JP2017127856A - 無機化合物分散用剤、スラリー組成物、セラミックグリーンシート、導電ペーストおよび塗工シート - Google Patents

無機化合物分散用剤、スラリー組成物、セラミックグリーンシート、導電ペーストおよび塗工シート Download PDF

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Abstract

【課題】無機化合物スラリーの分散性に優れ、又、スラリー組成物の保存安定性に優れ、該スラリー組成物を用いて得られるセラミックグリーンシートが圧着時の接着性に優れ、且つ、デラミネーションが生じにくく、該スラリー組成物を用いて得られる導電ペーストを任意のセラミックグリーンシートに塗工して得られる塗工シートが圧着時の接着性に優れ、且つ、デラミネーションが生じにくい無機化合物分散用剤の提供。
【解決手段】分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、特定の一般式(1)で示される有機化合物(B)および有機溶剤(C)を含み、酸価が5mgKOH/g以下である無機化合物分散用剤。
Figure 2017127856

【選択図】なし

Description

本発明は、無機化合物を分散させることで、分散性、保存安定性に優れたスラリー組成物を作製することができる無機化合物分散用剤、および該スラリー組成物に関する。また、セラミックスラリーとして用いてセラミックグリーンシートを作製した場合において、圧着時の接着性に優れ、圧着時の寸法変化も少なく、且つ、デラミネーションが生じにくいセラミックグリーンシートを作製することができるスラリー組成物、および該セラミックグリーンシートに関する。さらに、任意のセラミックグリーンシートに塗工して、塗工シートを作製した場合において、圧着時の接着性に優れ、且つ、デラミネーションが生じにくい塗工シートを作製することができる導電ペースト、及び該塗工シートに関する。また、任意の導電ペーストをセラミックグリーンシートに塗工して、塗工シートを作製した場合において、圧着時の接着性に優れ、且つ、デラミネーションが生じにくい塗工シートを作製することができるセラミックグリーンシート、及び該塗工シートに関する。
ポリビニルアセタールは、強靭なフィルムが得られること、親水性のヒドロキシ基と疎水性のアセタール基を併せ持つユニークな構造であることなどから、種々のポリマーが提案されている。
中でも、ポリビニルブチラールは、セラミック成形用のバインダー、各種バインダーやフィルム等として広く用いられている。
セラミック成形用のバインダーは、例えば、積層セラミックコンデンサやICチップの回路基板を製造する過程において、好適に使用される。積層セラミックコンデンサやICチップの回路基板は、セラミックグリーンシートに電極層を形成し、これを積み重ねて仮圧着し、本圧着をした後、電極とセラミックとを同時に焼成する方法などによって製造される。
セラミック成形用のバインダーに要求される性能としては、分散性や保存安定性に優れたセラミックスラリーが得られること、焼成後に炭素残渣の量が少ないこと、熱圧着時の接着性に優れていることなどが挙げられる。セラミックスラリーの分散性や保存安定性が不十分である場合、得られるセラミックグリーンシートの密度、平滑性等が不十分になり、セラミックグリーンシート間の接着性が悪化することがある。焼成後のセラミック成形品中において炭素残渣の量が多い場合、セラミック成形品の電気特性等が不十分になることがある。
また、ポリビニルアセタールは、積層セラミックコンデンサ等の製造に用いられる導電ペースト用のバインダーとしても用いられている。この電極層の形成工程には、セラミックグリーンシートに電極層を印刷する方法により直接形成する方法と、電極層を印刷等によりキャリアフィルム上に形成し、キャリアフィルムからセラミックグリーンシートに電極層を熱プレスにより転写する場合がある。
積層セラミックコンデンサとは、酸化チタンやチタン酸バリウムなどの誘電体と内部電極とを多層に積み重ねたチップタイプのセラミックコンデンサである。このような積層セラミックコンデンサは、例えばセラミックグリーンシートの表面に内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を得た後、該積層体を加熱してバインダーを分解除去(脱脂)し、焼成することで製造できる。
近年、電子機器の多機能化や小型化に伴い、積層セラミックコンデンサには大容量化、小型化が求められている。セラミックグリーンシートの薄膜化や積層セラミックコンデンサの層をさらに多層化することにより、これらの要求に対応する試みがなされている。例えば、薄膜化の方法として、セラミックグリーンシートに用いられるセラミック粉体としては、0.5μm以下の微細な粒子径のものが用いられ、5μm以下のような薄膜状で、剥離性の支持体上に塗工する試みがなされている。
しかしながら、薄膜化のために微細な粒子径のセラミック粉体を用いると、セラミック粉体の充填密度や表面積が増加するため、使用するバインダーの樹脂量が増加し、これに伴って、セラミックグリーンシート用スラリー組成物の粘度も増大することから、塗工が困難となったり、セラミック粉体自体の分散不良が発生したりすることがあった。また、スラリーとしたときの保存安定性やセラミックグリーンシートの寸法安定性についても十分でない場合がある。さらに、積層セラミックコンデンサの多層化に伴いセラミックグリーンシートの薄膜を多層に積層するため、脱脂時に樹脂の分解が一気に進むと上述と同様にデラミネーションと呼ばれる層間剥離を生じ、部品の信頼性が低下してしまうことがある。
積層セラミックコンデンサの小型化には限界があり、積層セラミックコンデンサを大容量化、もしくは容量を保ったまま小型化するためには、セラミックグリーンシートの薄層化に加え、多層化も求められている。積層セラミックコンデンサは、セラミックグリーンシート上に電極層を形成し、電極層が形成されたセラミックグリーンシートや電極層が形成されていないセラミックグリーンシートを積層して、複合積層体とすることで得られる。
しかし、積層セラミックコンデンサを作製する際に、セラミックグリーンシートを仮圧着する工程において、圧着を強くするとセラミックグリーンシートや電極層に変形が生じ、積層セラミック部品に求められている高精度化が困難であった。一方で、圧着を弱くすると、従来の製造方法では、セラミックグリーンシート同士もしくはセラミックグリーンシートと電極層の接着力が弱く、上下のセラミックグリーンシートあるいはセラミックグリーンシートと電極層が密着しないことがあった。このような密着不良が発生してしまうと、接着面の位置ずれによる切断不良、セラミック積層体を焼成した後にデラミネーション等の欠陥が生じ、部品の信頼性が低下してしまう問題があった。また、接着性を向上させるために過剰の可塑剤を配合すると、圧着時に変形し、所望の積層シートが得られ難いという問題点があった。
また、電極層の形成工程には、セラミックグリーンシートに電極層を印刷する方法により直接形成する方法と、電極層を印刷等によりキャリアフィルム上に形成し、キャリアフィルムからセラミックグリーンシートに電極層を熱プレスにより転写する場合がある。
キャリアフィルムからセラミックグリーンシートに電極層をプレスし、転写する工程においても、圧着を強くすると電極層に変形が生じ、積層セラミック部品に求められている高精度化が実現できない。一方、圧着を弱くすると、従来の製造方法では、セラミックグリーンシートと電極層の接着力が弱く、電極層とセラミックグリーンシートが密着しない。このような密着不良が発生してしまうと、電極層を形成できないばかりか、セラミック積層体を焼成した後に欠陥が生じることがあり、部品の信頼性が低下してしまう問題がある。
上記の課題を解決する試みとして、例えば特許文献1には、フタル酸系可塑剤およびグリコール系可塑剤および/またはアミノアルコール系可塑剤を含有するセラミックスラリーを用いることで、スラリーの調製作業性、熱圧着時の接着性に優れ、機械強度に優れたセラミックグリーンシートを得られることが記載されている。特許文献2には、可塑化効果が高く、適度な揮発性を含有するセラミックペーストが記載されている。
特許文献3には、セラミック粉体と有機バインダを必須成分として含む複数のセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記複数のセラミックグリーンシートのうち少なくとも一部のセラミックグリーンシートの表面に電極層を形成する工程と、前記複数のセラミックグリーンシートを積層し焼成する工程とを含む積層セラミック部品の製造方法であって、前記複数のセラミックグリーンシートを積層してなる積層体表面にオゾンによる表面処理を施した後、表面処理をした面にセラミックグリーンシートを積層する製造方法が記載されている。
特許文献4には、(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とする重合性モノマーを、ポリビニルアセタール樹脂が分散されている水性媒体に添加してポリビニルアセタール樹脂中に浸透させた後、重合させることにより得られるポリビニルアセタール・(メタ)アクリル酸エステル複合樹脂を含有する導電ペースト用バインダー樹脂が記載されている。
特開2001−106580号公報 特開2006−027990号公報 特開2003−95750号公報 特開2005−15654号公報
しかしながら、特許文献1、2には特定の可塑剤の組み合わせや、特定の可塑剤と熱可塑性樹脂の組み合わせによる組成物からなるセラミックグリーンシート、セラミックペーストが記載されているが、これらの特許文献にはセラミックグリーンシートの接着性あるいは、機械的強度の向上の記載はあるが、スラリー、ペーストの保存安定性の向上、コンデンサの品質向上においては未だ不十分な点があった。特許文献3にはセラミックグリーンシート表面にオゾンによる表面処理を施し、接着性を向上させる製造方法が記載されているが、いずれも、接着性の向上のみの記載であり、導電ペーストの保存安定性を向上することや、炭素残渣の量を少なくし、成型品の品質を向上することまでは言及していない。導電ペーストの保存安定性が不十分である場合は、セラミックグリーンシートの表面に導電ペーストを印刷する際の印刷適正が劣り、印刷表面の平滑性が悪くなり、炭素残渣の量が多い場合は、焼結体の電気特性等が不十分になったりする。特許文献4に記載の導電ペースト用バインダー樹脂を用いた導電ペーストは保存安定性が不十分であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、無機化合物の分散性に優れる無機化合物分散用剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、無機化合物分散用剤を用いてスラリー組成物を作製した場合に、該スラリー組成物が保存安定性に優れる無機化合物分散用剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、無機化合物分散用剤により得られるスラリー組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製した場合に、該セラミックグリーンシートの圧着時の接着性に優れる無機化合物分散用剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、無機化合物分散用剤により得られるスラリー組成物を用いて導電ペーストを作製し、該導電ペーストを任意のセラミックグリーンシートへ塗工して得られる塗工シートを作製した場合に、圧着時の接着性に優れる無機化合物分散用剤を提供することを目的とする。また、本発明は、無機化合物分散用剤により得られるスラリー組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製し、該セラミックグリーンシートに任意の導電ペーストを塗工して得られる塗工シートを作製した場合に、圧着時の接着性に優れる無機化合物分散用剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、セラミックグリーンシートおよび/または塗工シートを積層させ焼成体を作製した場合に、デラミネーションが生じにくいセラミックグリーンシートまたは塗工シートを提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、無機化合物分散用剤を用いて得られるセラミックグリーンシートおよび/または塗工シートを積層させた場合に、圧着時の寸法変化が起こりにくい無機化合物分散用剤を提供することを目的とする。
本発明によれば上記目的は、
[1]分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、下記一般式(1):
Figure 2017127856
(式中、R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基を表す。R2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。mは0〜5の整数を表す。)で表される有機化合物(B)および有機溶剤(C)を含有する樹脂組成物からなる無機化合物分散用剤であって、該無機化合物分散用剤の酸価が5mgKOH/g以下である無機化合物分散用剤;
[2]有機化合物(B)の酸価が5mgKOH/g以下である、[1]の無機化合物分散用剤;
[3]R1および/またはR4がそれぞれ独立して、下記一般式(2):
Figure 2017127856
(式中、R5は炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキル基を表す。R6は炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R7は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。nは0〜2の整数を表す。)で表されるエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基である、[1]または[2]の無機化合物分散用剤;
[4]バインダー樹脂(A)100質量部に対して、有機化合物(B)を1〜60質量部含有する、[1]〜[3]のいずれかの無機化合物分散用剤;
[5]バインダー樹脂(A)が、ポリビニルアセタール、エチルセルロースおよび(メタ)アクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]〜[4]のいずれかの無機化合物分散用剤;
[6]バインダー樹脂(A)がポリビニルアセタールを含み、該ポリビニルアセタールは、アセタール化度が50〜85モル%であり、ビニルエステル単量体単位の含有量が0.1〜20モル%であり、粘度平均重合度が200〜5000である、[5]の無機化合物分散用剤;
[7]無機化合物(D)および[1]〜[6]のいずれかの無機化合物分散用剤を含有するスラリー組成物;
[8]分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、下記一般式(1):
Figure 2017127856
