JP2017106005A - 可逆熱変色性マイクロカプセル顔料 - Google Patents

可逆熱変色性マイクロカプセル顔料 Download PDF

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Abstract

【課題】比較的低温の加熱により、消色状態から発色状態となり、その後の冷却によっても発色状態を維持ができ、加熱により消色状態を経て再び発色状態に復帰し得る変色挙動を示す可逆熱変色性組成物を内包する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の提供。【解決手段】(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物として、炭素数18〜24の直鎖又は分岐鎖アルキル基のカルボン酸エステルを有するモノフェノール化合物、又はジフェノール化合物と、(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体として、炭素数が17以上の脂肪族炭化水素と、を含んでなる可逆熱変色性組成物が内包されたマイクロカプセルを含んでなる可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。【選択図】なし

Description

本発明は可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関するものである。更に詳細には、消色状態からの加熱により発色し、その後の冷却によっても発色状態を維持することができ、加熱により消色状態を経て再び発色する可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関するものである。
従来、発色を加熱により行うことができる可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料として、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物としてヒドロキシ安息香酸エステル、ならびに電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物による電子授受反応を可逆的に生起させる特定の反応媒体を含んでなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この可逆熱変色性組成物は、加熱により発色し、冷却により消色するものであった。
近年、冷却によっては、消色反応を起こさず、発色状態を維持することができ、冷却後の加熱により消色状態を経て再び発色する可逆熱変色性組成物もまた求められている。このような可逆熱変色性組成物を内包するマイクロカプセル顔料として、電子供与性呈色性有機化合物と、特定の電子受容性化合物を含んでなるものが知られている(例えば、特許文献2および3参照)。
しかしながら、特許文献2および3において開示されるような従来の可逆熱変色性組成物は、加熱により発色状態を示すものの、発色する温度が高く、日常生活温度や日常生活温度近傍の温度で容易に発色させることは困難であった。
特開2001−105732号公報 特開平5−124360号公報 特開2004−284091号公報
本発明者らは、消色状態からの加熱により発色し、その後の冷却により発色状態を維持することができ、加熱により消色状態を経て再び発色する可逆熱変色性組成物について鋭意検討した結果、該組成物に、電子供与性呈色性有機化合物、特定の電子受容性化合物、ならびに電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物による電子授受反応を可逆的に生起させる特定の反応媒体を含有させることにより、比較的低温の加熱により、消色状態から発色状態となり、その後の冷却によっても発色状態を維持することはでき、加熱により消色状態を経て再び発色状態に復帰し得る変色挙動を示す可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明による可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、
(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、
(ロ)電子受容性化合物として下記一般式(B):
Figure 2017106005
(式中、Rは炭素数18〜24の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、Zはそれぞれ独立に水素又は水酸基であり、Zのうち、一つまたは二つが水酸基である。)
で示される化合物と、
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体として、炭素数が17以上の脂肪族炭化水素と、
を含んでなる可逆熱変色性組成物が内包されたマイクロカプセルを含んでなることを特徴とするものである。
本発明による可逆熱変色性感熱記録材料は、前記顔料を含んでなる感熱記録層を備えてなることを特徴とする。
本発明による偽造防止媒体は、前記顔料を含んでなる可逆熱変色層を備えてなることを特徴とする。
可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を表す説明図。 実施例1の測定試料が示すヒステリシス曲線を表す図。 比較例1の測定試料が示すヒステリシス曲線を表す図。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
[可逆熱変色性組成物]
本発明に用いられる可逆熱変色性組成物(以下、場合により、単に組成物という。)は、(イ)〜(ハ)の成分を含んでなるものである。
