JP2017114027A - 樹脂フィルムロール、樹脂フィルムロールの製造方法、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、薄膜の樹脂フィルムのようなエンボス加工をすることが難しい樹脂フィルムなどにエンボス加工を施したところで、そもそも凹凸がつきにくく、更に潰れやすいため、搬送する際に起きるスリップを防止できるという効果を維持及び期待できないという問題があった。
しかしながら、上述のように、樹脂フィルムを薄膜にすると、エンボス加工による凹凸がつきにくく、更に潰れやすい。このようなフィルムロールは巻きが緩いため、巻きずれ、チェーン状、馬の背故障などの欠陥が発生するという懸念がある。
また、エンボス加工がない樹脂フィルムに対し、張力を上げて硬い巻にすると、巻芯転写や、異物転写を起こしやすい。そのため樹脂フィルムの端部に凸部を加工し、程よい張力で巻き上げることを可能とする必要がある。
例えば、特許文献1に開示された技術では、エンボス加工によるフィルムロールの耐久性を改善している。しかしながら、上述のように、エンボス加工では、例えば、フィルムが薄膜になる程凹凸の形成が難しいため、凸部の高さが低くなり、また、形成された凸部も潰れやすいため、上記技術には、フィルムロールの耐久性、ひいては、フィルムの欠陥を回避する、という点において改良の余地があった。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
前記樹脂フィルムの幅手方向の両端部の内側に、長手方向に沿って延びる平面部を有し、
前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第1凸部を有し、
前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第2凸部を有するか、又は、
前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部の表面と、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記平面部の表面とが、同一平面内にあることを特徴とする樹脂フィルムロール。
前記第1凸部及び前記第2凸部の少なくとも一方を、前記樹脂フィルムの前記両端部を溶融させることによって形成することを特徴とする樹脂フィルムロールの製造方法。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
ここで、エンボス加工とは、エンボスロール900によって、樹脂フィルムなど加工対象910の裏面を押し上げて浮かす(したがって裏面は凹む)方式(図5(A)に示す方式)と、表面に特殊なインクを付着することで凸部を形成する(裏面は凹まない)方式が知られている。樹脂フィルムの加工においては、前者の押し上げる方式が採用される。
したがって、エンボス加工部920の高さが十分でない、又は、形成されたエンボス加工部920が潰れてしまうということが考えられる。このため、樹脂フィルムに対してエンボス加工を施したとしても、スリップを防止し、傷の発生を抑制するという効果及び維持及び期待できないという問題が生じる。この問題は、特に、厚さの薄い樹脂フィルムほど顕著に生じると考えられる。
本発明者は、図5(B)に示すように、レーザー装置であるスリッター38によってレーザー光を照射して加熱し、溶融によって樹脂フィルム200をスリットすれば、スリットされた端部が溶融することで厚膜化した第1凸部220A及び第2凸部220B(以下、特別な区別の必要がない場合は、これらをまとめて「凸部220」ともいう。)が形成されることを発見した。さらに、本発明者は、本発明に係る凸部220は、エンボス加工によって形成されたエンボス加工部920と違い、反対側に凹部を有さず密であるため、薄膜であっても潰れないと推察する。
すなわち、本発明によれば、薄膜の樹脂フィルムやエンボス加工をすることが難しい樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロールであっても、端部に潰れにくい凸部220を有するため、搬送する際に、巻かれた樹脂フィルム同士がスリップすることを回避でき、ひいては、樹脂フィルムの表面に傷が生じることを抑制できる。この結果、本発明の樹脂フィルムロールを偏光板などに加工する際にも、樹脂フィルムに生じた傷が原因となって発生する接着の不良を、回避できる。
特に、傷が生じることを抑制できるという上記効果は、熱可塑性樹脂として、硬度の高いトリアセチルセルロースなどより、硬度が低く傷つきやすいシクロオレフィン系樹脂などを採用した場合において、顕著である。
