JP2017109214A - 接合方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バリを容易に除去することができる接合方法を提供することを課題とする。
【解決手段】攪拌ピンF2を備えた接合用回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材2とを接合する接合方法であって、第一金属部材1の表面1aと第二金属部材2の裏面2bとを重ね合わせて重合部J1を形成する重ね合わせ工程と、第二金属部材2の表面2aから回転する接合用回転ツールFを挿入し、攪拌ピンF2のみを第二金属部材2に接触させた状態又は、第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に接触させた状態で重合部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、摩擦攪拌工程で形成された塑性化領域Wを境に、第二金属部材2のうちバリVが形成された余剰片部10ごと除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、金属部材同士を摩擦攪拌で接合する接合方法に関する。
例えば、特許文献1には、第一金属部材と第二金属部材を重ね合わせて重合部を形成した後、第二金属部材の表面から回転ツールを挿入して重合部を摩擦攪拌接合する接合方法が記載されている。当該摩擦攪拌接合では、攪拌ピンのみを第二金属部材に接触させた状態で摩擦攪拌を行うというものである。
特開2014−94409号公報
従来の接合方法であると、ショルダ部で塑性流動化した金属を押さえないため、塑性流動化した金属が第二金属部材の外部に溢れ出しバリが発生しやすくなる。これにより、切削装置等を用いて第二金属部材からバリを除去するバリ除去工程が煩雑になるという問題がある。
そこで、本発明は、バリを容易に除去することができる接合方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重ね合わせ工程と、前記第二金属部材の表面から回転する前記回転ツールを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材に接触させた状態又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、前記摩擦攪拌工程で形成された塑性化領域を境に、前記第二金属部材のうちバリが形成された余剰片部ごと除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
かかる接合方法によれば、第一金属部材と第二金属部材とが接合されるとともに、第二金属部材のうちバリが形成された余剰片部ごと除去することで、バリを容易に除去することができる。
また、前記除去工程では、前記塑性化領域に形成された凹溝を境に前記余剰片部を除去することが好ましい。かかる接合方法によれば、余剰片部をきれいに除去することができる。
また、前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記余剰片部に形成されるように、前記回転ツールの回転方向及び進行方法を設定することが好ましい。
また、前記摩擦攪拌工程では、前記余剰片部に摩擦攪拌接合で発生するバリが形成されるように、前記回転ツールの回転数及び送り速度を設定することが好ましい。
また、前記摩擦攪拌工程では、前記摩擦攪拌工程の終了と同時に前記第二金属部材から前記余剰片部が除かれるように、前記回転ツールの回転数、送り速度及び挿入深さを設定することが好ましい。かかる接合方法によれば、接合サイクルをより短くすることができる。
本発明に係る接合方法によれば、バリを容易に除去することができる。
本発明で用いられる接合用回転ツールを示す側面図である。 本発明の第一実施形態に係る重ね合わせ工程を示す斜視図である。 第一実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す斜視図である。 第一実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。 第一実施形態に係る摩擦攪拌工程後を示す断面図である。 第一実施形態に係る除去工程を示す断面図である。 第二実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す斜視図である。 第二実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。 第三実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す斜視図である。 第三実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。 第四実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す斜視図である。 第四実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。 実施例の引張り試験1のAタイプ継手を示す断面図である。 実施例の引張り試験1のBタイプ継手を示す断面図である。 実施例の引張り試験1の結果を示すグラフである。 実施例の引張り試験2の結果を示すグラフである。 実施例の引張り試験3の結果を示すグラフである。
[第一実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まずは、本実施形態で用いる接合用回転ツールFについて説明する。
図1に示すように、接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸(図示省略)に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈している。
