以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離システムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<0.はじめに>
まず、本実施形態に係る剥離システムの説明に先立って、本実施形態の比較例となる剥離システム1’の構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態の比較例となる剥離システム1’の構成を示す模式平面図である。また、図2および図3は、ダイシングフレームFに保持された重合基板Tの模式側面図および模式平面図である。
なお、以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸からなる直交座標軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。また、Y軸負方向を正面方向とする。
図1に示す本実施形態の比較例となる剥離システム1’は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。
以下では、図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
被処理基板Wは、たとえばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄化されている。具体的には、被処理基板Wの厚さは、約20〜50μmである。
一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sの厚みは、約650〜750μmである。かかる支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、ガラス基板などを用いることができる。また、これら被処理基板Wおよび支持基板Sを接合する接着剤Gの厚みは、約40〜150μmである。
また、図3に示すように、重合基板Tは、ダイシングフレームFに固定される。これは、上記のように非常に薄い被処理基板Wを破損等から保護するためである。ダイシングフレームFは、重合基板Tよりも大径の開口部Faが中央に形成された略環状の部材であり、ステンレス鋼等の金属で形成される。ダイシングフレームFの厚みは、たとえば1mm程度である。
重合基板Tは、かかるダイシングフレームFにダイシングテープPを介して固定される。具体的には、ダイシングフレームFの開口部Faに重合基板Tを配置し、開口部Faを裏面から塞ぐように被処理基板Wの非接合面WnおよびダイシングフレームFの裏面にダイシングテープPを貼り付ける。これにより、重合基板Tは、ダイシングフレームFに固定(保持)された状態となる。すなわち、重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、ダイシングフレームFに保持される(図2参照)。
図1の説明に戻る。図1に示すように、剥離システム1’は、第1処理ブロック10および第2処理ブロック20の2つの処理ブロックを備える。第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とは、X軸正方向で第2処理ブロック20、第1処理ブロック10の順に並べて配置される。
第1処理ブロック10では、重合基板Tの搬入、重合基板Tの剥離処理、剥離後の被処理基板Wの洗浄および搬出等が行われる。すなわち、第1処理ブロック10は、ダイシングフレームFによって保持される基板(重合基板Tと被処理基板W)に対する処理を行うブロックである。かかる第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、前処理ステーション12と、第1搬送領域13と、剥離ステーション14と、洗浄ステーション15とを備える。
また、第2処理ブロック20は、ダイシングフレームFによって保持されない基板、具体的には、剥離後の支持基板Sに対する処理を行うブロックである。かかる第2処理ブロック20は、第1受渡ステーション21と、第2受渡ステーション22と、第2搬送領域23と、搬出ステーション24とを備える。
搬入出ステーション11、前処理ステーション12、剥離ステーション14および洗浄ステーション15は、第1搬送領域13に隣接して配置される。具体的には、搬入出ステーション11と前処理ステーション12とは、第1搬送領域13のY軸負方向側に、X軸正方向で搬入出ステーション11、前処理ステーション12の順に並べて配置される。
また、剥離ステーション14の1つめの剥離装置141と洗浄ステーション15の2つの洗浄装置151とは、第1搬送領域13のY軸正方向側に、X軸正方向で剥離装置141、2つの洗浄装置151の順に並べて配置される。また、剥離ステーション14の2つめの剥離装置142は、第1搬送領域13のX軸負方向側に配置される。
