JP2017111920A - 難燃性電線および難燃性電線の製造方法 - Google Patents

難燃性電線および難燃性電線の製造方法 Download PDF

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Yoshiaki Nakamura
孔亮 中村
修一 田所
Shuichi Tadokoro
修一 田所
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Abstract

【課題】ポリオレフィン材料を用い、難燃性、耐水性および耐油性の全てに優れた難燃性電線および難燃性電線の製造方法を提供する。【解決手段】導体と、導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、を有し、絶縁層は、JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、を含む樹脂組成物からなり、架橋されている。【選択図】図1

Description

本発明は、難燃性電線に関する。
鉄道車両などに使用される電線またはケーブルには、一般に使用される電線またはケーブルと比較し、高い難燃性だけでなく、長期で浸水することを想定した耐水性や、潤滑油などに対する耐油性も求められる。
このため、鉄道車両向けの電線またはケーブルにおいて、絶縁層(絶縁被覆)を構成する樹脂組成物としては、例えば、耐熱性および機械特性に優れたフッ素樹脂やエンジニアリングプラスチックなどが用いられてきた(例えば、特許文献1)。
特開2006−59645号公報
しかしながら、上記したフッ素樹脂やエンジニアリングプラスチックなどは高価であり、また電流を多く流さない用途で使用される電線またはケーブルにおいては、耐熱性がオーバースペックとなっていた。また、上記したフッ素樹脂やエンジニアリングプラスチックなどは、結晶性が高く、剛直な樹脂であることが多く、艤装性に劣っていた。
一方で、絶縁層を構成する樹脂組成物として、フッ素樹脂等と比較して、安価で柔軟なポリオレフィン材料を用いることが考えられる。しかしながら、この場合では、難燃性と耐水性とがトレードオフの関係になることが多く、難燃性、耐水性および耐油性の全てを満足することが困難であった。
本発明の目的は、ポリオレフィン材料を用い、難燃性、耐水性および耐油性の全てに優れた難燃性電線および難燃性電線の製造方法を提供することである。
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、
を有し、
前記絶縁層は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
下記の式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量が前記ベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、
添加量が前記ベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む樹脂組成物からなり、架橋されている難燃性電線が提供される。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
epx=(Nepx/WEC)×DEC ・・・(2)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、Depxをエポキシ基添加量とし、Nepxを前記エポキシ系化合物の一分子中のエポキシ基個数とし、WECを前記エポキシ系化合物の分子量とし、DECを前記ベースポリマ100質量部に対する前記エポキシ系化合物の添加量(質量部)とする。)
本発明の他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、
を有し、
前記絶縁層は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.33、0≦m≦10)で表され、下記の式(3)で求められるマグネシウム添加量が42以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し10質量部以下であるハイドロタルサイト様化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む樹脂組成物からなり、架橋されている難燃性電線が提供される。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
Mg=R×DHT ・・・(3)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、DMgをマグネシウム添加量とし、Rを前記ハイドロタルサイト様化合物における酸化アルミニウムに対する酸化マグネシウムのモル比とし、DHTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記ハイドロタルサイト様化合物の添加量(質量部)とする。)
本発明の更に他の態様によれば、
導体を用意する工程と、
前記導体の外周に樹脂組成物を押出被覆することで、前記導体の外周を覆うように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を架橋させる工程と、
を有し、
前記樹脂組成物は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
式(1)で求められる臭素添加量が0.26以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む難燃性電線の製造方法が提供される。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
epx=(Nepx/WEC)×DEC ・・・(2)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、Depxをエポキシ基添加量とし、Nepxを前記エポキシ系化合物の一分子中のエポキシ基個数とし、WECを前記エポキシ系化合物の分子量とし、DECを前記ベースポリマ100質量部に対する前記エポキシ系化合物の添加量(質量部)とする。)