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りの円錐台形状になっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(後記する第一金属部材1及び第二金属部材2)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。螺旋溝は省略してもよい。
接合用回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合をする際には、まず、二つの被接合金属部材を重ね合わせて摩擦攪拌装置用の架台(図示省略)に載置し、治具によって被接合金属部材を固定する。次に、摩擦攪拌装置および回転ツールのうち、回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、被接合金属部材から発生するバリ等も連結部F1に接触しないように、攪拌ピンF2の基端部は十分に露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。即ち、摩擦攪拌装置および回転ツールのうち、回転ツールの攪拌ピンF2のみを被接合金属部材に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
次に、本発明の第一実施形態に係る接合方法について説明する。本実施形態に係る接合方法では、重ね合わせ工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。なお、下記の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
重ね合わせ工程は、図2に示すように、第一金属部材1と第二金属部材2とを重ね合わせる工程である。第一金属部材1及び第二金属部材2は、金属製の板状部材である。第一金属部材1及び第二金属部材2の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、 マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚は同等になっている。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚は適宜設定すればよい。
重ね合わせ工程では、第一金属部材1の表面1aの一部と、第二金属部材2の裏面2bの一部とを重ね合わせて重合部J1を形成する。重ね合わせ工程では、第一金属部材1の左側(接合用回転ツールFの進行方向(図3参照)に対して左側)の端面1cを第二金属部材2の裏面2bの下に位置させるとともに、第二金属部材2の右側の端面2dを第一金属部材1の表面1aの上に位置させる。重ね代は特に制限されないが、本実施形態では約20mmに設定した。
摩擦攪拌工程は、図3に示すように、重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、第二金属部材2の表面2aから右回転させた接合用回転ツールFを挿入し、重合部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。接合用回転ツールFの進行方向は、第二金属部材2の端面2dが接合用回転ツールFの右側に位置するように設定する。接合用回転ツールFの回転数は適宜設定すればよいが、1000〜20000rpmであれば好ましく、3000〜17500rpmであればより好ましい。
接合用回転ツールFの送り速度(接合速度)は、適宜設定すればよいが、400〜2000mm/minであれば好ましく、600〜1800mm/minであればより好ましく、1000〜1800mm/minであるとさらにより好ましい。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。塑性化領域Wは、第一金属部材1に達するように形成されている。
図4に示すように、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2の挿入深さは、適宜設定すればよいが、本実施形態では第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に接触するように設定している。第一金属部材1及び第二金属部材2の両方が摩擦攪拌されることにより、重合部J1近傍の第一金属部材1及び第二金属部材2の金属が塑性流動化して接合される。なお、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2の挿入深さは、攪拌ピンF2が第二金属部材2のみに接触するように設定してもよい。
図5に示すように、摩擦攪拌工程後の塑性化領域Wの表面には、塑性化領域Wの延長方向に亘って凹溝Pが形成される。凹溝Pは、より深くえぐられる部位であって本実施形態ではRe側に形成される。Re側とは、本実施形態では接合用回転ツールFを右回転させているため、進行方向右側となる。より詳しくは、Re側とは、接合用回転ツールFの外周における接線速度の大きさから送り速度の大きさが減算される側である。一方、接合線Cを挟んでRe側とは反対側がAd側となる。Ad側とは、接合用回転ツールFの外周における接線速度の大きさから送り速度の大きさが加算される側である。