特に、硬巻として樹脂フィルムロールの耐久性を向上させることができるという上記効果は、熱可塑性樹脂として、硬度や弾性率の高いトリアセチルセルロースなどより、硬度や弾性率が低く傷つきやすいシクロオレフィン系樹脂などを採用した場合において、顕著である。
上記樹脂フィルムロールの製造方法においては、樹脂フィルムの前記両端部を、レーザー光を照射すること又はヒーターによって加熱することによって溶融させることが両端部の凸部を好適に形成でき、この結果、搬送する際の擦り傷発生を抑制でき、さらに、樹脂フィルムロールを程よい張力で巻き上げることができ、巻きずれ、チェーン状、馬の背故障などの欠陥や、巻芯転写及び異物転写を抑制できるため好ましい。
なお、上記樹脂フィルムロールの製造方法においては、樹脂フィルムを溶液流延製膜法によって形成することが、薄膜の樹脂フィルムを形成するための加工性がよく、種々の添加剤を添加しやすいため好ましい。
本発明の樹脂フィルムロールは、熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルムが巻かれた樹脂フィルムロールであって、前記樹脂フィルムの幅手方向の両端部の内側に、長手方向に沿って延びる平面部を有し、前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第1凸部を有し、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第2凸部を有するか、又は、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部の表面と、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記平面部の表面とが、同一平面内にあることを特徴とする。
本発明に係る樹脂フィルムは、幅手方向の両端部の内側に、長手方向に沿って延びる平面部を有し、少なくとも一方の面の前記両端部に、前記長手方向に沿って第1凸部を有し、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第2凸部を有するか、又は、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部の表面と、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記平面部の表面とが、同一平面内にある。
また、本発明に係る樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分として含有する。
なお、本発明に係る樹脂フィルムの幅手方向の両端部とは、樹脂フィルムの幅手方向における両端部の最端部から、幅手方向に、10mm以内の範囲をいう。
図1(A)において、樹脂フィルムの幅手方向の両端部の内側に、長手方向(図1(A)に示す断面に直交する方向)に沿って延びる平面部が形成されている。
樹脂フィルム100の一方の面の両端部EAには第1凸部120が形成されている。
樹脂フィルム100においては、第1凸部120を有する面とは反対側の面の前記両端部EAの表面と、前記第1凸部120を有する面とは反対側の面の前記平面部の表面とが、同一平面P内にある。
樹脂フィルム200の一方の面の両端部EAには第1凸部220Aが形成されている。
樹脂フィルム200においては、前記第1凸部220Aを有する面とは反対側の面の両端部EAが、前記樹脂フィルム200の長手方向に沿って第2凸部220Bを有する。
本発明に係る平面部とは、フィルムの幅手方向の両端部の内側に、長手方向に沿って形成された部分である。すなわち平面部とは、樹脂フィルムにおいて、両端部を除いた部分である。
第1凸部及び第2凸部の態様は、平面部の表面よりも突出していれば、特に限定されない。中でも、第1凸部及び第2凸部は、樹脂フィルムの幅手方向における両端部の最端部から10mm以内の厚さの最大値が、平面部の厚さの平均値よりも1〜50μmの範囲内で厚くなるよう形成されていることが、本発明の効果発現の観点から好ましい。
また、第1凸部及び第2凸部は、樹脂フィルムの長手方向に沿って一条の凸部(凸条)として形成されていてもよいし、非連続の凸部が樹脂フィルムの長手方向に沿って複数形成されていてもよい。
第1凸部及び第2凸部を含む両端部の断面形状は、特に限定されず、加工の仕方によって円形又は多角形などであってよく、様々なパターンがある。例えば、図2に示すように、丸型(図2の(A))、楕円型(図2の(B)又は(C))、片面型(図2の(D))、雫型(図示しない。)などである。さらに、両端部を加熱した後に型押し等により形を成型しても良い。この場合、端部の断面形状を、多角形とすることもでき、例えば、三角形(図2の(E))、四角形(図2の(F))、六角形(図2の(G))とすることができる。