本発明に用いられる可逆熱変色性組成物における(イ)〜(ハ)の各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類などに応じ適宜変更することができるが、例えば、(イ)成分1質量部に対して、(ロ)成分0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがより好ましく、(ハ)成分1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましい。
これらの成分について説明すると以下の通りである。
(イ)電子供与性呈色性有機化合物
本発明の(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
本発明における(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物などが挙げられ、これらのうちフタリド化合物およびフルオラン化合物が好ましい。フタリド化合物としては、例えばジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体などが挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、およびそれらの誘導体が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3−(2−アセトアミド−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−プロピルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジペンチルアミノフルオラン、
2−(ジベンジルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジメチルアミノ)−2−メトキシフェニル〕−3−(1−ブチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−エトキシフェニル〕−3−(1−ペンチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3′,6′−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
2,6−ビス(2′−エチルオキシフェニル)−4−(4′−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6−ビス(2′,4′−ジエチルオキシフェニル)−4−(4′−ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2−(4′−ジメチルアミノフェニル)−4−メトキシ−キナゾリン、
4,4′−(エチレンジオキシ)−ビス〔2−(4−ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
などを挙げることができる。
なお、フルオラン化合物としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物の他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基などのアルキル基、クロロ基などのハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
これらの(イ)成分は、2種類以上を組み合わせて用いることができる。(イ)成分の組み合わせによって、多様な着色を実現できる。
(ロ)電子受容性化合物
本発明において用いられる、(ロ)即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。この(ロ)成分として用いられる化合物は、一般式(B)で示される化合物である。本発明による組成物は、この(ロ)成分を2種以上含むものであってもよい。
Figure 2017106005
式中、Rは炭素数18〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
組成物が上記(ロ)成分を含んでなることによって、比較的低温の加熱により、消色状態から発色状態となり、その後の冷却によっても発色状態を維持することができ、加熱により消色状態を経て再び発色状態に復帰し得る変色挙動を示す可逆熱変色性組成物とすることができる。
また、炭素数が18未満のアルキル基を有する化合物は結晶性が低いため、冷却により発色状態を維持する熱変色性能が不十分となることがあり、炭素数が24を超えるアルキル基を有する化合物は発色濃度が低下する傾向にあり、実用性を十分満足できない場合がある。
変色特性、発色濃度、実用性能という観点から、Rは、炭素数18〜22の直鎖アルキル基であることが好ましい。また、炭素数23〜24の直鎖アルキル基であってもよい。
はそれぞれ独立に水素又は水酸基であり、Zのうち、一つまたは二つが水酸基である。特に、p位に一つの水酸基を有するもの、p位とm位に二つの水酸基を有するもの、およびm位に二つの水酸基を有するものが好ましい。
以下に一般式(B)を満たす化合物を例示する。