(式中、R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基を表す。R2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。mは0〜5の整数を表す。)で表される有機化合物(B)、有機溶剤(C)および無機化合物(D)を含有する樹脂組成物からなるスラリー組成物;
[9]無機化合物(D)がセラミック粉体である、[7]または[8]のスラリー組成物;
[10]前記セラミック粉体100質量部に対して、有機溶剤(C)を2〜200質量部含有する、[9]のスラリー組成物;
[11][9]または[10]のスラリー組成物を用いて作製されたセラミックグリーンシート;
[12]セラミックグリーンシートの少なくとも片面について、飛行時間型二次イオン分析装置で二次イオン分析を行った場合に、検出されるTi+イオンの強度に対する、検出されるBa+イオンの強度の比である(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)が、20<(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)<1000を満たす、[11]のセラミックグリーンシート。
[13]無機化合物(D)が導電粉末である、[7]または[8]のスラリー組成物;
[14]前記導電粉末100質量部に対して、バインダー樹脂(A)を1〜50質量部含有する、[13]のスラリー組成物;
[15]前記導電粉末100質量部に対して、有機溶剤(C)を5〜600質量部含有する、[13]または[14]のスラリー組成物;
[16][13]から[15]のいずれかのスラリー組成物からなる導電ペースト;
[17][11]または[12]のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、導電ペーストを乾燥させた層を配置してなる塗工シート;
[18][16]の導電ペーストを乾燥させた層を、セラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に配置してなる塗工シート;
[19]少なくとも一部にプラズマ処理が施された、[11]または[12]のセラミックグリーンシート;
[20]塗工シートの表面の少なくとも一部にプラズマ処理が施された、[17]または[18]の塗工シート;
本発明によれば、無機化合物の分散性に優れる無機化合物分散用剤を提供できる。
また、本発明の無機化合物分散用剤を用いてスラリー組成物を作製した場合に、該スラリー組成物が保存安定性に優れる無機化合物分散用剤を提供できる。
また、本発明の無機化合物分散用剤により得られるスラリー組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製した場合に、該セラミックグリーンシートの圧着時の接着性に優れる無機化合物分散用剤を提供できる。
また、本発明の無機化合物分散用剤により得られるスラリー組成物を用いて導電ペーストを作製し、該導電ペーストを任意のセラミックグリーンシートへ塗工して得られる塗工シートを作製した場合に、塗工シートの圧着時の接着性に優れる無機化合物分散用剤を提供できる。また、本発明の無機化合物分散用剤により得られるセラミックグリーンシートに任意の導電ペーストを塗工して得られる塗工シートを作製した場合に、圧着時の接着性に優れる無機化合物分散用剤を提供できる。
また、本発明のセラミックグリーンシートおよび/または塗工シートを積層させ焼成体を作製した場合に、デラミネーションが生じにくいセラミックグリーンシートまたは塗工シートを提供できる。
また、本発明の別の目的によれば、本発明のセラミックグリーンシートおよび/または塗工シートを積層させた場合に、圧着時の寸法変化が起こりにくい無機化合物分散用剤を提供できる。
本発明の無機化合物分散用剤は、分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、下記一般式(1):
Figure 2017127856
(式中、R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基を表す。R2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。mは0〜5の整数を表す。)で表される有機化合物(B)および有機溶剤(C)を含む無機化合物分散用剤であって、該無機化合物分散用剤の酸価が5mgKOH/g以下である無機化合物分散用剤に関するものである。
[分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)]
分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)(以下「バインダー樹脂(A)」と略称する場合がある)としては、例えば、ポリビニルアセタール、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。中でも、無機化合物分散用剤における無機化合物の分散性、並びにセラミックグリーンシートや塗工シートの柔軟性および接着性の点でポリビニルアセタール、エチルセルロース、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
バインダー樹脂(A)の酸価は、3mgKOH/g以下であることが好ましく、2mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、0.8mgKOH/g以下であることが特に好ましい。バインダー樹脂(A)の酸価が上記範囲を満たす場合には、無機化合物分散用剤を用いてスラリー組成物としたときの保存安定性に優れ、該スラリー組成物を用いてセラミックグリーンシートを作製した場合におけるデラミネーションの低減という観点から、また生産工程の腐食性を低減するという観点から好適である。
バインダー樹脂(A)として後述するポリビニルアセタールを用いる場合に、ポリビニルアセタールの酸価を3mgKOH/g以下とするためには、ポリビニルアセタールの原料であるポリビニルアルコールの水溶液に、アルデヒド類を先に添加した後に低温で触媒を添加したり、攪拌効率を高めたり、界面活性剤を使用するなどして、洗浄しやすい多孔質状のポリビニルアセタールを生成させる方法、反応後の水洗時に水溶性有機溶剤を併用する方法、エポキシ化合物などの酸と容易に反応する化合物を添加する方法、樹脂を溶剤に溶解して透析膜などを用いて精製する方法などが挙げられる。これらの中でも、工程簡略化の観点から、多孔質状のポリビニルアセタールを生成させる方法が特に好ましく、原料であるポリビニルアルコールの水溶液に、アルデヒド類を先に添加した後に低温で触媒を添加する方法が特に好適に採用される。なお、酸価の測定方法は、JIS K 6728:1977年の規定に記載の方法による。
(ポリビニルアセタール)
バインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、バインダー樹脂(A)中のポリビニルアセタールの含有量は5質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
前記ポリビニルアセタールのアセタール化度は50モル%以上であることが好ましく、55モル%以上であることがより好ましく、60モル%以上であることがさらに好ましく、65モル%以上であることが特に好ましい。また、ポリビニルアセタールのアセタール化度は85モル%以下であることが好ましく、82モル%以下であることがより好ましく、78モル%以下であることがさらに好ましく、75モル%以下であることが特に好ましい。
前記ポリビニルアセタールのビニルエステル単量体単位の含有量は0.1モル%以上であることが好ましく、0.3モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、0.7モル%以上であることが特に好ましい。前記ポリビニルアセタールのビニルエステル単量体単位の含有量は20モル%以下であることが好ましく、18モル%以下であることがより好ましく、15モル%以下であることがさらに好ましく、13モル%以下であることが特に好ましい。
前記ポリビニルアセタールのビニルアルコール単量体単位の含有量は15モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましい。前記ポリビニルアセタールのビニルアルコール単量体単位の含有量は50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることがさらに好ましい。なお、原料のPVA中のビニルアルコール単量体単位のうち、アセタール化されなかったものは、得られるポリビニルアセタール中において、ビニルアルコール単量体単位として残存する。
前記ポリビニルアセタール中の、アセタール化された単量体単位、ビニルエステル単量体単位およびビニルアルコール単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
前記ポリビニルアセタールの粘度平均重合度は200以上であることが好ましく、5000以下であることが好ましい。より好適な範囲は後述する。なお、バインダー樹脂(A)に含有されるポリビニルアセタールの粘度平均重合度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定される原料のポリビニルアルコール(以後「PVA」と略記する場合がある)の粘度平均重合度で表される。すなわち、PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](l/g)から、数式(I):
Figure 2017127856
により求めることができる。PVAの粘度平均重合度と、それをアセタール化して得られるポリビニルアセタールの粘度平均重合度とは、実質的に同じである。
(ポリビニルアセタールの製造方法)
前記ポリビニルアセタールは、通常、PVAをアセタール化することにより製造される。
原料PVAのけん化度は80モル%以上であることが好ましく、82モル%以上であることがより好ましく、85モル%以上であることがさらに好ましく、87モル%以上であることが最も好ましい。原料PVAのけん化度は99.9モル%以下であることが好ましく、99.7モル%以下であることがより好ましく、99.5モル%以下であることがさらに好ましく、99.3モル%以下であることが最も好ましい。
原料PVAのけん化度が99.9モル%を超える場合、PVAを安定に製造することができない場合がある。なお、PVAのけん化度はJIS K 6726:1994に準拠して測定される。
原料PVAは、従来公知の手法、すなわちビニルエステル系単量体を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。ビニルエステル系単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等が適宜選ばれる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解等が適用でき、この中でもメタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり最も好ましい。
前記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
また、前記ビニルエステル系単量体を重合する際、本発明の趣旨を損なわない範囲で他の単量体と共重合させることもできる。したがって、本発明におけるポリビニルアルコールは、ビニルアルコール単位と他の単量体単位で構成される重合体も含む概念である。他の単量体の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、i−ブテン等のα−オレフィン;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその酸塩または4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその酸塩または4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩、エステルまたは無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらの単量体は通常ビニルエステル系単量体に対して10モル%未満の割合で用いられる。
他の単量体単位がα−オレフィン単位である場合、その含有量は、好ましい下限が1モル%、好ましい上限が20モル%である。1モル%未満であると、上記α−オレフィンを含有する効果が不十分となり、20モル%を超えると、疎水性が強くなりすぎてセラミック粉体の分散性が低下したり、ポリビニルアルコール樹脂の溶解性が低下するため、アセタール化反応が困難になったりする。
本発明において、アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能である。例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。また、一般には、硝酸を用いた場合は、アセタール化反応の反応速度が速くなり、生産性の向上が望める一方、得られるポリビニルアセタールの粒子が粗大になりやすく、バッチ間のばらつきが大きくなる傾向があるため、特に塩酸が好ましい。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、公知の炭化水素基を有するアルデヒドが挙げられる。該炭化水素基を有するアルデヒドは、脂肪族アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド等が、脂環族アルデヒドとしては、シクロペンタンアルデヒド、メチルシクロペンタンアルデヒド、ジメチルシクロペンタンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、メチルシクロヘキサンアルデヒド、ジメチルシクロヘキサンアルデヒド、シクロヘキサンアセトアルデヒド等が、環式不飽和アルデヒドとしては、シクロペンテンアルデヒド、シクロヘキセンアルデヒド等が、芳香族あるいは不飽和結合含有アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメチルベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、クミンアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントラアルデヒド、シンナムアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレインアルデヒド、7−オクテン−1−アール等が、複素環アルデヒドとしては、フルフラールアルデヒド、メチルフルフラールアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドの中で、炭素数1〜8のアルデヒドが好ましく、炭素数4〜6のアルデヒドがより好ましく、n−ブチルアルデヒドが特に好ましく用いられる。本発明においては、アルデヒドを2種類以上併用して得られるポリビニルアセタールを使用することもできる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは、炭化水素系以外のアルデヒドも用いる事ができる。例えば、アミノ基、エステル基、カルボニル基、ビニル基から選ばれる官能基を有するアルデヒドを用いてもよい。