第1凸部及び第2凸部の断面形状の観察方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、例えば、ミクロトーム(Leica社製EM UC6)により切断し、断面をSEM(Hitachi High−Technologies Corporation社製S4800)にて観察できる。
凸部を形成する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、熱風を吹きだす加熱装置や赤外線ヒーターによって、両端部を加熱し、溶融させることで、溶融した端部を樹脂フィルムの内側に融着させ、凸部を形成することとしてもよい。
他にも、例えば、樹脂フィルムに対してスリットした後、樹脂フィルムロールとする場合、樹脂フィルムを搬送させながら、ヒートカットや、レーザー光を照射するなどして、スリット加工すれば、樹脂フィルムの両端部が熱で溶融するため、スリットしつつ凸部を形成できるため好ましい。なお、この例において、樹脂フィルムを搬送する方向は、特に限定されず、例えば、地面に対し水平方向であっても、垂直方向であってもよい。搬送方向が地面に対し水平方向である場合、溶融された樹脂フィルムが一方(地面側)の面に滴状に垂れ下がると考えられ、一方の面のみに凸部を有する樹脂フィルムロールができやすいと推察される。また、地面に対し垂直方向である場合、溶融された樹脂フィルムが両方の面に付着し、第1凸部及び第2凸部が形成されると考えられ、この結果、両端部の断面形状が丸型、楕円型となりやすいと推察される。
レーザー光照射によるスリット加工の原理は、樹脂フィルムに含有される樹脂がレーザーを吸収し、それにより加熱されることで樹脂フィルムが裁断される。
なお、レーザーには一般的にCO2レーザーが使用されるが、このCO2レーザーの吸収はカルボニル基(C=O)で起こるため、吸収率は樹脂によって異なる。このため、樹脂フィルムに含有される樹脂によって溶融具合が変わり、凸部の形成具合も樹脂によって異なる。この吸収率は、例えば、トリアセチルセルロース(以下、「TAC」ともいう。)、シクロオレフィン系樹脂(以下、「COP」ともいう。)、脂環式ポリオレフィンであれば、TACが最も吸収率がよく、その次がCOPであり、脂環式ポリオレフィンの吸収率は0である。
また、このような観点から、添加剤と添加しやすい溶液流延製膜法によって、本発明に係る樹脂フィルムが製膜されることが適している。
なお、レーザー光の照射において、出力及び速度は、凸部を形成できるものであれば、特に制限されず、また、1回の照射で樹脂フィルムを切断しても、複数の照射で切断してもよい。
このようなレーザー光照射の出力は、樹脂フィルムが含有する樹脂や添加剤にもよるが、例えば、10〜800Wであって、1回の照射で切断する場合、100〜350Wが好ましく、2回の照射で切断する場合には、例えば、50〜200Wが好ましい。
ヒートカットとしては、特に限定されず、公知のものを使用できるが、本発明にかかる樹脂フィルムをスリット加工でき、かつ溶融させるものであることが好ましい。具体的には、例えば、樹脂フィルムに主成分として含有される樹脂のガラス転移点Tg以上に温められた刃を使用することなどによって行われることが挙げられる。
本発明で熱可塑性とはDSC測定装置(パーキンエルマー社製、DSC−7)で測定したガラス転移温度が320℃以下のものをいう。
本発明に係る熱可塑性樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル系添加剤、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂などを挙げることができる。この中でも、シクロオレフィン系樹脂であることが好ましい。これは、例えば、シクロオレフィン系樹脂は、セルロースアセテートに比べ、吸湿性や透湿性が低く、耐水性、耐熱性、透明性や寸法安定性などが良好で、例えば、偏光子保護フィルムなどの光学フィルムとして用いる場合に優れた熱可塑性樹脂として注目されているためである。なお、シクロオレフィン系樹脂はセルロースアセテートよりも硬度が低いことから、樹脂フィルムを成膜した際に表面に傷が発生することが通常は懸念されるが、本発明の樹脂フィルムロールであれば、この懸念を回避できる。
本発明に係るシクロオレフィン系樹脂としては、次のような構造を有する(共)重合体が挙げられる。
上記一般式(1)中、R1及びR3が水素原子又は炭素数1〜10、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基を表す。R2及びR4が水素原子又は1価の有機基であって、R2及びR4の少なくとも一つは水素原子及び炭化水素基以外の極性を有する極性基を表す。mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、更に好ましくは0〜2、特に好ましくはm=1、p=0であるものである。m=1、p=0である特定単量体は、得られるシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