3−ヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸トリコシルエステル、3−ヒドロキシ安息香酸テトラコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸トリコシルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸テトラコシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、3,4−ジヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、3,4−ヒドロキシ安息香酸トリコシルエステル、3,4−ヒドロキシ安息香酸テトラコシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸オクタデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ノナデシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸エイコシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ヘンエイコシルエステル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸ドコシルエステル、3,5−ヒドロキシ安息香酸トリコシルエステル、3,5−ヒドロキシ安息香酸テトラコシルエステル。
なお、これらの(ロ)成分は、2種類以上組み合わせて用いることもできる。
(ハ)反応媒体
(ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体としては、炭素数が17以上の脂肪族炭化水素が用いられる。
組成物が上記(ハ)成分を含んでなることによって、比較的低温の加熱により、消色状態から発色状態となり、その後の冷却によっても発色状態を維持することができ、加熱により消色状態を経て再び発色状態に復帰し得る変色挙動を示す可逆熱変色性組成物とすることができる。
脂肪族炭化水素の炭素数は、(ロ)成分の結晶性を阻害する融点を示す化合物を用いて冷却により発色状態を維持するという観点からは、17〜24であることが好ましく、17〜22であることがより好ましい。
脂肪族炭化水素としては、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタンなどの飽和脂肪族炭化水素、などが挙げられる。
脂肪族炭化水素の中でも、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、及びテトラコサンが好ましく、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカンおよびエイコサンがより好ましい。
これら脂肪族炭化水素が置換基を有している場合、色濃度を十分なものとすることができない場合がある。従って、脂肪族炭化水素は、置換基を有しないものであることが特に好ましい。
なお、これらの(ハ)成分は、2種類以上組み合わせて用いることもできる。
(その他の成分)
(ニ)スチレン系化合物
本発明による組成物は、特定のスチレン系化合物を含んでいてもよい。
ここでスチレン系化合物とはスチレンまたはその誘導体に由来する構造を有する化合物である。この化合物は、同一の繰り返し単位を複数含むポリマーであってもよいし、異なった単位が連結した構造を有する化合物であってもよい。典型的には、スチレンまたはその誘導体を繰り返し単位に含むホモポリマーまたはコポリマーであるが、重合度は高い必要は無く、数個の単位が結合したオリゴマーであってもよい。
本発明に用いられるスチレン系化合物の軟化点は、5℃以上であり、好ましくは−10℃以上である。軟化点がこの範囲にあることにより、発色性が改善される。なお、軟化点の上限は特に限定されないが、一般的に使用可能なスチレン系化合物の軟化点は200℃以下である。
また、本発明に用いられるスチレン系化合物の質量平均分子量は、200〜100,000であり、200〜6,000であることが好ましい。
なお、本発明において質量平均分子量は、GPC法(ゲル浸透クロマトグラフ法)により測定したものである。
前記スチレン系化合物の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−α−メチルスチレン系共重合体、α−メチルスチレン重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体などが挙げられる。
ポリスチレンとしては、三洋化成工業(株)製、商品名:ハイマーSB−75(質量平均分子量2,000)、ハイマーST−95(質量平均分子量4,000)などが用いられる。
スチレン−α−メチルスチレン系共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックA5(質量平均分子量317)、ピコラスチックA75(質量平均分子量917)などが用いられる。
α−メチルスチレン重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:クリスタレックス3085(質量平均分子量664)、クリスタレックス3100(質量平均分子量1,020)、クリスタレックス1120(質量平均分子量2,420)などが用いられる。
α−メチルスチレンとビニルトルエンの共重合体としては、理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコテックスLC(質量平均分子量950)、ピコテックス100(質量平均分子量1,740)などが用いられる。
発明に用いられる可逆熱変色性組成物における(ニ)成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類などに応じ適宜変更することができるが、例えば、(イ)成分1質量部に対して、(ニ)成分0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5.0質量部であることがより好ましい。
前記スチレン系化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いることもできる。
(ホ)アルコキシフェニル化合物
本発明に用いられる組成物は、特定のアルコキシフェニル化合物を含んでいてもよい。この化合物は、下記一般式(E)で表されるものである。
Figure 2017106005