第1受渡ステーション21は、剥離装置141のX軸負方向側であって、剥離装置142のY軸正方向側に配置される。また、第2受渡ステーション22および搬出ステーション24は、第2搬送領域23に隣接して配置される。具体的には、第2受渡ステーション22は第2搬送領域23のY軸正方向側であって、第1受渡ステーション21のX軸負方向側に配置される。搬出ステーション24は第2搬送領域23のY軸負方向側に配置される。
まず、第1処理ブロック10の構成について説明する。搬入出ステーション11では、ダイシングフレームFに保持された重合基板T(以下、「DF付重合基板T」と記載する)が収容されるカセットCtおよび剥離後の被処理基板Wが収容されるカセットCwが外部との間で搬入出される。かかる搬入出ステーション11には、複数のカセット載置台111が設けられており、各カセット載置台111には、カセットCtまたはカセットCwがそれぞれ載置される。
なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、各カセット載置台111に載置されたカセットCtまたはカセットCwをそれぞれ「DF−LP」と記載する場合がある。
前処理ステーション12では、DF付重合基板Tに対し、剥離処理前の前処理が行われる。前処理ステーション12には、たとえばアライメント装置121が配置され、アライメント装置121は、後述する第1搬送装置131によりカセットCtから搬送されたDF付重合基板Tに対し、剥離処理の準備のために位置および向きを合わせるアライメント処理を行う。
また、前処理ステーション12にはさらに、たとえば一時領域122が配置される。一時領域122には、たとえばダイシングフレームFのID(Identification)の読み取りを行うID読取装置が配置され、かかるID読取装置によって、処理されるDF付重合基板Tの識別を行うことができる。
一時領域122ではさらに、ID読取装置によるID読取り処理に加え、たとえば処理待ちのDF付重合基板Tを一時的に待機させておく待機処理を必要に応じて行うことができる。一時領域122には、第1搬送装置131によって搬送されたDF付重合基板Tが載置される載置台が設けられており、かかる載置台に、ID読取装置と一時待機部とが載置される。
なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、アライメント装置121を「DAM」と、一時領域122を「BUF」と、それぞれ記載する場合がある。
第1搬送領域13には、DF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wの搬送を行う第1搬送装置131が配置される。第1搬送装置131は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能なアームと、このアームの先端に取り付けられた基板保持部とを備える。
第1搬送領域13では、かかる第1搬送装置131により、DF付重合基板Tを前処理ステーション12および剥離ステーション14へ搬送する処理や、剥離後の被処理基板Wを洗浄ステーション15および搬入出ステーション11へ搬送する処理が行われる。
なお、第1搬送装置131が備える基板保持部は、吸着または把持等によりダイシングフレームFを保持することによって、DF付重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wを略水平に保持する。以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、第1搬送装置131を「FRA」と記載する場合がある。
剥離ステーション14には、2つの剥離装置141,142が配置される。剥離ステーション14では、かかる剥離装置141,142によって、DF付重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。
具体的には剥離装置141,142では、被処理基板Wを下側に配置しかつ支持基板Sを上側に配置した状態で、DF付重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。剥離装置141,142としては、たとえば特開2014−053463号公報に記載の剥離装置を用いることができる。なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、剥離装置141,142を「DDB」と記載する場合がある。
洗浄ステーション15には、2つの洗浄装置151が配置される。洗浄ステーション15では、かかる2つの洗浄装置151によって、剥離後の被処理基板WをダイシングフレームFに保持された状態で洗浄する洗浄処理が行われる。洗浄装置151としては、たとえば特開2014−053463号公報に記載の第1洗浄装置を用いることができる。なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、洗浄装置151を「DCN」と記載する場合がある。
