JP2017119850A

JP2017119850A - 耐引裂伝播性を有する生分解性フィルム

Info

Publication number: JP2017119850A
Application number: JP2016246696A
Authority: JP
Inventors: 小林　秀一; Shuichi Kobayashi; 秀一小林; 朋宙道祖土; Tomomichi Saido
Original assignee: Achilles Corp
Current assignee: Achilles Corp
Priority date: 2015-12-24
Filing date: 2016-12-20
Publication date: 2017-07-06
Anticipated expiration: 2036-12-20
Also published as: JP6887796B2

Abstract

【課題】製膜性が良好で、設置作業時に破れ難く、耐引裂伝播性を有する生分解性フィルムの提供。【解決手段】ポリブチレンアジペートテレフタレート（ＰＢＡＴ）、ポリブチレンサクシネートアジペート（ＰＢＳＡ）、ポリブチレンサクシネート（ＰＢＳ）から選ばれる少なくとも１種類以上の生分解性樹脂と、炭酸カルシウムとを含有してなる生分解性フィルム１であり、前記炭酸カルシウムは、表面修飾を施された微粒子であり、平均粒径が８０〜２００ｎｍで、前記生分解性フィルムを構成する組成物１００重量％に対し、２０重量％以上含有されている生分解性フィルム１。生分解性フィルム１であって、厚みが１０〜１００μｍである農業用マルチフィルム。【選択図】図２

Description

本発明は生分解性フィルムに関し、例えば農業用のハウスやマルチフィルム等に用いられる生分解性フィルムに関する。

従来、野菜などの栽培において生産性を向上させるために、土壌の温度を一定に保ち、農作物の育成を促進したり、雑草の発生を抑制したりする農業用マルチフィルムが農業資材として広く用いられている。
ここで、前記農業用マルチフィルムは、使用後回収し、廃棄処理する必要がある。しかし、農業は使用する土地も広いことが多く、回収は重労働となっている。

上記問題を解決する手段として、生分解性フィルムがある。該生分解性フィルムは、使用後、土壌にすき込むことによって、土中にて分解される。この為、重労働とされている前記回収作業などを省略でき、農作業の負担を減らすことができる。

前記生分解性フィルムとしては、例えばポリエステル系樹脂等がよく使用されている。しかし、生分解性フィルムとして用いられる前記ポリエステル系樹脂からなるフィルムは、もしフィルム上のいずれかの箇所にでも傷を有している場合、引っ張り等の力が加わると、前記傷から裂け目が広がりやすいことが問題となっている。例えばマルチフィルムとして展張する際等には、主にトラクター等でフィルムを引っ張り出しながら田畑に敷いていくが、石等の突起物でフィルムが傷ついた際等、前記トラクターの引っ張り出す力によって一気に裂け目が広がり、綺麗に展張し難いなどの問題が生じていた。
該課題を解決する生分解性フィルムとして、例えば特許文献１に開示されている生分解性ポリエステルフィルムがある。

特表２０１４−５２３９６２号公報

上記特許文献１では、少なくとも、脂肪族及び芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジヒドロキシ化合物を基礎とする生分解性ポリエステルと、ポリヒドロキシアルカノエートに、炭酸カルシウム、滑石を含有する生分解性ポリエステルフィルムが開示されており、引裂伝播性の改善を計っている。しかし、該技術においては、炭酸カルシウムといった無機粒子の分散性が悪く、混合中に凝集が起こり易い。結果として、製造されたフィルムには該炭酸カルシウムが凝集している箇所が点在し、良好に分散されていないため、展張の際の張力によって該箇所からフィルムが破れ易くなるといった問題があった。また、添加した炭酸カルシウムが凝集して点在、すなわち良好に分散していないため、結果として傷ついた際の裂け目の伝播の改善が十分ではなかった。

