から確認する。介護記録46の「食事量」の項目について観察者が「正常」としていた場合、「接種カロリーは正常62」と判定され、体重減少の要因として「脱水の可能性72」が疑われ、更なる確認項目の確認に進む。
なお、上述した内容では、介護記録46に既に記録された情報を元に確認項目の確認がなされたが、この点は、固有問診情報として対象者に確認される構成であってもよい。また、確認項目の判定のための情報が不足している場合には、必要な情報を固有問診情報と求める旨のメッセージを表示部12に表示する構成であってもよい。以下の内容でも同様に、健康観察情報と固有問診情報は相互に利用可能なものとなっている。
病気判定部42は、更に肺炎の確認項目の確認を進める。上記の内容で「脱水の可能性72」が疑われたため、その点を明確にするために、図5のステップ2またはステップ3に示す流れで解析を行う。
ステップ2では、確認項目として「炎症の有無74」が設定されている。この炎症の有無は、対象者の体温の情報から判定する。病気判定部42は、バイタル情報データベース15に記録された体温のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日平熱を基準に、その日の体温の値と前日平熱との差が前日帯幅の上限側の範囲を超えてバイタル異常判定部が「警告」を出すか、または、前日の体温からの変位が0.5℃以上上昇しておりバイタル異常判定部が「注意」または「警告」を出していた場合に、病気判定部42が「体温の上昇73」があるものと判定する。そして、確認項目の「炎症の有無74」で炎症が有りとして、次の確認項目に進む。なお、ここでの体温の上昇の判定は、現実には起こりにくいが、体温が40℃を超える絶対値を記録した場合に、体温の上昇が有るものと判定されるものであってもよい。
ステップ2では、更に、確認項目として「発熱していて汗をかいていない76」が設定されている。この汗をかいているか否かという点は、肺炎に関する固有問診情報に対する対象者の回答の情報から判定する。病気判定部42は、固有問診情報に対する回答で「汗をかいていない75」との情報を確認した場合、確認項目の「発熱していて汗をかいていない76」の条件を満たすものと判定する。そして、「脱水の可能性が高い77」と判定し、対象者が「脱水因子(D)61」を備えるものとして更に解析を進めていく。
また、肺炎の解析では、ステップ2の方向の解析フローとは別に、ステップ3の内容で解析フローが進むものであってもよい。
ステップ3では、確認項目として「循環血液量が低下している可能性79」が設定されている。この循環血液量の低下の有無は、対象者の脈圧(血圧差)の情報から判定する。病気判定部42は、対象者の脈圧のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日の脈圧平均値を基準に、その日の脈圧の値と前日の脈圧平均値との差が前日帯幅の範囲の下限側を下回りバイタル異常判定部が「警告」を出すか、または、前日の脈圧からの変位が下側に10以上となりバイタル異常判定部が「注意」または「警告」を出していた場合に、病気判定部42が「血液循環量の低下78」があるものと判定する。そして、確認項目の「循環血液量が低下している可能性79」で可能性有りとして、次の確認項目に進む。
ステップ3では、更に、確認項目として「脱水による血圧低下81」が設定されている。この脱水による血圧低下の有無は、対象者の最高血圧(または最低血圧)の情報80から判定する。病気判定部42は、対象者の最高血圧のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日の最高血圧平均値を基準に、その日の最高血圧の値と前日の最高血圧平均値との差が前日帯幅の範囲の下限側を下回りバイタル異常判定部が「警告」を出すか、または、前日の最高血圧からの変位が下側に20以上となりバイタル異常判定部が「注意」または「警告」を出していた場合に、病気判定部42が「脱水による血圧低下81」があるものと判定する。そして、「脱水の可能性が高い82」と判定し、対象者が「脱水因子(D)61」を備えるものとして更に解析を進めていく。
このように、肺炎の確認項目の「脱水因子(D)61」は、ステップ2またはステップ3のいずれかで解析が進んで条件が満たされれば、更なる解析が行われるものとなっている。一方、両方のステップで確認項目の条件を満たさない結果となった場合、肺炎であるとの病気の特定ができず、肺炎との結果は表示されないものとなる。なお、設定により、ステップ2及びステップ3の両方の解析フローが進んだ場合にのみ「脱水因子(D)61」ありとの判定がなされる構成も採用しうるものである。
