JP2017103973A - 電圧補償装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速かつ連続的に電力系統の電圧を適正値に補償する電圧補償装置を提供する。
【解決手段】実施形態の電圧補償装置は、第1電力変換器と、第1相〜第3相にそれぞれ直列に接続された一次巻線と前記第1電力変換器の出力に接続された二次巻線とを含む第1〜第3変圧器と、直流リンクを介して前記第1電力変換器に接続された第2電力変換器と、前記第1相〜前記第3相の線間に接続された第4変圧器および第5変圧器と、前記第2電力変換器と前記第4変圧器および前記第5変圧器との間にそれぞれ接続された第1および第2インダクタと、前記第1相〜第3相の交流電圧および前記直流リンクの電圧にもとづいて、前記第1電力変換器を制御する第1制御回路と、前記第1〜第2インダクタに流れる電流および前記直流リンクの電圧にもとづいて、前記第2電力変換器を制御する第2制御回路と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、電圧補償装置に関する。
電力系統では、変電所からの距離に応じて電力線インピーダンスが増加することから、末端では、その電圧降下により受電電圧が低下する場合がある。電力系統では、変電所からの距離によらず一定の電圧が利用できるようにする必要がある。
佐々木 裕治、吉田 隆彦、関 長隆、渡辺 敏之、齊藤 裕治 著、「高速応答を可能にしたTVRとその実証試験」、電気学会論文誌B,Vol.123(2003)
実施形態は、高速かつ連続的に電力系統の電圧を適正値に補償する電圧補償装置を提供する。
実施形態に係る電圧補償装置は、自己消弧形の第1スイッチング素子を含む第1インバータ回路を含む第1電力変換器と、三相交流の第1相、第2相および第3相にそれぞれ直列に接続された一次巻線と前記第1電力変換器の出力に接続された二次巻線とを含む第1変圧器、第2変圧器および第3変圧器と、直流リンクを介して前記第1電力変換器に接続された第2電力変換器と、前記第1相〜前記第3相のうちの二相の線間に二次巻線が接続された第4変圧器と、前記第1相〜前記第3相のうちの他の二相の線間に二次巻線が接続された第5変圧器と、前記第2電力変換器と前記第4変圧器の前記二次巻線との間に接続された第1インダクタと、前記第2電力変換器と前記第5変圧器の前記二次巻線との間に接続された第2インダクタと、前記第1変圧器の上流と前記第2変圧器の上流との間の線間の電圧を表す第1電圧データ、前記第2変圧器の上流と前記第3変圧器の上流との間の線間の電圧を表す第2電圧データ、前記第1変圧器の下流と前記第2変圧器の下流との間の線間の電圧を表す第3電圧データ、前記第2変圧器の下流と前記第3変圧器の下流との間の線間の電圧を表す第4電圧データ、および前記直流リンクの両端の電圧を表す第5電圧データにもとづいて、前記第1スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する第1制御回路と、前記第1インダクタに流れる電流を表す第1電流データ、第2インダクタに流れる電流を表す第2電流データ、および前記第5電圧データにもとづいて、前記直流リンクを介して前記第1電力変換器に有効電力を供給するように前記第2電力変換器を制御する第2制御回路と、を備える。前記第1制御回路は、前記第1電圧データ〜前記第4電圧データにもとづいて、前記第1相〜前記第3相の各系統電圧を計算し、前記系統電圧と、あらかじめ設定された目標電圧との差分を出力する第1演算部と、前記第5電圧データおよび前記差分にもとづいて、前記第1電力変換器が出力する電圧の振幅を決定し、前記差分の符号によって、前記系統電圧と同相の電圧を出力するか、逆相の電圧を出力するかを決定する第2演算部と、を含む。
第1の実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。 第1の実施形態の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。 比較例に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。 第1の実施形態の変形例に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。 第2の実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。 第2の実施形態の電圧補償装置の一部を例示するブロック図である。 第3の実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。 第3の実施形態の変形例に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。 図9(a)は、第4の実施形態に係る電圧補償装置の制御部を例示するブロック図である。図9(b)は、図9(a)の電圧補償装置の一部分の特性を例示する概念図である。 図10(a)は、第5の実施形態に係る電圧補償装置の制御部を例示するブロック図である。図10(b)は、第5の実施形態の電圧補償装置の一部分の特性を例示する概念図である。 第6の実施形態に係る電圧補償装置の制御部を例示するブロック図である。 第6の実施形態の電圧補償装置の動作を説明するための模式図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る電圧補償装置を例示するブロック図である。
図2は、本実施形態の電圧補償装置の一部である制御部を例示するブロック図である。
本実施形態の電圧補償装置1の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態の電圧補償装置1は、電圧補償部10と、制御部80と、を備える。電圧補償部10は、直列変圧器11,13,15と、第1電力変換器20と、第2電力変換器30と、並列変圧器41,42と、インダクタ51,52と、電流検出器61,62と、交流電圧検出器71〜74と、直流電圧検出器75と、を含む。電圧補償装置1は、電圧補償部10によって電力系統に直列に接続される。電力系統は、U相、V相およびW相からなる三相交流の配電系統である。以下では、電力系統に直列に接続された電圧補償装置1から見て、変電所側を上流、需要者側を下流と呼ぶこととする。電圧補償装置1は、U相の上流6aと入力端子2aで接続され、U相の下流7aと出力端子3aで接続されている。電圧補償装置1は、V相の上流6bと入力端子2bで接続され、V相の下流7bと出力端子3bで接続されている。電圧補償装置1は、W相の上流6cと入力端子2cで接続され、W相の下流7cと出力端子3cで接続されている。電圧補償装置1は、電力系統の上流6a〜6cおよび下流7a〜7cの電圧の上昇あるいは低下を検出して、目標値の範囲内となるように電力系統の電圧を補償する。
直列変圧器11,13,15は、一次巻線11p,13p,15pと、二次巻線11s,13s,15sと、をそれぞれ含む。直列変圧器11の一次巻線11pは、入力端子2aと出力端子3aとの間に接続されており、電力系統のU相に直列に接続されている。直列変圧器13の一次巻線13pは、入力端子2bと出力端子3bとの間に接続されており、電力系統のV相に直列に接続されている。直列変圧器15の一次巻線15pは、入力端子2cと出力端子3cとの間に接続されており、電力系統のW相に直列に接続されている。つまり、3つの直列変圧器11,13,15の一次巻線11p,13p,15pは、電力系統の各相に直列に接続されている。