本発明はかかる課題を解決し、設置作業時等に破れ難く、たとえ傷が付いても該傷が裂け目として伝播し難い、すなわち傷が広がり難い生分解性フィルムを提供することである。

かかる課題に対し、鋭意検討した結果、生分解性フィルム中に炭酸カルシウムを良好に分散させることで引裂伝播強度を向上させる点に着目し、本発明に至った。

すなわち、本発明は、（１）炭酸カルシウム微粒子と生分解性樹脂とを含有してなる生分解性フィルムであり、前記生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート（ＰＢＡＴ）、ポリブチレンサクシネートアジペート（ＰＢＳＡ）、ポリブチレンサクシネート（ＰＢＳ）から選ばれる少なくとも１種類以上である。
また、前記炭酸カルシウムは、表面に官能基を有する微粒子で、平均粒径が８０ｎｍ以上２００ｎｍ以下であり、前記生分解性フィルムを構成する組成物１００重量％に対し、２０重量％以上含有されていることを特徴とする耐引裂伝播性を有する生分解性フィルム。
（２）前記請求項１に記載の生分解性フィルムであって、厚みが１０μｍ以上１００μｍ以下であることを特徴とする農業用マルチフィルム。

本発明によれば、フィルム中に炭酸カルシウムを良好に分散させることができ、展張中の緊張力による破れの発生を良好に抑制でき、且つ仮に展張中等に土壌中の石等による引っ掻き傷等が付いたとしても該傷から裂け目が伝播してフィルムが裂けてしまうといった問題を解消できる。

従来の生分解性フィルムの裂け方を示す参考図。本発明の生分解性フィルムの裂け方を示す参考図。

以下、本発明の生分解性フィルムについて図と併せて詳細に説明するが、該説明は本発明を何ら限定するものではない。
なお、各図中の（ａ）は端部が傷付いたフィルムであり、（ｂ）は（ａ）に示す矢印方向の力が加わった際のフィルムの引裂き挙動を示している。

［生分解性樹脂］
本発明の生分解性フィルムは、生分解性樹脂を主成分としてなる。生分解性樹脂は、詳しくは、ポリブチレンアジペートテレフタレート（ＰＢＡＴ）、ポリブチレンサクシネートアジペート（ＰＢＳＡ）、ポリブチレンサクシネート（ＰＢＳ）から選ばれる少なくとも１種類以上である。
なお、ＰＢＡＴはＢＡＳＦ製「エコフレックス」、ＰＢＳ及びＰＢＳＡは昭和電工株式会社製「ビオノーレ」や三菱化学株式会社製「ＧＳＰｌａ」等が挙げられる。

また、好ましい樹脂組成としては、ポリブチレンテレフタレート（ＰＢＡＴ）、ポリブチレンサクシネート（ＰＢＳ）、ポリブチレンサクシネートアジペート（ＰＢＳＡ）等の混合物が好ましく、その混合比率としては、ＰＢＡＴは２０〜８０質量％、ＰＢＳは０〜６０質量％、ＰＢＳＡは０〜６０質量％であることが好ましい。
なお、本発明の効果を損ねない範囲で他の生分解性樹脂や添加剤等を含んでもよい。

［炭酸カルシウム］
炭酸カルシウムは、引裂き伝播性を抑制するために添加させるものである。
前記炭酸カルシウムは、表面修飾が施され、表面に官能基を有する粒子であり、レーザー解析法によって導き出される平均粒径が８０〜２００ｎｍである。
前記表面修飾は、例えばパルミトレイン酸、パルミチン酸、リノレン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の飽和又は不飽和脂肪酸によって表面処理することによって形成され、粒子の分散性を向上させる。
また、前記平均粒径が８０ｎｍ未満の場合、前記表面処理を施していても、粒子間のファンデルワールス力が大きすぎ、結果として、部分的に炭酸カルシウムの分散状態が悪化して凝集体が生じる箇所が発生し、該箇所から裂け等の傷が発生し易い。一方、２００ｎｍを超える場合、フィルムの厚みが薄い場合にはフィルム表面の平滑性が失われ易く、また、製膜時に穴あきなどの不良が発生しやすくなるおそれがある。