アミノ基を官能基として有するアルデヒドとしては、アミノアセトアルデヒド、ジメチルアミノアセトアルデヒド、ジエチルアミノアセトアルデヒド、アミノプロピオンアルデヒド、ジメチルアミノプロピオンアルデヒド、アミノブチルアルデヒド、アミノペンチルアルデヒド、アミノベンズアルデヒド、ジメチルアミノベンズアルデヒド、エチルメチルアミノベンズアルデヒド、ジエチルアミノベンズアルデヒド、ピロリジルアセトアルデヒド、ピペリジルアセトアルデヒド、ピリジルアセトアルデヒドなどが挙げられ、アミノブチルアルデヒドが生産性の観点から好ましい。
エステル基を官能基として有するアルデヒドとしては、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸エチル、ホルミル酢酸メチル、ホルミル酢酸エチル、3−ホルミルプロピオン酸メチル、3−ホルミルプロピオン酸エチル、5−ホルミルペンタン酸メチル、5−ホルミルペンタン酸エチルなどが挙げられる。
カルボニル基を官能基として有するアルデヒドとしては、グリオキシル酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、2−ホルミル酢酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、3−ホルミルプロピオン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、5−ホルミルペンタン酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、4−ホルミルフェノキシ酢酸およびその金属塩あるいはアンモニウム塩、2−カルボキシベンズアルデヒドおよびその金属塩あるいはアンモニウム塩、4−カルボキシベンズアルデヒドおよびその金属塩あるいはアンモニウム塩、2,4−ジカルボキシベンズアルデヒドおよびその金属塩あるいはアンモニウム塩などが挙げられる。
ビニル基を官能基として有するアルデヒドとしてはアクロレイン等が挙げられる。
また、本発明の特性を損なわない範囲で、複素環アルデヒド、アミド基を有するアルデヒド、水酸基を有するアルデヒド、スルホン酸基を有するアルデヒド、リン酸基を有するアルデヒド、シアノ基、ニトロ基または4級アンモニウム塩などを有するアルデヒド、ハロゲン原子を有するアルデヒドなどを使用してもよい。
(水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂)
バインダー樹脂(A)として水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂を用いる場合、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂としては水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと水酸基を有さない(メタ)アクリルモノマーとの共重合体を用いることができる。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノアクリレート等のアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート等のメタクリレートが挙げられる。中でも焼結性の面から水酸基を有するメタクリレートが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートが好ましい。
また、水酸基を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボロニルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート等のアクリレート;エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、テトラヒドロフリルメタクリレート等のメタクリレートが挙げられる。中でも焼結性の面からメタクリレートであることが好ましく、具体的には、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂中の水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有量は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有量が30質量%を超えると、焼結後の残留炭素が多くなる場合がある。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有量は1質量%以上であることが好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来するセグメントの含有量が1質量%未満であると、バインダー樹脂(A)として、ポリビニルアセタール樹脂とともに用いた場合に、ポリビニルアセタール樹脂との相溶性が悪くなることがある。
(その他)
バインダー樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。2種以上を併用する場合、ポリビニルアセタールとその他バインダー樹脂(A)との混合物などを用いることができる。ポリビニルアセタールとその他バインダー樹脂(A)を混合する場合は、例えば、ポリビニルアセタールとその他バインダー樹脂(A)の質量比は5/95以上であることが好ましく、10/90以上であることがより好ましい。また、ポリビニルアセタールとその他バインダー樹脂(A)の質量比は、95/5以下であることが好ましく、90/10以下であることがより好ましい。その他バインダー樹脂(A)としては、エチルセルロースまたは水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂が好ましく、エチルセルロースがより好ましい。ポリビニルアセタールとエチルセルロースを混合する場合は、ポリビニルアセタールとエチルセルロースの質量比は5/95以上であることが好ましく、10/90以上であることがより好ましい。また、ポリビニルアセタールとエチルセルロースの質量比は、95/5以下であることが好ましく、90/10以下であることがより好ましい。
本発明の無機化合物分散用剤において、本発明の効果を損なわない範囲内でバインダー樹脂(A)の他、分子内に水酸基を有さないバインダー樹脂を含有してもよい。分子内に水酸基を有さないバインダー樹脂を用いる場合、その割合はバインダー樹脂(A)100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、分子内に水酸基を有さないバインダー樹脂の割合は、バインダー樹脂(A)100質量部に対して80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
[有機化合物(B)]
本発明の無機化合物分散用剤では、化学式(1):
Figure 2017127856
で示される有機化合物(B)を含有する。化学式(1)中のR2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R2の炭素数は、15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。また、R2の炭素数は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。R2の炭素数が上記範囲外であると、有機化合物(B)とバインダー樹脂(A)との相溶性が悪くなり、スラリー組成物の保存安定性、セラミックグリーンシートの接着性が低下する傾向にある。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3の炭素数は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。R2およびR3は直鎖構造であってもよく、分岐を有していてもよいが、R2およびR3はそれぞれ独立して直鎖構造であることが好ましい。
mは0〜5の整数である。mは2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。mが上記範囲よりも大きくなると、有機化合物(B)の沸点が高くなり、焼成時のデラミネーションの原因となることがある。
R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基である。R1およびR4は、それぞれ独立して複数のエーテル結合を有していてもよい。R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する炭化水素基であることが好ましい。R1およびR4は異なるものであってもよく、同一であってもよい。R1およびR4はそれぞれ、化学式(2):
Figure 2017127856
で示されるエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基であることが、バインダー樹脂(A)との相溶性の観点で好ましい。
R5は、炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキル基を表す。R5の炭素数は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。R5の炭素数が上記範囲を超えると、有機化合物(B)とバインダー樹脂(A)との相溶性が悪くなり、スラリー組成物の保存安定性、セラミックグリーンシートの接着性が低下する傾向にある。R6は、炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R6の炭素数は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。R6の炭素数が上記範囲を超えると、有機化合物(B)とバインダー樹脂(A)との相溶性が悪くなり、スラリー組成物の保存安定性、セラミックグリーンシートの接着性が低下する傾向にある。R7は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R7の炭素数は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。R6およびR7はそれぞれ独立して直鎖構造であってもよく、分岐を有していてもよい。R6およびR7は直鎖構造であることが好ましい。複数のR7は同一であっても、異なっていてもよい。
nは0〜2の整数である。nは0または1が好ましく、0であることがより好ましい。nが上記範囲を超えると、有機化合物(B)の沸点が高くなり、焼成時のデラミネーションの原因となることがある。
有機化合物(B)の酸価は、5mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましく、1mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、0.5mgKOH/g以下であることが特に好ましい。上述したように、上記範囲を満たす場合には、長期保管時の粘度などの品質の安定性(保存安定性)、脱脂時の急激な分解によるデラミネーションの低減という観点から、また、生産工程の腐食性を低減するという観点から好適である。ここで、有機化合物(B)に不純物が含まれる場合には、不純物込みの酸価を測定するものとする。
有機化合物(B)の分子量は、200以上が好ましく、250以上がより好ましい。分子量が上記範囲未満であると、揮発性が高く、シート乾燥時に揮発し、十分な接着性が発現しない場合がある。また、本発明で用いられる有機化合物(B)の分子量は、500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。分子量が上記範囲より大きいと、有機化合物(B)の粘度が高くなる、あるいは固形化し、樹脂との相溶性が下がる傾向にある。
有機化合物(B)の構造としては、分子中に水酸基を含まないものが好ましい。有機化合物(B)に水酸基が含まれた場合、圧着時の界面での作用が低下する傾向に有り、十分な接着性が得られない場合がある。
有機化合物(B)としては、例えば、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−エトキシエチル)、アジピン酸ビス[2−(2−ブトキシエトキシ)エチル]、アジピン酸ビス(3−メトキシ−3−メチルブチル)、セバシン酸ビス(2−メトキシエチル)、ジグリコール酸ビス(2−メトキシエチル)などが挙げられる。中でも、スラリー組成物の保存安定性に優れ、セラミックグリーンシートの接着性に優れ、適度な強度保持という点で、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス(2−メトキシエチル)が好ましい。
有機化合物(B)の含有量は特に限定されないが、バインダー樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。有機化合物(B)の含有量が、1質量部未満となると、無機の分散性、スラリー組成物の保存安定性が悪くなる傾向にある。有機化合物(B)の含有量は、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。有機化合物(B)の含有量が、バインダー樹脂(A)100質量部に対して60質量部を超えると、スラリー組成物により得られるセラミックグリーンシートの強度が低下し、圧着時の寸法安定性が低下する傾向にある。
[有機溶剤(C)]
本発明の無機化合物分散用剤は、有機溶剤(C)を含有する。有機溶剤(C)は、その目的や用途に応じたものを適宜用いることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール等のアルコール;メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のセルソルブ;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系炭化水素、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル、メンテン、メンタン、メントン、ミルセン、α−ピネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、ペリリルアセテート、メンチルアセテート、カルビルアセテート、ジヒドロカルビルアセテート、ペリリルアルコール、ジヒドロターピネオールアセテート、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオール、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレート、ノビルアセテート、オクチルアセテート、ジメチルオクチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロカルベオール、2−エチルヘキシルグリコール、ベンジルグリコール、フェニルプロピレングリコール、メチルデカリン、アミルベンゼン、クメン、シメン、1,1−ジイソプロピルヘキサン、シトロネロール等が挙げられる。