本発明の更に他の態様によれば、
導体を用意する工程と、
前記導体の外周に樹脂組成物を押出被覆することで、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を架橋させる工程と、
を有し、
前記樹脂組成物は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.33、0≦m≦10)で表され、下記の式(3)で求められるマグネシウム添加量が42以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し10質量部以下であるハイドロタルサイト様化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む難燃性電線の製造方法が提供される。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
Mg=R×DHT ・・・(3)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、DMgをマグネシウム添加量とし、Rを前記ハイドロタルサイト様化合物における酸化アルミニウムに対する酸化マグネシウムのモル比とし、DHTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記ハイドロタルサイト様化合物の添加量(質量部)とする。)
本発明によれば、ポリオレフィン材料を用い、難燃性、耐水性および耐油性の全てに優れた難燃性電線および難燃性電線の製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る難燃性電線の軸方向と直交する断面図である。
<本発明の一実施形態>
(1)難燃性電線
本発明の一実施形態にかかる難燃性電線について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る難燃性電線の軸方向と直交する断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る難燃性電線10は、例えば、鉄道車両などに使用される電線として構成され、導体110と、絶縁層120と、を有している。
(導体)
導体110は、複数の素線を有している。複数の素線は、例えば、螺旋状に撚り合わせられている。それぞれの素線は、例えば、無酸素銅、銅合金、銅被覆線等からなり、好ましくは無酸素銅からなっている。それぞれの素線の表面は、錫、銀、ニッケル等により、めっきされていてもよい。本実施形態では、導体110の素線は、例えば、錫めっき軟銅線である。
(絶縁層)
絶縁層120は、導体110の外周を覆うように設けられた絶縁被覆として構成されている。本実施形態の絶縁層120は、例えば、ベースポリマ(ベース樹脂)と、難燃剤と、安定剤と、を含む樹脂組成物からなり、難燃性、耐水性および耐油性の全てに優れるよう構成されている。以下、詳細を説明する。
(ベースポリマ)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、例えば、ポリオレフィン材料として、エチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVA)を含むベースポリマを有している。これにより、フッ素樹脂等と比較して、安価で柔軟な絶縁層120を得ることが可能となる。
本実施形態では、EVAにおいて、JIS K7192で規定されるVA量は、例えば、19質量%以上25質量%以下である。VA量が19質量%未満であると、難燃性が不十分となる可能性がある。難燃性を補うために難燃剤を増量させることが考えられるが、VA量が19質量%未満であると、ポリマ(ベースポリマ)の結晶量が多くなるため、機械的特性を維持したまま、難燃剤を増量させることが困難となる。なお、VA量が少ないほど、ポリマの結晶部分が多くなり、油の浸入を抑制することができるため、耐油性は確保される。これに対して、VA量が19質量%以上であることにより、燃焼時に側鎖の酢酸が遊離し、燃焼場において酸素を遮断するため、難燃性が向上する。また、VA量が19質量%以上であれば、極性が高くなるため、潤滑油のような非極性の油に対する耐性(耐油性)が向上する。一方で、VA量が25質量%超であると、ポリマの結晶量が少なくなるため、耐水性および耐油性が低下する可能性がある。また極性が過剰に高くなるため、電気絶縁性が低下する可能性がある。これに対して、VA量が25質量%以下であることにより、ポリマの結晶量を所定量に維持し、耐水性および耐油性を確保することができる。また、極性が過剰に高くなることを抑制し、電気絶縁性が低下することを抑制することができる。
なお、ベースポリマに用いられるEVAは、VA量が上記した所定量となるのであれば、一つのEVAのみで構成されていてもよいし、複数のEVAを混合することにより構成されていてもよい。
(臭素系難燃剤)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、上記したベースポリマに加え、難燃剤を含んでいる。難燃剤としては、耐水性を考慮し、臭素系難燃剤が好適である。これにより、絶縁層120に高度な難燃性を付与し、難燃性電線10を鉄道車両に適用することが可能となる。
