JP2013170095A - スラリー組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有するスラリー組成物の製造方法であって、無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤及び無機分散用有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、前記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を有し、前記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、重合度が20〜600、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重合度が800〜4000であり、かつ、前記無機分散液を作製する工程において、前記ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機粉末100重量部に対して0.05〜10重量部、前記アニオン性添加剤を無機粉末100重量部に対して0.05〜10重量部添加するスラリー組成物の製造方法。
【選択図】なし
Description
まず、ポリビニルブチラール樹脂等のバインダー樹脂にセラミック原料粉末を加え、均一に混合することでスラリー組成物を得る。得られたスラリー組成物を、離型処理した支持体面に塗工する。これに加熱等を行うことで溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。次いで、得られたセラミックグリーンシート上に、エチルセルロース、ポリビニルブチラール樹脂等をバインダー樹脂として含有する導電ペーストをスクリーン印刷等により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製し、脱脂処理を行った後、焼成して得られるセラミック焼成物の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
しかしながら、このような方法では、混合液を長時間に渡って撹拌しなければ、セラミック粉末が充分に分散せず、撹拌に過大なエネルギーや時間を要するという問題があった。
また、スラリー組成物中のセラミック粉末の分散性を確保する方法として、特許文献2に記載されているように、分散剤を添加する方法も用いられている。しかしながら、このような方法では、バインダー樹脂との相溶性が悪いと逆に分散性を悪化させたり、長期保存時に分散性が低下したりする問題があった。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明では、上記無機分散液を作製する工程において、ポリビニルアセタール樹脂(A)及びアニオン系添加剤を分散剤として用いる。このように無機分散液を作製する工程において、ポリビニルアセタール樹脂(A)及びアニオン系添加剤を分散剤として用いることで、まずアニオン系添加剤が無機粉末の表面に付着し、その後ポリビニルアセタール樹脂(A)がその周囲に分布する。その結果、アニオン性添加剤により無機粉末の分散性を高めることができるばかりかポリビニルアセタール樹脂(A)によりアニオン系添加剤が外れることを防ぐことが出来る。またアニオン系添加剤のアニオン性基とポリビニルアセタール樹脂(A)の水酸基に引力的な相互作用が働くことで両者が分離することなく混ざり合うことができる。その結果、その後無機分散液に、ポリビニルアセタール樹脂(B)を含有する樹脂溶液を添加し、グリーンシートにした場合等において、得られるシートの強度を高くすることができる。
なお、本明細書において、ポリビニルアセタール樹脂(A)と、後述するポリビニルアセタール樹脂(B)とを特に区別する必要がない場合は、単にポリビニルアセタール樹脂ともいう。
上記アニオン性基を有することで、ポリビニルアセタール樹脂(A)が無機粉末の表面に付着しやすくなり、無機粉末の分散性を高めることができる。
上記アニオン性基の変性度が0.1モル%未満であると、無機粉末の表面に上記ポリビニルアセタール樹脂(A)が付着しにくくなり、分散性の向上に寄与しないことがあり、2モル%を超えると、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)同士に引力相互作用が働き、無機粉末の表面に付着しにくくなることがある。上記変性度のより好ましい下限は0.2モル%であり、より好ましい上限は1モル%である。
なお、上記変性度は、変性ポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解させて、13C―NMRスペクトルを測定し、カルボキシ基が結合しているメチン基に由来するピーク面積と、アセタール化された部分のメチン基に由来するピーク面積とにより算出することができる。
これにより、無機粉末にアニオン系添加剤が吸着した後、その周りにポリビニルアセタール樹脂(A)が分布するような構成となり、無機粉末に付着したアニオン系添加剤が外れにくくなる。その結果、スラリー組成物中の無機粉末の分散性を向上させるだけでなく、高い分散性を長期に渡り維持することができる。
また、上記ポリカルボン酸系添加剤としては、ポリアクリル酸系添加剤を用いることが好ましい。上記ポリアクリル酸系添加剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸無水物、ポリアクリル酸アミン塩、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩等が挙げられる。
上記リン酸系添加剤としては、例えば、リン酸エステル、リン酸アンモニウム塩、リン酸ナトリウム塩等が挙げられる。上記リン酸エステルとしては、例えば、エステル残基に脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素を有するもの等が挙げられる。
上記スルホン酸系添加剤としては、例えば、スルホン酸エステル、スルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。上記スルホン酸エステルとしては、例えば、エステル残基に脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素を有するもの等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリカルボン酸系添加剤が好ましい。