[無機化合物分散用剤]
本願において、「無機化合物分散用剤」とは無機化合物を分散させる際に分散媒体として機能する樹脂組成物である。無機化合物分散用剤としてあらかじめ調製しておくことにより、セラミックスラリーや導電ペースト等の作製が容易になり、短時間化、設備の簡略化が可能となる。
本発明の無機化合物分散用剤に含まれるバインダー樹脂(A)の濃度は2質量%以上が好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。2質量%未満であると、スラリー作製時に組成物を濃縮する必要があり、作業性が悪くなる可能性がある。さらに、上限は50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。組成物中のバインダー樹脂(A)の濃度が50質量%よりも大きくなると、無機化合物分散用剤の粘度が著しく高くなり、保存時の粘度安定性、および取扱い時のハンドリング性が低下する虞がある。
本発明の無機化合物分散用剤の酸価は5mgKOH/g以下であり、好適には3mgKOH/g以下、さらに好適には1mgKOH/g以下である。酸価が上記範囲を満たす場合には、無機化合物分散用剤に含まれるバインダー樹脂(A)の分解(加水分解など)が起こりにくいため、スラリー組成物の長期保管時の粘度などの品質の安定性、得られるセラミックグリーンシートの脱脂時の急激な分解によるデラミネーションの低減という観点から、また、生産工程の腐食性を低減するという観点から好適である。本発明の無機化合物分散用剤の酸価を上記範囲に調節するには、あらかじめ本発明に用いる無機化合物分散用剤に含まれる有機化合物(B)の酸価を低くする、あるいはバインダー樹脂(A)の酸価を低くする方法が好適である。
[スラリー組成物]
本発明の好適な態様は、無機化合物分散用剤と無機化合物(D)からなるスラリー組成物である。具体的には、無機化合物、分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、下記一般式(1):
Figure 2017127856
(式中、R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基を表す。R2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。mは0〜5の整数を表す。)で示される有機化合物(B)および有機溶剤(C)を含むスラリー組成物である。
[無機化合物(D)]
本発明のスラリー組成物に含まれる無機化合物(D)は特に限定されないが、その目的や用途に応じて、例えば、セラミック粉体、導電粉末、ガラス粉末、蛍光体微粒子、珪素酸化物等が挙げられる。これらは単独、または2種類以上を併用して適宜用いることができる。
[セラミックスラリー]
本発明の無機化合物分散用剤はセラミック粉体の分散性に優れており、なおかつ保存安定性にも優れる。よってそれから得られるスラリー組成物をセラミックスラリーとして好適に用いることができる。このようなセラミックスラリーを成形して得られるセラミックグリーンシートは表面の平滑性に優れ、シート強度にも優れる。さらに、本セラミックグリーンシートは焼成後の炭素残渣の量が少ない。したがって、本発明のセラミックスラリーを用いれば、炭素残渣の量が少なく、高性能なセラミック成形品が得られる。セラミックスラリーの分散性、保存安定性が低下すると、セラミックグリーンシート表面が粗面化し、セラミックグリーンシートの接着性、その後の成型品、および焼成後の品質に悪影響を及ぼす虞がある。
セラミックスラリーにおいて、セラミック粉体に対するバインダー樹脂(A)の量は、セラミックグリーンシートの使用目的によって異なるが、通常、セラミック粉体100質量部に対して3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。バインダー樹脂(A)の使用量は、セラミック粉体100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。バインダー樹脂(A)の使用量が、セラミック粉体100質量部に対して3質量部未満となると、スラリーの分散性、保存安定性が悪くなる傾向にあり、さらに得られるセラミックグリーンシートの接着不良、および強度不足となる可能性がある。バインダー樹脂(A)の使用量が、セラミック粉体100質量部に対して、20質量部を超えると、セラミックグリーンシート中のセラミック粉体の密度が下がる為、最終製品となる積層セラミックコンデンサの品質低下の原因、さらに、焼結時の揮発成分の増加にともなう、デラミネーションの原因となる場合がある。
セラミックスラリーに含まれるバインダー樹脂(A)の条件は前述した通りである。
セラミックスラリーに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールのアセタール化度の好適な条件は前述した通りであるが、アセタール化度が50モル%未満であると、本発明のセラミックスラリーの保存安定性が低下する傾向にある。一方、アセタール化度が85モル%を超えると、ポリビニルアセタール中の水酸基(ビニルアルコール単量体単位)含有量が低下し、本発明のセラミックスラリーを用いて得られるセラミックグリーンシートの強度、接着性や圧着時の寸法安定性が低下する傾向にあり、さらに、得られるセラミック成形品中において炭素残渣の量が増加する傾向にある。
セラミックスラリーに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールのビニルアルコール単量体単位が前述した好適な範囲内であると、得られるセラミックグリーンシートの圧着時の寸法安定性がより優れる傾向にある。
セラミックスラリーに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールのビニルエステル単量体単位の含有量の好適な範囲は前述した通りであるが、ビニルエステル単量体単位の含有量が20モル%を超えると、前記ポリビニルアセタールを含有するセラミックスラリーの保存安定性が低下するとともに、得られるセラミック成形品中において炭素残渣の量が増加する傾向にある。さらに、シートの柔軟性が高くなり、得られるセラミックグリーンシートの強度が低下する傾向にある。
セラミックスラリーに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールの粘度平均重合度の好適な範囲は前述した通りであるが、粘度平均重合度が200に満たないと、得られるセラミックグリーンシートの強度が低下することがある。粘度平均重合度は、300以上が好ましく500以上がより好ましく、800以上がさらに好ましい。一方、粘度平均重合度が5000を超えると、セラミックグリーンシートを製造する際に調製されるセラミックスラリーの粘度が高くなりすぎ生産性が低下することがある。粘度平均重合度は、4500以下が好ましく、4000以下がより好ましく、3500以下がさらに好ましい。また、より一層圧着時のセラミックグリーンシートの寸法安定性を優れたものとする観点から、粘度平均重合度は1400以上が好ましく、1500以上がさらに好ましい。
セラミックスラリーに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、原料PVAのけん化度の好適な範囲は前述した通りであるが、原料PVAのけん化度が80モル%未満であると、ポリビニルアセタールを含有するセラミックスラリーの分散性が低下するおそれがある。
セラミックスラリーに含まれる有機化合物(B)の好適な条件は前述した通りである。
前記セラミックスラリーにおける有機化合物(B)の含有量は特に限定されないが、バインダー樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましい。有機化合物(B)の含有量が、上記範囲未満となると、セラミックスラリーの分散性、保存安定性が悪くなる傾向にあり、さらに得られるセラミックグリーンシートの接着不良の原因となる可能性がある。有機化合物(B)の含有量は、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。有機化合物(B)の含有量が、バインダー樹脂(A)100質量部に対して上記範囲を超えると、セラミックグリーンシートの強度が低下し、圧着時の寸法安定性が低下する傾向にある。
前記セラミックスラリーは、さらに有機化合物(B)以外の有機化合物を可塑剤として含有していてもよい。このような可塑剤は、本発明の効果を損なわず、なおかつバインダー樹脂(A)との相溶性に問題がなければ特に制限はない。可塑剤として、両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル、ジカルボン酸とアルコールとのジエステルなどを用いることができる。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等のトリまたはテトラエチレングリコールなどの両末端に水酸基を有するオリゴアルキレングリコールとカルボン酸とのモノまたはジエステル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルアジペート等のジカルボン酸とアルコールとのジエステルが挙げられる。
可塑剤を添加する場合、セラミックスラリー中において、バインダー樹脂(A)に対する可塑剤および有機化合物(B)の合計の質量比(可塑剤および有機化合物(B)の合計量/バインダー樹脂(A)の質量)は0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。上記質量比は2以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
セラミックスラリーに含まれる有機溶剤(C)としては、前述した有機溶剤(C)の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール等のアルコール;メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のセルソルブ;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系炭化水素、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステルなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用しても良い。中でも、ブタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、あるいはそれらの混合溶剤が揮発性、溶解性の観点から好ましい。
前記セラミックスラリーにおける有機溶剤(C)の含有量は特に限定されないが、セラミック粉体100質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが特に好ましい。有機溶剤(C)の含有量が上記範囲を下回ると、セラミックスラリーの粘度が高くなりすぎて混練性が低下する傾向にある。有機溶剤(C)の含有量は、セラミック粉体100質量部に対して、200質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることがさらに好ましい。有機溶剤(C)の含有量が、上記範囲を超えると、セラミックスラリーの粘度が低くなりすぎて、セラミックグリーンシートを形成する際のハンドリング性が悪くなる傾向にある。なお、ここでの有機溶剤(C)の含有量は、例えば無機化合物分散用剤中の有機溶剤(C)、セラミック粉体を無機化合物分散用剤と合わせるときに使用した有機溶剤(C)等由来の、スラリー中に含まれる有機溶剤(C)の合計量を表す。
セラミックスラリーに含まれるセラミック粉体としては、セラミックの製造に使用される金属または非金属の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、または硫化物等の粉末が挙げられる。その具体例として、Li、K、Mg、B、Al、Si、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Ga、In、Y、ランタノイド、アクチノイド、Ti、Zr、Hf、Bi、V、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。これらのセラミック粉体は、単独で用いても、あるいは2種類以上の混合物として用いてもよい。
前記セラミックスラリーは、本発明の趣旨に反しない限り、バインダー樹脂(A)、有機化合物(B)、有機溶剤(C)、およびセラミック粉体のほかに、必要に応じて、解膠剤、密着促進剤、分散剤、粘着付与剤、保存安定剤、消泡剤、熱分解促進剤、酸化防止剤、界面活性剤、滑剤、接着性改良剤、その他従来から公知の添加剤を含んでいてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、バインダー樹脂(A)以外の樹脂を含有していてもかまわない。
前記セラミックスラリーを作製する方法は特に限定されない。例えば、以下の方法により製造できる。セラミック粉体に所定量の有機溶剤(C)、添加剤を加え、セラミック粉体の分散液を得る。別途、有機溶剤(C)にバインダー樹脂を溶解させ、この溶液に有機化合物(B)、および必要に応じて添加剤を添加した後、攪拌して均一な無機化合物分散用剤を製造する。続いて、セラミック粉体の分散液に前述の無機化合物分散用剤を添加し、均一に分散させてセラミックスラリーを得ることができる。
あるいは、有機溶剤(C)にバインダー樹脂(A)を溶解させ、この溶液に有機化合物(B)、および必要に応じて添加剤を添加した後、攪拌して均一な無機化合物分散用剤を製造する。この無機化合物分散用剤にセラミック粉体を添加した後、均一に分散させてセラミックスラリーを得る。分散させる方法としては、ビーズミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、サンドミルなどの媒体型分散機を用いる方法、固練り法、三本ロールを用いる方法など、種々の方法を用いることができる。なお、その際に分散剤としてイオン性基を含有する分散剤を用いてもよく、カルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、リン酸基等を分子内に有するアニオン系分散剤が好適に用いられ、特に金属イオンを含有しない「マリアリム」(日油社製)のようなアニオン系分散剤が好適に用いられる。
[セラミックグリーンシート] 本発明の好適な実施態様は、前記セラミックスラリーを用いて得られるセラミックグリーンシートである。本発明のセラミックスラリーを用いることにより、圧着時の接着性に優れ、且つ、圧着時の寸法変化も少ないセラミックグリーンシートを得ることができる。また、焼成時におけるセラミックグリーンシートの積層体の急激な脱バインダーが抑制され、積層型セラミックコンデンサ作製時のデラミネーションが抑制される。
