JP2017125231A - 高炭素鋼線材および高炭素鋼線 - Google Patents

高炭素鋼線材および高炭素鋼線 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の伸線、熱処理工程を用いながらも、耐水素脆化特性に優れた高強度の高炭素鋼線、および該鋼線を製造するための高炭素鋼線材を提供することを課題とする。
【解決手段】長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部のSi量よりも、中心から半径の90%以上の表層部のSi量を高くした半径方向Si量分布を付与した鋼線材とする。さらにその鋼線材を、パテンティング処理することにより、中心部において、初析フェライト、擬似パーライトもしくはベイナイトからなる非パーライト組織の面積率が10%未満であり、かつ表層部において、非パーライト組織の面積率の平均値が15%以上であるような鋼線を得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、PC鋼線、亜鉛めっき鋼より線、ばね用鋼線、吊り橋用ケーブルなどに用いられる高炭素鋼線材、および、高炭素鋼線を伸線加工した高炭素鋼線に関するものである。
PC鋼線、亜鉛めっき鋼より線などの硬鋼線は、熱延線材を出発材として、パテンティング処理、伸線加工、目的に応じてブルーイング処理、溶融亜鉛めっき処理などが施されて製造される。
例えば、ポール、パイルおよび建築、橋梁等のプレストレストコンクリート構造物の補強材として広く使われているPC鋼線としては、通常、JIS G 3536に規定されているPC鋼線やPC鋼撚り線が使われている。PC鋼線に用いられる材料は、JIS G 3502に適合したピアノ線材であり、パテンティング処理をした後、伸線加工することにより製造される。近年PC鋼線にも高強度化が要求されている。よく知られているように、鋼材は高強度化するに従い、あるいは使用環境が過酷になるに従い、水素脆化感受性が増大するため、耐水素脆化特性を高めた高強度PC鋼線が求められている。
ところで特許文献1では、線材を伸線加工した後に所定の温度、所定の時間保持することによって、耐遅れ破壊特性を向上させることが提案されている。しかしながら、特許文献1の技術は、鋼材組織、機械的性質を変えることなく、加熱により鋼線中の水素を除去することを目的としており、鋼線の使用中に侵入する水素による破壊を抑制するものではない。
また特許文献2では、伸線後に450〜650℃の高温ブルーイングを施すことで鋼線の表層硬さを低下させ、水素脆化感受性を低下させることが提案されているが、この技術では、ブルーイング処理が追加されるためコストがかさむ。
特開平10−259425号公報 特開2009−280836号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の伸線、熱処理工程を用いながらも、耐水素脆化特性に優れた高強度の高炭素鋼線、および該鋼線を製造するための高炭素鋼線材を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、C量が0.8%を超えるような過共析組成の鋼であっても、Siを増やせば、オーステナイト域から冷却される際の変態時に、フェライト析出が促進されると共にセメンタイトの析出が抑制されることを見出した。このため、パテンティング処理ではオーステナイト粒界に沿って初析フェライトが板状に析出する傾向が現れる。さらに、Si添加はパーライトの共析温度を高くするため、通常パテンティングが行われる480〜650℃の温度域において、擬似パーライトやベイナイトといった過冷組織が生成することを知見した。これら非パーライト組織は、パーライト組織より軟質であり、伸線による加工硬化量も小さいため、伸線後の耐水素脆化特性を向上させる。一方、これら非パーライト組織は、旧オーステナイト粒界に沿って生成し、線材の延性即ち引張試験によって測定できる破断絞り値(以下「RA」と記す)を低下させるため、伸線時に断線が発生する原因となりうる。本発明では、線材中心部のSi量を低くすることによって、伸線加工に供するのに十分なレベルのRAを確保すると共に、線材表層のSi量を増加してパテンティング後の鋼線表層に非パーライト組織を生成させて、耐水素脆化特性を高め得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
かつ中心から半径の90%以上の表層部は、C:0.7〜1.2%、Si:1.5%〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
さらに中心から半径の60%超〜90%未満の中間部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつSiを、中心部または表層部のSi量と同じか、または中心部と表層部の中間のSi量で含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする高炭素鋼線材。