続いて、病気判定部42は更に「肺炎の可能性に関する各項目のチェック83」へと解析を進める。「肺炎の可能性に関する各項目のチェック83」として、ステップ4及びステップ5で示す確認項目の確認を行う。
ステップ4では、確認項目として「意識レベルの反応が悪い85」が設定されている。この意識レベルの反応の良し悪しは、対象者の介護記録46の「意識レベル」の情報から確認する。介護記録46の「意識レベル」の項目について観察者が「異常(反応が悪い)84」としていた場合、「意識レベルの反応が悪い85」と判定される。そして、確認項目としての「意識レベルの低下の因子(O)63」を備えるものと判定する。
ステップ5では、確認項目として「酸素濃度における異常の有無87」が設定されている。この酸素濃度における異常の有無は、対象者の酸素飽和度の情報から判定する。病気判定部42は、対象者の酸素飽和度のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日の酸素飽和度からの変位が2%以上となりバイタル異常判定部が「注意」または「警告」を出していた場合に、病気判定部42が「酸素濃度における異常86」があるものと判定する。そして、確認項目としての「酸素濃度異常の因子(R)64」を備えるものと判定する。
ここまでの流れにおいて、本例の対象者はステップ4及びステップ5の最後の確認項目の内容の条件を満たしたことから、肺炎の病気解析フロー情報に沿った解析で最後まで行き着いたものとなる。この結果、病気判定部42は、対象者が「肺炎」であると最終的な判定を行い、その結果を表示部12に表示するものとなる。
また、肺炎であるとの結果は、個人情報データベース15に記録されるものとなる。更に、対象者の熱型表に表示される情報となる。
また、病気診断装置39の使用者は、病気情報辞書データベース56を利用して、肺炎に関するより詳細な情報を得ることができる。更に、肺炎の結果の検定を行うことができる。
病気診断装置39では、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析が最後まで行き着くことで、その病気であるとの判定を行う構成が基本となっている。しかしながら、「肺炎」においては、他の病気とは異なり、病気の特定を行うために必要な病理因子の情報が整備されているため、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析だけでなく、病気の特定を行う構成が採用しうる。
より詳細には、一定数の病理因子の条件を満たしていれば、肺炎であると特定する構成も採用しうる。上述した肺炎の内容で、例えば、対象者の健康基礎情報43に悪性腫瘍因子(I)58と、高齢者因子(男性75歳以上)(A)59が記録され、既に2つの因子を備えているとする。そして、高齢者向け病気解析フロー情報に沿った解析で、脱水因子(D)61も備えている部分まで確認できた場合には、肺炎の病理因子の3つが揃ったことになるので、この結果をもって、病気判定部42が肺炎であるとの判定を行うものとすることができる。
[重症度分類]
更に、肺炎については、重症度判定情報が診断対象病理情報51に含まれており、病気の特定だけでなく、その重症度の分類も行うことが可能である。肺炎の重症度の分類については、対象者のバイタル情報、問診情報等、健康基礎情報が、重症度分類のための各項目に合致するか否かを病気判定部42がチェックする。
肺炎の重症度分類を行うための項目としては次のようなものがある。
(1)背景として、年齢が一定以上である(男性70歳以上または女性75歳以上)、対象者が医療及び介護を受けられる施設の入居者である。
(2)合併症として、悪性腫瘍、肝疾患、うっ血性新不全、脳血管障害または腎疾患を患っている。
(3)身体所見として、意識レベルの変化が見られる、呼吸数が30/分以上である、収縮期血圧90mmHg未満である、体温が35℃未満または40℃以上である、脈拍数が125/分以上である。
対象者のバイタル情報、問診情報等、健康基礎情報や、重症度分類の項目を確認する問診の結果の情報から、上述した項目を確認し、その内容の合致度に応じて、「軽症」または「重症」の程度や、危険度を数値で表したレベル、または、「外来」、「通院」等の対処すべき内容の表示をもってその重症度を提示するものとなっている。
以上のように、病気診断装置では、バイタル情報の異常の検知をきっかけに、バイタル異常に関連する病理因子と、その病理因子に関わる疾病の有無を判定できるものとなっている。
[心不全の診断の事例]