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、それぞれ一方の端子12a,14a,16aで互いに接続され、それぞれの他方の端子12b,14b,16bは、第1電力変換器20の各交流出力端子22a,22b,22cに接続されている。つまり、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、スター結線されて、第1電力変換器20の出力に接続されている。
第1電力変換器(電力変換器1)20は、高圧直流入力端子21aと低圧直流入力端子21bとの間に接続されている。高圧直流入力端子21aおよび低圧直流入力端子21bには、直流リンク24用のコンデンサを介して直流電圧が供給される。第1電力変換器20は、三相交流電圧を出力する交流出力端子22a,22b,22cを含む。交流出力端子22a,22b,22cは、フィルタ26を介して直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sに接続されている。第1電力変換器20は、高圧直流入力端子21aと低圧直流入力端子21bとの間に印加された直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ装置である。第1電力変換器20は、たとえば、6つのスイッチング素子23a〜23fを含んでいる。スイッチング素子23a〜23fは、自己消弧形のスイッチング素子であり、たとえばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等である。スイッチング素子は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチとして直列に接続される。直列に接続されたアームは、3つ並列に接続されてインバータ回路を構成する。第1電力変換器20のインバータ回路は、直流電圧を電力系統の周波数よりも高い周波数の交流電圧に変換することができれば、この回路構成に限定されない。インバータ回路は、たとえばマルチレベルインバータ回路やその変形等であってもよい。
第1電力変換器20と直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sとの間には、フィルタ26が接続されている。フィルタ26は、この例では、各相に直列に接続されたインダクタLu,Lv,Lwと、各線間に接続されたコンデンサCa,Cb,Ccとを含む。フィルタ26は、第1電力変換器20が出力する数kHz〜数100kHz程度の高周波スイッチング波形を電力系統の周波数に変換するローパスフィルタである。フィルタ26は、第1電力変換器20の出力の周波数や、変調方式等にしたがって適切な回路を用いることができる。
直流リンク24は、第1電力変換器20に直流電力を供給するコンデンサを含む。この直流リンク24は、第2電力変換器30から供給される有効電力を第1電力変換器20に供給する。なお、後述するように、直流リンク24は、第2電力変換器30を介して電力系統側と無効電流のやり取りをすることができる。
第2電力変換器(電力変換器2)30は、高圧直流端子31aと、低圧直流端子31bとを含んでいる。高圧直流端子31aおよび低圧直流端子31bは、直流リンク24に接続されている。第2電力変換器30は、交流端子32a,32b,32cを含む。交流端子32a,32b,32cのいずれか1つ、この例では、交流端子32aには、インダクタ51の一端が接続されている。交流端子32b,32cの他の1つ、この例では、交流端子32cには、インダクタ52の一端が接続されている。つまり、第2電力変換器30は、交流端子32a,32b,32cに入力される交流電力を直流に変換して、直流リンク24に供給するコンバータ装置、より具体的にはアクティブ平滑フィルタとして動作し、直流リンク24に有効電力を供給する。第2電力変換器30は、第1電力変換器20と同じ回路構成のインバータ回路であってもよい。第2電力変換器30は、第1電力変換器20と同様に、6つの自己消弧形のスイッチング素子33a〜33fを含んでいる。スイッチング素子33a〜33fは、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチとして直列に接続される。直列接続されたアームは、3つ並列に接続されてインバータ回路を構成する。第2電力変換器30のインバータ回路は、直流電圧と、電力系統の周波数よりも高い周波数の交流電圧とを相互に変換することができれば、この構成に限定されない。なお、この例では、第2電力変換器30のインバータ回路の構成は、第1電力変換器20のインバータ回路の構成と同一であるが、異なる構成であってもよい。
並列変圧器41の一次巻線41pは、U相およびV相の下流7a,7b側の線間に接続されている。並列変圧器42の一次巻線42pは、V相およびW相の下流7b,7c側の線間に接続されている。並列変圧器41の二次巻線41sの一方は、インダクタ51の他端に接続され、他方は、第2電力変換器30の交流端子32bに接続されている。並列変圧器42の二次巻線42sは、インダクタ52の他端に接続され、他方は、第2電力変換器30の交流端子32bに接続されている。つまり、並列変圧器41,42の二次巻線41s,42sは、インダクタ51,52を介して第2電力変換器30の交流端子32a〜32cとV結線されている。
電流検出器61は、第2電力変換器30の交流端子32aと並列変圧器41の二次巻線41sとの間に直列に接続されている。電流検出器62は、第2電力変換器30の交流端子32cと並列変圧器42の二次巻線42sとの間に直列に接続されている。つまり、電流検出器61,62は、インダクタ51,52に流れるそれぞれの交流電流を検出して、電流データIL1,IL2を出力する。
交流電圧検出器71,72は、電力系統の上流6a〜6c側に接続されている。交流電圧検出器71は、U相とV相との線間に接続され、UV間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器72は、V相とW相との線間に接続され、VW間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器73,74は、電力系統の下流7a〜7c側に接続されている。交流電圧検出器73は、u相とv相との線間に接続され、uv間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器74は、v相とw相との線間に接続され、vw間の線間電圧を検出する。交流電圧検出器71〜74は、たとえば計器用変圧器と計器用変圧器の出力を適切な電圧レベルに変換するトランスデューサとを含んでいる。交流電圧検出器71〜74は、直列変圧器11,13,15の一次巻線11p,13p,15pの両端の電圧を検出して、計器用変圧器で降圧し、トランスデューサによって制御部80に入力可能な信号である交流電圧データVAC1〜VAC4に変換して出力する。
直流電圧検出器75は、直流リンク24の両端の直流電圧を検出して、直流電圧データVDCを出力する。
図2に示すように、制御部80は、第1制御回路81と、第2制御回路82と、を含む。第1制御回路81は、第1電力変換器20の動作を制御するためのゲート駆動信号を第1電力変換器20に供給する。第2制御回路82は、第2電力変換器30の動作を制御するためのゲート駆動信号を第2電力変換器30に供給する。