セラミックグリーンシートの少なくとも片面を、飛行時間型二次イオン分析装置で二次イオン分析(TOF−SIMS分析)を行った場合に、検出されるTi+イオンの強度に対する、検出されるBa+イオンの強度の比である(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)が、20<(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)<1000を満たすセラミックグリーンシートであることが好ましい。本発明のセラミックグリーンシートを用いることにより、圧着時の接着性に優れ、且つ、圧着時の寸法変化も少ないセラミックグリーンシートを得ることができる。また、(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)が上記の範囲であると、セラミックグリーンシートを焼成した際に、バインダー成分の積層体からの急激な焼失を抑制することができ、積層セラミックコンデンサ作製時のデラミネーションが抑制される。
(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)は20より大きいことが好ましく、100より大きいことがより好ましく、150より大きいことがさらに好ましい。また、(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)は1000より大きいことが好ましく、700より小さいことがより好ましく、500より小さいことがさらに好ましい。
セラミックグリーンシートについてTOF−SIMS分析を行うことで、二次イオンとして測定されるBa+イオン、Ti+イオンは、セラミック粉体として用いられるチタン酸バリウム中のBa原子とTi原子に由来するものである。TOF−SIMS分析を行った場合に、(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)が上記の範囲となるセラミックグリーンシートを得る方法としては、特に限定されないが、例えば、化学式(1)で示される有機化合物(B)を含み、且つ、セラミック粉体としてチタン酸バリウムを用いたセラミックスラリーを用いてセラミックグリーンシートを作製し、プラズマ処理を実施する方法があげられる。
ところで、セラミックグリーンシート中における、有機化合物(B)や、有機化合物(B)以外の有機化合物(可塑剤)の含有量を少なくすると、セラミックグリーンシートが硬くなり、圧着時の寸法安定性が向上する一方で、圧着時の接着性が低下する傾向にある。そのため、寸法安定性と接着性を両立することは、一般的には難しいものである。本発明では、(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)を上記の範囲とすることで、有機化合物(B)や、有機化合物(B)以外の有機化合物(可塑剤)の含有量を少なくした場合でも、圧着時の寸法安定性だけでなく、圧着時の接着性に優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。
本発明のセラミックグリーンシートは、各種電子部品の材料として好適に使用される。とりわけチップタイプの積層セラミックコンデンサ、およびICチップの回路基板などの材料として好適に使用される。これらは、セラミックグリーンシート上に電極を形成し、積み重ねて圧着した後、焼成することにより製造される。
セラミックグリーンシートの製造方法としては、例えば、片面離型処理を施した支持フィルム上にセラミックスラリーを塗工した後、有機溶剤(C)を乾燥させてシート状に成形する方法を挙げることができる。セラミックスラリーの塗工には、ロールコーター、ブレードコーター、ダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等を用いることができる。
セラミックグリーンシートを製造する際に用いる支持フィルムとしては、耐熱性および耐溶剤性を有し、なおかつ可撓性を有する樹脂からなるものが好ましい。支持フィルムが可撓性を有する樹脂からなることで、支持フィルム上に前記セラミックスラリーを塗工し、得られたセラミックグリーンシートが形成されたフィルムをロール状に巻回した状態で保存し、必要に応じて供給することができる。
支持フィルムを構成する樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレン等の含フッ素樹脂、ナイロン、セルロース等が挙げられる。上記支持フィルムの厚みは特に限定されず、20μm以上の厚さであることが好ましく、100μm以下の厚さであることが好ましい。また、支持フィルムの表面には離型処理が施されていることが好ましい。支持フィルムの表面に離型処理が施されていることにより、転写工程において、支持フィルムの剥離操作を容易に行うことができる。支持フィルムの好ましい具体例としては、シリコーンコートPETフィルムが挙げられる。
セラミックグリーンシートの厚さは、その使用目的によって異なるため、一概に規定することができないが、0.1μm以上であることが好ましく、300μm以下であることが好ましい。また、キャリアーフィルム上に形成された塗膜を乾燥する際の乾燥温度は、セラミックグリーンシートの厚さなどによって異なるため、これを一概に規定することはできないが、25℃以上であることが好ましく、200℃以下であることが好ましい。
[TOF−SIMS分析]
TOF−SIMS分析は、測定対象物の表面を走査して、測定対象物に含まれる成分の分布状態を観察できる測定手法である。例えば、測定対象物の表面の50〜500μm四方の領域を0.1〜3μm四方の微小な領域に区切って一次イオンを照射し、この微小な領域から飛び出す二次イオンを観測することにより、各微小な領域中の成分の種類の同定および二次イオンの強度を測定することができる。この微小な領域を一次イオン照射点という。Ti+イオンの強度に対するBa+イオンの強度の比である(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)は、Ba+の強度を、Ti+二次イオンの強度で除した値である。
セラミックグリーンシートの表面についてプラズマ処理を施した場合は、プラズマ照射後の保存状態によっては、セラミックグリーンシートの表面状態は変化する可能性があるため、TOF−SIMS分析による表面測定は、プラズマ照射後、速やかに行うことが好ましい。プラズマ照射後からTOF−SIMS分析による表面測定までの時間は、12時間以内であることが好ましく、3時間以内であることがより好ましく、1時間以内であることがさらに好ましく、プラズマ照射直後に表面測定を行うことが最も好ましい。塗工後のシートの分析の場合は、塗工面のセラミックグリーンシートの部分の表面分析を行う。
また、TOF−SIMS分析による測定中に、セラミックグリーンシートの表面の成分が揮発することを抑制するため、例えば、−100℃〜−200℃に冷却したうえで、真空下で、TOF−SIMS分析を実施することが好ましい。
[導電ペースト]
本発明のスラリー組成物は、導電ペーストとしても好適に用いられる。本発明の導電ペーストは、バインダー樹脂(A)、一般式(1)で示される有機化合物(B)、有機溶剤(C)および無機化合物(D)として導電粉末を含む。
本発明の無機化合物分散用剤は導電粉末の分散性に優れており、なおかつ保存安定性にも優れる。よってそれから得られるスラリー組成物を導電ペーストとして好適に用いることができる。このようにして得られる導電ペーストは、導電粉末の分散性に優れており、保存安定性にも優れている。セラミックグリーンシート表面に印刷する際の印刷適正に優れて、印刷表面が平滑になる。前記導電ペーストを用いることにより、炭素残渣の量が少なく、さらにデラミネーションの少ない焼結体が得られる。導電ペーストの保存安定性が低下すると、所望の印刷厚みにならなかったり、印刷後の表面が荒れ、焼結体の電気特性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
前記導電ペーストにおけるバインダー樹脂(A)の含有量は特に限定されないが、導電粉末100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。バインダー樹脂の含有量が、上記範囲未満である場合、導電ペーストを印刷したときの成膜性が不十分となるおそれがある。バインダー樹脂の含有量は、50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。一方、バインダー樹脂(A)の含有量が、上記範囲を超える場合、得られる焼結体中の炭素残渣の量が多くなるおそれがある。
導電ペーストに含まれるバインダー樹脂(A)の条件は前述した通りである。
導電ペースト用のバインダー樹脂(A)には、ポリビニルアセタールが含まれることが好ましい。導電ペースト用のバインダー樹脂(A)中のポリビニルアセタールの含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
導電ペーストに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールのアセタール化度の好適な条件は前述した通りであるが、アセタール化度が50モル%未満であると、前記ポリビニルアセタールを含有する導電ペーストの保存安定性が低下する傾向にある。一方、アセタール化度が85モル%を超えると、アセタール化反応の効率が著しく低下し、生産性が著しく悪化し、商業性に欠ける傾向にある。さらに、導電ペーストを加熱した後の炭素残渣の量が多くなり、得られる焼結体の電気特性等が不十分になる傾向にある。
導電ペーストに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールのビニルエステル単量体単位の含有量の好適な範囲は前述した通りであるが、ビニルエステル単量体単位の含有量が20モル%を超える場合には、前記ポリビニルアセタールを含有する導電ペーストの保存安定性が低下する傾向にある。
導電ペーストに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、ポリビニルアセタールの粘度平均重合度の好適な範囲は前述した通り200以上が好ましい。粘度平均重合度は、250以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましく、350以上であることが特に好ましい。粘度平均重合度が上記範囲未満である場合、導電ペーストを塗工して形成した塗膜の強度が低下し、表面にクラックが発生する傾向にある。一方、粘度平均重合度は、5000以下であることが好ましく、4500以下であることがより好ましく、4000以下であることがさらに好ましく、3500以下であることが特に好ましく、2500以下であることが最も好ましい。粘度平均重合度が上記範囲を超える場合、導電ペーストの粘度が高くなりすぎて印刷適正が低下する傾向にある。
導電ペーストに含まれるバインダー樹脂(A)としてポリビニルアセタールが含まれる場合、原料PVAのけん化度の好適な範囲は前述した通りであるが、原料PVAのけん化度が80モル%未満であると、導電ペーストにおける導電粉末の分散性が低下するおそれがある。また、ポリビニルアセタールを含有する導電ペーストの保存安定性が低下するおそれがある。
導電ペーストに含まれる有機化合物(B)の好適な条件は前述した通りである。
前記導電ペーストにおける有機化合物(B)の含有量は特に限定されないが、バインダー樹脂100質量部に対して1質量部以上であることが好ましい。バインダー樹脂100質量部に対して1質量部未満となると、接着性が低下する傾向となる。有機化合物(B)の含有量が、バインダー樹脂100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。有機化合物(B)の含有量が50質量部を超えると、圧着時の寸法安定性が低下する傾向にある。
前記導電ペーストは有機化合物(B)以外の有機化合物を可塑剤として含有していてもよい。このような可塑剤は、本発明の効果を損なわず、なおかつバインダー樹脂(A)との相溶性に問題がなければ特に制限はない。可塑剤としては、セラミックスラリーにおいて用いられる可塑剤として例示したものが挙げられる。
導電ペーストに含まれる有機溶剤(C)としては、バインダー樹脂(A)を溶解し得るものであれば特に限定されず、例えば、メンテン、メンタン、メントン、ミルセン、α−ピネン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、ペリリルアセテート、メンチルアセテート、カルビルアセテート、ジヒドロカルビルアセテート、ペリリルアルコール、ジヒドロターピネオールアセテート、ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオール、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルプロピオネート、イソボニルアセテート、イソボニルプロピオネート、イソボニルブチレート、イソボニルイソブチレート、ノビルアセテート、オクチルアセテート、ジメチルオクチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、アセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテート、ジヒドロカルベオール、2−エチルヘキシルグリコール、ベンジルグリコール、フェニルプロピレングリコール、メチルデカリン、アミルベンゼン、クメン、シメン、1,1−ジイソプロピルヘキサン、シトロネロール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ジヒドロターピネオールアセテート、ターピネオールアセテート、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル等に代表される水酸基等の極性の高い置換基を有しないテルペン類およびそれらの水添物が好ましく、特にシートアタック性の観点から、ジヒドロターピネオールアセテートが好ましい。
前記導電ペーストにおける有機溶剤(C)の含有量は特に限定されないが、導電粉末100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。前記導電ペーストにおける有機溶剤(C)の含有量は、導電粉末100質量部に対して600質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましい。導電ペーストにおける有機溶剤(C)の含有量が上記範囲を外れると、導電ペーストの塗工性が低下したり、導電粉末を分散させることが困難となったりすることがある。なお、ここでの有機溶剤(C)の含有量は、例えば、無機化合物分散用剤中の有機溶剤(C)、導電粉末を無機化合物分散用剤と合わせるときに使用した有機溶剤(C)等由来の、ペースト中に含まれる有機溶剤(C)の合計量を表す。