(2)中心部、表層部および中間部が、更に、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、V :0.01〜0.5%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の高炭素鋼線材。
(3)長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部の鋼組織が、初析フェライト、擬似パーライトもしくはベイナイトからなる非ラメラパーライト面積率が10%未満であり、残部がラメラパーライト組織からなり、かつ中心から半径の90%以上の表層部の鋼組織は、非ラメラパーライト組織の面積率が15%以上であり、残部がラメラパーライト組織であることを特徴とする(1)、(2)のいずれかに記載の高炭素鋼線材。
(4)長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
かつ中心から半径の90%以上の表層部は、C:0.7〜1.2%、Si:1.5%〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
さらに中心から半径の60%超〜90%未満の中間部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつSiを、中心部のSi量または表層部のSi量と同じか、または中心部のSi量と表層部のSi量の中間のSi量で含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
引張り強さが1800MPa以上であることを特徴とする高炭素鋼線。
(5)前記中心部、前記表層部および前記中間部が、更に、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、Co:0.05〜0.5%,V :0.01〜0.5%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(4)に記載の高炭素鋼線。
本発明によれば、PC鋼線や亜鉛めっき鋼線等の高強度鋼線に好適な、引張強さ1800MPa以上を有しかつ耐水素脆化特性に優れた鋼線が得られる。
本発明の高炭素鋼線材における長手方向に直交する断面内における各領域について説明するための模式図である。 伸線後の引張り強さ(TS)とFIP試験による破断時間との関係を説明するための説明図である。 本発明の鋼組織を説明するための説明図である。
以下、本発明に係る伸線特性に優れた高強度線材の実施の形態について説明する。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであって、本発明を限定するものではない。
本実施形態では、後述する理由によって線材の成分組成を限定するとともに、表層のSi量のみを増加させることで、耐水素脆化特性と延性の向上を両立させている。すなわち、図1に示しているように、鋼線材1における長手方向に垂直な断面内において、その断面の中心Oから半径rの60%以下の領域を中心部2とし、かつ中心Oから半径rの90%以上の領域を表層部3とし、さらに中心部2と表層部3との間の領域、すなわち中心Oから半径rの60%超〜90%未満の領域を中間部4とし、表層部3のSi量範囲を、中心部2のSi量範囲よりも高いレベルとし、また中間部4のSi量は、中心部2もしくは表層部3と同じか、又は中心部2、表層部3の中間のSi量とし、さらにSi以外の各成分については、それぞれの成分量範囲を同等に規定している。
このように、中心部と表層部とでSi量が異なる線材の製造方法としては、例えば鋳造時に異鋼種の複合鋳込みを行う、あるいは鋼管に丸棒を挿入して、焼きばめ、圧入その他の手段で一体化した後に圧延する等の手段を採ることができる。
次に、本発明の鋼線材における成分組成範囲の限定理由について説明する。なお以下の成分組成の説明において、Si以外の元素については、その範囲は、中心部と、表層部と、中間部とで同じ範囲で規定しており、したがってSi以外については各領域についての個別の説明は省略する。
<成分組成>
[C:0.8〜1.2%]
Cは、線材の強度を高めるのに有効な元素である。Cの含有量が0.8%未満の場合には高い強度を安定して最終製品に付与させることが困難であると同時に、オーステナイト粒界に初析フェライトの析出が促進され、均一なパーライト組織を得ることが困難となる。一方、Cの含有量が多すぎるとオーステナイト粒界にネット状の初析セメンタイトが生成して伸線加工時に断線が発生しやすくなるだけでなく、最終伸線後における極細線材の靱性・延性を著しく劣化させる。したがって、Cの含有量を、質量%で0.8〜1.2%の範囲内とした。
[中心部におけるSi:0.2%〜1.3%]
Siは、パーライト組織のフェライト相に固溶して強度を高めるため、0.2%以上を添加する。またフェライト生成元素であるため、多量の添加は過共析鋼においても初析フェライト生成を促進する効果がある。更にパーライトの共析温度を上昇させる効果、パーライト変態を遅延させる効果を有するため、パテンティング材において過冷組織であるベイナイトや擬似パーライトを増加させる効果がある。線材中心部においてはフェライト、ベイナイトや擬似パーライトなどの非パーライト組織の生成を抑制し、強度と絞り値(RA値)を確保するために1.3%以下とする。