上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明では、このように樹脂溶液を作製して、後工程において上記樹脂溶液を無機分散液に添加する工程を行うことで、無機粉末の凝集を防止して、無機粉末をより微細に分散させることが可能となる。
これに対して、ポリビニルアセタール樹脂(B)を樹脂溶液用有機溶剤に溶解しない場合、即ち、上記樹脂溶液を作製しない場合は、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)が、かさ高くなり、複数の無機粉末を取り込みやすくなるため、無機粉末の凝集を招くこととなる。
特に強度の求められる薄層のセラミックグリーンシートにおいては、重合度の低いポリビニルアセタール樹脂(A)に対して、重合度の高いポリビニルアセタール樹脂(B)を含有することで、充分な分散性とシート強度を有するセラミックグリーンシートを作製することができる。
なお、本明細書において、アセタール化度とは、ポリビニルアルコールの水酸基数のうち、ブチルアルデヒドでアセタール化された水酸基数の割合のことであり、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基からアセタール化されて形成されていることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を算出する。
これにより、スラリー組成物が得られる。
また、上記樹脂溶液を作製する工程における上記樹脂溶液用有機溶剤の添加量の好ましい下限は無機粉末100重量部に対して70重量部、好ましい上限は130重量部である。上記樹脂溶液用有機溶剤の添加量が70重量部未満であると、所望の粘度に調整することが困難になり、塗工性が低下することがあり、130重量部を超えると、セラミック粉末濃度が低くなり、乾燥後のシートが一様にならないことがある。
重合度230、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール350重量部を純水3000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸230重量部とn−ブチルアルデヒド150重量部とを添加し、液温を1℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を20℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂(A1)の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度を測定したところ、ブチラール化度は51モル%であった。
また、表1に示す条件とした以外は、ポリビニルアセタール樹脂(A1)と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(A2)〜(A10)を合成した。
重合度1700、ケン化度99モル%のポリビニルアルコール280重量部を純水3000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸200重量部とn−ブチルアルデヒド155重量部とを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂(B1)の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)に溶解し、13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)を用いてブチラール化度を測定したところ、ブチラール化度は66モル%であった。
また、表2に示す条件とした以外は、ポリビニルアセタール樹脂(B1)と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(B2)〜(B9)を合成した。
(無機分散液の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂(A1)1重量部と、ポリカルボン酸(共栄社化学社製、G−700)1重量部を、トルエン20重量部とエタノール20重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解した。次いで、100重量部のチタン酸バリウムの粉末(堺化学工業社製、BT02)を得られた溶液に添加し、ビーズミル(アイメックス社製 レディーミル)にて180分間撹拌することにより、無機分散液を作製した。
得られたポリビニルアセタール樹脂(B1)8重量部、DOP2重量部を、エタノール45重量部とトルエン45重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解することにより、樹脂溶液を作製した。
得られた無機分散液に樹脂溶液を添加しビーズミルにて90分間攪拌することにより、スラリー組成物を得た。
表3に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤、ポリビニルアセタール樹脂(B)、及び、有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。なお、アニオン性添加剤としてはポリカルボン酸(共栄社化学社製、G−700)、ポリカルボン酸アミン塩(サンノプコ社製、SNスパース2190)、ポリカルボン酸アンモニウム塩(サンノプコ社製、SNディスパーサント5020)、リン酸エステル(東邦化学社製、RS−610)を使用した。
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、窒化アルミニウム粉を用い、表3に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、Ni−Zn系フェライト粉を用い、表3に示すポリビニルアセタール樹脂(A)、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤を添加せず、表4に示すポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