第1制御回路81は、直交座標変換部91と、電圧補償量演算部(第1演算部)92と、電圧指令値演算部(第2演算部)93と、ゲート駆動信号生成部94と、を含む。直交座標変換部91は、交流電圧検出器71〜74の出力に接続されている。直交座標変換部91は、三相交流の瞬時電圧を直交座標に変換する。直交座標変換部91は、交流電圧検出器71〜74からの出力を入力して、電力系統の上流および下流それぞれについて直交座標変換する。直交座標変換された系統電圧の上流および下流の電圧値のデータは、電圧補償量演算部92に入力される。
電圧補償量演算部92は、交流電圧データVAC1〜VAC4にもとづいて、系統電圧の上流の電圧値と下流の電圧値との差分を計算して、この電圧値の差分を電圧指令値演算部93に供給する。
電圧指令値演算部93は、第1電力変換器20が出力する出力電圧の指令値を計算する。出力電圧の指令値は、直流リンク24の両端の電圧値、電圧補償量演算部92によって計算された電力系統の上流および下流の電圧値の差分の大きさおよび符号によって設定される。電力系統の上流および下流の電圧値の差分の大きさが、電力系統の電圧の目標値の下限よりも小さいとき、および電力系統の電圧の上限よりも大きいときには、この電圧値の差分が基準値となり、第1電力変換器20の出力電圧値が設定される。この電圧値の差分の大きさが、目標値の下限から上限の範囲内にあるときには、基準値はゼロに設定され、第1電力変換器20は、出力電圧を出力しない。また、電圧指令値演算部93は、この電圧値の差分が正の値の場合、つまり、電力系統の上流の電圧に対して下流の電圧が小さいときには、第1電力変換器20が電力系統と同相の電圧を出力するように、指令値が設定される。電圧指令値演算部93は、この電圧値の差分が負の値の場合、つまり、電力系統の上流の電圧に対して下流の電圧が大きいときには、第1電力変換器20が電力系統と逆相の電圧を出力するように指令値が設定される。
ゲート駆動信号生成部94は、電圧指令値演算部93から供給される電圧指令値にもとづいて、座標の逆変換や空間ベクトル変換等を行い、第1電力変換器20のスイッチング素子に対するゲート駆動信号のパターンを生成する。ゲート駆動信号生成部94によって生成されたゲート駆動信号は、たとえば光信号に変換され、光ファイバを介して第1電力変換器20に供給される。
第2制御回路82は、直流電圧制御部(第3演算部)95と、直交座標変換部96と、交流電流制御部(第4演算部)97と、ゲート駆動信号生成部98と、を含む。直流電圧制御部95は、直流電圧検出器75によって検出された直流リンク24の両端の電圧である直流電圧データVDCを入力して、第1電力変換器20へ供給する有効電流を計算し、有効電流指令値として出力する。
直交座標変換部96は、電流検出器61,62によってインダクタ51,52に流れる電流に対応する電流データIL1,IL2を直交座標変換して、交流電流制御部97に供給する。
交流電流制御部97は、直流電圧制御部95で生成された有効電流指令値、およびインダクタ51,52に流れる電流にもとづいて、直流リンク24を介して第1電力変換器20に流れる有効電流指令値を設定する。そして、交流電流制御部97は、直流リンク24両端の電圧を一定に制御する交流電流の指令値を生成する。第2電力変換器30から第1電力変換器20へ供給する出力電流の参照波形のために、交流電流制御部97には、交流電圧検出器73,74の検出波形を入力してもよい。
ゲート駆動信号生成部98は、交流電流制御部97が生成した交流電流の指令値にもとづいて、座標の逆変換や空間ベクトル変換等を行い、第2電力変換器30のインバータ回路を駆動するゲート駆動信号のパターンを生成する。ゲート駆動信号生成部98によって生成されたゲート駆動信号は、たとえば光信号に変換され、光ファイバを介して第2電力変換器30に供給される。
電流データIL1,IL2、交流電圧データVAC1〜VAC4、および直流電圧データVDCは、アナログ値として検出された後、アナログディジタル変換器等によってディジタルデータに変換されている。制御部80では、論理回路によって、これらのディジタルデータを処理する。制御部80は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)、あるいは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)等であってもよい。第1制御回路81および第2制御回路82の各部が、CPU等によって実現される場合には、直交座標変換や回転座標変換等、周知のアルゴリズムが用いられる。
本実施形態の電圧補償装置1の動作について説明する。
本実施形態の電圧補償装置1では、目標電圧の範囲があらかじめ設定されている。目標電圧の範囲は、たとえば6.6kV±5%である。つまり、電力系統の電圧が、6.27kV(=6.6kV−5%)よりも低下した場合、および電力系統の電圧が6.93V(=6.6kV+5%)よりも上昇した場合に、電圧が、6.27kV〜6.93kVの範囲内となるように補償する。具体的には、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sに、一次巻線11p,13p,15pで不足または超過している電圧を発生させて、電力系統の電圧を補償する。電力系統の電圧が目標電圧の下限よりも小さいときには、電力系統の電圧と同相の電圧を二次巻線に発生させて、変圧器の磁気結合を用いて一次巻線に加算する。電力系統の電圧が目標電圧の上限よりも大きいときには、電力系統の電圧と逆相の電圧を二次巻線に発生させて、変圧器の磁気結合を用いて一次巻線に加算する。
第1電力変換器20は、第2電力変換器30から直流リンク24を介して電力の供給を受けて動作する。第1電力変換器20は、交流電圧データVAC1〜VAC4および直流電圧データVDCを入力する第1制御回路81が生成するゲート駆動信号のパターンにしたがって動作する。
第1制御回路81の電圧補償量演算部92は、交流電圧検出器71〜74によって検出された直列変圧器11,13,15の一次巻線11p,13p,15pの両端の電圧から、電力系統の上流の電圧値と下流の電圧値との差分を計算する。電圧補償量演算部92によって計算されたこの電圧値との差分と目標電圧の下限および上限とをそれぞれ比較する。一次巻線11p,13p,15pの両端の電圧から、電力系統の各相U,V,Wの電圧の瞬時値が検出され、直交変換されて、電圧補償量演算部92によって電圧の補償量が計算される。そのため電力系統の電圧と、目標電圧との比較は、実質的に相ごとに行われる。比較の結果、電力系統の電圧が目標電圧の下限値よりも小さいとき、または、電力系統の電圧の差分が目標電圧の上限よりも大きいときには、電力系統電圧の差分が、第1電力変換器20の出力電圧の基準値となる。直交座標変換部91に入力される電圧値は、図示しないがアナログディジタル変換器(以下、単にAD変換器ともいう。)によってアナログ値からディジタル値に変換されている。したがって、第1電力変換器20のために設定される基準値は、AD変換器で変換されたディジタル値として処理される。つまり、電圧指令値演算部93によって設定される基準値は、AD変換器の分解能を最小ステップとする離散値であるが、AD変換器の分解能は、ダイナミックレンジ5Vに対して数mV程度とすることができるので、設定される基準値は、ほぼ連続的に設定される。したがって、電圧指令値演算部93では、第1電力変換器20の出力電圧に対する基準値は、実質的に連続値として設定される。