以下では、病気診断装置39を用いて、高齢者の心不全の診断を行う流れを記載する。ここでは、既に対象者に関するバイタル情報の異常等に基づき、対象者に関する情報が所定の条件を満たし、心不全に関する病気解析フロー情報に基づく解析が行われるものとする。
図6は、病気解析フロー情報に基づく心不全の診断の流れを示す概略図である。
本例では、まず、対象者の健康基礎情報43に心不全後遺症の因子65が記録されている。この状況により、この因子と関連性のある病気である「心不全」の警戒レベルが「高」に設定されるものとなる。また、心不全の確認項目のバイタル情報の「注意」や、健康観察情報の「異常」が記録されたことで、心不全の病気解析フロー情報に基づく解析が開始される。
心不全の病気解析フロー情報では、対象者の「体重が2kg増66」というバイタル値の異常に基づき、病気判定部42による病気解析フロー情報の確認項目の確認が進む。ステップ1にて「食事摂取と水分量89」のどちらが体重増加の要因であるかという確認項目が設定されている。また、この確認項目に対して、「食事摂取」が要因であるか否かを確認するために、「接種カロリーは正常か?」という確認項目が設定される。病気判定部42は、この点を健康観察情報データベース16に記録された介護記録46の「食事量」の情報から確認する。介護記録46の「食事量」の項目について観察者が「正常」としていた場合、「接種カロリーは正常88」と判定され、体重増加の要因として「水分量による体重増加」の可能性があると判定する。そして、更なる確認項目として「心不全か?90」が設定される。
病気判定部42は、更に心不全の確認項目の確認を進める。次に、図6のステップ2またはステップ3に示す流れで解析を行う。
ステップ2では、確認項目として「むくみの有無92」が設定されている。このむくみの有無は、対象者の観察情報45または介護記録46の「むくみ」の情報から確認する。観察情報45または介護記録46の「むくみ」の項目について観察者が「異常(むくみあり)」としていた場合、「むくみあり91」と判定される。そして、次の確認項目に進む。
ステップ2では次に、むくみの原因として肺水腫が生じている可能性を疑い、「肺水腫が炎症と心不全93」のどちらが肺水腫の要因であるかという確認項目が設定されている。また、この確認項目に対して、「炎症」が生じているか否か確認するために、「体温上昇の異常が無いか?」という確認項目が設定される。病気判定部42は、体温のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日平熱を基準に、その日の体温の値と前日平熱との差が前日帯幅の範囲内に含まれているか、または、前日の体温からの高温側の変位が0.5℃以内である(または低温側への変位)場合に、病気判定部42が「体温上昇の異常はない94」ものと判定する。そして、この判定の結果、肺水腫が、「炎症が要因ではなく、心不全により生じた可能性が高い95」として、「心不全の因子67」を備えるものと判定する。
また、心不全の解析では、ステップ2の方向の解析フローとは別に、ステップ3の内容で解析フローが進むものであってもよい。
ステップ3では、確認項目として「循環血液量が低下している可能性97」が設定されている。この循環血液量の低下の有無は、対象者の血圧または脈圧(血圧差)の情報から判定する。病気判定部42は、対象者の血圧または脈圧のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日の最高血圧(または脈圧)平均値を基準に、その日の最高血圧(または脈圧)の値と前日の最高血圧(または脈圧)平均値との差が前日帯幅の範囲の下限側を下回りバイタル異常判定部が「警告」を出すか、または、前日の最高血圧からの変位が下側に10以上となりバイタル異常判定部が「注意」または「警告」を出していた場合に、病気判定部42が「血圧(または脈圧)の低下96」があるものと判定する。そして、確認項目の「循環血液量が低下している可能性97」で可能性有りとして、次の確認項目に進む。
ステップ3では次に、確認項目として「心臓の機能の低下の可能性100」が設定されている。この心臓の機能の低下の可能性は、対象者の酸素飽和度の情報98から判定する。病気判定部42は、対象者の酸素飽和度のバイタル値でこの点を確認する。対象者の前日の酸素飽和度からの変位が2%以上低下となりバイタル異常判定部が「注意」または「警告」を出していた場合に、病気判定部42が「酸素飽和度の低下99」があるものと判定する。そして、この判定の結果、「心臓の機能の低下の可能性100」有りとして、「心不全の因子67」を備えるものと判定する。