[表層部におけるSi平均値:1.5%〜3.0%]
線材表層部においては、非パーライト分率を上げて耐水素脆化特性を確保するため、1.5%以上とする。一方、過度の添加は、製造コストを増大させるため、3.0%以下に限定する。
[中間部におけるSi平均値:中心部もしくは表層部と同じ、又はその中間]
線材中心部と線材表層部との間の中間部は、平均のSi量が、中心部のSi量もしくは表層部のSi量と同じ、又はその中間のSi量であれば、中心部におけるSi量を比較的少量に抑えて、伸線加工に供するに十分なレベルのRA値を確保する効果と、表層部のSi量を高くしてパテンティング後の耐水素脆化特性を向上させる効果とを損なうことが回避される。中間部のSi量が、中心部のSi量よりも少なければ、耐水素脆化特性を向上させる効果が損なわれるおそれがあり、一方、中間部のSi量が、中心部のSi量よりも多ければ、伸線加工に供するに十分なレベルのRA値を確保することが困難となるおそれがあり、そこで、中間部におけるSi平均値は、中心部もしくは表層部と同じ、又はその中間とした。なお、中間部におけるSi平均値とは、線材の長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%の位置から90%の位置までの平均のSi量を意味する。したがって例えば、図1中の点線で例示しているように、中心Oから半径rの60%を超え90%未満の位置(図1では約75%の位置)を境界位置Pとする内外2層構造とした場合、その境界位置Pの内側をSi量が0.2〜1.3%の範囲内の内層部位(中心部2を含む部位)5、境界位置Pの外側はSi量が1.5%〜3.0%の外層部位(表層部3を含む部位)6とすれば、中間部4の全体の平均のSi量は、中心部2のSi量と表層部3のSi量との中間の値となる。
[Mn:0.1〜1.0%]
Mnは、焼き入れ性を向上させ、線材の強度を高めるのに有効である。更に、Mnは、鋼中のSをMnSとして固定して熱間脆性を防止する作用を有する。その含有量が0.1質量%未満では前記の効果が得難い。一方、Mnは偏析しやすい元素であり、1.0質量%を超えると特に線材の中心部に偏析し、その偏析部にはマルテンサイトやベイナイトが生成するので、伸線加工性が低下する。したがって、Mnの含有量を、質量%で0.1〜1.0%の範囲内とした。
[N:0.001〜0.006%]
Nは、鋼中でAl、BあるいはTiと窒化物を生成し、加熱時におけるオーステナイト粒の粗大化を防止する作用があり、その効果は0.001%以上含有させることによって有効に発揮される。しかし、0.006%を超えて含有させると、固溶Nは伸線中の時効を促進するため、伸線性を低下させる。また、Bを添加すると共に0.006%を超えるNを含有させると、オーステナイト中の固溶B量を低下させて、初析フェライトの析出抑制作用、初析セメンタイトの析出促進作用を低減させる。さらに従って、Nの含有量を、0.001〜0.006%の範囲内とした。
[Al:0.005〜0.1%]
Alは、Nを固定して時効を抑制する。また、Bを添加した場合には固溶Bを増加させる効果を有する。Al含有量は、0.005〜0.1%の範囲内であることが好ましい。Alの含有量が0.005%未満だと、Nを固定する作用が得られにくくなる。Alの含有量が0.1%を超えると、多量の硬質非変形のアルミナ系非金属介在物が生成し、鋼線の延性、及び伸線性は低下する。
なお、不純物であるPとSは特に規定しないが、従来の極細鋼線と同様に延性を確保する観点から、各々0.02%以下とすることが望ましい。
本実施形態で説明する高強度の鋼線材は、上述の成分を基本組成とするものであり、上記の各成分以外は、基本的にはFe及び不可避的不純物であればよいが、更に強度、靭性、延性等の機械的特性の向上を目的として、次に説明するCr、Co、V、Ti、Bのうちから選ばれた1種または2種以上を、積極的に含有した成分組成としても良い。
[Cr:0.5%以下]
Crはパーライトのラメラ間隔を微細化し、線材の強度を高めると共に伸線加工性も向上させるのに有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させるためには0.1%以上を添加する。一方、Cr量が多過ぎると変態終了時間が長くなり、熱間圧延線材中にマルテンサイトやベイナイトなどの過冷組織が生じる恐れがあるほか、メカニカルデスケーリング性も悪くなるので、その上限を0.5%とした。
[V:0.5%以下]
Vはフェライト中に微細な炭窒化物を形成することにより、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を防止して、圧延線材の強度上昇に寄与する。この様な作用を有効に発揮させるには0.05%以上の添加が好ましい。しかし、過剰に添加し過ぎると、炭窒化物の形成量が多くなり過ぎると共に、炭窒化物の粒子径も大きくなるため上限を0.5%とした。
[Ti:0.1%以下]