電圧指令値演算部93は、電力系統の電圧値の差分の符号によって、第1電力変換器20から出力される電圧の位相を設定する。たとえば、電力系統の電圧値の差分が正のとき、つまり、電力系統の下流の電圧が上流の電圧よりも小さいときには、正の値を有する電圧指令値を出力する。電圧指令値が正の値のときには、第1電力変換器20は、電力系統の電圧と同相の出力電圧を出力する。電力系統の電圧値の差分が負のとき、つまり、電力系統の下流の電圧が上流の電圧よりも大きいときには、負の値を有する電圧指令値を出力する。電圧指令値が負の値のときには、第1電力変換器20は、電力系統の電圧と逆相、つまり、電力系統の位相とは180°位相の異なる電圧を出力する。
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、一次巻線11p,13p,15pとそれぞれ巻き方向を同一とするように巻回されている。したがって、第1電力変換器が、一次巻線11p,13p,15pに印加されている電圧と同相の電圧を、二次巻線11s,13s,15sに出力すると、一次巻線11p,13p,15pには、二次巻線11s,13s,15sの電圧がそれぞれ加算される。一方、第1電力変換器20が、一次巻線11p,13p,15pに印加されている電圧と逆相の電圧を、二次巻線11s,13,15sに出力すると、一次巻線11p,13p,15pには、二次巻線11s,13s,15sの電圧がそれぞれ差し引かれる。
本実施形態の電圧補償装置1では、電力系統の各相の上流の電圧値および下流の電圧値をそれぞれ検出しているので、上述の動作は、相ごとに行われる。
上述した第1電力変換器20の動作にわたって、第2電力変換器30は、直流リンク24を介して第1電力変換器20に電力を供給する。第2電力変換器30は、並列変圧器41,42によって電力系統側から電力が供給されている。第2電力変換器30は、電力系統側からの電力が電流検出器61,62によって検出され、電力系統の電圧と同相、すなわち力率100%となるように電流制御される。そのため、電力系統側から第2電力変換器30へ流入し、直流リンク24を介して第1電力変換器20へ有効電流が供給される。
本実施形態の電圧補償装置1の作用および効果について、比較例の電圧補償装置200と比較しつつ説明する。
図3は、比較例の電圧補償装置を例示するブロック図である。
図3に示すように、比較例の電圧補償装置200は、直列変圧器211,213,215と、タップ切替回路220a,220bと、並列変圧器241,242と、交流電圧検出器271〜274と、制御部280とを有する。比較例の電圧補償装置200では、直列変圧器211,213,215の一次巻線は、電力系統の各相に直列に接続されている。直列変圧器211,213,215の各二次巻線の一端は、互いに接続されている。直列変圧器211の二次巻線の他端は、タップ切替回路(タップ切替回路1)220aの一方の端子に接続されている。直列変圧器213の二次巻線の他端は、タップ切替回路220aの他方の端子に接続されている。直列変圧器213の二次巻線の他端は、また、タップ切替回路(タップ切替回路2)220bの一方の端子にも接続されている。直列変圧器215の二次巻線の他端は、タップ切替回路220bの他方の端子に接続されている。
タップ切替回路220aは、並列変圧器241の二次側のタップの数に応じたスイッチ回路222a〜222fを含んでいる。スイッチ回路222a〜222fは、サイリスタが逆並列に接続された双方向スイッチ回路が直列に接続され、直列に接続された双方向スイッチ回路の数は、並列変圧器241の二次側のタップの数に等しい。タップ切替回路220bは、タップ切替回路220aと同じ回路構成を有している。スイッチ回路222g〜222mは、サイリスタが逆並列に接続された双方向スイッチ回路が直列に接続され、直列に接続された双方向スイッチ回路の数は、並列変圧器242の二次側のタップの数に等しい。
並列変圧器241の一次巻線は、U相の下流(u相)とV相の下流(v相)との間に接続されている。並列変圧器242の一次巻線は、V相の下流(v相)とW相の下流(w相)との間に接続されている。並列変圧器241,242のそれぞれの二次巻線の各タップは、双方向スイッチの直列接続ノードに接続されている。
交流電圧検出器271〜274は、本実施形態の電圧補償装置1の交流電圧検出器71〜74と同様に接続されている。
制御部280は、電力系統の電圧の目標電圧の上限値および下限値を有している。交流電圧検出器271〜274の検出結果と目標電圧の上限値および下限値とを比較して、サイリスタのゲートを点弧する信号を生成する。
接触器291,292は、タップ切替回路220a,220bの両端に接続されている。接触器291,292は、タップ切替回路220a,220bのサイリスタを強制的にターンオフさせる場合に動作する。
比較例の電圧補償装置200では、直列変圧器211,213,215の二次巻線と、並列変圧器241,242の二次巻線とが、サイリスタによる双方向スイッチ222a〜222mによって接続されている。制御部280は、交流電圧検出器271〜274の検出結果と、あらかじめ設定されている目標電圧の上限値および下限値とを比較する。そして、制御部280は、各相の電圧が目標値の下限値よりも低いときには、直列変圧器の一次巻線の電圧が高くなるように、より高い電圧を出力するタップに接続するように双方向スイッチを制御する。たとえば、U相の下流の電圧が低いときには、制御部280は、双方向スイッチ222c,222dをオンさせるようにゲート駆動信号を生成する。双方向スイッチ222c,220dは、並列変圧器241のタップのうちもっとも高い電圧を発生するタップに接続されている。U相の下流の電圧が高いときには、制御部280は、双方向スイッチ222a,222fをオンさせるようにゲート駆動信号を生成する。双方向スイッチ222a,222fは、並列変圧器241のタップのうちもっとも高い電圧を生成するタップに接続し、接続されたタップの電圧は、U相の電圧とは逆位相で印加される。
このように、比較例の電圧補償装置200では、並列変圧器241,242に設けられたタップを切り替えることによって直列変圧器211,213,215の電圧を補償するので、補償電圧の設定値は、タップの数に依存した離散値となる。比較例の電圧補償装置200では、補償電圧が離散的であるために、電力系統の下流にさらに無効電力補償装置等の追加的設備が必要となり、システムが複雑になり、費用も増大する。
また、比較例の電圧補償装置200では、補償電圧を離散的にしか設定することができないので、相ごとに電圧設定して、不平衡電圧を補償することが困難である。したがって、電力系統の下流に不平衡負荷が接続された場合等には、電力系統の上流にも不平衡負荷の影響がおよぶおそれがある。
さらに、比較例の電圧補償装置200では、サイリスタによる双方向スイッチでは、並列変圧器241,242のタップを切り替える際に、電力系統の各相の電圧の1/2周期分の時間を要する。そのため、電圧補償装置200の応答時間は、電力系統の周期によって制約される。
このような比較例の電圧補償装置200に対して、本実施形態の電圧補償装置1では、第1電力変換器20は、電圧指令値演算部93において連続的に可変することができる基準値を設定することができるので、連続的に補償電圧を設定することができる。したがって、これをさらに補償するための装置やシステムを要することがないので、系統のシステム全体を簡素にすることができ、費用を抑制することができる。