ここまでの流れにおいて、本例の対象者はステップ2及びステップ3の最後の確認項目の内容の条件を満たしたことから、肺炎の病気解析フロー情報に沿った解析で最後まで行き着いたものとなる。この結果、病気判定部42は、対象者が「心不全」であると最終的な判定を行い、その結果を表示部12に表示するものとなる。
また、心不全であるとの結果は、個人情報データベース15に記録されるものとなる。更に、対象者の熱型表に表示される情報となる。
また、病気診断装置39の使用者は、病気情報辞書データベース56を利用して、心不全に関するより詳細な情報を得ることができる。更に、心不全の結果の検定を行うことができる。
[候補病態群からの病気の予測]
以下は、本発明の病気診断装置39で使用が考慮される更なるバリエーションの使用例であり、対象者が細菌感染症である可能性を提示する事例である。
対象者はバイタル値の計測において、バイタル異常判定部1が次のような内容でバイタル値の異常を示した。
(1)最高血圧及び最低血圧のバイタル平均値が140/80mmHgであるのに対し、計測したバイタル値が110/50mmHgであった。
(2)脈拍のバイタル平均値が60/分であるのに対し、計測したバイタル値が100/分であった。
(3)体温のバイタル平均値が36.6℃であるのに対し、計測したバイタル値が37.6℃であった。
また、対象者は健康観察情報データベース16に記録された問診情報44の結果で「元気がない」と記録され、観察情報45の結果で「食欲の低下」が記録されているものとする。
上記のように、対象者は血圧、脈拍及び体温においてバイタル値の異常と判定され、かつ、問診結果や観察結果において異常が確認されたが、上述した一連の流れで、特定の病気であるとの判定がされなかったものとする。
病気判定部42は、続いて、脈拍及び体温のキーワードから、細菌感染症の可能性を提示するための次の式1を抽出して、その数値の確認を行う。
Δ心拍数(現在の心拍数−心拍数のバイタル平均値)/Δ体温(現在の体温−体温のバイタル平均値)・・・(式1)
そして、上記の式1において算出された数値が20より大きい場合には、細菌感染症の可能性が疑われるため、対象者が「細菌感染症の可能性あり」と表示する。また、本結果は、表示部12に表示され、個人情報データベース13にも記録される。
以下は、対象者がカテコラミンリリースに基づく病態を有する可能性を提示する事例である。
対象者はバイタル値の計測において、脈圧が収縮期血圧(最高血圧)の50%以上の脈圧となり、脈圧のバイタル値の異常を示すと共に、尿量が0.5mL/kg/時未満になり、乏尿の結果を示す。
この際、病気判定部42は、カテコラミンリリースに基づく病態である呼吸不全、心不全、低血糖、発熱の判定を開始するが、特定の病気であるとの判定ができなかったとする。病気判定部42は、判定はしないものの、カテコラミンリリースに基づく呼吸不全、心不全、低血糖、発熱である可能性があるとして提示する。
また、病態鑑別フローチャートデータベース49を起動して、病状確認問診に沿って対象者に問診を行うことで、カテコラミンリリースに基づく病態の中でも、候補となる病態を予測することが可能となる。
また、カテコラミンリリースに基づく呼吸不全、心不全、低血糖、発熱については、病気情報辞書データベース56を利用して、より詳細な情報を得ることができる。
[病状の診断]
以下は、問診結果や観察結果、介護記録の異常は見られないが、バイタル値の異常が確認された場合の事例である。
対象者の健康基礎情報43には、既往歴に脳梗塞の記録がある。また、バイタル値の血圧において、計測したバイタル値が180/110mmHGであり、バイタル値の異常を示した。一方、問診結果や観察結果には異常がなく、特定の疾病であるとの判定が出なかったものとする。
このような場合、病気判定部42は、ラクナ梗塞などの小さな脳梗塞のリスクがあるため、対象者の症状診断として、小さな脳梗塞を生じる可能性がある旨を提示する。
また、次の事例では、対象者の健康基礎情報43には、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)の基礎疾患が記録されている。また、バイタル値の体温において、計測したバイタル値が37.8℃であり、バイタル値の異常を示した。一方、問診結果や観察結果には異常がなく、特定の疾病であるとの判定が出なかったものとする。
このような場合、病気判定部42は、慢性呼吸不全の増悪や、肺炎発症のリスクがあるため、対象者の症状診断として、慢性呼吸不全の増悪や肺炎を生じる可能性がある旨を提示する。
また、高齢者向け病態鑑別フローチャートデータベース49を起動して、病状確認問診に沿って対象者に問診を行うことで、候補となる病態を予測することが可能となる。