式中、kは2〜6の数、好ましくは2を表す。
は、炭素数12〜22、好ましくは15〜20、の直鎖アルキル基を示し、kが2以上の場合には、Rはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
が2の場合には、下式で表される、二つの−OR基がm位またはp位に結合しているものが好ましい。
Figure 2017106005
(式中、二つのRはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい)。
発明に用いられる可逆熱変色性組成物における(ホ)成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類などに応じ適宜変更することができるが、例えば、(イ)成分1質量部に対して、(ホ)成分0.02〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5.0質量部であることがより好ましい。
(ヘ)光安定剤
本発明に用いられる組成物は、その機能に支障のない範囲で光安定剤を含んでいてもよい。
光安定剤としては、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する紫外線吸収剤、可視光線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類などの一重項酸素消光剤、オキシドジスムスターゼとコバルト、及びニッケルの錯体などのスーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤など、酸化反応を抑制する化合物が挙げられる。
耐光性の観点から、紫外線吸収剤と、酸化防止剤及び/又は一重項酸素消光剤を含んでなることが特に好ましい。
組成物における光安定剤の含有量は、0.3〜24質量%であることが好ましく、0.8〜16質量%であることがより好ましい。
また、本発明に用いられる組成物は、その機能に支障のない範囲で、樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、溶解助剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤、老化防止剤、耐電防止剤、極性付与剤などの添加剤を含んでいてもよい。
[マイクロカプセル顔料]
本発明に係るマイクロカプセル顔料は、上述した可逆熱変色性組成物を内包してなる。
該組成物をマイクロカプセルに内包することにより、組成物が酸性物質、塩基性物質、過酸化物などの化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触してしまうことを防止することができ、組成物の機能低下を防止することができると共に、耐熱安定性を向上させることができる。さらには組成物がマイクロカプセル内に保持されるので、種々の使用条件において組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができる。
マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましく、3〜30μmの範囲であることがより好ましい。マイクロカプセル顔料の平均粒子径を上記数値範囲とすることにより、インキ組成物、塗料、或いは熱可塑性樹脂中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性を改善することができると共に、高濃度の発色性を示すマイクロカプセル顔料とすることができる。
なお、粒子径、粒度分布の測定はレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔株式会社堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を体積基準で算出することができる。
なお、マイクロカプセル化は、公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法などを利用することにより実施することができる。
更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
マイクロカプセル顔料を構成する内包物と壁膜との構成比は、内包物:壁膜=7:1〜1:1(質量比)の範囲であることが好ましく、このような比率とすることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができる。より好適には、内包物:壁膜=6:1〜1:1(質量比)である。
マイクロカプセル顔料は、膜形成材料であるバインダーを含む媒体中に分散されて、インキ、塗料などの可逆熱変色性材料として適用され、従来より公知の方法、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写などの印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装、などの手段により、紙、合成紙、布帛、植毛或いは起毛布、不織布、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁器、木材、石材などの支持体上に可逆熱変色層を形成したり、或いは支持体中に分散することができる。
更には、溶融状態の熱可塑性プラスチック中に混練して一体化された材料として適用できる。
(イ)〜(ハ)成分を含んでなる組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の変色特性を、図1に基づいて、以下に説明する。図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。