導電ペーストに含まれる導電粉末としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀等の導電性の高い金属の粉末の他、これら金属の合金の粉末、こられらの酸化物等が使用される。また、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等との吸着特性が良好で酸化されやすい銅や鉄等の金属も好適に用いることができる。これらの導電粉末は、単独、または2種類以上を組み合わせて用いてもかまわない。
前記導電ペーストは、本発明の趣旨に反しない限り、バインダー樹脂(A)、有機化合物(B)、有機溶剤(C)および導電粉末、のほかに、必要に応じて、セラミックスラリーの説明で例示した公知の添加剤や、バインダー樹脂(A)以外の樹脂を含有していてもよい。
前記導電ペーストは、例えば、以下の方法により製造できる。有機溶剤(C)にバインダー樹脂を溶解させ、この溶液に有機化合物(B)、および必要に応じて添加剤を添加した後、攪拌して均一な無機化合物分散用剤を製造する。この無機化合物分散用剤に導電粉末および必要に応じて添加剤を添加した後、均一に分散させて導電ペーストを得る。分散させる方法としては、ブレンダーミル、ビーズミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、サンドミルなどの媒体型分散機を用いる方法、固練り法、三本ロールを用いる方法など、種々の方法を用いることができる。なお、その際に分散剤としてイオン性基を含有する分散剤を用いてもよく、カルボン酸基、マレイン酸基、スルホン酸基、リン酸基等を分子内に有するアニオン系分散剤が好適に用いられ、特に金属イオンを含有しない「マリアリム」(日油社製)のようなアニオン系分散剤が好適に用いられる。
[塗工シート]
本発明の好適な実施態様は、上述した本発明のセラミックグリーンシートの表面に導電ペーストが塗工されてなる塗工シートである。該導電ペーストは、本発明のセラミックグリーンシートと組み合わせて用いる場合は、本発明の導電ペーストであってもよいし、それ以外の一般的に用いられる導電ペーストであってもよい。また、本発明の好適な別の実施態様は、セラミックグリーンシートの表面に本発明の導電ペーストが塗工されてなる塗工シートであってもよい。該セラミックグリーンシートは、本発明の導電ペーストと組み合わせて用いる場合は、本発明のセラミックグリーンシートであってもよいし、それ以外の一般的に用いられるセラミックグリーンシートであってもよい。
導電ペーストを塗工する方法は特に限定されず、例えば、スクリーン印刷法、ダイコート印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。導電ペーストをセラミックグリーンシートの表面に塗工することによって、セラミックグリーンシート表面の少なくとも一部に導電ペースト被膜を有する塗工シートが得られる。
[プラズマ処理]
本発明のセラミックグリーンシートは、セラミックグリーンシートの少なくとも片面の少なくとも一部にプラズマ処理が施された状態であることが好ましい。すなわち、その製造において、セラミックグリーンシートの表面または裏面の少なくとも片面にプラズマ処理を施す工程を備えることが好ましい。こうして得られたセラミックグリーンシートも本発明の好適な実施態様である。セラミックグリーンシート表面または裏面の少なくとも片面にプラズマ処理を施し、プラズマ処理された面と、他のセラミックグリーンシートの表面とが接するように積層する。こうして得られた積層体は、表面にプラズマ処理を施さなかったセラミックグリーンシートを用いて積層体を作製した場合と比べて、良好な接着性を有する。
また、本発明の塗工シートは、塗工シート表面の少なくとも片面の少なくとも一部にプラズマ処理が施された状態のものが好ましい。すなわち、その製造において、塗工シート表面の少なくとも片面にプラズマ処理を施す工程を備えることが好ましい。塗工シートの表面の少なくとも片面の少なくとも一部にプラズマ処理が施されていればよく、導電ペーストを塗工する前のセラミックグリーンシートにプラズマ処理を施す方法や、セラミックグリーンシートに導電ペーストを塗工した後の塗工シートにプラズマ処理を施す方法のいずれの方法によっても得ることができる。
塗工シートにおいて導電ペーストが塗工された面にプラズマ処理を施し、プラズマ処理された面と、他の塗工シートの片面とが接するように積層する。こうして得られた積層体は、表面にプラズマ処理が施されていない塗工シートを用いて積層体を作製した場合と比べて、良好な接着性を示す。
プラズマ処理を施す面は、導電ペーストが塗工された面(導電ペースト面)でもよいし、塗工シートの裏面(セラミックグリーンシート面)でもよいし、塗工シートの表裏面でもよい。複数枚の塗工シートを積み重ねて積層セラミックコンデンサを製造する場合、導電ペースト面にプラズマ処理を施し、この面と他の塗工シートにおけるセラミックグリーンシート面とが接するように積層することができる。こうして得られる積層体は良好な接着性を示す。
また、セラミックグリーンシート面にプラズマ処理を施し、この面と他の塗工シートにおける導電ペースト面とが接するように積層することができる。こうして得られる積層体も良好な接着性を示す。この場合の塗工シートとしては、本発明のセラミックグリーンシートの表面に一般的に用いられる導電ペーストが塗工されてなる塗工シート、または、本発明のセラミックグリーンシートの表面に本発明の導電ペーストが塗工されてなる塗工シートが好適に用いられる。さらに、塗工シートの表面または裏面にプラズマ処理を施し、これらのプラズマ処理が施された面と他の塗工シートにおけるセラミックグリーンシート面または導電ペースト面とが接するように積層する。こうして得られる積層体も良好な接着性を示す。
また、セラミックグリーンシートにおいてプラズマ処理を施し、プラズマ処理された面に、導電ペーストを塗工してもよい。プラズマ処理が施され、且つ、導電ペーストが塗工された面と、他の塗工シートの片面とが接するように積層する。こうして得られた積層体は、表面にプラズマ処理を施さなかった塗工シートを用いて積層体を作製した場合と比べて、良好な接着性を示す。この場合の塗工シートとしては、本発明のセラミックグリーンシートの表面に一般的に用いられる導電ペーストが塗工されてなる塗工シート、または本発明のセラミックグリーンシートの表面に本発明の導電ペーストが塗工されてなる塗工シートが好適に用いられる。
本発明で用いられるプラズマ処理の方法は特に限定されないが、例えば、低圧プラズマ、高圧プラズマ、コロナ放電処理、大気圧プラズマなどの処理等が挙げられる。処理方法は、本発明の性質を損なわない限り、適当な処理方法を用いることができるが、低圧プラズマは真空状態で施す必要があり、インラインでの製造が難しい。コロナ処理は高エネルギーになる為、表面形状の変化や、処理面が不意均一になる事がある。一方で、大気圧プラズマ処理は真空状態で施す必要がなく、またエネルギーも高低選択できる。生産性、性能の観点から処理方法としては大気圧プラズマが特に好ましい。
大気圧プラズマ処理には、種々の大気圧プラズマ装置を用いることができる。例えば、誘電体で覆われた電極間に大気圧近傍の圧力の不活性気体を通じつつ間欠放電を行うことにより低温プラズマを発生させることができる装置等が好ましく、いずれの装置も用いることができ、使用目的等に応じて種々の変型例を選択できる。本発明における「大気圧プラズマ」における「大気圧近傍の圧力」とは、70kPa以上130kPa以下の範囲を指し、好ましくは90kPa以上110kPa以下の範囲である。大気圧プラズマ処理を行う際の温度と湿度は特に制限されず、適宜変更することが可能であるが、常温、常湿で大気圧プラズマ処理を行うことが好ましい。
大気圧プラズマの生成時に用いられる放電ガスとしては、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、ヘリウム、およびアルゴンのいずれかのガス、またはこれらの2種以上の混合ガスを利用することができる。不活性気体であるHeおよびAr等の希ガス、あるいは窒素ガスを用いることが好ましく、ArまたはHeの希ガスが特に好ましい。例えば、窒素ガスと空気の混合ガスを用いる場合は、窒素ガスを流速10L/分以上で、500L/分以下で供給することが好ましい。また、ドライエアーを流速0.1L/分以上で、3L/分以下で供給することが好ましい。
大気圧プラズマ装置を用いてプラズマを生成するために、電極間に印加する電圧は5kv以上であることが好ましく、15kv以下であることが好ましい。電極間距離は、1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。また、電極間距離は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
例えば、プラズマ処理の対象となるセラミックグリーンシートの表面がプラズマの照射方向に垂直な状態を維持したまま、プラズマの照射方向に垂直な方向に沿ってセラミックグリーンシートを移動させることで、セラミックグリーンシートに対してプラズマ処理を行うことができる。この際のセラミックグリーンシートが照射口の直下を通過する時間は、0.1秒以上であることが好ましく、0.5秒以上でることがより好ましい。また、40秒以下であることが好ましく、20秒以下であることがより好ましい。なお、照射口の直下周辺もプラズマ雰囲気になっていてもよい。
電極間に印加する電圧、電極間距離、または、セラミックグリーンシートの移動速度が、上記の範囲外となると、(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)の値が、20未満となったり、或いは、1000より大きくなりやすくなる傾向にある。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において、「重合度」は「粘度平均重合度」を意味する。また、以下の実施例および比較例において、「セラミックグリーンシート」は支持フィルムであるポリエステルフィルムを含まない部分を意味する。
[評価方法]
(1.ポリビニルアセタールの測定)
実施例および比較例で用いるポリビニルアセタールの酢酸ビニル単量体単位の含有量(モル%)、アセタール化度(モル%)およびビニルアルコール単量体単位の含有量(モル%)はJIS K 6728:1977に準拠して測定した。ポリビニルアセタールの粘度平均重合度は、JIS K 6726:1994に準拠して測定される原料のPVAの粘度平均重合度で示した。
(2.有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価の測定)
実施例および比較例で用いる有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価はJIS K 6728:1977に準拠して測定した。より具体的には、約1gの各有機化合物又は各無機化合物分散用剤を共栓付き三角フラスコに投入し、エチルアルコール30mlを加えて溶解した。フェノールフタレインを指示薬とし、得られた溶液に対し、N/50水酸化カリウムを用いて滴定し、30秒以上微紅色を保つ点までの滴定量をa(mL)とした。これとは別に、エチルアルコール30mlに対して同様の滴定を行い、微紅色を保つ点までの滴定量をb(mL)とし、下記数式(II)により、酸価を算出した。
Figure 2017127856
(3.セラミックグリーンシート表面のTOF−SIMS分析)
測定中にセラミックグリーンシートの表面の成分が揮発することを抑制するため、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)は冷却測定を実施した。製造例で得られたセラミックグリーンシートの表面に大気圧プラズマ処理を行った後、セラミックグリーンシートを−150℃まで冷却し、その後、真空下で、直ちに飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)による分析を実施した。飛行時間型二次イオン質量分析計(TOF−SIMS)はION−TOF社製TOF−SIMS5を用いた。一次イオン源にはビスマスクラスターイオン源(Bi3++)を使用し、電流値0.2ピコアンペア、加速電圧25キロボルトとし、測定モードは高質量分解能通常モード(バンチングモード)を選択した。セラミックグリーンシートの平面(セラミックグリーンシートの最も面積の広い面のいずれか一方の面)の任意500μm×500μmを測定領域とし、該測定領域を128x128ピクセルに測定範囲を区切りイオンビームの照射モードはランダムラスターモードとして測定領域を走査し、スキャン数は64スキャンとした。測定により得られたマススペクトルからTi+イオンの強度、Ba+イオンの強度を算出し、Ti+イオンの強度に対する、Ba+イオンの強度の割合を計算した。結果を表2−1、表2−2、表3に示す。プラズマ照射後のシートの表面状態は保存状態により変化する可能性があるため、プラズマ照射後の表面分析の測定はプラズマ照射後、速やかに測定を実施した。
(4−1.セラミックスラリーの保存安定性)
実施例および比較例で用いるセラミックスラリーの保存安定性は、当該セラミックスラリーの製造直後の粘度ηと製造後1ヶ月の粘度ηとの比率によって評価した。評価基準は以下のとおりである。
評価A:0.95<η/η<1.05
評価B:0.85<η/η≦0.95 あるいは、1.05≦η/η<1.15
評価C:η/η≦0.85 あるいは、1.15≦η/η
セラミックスラリーの粘度は、回転レオメータ(TA INSTRUMENT社製;ARES G2)を用いて、以下の測定条件で測定した。
<測定条件>
FLOW SWEEPモード
shear rate:100(1/sec)
回転する円盤の直径:40mm
回転する円盤(上側):平板
回転する円盤(下側)のコーンアングル:0.02rad
Truncation gap:0.0262mm
(4−2.導電ペーストの保存安定性)
セラミックスラリーの代わりに実施例および比較例で用いる導電ペーストを用いた以外は、「4−1.セラミックスラリーの保存安定性」に記載の方法に従って保存安定性の評価を行った。
(5−1.セラミックグリーンシートの接着性評価)
下記条件で大気圧プラズマ処理された、実施例および比較例で用いるセラミックグリーンシートと、大気圧プラズマ処理されていない実施例および比較例で用いるセラミックグリーンシートとを積層して、熱プレス機を用い下記の条件で熱圧着試験を行った。このとき、大気圧プラズマ処理された面が、他のセラミックグリーンシートの大気圧プラズマ処理されていない表面に接するように積層し、積層体を得た。
<プラズマ照射>
実施例および比較例で用いるセラミックグリーンシート(ポリエステルフィルム上)を、ポリエステルフィルムと共に10cm×10cmの大きさに切断した。該セラミックグリーンシートをポリエステルフィルムから剥がした後、セラミックグリーンシートの表面に、大気圧プラズマ装置を用いて、常温、常湿にて、窒素ガスが流速150L/分、ドライ純エアーが流速0.5L/分の混合ガスを用い、電極間の電圧11kV、電極間距離2mm、サンプル(セラミックグリーンシート)移動速度10mm/秒で、セラミックグリーンシートが幅2cmの照射口の直下を通過する時間が2秒(10cm×10cmのセラミックグリーンシート全体に対して10秒)となる条件で大気圧プラズマ処理を施した。