また、上述した可能性のある疾病についても、病気情報辞書データベース56を利用して、より詳細な情報を得ることができる。
以下は、バイタル値の異常はみられないが、問診等において、対象者が不調を訴えているケースの事例である。
例えば、バイタル値には異常が見られないが、問診で「胸が痛い」と訴えている場合には、高齢者向け病態鑑別フローチャートデータベース49を起動して、病状確認問診に沿って対象者に問診を行うことで、候補となる病態を予測することが可能となる。
上記の場合、所定の問診として、「異常がありますか?」の問いに「はい」、「どこが異常ですか?」の問いに「心臓」、「どんな症状ですか?」の問いに「胸が痛い」と回答したものとする。病態鑑別フローチャートデータベース49を起動して、問診を進めると、心臓疾患(心筋梗塞、大動脈解離)、肺疾患(肺塞栓症、気胸)、消火器疾患(胃潰瘍)等の病態を提示することが可能となる。また、これらの病態について、病気情報辞書データベース56を利用して、より詳細な情報を得ることができるものとなっている。
以下、本発明を適用した病気診断装置の内容の更なる活用事例について説明する。
本発明を適用した病気診断装置は、病院に導入された電子カルテと連動させる態様が考えられる。電子カルテには、設置された病院の患者の情報が記録されているため、上述した情報管理部3で管理する情報と連動させることで、対象者のより詳細な基礎疾患の状況、既往歴、服薬記録、経過観察の情報等を利用可能となる。
また、更に、医師による診断の経過の情報も確認可能となるため、診断精度の向上や、診断支援ツールとしての使い勝手が良くなるものとなる。また、病院での診断結果や検査の結果を対象者の情報に追加して記録していくことで、個人の情報量が増え、より精度の高い判定やバイタル異常の検知につながるものとなる。また、診断支援ツールとしても、より有用性の高いものとなる。
また、本発明を適用した病気診断装置と、遠隔画像診断のシステムを組み合わせる態様も考えられる。例えば、病気診断装置にカメラ等の画像情報の取得が可能な機器を接続し、対象者の画像情報を病院側に送信して遠隔診断することも可能である。また、その際に、対象者の熱型表の情報も病院側の端末等に送信することで、対象者のバイタル値の異常等を確認しながら、遠隔地から医師が診断することが可能となる。
また、本発明を適用した病気診断装置は、使用者のレベルに合わせた複数の運用版のバリエーションが考えられる。例えば、上述したような電子カルテと連動した態様であれば、病院における医師の診断時の診断支援ツールとなる。ここで、診断装置で管理する情報は、病院での日々の診断の情報が蓄積されていくため、医師の診断レベルの引き上げにも寄与するものとなる。
また、病院において、本装置の機能を備えるタブレット端末等を特定の看護師に持たせることで、看護師が医師の代わりに診断を行うことも可能となる。更にはタブレット端末を持った看護師が、在宅や施設に入居した高齢者を訪問看護する際にも役立つものとなる。
また、介護施設等の職員が使用するものについては、入居者に特化した情報を蓄積することで、特定の対象者に対する診断レベルを向上させることが可能となる。
[医師、看護師の教育ソフトウェア]
また、本発明の病気診断装置は、医療従事者の教育用ツールとして使用することもできる。実際の対象者におけるバイタル情報や、健康観察情報及び健康基礎情報と、その対象者における病態の有無が記録されている。また、病態鑑別フローチャートデータベースや、病気情報辞書データベースを有している。そのため、これらの情報に基づき、設問と回答を組み合わせた教育用ソフトウェアを作成することが可能である。また、教育用ソフトウェアを使用する複数の医療従事者の点数を記録して、順位付けして、医師や看護師の評価表を作成することもできる。
更に、今後は国による医療の大規模データベースの構築が進むため、このデータベースに蓄積される医療ビッグデータと、本発明を適用した病気診断装置を連動させる態様も考えられる。医療ビッグデータにおいては情報量が膨大であることは勿論のこと、記録された情報の解析により、特定の疾病の症状や病理因子の情報も明確化されるため、診断対象となる疾病の広範囲化や、診断精度の大幅な向上を見込めるものとなる。
[看護師が薬を処方する際の参考ツール]
また、看護師が薬を処方する際の参考ツールとしても使用が考えられる。例えば、対象者の個人情報データベースに対象者の服薬履歴の情報を記録していく。これにより、「どのような症状の時にどのような薬が処方されたか」というデータが蓄積され、服薬の際に薬剤師が参考情報として活用できる。また、薬の種類によっては、薬剤師を介さずに服薬する用途にも展開できる。薬剤士による服薬履歴の確認作業も容易に行うことができる。