つづいて、第2処理ブロック20の構成について説明する。第1受渡ステーション21では、剥離ステーション14の剥離装置141,142から剥離後の支持基板Sを受け取って第2受渡ステーション22へ渡す受渡処理が行われる。
第1受渡ステーション21には、受渡装置211が配置される。受渡装置211は、たとえばベルヌーイチャック等の非接触方式である非接触保持部を有し、この非接触保持部は水平軸回りに回動自在に構成されている。
受渡装置211としては、たとえば特開2014−053463号公報に記載の第3搬送装置を用いることができる。かかる受渡装置211は、剥離後の支持基板Sの表裏面を反転させつつ、剥離装置141,142から第2処理ブロック20へ支持基板Sを非接触で搬送する。なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、受渡装置211を「MRRA」と記載する場合がある。
第2受渡ステーション22には、支持基板Sを載置する載置部221と、載置部221をY軸方向に移動させる移動部222とが配置される。載置部221は、たとえば3つの支持ピンを備え、支持基板Sの非接合面Snを支持して載置する。なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、第2受渡ステーション22を「SHTL」と記載する場合がある。
移動部222は、Y軸方向に延伸するレールと、載置部221をY軸方向に移動させる駆動部とを備える。第2受渡ステーション22では、第1受渡ステーション21の受渡装置211から載置部221に支持基板Sが載置された後、移動部222によって載置部221を第2搬送領域23側に移動させる。
そして、載置部221から後述する第2搬送領域23の第2搬送装置231に支持基板Sが受け渡される。なお、載置部221はY軸方向以外にも移動可能に構成されていてもよい。
第2搬送領域23には、剥離後の支持基板Sの搬送を行う第2搬送装置231が配置される。第2搬送装置231は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能なアームと、このアームの先端に取り付けられた基板保持部とを備える。第2搬送領域23では、かかる第2搬送装置231により、剥離後の支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送する処理が行われる。なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、第2搬送装置231を「LRA」と記載する場合がある。
搬出ステーション24には、複数のカセット載置台241が設けられており、各カセット載置台241には、剥離後の支持基板Sが収容されるカセットCsがそれぞれ載置される。そして、搬出ステーション24では、このカセットCsが外部に対し搬出される。なお、以下に示す各図面や説明では、図1に示すように、各カセット載置台241に載置されたカセットCsをそれぞれ「LP」と記載する場合がある。
また、剥離システム1’は、制御装置30を備える。制御装置30は、剥離システム1’の動作を制御する装置である。かかる制御装置30は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1’の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置30の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
ところで、上述した剥離システム1’は、フットプリントを小さくし、省スペース化を図るうえで更なる改善の余地がある。そこで、本実施形態では、上述した第1処理ブロック10および第2処理ブロック20を統合し、1つの処理ブロックによってDF付重合基板Tに対する一連の剥離処理が実行可能となるように剥離システムを構成することとした。
以下、本実施形態に係る剥離システム1の構成について、図4A以降を参照しつつ具体的に説明する。なお、以下では、本実施形態において、比較例となる剥離システム1’と異なる構成要素について主に説明する。
<1.剥離システム1の構成>
図4A〜図4Cは順に、本実施形態に係る剥離システム1の構成を示す模式平面図、模式正面図および模式側面図である。
図4Aに示すように、本実施形態に係る剥離システム1は、1つの処理ブロック10_20を備える。処理ブロック10_20は、ダイシングフレームFによって保持される基板(重合基板Tと被処理基板W)に対する処理、および、ダイシングフレームFによって保持されない基板(剥離後の支持基板S)に対する処理、の双方を統合的に行う処理ブロックである。