更に、前記炭酸カルシウムの含有量は、前記生分解性フィルムを構成する組成物１００重量％に対し、少なくとも２０重量％以上である。
前記含有量が２０重量％未満の場合、フィルム中の炭酸カルシウムの分散密度が足りず、耐引裂伝播性を得られにくい。また、４０重量％を超える場合、樹脂に対する無機物の量が多くなり、引張物性が低下するおそれがあるため、炭酸カルシウムの含有量は生分解性フィルムを構成する組成物１００重量％に対し、２０〜４０重量％とすることが好ましい。

本発明の生分解性フィルムは、緊張力による傷が生じ難く、また、傷が付いても該傷が伝播し難いため、農業用マルチフィルムとして好適に使用できる。農業用マルチフィルムとする場合、１０μｍ以上１００μｍ以下の厚みとすることが好ましい。厚みが１０μｍ未満の場合、ハンドリング性が低下するおそれがあり、一方、１００μｍを超える場合、分解期間が長くなりすぎるおそれがある。

また、本発明の効果を損なわない範囲で、通常、生分解性フィルムに用いられている添加剤を混合することができる。例えば、紫外線吸収剤、顔料、滑剤、可塑剤等が挙げられる。

本発明のフィルムの製造方法としては、インフレーション成形等の溶融押出成形や、カレンダー成形等の従来公知の方法が用いられる。尚、本発明の生分解性フィルムを、農業用マルチフィルムとして用いる場合、成形性の観点からインフレーション成形が好ましい。

各実施例について、表に記載の配合比の組成物を、Ｔダイ押出機を用いて厚み２０μｍの生分解性フィルムを製膜し、外観、製膜性、引裂き物性を評価した。
［試料］
ＰＢＡＴ：ＢＡＳＦ製ＥｃｏｆｌｅｘＦｂｌｅｎｄＣ１２００
ＰＢＳ：三菱化学株式会社製ＡＺ９１ＴＮ
ＰＢＳＡ：三菱化学株式会社製ＡＤ９２ＷＮ

［外観］
製膜したフィルムを、透過台を用いて目視で確認し、異物数を測定し、以下の基準で評価した。
○：０．５ｍｍ^２以上の異物が１０個未満／ｍ^２
△：０．５ｍｍ^２以上の異物が１０個以上／ｍ^２、２０個未満／ｍ^２
×：異物が全面に発生し、良好な製膜が不可能
［製膜性］
以下の基準で評価した。
○：樹脂単体と同様に製膜可能
△：製膜できるが、安定化が困難
×：製膜できない
［引裂き物性］
＜引裂き性＞
手でＭＤ方向へ引裂いて感触を確認した。
○：引裂き時に抵抗を感じ、一直線に裂け目が伝播しなかった
×：一直線に裂け目が伝播した
＜エルメンドルフ＞
縦７６ｍｍ、横６３ｍｍの試料を用意し、ＭＤ方向又はＴＤ方向中央に２０ｍｍの切れ込みを入れ、エルメンドルフにて引裂き強度を確認し、以下の基準で評価した。
〔ＭＤ方向〕
○：１００Ｎ以上
×：１００Ｎ未満

本発明の生分解性フィルムは、炭酸カルシウムが良好に分散しており、炭酸カルシウムの凝集が少なく、緊張力に対する裂けの発生を良好に抑制できる。また、炭酸カルシウムが良好に分散していることで、傷が発生しても、該傷から裂け目が伝播し難い生分解性フィルムを得られる。

１：生分解性フィルム
２：傷
３：裂け目

Claims

炭酸カルシウム微粒子と生分解性樹脂とを含有してなる生分解性フィルムであり、
前記生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート（ＰＢＡＴ）、ポリブチレンサクシネートアジペート（ＰＢＳＡ）、ポリブチレンサクシネート（ＰＢＳ）から選ばれる少なくとも１種類以上であり、
前記炭酸カルシウムは、表面に官能基を有する微粒子で、平均粒径が８０ｎｍ以上２００ｎｍ以下であり、前記生分解性フィルムを構成する組成物１００重量％に対し、２０重量％以上含有されていることを特徴とする耐引裂伝播性を有する生分解性フィルム。
前記請求項１に記載の生分解性フィルムであって、厚みが１０μｍ以上１００μｍ以下であることを特徴とする農業用マルチフィルム。