[服薬管理と配送サービス]
更には、服薬履歴の情報を記録と配送サービスを連動させることで、対象者が定期的に必要とする薬剤が、必要な時期に自動的に手元に届くようにすることもできる。
[職場や学校での健康診断データとのリンク]
本発明の病気診断装置は、職場や学校での定期的な健康診断の情報を記録して活用することも考えられる。なお、この際には、バイタル情報や健康観察情報等の取得期間が空くため、注意や警告、異常の判定は適宜設定するものとなる。これにより、対象者の健康管理に役立つものとなる。また、膨大な臨床データを取得する手段にもなる。更には、公的機関が実施する健康診断の情報とリンクさせることで、対象者の包括的な健康管理が可能となる。
[遠隔地における現地での健康管理]
本発明の病気診断装置は、遠隔地における現地での健康管理にも利用できる。例えば、海外出張中の当該国や、遠洋漁業に出た船舶、自衛隊の海外派遣先等に本発明の病気診断装置を設置する。これにより、医療レベルの低い国や、医療設備の存在しない場所においても、対象者の健康管理が可能となる。また、上述したような遠隔診断と組み合わせることで、医師による診断も行うことができる。
[地域別疾病発生状況確認]
本発明の病気診断装置は、地域別疾病発生状況の情報とリンクさせることで、地域医療の予防医療に貢献しうるものとなる。例えば、インフルエンザの流行に関する情報とリンクさせることで、病気診断装置を使用する地域での予防対策に繋げることができる。また、流行地域での対象者の情報が臨床データとして活用できるものとなる。
[空気環境の検知]
更には、空気環境の検知機構と本発明の病気診断装置を組み合わせることもできる。空気環境の検知機構により、ホルムアルデヒドやPM2.5の濃度を検知して、その濃度から、地域の空気汚染度などを判定し、装置使用者に注意喚起を促す構成にできる。また、行政サービスと連動させ、対象地域住民への注意喚起や、環境改善のための情報取得ツールとしても活用できるものとなる。
[介護記録ソフトウェア及び介護請求ソフトウェア]
本発明を適用した病気診断装置は、介護記録ソフトウェアや介護請求ソフトウェアと連動させる態様が考えられる。介護記録ソフトウェアに入力される介護記録の情報を情報管理部で管理することで、「どのような症状の時にどのような介護が適切か」というデータを蓄積する。これにより介護士の技能レベルに左右されず、介護対象者に対して均一なサービスを提供できるものとなる。介護記録ソフトウェアとの連動における更なる別の態様は後述する。
介護請求ソフトウェアと連動させた場合には、介護費用の算出等の支援ツールとして使用することができる。これにより提供した介護内容に対して発生する費用を容易に確認できるものとなり、業務効率の向上につなげることができる。
[介護職員の健康チェック]
本発明を適用した病気診断装置は、介護する側の介護職員の健康状態のチェックに活用することもできる。介護職員自身のバイタル情報を測定し、病気診断装置に送信することで健康管理を行う。これにより介護現場の労働環境の改善につなげることができる。
[見守り機能]
また、介護施設や一人暮らしの高齢者用の見守りシステムと連動させた場合には、バイタル値の異常が判定された際や、対象者の動作に異常が見られた場合に、見守り対象者(例えば、家族等)に通知が行く構成が考えられる。例えば、家の中に人感センサーを設置して、トイレの中で住人が一定時間動かない時は、警備会社や家族に自動でアラートが行くようにする。その際には、見守り対象者のバイタル情報や健康観察情報の記録をデータで同時に送信する構成とすることもできる。
[ダイエット、体調管理]
本発明を適用した病気診断装置は、使用者のダイエットや体調管理をサポートする装置としても活用しうる。例えば、バイタル情報と、食事の摂取カロリーの情報に基づき、減量のためのアドバイスが表示される構成が採用しうる。また、トレーニングジム等の施設と提携し、複数の減量プログラムを提供することも可能である。
[ウェアラブルコンピュータの活用]
また、本発明の病気診断装置の構成の一部として、ウェアラブルコンピュータを採用することもできる。日々のバイタル情報をリアルタイムで受信し、それに対する本装置の病態解析の結果や、医師の診断情報を蓄積することで、本装置の利便性や正確性の向上に資するものとなる。
[アプリケーションソフトウェアの活用]