Tiは、TiNとして析出し、オーステナイト粒度の粗大化防止に寄与するとともに、Nを固定することによりオーステナイト中の固溶B量を確保するためにも有効な必要な元素である。このような効果を有効に発揮させるには0.01%以上を添加する。一方、Tiの含有量が0.1%を超えると、オーステナイト中で粗大な炭化物を生じ、伸線性が低下する。従って、Tiの上限値を0.1%とした。
[B:0.005%以下]
Bは固溶状態でオーステナイト中に存在する場合、粒界に濃化して初析フェライトの析出を抑制するとともに初析セメンタイトの析出を促進する効果があり、圧延線材を高強度化する。Bは、CおよびSi量のバランスに応じて適量を添加することにより、初析フェライトの生成を抑制する。また、Bは窒化物を形成するため、固溶状態のB量を確保するためには、B、C,Siに加えN量とのバランスを考慮することが必要である。固溶Bの効果を得るためには5ppm以上の添加が必要である。一方、Bを添加しすぎると初析セメンタイトの析出を促進するのみならず、オーステナイト中において粗大なFe(CB)炭化物を生成し、伸線性を低下させる。したがって、Bの上限値を0.005%とした。
以上の選択元素の他に、本発明の線材および鋼線には、以下の元素を目的に応じて添加することができる。これらの元素は、適量添加する限り本発明の効果を損なわない。
[Ni:0.5%以下]
Niは線材の強度上昇にはあまり寄与しないが、伸線材の靭性を高める元素である。この様な、作用を発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。 一方、Niを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値は0.5%である。
[Co:1%以下]
Coは、圧延材における初析セメンタイトの析出を抑制して延性を向上するのに有効な元素である。この様な作用を発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Coを過剰に添加してもその効果は飽和して、製造コストが上昇する。
[Cu:0.2%以下]
Cuは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。耐食性を発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。しかし過剰に添加すると、Sと反応して粒界中にCuSを偏析するため、線材製造過程で鋼塊や線材などに疵を発生させる。この様な悪影響を防止するために、その上限は0.2%である。
[Mo:0.2%以下]
Moは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。耐食性を発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Moを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値は0.2%である。
[W:0.2%以下]
Wは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。耐食性を発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値は0.2%である。
[Nb:0.1%以下]
Nbは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.05%以上の添加が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値は0.1%である。
[REM:0.0050%以下]
REMはSの無害化に有効であるが、過度の添加は酸化物を生成せしめて断線の原因となるため、含有量の上限は50ppmである。
以上、本発明の請求項1、請求項2で規定する高炭素鋼線材の成分組成について説明したが、その炭素鋼線材を伸線加工して得られた鋼炭素鋼線の成分組成(Si量分布を含む)も、伸線加工前の線材と実質的に同じとなる。したがって請求項4、請求項5で規定する高炭素鋼線の成分組成(Si量分布を含む)は、上記で説明した伸線加工前の線材と同じとした。
<線材の組織>
本発明の鋼炭素鋼線材においては、Si量分布を含め、線材の成分組成を前述のように調整するばかりでなく、線材の鋼組織、とりわけ表層部と中心部のそれぞれの組織を調整することが好ましい。すなわち、長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部の鋼組織は、初析フェライト、擬似パーライトもしくはベイナイトからなる、非ラメラパーライトの面積率が10%未満であり、残部がラメラパーライト組織からなり、かつ中心から半径の90%以上の表層部の鋼組織は、非ラメラパーライト組織の面積率が15%以上であり、残部がラメラパーライト組織からなることが好ましい。このように表層部と中心部のそれぞれの組織を調整することが好ましい理由は、次の通りである。