<熱プレス条件>
プレス温度 45℃
圧力 1MPa
時間 5秒
得られた積層体を5mm×5mmに切断し、100個を任意で抽出した。任意で抽出した積層体の接着面を目視で観察し、セラミックグリーンシート同士の接着性を下記の5段階で評価した。
A:全く層間剥離が認められず、強固に接着している。
(層間剥離している積層体の個数/任意の積層体=0/100)
B:層間剥離がわずかに認められたが、強固に接着している。
(層間剥離している積層体の個数/任意の積層体=1〜10/100)
C:層間剥離が一部認められたが、接着している。
(層間剥離している積層体の個数/任意の積層体=11〜30/100)
D:層間剥離がかなり多く認められ、ほとんど接着性を示さなかった。
(層間剥離している積層体の個数/任意の積層体=31〜99/100)
E:接着性を示さなかった。
(層間剥離している積層体の個数/任意の積層体=100/100)
(5−2.塗工シートの接着性評価)
セラミックグリーンシートの代わりに実施例および比較例で用いる塗工シートを用いた以外は、「5−1.セラミックグリーンシートの接着性評価」に記載の方法に従って、接着性の評価を行った。このとき、大気圧プラズマ処理は、導電ペーストが塗工された面に行い、大気圧プラズマ処理された面が、他の塗工シートの大気圧プラズマ処理されていない面(導電ペーストが塗工されていない面)に接するように積層した。
(6−1.セラミックグリーンシートの寸法安定性評価)
実施例および比較例で用いる、乾燥(常温で1時間風乾後、熱風乾燥器にて80℃2時間、続いて120℃2時間乾燥)後の膜厚が2μmであるセラミックグリーンシートに対し、前記と同様にプラズマ処理を施した。このシートを5cm角に切断し、2枚を重ね合わせた後、45℃でプレスを行い(プレス圧:3MPa)、変形率(プレス後の面積/プレス前の面積×100)を求めた。このとき、大気圧プラズマ処理された面が、他のセラミックグリーンシートの大気圧プラズマ処理されていない表面に接するように積層した。
A:シート変形率が2%未満
B:シート変形率が2%以上4%未満
C:シート変形率が4%以上
の3段階で評価した。
(6−2.塗工シートの寸法安定性評価)
セラミックグリーンシートの代わりに実施例および比較例で用いる塗工シートを用いた以外は、「6−1.セラミックグリーンシートの寸法安定性評価」と同様の方法で寸法安定性評価を行った。このとき、大気圧プラズマ処理は、導電ペーストが塗工された面に行い、大気圧プラズマ処理された面が、他の塗工シートの大気圧プラズマ処理されていない面(導電ペーストが塗工されていない面)に接するように積層した。
(7−1.セラミックグリーンシート積層体における焼成体のデラミネ−ション評価)
実施例および比較例で用いるセラミックグリーンシート(ポリエステルフィルム上)を10cm角に切断したものを100枚用意した。切断されたセラミックグリーンシートをポリエステルフィルムから剥がした後、それぞれの片面に「5−1.セラミックグリーンシートの接着性評価」と同様の方法で大気圧プラズマ処理を施し、大気圧プラズマ処理された面と大気圧プラズマ処理されていない面が重なる様に100枚積重ね、グリーンシートの積層体を得た。続いて、温度70℃、圧力150kg/cmで10分間加熱圧着し、積層体を得た。得られた積層体を5mm×5mmに切断し、切断した積層体から100個を任意で抽出し、窒素雰囲気下、昇温速度15℃/分で400℃まで昇温し、5時間保持した後、さらに昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持することにより、セラミック焼成体を得た。
得られた焼成体を常温まで冷却した後、焼成体の断面を電子顕微鏡で観察し、セラミック層間のデラミネーションの有無を以下の4段階で評価した。
A:デラミネーションなし。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=0〜2/100)
B:デラミネーションが僅かに見られる。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=3〜7/100)
C:デラミネーションが一部あり。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=8〜20/100)
D:デラミネーションが多数あり。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=21〜100/100)
(7−2.塗工シート積層体における焼成体のデラミネ−ション評価)
実施例および比較例で用いる、塗工シートを10cm角に切断したものを100枚用意した。導電ペーストが塗工された面に「5−2.塗工シートの接着性評価」と同様の方法で大気圧プラズマ処理を施し、大気圧プラズマ処理された面と大気圧プラズマ処理されていない面が重なる様に100枚積重ね、塗工シートの積層体を得た。続いて、温度70℃、圧力150kg/cmで10分間加熱圧着し、積層体を得た。得られた積層体を5mm×5mmに切断し、切断した積層体から100個を任意で抽出し、窒素雰囲気下、昇温速度15℃/分で400℃まで昇温し、5時間保持した後、さらに昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持することにより、セラミック焼成体を得た。
得られた焼成体を常温まで冷却した後、焼成体の断面を電子顕微鏡で観察し、セラミック層同士およびセラミック層と電極層間のデラミネーションの有無を以下の4段階で評価した。
A:デラミネーションなし。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=0〜2/100)
B:デラミネーションが僅かに見られる。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=3〜7/100)
C:デラミネーションが一部あり。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=8〜20/100)
D:デラミネーションが多数あり。
(デラミネーションした焼成体の個数/任意の焼成体=21〜100/100)
[バインダー樹脂(A)]
(合成例1)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた10リットルのガラス製容器に、イオン交換水を7280gと重合度1700、けん化度98.4モル%のポリビニルアルコール(以下、PVA−1と記載)を720g仕込み(PVA濃度9.0質量%)、内容物を95℃に昇温してPVAを完全に溶解させた。次に内容物を120rpmで攪拌しながら、10℃まで約30分かけて徐々に冷却した後、前記容器にn−ブチルアルデヒド400gと20質量%の塩酸830mLを添加し、ブチラール化反応を150分間行った。その後90分かけて70℃まで昇温し、70℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。析出した樹脂をイオン交換水で洗浄後、過剰量の水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和した。引き続き、イオン交換水で樹脂を再洗浄した後、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。
(合成例2)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを336g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−2)を得た。
(合成例3)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを388g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−3)を得た。
(合成例4)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを453g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−4)を得た。
(合成例5)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを511g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−5)を得た。
(合成例6)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを398g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−6)を得た。
(合成例7)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを405g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−7)を得た。
(合成例8)
PVA−1に代わって、表1に示す重合度とけん化度を有するPVAを用い、n−ブチルアルデヒドを399g用いた以外は合成例1と同様にして、ポリビニルブチラール(PVB−8)を得た。
(合成例9)
PVA−1の代わりに、表1に示すように、重合度2400でけん化度98.8モル%のPVAと、重合度500でけん化度98.8モル%のPVAとを70/30の質量比で用い、n−ブチルアルデヒドを399g用いた以外は、合成例1と同様の操作を行って、ポリビニルブチラール(PVB−9)を得た。
(合成例10)
合成例1において、n−ブチルアルデヒドを用いてブチラール化をする代わりに、イソブチルアルデヒドを用いてアセタール化をした以外は、合成例1と同様の操作を行って、ポリビニルブチラール(PVB−10)を得た。
(合成例11)
合成例1において、n−ブチルアルデヒドを用いてブチラール化をする代わりに、アセトアルデヒドとn−ブチルアルデヒドを重量比100/64で用いて、アセタール化をした以外は、合成例1と同様の操作を行って、ポリビニルブチラール(PVB−11)を得た。
PVB−1〜PVB−11について、前記評価方法「1.ポリビニルアセタールの測定」に記載された方法に従って、重合度、酢酸ビニル単量体単位の含有量、ブチラール化度およびビニルアルコール単量体単位の含有量を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2017127856
[セラミックグリーンシートの製造]
(製造例1)
<無機化合物分散用剤の調製>
トルエン30質量部とエタノール30質量部の混合溶剤にPVB−1を10質量部加えた後、攪拌してPVB−1を溶解させ、当該溶液に、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)を100質量部のPVB−1に対して、38質量部になるように加え、攪拌して無機化合物分散用剤を調製した。
<セラミックスラリーの製造>
セラミック粉体であるチタン酸バリウム(「BT−02」、堺化学工業株式会社製、平均粒子径0.2μm)100質量部にトルエン15質量部とエタノール15質量部を加え、ボールミルで15時間混合し、セラミック粉体の分散液を得た。続いてセラミック粉体100質量部に対し、PVB−1が7.5質量部になるように前記セラミック粉体の分散液に前記無機化合物分散用剤を加え、ボールミルで24時間混合し、セラミックスラリーを得た。
<セラミックグリーンシートの製造>
得られたセラミックスラリーを、離形処理したポリエステルフィルム上に、乾燥膜厚が2〜3μmとなるようにバーコーターを用いて塗工し、常温で1時間、風乾した後、熱風乾燥機にて80℃にて2時間、続いて120℃で2時間乾燥させ、ポリエステルフィルム上にセラミックグリーンシートGS−1を得た。
(製造例2〜8)
PVB−1の代わりにPVB−2〜PVB−8をそれぞれ用いたこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−2〜GS−8を作製した。
(製造例9〜14)
アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)の代わりに、表2−1に示す有機化合物を用いたこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−9〜GS−14を作製した。
(製造例15〜18)
アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)を、バインダー樹脂(A)に対して、表2−2に示す割合で添加したこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−15〜GS−18を作製した。
(製造例19〜21)
PVB−1の代わりにPVB−9〜PVB−11を用い、表2−2に示す有機化合物を用いたこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−19〜GS−21を作製した。
(製造例22)
表2−2に示すように、100質量部のPVB−1に対して、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)19質量部とトリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート19質量部を添加した以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−22を作製した。
(製造例23〜25)
表2−2に示す有機化合物を添加したこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−23〜GS−25を作製した。
(製造例26)
製造例1で得られた10質量部のPVB−1をトルエン30質量部とエタノール30質量部の混合溶剤に加えた後、攪拌してPVB−1を溶解させ、当該溶液に、表2−2に示すアジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)を、100質部のPVB−1に対して38質量部になるように加え、さらに分散剤として「マリアリムAKM−0531」(日油社性)を100質部のPVB−1に対して11重量部添加し、攪拌して無機化合物分散用剤を調製した。セラミック粉体としてチタン酸バリウム(「BT−02」、堺化学工業株式会社製、平均粒子径0.2μm)100質量部にトルエン15質量部とエタノール15質量部を加えたのち、ボールミルで15時間混合し、セラミック粉体の分散液を得た。続いてセラミック100質量部に対し、PVB−1が7.5質量部になるように前記セラミックの分散液に無機化合物分散用剤を加え、ボールミルで24時間混合し、セラミックスラリーを得た。また、得られたセラミックスラリーを用いて、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS26を作製した。
(製造例27)