また、本実施形態の電圧補償装置1では、相ごとに独立して補償電圧を設定することができるので、不平衡電圧の補償も行うことができる。不平衡電圧の補償により、下流の不平衡状態の影響を上流におよぼすことを防止することができる。
本実施形態の電圧補償装置1では、自己消弧形のスイッチング素子を用いた電力変換器によって電圧補償を行うので、電力系統の周期にかかわらず、高速に電圧補償動作を行うことができる。
従来より、変電所からの距離に応じて電力系統の電圧の低下等が予想される箇所には、電圧を補償する工夫がなされていた。たとえば柱上変圧器の電圧低下が予想される系統末端では、あらかじめタップ位置を高い電圧に設定する等である。また系統インピーダンスに対し、進み無効電力を注入することで電圧をサポートする進相コンデンサも用いられる。しかし、これらの対策は各需要家が電力を消費することを前提とした対策であり、夜間のように電力需要低下した際には、不必要に系統電圧を上昇させてしまう問題がある。
これらの問題に対処するため、比較例の電圧補償装置200のようなTVR(Thyristor Voltage Regulator)が、提案されている。上述したように、TVRは、系統電圧に応じて補償電圧を可変する機能を持つため、電力需要の大きい昼間の電力低下に対応することができ、夜間の電圧上昇にも対応できるとされている。
しかしながらTVRは、サイリスタで並列変圧器タップを切り替えて直列変圧器への印加電圧を操作し電圧補償動作するため、応答時間が遅く、また補償電圧が変圧器タップに依存するため不連続な電圧補償動作であり、家庭用太陽光発電の普及に伴い、逆潮流が増加した昨今の電力系統において電圧異常を補償しきれない状況が生じている。
本実施形態の電圧補償装置1では、連続的な電圧補償を可能とするのみならず、各相独立した電圧補償を可能とすることによって、近年の複雑化された電力系統の電圧補償を高速かつ効果的に行うことができる。
(第1の実施形態の変形例)
上述した実施形態の電圧補償装置1では、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、スター結線されている。二次巻線11s,13s,15sは、スター結線に限らず、デルタ結線とすることもできる。
図4は、本変形例の電圧補償装置1aを例示するブロック図である。
本変形例の電圧補償装置1aでは、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sの結線以外は、第1の実施形態の電圧補償装置1と同一であり、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図4に示すように、本変形例の電圧補償装置1aでは、電圧補償部10aの直列変圧器11の二次巻線11sは、端子12a,12bを含む。直列変圧器13の二次巻線13sは、端子14a,14bを含む。直列変圧器15の二次巻線15sは、端子16a,16bを含む。それぞれの二次巻線11s,13s,15sの一方の端子12a,14a,16aは、巻き始めであり、他方の端子12b,14b,16bは、巻き終わりである。一方の端子12aは、他方の端子14bと接続され、一方の端子14aは、他方の端子16bと接続され、一方の端子16aは、他方の端子12bと接続されている。端子12a,14bの接続ノードは、第1電力変換器20の交流出力端子22bに接続されている。端子14a,16bの接続ノードは、第1電力変換器20の交流出力端子22cに接続されている。端子16a,12bの接続ノードは、第1電力変換器20の交流出力端子22aに接続されている。つまり、直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、デルタ結線されて、第1電力変換器20の各交流出力端子22a,22b,22cに接続されている。
本変形例の電圧補償装置1aは、第1の実施形態の電圧補償装置1と同様に動作する。すなわち、直列変圧器の両端の電圧が目標電圧の下限よりも小さいときには、一次巻線と同相の不足電圧分に相当する電圧を二次巻線に発生させて磁気結合を介して一次巻線の電圧に加算する。直列変圧器の両端の電圧が目標電圧の上限よりも大きいときには、一次巻線と逆相の不足電圧分に相当する電圧を二次巻線に発生させて磁気結合を介して一次巻線に加算(すなわち減算)する。
本実施形態の電圧補償装置1aの作用および効果について説明する。
第1電力変換器20の出力にスター結線の直列変圧器を接続した場合には、二次巻線の一方の端子を第1電力変換器20の出力に接続するので、結線作業が容易になるとの利点がある。その一方で、スター結線では、二次巻線の他方の端子を互いに接続して中性点とするが、中性点が他に接続されず、変圧器の非線形性等により電圧歪が発生したときに、電流を他に流すことができないため、電圧歪現象が解消されにくいとの問題を生ずることがある。
第1電力変換器20の出力にデルタ結線の直列変圧器を接続した場合には、各相の二次巻線を互いに接続する等して結線作業が煩雑になる反面、二次巻線内に還流電流を流すことができる。そのため、電圧補償装置1aは、電圧歪みを発生しにくく、高品質の電力を電力系統に対して連系することができる。
本実施形態の電圧補償装置1aでは、第1電力変換器20の出力に接続された直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sがデルタ結線されているので、電圧歪の少ない高品質の電力の連系が可能になる。
直列変圧器11,13,15の二次巻線11s,13s,15sは、以下説明する他の実施形態においても、スター結線またはデルタ結線のいずれかを適用することができる。
(第2の実施形態)
上述の実施形態では、第2電力変換器30は、電力系統から第1電力変換器20に有効電力を供給するように動作したが、電力系統に対して無効電流を注入することができる。以下説明する実施形態では、第2電力変換器30によって無効電流の注入を行って、電力系統の電圧補償を行う。
図5は、本実施形態の電圧補償装置を例示するブロック図である。
図6は、本実施形態の電圧補償装置の制御部を例示するブロック図である。
本実施形態の電圧補償装置1bでは、電圧補償部10bが電流検出器63,64を有する点で第1の実施形態およびその変形例の電圧補償装置1,1aと相違する。また、第2制御回路82bの構成要素が第1の実施形態およびその変形例の電圧補償装置1,1aの第2制御回路82の構成要素と相違する。他の構成要素は、第1の実施形態およびその変形例の電圧補償装置1,1aと同一である。同一の構成要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
図5に示すように、本実施形態の電圧補償装置1bは、電圧補償部10bと、制御部80bと、を備える。電圧補償部10bは、上述の他の実施形態の電圧補償装置1と同様に、電力系統の上流6a〜6cと下流7a〜7cとの間に接続されている。電圧補償部10bは、電流検出器63,64をさらに含む。電流検出器63は、電力系統の上流6aと下流7aとの間に接続され、電流検出器64は、電力系統の上流6cと下流7cとの間に接続されている。電流検出器63,64は、電力系統の下流に流れる三相の電流のうち二相の電流を検出する。検出され生成された電流データIL3,IL4は、制御部80bに入力される。なお、電流データIL3,IL4は、電流データIL1,IL2と同様にディジタルデータである。