処理ブロック10_20は、複合ステーション11_12と、第1搬送領域13と、剥離ステーション14と、洗浄ステーション15と、搬出ステーション24とを備える。複合ステーション11_12は、上述した搬入出ステーション11および前処理ステーション12を複合した処理ステーションである。また、処理ブロック10_20では、搬送領域は1つのみである。このため、第1搬送領域13およびこれに配置される第1搬送装置131(FRA)についてはそれぞれ、以下、「搬送領域13」および「搬送装置131」と記載する。
複合ステーション11_12、剥離ステーション14、洗浄ステーション15および搬出ステーション24は、搬送領域13に隣接して配置される。具体的には、複合ステーション11_12と搬出ステーション24とは、搬送領域13のY軸負方向側に、X軸正方向で複合ステーション11_12、搬出ステーション24の順に並べて配置される。
また、剥離ステーション14と洗浄ステーション15とは、搬送領域13のY軸正方向側に、X軸正方向で剥離ステーション14、洗浄ステーション15の順に並べて配置される。
また、図4Aおよび図4Bに示すように、複合ステーション11_12では、各カセット載置台111(DF−LP)それぞれの上段に積層されて、アライメント装置121(DAM)および一時領域122(BUF)とが、たとえばX軸正方向でアライメント装置121、一時領域122の順に並べて配置される。
また、図4Aおよび図4Cに示すように、剥離ステーション14では、剥離装置142の上段に剥離装置141が積層されて配置される。
このような配置構成において、剥離システム1では、搬送領域13に配置された搬送装置131のみによって、一連の剥離処理に係る基板のすべてを搬送する処理を行う。すなわち、剥離システム1における搬送装置131は、上述した受渡装置211(MRRA)および第2搬送装置231(LRA)を代替して動作可能に設けられる。
また、搬送装置131は、図4Cに示すように、積層されたたとえば剥離装置141,142へそれぞれアクセス可能となるように設けられる。次に、かかる搬送装置131の具体的な構成について、図5Aおよび図5Bを参照しつつ説明する。
図5Aは、搬送装置131の構成を示す模式平面図であり、図5Bは、搬送装置131の構成を示す模式側面図である。
図5Aに示すように、搬送装置131は、基板保持部131aと、第1リンク131bと、第2リンク131cと、アームベース131dとを備える。
基板保持部131aは、たとえば二股の平板状に形成され、表面に複数個の吸着パッド131aa(「吸着機構」の一例に相当)を備える。また、基板保持部131aの基端部は、第1リンク131bの先端部に対し、軸ax1まわりに回転可能、かつ、軸ax1に垂直な軸ax2まわりに回転可能に連結される。
また、第1リンク131bの基端部は、第2リンク131cの先端部に対し、軸ax2に平行な軸ax3まわりに回転可能に連結される。また、第2リンク131cの基端部は、アームベース131dに対し、軸ax3に平行な軸ax4まわりに回転可能に連結される。
基板保持部131a、第1リンク131b、第2リンク131cおよびアームベース131dはこのように連結され、1本のアームが構成される。かかるアームは、軸ax1まわりの回転によって基板保持部131aの表裏面を反転させることが可能であるとともに、軸ax2〜軸ax4まわりの回転によって矢印501の方向に基板保持部131aを進退させることが可能である。
なお、アームベース131dに対しては、同様の構成のアームがさらに1本連結される。双方のアームの基板保持部131aの基板保持方式は、同一の方式(ここでは吸着方式)であってもよいし、たとえば一方が吸着方式、他方が把持方式といったように異なる方式であってもよい。これら2本のアームにより、たとえば一方のアームでは剥離後の被処理基板Wを、他方のアームでは剥離後の支持基板Sを、それぞれ同時に保持することができる。
また、アームベース131dは、軸ax4に平行な軸ax5まわりに旋回可能に設けられる(図中の矢印502参照)。また、図5Bに示すように、搬送装置131は、床面等に設置される基台部131eをさらに備える。アームベース131dは、かかる基台部131eへ連結される。
基台部131eは、たとえば第3リンク131ea、第4リンク131ebおよび第5リンク131ecを組み合わせたいわゆるテレスコピック構造によって、Z軸に平行な軸ax6沿いに昇降可能に設けられ(図中の矢印503参照)、基板保持部131aをZ軸方向に昇降させる。
かかるZ軸方向における搬送装置131のストローク長について、図5Cを参照しつつ説明する。図5Cは、搬送装置131のZ軸方向のストローク長を示す模式図である。