臭素系難燃剤としては、例えば、エチレンビスペンタブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、ペンタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエーテル)、ヘキサブロモシクロデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモビスフェノールAエポキシオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAカーボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ポリ-ジブロモフェニレンオキサイド、2,4,6−トリブロモフェノール、テトラブロモビスフェノールA−ビス(アクリレート)、テトラブロモフタリックアンヒドリド、テトラブロモフタレートジオール、2,3−ジブロモプロパノール、トリブロモスチレン、テトラブロモフェニルマレイミド、ポリ(ペンタブロモベンジル)アクリレート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェートなどが挙げられる。これらのなかでも、環境負荷が低く、少添加量で高い難燃性が得られ、また耐水性が良好であることから、エチレンビスペンタブロモベンゼンが好適である。
本実施形態では、臭素系難燃剤において、下記の式(1)で求められる臭素(Br)添加量は、例えば、0.20以上0.33未満である。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTをベースポリマ100質量部に対する臭素系難燃剤の添加量(質量部)とする。)
Br添加量が0.20未満であると、燃焼時においてBr系ガスの発生が少なくなり、Br系ガスによる酸素を遮断する効果が不十分となる。その結果、難燃性が不十分となる。これに対して、Br添加量が0.20以上であることにより、燃焼時に所定量のBr系ガスを発生させることで、Br系ガスによる酸素を遮断する効果を向上させることができる。その結果、難燃性を向上させることができる。一方で、Br添加量が0.33以上であると、臭化物イオンが(後述する安定剤によって固定される量を超えて)遊離する可能性がある。このように臭化物イオンが樹脂組成物中に存在すると、浸透圧により樹脂組成物中に水分が入り、絶縁性が低下する可能性がある。つまり、耐水性が低下する可能性がある。これに対して、Br添加量が0.33未満であることにより、臭化物イオンが過剰に遊離することを抑制し、耐水性が低下することを抑制することができる。
(安定剤)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、さらに安定剤を含んでいる。安定剤を添加することにより、上記した臭素系難燃剤から遊離した臭化物イオンを固定化することができる。その結果、耐水性を向上させることができる。なお、後述するように、安定剤の添加量には上限がある。
安定剤としては、例えば、金属酸化物、金属石鹸、エポキシ系化合物、またはハイドロタルサイト様化合物などが挙げられる。これらのなかでも、耐水性が良好であることから、エポキシ系化合物、またはハイドロタルサイト様化合物が好適である。
安定剤として、分子内にエポキシ基を含むエポキシ系化合物が添加される場合、エポキシ系化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのなかでも、汎用的であり、取り扱い易いことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
エポキシ系化合物において、下記の式(2)で求められるエポキシ基添加量は、例えば、0.026以上である。
epx=(Nepx/WEC)×DEC ・・・(2)
(ただし、Depxをエポキシ基添加量とし、Nepxをエポキシ系化合物の一分子中のエポキシ基個数とし、WECをエポキシ系化合物の分子量とし、DECをベースポリマ100質量部に対するエポキシ系化合物の添加量(質量部)とする。)
エポキシ基添加量が0.026未満であると、臭素系難燃剤を添加した際に遊離した臭化物イオンを十分に固定化することができず、耐水性が不十分となる可能性がある。これに対して、エポキシ基添加量が0.026以上であることにより、臭素系難燃剤を添加した際に遊離した臭素化物イオンを確実に固定化し、耐水性を向上させることができる。
また、エポキシ系化合物の添加量は、例えば、ベースポリマ100質量部に対し、7質量部未満である。エポキシ系化合物の添加量が7質量部以上であると、エポキシ系化合物が樹脂組成物からブリードアウトしてしまう(樹脂組成物表面に浮き出る)可能性がある。また、エポキシ系化合物が潤滑油に流出する可能性がある。これに対して、エポキシ系化合物の添加量が7質量部未満であることにより、エポキシ系化合物が樹脂組成物からブリードアウトすることを抑制することができる。また、エポキシ系化合物が潤滑油に流出することを抑制し、耐油性を確保することができる。
一方、安定剤として、ハイドロタルサイト様化合物が添加される場合、添加されるハイドロタルサイト様化合物は、例えば、Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHOで表される。ただし、0<x≦0.33、0≦m≦10である。
ハイドロタルサイト様化合物において、下記の式(3)で求められるマグネシウム(Mg)添加量は、例えば、42以上である。
Mg=R×DHT ・・・(3)
(ただし、DMgをマグネシウム添加量とし、Rを前記ハイドロタルサイト様化合物における酸化アルミニウムに対する酸化マグネシウムのモル比とし、DHTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記ハイドロタルサイト様化合物の添加量(質量部)とする。)
Mg添加量が42未満であると、臭素系難燃剤を添加した際に遊離した臭化物イオンを十分に固定化することができず、耐水性が不十分となる可能性がある。これに対して、Mg添加量が42以上であることにより、臭素系難燃剤を添加した際に遊離した臭素化物イオンを確実に固定化し、耐水性を向上させることができる。
また、ハイドロタルサイト様化合物の添加量は、例えば、10質量部以下である。ハイドロタルサイト様化合物の添加量が10質量部超であると、ハイドロタルサイト様化合物自体が水分を引き寄せ易いため、耐水性が低下してしまう可能性がある。これに対して、ハイドロタルサイト様化合物の添加量が10質量部以下であることにより、耐水性が低下することを抑制することができる。