樹脂フィルムは、耐候性を向上させるために、必要に応じて紫外線吸収剤を更に含みうる。紫外線吸収剤は、好ましくは波長370nmでの透過率が10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下となるものでありうる。
樹脂フィルムは、表面に滑り性等を付与するために、マット剤(微粒子)を更に含みうる。マット剤は、無機化合物で構成されてもよいし、樹脂で構成されてもよい。
ポリエステル系添加剤は、ジオールとジカルボン酸とを脱水縮合反応させた後;得られる反応生成物の分子末端の(ジオール由来の)ヒドロキシ基を、環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸のカルボキシ基と脱水縮合反応させて得られる化合物である。具体的には、ポリエステル系添加剤は、下記一般式(2)で表される構造を有する。
式中、Bは、環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸から誘導される基を表す。環構造とは、脂肪族炭化水素環、脂肪族ヘテロ環、芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を有する構造をいい、好ましくは脂肪族炭化水素環又は芳香族炭化水素環を有する構造をいう。環構造を有するヒドロキシ基含有モノカルボン酸は、炭素原子数5〜20の脂環式モノカルボン酸、炭素原子数7〜20の芳香族モノカルボン酸及びそれらの混合物でありうる。
カラム:「TSK gel SuperHZM−M」×2本及び「TSK gel SuperHZ−2000」×2本
ガードカラム:「TSK SuperH−H」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
ポリエステル系添加剤の数平均分子量は、縮合又は重縮合の反応時間によって調整することができる。
〈マルテンス硬度〉
マルテンス硬度(ビッカース硬度)とは、ビッカース圧子及び稜線同士の確度が115度の三角錐圧子を用いた微小硬度計で、試験力が負荷された状態で測定される硬度であり、負荷増加時の試験力−押し込み深さ曲線の関係から『試験力Fを、表面から圧子の侵入した表面積Asで除した値』と定義され、単位はN/mm2で表される。マルテンス硬度(HMT115)は、下記式(A)で表される。
Fmax=最大試験力
hmax=深さ最大値
マルテンス硬度の測定は、23℃において行われる。例えば、超微小硬度計DUH−211(島津製作所製)を用いて行うことができる。
[弾性率の測定]
本発明における23℃での弾性率は、JIS K 7127に記載の方法に準じつつ、例えば、引っ張り試験器(株)オリエンテック製テンシロンRTA−100を用い、23℃の環境下で引っ張り試験を行うことで、弾性率を測定できる。
本発明に係る樹脂フィルムは、23℃において、弾性率が1.5GPa以上であることが、樹脂フィルムの剛性を十分にできるため、樹脂フィルムロールを程よい張力で巻き上げることができ、ひいては、巻きずれ、チェーン状、馬の背故障など巻きが緩いことに起因する欠陥を抑制できることから好ましい。また、弾性率は高いほど好ましいが、使用可能な材料の関係から6GPa程度が現実的な上限であると考えられる。
本発明に係る樹脂フィルムは、溶液流延製膜法で製造された樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムの製膜方法として、溶融流延製膜法を採用すると、溶融物の粘度等の関係で、本発明に係るシリカ粒子を層内の面方向及び厚さ方向に均一に含有させることは難しいが、溶液流延製膜法によって製造することで、ドープ粘度を調整することができ、シリカ粒子を均一に分散することが容易となり、更に分散した一次粒子から効果的に二次凝集体を形成できる観点から、好ましい製膜方法である。また、溶液流延法であれば、ポリエステル系添加剤などの添加剤を添加しやすいため好ましい。
シクロオレフィン系樹脂(熱可塑性樹脂)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中でシクロオレフィン系樹脂、シリカ粒子、場合によって、位相差上昇剤又はその他の化合物を撹拌しながら溶解しドープを調製する工程又はこのシクロオレフィン系樹脂溶液に、前記シリカ粒子、位相差上昇剤又はその他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを調製する工程である。
(2−1)ドープの流延