なお、図5Cに示すように、剥離装置141は、支持基板Sを保持する第1保持部141aおよびこれに鉛直向きに対向配置されて被処理基板Wを保持する第2保持部141bを備え、第1保持部141aの外周部を鉛直上向きに移動させることにより、支持基板Sを被処理基板Wから剥離するものとする。剥離装置142の場合は、第1保持部142aが第1保持部141aに、第2保持部142bが第2保持部141bに、それぞれ対応する。
図5Cに示すように、搬送装置131は、基板保持部131aが、剥離装置141の第1保持部141aの移動上限位置P1よりも高い位置HiPを最上点とし、カセットCtの最下段スロット位置P2よりも低い位置LoPを最下点とするアクセス可能範囲を有するように構成される。すなわち、上述の基台部131eは、図中のストローク長hを有して昇降可能となるように設けられる。
これにより、積層されたカセット載置台111およびアライメント装置121、同じく積層された剥離装置141,142の間で、1つの搬送装置131により、基板を搬送することができる。
<2.剥離システム1の動作>
次に、以上のように構成された剥離システム1の動作について、図6、図7A〜図7Cおよび図8A〜図8Eを参照しつつ説明する。図6は、本実施形態に係る剥離システム1が実行する剥離処理の処理手順を示すフローチャートである。
また、図7Aは、DF付重合基板Tの搬送順路を示す模式側面図であり、図7Bは、DF付重合基板Tの搬送順路を示す模式平面図であり、図7Cは、被処理基板Wおよび支持基板Sの搬送順路を示す模式平面図である。
また、図8A〜図8Dは、支持基板Sの取り出し動作を示す模式図(その1)〜(その4)であり、図8Eは、支持基板Sの取り出し動作の変形例を示す模式図である。なお、剥離システム1は、制御装置30の制御に基づき、図6に示す各処理手順を実行する。
まず、複数枚のDF付重合基板Tを収容したカセットCtと、空のカセットCwとが、複合ステーション11_12の所定のカセット載置台111に載置されるとともに、空のカセットCsが、搬出ステーション24の所定のカセット載置台241に載置される。
そして、搬送領域13に配置された搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、DF付重合基板Tを複合ステーション11_12の上段(図1の前処理ステーション12に対応)へ搬入する基板搬入処理を行う(図6のステップS101、図7AのT1参照)。
具体的には、搬送装置131は、基板保持部131aを複合ステーション11_12の下段(図1の搬入出ステーション11に対応)へ進入させ、カセット載置台111のカセットCtに収容されたDF付重合基板Tを保持してカセットCtから取り出す。
このとき、DF付重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、搬送装置131の基板保持部131aに上方から保持される。そして、搬送装置131は、カセットCtから取り出したDF付重合基板Tを複合ステーション11_12の上段へ搬入する。
つづいて、複合ステーション11_12の上段では、剥離前処理が行われる(図6のステップS102参照)。具体的には、アライメント装置121が、制御装置30の制御に基づき、DF付重合基板Tの位置および向きを合わせるアライメント処理を行う。そして、ID読取装置が、制御装置30の制御に基づき、ダイシングフレームFのIDを読み取るID読取処理を行う。ID読取装置によって読み取られたIDは、制御装置30へ送信される。
つづいて、搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、DF付重合基板Tを複合ステーション11_12の上段から搬出し、剥離ステーション14へ搬送する(図7BのT2参照)。なお、搬送先は、剥離ステーション14の上段の剥離装置141および下段の剥離装置142のいずれか空いている方でよいが、以下では、剥離装置141の方へ搬送されたものとして説明を進める。
また、たとえば装置間の処理時間差等により処理待ちのDF付重合基板Tが生じる場合には、複合ステーション11_12の上段に設けられた一時領域122を用いてDF付重合基板Tを一時的に待機させておくことができ、一連の工程間でのロス時間を短縮することができる。
そして、剥離ステーション14では、剥離装置141が、制御装置30の制御に基づいて剥離処理を行う(図6のステップS103参照)。
その後、剥離システム1では、剥離後の被処理基板Wについての処理、および、剥離後の支持基板Sについての処理が、処理ブロック10_20にてパラレルに行われる。なお、剥離後の被処理基板Wは、ダイシングフレームFによって保持されている。
まず、搬送装置131が、制御装置30の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wおよび剥離後の支持基板Sを、それぞれ剥離装置141から取り出す。このとき、搬送装置131は、一方のアームの基板保持部131aによって剥離後の被処理基板Wを取り出し、他方のアームの基板保持部131aによって剥離後の支持基板Sを取り出す。