(三酸化アンチモン)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、上記した臭素系難燃剤に加え、難燃剤として三酸化アンチモンをさらに含む。これにより、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの相乗効果によって、絶縁層120にさらに高度な難燃性を付与することができる。
本実施形態では、三酸化アンチモンの添加量は、例えば、ベースポリマ100質量部に対し、5質量部以上である。三酸化アンチモンの添加量が5質量部未満であると、難燃性が不十分となる。これに対して、三酸化アンチモンの添加量が5質量部以上であることにより、難燃性を向上させることができる。なお、三酸化アンチモンの添加量は、30質量部以下であることが好ましい。三酸化アンチモンの添加量が30質量部超であると、樹脂組成物の重量が増大するとともに、機械特性が低下する可能性がある。これに対して、三酸化アンチモンの添加量が30質量部以下であることにより、樹脂組成物の重量が増大することを抑制するとともに、機械特性が低下することを抑制することができる
(その他)
絶縁層120を構成する樹脂組成物は、上述した材料以外に、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、架橋助剤、無機充填剤、相溶化剤、金属キレート剤(銅害防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤などの添加剤を含んでいても良い。
また、本実施形態の絶縁層120は、架橋されている。これにより、難燃性電線10が鉄道車両に使用された際に、難燃性電線10が局所的に高温になる場合や、電線10が高温雰囲気下にさらされる場合において、熱による変形を抑制し、難燃性電線10の絶縁性を保つことができる。または、難燃性電線10が潤滑油にさらされる場合において、潤滑油によって絶縁層120が溶解することを抑制することができる。なお、絶縁層120を架橋させる方法については、詳細を後述する。
(2)難燃性電線の製造方法
次に、本実施形態にかかる難燃性電線の製造方法について説明する。
(導体用意工程)
まず、例えば、錫めっき軟銅線からなる素線を所定本数用意する。次に、所定本数の素線を撚り合せ、導体110を形成する。
(混練工程)
EVAを含むベースポリマと、臭素系難燃剤と、エポキシ系化合物と、三酸化アンチモンと、を配合し、加圧ニーダによって、所定温度にて混練する。次に、押出成形機により、当該樹脂組成物の混練材をストランド状に押し出し、樹脂組成物の押出材を水冷により冷却する。そして、ストランド状の押出材を切断し、樹脂組成物のペレット材を形成する。
(押出工程)
次に、上記した樹脂組成物のペレット材を押出機に投入し、樹脂組成物を導体110の外周に押出被覆する。このように、導体110の外周を覆うように絶縁層120を形成することで、難燃性電線10の中間体を形成する。
(架橋工程)
次に、難燃性電線10の中間体における絶縁層120に対して、電子線などの電離放射線を照射し、絶縁層120を架橋させる。以上により、難燃性電線10が製造される。
なお、参考までに、絶縁層120を架橋させる方法としては、電子線などの電離放射線を使用した架橋のほかにも、例えば、硫黄もしくは硫黄化合物を使用した加硫、有機過酸化物を使用した過酸化物架橋、またはベースポリマにシラン化合物をグラフトさせて架橋させるシラン架橋がある。しかしながら、本実施形態では、以下の理由により、電離放射線を使用した架橋が最も好ましい。硫黄もしくは硫黄化合物を使用した加硫は、樹脂組成物のベースポリマの主鎖に炭素の二重結合を必要とするため、本実施形態のようにベースポリマの主鎖に炭素の二重結合が含まれない場合には用いられ難い。また、有機過酸化物を使用した過酸化物架橋では、ベースポリマ主鎖に二重結合を必要としないものの、架橋に熱と時間を必要とするため、高速押出性を確保することが困難である。また、押出機内で架橋が進行し、樹脂組成物を押し出すことが困難となることも考えられる。また、シラン架橋も、過酸化物架橋と同様に、押出機内で架橋反応が進行し、樹脂組成物を押し出すことが困難となる可能性がある。これに対して、電離放射線を使用した架橋は、ベースポリマが3級炭素を含む放射線崩壊型のポリマには適用できないが、本実施形態のようにエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマに対しては、安定的に適用することが可能である。また、電離放射線を使用した架橋では、押出工程後にベースポリマを架橋反応させるため、押出機内で架橋が進行することがなく、樹脂組成物を押し出しできない現象が生じることを抑制することができる。したがって、本実施形態では、電離放射線を使用した架橋が最も好ましい。
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、難燃性電線10における絶縁層120は、EVAを含むベースポリマと、臭素系難燃剤および三酸化アンチモンからなる難燃剤と、エポキシ系化合物またはハイドロタルサイト様化合物からなる安定剤と、を含む樹脂組成物からなっている。絶縁層120を構成する樹脂組成物がベースポリマとしてEVAを含んでいることにより、フッ素樹脂等と比較して、安価で柔軟な絶縁層120を得ることができる。また、樹脂組成物が難燃剤として臭素系難燃剤および三酸化アンチモンを含んでいることにより、絶縁層120に高度な難燃性を付与することができる。さらに、樹脂組成物が安定剤としてエポキシ系化合物またはハイドロタルサイト様化合物を含んでいることにより、臭素系難燃剤から遊離した臭化物イオンを固定化することができ、耐水性を向上させることができる。このようにして、難燃性電線10において、難燃性および耐水性を両立させることが可能となる。
(b)本実施形態によれば、EVAにおいて、JIS K7192で規定されるVA量は、例えば、19質量%以上25質量%以下である。VA量が19質量%以上であることにより、燃焼時に側鎖の酢酸が遊離し、燃焼場において酸素を遮断するため、難燃性が向上する。また、VA量が25質量%以下であることにより、ポリマの結晶量を所定量に維持し、耐水性および耐油性を確保することができる。