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属支持体31、例えば、ステンレスベルト又は回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
ウェブを流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程であり、後述する剥離時の残留溶媒量を制御する工程である。
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは樹脂フィルムとして次工程に送られる。
残留溶媒量(%)=(ウェブ又は樹脂フィルムの加熱処理前質量−ウェブ又は樹脂フィルムの加熱処理後質量)/(ウェブ又は樹脂フィルムの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
乾燥工程は予備乾燥工程(第1乾燥工程)、本乾燥工程(第2乾燥工程)に分けて行うこともできる。
金属支持体からウェブ剥離して得られた樹脂フィルムは第1乾燥装置にて予備乾燥させる。樹脂フィルムの予備乾燥は、樹脂フィルムを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、テンター乾燥機のように樹脂フィルムの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
樹脂フィルムは、延伸装置34にて残留溶媒量下で延伸処理を行うことで、樹脂フィルムの平面性が向上し、樹脂フィルム内の分子の配向を制御することで、所望の位相差値Ro及びRtを得ることができる。
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→斜め方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。
(式1において、d1は延伸後の樹脂フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、d2は延伸前の樹脂フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、tは延伸に要する時間(min)である。)
樹脂フィルムは、例えば位相差上昇剤を含有し、かつ延伸することにより所望の位相差値を付与し、光学フィルム(いわゆる、光学補償フィルム。)とすることができる。
式(ii):Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
〔式(i)及び式(ii)において、nxは、樹脂フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nyは、樹脂フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nzは、樹脂フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、樹脂フィルムの厚さ(nm)を表す。〕
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、樹脂フィルムを延伸する延伸段階、樹脂フィルムを延伸状態で保持する保持段階及び樹脂フィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸率での延伸を、延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えば良い。
本乾燥工程では、第2乾燥装置(本乾燥装置35)によって延伸後の樹脂フィルムを加熱して乾燥させる。
所定の熱処理又は冷却処理の後、巻取り前に、ヒートカットするスリッター38としてレーザー装置などを設けて端部を切り落とすことが好ましい。ヒートカットを採用することで、樹脂フィルムの両端部を溶融させることができ、第1凸部及び第2凸部の少なくとも一方を良好に形成できるため好ましい。更に、樹脂フィルムの幅手方向の両端部の内側(すなわち、平面部)に、長手方向に沿ってエンボス加工(以下、「ナーリング加工」ともいう。)を施し、エンボス加工部を有する樹脂フィルムロールとすることとしてもよい。
なお、このスリット加工工程をヒートカットするスリッターではなく、例えば、常温の刃物などを用いてする場合、更に、スリット加工度に、第1凸部又は第2凸部を形成する工程を有する。
この第1凸部又は第2凸部を形成する工程では、樹脂フィルムの両端部を、ヒーターによって加熱することで、樹脂フィルムの両端部を溶融させ、必要に応じて溶融した両端部を型押しするなどして、第1凸部又は第2凸部を形成することとしてもよい。
樹脂フィルム中の残留溶媒量が2質量%以下となってから樹脂フィルムとして巻取る工程であり、残留溶媒量を好ましくは0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好な樹脂フィルムを得ることができる。