なお、ここで、剥離後の支持基板Sは、剥離装置141によって上面側すなわち非接合面Sn側が保持された状態となっており、上述した比較例となる剥離システム1’では、受渡装置211(MRRA)が、非接触保持部により支持基板Sの接合面Sj側を下方から非接触で保持して取り出し、その後、保持した支持基板Sを反転させて、接合面Sjを上方に向けた状態としていた。
この動作に代替するため、本実施形態に係る剥離システム1の搬送装置131は、たとえば図8A〜図8Eに示す手法によって、剥離後の支持基板Sを取り出す。
具体的には、図8Aに示すように、まず搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、支持基板Sを取り出す方のアームの基板保持部131aを剥離装置141へ進入させ、剥離装置141により剥離されて第1保持部141aにより保持された状態の支持基板Sへ接近させる(図中の矢印801参照)。
ここで、図8Bに示すように、剥離装置141では、剥離後の支持基板Sが、第1保持部141aの有する吸着部141aaにより非接合面Snを吸着された状態で保持されている。そこで、搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、基板保持部131aを第1保持部141aの下面と支持基板Sの非接合面Snとの間に、吸着パッド131aaを下へ向けた状態で水平に徐々に差し込む(図中の矢印802参照)。
そして、図8Cに示すように、搬送装置131は、基板保持部131aを第1保持部141aの下面と支持基板Sの非接合面Snとの間に奥まで差し込んだならば、制御装置30の制御に基づき、吸着部141aaに替わり吸着パッド131aaによって非接合面Snを吸着し、支持基板Sを保持する。
そして、図8Dに示すように、搬送装置131は、支持基板Sを保持した後、制御装置30の制御に基づき、剥離装置141の第1保持部141aから支持基板Sを離脱させて剥離装置141から取り出す(図中の矢印803参照)。その後、搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、基板保持部131aの表裏面を反転させて(図中の矢印804参照)、接着剤Gの付着した側である接合面Sjを上方に向けた状態とする。
かかる手法を用いることにより、搬送装置131は、比較例となる剥離システム1’の受渡装置211に代替した動作を行うことができる。すなわち、一連の剥離動作に係る基板の搬送を搬送装置131のみで行うことができるので、受渡装置211は不要であり、フットプリントを小さくすることができる。
なお、図8A〜図8Dは、基板保持部131aが吸着方式である場合を例に挙げたが、これに代えて、たとえば把持方式であってもよい。
具体的には、たとえば図8Eに示すように、変形例に係る基板保持部131aAとして、固定部131abと可動部131acの間で支持基板Sを挟み付けて保持するタイプであってもよい。
かかる場合、搬送装置131は、剥離装置141へ基板保持部131aAを進入させた後、基板保持部131aAを下方から支持基板Sへ接近させたうえで(図中の矢印805参照)、固定部131abと可動部131acとの間に挟み付ける(図中の矢印806参照)ことによって支持基板Sを保持して取り出し、反転させることとなる。
図6および図7Cの説明に戻る。そして、搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、まず取り出した剥離後の被処理基板Wを洗浄ステーション15へ搬送する(図7CのW1参照)。
そして、洗浄ステーション15の洗浄装置151は、制御装置30の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wの接合面Wjを洗浄する被処理基板洗浄処理を行う(図6のステップS104参照)。かかる被処理基板洗浄処理によって、被処理基板Wの接合面Wjに残存する接着剤Gが除去される。
一方、被処理基板洗浄処理に並行して、搬送装置131は、取り出して反転させた剥離後の支持基板Sを、制御装置30の制御に基づき、搬出ステーション24へ搬送する支持基板搬出処理を行う(図6のステップS106、図7CのS1参照)。その後、支持基板Sは、搬出ステーション24から外部へ搬出されて回収される。こうして、支持基板Sについての処理は終了する。
また、搬送装置131は、制御装置30の制御に基づき、洗浄後の被処理基板Wを洗浄装置151から搬出して、複合ステーション11_12の下段(搬入出ステーション11に対応)へ搬送する被処理基板搬出処理を行う(図6のステップS105、図7CのW2参照)。その後、被処理基板Wは、複合ステーション11_12の下段から外部へ搬出されて回収される。こうして、被処理基板Wについての処理が終了する。