図5に示すように、塑性化領域WのうちRe側、特に、凹溝Pの部位は金属不足が多くなっている。一方、塑性化領域WのうちAd側の金属不足は少なくなっている。Re側の第二金属部材2の表面2aにはバリVが集積されている。バリVは塑性化領域Wの延長方向に沿って連続的に形成されている。凹溝Pの最深部における鉛直方向線が破断線L1となる。本実施形態では、第二金属部材2のうち破断線L1よりも端面2d側の部位が余剰片部10となっている。余剰片部10とは、第二金属部材2のうち接合後に第二金属部材2から取り除かれる部位である。摩擦攪拌工程では、余剰片部10側(Re側)に凹溝P及びバリVが発生するように接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向、さらには回転数、送り速度及び挿入深さを設定する。
除去工程は、図5,6に示すように、第二金属部材2のうちバリVが形成された余剰片部10ごと除去する工程である。図5に示すように、除去工程では、凹溝P(破断線L1)を境に、第二金属部材2のうち余剰片部10を第一金属部材1から離間する方向に折り曲げる。これにより、図6に示すように、凹溝P(破断線L1)を境に余剰片部10が切断される。
以上説明したように本実施形態に係る接合方法によれば、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合されるとともに、第二金属部材2のうちバリVが形成された余剰片部10ごと除去することで、バリVを容易に除去することができる。塑性化領域Wのうち接合線C付近及びAd側は金属不足が少なく強固に接合されている。
また、塑性化領域Wに形成された凹溝Pを境に除去することにより、余剰片部10をきれいにかつ容易に除去することができる。機械装置又は治具等で余剰片部10を除去してもよいが、本実施形態によれば人手で折り曲げるだけで簡単に余剰片部10を除去することができる。
なお、摩擦攪拌工程の条件によっては、塑性化領域Wの幅方向両端にバリVが発生する場合がある。この場合は、一端側(余剰片部10となる側)に発生するバリVが、他端側よりも多くなるように接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向、さらには回転数、送り速度及び挿入深さを設定することが好ましい。これにより、バリ除去工程を軽減することができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る接合方法につい説明する。第二実施形態に係る接合方法は、図7に示すように、接合用回転ツールFの回転方向等が第一実施形態と相違する。第二実施形態に係る説明では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第二実施形態に係る接合方法では、重ね合わせ工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。重ね合わせ工程は、第一実施形態と同等なので説明を省略する。
摩擦攪拌工程は、図7に示すように、重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、第二金属部材2の表面2aから左回転させた接合用回転ツールFを挿入し、重合部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。接合用回転ツールFの進行方向は、第二金属部材2の端面2dが接合用回転ツールFの右側に位置するように設定する。
図8に示すように、第二実施形態に係る摩擦攪拌工程では、接合線Cに対して進行方向左側がRe側、右側がAd側となる。本実施形態では、塑性化領域Wのうち、Re側に凹溝P及びバリVが形成されている。したがって、第二実施形態においても、第二金属部材2のうちRe側が余剰片部10となる。
除去工程は、図7,8に示すように、第二金属部材2のうちバリVが形成された余剰片部10ごと除去する工程である。図8に示すように、除去工程では、凹溝P(破断線L1)を境に、第二金属部材2のうち余剰片部10を第一金属部材1から離間する方向に折り曲げる。これにより、凹溝P(破断線L1)を境に余剰片部10が切断される。
以上説明した第二実施形態に係る接合方法のように、接合用回転ツールFを左回転させてもよい。このようにしても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る接合方法について説明する。第三実施形態に係る接合方法は、図9に示すように、主に重ね合わせ工程、接合用回転ツールFの回転方向等が第一実施形態と相違する。
第三実施形態に係る接合方法では、重ね合わせ工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。重ね合わせ工程では、第一金属部材1の表面1aの一部と、第二金属部材2の裏面2bの一部とを重ね合わせて重合部J1を形成する。重ね合わせ工程では、第一金属部材1の右側(接合用回転ツールFの進行方向に対して右側)の端面1dを第二金属部材2の裏面2bの下に位置させるとともに、第二金属部材2の左側の端面2cを第一金属部材1の表面1aの上に位置させる。
摩擦攪拌工程は、図9に示すように、重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、第二金属部材2の表面2aから左回転させた接合用回転ツールFを挿入し、重合部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。接合用回転ツールFの進行方向は、第二金属部材2の端面2cが接合用回転ツールFの左側に位置するように設定する。
図10に示すように、第三実施形態に係る摩擦攪拌工程では、接合線Cに対して進行方向左側がRe側、右側がAd側となる。本実施形態では、塑性化領域Wのうち、Re側に凹溝P及びバリVが形成されている。したがって、第三実施形態においても、第二金属部材2のうちRe側が余剰片部10となる。
除去工程は、図9,10に示すように、第二金属部材2のうちバリVが形成された余剰片部10ごと除去する工程である。図10に示すように、除去工程では、凹溝P(破断線L1)を境に、第二金属部材2のうち余剰片部10を第一金属部材1から離間する方向に折り曲げる。これにより、凹溝P(破断線L1)を境に余剰片部10が切断される。