(フィルム長、幅、膜厚)
本発明に係る樹脂フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましい。また、本発明に係る樹脂フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.3m以上であり、特に1.3〜4mであることが好ましい。
本発明に係る樹脂フィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の各種画像表示装置やタッチパネルに具備される機能フィルムであることが好ましい。具体的には、本発明に係る樹脂フィルムは、液晶表示装置又は有機EL表示装置用の光学フィルム(例えは、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、防眩フィルム、帯電防止フィルム、視野角拡大等の光学補償フィルムなど)として用いることができる。
以下に本発明の樹脂フィルムロールから巻きほぐされた樹脂フィルムの使用例として、光学フィルムである偏光板保護フィルムとして偏光子及び画像表示装置に具備された場合について説明する。
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子の他方の面には、必要に応じて本発明に係る樹脂フィルムが偏光板保護フィルムや基材フィルムとして採用され、配置されてもよいし、他の偏光板保護フィルムが配置されてもよい。
<液晶表示装置>
本発明に係る画像表示装置としては、具体的には、例えば、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを含む液晶表示装置が挙げられる。
〔主ドープ1の調製〕
下記組成の主ドープ1を調製した。まず加圧溶解タンクにジクロロメタンとエタノールを添加した。ジクロロメタンとエタノールの混合溶液の入った加圧溶解タンクにシクロオレフィン系樹脂であるCOP1を撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ1を調製した。
COP1(シクロオレフィン系樹脂(ARTON G7810、JSR(株)製))
100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
以上の成分を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解して主ドープ1を調製した。次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度31℃、1800mm幅でステンレスベルト基体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は28℃に制御した。
加工温度:170℃
加工圧力:0.5MPa
加工幅 :10mm(フィルム両端部)
加工高さ:5μm
エンボス対向ロール:金属製
フィルムの流れ方向に連続したテープ状サンプル(長さ3m)を採取し、市販される測定器(例えば、(株)セイコー・イーエム製電子マイクロメータ ミリトロン1240)を用いて、1cmピッチで100点の平面部の厚さを測定し平均したものを、平面部の平均の厚さ(d)とした。
樹脂フィルムロール1の作製において、テンタークリップで挟んだ端部をスリッターナイフでスリットする代わりに、テンタークリップで挟んだ端部を下記条件のレーザー光を照射することでスリットしたほかは、樹脂フィルムロール1の作製と同様にして樹脂フィルムロール2を作製した。
CO2レーザー装置(シンラッド社製「ti100−10.2」)を用い、波長10.6μmのレーザー光を、CS10m/minで搬送中のフィルムに対して、出力100Wの条件で照射し、スリットした。
樹脂フィルムロール1の作製において、テンタークリップで挟んだ端部をスリッターナイフでスリットする代わりに、テンタークリップで挟んだ端部を、CS10m/minで搬送中のフィルムに対して、刃を200℃に熱したカッターによって、スリットしたほかは、樹脂フィルムロール1の作製と同様にして樹脂フィルムロール3を作製した。
樹脂フィルム1の作製において主ドープ1を下記組成の主ドープ2に変えた他は、樹脂フィルムロール1の作製と同様にして樹脂フィルム4及び樹脂フィルムロール4を作製した。
TAC(トリアセチルセルロース(アセチル基置換度2.89、Mw=190000、Mn=76000、Mw/Mn=2.5))
100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
樹脂フィルムロール2の作製において主ドープ1を上記主ドープ2以下のように変えた他は、樹脂フィルムロール2の作製と同様にして樹脂フィルムロール5を作製した。