図6に示すように、制御部80bは、第1制御回路81と、第2制御回路82bとを含む。第2制御回路82bの構成要素は、上述の他の実施形態の第2制御回路82の構成要素と相違する。本実施形態の第2制御回路82bは、電源角度検出部(第5演算部)101と、直交座標変換部102と、無効電流指令値設定部(第6演算部)103と、をさらに含む。
電源角度検出部101は、交流電圧データVAC1〜VAC4を入力し、電力系統の電圧の位相θを検出する。検出された電力系統の電圧の位相θは、無効電流指令値設定部103に供給される。
直交座標変換部102は、電力系統の線電流である電流データIL3,IL4を、直交座標変換して直交する2軸の電流ベクトルに変換する。2軸の電流ベクトルは、無効電流指令値設定部103に供給される。
無効電流指令値設定部103は、抽出部104と係数器105とを含む。抽出部104は、直交座標変換された電流ベクトルを電力系統の位相θを用いて回転座標変換することによって、有効電流成分および無効電流成分を抽出する。無効電流成分は、有効電流成分に直交する成分として表されるので、無効電流指令値設定部103は、この直交成分を抽出することによって、電力系統に流れている無効電流成分を抽出することができる。係数器105は、抽出された無効電流成分のデータに−1を乗じて、抽出された無効電流成分を相殺する無効電流指令値を計算する。計算された無効電流指令値は、交流電流制御部97bに供給される。
交流電流制御部97bは、有効電流指令値およびインダクタ51,52に流れる電流データIL1,IL2にもとづいて、第1電力変換器20に供給する有効電流を制御する。そして、交流電流制御部97bは、無効電流指令値設定部103によって生成された無効電流指令値にもとづいて、電力系統に注入する無効電流値を制御する。無効電流は、並列変圧器41,42を介して電力系統に注入される。
本実施形態の電圧補償装置1bの動作について説明する。
上述したとおり、電力系統の各相に流れる電流は、直交座標変換の後、無効電流指令値設定部103において、電力系統の位相θを用いて、回転座標変換される。したがって、無効電流指令値設定部103では、有効電流成分に直交する成分である無効電流成分を抽出することによって、電力系統に流れる無効電流成分を検出することができる。交流電流制御部97bでは、抽出された有効電流指令値および無効電流指令値にもとづいて、第2電力変換器30の出力電流の振幅および位相を制御する。ゲート駆動信号生成部98では、交流電流制御部97bの出力にもとづいて、座標の逆変換、空間ベクトル変換等行い、第2電力変換器30のゲート駆動信号のパターンを生成する。第2電力変換器30は、生成されたゲート駆動信号のパターンによって、第1電力変換器20に有効電流を供給し、電力系統には並列変圧器41,42を介して無効電流を注入する。
本実施形態の電圧補償装置1bの作用および効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置1bでは、電源角度検出部101と、直交座標変換部102と、無効電流指令値設定部103と、を含むので、電力系統の線電流から無効電流成分を抽出することができる。電圧補償装置1bは、交流電流制御部97bによって、抽出した無効電流成分を用いて、これを相殺する無効電流指令値を設定し、出力電流を制御することができる。したがって、電圧補償装置1bは、第1電力変換器20に有効電流を供給し、直列変圧器11,13,15を介する電力系統の電圧の補償を行いつつ、電力系統の無効電流を相殺するように無効電流を電力系統に注入して、電力系統の電圧を補償することができる。
従来より、配電系統に接続される負荷の力率等によって、送電線の距離とは無関係に電力系統の電圧が上昇あるいは低下することがあり、これを補償するために、無効電力補償装置(Static Var Compensator、SVC)を系統に連系することが行われている。また、近年では、電源の分散化の傾向が強まっており、電力系統には太陽光発電設備や小型水力発電設備等、多くの分散型電源が連系されるようになってきた。これらの稼働状況によって電力系統の電圧の上昇が顕著になっており、早急な対策が望まれている。
本実施形態の電圧補償装置1bでは、電力系統の相ごとに直列電圧補償を可能にするとともに、無効電流の注入による電力系統の電圧の上昇および低下の並列電圧補償を行うことができる。したがって、下流に追加的に連系されているSVCの連系台数を削減することができ、システムの構築コストを低減することができる。
(第3の実施形態)
図7は、本実施形態の電圧補償装置を例示するブロック図である。
本実施形態の電圧補償装置1cでは、さらに電力系統の下流に接続された不平衡負荷による電力系統の電圧不平衡を補償することもできる。本実施形態の電圧補償装置1cでは、制御部80cの第2制御回路82cが有効電流および無効電流の逆相成分を抽出する構成要素を有する点で、第2の実施形態の電圧補償装置1bの第2制御回路82bと相違する。他の点では、第2の実施形態の電圧補償装置1bと同一である。他の実施形態の電圧補償装置1〜1bと同一の構成要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
図7に示すように、本実施形態の電圧補償装置1cは、電圧補償部10bと、制御部80cとを備える。制御部80cは、第1制御回路81と、第2制御回路82cとを含む。
第2制御回路82cは、交流成分抽出部(第7演算部)111と、加算器112,113と、をさらに含む。交流成分抽出部111は、この例では、無効電流指令値設定部103の出力に接続されている。加算器112は、直流電圧制御部95の出力および交流成分抽出部111の出力の1つを入力し、交流電流制御部97bに出力を供給している。加算器113は、無効電流指令値設定部103の出力および交流成分抽出部111の他方の出力を入力し、交流電流制御部97bに出力を供給している。
無効電流指令値設定部103は、第2の実施形態の電圧補償装置1bにおいて説明したように、電力系統の線電流から無効電流成分を抽出し、これを相殺する無効電流指令値を出力する。無効電流指令値設定部103が入力する電力系統の線電流には、有効電流および無効電流の逆相成分も含んでいる。有効電流および無効電流の逆相成分は、電力系統の2倍の周波数成分として線電流に含まれている。そこで、無効電流指令値設定部103の出力に接続された交流成分抽出部111は、電力系統の2倍の周波数成分を抽出する。
本実施形態の電圧補償装置1cの動作について説明する。
電力系統の各相の線電流には、有効電流および無効電流の正相分および逆相分がそれぞれ含まれており、逆相成分が存在することによって、電力系統が不平衡状態となる。そこで、本実施形態の電圧補償装置1cでは、電力系統の線電流から、無効電流指令値設定部103を用いて、有効電流および無効電流の正相分および逆相分を抽出する。正相分は、それぞれ直流値として出力されるので、その値をそのまま用いて、これを相殺する信号を無効電流指令値として出力する。有効電流および無効電流の逆相成分は、電力系統の2倍の周波数成分として検出されるので、直流成分をカットする交流成分抽出部111を介して抽出される。交流成分抽出部111では、抽出された有効電流および無効電流の逆相成分を相殺するような逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値を生成する。