以上説明した第三実施形態に係る接合方法のように、第一実施形態とは異なるように第一金属部材1及び第二金属部材2を重ね合わせてもよい。第三実施形態の場合は、第一実施形態とは接合用回転ツールFの回転方向が逆となる。このようにしても第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る接合方法について説明する。第四実施形態に係る接合方法は、図11に示すように、接合用回転ツールFの回転方向等が第三実施形態と相違する。第四実施形態に係る説明では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第四実施形態に係る接合方法では、重ね合わせ工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。重ね合わせ工程は、第三実施形態と同等なので説明を省略する。
摩擦攪拌工程は、図11に示すように、重合部J1を摩擦攪拌接合する工程である。摩擦攪拌工程では、第二金属部材2の表面2aから右回転させた接合用回転ツールFを挿入し、重合部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。接合用回転ツールFの進行方向は、第二金属部材2の端面2cが接合用回転ツールFの左側に位置するように設定する。
図12に示すように、第四実施形態に係る摩擦攪拌工程では、接合線Cに対して進行方向右側がRe側、左側がAd側となる。第四実施形態では、塑性化領域Wのうち、Re側に凹溝P及びバリVが形成されている。したがって、第四実施形態においても、第二金属部材2のうちRe側が余剰片部10となる。
除去工程は、図11,12に示すように、第二金属部材2のうちバリVが形成された余剰片部10ごと除去する工程である。図12に示すように、除去工程では、凹溝P(破断線L1)を境に、第二金属部材2のうち余剰片部10を第一金属部材1から離間する方向に折り曲げる。これにより、凹溝P(破断線L1)を境に余剰片部10が切断される。
以上説明した第四実施形態に係る接合方法のように、接合用回転ツールFを右回転させてもよい。このようにしても第三実施形態と略同等の効果を得ることができる。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内において適宜設計変更が可能である。例えば、摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌工程の終了と同時に第二金属部材2から余剰片部10が除かれるように、接合用回転ツールFの回転数、送り速度及び挿入深さを設定してもよい。つまり、この場合の摩擦攪拌工程では、塑性化領域Wに形成される凹溝Pが大きくなるように各要素を設定する。これにより、摩擦攪拌工程の終了とともに、余剰片部10が第二金属部材2から自動的に離脱する。よって、接合サイクルをより短くすることができる。
また、本実施形態では、塑性化領域WのうちRe側に凹溝P及びバリVが形成されるように接合用回転ツールFの回転方向、送り速度、挿入深さ、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚等を設定したが、塑性化領域WのうちAd側に凹溝P及びバリVが形成されるように接合用回転ツールFの回転方向、送り速度、挿入深さ、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚等を設定してもよい。この場合は、第二金属部材2のうちバリVが形成されたAd側が余剰片部10となる。
<引張り試験1>
引張り試験1では、2種類の継手を形成し、送り速度(接合速度)に対する引張強さを計測した。引張り試験1では、図13示すAタイプ継手X1と、図14に示すBタイプ継手X2とを作製した。Aタイプ継手X1及びBタイプ継手X2はいずれも第一金属部材1と第二金属部材2とを重ね合わせて摩擦攪拌により接合した。Aタイプ継手X1は、前記した第一実施形態に係る接合方法により形成した。Bタイプ継手X2は、前記した第四実施形態に係る接合方法により形成した。
各接合方法における摩擦攪拌工程では、接合用回転ツールFの送り速度(接合速度)をパラメータとしてそれぞれ複数個の試験体を作製した。接合用回転ツールFの送り速度は、600, 800, 1000mm/minに設定した。接合用回転ツールFの回転数は、17500rpmに設定した。Aタイプ継手X1及びBタイプ継手X2とも第一金属部材1及び第二金属部材2の厚さを0.6, 0.7, 0.8mmの三種類用意した。第一金属部材1及び第二金属部材2の幅は50mm、長さ200mmに設定した。重合部J1の重ね代は約20mmに設定した。第一金属部材1及び第二金属部材2の材料は、A3003−H16を用いた。
A3003は、Si:0.6%以下、Fe:0.7%以下、Cu:0.05〜0.20%、Mn:1.0〜1.5%、Zn:0.10%以下、その他:各0.05%以下、合計0.15%以下、Al:残部から構成されている。
図15に示すように、ラインZ1は、A3003−H16(厚さ0.6mm)の母材の引張強さを示す線である(−H16は塑性加工により調質を行ったことを意味する)。A3003−H16の母材の引張強さは約105N/mmである。ラインZ2は、A3003−O(厚さ0.6mm)の母材の引張強さを示す線である(−Oは焼きなましを行ったことを意味する)。A3003−Oの母材の引張強さは約70N/mmである。