(c)本実施形態によれば、臭素系難燃剤において、式(1)で求められるBr添加量は、例えば、0.20以上0.33未満である。Br添加量が0.20以上であることにより、難燃性を向上させることができる。また、Br添加量が0.33未満であることにより、臭化物イオンが過剰に遊離することを抑制し、耐水性が低下することを抑制することができる。
(d)本実施形態によれば、安定剤として、エポキシ系化合物が添加される場合、エポキシ系化合物において、式(2)で求められるエポキシ基添加量は、0.026以上であり、エポキシ系化合物の添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、7質量部未満である。エポキシ基添加量が0.026以上であることにより、臭素系難燃剤を添加した際に遊離した臭素化物イオンを確実に固定化し、耐水性を向上させることができる。エポキシ系化合物の添加量が7質量部未満であることにより、エポキシ系化合物が樹脂組成物からブリードアウトすることを抑制することができる。また、エポキシ系化合物が潤滑油に流出することを抑制し、耐油性を確保することができる。
安定剤として、ハイドロタルサイト様化合物が添加される場合、ハイドロタルサイト様化合物において、式(3)で求められるMg添加量は、42以上であり、ハイドロタルサイト様化合物の添加量は、10質量部以下である。Mg添加量が42以上であることにより、臭素系難燃剤を添加した際に遊離した臭素化物イオンを確実に固定化し、耐水性を向上させることができる。ハイドロタルサイト様化合物の添加量が10質量部以下であることにより、耐水性が低下することを抑制することができる。
(e)本実施形態によれば、三酸化アンチモンの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、5質量部以上である。これにより、難燃性を向上させることができる。
(本発明の他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、難燃性電線10が鉄道車両に用いられる場合について説明したが、難燃性電線は他の用途に用いられても良い。
上述の実施形態では、難燃性電線10が1つの絶縁層120を有する場合について説明したが、難燃性電線は、複数の絶縁層を有していても良い。この場合、複数の絶縁層のうち、少なくとも1つの絶縁層が、上記した所定の樹脂組成物からなっていればよい。
上述の実施形態では、1本の難燃性電線10の絶縁層120に対して、上記した所定の樹脂組成物を適用する場合について説明したが、複数の電線を有する難燃性ケーブルにおいて、それぞれの電線の絶縁層に対して、上記した所定の樹脂組成物を適用しても良い。
次に、本発明に係る実施例を説明する。これらの実施例は本発明の一例であって、本発明はこれらの実施例により限定されない。
(1)電線サンプルの製造
以下のように、実施例1〜7、比較例1〜10の電線サンプルを作製した。まず、所定本数の錫めっき軟銅線からなる素線を撚り合わせた18AWG(導体断面積0.96mm、導体外径1.21mm)の導体を用意した。次に、以下の表1に示すように配合した樹脂組成物を加圧ニーダによって混練し、押出成形機により、樹脂組成物の混練材をストランド状に押し出し、樹脂組成物の押出材を水冷により冷却した。そして、ストランド状の押出材を切断し、樹脂組成物のペレット材を形成した。次に、押出機に樹脂組成物のペレット材を投入し、樹脂組成物を導体の外周に押出被覆することで、電線の中間体を形成した。次に、電線の中間体における絶縁層に対して、180kGyの電離放射線を照射して、絶縁層を架橋させた。これにより、実施例1〜7、比較例1〜9のそれぞれの電線サンプルを製造した。なお、表1に示す実施例2の樹脂組成物と同じ樹脂組成物を使用し、電離放射線による架橋を行っていない電線サンプルを、比較例10とした。
Figure 2017111920
なお、表1中の配合剤の詳細は、以下のとおりである。
エチレン酢酸ビニル共重合体A:エバフレックス(登録商標)460 VA量:19質量% (三井・デュポンポリケミカル社製)
エチレン酢酸ビニル共重合体B:エバフレックス(登録商標)260 VA量:28質量% (三井・デュポンポリケミカル社製)
エチレン酢酸ビニル共重合体C:エバフレックス(登録商標)V5274 VA量:17質量% (三井・デュポンポリケミカル社製)
エチレン酢酸ビニル共重合体D:エバフレックス(登録商標)170 VA量:33質量% (三井・デュポンポリケミカル社製)
エチレン酢酸ビニル共重合体E:エバフレックス(登録商標)360 VA量:25質量% (三井・デュポンポリケミカル社製)
臭素系難燃剤:サイテックス(登録商標)8010 エチレンビスペンタブロモベンゼン(エチレンビス(ペンタブロモフェニル)) 分子量971 Br元素個数10個 (アルベマール社製)
エポキシ系化合物:エピコート(登録商標)828 ビスフェノールA型エポキシ樹脂 分子量380 エポキシ基個数2個 (三菱化学社製)
ハイドロタルサイト様化合物:マグセラー(登録商標)1 MgO/Alモル比4.23 (協和化学社製)
ハイドロタルサイト様化合物:DHT−4A(登録商標) MgO/Alモル比4.3 (協和化学社製)
酸化防止剤A:イルガノックス(登録商標)1010 (BASF社製)
酸化防止剤B:アデカスタブ(登録商標)AO−412S (ADEKA社製)
焼成クレー:Santintone SP−33 (BASF社製)
着色剤:アサヒサーマルブラック (旭カーボン社製)
滑剤:ステアリン酸亜鉛 (日東化成社製)
架橋助剤:TMPT (新中村化学社製)
(2)電線サンプルの評価
実施例1〜7、比較例1〜10の電線サンプルに対して、以下の評価を行った。
(難燃性)
米国電気学会IEEE1202−1991に従い、垂直トレイ難燃性試験を実施し、燃焼距離が150cm以下である場合を合格とした。
(耐水性)
アメリカの鉄道車両用電線規格であるAAR RP −585 第5.6.4項の「Insulation Resistance, Long Term(長期浸水課電試験)」を満足するものを合格とした。
(耐油性)
アメリカの鉄道車両用電線規格であるAAR RP −585 第5.3〜5.4項の「Oil Resistance Test I,II(耐油性試験)」を満足するものを合格とした。