抽出された逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値は、それぞれ加算器112,113によって有効電流指令値および無効電流指令値に加算されて交流電流制御部97bに入力される。
交流電流制御部97bでは、加算器112,113によって補正された有効電流指令値および無効電流指令値にもとづいて電力系統に注入する電流を設定する。ゲート駆動信号生成部98では、設定された電流値にもとづいてゲート駆動信号のパターンを生成する。
第2電力変換器30では、並列変圧器41,42を介して電力系統に電流を注入して、電力系統の不平衡状態を補償する。
本実施形態の電圧補償装置1cの作用および効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置1cでは、無効電流指令値設定部103によって無効電流だけでなく、有効電流を取得し、有効電流および無効電流に含まれる電力系統の周波数の2倍の成分を交流成分抽出部111によって抽出することができる。そのため、電力系統の線電流の有効電流および無効電流それぞれの逆相成分も抽出することができるので、これらを相殺するように第2電力変換器30の電流値設定を行うことができる。したがって、第2電力変換器30は、有効電流および無効電流の正相分および逆相分をそれぞれ補償することができるので、電力系統の不平衡状態を補償することができる。
近年では、需要者側で用いられていた不平衡負荷に加えて、家庭用太陽光発電設備等が普及し、SVC等の追加投入等では電力系統の不平衡状態の解消が困難となり、変電所側への波及が懸念される状況も散見されるようになってきた。本実施形態の電圧補償装置1cでは、電力系統の線電流を検出して、線電流に含まれる有効電流および無効電流の正相分および逆相分を抽出することができるので、電流注入のための電流指令値を計算して、第2電力変換器30を動作させることができる。したがって、本実施形態の電圧補償装置1cでは、SVC等の追加投入では、解消することが困難であった電力系統の不平衡要因を減衰させることができ、電力補償装置1cの設置点よりも上流の不平衡状態をも抑制することが可能である。
(第3の実施形態の変形例)
図8は、本変形例の電圧補償装置を例示するブロック図である。
第3の実施形態の電圧補償装置1cでは、電源の位相θを用いて回転座標変換を行って有効電流成分および無効電流成分を抽出し、さらにこれらから周波数成分を抽出することによって、有効電流および無効電流それぞれの逆相成分を抽出した。有効電流および無効電流の逆相成分を生成させるには、他の手段を用いてもよい。
図8に示すように、電圧補償装置1dは、電圧補償部10bと、制御部80dと、を備える。本変形例の電圧補償装置1dでは、第3の実施形態の電圧補償装置1cの交流成分抽出部111に代えて、不平衡電流成分抽出部115を有している点で、第3の実施形態の電圧補償装置1cと相違する。同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
電圧補償装置1dの第2制御回路82dは、−1倍の係数器114と、不平衡電流成分抽出部(第8演算部)115と、をさらに含む。係数器114は、電源角度検出部101の出力に接続されている。不平衡電流成分抽出部115の入力は、係数器114の出力および直交座標変換部102の出力に接続され、出力は加算器112,113に接続されている。
係数器114は、電源角度検出部101によって検出された電力系統の電圧の位相θに−1を乗じて不平衡電流成分抽出部115に−θを供給する。
不平衡電流成分抽出部115は、直交座標変換された電力系統の線電流を、電力系統の位相θとは逆方向に回転する回転座標に変換する。このように回転座標変換された有効電流および無効電流の抽出値は、それぞれの逆相成分を表すので、これを用いて逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値を生成することができる。
本変形例の電圧補償装置1dの作用および効果について説明する。
第3の実施形態の電圧補償装置1cの作用および効果に加えて、本変形例の電圧補償装置1dでは、次の作用および効果を有する。すなわち、本変形例の電圧補償装置1dでは、逆相成分の抽出を行う不平衡電流成分抽出部115には、正相成分の抽出を行う無効電流指令値設定部103と同様の回転座標変換を行う回路を用いることができるので、第2制御回路82dの回路構成を簡素化することができる。
(第4の実施形態)
上述した他の実施形態およびその変形例の電圧補償装置1b〜1dでは、電圧補償装置1b〜1dの設置点における電力系統の線電流から無効電流や不平衡成分を抽出し、これを相殺するように並列変圧器41,42を介して電力系統に電流注入している。一方、この電圧補償装置1b〜1dよりも下流には、他のSVC等が設置され、SVC等によって電力系統に無効電流が注入されている場合がある。SVC等は、自ら電力系統の線電流の無効電流を抽出し、抽出した無効電流にもとづいてこれを相殺するように無効電流を電力系統に抽出していると考えられる。
このような場合に、電圧補償装置1b〜1dでは、自らが抽出した無効電流成分等が他のSVC等によって注入された無効電流を含むか否かを判別することができない。たとえば、電力系統の線電流から抽出された無効電流が遅れ電流である場合には、電圧補償装置1b〜1dは、この遅れ無効電流を相殺するように進み無効電流を電力系統に注入する。ここで、電圧補償装置1b〜1dによって抽出された遅れ無効電流が他のSVC等によって電力系統に注入されている場合には、これを相殺するような進み無効電流を注入すると、互いの装置が干渉し、電圧補償機能が正常に動作しなくなるおそれがある。
そこで、本実施形態の電圧補償装置では、電力系統の電圧値および線電流の無効電流値の両方を監視して、所定の条件を満たした場合に、無効電流注入動作をする。
図9(a)は、本実施形態の電圧補償装置の制御部80eを例示するブロック図である。図9(b)は、電圧補償装置の一部の特性を例示する概念図である。
図9(a)に示すように、本実施形態の電圧補償装置では、他の実施形態の電圧補償装置1b〜1dの第2制御回路82b〜82dに代えて、第2制御回路82eを含む。第2制御回路82eは、無効電流指令値設定部103eと、系統電圧値演算部121とを含む。無効電流指令値設定部103eは、電源角度検出部101の出力および直交座標変換部96の出力に接続されている。また、無効電流指令値設定部103eは、系統電圧値演算部121の出力にも接続されている。系統電圧値演算部121は、直交座標変換部91の出力に接続されている。無効電流指令値設定部103eは、電源角度検出部101の出力、直交座標変換部96の出力および直交座標変換部91の出力にもとづいて、無効電流指令値を計算して出力する。
系統電圧値演算部121には、交流電圧検出器71〜74によって検出された電力系統の上流および下流それぞれの線間電圧から各相の瞬時電圧を直交座標変換した電圧ベクトルデータが入力される。系統電圧値演算部121では、直交座標変換された電力系統の電圧ベクトルの大きさから、系統電圧値を計算する。