図13に示すように、Aタイプ継手X1では、第一金属部材1の右端と、第二金属部材2の左端とを治具で把持し、第一金属部材1と第二金属部材2とが離間する方向に引張り、破断状況を確認した。Aタイプ継手X1では、いずれも破断線L2で破断した。破断線L2は、塑性化領域WのAd側の端部に位置している。Aタイプ継手X1では、破断線L2で破断したことから、塑性化領域Wによって強固に接合されていることがわかる。また、図15の結果R1に示すように、送り速度が速くなるにつれて、引張強さが高くなる傾向にあることがわかった。
一方、図14に示すように、Bタイプ継手X2では、第一金属部材1の左端と、第二金属部材2の右端を治具で把持し、第一金属部材1と第二金属部材2とが離間する方向に引張り、破断状況を確認した。Bタイプ継手X2では、いずれも破断線L1で破断した。破断線L1は、凹溝Pを通る鉛直線である。Bタイプ継手X2では、第二金属部材2のうちRe側を引っ張ると、凹溝Pで破断しやすいことがわかる。また、図15の結果R2に示すように、送り速度が速くなるにつれて、引張強さが低くなる傾向にあることがわかった。
Aタイプ継手X1の外観観察及び断面観察の結果、Re側の凹溝Pの凹みは、送り速度が速くなるにつれて深くなることがわかった。一方、Ad側の金属不足は、送り速度が速くなるほど減少した。これにより、Aタイプ継手X1では、送り速度が速くなるほど高い引張強さ(継手強度)を得ることができたと考えられる。また、図15の結果R1に示すように、Aタイプ継手X1では、送り速度を約900mm/min以上に設定するとA3003−Oの引張強さ(ラインZ2)を超える引張強さが得られることがわかった。
<引張り試験2>
引張り試験2では、接合用回転ツールFの回転数を17500rpmに設定して、送り速度(接合速度)に対する引張強さを計測した。引張り試験2では、第一実施形態に係る接合方法で、送り速度に応じて8個のAタイプ継手X1を作製し、それぞれ引張り試験を行った。送り速度は、600,800,1000,1200,1400,1600,1800,2000mm/minの8水準に設定した。
送り速度600〜1200mm/minの範囲内では、送り速度を速くするに従い引張強さも高くなることがわかった。また、送り速度1000〜1800mm/minの範囲内では、送り速度に関わらず、80N/mmを超える高い引張強さが得られることがわかった。また、送り速度が2000mm/minでは、送り速度1000〜1800mm/minに比べて引張強さが低下することがわかった。接合用回転ツールFの送り速度を1000〜1800mm/minに設定するとA3003−Oの引張強さ(ラインZ2)を超える引張強さになることがわかった。つまり、接合用回転ツールFの回転数や攪拌ピンF2の挿入量にもよるが、金属部材の厚さ0.6mmでは、送り速度1000〜1800mm/minが好ましい送り速度の範囲であることがわかった。
<引張り試験3>
引張り試験3では、接合用回転ツールFの回転数及び送り速度をパラメータとしてそれぞれAタイプ継手X1を作製し、引張り試験を行った。図17に示すように、接合用回転ツールFの回転数を10000,12500,15000,17500rpmの4水準に設定した。また、接合用回転ツールFの送り速度を1000,1200,1400mm/minの4水準に設定した。接合用回転ツールFの回転数は10000〜17500rpmの間では回転数に関わらず、80N/mm程度の高い引張強さが得られることがわかった。
1 第一金属部材
1a 表面
1b 裏面
2 第二金属部材
2a 表面
2b 裏面
10 余剰片部
F 接合用回転ツール(回転ツール)
F1 連結部
F2 攪拌ピン
J1 重合部
P 凹溝
V バリ
W 塑性化領域

Claims (5)

  1. 攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
    前記第一金属部材の表面と前記第二金属部材の裏面とを重ね合わせて重合部を形成する重ね合わせ工程と、
    前記第二金属部材の表面から回転する前記回転ツールを挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第二金属部材に接触させた状態又は、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に接触させた状態で前記重合部に沿って前記回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌接合を行う摩擦攪拌工程と、
    前記摩擦攪拌工程で形成された塑性化領域を境に、前記第二金属部材のうちバリが形成された余剰片部ごと除去する除去工程と、を含むことを特徴とする接合方法。
  2. 前記除去工程では、前記塑性化領域に形成された凹溝を境に前記余剰片部を除去することを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
  3. 前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記余剰片部に形成されるように、前記回転ツールの回転方向及び進行方法を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
  4. 前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記余剰片部に形成されるように、前記回転ツールの回転数及び送り速度を設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の接合方法。
  5. 前記摩擦攪拌工程では、前記摩擦攪拌工程の終了と同時に前記第二金属部材から前記余剰片部が除かれるように、前記回転ツールの回転数、送り速度及び挿入深さを設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の接合方法。
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