完全消色状態のマイクロカプセル顔料(A点)を加熱していくと、(イ)成分と(ロ)成分との相互作用により、発色開始温度Tより発色が開始し、完全発色温度T以上の温度において完全発色状態のマイクロカプセル顔料(B点)となる。
このマイクロカプセル顔料を冷却すると、(イ)成分と(ロ)成分との相互作用を維持したままマイクロカプセル顔料の温度を下げることができる(C点)。なお、C点におけるマイクロカプセル顔料の発色濃度は、B点におけるマイクロカプセル顔料の発色濃度と必ずしも一致せず、マイクロカプセル顔料に含まれる(ロ)成分などにより異なる場合もある。
この際、(ハ)成分の凝固点近傍、好ましくは凝固点以下にまでマイクロカプセル顔料を冷却する必要がある点に留意する。
冷却速度は、使用する(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分などにより適宜変更することが好ましいが、例えば、10℃/分、好ましくは5℃/分とすることができる。
消色状態のマイクロカプセル顔料を冷却した場合、マイクロカプセル顔料は消色状態が維持される(A点)。
この状態からマイクロカプセル顔料を再度加熱していくと、消色開始温度Tより消色が開始し、完全消色温度Tにおいて、消色する(D点)。
この状態からマイクロカプセル顔料を冷却すると、当初のマイクロカプセル顔料の状態に戻り(A点)、発色開始温度T以上の温度に加熱すると発色を開始する。
なお、図1において、線分EFの長さは変色のコントラストを示す。
本発明において、完全発色温度Tは、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。
なお、本発明のマイクロカプセル顔料は、(ロ)成分などの種類によっては、完全な発色や消色を示さない場合がある。このような場合であっても、例えば、マイクロカプセル顔料を、完全発色温度T以上に加熱後、冷却中に完全発色状態となる場合がある。なお、このような場合は、完全な発色状態では無いが、本発明においては便宜的に完全発色状態という。すなわち、本発明においては、加熱によって発色し、その発色濃度が飽和したときの温度を完全発色温度という。
[マイクロカプセル顔料の用途]
(可逆熱変色性感熱記録材料)
一実施形態において、可逆熱変色性感熱記録材料(以下、場合により、単に感熱記録材料という。)が備える感熱記録層に、本発明のマイクロカプセル顔料を含有させることができる。
上記感熱記録層におけるマイクロカプセル顔料の含有量は、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
感熱記録層は、樹脂材料をさらに含んでなることができる。
樹脂材料としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩酸ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドンなどのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹等のポリエステル系樹脂、ポリウレタンアクリレートなどのウレタン系樹脂、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂などのセルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などのポリアミド系樹脂シリコーン変性ウレタン系樹脂、フッ素変性ウレタン系樹脂およびアクリル樹脂などが挙げられる。
また、イソシアネート化合物などを使用することにより硬化させることのできる2液硬化型の樹脂材料を含んでいても良い。このような樹脂としては、ポリビニルアセタール系樹脂やポリビニルブチラール系樹脂などが挙げられる。
感熱記録層は、2種類以上の樹脂材料を含んでいてもよい。
感熱記録層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、3〜100μm、好ましくは5〜50μmとすることができる。
感熱記録層は、上記した感熱記録材料を必要に応じ、溶媒に分散させ、後述する基材などの上にグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の適切な印刷方法、塗布方法により塗布、乾燥することにより作製することができる。
上記感熱記録材料は、感熱記録層下に基材を備えてなる。基材としては、紙、PETフィルムなどの樹脂フィルム、ガラス、木材、プラスチック、皮革、不織布およびこれらの積層体などを使用することができる。基材の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10〜2,000μm、好ましくは10〜1,000μmとすることができる。
感熱記録材料は、その他に、感熱記録層上に保護層、基材の感熱記録層と同一面および/または反対面に磁気記録層、保護層と感熱記録層との間に中間層、基材の感熱記録層と反対面に粘接着層などを備えていてもよい。
この感熱記録材料は、ICカードや光カード、表示ラベル、玩具、衣類、家具などに使用することができる。
(偽造防止媒体)
一実施形態において、偽造防止媒体が備える可逆熱変色層に、本発明のマイクロカプセル顔料を含有させることができる。
上記可逆熱変色層におけるマイクロカプセル顔料の含有量は、10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
可逆熱変色層は、上記した感熱記録層に含まれうる樹脂材料を含んでなることができる。
偽造防止媒体は、可逆熱変色層下に基材を備えてなる。基材としては、紙、PETフィルムなどの樹脂フィルム、ガラス、木材、プラスチック、皮革、不織布およびこれらの積層体などを使用することができる。
偽造防止媒体は、基材および可逆熱変色層以外のその他の層を備えてなることができる。
例えば、偽造防止媒体は、可逆熱変色層上に保護層を備えていてもよい。