表4に示すように、ポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤を無機分散液に添加せず、ポリビニルアセタール樹脂(B)とともに樹脂溶液に溶解させた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
表4に示すポリビニルアセタール樹脂(B)を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(A)の添加量を表4に示す通りにするとともに、表4に示す添加剤を添加した以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。なお、ポリエチレングリコールとしては、東京化成社製、ポリエチレングリコール200を用いた。
ポリビニルアセタール樹脂(A)の添加量を表4に示す通りにした以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(A)を表4に示す通りにした以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
ポリビニルアセタール樹脂(A)に代えて、「Hypermer KD−2」(クローダ社製、側鎖に炭化水素をグラフトしたポリアミン化合物)を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、窒化アルミニウム粉を用い、ポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤を添加せず、表4に示すポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
無機粉末としてチタン酸バリウムに代えて、Ni−Zn系フェライト粉を用い、ポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤を添加せず、表4に示すポリビニルアセタール樹脂(B)及び有機溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして、スラリー組成物を得た。
得られたスラリー組成物について、以下の評価を行った。
(1)グリーンシートの評価
(グリーンシートの作製)
離型処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにスラリー組成物を塗工、乾燥してセラミックグリーンシートを作製した。
(表面粗さ)
上記で得られたセラミックグリーンシートについて、JIS B 0601(1994)に基づいて表面粗さRaを測定し、セラミックスラリーの表面粗さを評価した。また、23℃で一週間放置した後の表面粗さRaについても測定した。
一般に、スラリー組成物の分散性が高いほど、セラミックグリーンシートの表面粗さは小さくなる。
JIS K 7113に準拠して、AUTOGRAPH(島津製作所社製、「AGS−J」)を用い、引張速度20mm/分の条件にて引張弾性率(MPa)の測定を行った。また、23℃で一週間放置した後の引張弾性率(MPa)についても測定した。
(分散性評価溶液の作製)
得られたスラリー組成物0.1重量部を、無機粉分散液の調整に用いた有機溶剤と同一組成のエタノール/トルエン合溶剤に加え、超音波分散機(エスエヌディ社製、「US−303」)にて10分間撹拌することにより、分散評価用溶液を作製した。
(分散性評価)
得られた分散評価用溶液について、レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA−910)を用いて粒度分布測定を行い、最大粒子径ピークの位置、及び、平均分散径を測定した。また、23℃で一週間放置した後の最大粒子径ピークの位置、及び、平均分散径についても測定した。
Claims (8)
- 無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂及び有機溶剤を含有するスラリー組成物の製造方法であって、
無機粉末、ポリビニルアセタール樹脂(A)、アニオン性添加剤及び無機分散用有機溶剤を添加、混合して無機分散液を作製する工程、ポリビニルアセタール樹脂(B)及び樹脂溶液用有機溶剤を添加、混合して樹脂溶液を作製する工程、及び、前記無機分散液に樹脂溶液を添加する工程を有し、
前記ポリビニルアセタール樹脂(A)は、重合度が20〜600、
前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重合度が800〜4000であり、かつ、
前記無機分散液を作製する工程において、前記ポリビニルアセタール樹脂(A)を無機粉末100重量部に対して0.05〜10重量部、前記アニオン性添加剤を無機粉末100重量部に対して0.05〜10重量部添加する
ことを特徴とするスラリー組成物の製造方法。 - ポリビニルアセタール樹脂(A)は、アニオン性基を有することを特徴とする請求項1記載のスラリー組成物の製造方法。
- ポリビニルアセタール樹脂(A)は、水酸基量が28〜60モル%であることを特徴とする請求項1又は2記載のスラリー組成物の製造方法。
- アニオン性添加剤は、ポリカルボン酸系添加剤、スルホン酸系添加剤及びリン酸系添加剤からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のスラリー組成物の製造方法。
- アニオン性添加剤は、ポリアクリル酸系添加剤であることを特徴とする請求項4記載のスラリー組成物の製造方法。
- ポリビニルアセタール樹脂(B)は、水酸基量が28〜42モル%であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のスラリー組成物の製造方法。
- 無機分散用有機溶剤及び樹脂溶液用有機溶剤は、エタノール及びトルエンからなる混合溶媒であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のスラリー組成物の製造方法。
- 1、2、3、4、5、6又は7記載のスラリー組成物の製造方法を用いて製造されることを特徴とするスラリー組成物。
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