JP2017119882A - 難燃性架橋組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面処理金属水和物40質量部以上を含む金属水和物を、120〜300質量部の範囲内であって前記表面処理金属水和物に結合するシランカップリング剤量がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5〜8.0質量部となる割合で、含む難燃性架橋組成物であって、前記ポリオレフィン系樹脂がシラノール結合を介して金属水和物と架橋してなることを特徴とする難燃性架橋組成物。
【選択図】なし
Description
通常、このような金属水和物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して100質量部を超える場合の混練りには、連続混練機、加圧式ニーダーやバンバリーミキサーなどの密閉型ミキサーを用いることが一般的である。
しかし、この方法では、ニーダーでの溶融混合中に架橋してしまい成形体は外観不良を引き起こすばかりでなく、金属水和物を表面処理したシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の大部分は、揮発するか又はシランカップリング剤同士が縮合するおそれがある。そのため、所望の難燃性を得ることができないばかりか、シランカップリング剤同士の縮合が電線の外観悪化の要因となるおそれがある。
このような技術であってさえなお、樹脂が十分な網状構造になっておらず、樹脂と金属水和物の結合は高温で結合が外れるため、高温下では溶融し、例えば電線をハンダ加工中に絶縁材が熔けてしまったり、また成形対を2次加工する際に変形して、発泡を生じたりする問題があった。さらに200℃程度に短時間加熱されると、外観が著しく劣化したり、変形したりする問題があった。
(1)(a)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物100質量部に対してシランカップリング剤0.5〜8.0質量部の割合で表面処理した表面処理金属水和物40質量部以上を含む金属水和物120〜300質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合してシランマスターバッチを調製する工程と、(b)前記シランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを溶融混合した後に成形する工程と、(c)前記(b)工程の成形物を水分と接触させて架橋させる工程とを含むことを特徴とする難燃性架橋組成物の製造方法。
(2)(a)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物100質量部に対してシランカップリング剤0.5〜8.0質量部の割合で表面処理した表面処理金属水和物40質量部以上を含む金属水和物120〜300質量部とを、前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合してシランマスターバッチを調製する工程と、(b−1)シラノール縮合触媒とキャリア樹脂を混合して触媒マスターバッチを製造する工程と、(b−2)前記(a)工程及び(b−1)工程で、それぞれ調製したシランマスターバッチと触媒マスターバッチとを溶融混合した後に成形する工程と、(c)前記(b−2)工程の成形物を水分と接触させて架橋させる工程とを含むことを特徴とする(1)に記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(3)前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、前記シランマスターバッチ中に、表面処理金属水和物上のシランカップリング剤を0.5〜8.0質量部で含有させてなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(4)前記シランカップリング剤を、5.0〜8.0質量部で含有させてなることを特徴とする(3)に記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(5)前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、さらにスチレン系エラストマー3〜40質量部及びパラフィン系オイル3〜40質量部を、前記パラフィン系オイルが前記スチレン系エラストマー100質量部に対して30〜300質量部となる割合で溶融混合することを特徴とする(1)〜(4)いずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(6)前記シランマスターバッチにシランカップリング剤が単独で導入されていないことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(7)前記シランマスターバッチにシラノール縮合触媒が含まれていないことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(8)前記シランマスターバッチに架橋助剤が含まれていないことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(9)前記シランカップリング剤がビニルトリメトキシシラン又はビニルトリエトキシシランであることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(10)前記金属水和物が水酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムであることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(11)前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、前記触媒マスターバッチの前記キャリア樹脂が1〜50質量部であることを特徴とする(2)〜(10)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(12)前記シランマスターバッチの製造の際の溶融混合を、密閉型のミキサーで行うことを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法。
(13)(1)〜(12)のいずれかに記載の難燃性架橋組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする難燃性架橋組成物の成形物を含む成形品。
(14)前記成形物が、電線あるいは光ファイバケーブルの被覆であることを特徴とする(13)に記載の成形品。
(15)表面処理金属水和物40質量部以上を含む金属水和物を、120〜300質量部の範囲内であって前記表面処理金属水和物に結合するシランカップリング剤量がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して3.0〜8.0質量部となる割合で、含む難燃性架橋組成物であって、前記ポリオレフィン系樹脂がシラノール結合を介して金属水和物と架橋してなることを特徴とする難燃性架橋組成物。
本発明の難燃性架橋組成物(難燃性樹脂組成物ともいう。)の製造方法は、(a)ポリオレフィン系樹脂と、該ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、有機過酸化物0.01〜0.6質量部と、金属水和物100質量部に対してシランカップリング剤0.5〜8.0質量部の割合で表面処理した表面処理金属水和物40質量部以上を含む金属水和物120〜300質量部とを前記有機過酸化物の分解温度以上で溶融混合してシランマスターバッチを調製する工程と、(b)前記シランマスターバッチとシラノール縮合触媒とを溶融混合した後に成形する工程と、(c)前記(b)工程の成形物を水分と接触させて架橋させる工程とを含む。
本発明において使用されるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、従来、難燃性樹脂組成物に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、酸共重合成分又は酸エステル共重合成分を有するポリオレフィン共重合体、及びそれらのゴム、エラストマーが挙げられる。この中でも、金属水和物に対する受容性が高く、金属水和物を多量に配合しても機械的強度を維持する効果があり、また難燃性を確保しつつ耐電圧、特に、高温での耐電圧特性の低下を抑制する点から、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体及び酸共重合成分を有する共重合体が好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いられる有機過酸化物は、熱分解によりラジカルを発生して、後述するシランカップリング剤(D)の不飽和基とポリオレフィン系樹脂(A)とのラジカル反応(ポリオレフィン系樹脂(A)からの水素ラジカルの引き抜き反応を含む)によるグラフト化反応を促進させる働きをする。この有機過酸化物(B)は、ラジカルを発生させるものであれば、特に限定されず、R1−OO−R2、R−OO−C(=O)R3やR3C(=O)−OO(C=O)R4で表される化合物が好ましい。ここで、R1、R2、R3及びR4は各々独立にアルキル基、アリール基、アシル基を表す。このうち、本発明においては、R1、R2、R3及びR4がいずれもアルキル基であるか、いずれかがアルキル基で他がアシル基であるものが好ましい。
本発明において、有機過酸化物の分解温度とは、単一組成の有機過酸化物(B)を加熱したとき、ある一定の温度あるいは温度域でそれ自身が2種類以上の化合物に分解反応を起こす温度を意味し、DSC法等の熱分析により、窒素ガス雰囲気下で5℃/分の昇温速度で、室温から加熱したとき、吸熱又は発熱を開始する温度をいう。
本発明に用いられる金属水和物は、後述する表面処理金属水和物を含むものである。すなわち、この金属水和物は、後述する表面処理金属水和物のみでもよく、表面処理金属水和物以外の金属水和物を含んでいてもよい。表面処理金属水和物以外の金属水和物としては、例えば、表面が処理されていない表面未処理の金属水和物、後述するシランカップリング剤(D)以外のシランカップリング剤で表面処理された金属水和物、脂肪酸で表面処理された金属水和物、リン酸エステルで表面処理された金属水和物等が挙げられる。