また、偽造防止媒体は、磁気記録層および/またはIC記録層を備えていてもよく、これらの層は、基材のいずれの面に設けられてもよい。例えば、可逆熱変色層が設けられた基材の面に可逆熱変色層と並列して設けることができる。
さらに、偽造防止媒体は、基材の可逆熱変色層が設けられた面とは反対の面に粘接着層などを備えていてもよい。
偽造防止媒体は、各種IDカード、キャッシュカード、ICカード、磁気カード、プリペイドカード、紙幣、切手、有価証券、変造防止シール等に適用することにより、偽造防止材として利用することができる。
また、偽造検知材として利用することもでき、食品類の過冷却状態や過熱状態の検知といった、インジケーター用途に用いることもできる。
一実施形態において、本発明のマイクロカプセル顔料は、筆記具用やインクジェット用のインキ組成物に含有させて使用することができる。
下記成分を配合し、加温溶融することにより、相溶体として可逆熱変色性組成物を調製した。
(イ)成分:3’,6’−ビス[フェニル(3−メチルフェニル)アミノ]−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オン 1質量部
(ロ)成分:4−ヒドロキシ安息香酸エイコシル 8質量部
(ハ)成分:ヘプタデカン 20質量部
(二)成分:スチレン系化合物(理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックD−125) 5質量部
この組成物を、エポキシ樹脂及びアミン硬化剤による界面重合反応により形成されたエポキシ樹脂皮膜中に内包して、マイクロカプセル形態の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(実施例1)を得た。
このマイクロカプセル顔料をエチレン−酢酸ビニルエマルジョン中に分散した可逆熱変色性インキをスクリーン印刷により上質紙に印刷した印刷物を測定試料とした。
同様にして、各成分の種類を表1に記載したように変更して、実施例2〜8,比較例1〜4の測定試料を作成した。
実施例1の測定試料を色差計〔TC−3600型色差計、(株)東京電色製〕の所定箇所にセットし、消色状態から速度10℃/分にて加熱した。加熱により発色反応が進行し、青色の発色が認められた。
完全発色状態になるまで加熱した後、速度5℃/分で、0℃まで冷却した。冷却しても発色状態が維持され、むしろ発色反応が更に進行した。
発色開始温度以下まで冷却した後、速度10℃/分で、70℃まで加熱した。この加熱より、消色反応が進行し、消色が認められた。さらに加熱することで、再び発色反応が進行した。各段階における温度と試料の色濃度からヒステリシス曲線を作成した。
図2に実施例1のマイクロカプセル顔料のヒステリシス曲線を示す。これらのヒステリシス曲線から、発色開始温度(T)、完全発色温度(T)、消色開始温度(T)、および完全消色温度(T)を求めた。得られた結果は表1に示すとおりであった。
実施例2〜7の測定試料についても実施例1の測定試料と同じくヒステリシス曲線を作成したところ、実施例1に似たヒステリシス曲線が得られた。
しかしながら、比較例1〜4の測定試料は、冷却した場合に発色状態を維持できずに消色反応が進行した。しかし、引き続き加熱したところ、発色反応が進行した。図3に比較例1のマイクロカプセル顔料のヒステリシス曲線を示す。
Figure 2017106005
表中
A1:3’,6’−ビス[フェニル(3−メチルフェニル)アミノ]−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9’−[9H]キサンテン]−3−オン
B1:4−ヒドロキシ安息香酸エイコシル(アルキル基の炭素数20)
B2:4−ヒドロキシ安息香酸オクタデシル(アルキル基の炭素数18)
B3:4−ヒドロキシ安息香酸ドコシル(アルキル基の炭素数22)
B4:4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル(アルキル基の炭素数16)
C1:ヘプタデカン(炭素数17)
C2:オクタデカン(炭素数18)
C3:ノナデカン(炭素数19)
C4:エイコサン(炭素数20)
C5:ヘキサデカン(炭素数16)
C6:ドコサン(炭素数22)
D1:スチレン系化合物(理化ハーキュレス(株)製、商品名:ピコラスチックD−125)

Claims (6)

  1. (イ)電子供与性呈色性有機化合物と、
    (ロ)電子受容性化合物として下記一般式(B):
    Figure 2017106005
    (式中、Rは炭素数18〜24の直鎖又は分岐鎖アルキル基を示し、Zはそれぞれ独立に水素又は水酸基であり、Zのうち、一つまたは二つが水酸基である。)
    で示される化合物と、
    (ハ)前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を可逆的に生起させる反応媒体として、炭素数が17以上の脂肪族炭化水素と、
    を含んでなる可逆熱変色性組成物が内包されたマイクロカプセルを含んでなることを特徴とする、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。
  2. 前記Rが、炭素数18〜22の直鎖アルキル基である、請求項1に記載の顔料。
  3. 前記脂肪族炭化水素の炭素数が、17〜22である、請求項1または2に記載の顔料。
  4. (ニ)軟化点が5℃以上であり、且つ、質量平均分子量が200〜100,000である、スチレンポリマーをさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の顔料を含んでなる感熱記録層を備えてなる、可逆熱変色性感熱記録材料。
  6. 基材と、請求項1〜4のいずれか一項に記載の顔料を含んでなる可逆熱変色層とを備えてなる、偽造防止媒体。
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