上述してきたように、本実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sが接合されたDF付重合基板Tを被処理基板と支持基板とに剥離する剥離システムであって、複合ステーション11_12と、剥離ステーション14と、洗浄ステーション15と、搬出ステーション24と、搬送領域13とを備える。複合ステーション11_12は、DF付重合基板Tと剥離後の被処理基板Wが載置される搬入出ステーション11、および、DF付重合基板Tに対する剥離前の前処理が行われる前処理ステーション12が積層される。剥離ステーション14は、DF付重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sに剥離する剥離装置141,142が複数個積層される。洗浄ステーション15は、剥離後の被処理基板Wを洗浄する洗浄装置151が配置される。搬出ステーション24は、剥離後の支持基板Sが載置される。搬送領域13は、複合ステーション11_12、剥離ステーション14、洗浄ステーション15および搬出ステーション24の間で、DF付重合基板T、被処理基板Wおよび支持基板Sを搬送する1つの搬送装置131が配置される。
したがって、本実施形態に係る剥離システム1によれば、フットプリントを小さくすることができる。
また、本実施形態に係る剥離システム1では、比較例となる剥離システム1’において配置される必要のあった受渡装置211(MRRA)や、第2受渡ステーション22(SHTL)、第2搬送装置231(LRA)を設ける必要がない。したがって、本実施形態に係る剥離システム1によれば、装置点数を減らし、低コストでシステムを構成するのに資することができる。
また、本実施形態に係る剥離システム1では、2本のアームを備える搬送装置131によって、1つの搬送領域13内で、一連の剥離処理に係るすべての基板を搬送することができる。したがって、本実施形態に係る剥離システム1によれば、基板搬送の効率化が図れ、その結果、スループットを維持および向上させるのに資することができる。
<3.その他の実施形態>
ところで、本願の開示する剥離システムの構成は、これまで述べてきた構成に限定されない。そこで、以下では、剥離システムの変形例について、図9Aおよび図9Bを参照しつつ説明する。
図9Aは、第1変形例に係る剥離システム50の構成を示す模式平面図であり、図9Bは、第2変形例に係る剥離システム70の構成を示す模式平面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図9Aに示すように、第1変形例に係る剥離システム50は、複合ステーション11_12の配置位置と搬出ステーション24の配置位置とが、上述した剥離システム1とは逆となるように構成される。
かかる構成によっても、剥離システム1と略同一のフットプリントを実現できるとともに、比較例となる剥離システム1’に比して低コスト化、ならびに、スループットの維持および向上を図ることができる。
また、図9Bに示すように、第2変形例に係る剥離システム70は、剥離装置141,142の積層された剥離ステーション14が、搬送領域13の延在方向(ここでは、X軸負方向)側に配置されるように構成される。また、洗浄ステーション15に対し、3つの洗浄装置151が並べて配置されるように構成される。
かかる構成によっても、比較例となる剥離システム1’に比してフットプリントを小さくすることができる。また、洗浄装置151の個数を多くすることで、被処理基板Wへ残存する接着剤Gを除去するための除去性能を向上させることができる。また、洗浄装置151の個数を多くすることで、タクトタイムを向上させて生産性を向上させるのにも資することができる。なお、洗浄装置151の内のたとえば1つを、被処理基板Wではなく、支持基板Sの洗浄のために用いてもよい。
また、上述してきた実施形態では、剥離対象となる重合基板が、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gによって接合されたDF付重合基板Tである場合の例について説明したが、剥離装置141,142の剥離対象となる重合基板は、このDF付重合基板Tに限定されない。たとえば剥離ステーション14では、SOI基板を生成するために、絶縁膜が形成されたドナー基板と被処理基板とが張り合わされた重合基板を剥離対象とすることも可能である。
また、上述してきた実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接合面Wj、Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
また、上述した実施形態では、重合基板Tが、ダイシングフレームFに保持される場合の例について説明したが、重合基板Tは、必ずしもダイシングフレームFに保持されることを要しない。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。