樹脂フィルムロール2の作製において、平面部の平均の厚さを表2のように変えて、樹脂フィルムロール2の作製と同様にして樹脂フィルムロール6〜10を作製した。
樹脂フィルムロール2の作製において、主ドープ1を使用する代わりに下記組成の主ドープ3を使用したほかは、同様にして、樹脂フィルムロール11を作製した。
COP1 100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
ポリエステル系添加剤 10質量部
なお、上記ポリエステル系添加剤は、下記化学構造式で表される化合物である。
樹脂フィルムロール2の作製において、主ドープ1を使用する代わりに下記組成の主ドープ4を使用したほかは、同様にして、樹脂フィルムロール12を作製した。
COP1 100質量部
ジクロロメタン 200質量部
エタノール 10質量部
紫外線吸収剤TINUVIN Ti928(添加剤、BASFジャパン社製)
3.5質量部
アエロジルR812:日本アエロジル株式会社製(添加剤) 1.5質量部
<両端部の断面形状の確認及び膜厚の測定>
作製した樹脂フィルムロール1〜12を巻きほぐした樹脂フィルムについて、ミクロトーム(Leica社製EM UC6)により切断し、断面をSEM(Hitachi High−Technologies Corporation社製S4800)にて観察した。
具体的には、ガラスナイフで切削速度0.1mm/secのミクロトームでサンプルとする樹脂フィルムをカットし、断面を加速電圧5.0kVで、Hitachi High−Technologies製S4800を用いて、SEM撮影し、形状を観察、両端部及び平面部の膜厚を計測した。なお、樹脂フィルムロール2〜12の樹脂フィルムには、いずれかの面の端部に凹部がなく、また、樹脂フィルムロール2〜12の両端部の断面形状は、図2に記載の(D)のような形状であることが確認された(表2の「端部の形状」に記載。)。樹脂フィルムロール1の樹脂フィルムには、凸部を有する面とは反対側の面の端部に凹部があり、第1凸部を有する面とは反対側の面の両端部の表面と、第1凸部を有する面とは反対側の面の平面部の表面とが、同一平面内にないことが確認された(表2の「端部の形状」には、凹凸有と記載。)。
また、樹脂フィルムロール1〜12について、両端部の最端部から10mm以内の厚さの最大値と、平面部の厚さの平均値との差を求め表2に記載した(表2には、「凸部と平面部との厚さの差(初期)」と記載。)。さらに、後述の湿熱耐久試験の後に、巻きほぐした樹脂フィルム1〜12について、両端部の最端部から10mm以内の厚さの最大値と、平面部の厚さの平均値との差を求め表2に記載した(表2には、「凸部と平面部との厚さの差(耐久後)」と記載)
○:40μm未満(薄膜としてより良好な厚さ)
△:40μm以上(薄膜として実用可能な厚さ)
樹脂フィルムロール1〜12を巻きほぐした樹脂フィルムについて、マルテンス硬度を以下のようにして測定して評価した。
マルテンス硬度(ビッカース硬度)は、ビッカース圧子及び稜線同士の確度が115度の三角錐圧子を用いた微小硬度計で、試験力が負荷された状態で測定される硬度であり、負荷増加時の試験力−押し込み深さ曲線の関係から『試験力Fを、表面から圧子の侵入した表面積Asで除した値』と定義され、単位はN/mm2で表される。マルテンス硬度(HMT115)は、下記式で表される。
HMT115=Fmax/(26.43×hmax2)
Fmax=最大試験力(12mNに設定)
hmax=深さ最大値
さらに、今回の測定条件は『Fmax=12mN』で実施した。
樹脂フィルムの両面を測定し、その平均値を表2に示した。
本発明における23℃での弾性率は、JIS K 7127に記載の方法に準じつつ、引っ張り試験器(株)オリエンテック製テンシロンRTA−100を用い、23℃の環境下で引っ張り試験を行うことで、弾性率を測定した。
巻きほぐした樹脂フィルム中の傷の数を目視で評価した。
◎:樹脂フィルム100m中に0個(合格)
○:樹脂フィルム100m中に1〜2個(合格)
×:樹脂フィルム100m中に3個以上(不合格)
なお、欠陥の少ない◎、○のフィルムは偏光板に使用した際に、光漏れを改良する効果があった。
1330mm×3900mの樹脂フィルムロールを60℃かつ90%のサーモに1週間投入し、湿熱耐久試験を実施した。
湿熱耐久試験により、樹脂フィルムが伸縮し、樹脂フィルムロールがゆがむことで、樹脂フィルムに、つままれたような凸状の欠陥が発生する。
この凸状が偏光板化した時に光漏れの要因となる。
湿熱耐久試験の後に、巻きほぐした樹脂フィルム中の上記つままれたような凸状の欠陥の個数を数え、その個数で評価した。
◎:樹脂フィルム100m中に0〜1個(合格)
○:樹脂フィルム100m中に2〜3個(合格)