本発明者らが種々研究を行ったところによると、鋼線の耐水素脆化特性と線材の延性に特に影響を及ぼすのは、素材となる線材の旧オーステナイト粒界に析出した初析フェライト、擬似パーライトおよびベイナイトからなる、非ラメラパーライトであった。本実施形態の線材のように、線材の長手方向に垂直な断面において、中心から半径の90%以上の表層部において、非ラメラパーライト組織の面積率を15%以上とすることにより、伸線後に耐水素脆化特性を確保できることが確認された。また、上記の如く線材表層に非ラメラパーライト組織が存在する場合でも、線材中心から半径の80%の中心部領域で非ラメラパーライト組織を10%以下とすることで、線材の延性指標である破断絞り値を30%以上確保できることを確認した。
<製造方法>
本発明で規定する組織および機械的性質を有する線材を得るためには、半径方向Si量分布を含め、前記成分組成を有する高炭素鋼線材をオーステナイト温度域に加熱し、パテンティング処理をすることで得られる。パテンティング処理はオーステナイト温度域に加熱後、衝風冷却するか、もしくは550〜630℃の鉛浴あるいは塩浴に30秒以上浸漬することで得ることが出来る。
本発明に規定する半径方向Si量分布を含めて前記成分分布を有する線材の製造方法としては、例えば、線材圧延素材として、複合鋳込みした鋼塊、鋼管に丸棒を挿入して焼ばめした複合鋼材、あるいは、鋼管に丸棒を圧入した複合鋼材などを用い、それらを線材に熱間圧延する方法がある。
なお、本実施形態では、線材の径を4.0~18mmの範囲とすることにより、優れた延性と高強度を安定して得ることができる。
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
<サンプル作製方法>
表1の1〜23に示す成分の供試鋼を複合鋳込みにより200×200mm断面の鋳片とし、熱間鍛造・切削によりφ11〜14mmの線材を製造した。これらの棒鋼を850〜950℃に加熱し溶融鉛炉に30秒浸漬するパテンティング処理を実施した。これらの線材を、乾式にて総減面率80%程度で伸線することにより、φ4〜7mmの鋼線を得た。
なお表1において、各成分のうち、Si以外の成分の成分量は、中心部、中間部、表層部とで同じであり、そこで、Si以外の成分については、中心部、中間部、表層部の区別をせず、一括して記載している。
パテンティング処理後、伸線加工前の線材、及び伸線後の鋼線(伸線材)について、次のようにして評価試験を行い、その結果を表2に示した。
<評価試験方法>
[非パーライト組織分率]
パテンティング処理後、伸線加工前の線材を埋め込み研磨し、飽和ピクリン酸を用いた化学腐食を実施した後、SEM観察によって、線材の長さ方向と垂直な断面(C断面)における、非ラメラパーライト組織率を決定した。線材表層の非ラメラパーライト面積率は、線材の中心を通過する直交する2本の線上の、表層直下4箇所から深さ方向に線材半径の10%深さまでSEM観察により2000倍の倍率で連続的に組織写真を撮影し、画像解析によりその面積率の平均値を測定した。線材中心部の非ラメラパーライト面積率は、同じく線材の中心を通過する直交する2本の線上の、中心と中心から線材半径の20%、40%、60%、80%の距離において、SEM観察により2000倍の倍率で各1枚ずつ、計17枚の組織写真を撮影し、画像解析によりその面積率の平均値を測定した。
[引張強さ及びRA]
パテンティング処理後、伸線加工前の線材について、ゲージ長さを200mmとし、10mm/minの速度で引張試験を行い、引張強さ(以下、TS)と破断絞り値(RA)のn=3の平均値を測定した。また伸線後の鋼線(伸線材)について、同様に引張試験を行い、引張強さ(TS)を測定した。
[伸線材の耐水素脆化特性(FIP試験)]
伸線後の鋼線(伸線材)について、100mm長さを被験部とし、両端をテフロン(登録商標)製のテープで被覆し、50℃の20%チオシアンアンモニウム溶液に浸漬し、引張強さの70%の荷重を負荷するFIP試験を実施し、破断時間を測定した。試験数は各水準でn=5とし、破断時間の平均値を求めた。溶液量は、被験部の表面積当たりの溶液量(比液量)が8〜10mL/cmとなるように調整した。
表1において、1〜12は本発明に係る高強度鋼線材、13〜23は従来の線材(比較鋼)である。
1〜12に示す本発明鋼線材は、何れもC、Si、Mn、N、Alの含有量が所定の範囲を満たしている。
また、表層部Si濃度が1.5質量%以上であり、かつ表層部から線材半径の10%までの深さの範囲において、非ラメラパーライト組織の面積率が15%以上である。
さらに、何れもTSが1800MPa以上であり、線材の破断絞り値は30%以上となっている。これは、線材中心から半径の10%以内の中心部領域の非ラメラパーライト面積率が10%以下に抑制されているためである。
これに対して、13に示す比較鋼の線材では、炭素量が0.72質量%と低かったため、伸線後の強度が1800MPa届かなかった例である。
14〜16に示す比較鋼の線材では、伸線減面率が低かったために伸線後の強度が1800MPa届かなかった例である。
17〜21に示す比較鋼の線材では、表層部の平均Si濃度が1.5質量%に満たないため、表層部の非ラメラパーライト面積率が15%未満であり、水素脆化特性が低い例である。