金属水和物の配合量が120質量部未満の場合は、難燃性架橋組成物に所望の耐燃性や機械特性を得ることができないおそれがある。一方、300質量部を超えると溶融混合が困難になるとともに、押出成形の際に所望の形状を得ることができないおそれがある。
シランカップリング剤は、ラジカルの存在下でポリオレフィン系樹脂(A)にグラフト反応しうる基と加水分解しうる基とを有するものであれば、特に限定されるものではなく、従来よりシラン架橋に用いられる不飽和基を有するシランカップリング剤を使用することができ、例えば下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
上述のシランカップリング剤(D)の使用量は、難燃性架橋組成物の耐燃性、機械特性の点で1.0〜5.0質量部がより好ましく、一方、外観の点で5.0〜8.0質量部であることがより好ましい。
シランカップリング剤(D)の使用量が5.0〜8.0質量部であると押出外観に優れる。その機構の詳細についてはまだ定かではないが、次のように考えられる。すなわち、工程(a)において、シランカップリング剤(D)とポリオレフィン系樹脂(A)が有機過酸化物(B)の分解温度以上で溶融混練されると、シランカップリング剤(D)がポリオレフィン系樹脂(A)にシラングラフト反応をする。このとき、副反応としてポリオレフィン系樹脂(A)同士の重合も起こると考えられる。重合反応により分子量が大きくなった分子はゲルブツとして押出外観に悪影響を与える。しかし、シランカップリング剤(D)の使用量が5.0〜8.0質量部であると、シランカップリング剤(D)とポリオレフィン系樹脂(A)とのシラングラフト反応がより優先的に行われ、結果的にポリオレフィン系樹脂(A)同士の重合による分子量の大きい分子が存在しなくなり、優れた外観になると推測される。
本発明では混練り時のシランカップリング剤の揮発を低減するために、金属水和物をシランカップリング剤で表面処理した表面処理金属水和物を用いる。
金属水和物とシランカップリング剤の表面処理の方法には、特には限定しないが、無処理あるいは予めステアリン酸やオレイン酸、リン酸エステル、又は一部シランカップリング剤で表面処理した金属水和物中に上述のシランカップリング剤(D)を、加熱又は加熱せずに加え混合する方法(湿式処理)や、水などの溶媒に金属水和物を分散させた状態で上述のシランカップリング剤(D)を加える方法(乾式処理)などがあり、詳細は後述する。湿式処理後に乾式処理を行うといった、湿式処理と乾式処理を組み合わせることもできる。なお本発明においては金属水和物中にシランカップリング剤を加熱又は加熱せずに加え混合することが好ましい。
このとき、金属水和物(C)120〜300質量部中の表面処理金属水和物の含有量は、40質量部以上であり、45質量部以上が好ましい。表面処理金属水和物は最大で金属水和物(C)全量となり、好ましくは全量に対して20〜100質量%である。
キャリア樹脂としては、特に限定されないが、上記ポリオレフィン系樹脂(A)と同様のものを用いることができ、好ましくはシラノール縮合触媒と親和性がよく難燃性の点でエチレン系樹脂である。具体的には、エチレン系樹脂としては、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等の上記ポリエチレン(PE)が挙げられ、直鎖型低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが好ましく、直鎖型低密度ポリエチレンが特に好ましい。
本発明におけるシラノール縮合触媒は、グラフト化された不飽和基を有するシランカップリング剤(D)を縮合反応により水分の存在下で結合させる働きがある。このシラノール縮合触媒(G)の働きに基づき、シランカップリング剤(D)を介してポリマー同士が架橋される。その結果、難燃性に優れた樹脂成形体(単に成形体、又は、難燃性架橋組成物ともいう)を得ることができる。
本発明にはスチレン系エラストマーを用いることもできる。スチレン系エラストマー(H)は、分子内にスチレン等の芳香族ビニル化合物を構成成分とするものをいう。したがって、本発明において、分子内にエチレン構成成分を含んでいても芳香族ビニル化合物構成成分を含んでいれば、スチレン系エラストマーに分類する。
前記したスチレン系エラストマーとしては、具体的には、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)、水素化SBS、SEEPS(スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)、水素化SIS、HSBR(水素化スチレン・ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)等を挙げることができる。市販品としては、例えば、セプトン(商品名、(株)クラレ製)、ダイナロン(商品名、J
SR(株)製)等を挙げることができる。
なお、スチレン系エラストマーとしては、スチレン含有量が10〜40%であるSEPS、SEEPS、SEBSを単独で、あるいはこれらの2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