また、本発明の病気診断装置の機能をアプリケーションソフトウェアとして提供し、携帯端末やタブレット端末で使用可能とする構成も考えられる。これにより手軽に本装置の機能を利用できるものとなり、利便性を向上させることができる。また、本装置の普及率の向上に寄与し、より広範な臨床データの取得にもつなげることができる。
[買い物支援ソフトウェア]
本発明の病気診断装置に記録された情報を、インターネット上の商品販売ウェブサイトや、商品購入を支援するソフトウェアと連動させることも考えられる。使用者の健康状態に合わせた食品や健康器具等をお勧めしてくれる機能を付与することで、商品購入時の参考情報が得られるものとなる。
[動物の健康管理]
本発明の病気診断装置は動物を対象に使用することも考慮される。人間のみならず、ペット、動物園の動物の健康管理や野生動物の保護にも寄与しうるものとなる。また、
動物の臨床データや診断情報を蓄積することで、医学的、学術的に有用な情報が得られるものとなる。
[車両への設置]
本発明の病気診断装置を車両に設置する態様が採用できる。例えば、運転手の座席にバイタル計測器(例えば、体温計、脈拍計、呼吸数センサー等)を設置しておき、運転手の体調不良が疑われる場合には、注意喚起を促すものとする。また、アルコール検知器と組み合わせて、飲酒運転のチェックを行う構成とすることもできる。
[レジャー施設遊具に乗車前の健康チェック]
本発明の病気診断装置は、レジャー施設の遊具に乗車する前の健康チェックにも活用できる。例えば、遊具の種類によっては、一律に「65歳以上は乗車禁止」となっている場合がある。しかし、実際には65歳以上で健康な人は多く存在し、単に年齢による線引きではなく、実際の健康状態を把握した上で乗車の可否を判断することができるものとなる。
[入国管理(感染症対策)]
本発明の病気診断装置は入国管理に利用することが考えられる。例えば、空港等の施設の座席や、飛行機の座席に本装置を設けることで、座席に座った人の感染症の有無等を確認することができる。これにより感染症等を有する入国者の流入を水際で阻止することができる。
[病院や介護施設の情報の提供]
本発明の病気診断装置は、病院や介護施設の情報とリンクさせることができる。病院や介護施設の情報とは、例えば、病態ごとの患者の受け入れ数、専門医の内容とその数、施設で行う介護内容等の情報である。病気診断装置の使用者の病態に適した病院や介護施設を自動的に判別する機能や、病態ごとに適した病院等を順位化する機能を付与することが考えられる。
以下には更に、本発明の病気診断装置と、介護記録ソフトウェアとの連動について説明する。
まず、現状、介護スタッフは現場での作業に追われるため、作業時に介護記録の記載を行うことが難しいものとなっている。そのため、介護記録の作成は、介護スタッフが事務所等事務に戻り、作業や状況を思い出しながら作成されることが多くなっている。また、記載すべき内容も1時間刻みで多岐に渡り、複雑な内容となっている。
この介護記録の作成時には、介護スタッフは、数時間前の記憶に頼って内容を作成するため、記載漏れや記載ミスが発生することがある。また、介護記録の作成に、数十分から1時間以上の時間を要し、介護スタッフの残業の原因になっている。
また、介護施設では、複数人の介護スタッフが交代で作業を行うことが一般的である。そして、同一の介護対象者に対する介護内容の記録について、ある介護スタッフが記録したものを、別の介護スタッフが転記して新たに作成を行うといったケースも存在する。
この作業により、より一層、介護記録作成に多大な時間が使われることが現状となっている。また、複数の介護記録をそれぞれ確認しなければ介護記録の把握ができないため、情報共有の方法として、非常に非効率的なものとなっていた。
そこで、介護記録の作成の効率向上と、介護記録の情報共有の容易化を図るため、本発明を適用した病気診断装置の介護記録の管理や入力については、以下のような構成を採用することが考えられる。
まず、介護記録の情報入力を紙媒体への記載やパソコン端末へのキーボード入力でなく、画面へのタッチパネルで入力可能な構成とする。これにより、キーボード入力作業が苦手な介護スタッフでも容易に介護記録を作成することができる。この場合には、既存のタッチパネル入力が可能なタブレット端末等を採用して構成することができる。
介護事業の分野では、IT(情報技術)の活用が遅れている現状があり、パソコン端末の操作が苦手な介護スタッフが多いことが指摘されている。そのため、装置の操作が容易であることが重要であり、タッチパネル機能を用い、ボタンをアイコンに置き換える等して、視覚的に構成を簡略化することで作業効率を高めることができる。