22に示す比較鋼の線材では、もともとのSiの含有量が1.4%と高く、線材中心部の非ラメラパーライト面積率が10%を超えているため、伸線前の線材段階での破断絞り値が30%未満であり、伸線時に断線が発生した例である。
23に示す比較鋼の線材では、Mnの含有量が所定よりも高かったため、焼入れ性は必要以上に高くなり、パテンティング時にマルテンサイトが発生し、伸線時に断線が発生した例である。
図2に、上記の各例における伸線材のTSとFIP試験における破断時間の関係を示す。図1から明らかなように、同一の強度レベルで比較すると、本発明に係る高強度線材では、比較例の従来の線材よりも破断時間が長く、水素脆化特性が改善されている。
なお参考のため、SEM写真におけるラメラパーライト組織と非ラメラパーライト組織の例を図3に示す。
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について説明したが、これらの実施形態、実施例は、あくまで本発明の要旨の範囲内の一つの例に過ぎず、本発明の要旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。すなわち本発明は、前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲内で適宜変更可能であることはもちろんである。
1 鋼線材
2 中心部
3 表層部
4 中間部

Claims (5)

  1. 長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    かつ中心から半径の90%以上の表層部は、C:0.7〜1.2%、Si:1.5%〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    さらに中心から半径の60%超〜90%未満の中間部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつSiを、中心部または表層部のSi量と同じか、または中心部のSi量と表層部のSi量との中間のSi量で含有し、残部はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする高炭素鋼線材。
  2. 前記中心部、前記表層部および前記中間部が、更に、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、V :0.01〜0.5%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高炭素鋼線材。
  3. 長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部の鋼組織は、初析フェライト、擬似パーライトもしくはベイナイトからなる非ラメラパーライト面積率が10%未満であり、残部がラメラパーライト組織からなり、
    かつ中心から半径の90%以上の表層部の鋼組織は、非ラメラパーライト組織の面積率が15%以上であり、残部がラメラパーライト組織であることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の高炭素鋼線材。
  4. 長手方向に垂直な断面内の中心から半径の60%以下の中心部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    かつ中心から半径の90%以上の表層部は、C:0.7〜1.2%、Si:1.5%〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    さらに中心から半径の60%超〜90%未満の中間部は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.3%、Mn:0.1〜1.0%、N:0.001〜0.006%、Al:0.005〜0.1%を含有し、かつSiを、中心部のSi量または表層部のSi量と同じか、または中心部のSi量と表層部のSi量の中間のSi量で含有し、残部はFe及び不可避不純物からなり、
    引張り強さが1800MPa以上であることを特徴とする高炭素鋼線。
  5. 前記中心部、前記表層部および前記中間部が、更に、質量%で、Cr:0.05〜0.5%、Co:0.05〜0.5%,V :0.01〜0.5%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.005%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項4に記載の高炭素鋼線。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN110747394A (zh) * 2019-10-08 2020-02-04 鞍钢股份有限公司 一种2000MPa级高强镀锌钢丝用盘条及其生产方法

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