(ブリードアウト試験)
電線サンプルをアルミ箔で包み、90℃の恒温槽で2週間加熱後、室温で1週間放置し、目視にて電線サンプルの表面を確認した。その結果、樹脂組成物がブリードアウトしていない場合を合格とした。
(総合判定)
難燃性、耐水性、耐油性、およびブリードアウト試験の全てに合格する場合を、総合判定で合格とした。
(3)結果
表1に示すように、実施例1〜7では、難燃性、耐水性、耐油性、およびブリードアウト試験の全てが合格であった。以下、実施例と比較例とを対比しながら、詳細を説明する。
まず、ベースポリマのEVAについて説明する。EVAにおけるVA量が19質量%未満であった比較例1では、耐水性および耐油性は合格であったが、難燃性が不合格であった。比較例1では、VA量が少なく、燃焼場における酸素を遮断する効果が不十分であったと考えられる。一方で、EVAにおけるVA量が25質量%超であった比較例2では、耐水性および耐油性が不合格であった。比較例2では、VA量が多く、ポリマの結晶量が少なかったため、耐水性および耐油性が低下したと考えられる。これに対して、EVAにおけるVA量が19質量%以上25質量%以下であった実施例1〜7では、難燃性、耐水性、および耐油性の全てが合格であった。したがって、EVAにおけるVA量が19質量%以上25質量%以下であることにより、燃焼場において、側鎖の酢酸を所定量遊離させて酸素を遮断することで、難燃性を向上させることができることを確認した。また、ポリマの結晶量を所定量に維持し、耐水性および耐油性を確保することができることを確認した。
次に、臭素系難燃剤について説明する。臭素系難燃剤におけるBr添加量が0.20未満であった比較例3では、EVAにおけるVA量が上記した所定の範囲内であったものの、Br添加量が少なかったため、難燃性が不合格であった。比較例3では、燃焼時においてBr系ガスの発生が少なく、Br系ガスによる酸素を遮断する効果が不十分であったと考えられる。一方で、臭素系難燃剤におけるBr添加量が0.33以上であった比較例4では、難燃性は十分であったが、耐水性が不合格であった。比較例4では、臭化物イオンが安定剤によって固定される量を超えて遊離したため、耐水性が低下したと考えられる。これに対して、臭素系難燃剤におけるBr添加量が0.20以上0.33未満であった実施例1〜7では、難燃性および耐水性が合格であった。したがって、臭素系難燃剤におけるBr添加量が0.20以上0.33未満であることにより、燃焼時に所定量のBr系ガスを発生させることで、Br系ガスによる酸素を遮断する効果を向上させ、難燃性を向上させることができることを確認した。また、臭化物イオンが過剰に遊離することを抑制し、耐水性が低下することを抑制することができることを確認した。
次に、エポキシ系化合物について説明する。エポキシ系化合物におけるエポキシ基添加量が0.026未満であった比較例6では、Br添加量が上記した所定量であったにもかかわらず、耐水性が不合格であった。比較例6では、安定剤としてのエポキシ系化合物が臭化物イオンを十分に固定化することができなかったため、耐水性が低下したと考えられる。一方で、エポキシ系化合物の添加量が7質量部以上であった比較例5では、ブリードアウト試験が不合格であった。また、エポキシ系化合物の添加量が多く、エポキシ系化合物が油に流出したため、耐油性が不合格であった。これに対して、エポキシ系化合物におけるエポキシ基添加量が0.026以上であって、且つ、エポキシ系化合物の添加量が7質量部未満であった実施例1〜5では、耐水性、耐油性、およびブリードアウト試験が合格であった。したがって、エポキシ系化合物が所定条件を満たすことにより、遊離した臭化物イオンを確実に固定化し、耐水性を向上させることができることを確認した。また、エポキシ系化合物がブリードアウトすることを抑制し、さらに、エポキシ系化合物が潤滑油に流出することを抑制し、耐油性を確保することができることを確認した。
次に、ハイドロタルサイト様化合物について説明する。ハイドロタルサイト様化合物におけるMg添加量が42未満であった比較例7では、Br添加量が上記した所定量であったにもかかわらず、耐水性が不合格であった。比較例7では、比較例6と同様に、安定剤としてのエポキシ系化合物が臭化物イオンを十分に固定化することができなかったため、耐水性が低下したと考えられる。一方で、ハイドロタルサイト様化合物の添加量が10質量部超であった比較例8では、耐水性が不合格であった。比較例8では、ハイドロタルサイト様化合物自体の吸湿性が顕著となり、耐水性が低下したと考えられる。これに対して、ハイドロタルサイト様化合物におけるMg添加量が42以上であって、且つ、ハイドロタルサイト様化合物の添加量が10質量部以下であった実施例6および7では、耐水性が合格であった。したがって、ハイドロタルサイト様化合物におけるMg添加量が42以上であることにより、遊離した臭化物イオンを確実に固定化し、耐水性を向上させることができることを確認した。一方で、ハイドロタルサイト様化合物の添加量が10質量部以下であることにより、ハイドロタルサイト様化合物の添加量が過剰となることを抑制し、耐水性が低下することを抑制できることを確認した。
次に、三酸化アンチモンについて説明する。三酸化アンチモンの添加量が5質量部未満であった比較例9では、難燃剤としての三酸化アンチモンが不十分であり、難燃性が不合格であった。これに対して、三酸化アンチモンの添加量が5質量部以上であった実施例1〜7では、難燃性が合格であった。したがって、三酸化アンチモンの添加量が5質量部以上であることにより、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの相乗効果によって、高度に難燃性を向上させることができることを確認した。