「マリアリムAKM−0531」を100質量部のPVB−1に対して34質量部添加した以外は、製造例26と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−27を作製した。
(製造例28)
表2−2に示した有機化合物を用い、「マリアリムAKM−0531」を100質量部のPVB−1に対して68質量部添加した以外は、製造例26と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−28を作製した。
(製造例A〜H)
アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)の代わりに、表3に示す有機化合物を用いたこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−A〜GS−Hを作製した。
(製造例I)
表3に示すように、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)を用いなかったこと以外は、製造例1と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−Iを作製した。
(製造例J)
「マリアリムAKM−0531」の添加量を100質部のPVB−1に対して79重量部に変更した以外は、製造例26と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−Jを作製した。
(製造例K)
表3に示した有機化合物を用い、「マリアリムAKM−0531」の添加量を100質部のPVB−1に対して70重量部に変更した以外は、製造例26と同様の方法でセラミックグリーンシートGS−Kを作製した。
得られたセラミックグリーンシートGS−A〜GS−Kについて、前記評価方法「2.有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価の測定」に記載された方法に従って、それぞれのセラミックグリーンシート製造時に用いた有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価を測定した。表3に測定結果を示す。
得られたセラミックグリーンシートGS−1〜GS−28、GS−A〜GS−Kについて、前記評価方法「2.有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価の測定」に記載された方法に従って、それぞれのセラミックグリーンシート製造時に用いた有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価を測定した。表2−1、表2−2および表3に測定結果を示す。
Figure 2017127856
Figure 2017127856
Figure 2017127856
[導電ペースト、塗工シートおよび積層体の製造]
(作製例1)
<導電ペーストの作製>
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴および窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD−45)、ジヒドロターピニルアセテートとを加えた。次いで、導電粉末としてニッケル粉(「NFP201」、JFEミネラル株式会社製)を混合し、さらに市販の平均粒径0.1μmのチタン酸バリウム粉末をニッケル粉末に対して20質量部添加し、三本ロールに数回通して導電ペーストを得た。なお、導電ペースト中の組成比率は、バインダー樹脂(A)が3質量%、ニッケル粉が50質量%、チタン酸バリウムが10質量%、その他が有機溶剤となるよう調製した。
<塗工シートの作製>
製造例1で得られたグリーンシートGS−1を10cm×10cmの大きさに切断し、前記評価方法「5−1.セラミックグリーンシートの接着性評価」に記載の方法に従って、大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマ処理が施された面に、上述した導電ペーストをスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製DP−320)によってスクリーン印刷し、120℃で1時間乾燥させることにより、10mm角、ペースト間距離(余白)2.5mm、膜厚2μmの導電ペースト皮膜を形成し塗工シートTS−1を得た。
(作製例2)
GS−1に大気圧プラズマ処理を行わなかった以外は作製例1と同様の方法で、塗工シートTS−2を得た。
(作製例3)
グリーンシートGS−1の代わりに、GS−Cを用いたこと以外は、作製例2と同様の方法で塗工シートTS−3を得た。
(作製例4)
攪拌機、冷却器、温度計、湯浴および窒素ガス導入口を備えた2Lセパラブルフラスコに、PVB−4とジヒドロターピニルアセテートとを加え、さらにアジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)を100質量部のPVB−4に対して20質量部となるように添加し、80℃の温度で4時間攪拌して無機化合物分散用剤を得た。得られた無機化合物分散用剤を用い、作製例1と同様の方法で導電ペーストを作製した。次いで、得られた導電ペーストを用い、GS−Dの上に塗工した以外は作製例1と同様の方法で塗工し、塗工シートTS−4を得た。
(作製例5)
PVB−4に代えて、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD−45)100質量部を用いたこと以外は、作製例4と同様の方法で、無機化合物分散用剤および導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストを用いた以外は、作製例4と同様の方法で塗工シートTS−5を得た。
[作製例6]
100質量部のPVB−4に代えて、50質量部のPVB−4および50質量部のエチルセルロース(ダウケミカル社製、STD−200)を用いたこと以外は、作製例4と同様の方法で、無機化合物分散用剤および導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストを用いた以外は、作製例4と同様の方法で塗工シートTS−6を得た。
[作製例7]
PVB−4に代えて、エチルセルロース(ダウケミカル社製、STD−45)100質量部を用い、さらにアジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)に代えて、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート20質量部を用いたこと以外は、作製例4と同様の方法で、無機化合物分散用剤および導電ペーストを製造した。得られた導電ペーストを用いた以外は、作製例4と同様の方法で塗工シートTS−7を得た。
TS−1〜TS−3について表4−1に示す。
塗工シートTS−4〜TS−7について、塗工シートの作製に用いた導電ペーストにおいて、有機化合物および無機化合物分散用剤について前記評価方法「2.有機化合物および無機化合物分散用剤の酸価の測定」に記載された方法に従って酸価を測定した。測定結果を表4−2に示す。
Figure 2017127856
Figure 2017127856
[実施例]
(実施例1〜28)
グリーンシートGS−1〜GS−28のそれぞれについて、該グリーンシート作製前のセラミックスラリーの保存安定性、該グリーンシートの圧着時の寸法安定性、該グリーンシートの接着性および該グリーンシートを用いて得られる焼成体のデラミネーションについて、前記評価方法に記載された方法に従って評価を行った。評価結果を表5に示す。
(実施例29)
GS−1に大気圧プラズマ処理を実施せずに圧着時の接着性評価を行った以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表5に示す。
(実施例30)
大気圧プラズマ処理された塗工シートTS−1と、大気圧プラズマ処理されていない塗工シートTS−1(つまり、グリーンシートGS−1を10cm×10cmの大きさに切断したもの)を積層した以外は、実施例1と同様の方法で、熱圧着試験を行い、接着性を評価した。このとき、大気圧プラズマ処理された面が、他の塗工シートTS−1の大気圧プラズマ処理されていない表面(導電ペーストが塗工されていない面)に接するように積層した。また、得られた積層体PS−1について、実施例1と同様の方法で寸法安定性、焼成体のデラミネーションの評価を行った。評価結果を表5に示す。
(実施例31)
塗工シートTS−2について、TS−2の圧着時の寸法安定性およびTS−2の接着性について、前記評価方法に記載された方法に従って評価を行った。評価結果を表7に示す。
(実施例32〜34)
塗工シートTS−4〜TS−6について、導電ペーストのスラリー保存安定性、該塗工シートの圧着時の寸法安定性、該塗工シートの接着性およびを用いて得られる焼成体のデラミネーションについて、前記評価方法に記載された方法に従って評価を行った。評価結果を表8に示す。
[比較例]
(比較例1〜11)
グリーンシートGS−A〜GS−Kのそれぞれについて、該グリーンシート作製前のセラミックスラリーの保存安定性、該グリーンシートの圧着時の寸法安定性、該グリーンシートの接着性および該グリーンシートを用いて得られる焼成体のデラミネーションについて、前記評価方法に記載された方法に従って評価を行った。評価結果を表6に示す。
(比較例12)
塗工シートTS−3について、TS−3の圧着時の寸法安定性およびTS−3の接着性について、前記評価方法に記載された方法に従って評価を行った。評価結果を表7に示す。
(比較例13)
塗工シートTS−7について、導電ペーストのスラリー保存安定性、TS−7の圧着時の寸法安定性、TS−7の接着性およびTS−7を用いて得られる焼成体のデラミネーションについて、前記評価方法の通りに評価を行った。評価結果を表8に示す。
Figure 2017127856
Figure 2017127856
Figure 2017127856
Figure 2017127856

Claims (20)

  1. 分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、下記一般式(1):
    Figure 2017127856
    (式中、R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基を表す。R2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。mは0〜5の整数を表す。)で表される有機化合物(B)および有機溶剤(C)を含有する樹脂組成物からなる無機化合物分散用剤であって、該無機化合物分散用剤の酸価が5mgKOH/g以下である無機化合物分散用剤。
  2. 有機化合物(B)の酸価が5mgKOH/g以下である、請求項1に記載の無機化合物分散用剤。
  3. R1および/またはR4がそれぞれ独立して、下記一般式(2):
    Figure 2017127856
    (式中、R5は炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキル基を表す。R6は炭素数1〜10の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R7は炭素数1〜4のアルキレン基を表す。nは0〜2の整数を表す。)で表されるエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基である、請求項1または2に記載の無機化合物分散用剤。
  4. バインダー樹脂(A)100質量部に対して、有機化合物(B)を1〜60質量部含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の無機化合物分散用剤。
  5. バインダー樹脂(A)が、ポリビニルアセタール、エチルセルロースおよび(メタ)アクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の無機化合物分散用剤。
  6. バインダー樹脂(A)がポリビニルアセタールを含み、該ポリビニルアセタールは、アセタール化度が50〜85モル%であり、ビニルエステル単量体単位の含有量が0.1〜20モル%であり、粘度平均重合度が200〜5000である、請求項5に記載の無機化合物分散用剤。
  7. 無機化合物(D)および請求項1〜6のいずれかに記載の無機化合物分散用剤を含有するスラリー組成物。
  8. 分子内に水酸基を有するバインダー樹脂(A)、下記一般式(1):
    Figure 2017127856
    (式中、R1およびR4は、それぞれ独立してエーテル結合を少なくとも一つ有する有機基を表す。R2は、炭素数1〜20の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。R3は、炭素数1〜4の分岐を有してもよいアルキレン基を表す。mは0〜5の整数を表す。)で表される有機化合物(B)、有機溶剤(C)および無機化合物(D)を含有する樹脂組成物からなるスラリー組成物。
  9. 無機化合物(D)がセラミック粉体である、請求項7または8に記載のスラリー組成物。
  10. 前記セラミック粉体100質量部に対して、有機溶剤(C)を2〜200質量部含有する、請求項9に記載のスラリー組成物。
  11. 請求項9または10に記載のスラリー組成物を用いて作製されたセラミックグリーンシート。
  12. セラミックグリーンシートの少なくとも片面について、飛行時間型二次イオン分析装置で二次イオン分析を行った場合に、検出されるTi+イオンの強度に対する、検出されるBa+イオンの強度の比である(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)が、20<(Ba+イオンの強度)/(Ti+イオンの強度)<1000を満たす、請求項11に記載のセラミックグリーンシート。
  13. 無機化合物(D)が導電粉末である、請求項7または8に記載のスラリー組成物。
  14. 前記導電粉末100質量部に対して、バインダー樹脂(A)を1〜50質量部含有する、請求項13に記載のスラリー組成物。
  15. 前記導電粉末100質量部に対して、有機溶剤(C)を5〜600質量部含有する、請求項13または14に記載のスラリー組成物。
  16. 請求項13〜15のいずれかに記載のスラリー組成物からなる導電ペースト。
  17. 請求項11または12に記載のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に、導電ペーストを乾燥させた層を配置してなる塗工シート。
  18. 請求項16に記載の導電ペーストを乾燥させた層を、セラミックグリーンシートの少なくとも一方の面に配置してなる塗工シート。
  19. 少なくとも一部にプラズマ処理が施された、請求項11または12に記載のセラミックグリーンシート。
  20. 塗工シートの表面の少なくとも一部にプラズマ処理が施された、請求項17または18に記載の塗工シート。
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