本発明にはパラフィン系オイルを用いることもできる。パラフィン系オイル(I)としては、例えば、非芳香族系の鉱物油軟化剤又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤等を用いることができる。一般に、ゴム用として用いられる鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者の組み合わさった混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系オイル、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系オイル、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系オイルと呼ばれて区別されている。本発明ではこれらのうち、パラフィン系オイルを使用することができる。
パラフィン系オイルの、市販されているものとしては、例えば、ダイナプロセスオイル(商品名、出光興産(株)製)が挙げられる。
また、パラフィン系オイル(I)の配合量は、上記スチレン系エラストマー(H)100質量部に対して30〜300質量部が好ましい。パラフィン系オイル(I)の配合量が上述の範囲内にあると、溶融混練時にスチレン系エラストマー(H)を良好に分散させて練ブツの発生を低減でき、また本発明の難燃性架橋樹脂組成物を電線に用いたときに高温時での電線のブリードを防止できる。
金属不活性剤としては、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、2,2’−オキサミドビス−(エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)などが挙げられる。
また、酸化防止剤を0.5質量部以上加える場合は、シランカップリング剤(D)のポリオレフィン系樹脂(A)へのグラフト反応を阻害する可能性があるため、触媒マスターバッチに含有させる、及び/又は、シランマスターバッチの混練工程の最後に投入することが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法においては、ポリオレフィン系樹脂、有機過酸化物、金属水和物を溶融混合する工程(a)を実施する。
工程(a)においては、最初の工程で、金属水和物及びシランカップリング剤(D)を乾式又は湿式混合して表面処理した表面処理金属水和物(E)を得るのが好ましい。
その際にシランカップリング剤と有機過酸化物を一緒に混合して、フィラーに分散させても良いし、分けて分散させてもよいが、実質的に一緒に混合した方がよい。
有機過酸化物の分解温度未満での混練りの場合、シラングラフト反応が起こらず、所望の難燃性を得ることができないばかりか、押出中に有機過酸化物が反応してしまい、所望の形状に成形できない場合がある。
通常、このような金属水和物がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して100質量部を超える場合、連続混練機、加圧式ニーダーやバンバリーミキサーでの混練りが一般的である。
これは、シランカップリング剤は混練中に揮発して経済的でないばかりか、吸着しないシランカップリング剤が縮合して溶融混合が困難になるとともに、押出成形の際に所望の形状を得ることができないおそれがあるためである。
なお、シランカップリング剤(D)は、金属水和物と同時にポリオレフィン系樹脂(A)等に加えられてもよい。
すなわち、好適な工程(b)においては、キャリア樹脂(F)とシラノール縮合触媒(G)を混合して触媒マスターバッチを得る工程(b−1)を実施する。
キャリア樹脂の溶融温度に応じて、混練温度は、80〜250℃、より好ましくは100〜240℃で行うことができる。なお混練時間等の混練条件は適宜設定することができる。
混練方法は、上記混練方法と同様の方法で行うことができる。
混練方法は、上記混練方法と同様の方法で行うことができる。
水分と接触させる条件は、常温で保管するだけで進行していくが、架橋をさらに加速させるために、温水に浸水させたり、湿熱槽に入れたり、高温の水蒸気にさらしても良い。また、その際に水分を内部に浸透させるために圧力を掛けてもよい。
すなわち、本発明におけるポリオレフィン系樹脂(A)は、金属水和物(E)と加熱混練されると、有機過酸化物(B)成分の存在下でグラフト反応したシランカップリング剤(D)を介して金属水和物(E)と架橋する。ポリオレフィン系樹脂(A)にシランカップリング剤(D)で表面処理した表面処理金属水和物(E)を含有する金属水和物(C)を特定量配合した場合に限り、成形時の押し出し加工性を損なうことなく金属水和物を多量に配合することが可能になり、優れた難燃性を確保しながらも耐熱性、及び機械特性を併せ持つことができる。