×:樹脂フィルム100m中に4個以上(不合格)
なお、欠陥の少ない◎、○のフィルムは偏光板に使用した際に、光漏れを改良する効果があった。
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストック釜
2、5、11、14 送液ポンプ
8、16 導管
10 添加剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 加圧ダイ
31 金属支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 延伸装置
35 乾燥装置
36 搬送ローラー
37 巻取り装置
41 仕込釜
42 ストック釜
43 ポンプ
100 樹脂フィルム
120 凸部
200 樹脂フィルム
220 凸部
220A 凸部
220B 凸部
240 平面部
900 エンボスロール
910 加工対象
920 凸部(エンボス加工部)
930 凹部
940 凸部
EA 両端部
Ep 最端部
W 幅手方向
Claims (14)
- 熱可塑性樹脂を含有する樹脂フィルムが巻かれた樹脂フィルムロールであって、
前記樹脂フィルムの幅手方向の両端部の内側に、長手方向に沿って延びる平面部を有し、
前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第1凸部を有し、
前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部が、前記樹脂フィルムの長手方向に沿って第2凸部を有するか、又は、
前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記両端部の表面と、前記第1凸部を有する面とは反対側の面の前記平面部の表面とが、同一平面内にあることを特徴とする樹脂フィルムロール。 - 前記樹脂フィルムの幅手方向における、前記両端部の断面形状が、円形又は多角形であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルムロール。
- 前記樹脂フィルムが、前記熱可塑性樹脂としてシクロオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルムロール。
- 前記平面部の厚さの平均値が、5〜30μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムロール。
- 前記両端部の最端部から10mm以内の厚さの最大値が、前記平面部の厚さの平均値よりも1〜50μmの範囲内で厚いことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムロール。
- 前記樹脂フィルムが、ポリエステル系添加剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムロール。
- 前記樹脂フィルムが、紫外線吸収剤及びマット剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムロール。
- 前記樹脂フィルムが、樹脂フィルムの幅手方向の両端部の内側に、長手方向に沿ってエンボス加工部を有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムロール。
- 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムロールを製造する樹脂フィルムロールの製造方法であって、
前記第1凸部及び前記第2凸部の少なくとも一方を、前記樹脂フィルムの前記両端部を溶融させることによって形成することを特徴とする樹脂フィルムロールの製造方法。 - 前記樹脂フィルムの前記両端部を、レーザー光を照射することによって溶融させることを特徴とする請求項9に記載の樹脂フィルムロールの製造方法。
- 前記樹脂フィルムの前記両端部を、ヒーターによって加熱することによって溶融させることを特徴とする請求項9に記載の樹脂フィルムロールの製造方法。
- 前記樹脂フィルムを溶液流延製膜法によって形成することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の樹脂フィルムロールの製造方法。
- 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムが、光学フィルムとして具備されていることを特徴とする偏光板。
- 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムが、光学フィルムとして具備されていることを特徴とする画像表示装置。
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