次に、絶縁層の架橋について説明する。絶縁層の架橋を行わなかった比較例10では、絶縁層を構成する樹脂組成物の組成自体は実施例2と同じであったものの、樹脂組成物の液だれが生じたため、難燃性が不合格であった。また、熱によって変形が生じ、絶縁破壊を起こしたため、耐水性が不合格であった。また、絶縁層の樹脂組成物が油に溶解したため、耐油性が不合格であった。さらには、ブリードアウト試験も不合格であった。これに対して、絶縁層の架橋を行った実施例1〜7では、難燃性、耐水性、耐油性、ブリードアウト試験の全てが合格であった。したがって、所定の樹脂組成物からなる絶縁層が架橋されていることにより、樹脂塑性物の液だれを抑制し、難燃性が向上することを確認した。また、熱による変形を抑制し、耐水性が向上することを確認した。また、樹脂塑性物が油に溶解しにくく、耐油性が向上することを確認した。さらに、絶縁層が架橋されているため、ブリードアウトが生じることを抑制することができることを確認した。
以上により、絶縁層を構成する樹脂組成物が上記した所定の条件を満たすことにより、難燃性、耐水性および耐油性の全てに優れるとともに、ブリードアウトが生じることを抑制した難燃性電線を提供することができることを確認した。
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
(付記1)
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、
を有し、
前記絶縁層は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
下記の式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む樹脂組成物からなり、架橋されている難燃性電線が提供される。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
epx=(Nepx/WEC)×DEC ・・・(2)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、Depxをエポキシ基添加量とし、Nepxを前記エポキシ系化合物の一分子中のエポキシ基個数とし、WECを前記エポキシ系化合物の分子量とし、DECを前記ベースポリマ100質量部に対する前記エポキシ系化合物の添加量(質量部)とする。)
(付記2)
本発明の他の態様によれば、
導体と、
前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、
を有し、
前記絶縁層は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.33、0≦m≦10)で表され、下記の式(3)で求められるマグネシウム添加量が42以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し10質量部以下であるハイドロタルサイト様化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む樹脂組成物からなり、架橋されている難燃性電線が提供される。
Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
Mg=R×DHT ・・・(3)
(ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、DMgをマグネシウム添加量とし、Rを前記ハイドロタルサイト様化合物における酸化アルミニウムに対する酸化マグネシウムのモル比とし、DHTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記ハイドロタルサイト様化合物の添加量(質量部)とする。)
(付記3)
付記1または2に記載の難燃性電線であって、好ましくは、
前記絶縁層は、複数設けられ、
前記複数の絶縁層のうち少なくとも1つの絶縁層は、前記樹脂組成物からなる。
(付記4)
本発明の更に他の態様によれば、
導体を用意する工程と、
前記導体の外周に樹脂組成物を押出被覆することで、前記導体の外周を覆うように絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を架橋させる工程と、
を有し、
前記樹脂組成物は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
式(1)で求められる臭素添加量が0.26以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む難燃性電線の製造方法が提供される。
(付記5)
本発明の更に他の態様によれば、
導体を用意する工程と、
前記導体の外周に樹脂組成物を押出被覆することで、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層を架橋させる工程と、
を有し、
前記樹脂組成物は、
JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.33、0≦m≦10)で表され、式(3)で求められるマグネシウム添加量が42以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し10質量部以下であるハイドロタルサイト様化合物と、
添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
を含む難燃性電線の製造方法が提供される。
(付記6)
付記4又は5に記載の難燃性電線の製造方法であって、好ましくは、
前記絶縁層を架橋させる工程では、
前記絶縁層に電離放射線を照射することで、前記絶縁層を架橋させる。
10 難燃性電線
110 導体
120 絶縁層

Claims (5)

  1. 導体と、
    前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、
    を有し、
    前記絶縁層は、
    JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
    下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
    下記の式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量が前記ベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、