また、介護記録の入力箇所を病気診断装置と連動した端末で行うことで、情報を記録する箇所を集約することが可能となる。また、介護日誌や介護記録をわざわざ転機する必要がなく、一度入力されたデータを援用し、記録の作成や確認が行えるものとなる。これにより、ヒューマンエラーを抑止しうるものとなる。
また、介護記録のデータと、介護対象者(即ち、病態診断の対象者)のデータを別々に管理する構成とする。つまり、介護スタッフが使用する介護記録に関連する情報は、上述したような介護対象者の個人情報データベースに記録されたバイタル情報、健康観察情報及び健康基礎情報のデータとは別に管理する構成とする。また、両方の管理データは、デジタルデータとして管理し、病気診断装置と連動した端末で、相互のデータを同時に表示できるようにする。例えば「体重増加」という介護対象者のバイタルデータに対し、その状況把握のために、摂取水分や摂取カロリー、排便などの介護記録のデータをすぐに表示できるものとする。
また、介護スタッフによる介護対象者のバイタル情報の測定結果は、病気診断装置と連動した端末に自動送信され、同結果が自動的に入力されるものとしておく。これにより、作業効率が高まり、入力ミスを抑止することができる。例えば、電子カルテ用に市販化されたバイタルデータを管理する健康管理端末を活用して、データを自動入力、ボタン一つで各記録表に自動反映できるようにすることができる。
また、介護記録のデータ及び介護対象者のデータをデジタルデータによるデータベース化し、表計算ソフトウェアや熱型表などのグラフ化がしやすいようにする。
また、介護記録のデータと、介護対象者のデータは暗号化して、インターネットで情報を送信可能な構成とする。これにより、介護施設等に病気診断装置が設置された際に、医療機関との間で容易に情報を共有することが可能となる。
また、例えば、上記のような構成とすることで、臨床データを介護施設や病院で取得し、その情報を大学等の情報解析を行う機関に容易に送信することができるものとなる。これにより、本発明の病気診断装置で管理するデータの有効性や効果性を、医学統計学を使って立証する体制に寄与するものとなる。
更には、病気診断装置を構成するハードとして、専用機ではなく、市販のパソコン端末やタブレット端末、汎用的なバイタル測定機器を用いることができるものとする。また、介護スタッフや看護師、介護対象者を識別するために、既知の非接触型ICカードを使用する。これにより、本装置の製造費用を低価格に抑え、導入しやすいものにできる。
以下では、上述した構成の使用の具体例を記載する。
本発明の病気診断装置を扱う介護スタッフは、自らの非接触型ICカードをカードリーダーに読み込ませてログインする。また、介護スタッフが担当する対象者の非接触型ICカードをリーダーに読み込ませ、介護を行う対象者を選択する。
介護スタッフが対象者を選択すると、介護内容や対象者の介護記録に関するデータが項目化されて表示される。介護担当者は介護記録の項目にタッチ(選択)すると、入力がタッチパネルにより可能となる。
介護スタッフは、介護記録をタッチパネルによるアイコン、定型文章による入力、または必要に応じ自動音声変換によるメモにより入力を行う。また、介護スタッフが対象者のバイタル情報を知りたければ、バイタルデータの項目をタッチ(選択)すると、対象者のバイタル情報が表示される。
このように介護記録のデータ及び介護対象者のデータは、相互に必要に応じて項目をタッチし、表示することが出来るものとなっている。対象者から測定したバイタル情報は、自動データ送信機能を持つ市販の体温計や血圧計等によって、バイタル情報を自動で取り込むことができる。また、介護記録は、介護日誌や申し送りの連絡帳、個人別のケース記録等の各種記録を連動させ、自動的に作成するものとなる。
以上のような構成により、介護記録については以下の効果が得られるものとなる。
まず、介護内容の漏れや、介護記録の入力ミス、転記ミスを減らすことができる。また、作業時間が最も多いといわれる介護記録、バイタル情報測定の作業効率化になる。また、介護日誌や介護記録等、同じ内容を異なる記録媒体へ転機する手間を省くことができる。
また、複数の介護スタッフが、リアルタイムでバイタル情報や介護記録を情報共有することができる。更に、医療機関との間で情報共有が容易になる。また、デジタルデータとして管理し、データの可視化が容易になる。また、デジタルデータによる一元管理により介護事業者の事務管理の負担を減らすことができる。
以上のように、本発明の病気診断装置は、対象者の個人差を考慮したバイタルサインや、日々の体調、既往歴を反映して、精度の高い病気診断を可能とし、高齢者医療の質の向上に寄与すると共に、医師の診断の支援ツールとしても機能するものとなっている。