さらにこれにキャリア樹脂が加えられ、水分と接触すると、ポリオレフィン系樹脂(A)の未架橋部分と結合したシランカップリング剤及び金属水和物(C)の穴や表面に物理的及び化学的に吸着したシランカップリング剤が加水分解してシラノール縮合し、ポリオレフィン系樹脂(A)同士がシランカップリング剤を介して結合して、架橋する。この反応により得られた樹脂組成物(架橋組成物ともいう)や成形体の難燃性は非常に高くなり、高温でも溶融しない樹脂組成物や成形体を得ることが可能となる。一方で、金属水和物の表面に予めアルコキシ基で化学的に強く結合したシランカップリング剤はこの加水分解反応が生じることがなく、金属水和物との結合が保持される。そこで、ポリオレフィン系樹脂(A)と金属水和物の結合が生じ、金属水和物を介したポリオレフィン系樹脂(A)の架橋が生じる。これにより、押し出し成形性を損なうことなく金属水和物を大量に配合することが可能になるとともに、ポリオレフィン系樹脂(A)と金属水和物の密着性が強固になり、機械強度及び耐摩耗性が良好で、傷つきにくい難燃性樹脂組成物(難燃性架橋樹脂成形体ともいう)が得られる。
ポリオレフィン系樹脂Aはエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂として三井・デュポンケミカル社製の商品名EV180であり、ポリオレフィン系樹脂Bは直鎖型低密度ポリエチレンとして三菱油化社製のノバテックPE UE−320であり、ポリオレフィン系樹脂Cはエチレン−ブテン共重合体としてダウ・ケミカル社製のエンゲージ7256を使用した。
スチレン系エラストマーは、スチレンーエチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)(商品名:セプトン4077、(株)クラレ社製、スチレン成分含有量30%)を使用した。
パラフィン系オイルは、ダイナプロセスオイルPW90(商品名)、出光興産(株)製を使用した。
酸化防止剤AはBASF社製のヒンダードフェノール系酸化防止剤 IRGANOX 1010(ペンタエリスリチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート))、架橋助剤は新中村化学社製のNKエステル3G(トリエチレングリコールジメタクリレート)を使用した。
キャリア樹脂は、直鎖型低密度ポリエチレンとして三菱油化社製のノバテックPE UE−320を使用した。
酸化マグネシウムGは神島化学社製マグシーズ FK−621(表面処理 ビニルトリメトキシシラン 1.0%)、水酸化マグネシウムHは協和キスマ5AL(表面処理 ステアリン酸0.7%)、水酸化マグネシウムJは島化学社製のマグシーズ X−6を、それぞれ、シランカップリング剤で表面処理せずに用いた。
その後、温度60℃、湿度95%の恒温恒湿槽内にて48時間水分と接触させて架橋させ、各難燃性樹脂組成物を得た(工程(c))。
実施例18及び19は、表面処理金属水和物を加える代わりに、金属水和物及びシランカップリング剤を同時にBMミキサーに投入した。
比較例10はシランマスターバッチの製造の際の温度を140℃で加熱混練した。
また、引張伸びは100%以上をA、それ未満をCとした。Aが合格レベルである。
比較例1はシランカップリング剤の表面処理が少ないため耐熱性が劣った。
比較例2はシラノール縮合触媒が含まれてない触媒マスターバッチ2を用いているため耐熱性が劣った。
比較例3は金属水和物が脂肪酸で表面処理されたものであってシランカップリング剤で表面処理されたものではないため耐熱性及び機械特性が劣った。
比較例4は金属水和物の量が少ないため難燃性が劣った。
比較例5は金属水和物の量が多いため機械特性が劣った。
比較例6は有機過酸化物の量が少ないため耐熱性及び機械特性が劣った。
比較例7は有機過酸化物の量が多いため機械特性及び押出しの際の外観が劣った。
比較例8はシランカップリング剤で表面処理された金属水和物の量が少ないため耐熱性が劣った。
比較例9は、触媒マスターバッチを用いずに、シラノール縮合触媒、シランカップリング剤及び有機過酸化物Aを最初に同時混合した後にポリオレフィン系樹脂と混合しているので、混練中又はマスターバッチ調製後に、シランカップリング剤の架橋反応が進んでしまい、押出の際の外観が劣った。
比較例11はシランカップリング剤、有機過酸化物を後に加えたため押出外観が劣った。
比較例12はシランカップリング剤、有機過酸化物を後に加えているうえ、酸化防止剤が多量に入っているためグラフト阻害が起こり、耐熱性が劣った。
比較例13はシランカップリング剤の表面処理量が少なく、押出外観が劣った。
なお、参考例1はシランカップリング剤の表面処理量が多い金属水和物Dを使用しているため押出しの際の外観が劣った。
参考例2は架橋助剤を含むため機械特性及び押出しの際の外観が劣った。
参考例3は触媒マスターバッチの割合が少なく、縮合触媒の分散不良が起こり、耐熱性が劣った。
参考例4は触媒マスターバッチの割合が多く、非架橋樹脂の割合が減りすぎて、耐熱性が劣った。
Claims (1)
- 表面処理金属水和物40質量部以上を含む金属水和物を、120〜300質量部の範囲内であって前記表面処理金属水和物に結合するシランカップリング剤量がポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5〜8.0質量部となる割合で、含む難燃性架橋組成物であって、
前記ポリオレフィン系樹脂がシラノール結合を介して金属水和物と架橋してなることを特徴とする難燃性架橋組成物。
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