    添加量が前記ベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
    を含む樹脂組成物からなり、架橋されている難燃性電線。
    Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
    epx=(Nepx/WEC)×DEC ・・・(2)
    (ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、Depxをエポキシ基添加量とし、Nepxを前記エポキシ系化合物の一分子中のエポキシ基個数とし、WECを前記エポキシ系化合物の分子量とし、DECを前記ベースポリマ100質量部に対する前記エポキシ系化合物の添加量(質量部)とする。)
  2. 導体と、
    前記導体の外周を覆うように設けられる絶縁層と、
    を有し、
    前記絶縁層は、
    JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
    下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
    Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.33、0≦m≦10)で表され、下記の式(3)で求められるマグネシウム添加量が42以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し10質量部以下であるハイドロタルサイト様化合物と、
    添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
    を含む樹脂組成物からなり、架橋されている難燃性電線。
    Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
    Mg=R×DHT ・・・(3)
    (ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、DMgをマグネシウム添加量とし、Rを前記ハイドロタルサイト様化合物における酸化アルミニウムに対する酸化マグネシウムのモル比とし、DHTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記ハイドロタルサイト様化合物の添加量(質量部)とする。)
  3. 導体を用意する工程と、
    前記導体の外周に樹脂組成物を押出被覆することで、前記導体の外周を覆うように絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層を架橋させる工程と、
    を有し、
    前記樹脂組成物は、
    JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
    式(1)で求められる臭素添加量が0.26以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
    式(2)で求められるエポキシ基添加量が0.026以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し7質量部未満であるエポキシ系化合物と、
    添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
    を含む難燃性電線の製造方法。
    Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
    epx=(Nepx/WEC)×DEC ・・・(2)
    (ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、Depxをエポキシ基添加量とし、Nepxを前記エポキシ系化合物の一分子中のエポキシ基個数とし、WECを前記エポキシ系化合物の分子量とし、DECを前記ベースポリマ100質量部に対する前記エポキシ系化合物の添加量(質量部)とする。)
  4. 導体を用意する工程と、
    前記導体の外周に樹脂組成物を押出被覆することで、絶縁層を形成する工程と、
    前記絶縁層を架橋させる工程と、
    を有し、
    前記樹脂組成物は、
    JIS K7192で規定されるビニル酢酸量が19質量%以上25質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合体を含むベースポリマと、
    下記の式(1)で求められる臭素添加量が0.20以上0.33未満となるように添加される臭素系難燃剤と、
    Mg1−xAl(OH)(COx/2・mHO(0<x≦0.33、0≦m≦10)で表され、下記の式(3)で求められるマグネシウム添加量が42以上となるように添加され、且つ、添加量がベースポリマ100質量部に対し10質量部以下であるハイドロタルサイト様化合物と、
    添加量がベースポリマ100質量部に対し5質量部以上である三酸化アンチモンと、
    を含む難燃性電線の製造方法。
    Br=(NBr/WFRT)×DFRT ・・・(1)
    Mg=R×DHT ・・・(3)
    (ただし、DBrを臭素添加量とし、NBrを前記臭素系難燃剤の一分子中の臭素元素個数とし、WFRTを前記臭素系難燃剤の分子量とし、DFRTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記臭素系難燃剤の添加量(質量部)とし、DMgをマグネシウム添加量とし、Rを前記ハイドロタルサイト様化合物における酸化アルミニウムに対する酸化マグネシウムのモル比とし、DHTを前記ベースポリマ100質量部に対する前記ハイドロタルサイト様化合物の添加量(質量部)とする。)
  5. 前記絶縁層を架橋させる工程では、
    前記絶縁層に電離放射線を照射することで、前記絶縁層を架橋させる請求項3又は4に記載の難燃性電線の製造方法。
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