無効電流指令値設定部103eは、抽出部104と、係数器105と、判定部106と、を含む。判定部106は、抽出部104から出力される無効電流の抽出値および系統電圧値演算部121から出力される系統電圧値を入力して、所定の条件を満たす場合に、抽出された無効電流抽出値を出力する。判定部106から出力された無効電流抽出値は、係数器105によって−1倍されて無効電流指令値として出力される。
判定部106に入力された無効電流抽出値は、図9(b)に示す判定条件によってその抽出値が出力されるか、出力されないかが決定される。判定部106において、抽出された無効電流の抽出値が出力されるのは、次の条件の場合である(図9(b)の斜線の領域)。すなわち、入力された系統電圧値が、系統電圧の上限値よりも大きい場合で、抽出された無効電流が進み無効電流のときに、抽出された無効電流抽出値が出力される。また、入力された系統電圧値が、系統電圧の下限値よりも小さい場合で、抽出された無効電流が遅れ無効電流のときに、抽出された無効電流抽出値が出力される。一方、判定部106において、抽出された無効電流抽出値が出力されないのは、次の条件の場合である。すなわち、入力された系統電圧が上限値および下限値の範囲内にあるときには、いかなる無効電流が抽出されても判定部106からは無効電流抽出値は出力されない。また、系統電圧が上限値よりも大きく、無効電流抽出値が遅れ無効電流のとき、および、系統電圧が下限値よりも小さく、無効電流抽出値が進み無効電流のときには、判定部106からは無効電流抽出値は出力されない。
本実施形態の電圧補償装置の作用および効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置では、第2制御回路82eの無効電流指令値設定部103eにおいて、電力系統の系統電圧値および電力系統から抽出された無効電流によって、無効電流補償動作を行うか否かを判定する。この条件判定のため無効電流指令値設定部103eは、判定部106を含む。判定部106では、上述した条件を満たした場合に、抽出した無効電流抽出値を出力し、条件を満たさない場合には、出力する無効電流抽出値をたとえば0に設定する。
たとえば、検出された系統電圧値が上限値よりも大きい場合で、電力系統から抽出された無効電流が遅れ無効電流のときには、電力系統の下流にSVC等の並列電圧補償装置が連系されている可能性が高い。このような状況において、抽出した遅れ無効電流成分を相殺するような無効電流を電力系統に注入すると、さらに系統電圧の上昇を招くおそれがある。また、下流に連系されたSVC等が相殺された無効電流を検出し、さらに遅れ無効電流を注入する動作をおこすおそれもある。これら装置間相互の動作の干渉により、系統電圧はより不安定な状況となるおそれがある。
本実施形態の電圧補償装置では、電力系統の系統電圧および抽出する無効電流の双方を監視し、適切な条件の場合に、補償すべき無効電流指令値を設定する。そのため、他のSVC等の補償装置との干渉を生じにくくすることができ、安定した配電系統システムを実現することができる。
(第5の実施形態)
近年では、電力自由化等を背景に送配電システムは高度に複雑化し、電力系統から無効電流を抽出して電圧補償を行うことが困難な場合が増大することが懸念される。そこで、本実施形態の電圧補償装置では、電力系統から無効電流を抽出しなくても、電力系統に注入すべき無効電流を設定する。
図10(a)は、本実施形態の電圧補償装置の制御部80fを例示するブロック図である。図10(b)は、無効電流指令値設定部122の特性を例示する概念図である。
図10(a)に示すように、本実施形態の電圧補償装置の第2制御回路82fは、無効電流指令値設定部(第9演算部)122を含む。無効電流指令値設定部122は、系統電圧値演算部121の出力に接続されており、無効電流指令値設定部122の出力は、交流電流制御部97に接続されている。
無効電流指令値設定部122は、上述した他の実施形態の電圧補償装置の無効電流指令値設定部103,103b,103eとともに設けられていてもよく、どちらか一方が設けられていてもよい。無効電流指令値設定部122が無効電流指令値設定部103とともに設けられるときには、無効電流指令値設定部122の出力および無効電流指令値設定部103の出力が入力されるスイッチ回路124が設けられる。スイッチ回路124の出力は、交流電流制御部97に接続される。スイッチ回路124は、図示しない外部からの信号によって、交流電流制御部97の入力を、無効電流指令値設定部122の出力または無効電流指令値設定部103いずれかの出力との接続に切り替える。
無効電流指令値設定部122は、指令値データ部123を含む。系統電圧値演算部121は、交流電圧検出器71〜74の検出値VAC1〜VAC4にもとづいて、電力系統の各相の電圧を直交座標変換し、電圧ベクトルデータを入力して、系統電圧値を計算する。
指令値データ部123には、系統電圧値の目標値の上限値および下限値が入力される。また、指令値データ部123には、系統電圧値に対する無効電流指令値があらかじめ入力されている。たとえば、系統電圧値およびこれに対応する無効電流指令値は、テーブルとして指令値データ部123にデータベースとして格納されている。あるいは、図示しない、電圧補償装置の内部または外部の記憶部または記憶装置に格納され、必要に応じて呼び出されて用いられる。指令値データ部123は、系統電圧値演算部121から系統電圧値を入力して、その系統電圧値に対する無効電流指令値を検索して出力する。図10(b)に示すように、系統電圧値およびこれに対する無効電流値の関係は、系統電圧値が目標電圧の上限値よりも大きいときには、系統電圧値に応じた大きさの遅れ無効電流に対応する無効電流指令値が設定される。系統電圧値が目標電圧の下限値よりも小さいときには、系統電圧の大きさに応じた進み無効電流に対応する無効電流指令値が設定される。系統電圧値が目標電圧の上限値から下限値の範囲内にあるときには、無効電流指令値は、ゼロに設定される。
本実施形態の電圧補償装置の作用および効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置では、系統電圧値に対してあらかじめ設定された無効電流指令値を出力する無効電流指令値設定部122を有しているので、電力系統の無効電流を直接抽出することなく、無効電流注入による電圧補償を行うことができる。
上述した他の実施形態の電圧補償装置において説明したように、電力系統の無効電流成分を抽出して電圧補償を行う場合には、下流のSVC等の他の電圧補償装置との干渉を抑制しつつ無効電流注入を行う必要がある。ローカル電源等の大量導入により、送配電システムが多様化、複雑化している現状では、電力系統の無効電流抽出による電圧補償では十分でない場合が顕在化する可能性がある。本実施形態の電圧補償装置では、自ら系統電圧値およびそれに対する無効電流指令値の組を有しており、電力系統を流れる無効電流にかかわらず、補償すべき電圧値に応じて無効電流の注入量を決定することができる。この系統電圧値および無効電流指令値の組は、電力系統の運用状況によって変更することができ、たとえば、ネットワークに接続してその時点の運用状況を取得し、データ収集して、系統電圧値および無効電流指令値の組をより適切な組に修正、変更することもできる。また、ネットワークで収集した電力系統の運用状況により、無効電流を抽出して無効電流指令値を生成する方式と相互に切り替えることもできる。したがって、本実施形態の電圧補償装置では、より適切に電力系統の電圧補償を行うことができる。
(第6の実施形態)
第2電力変換器30は、電圧制御する直流リンク24を介して第1電力変換器20への電力供給を行うとともに、並列変圧器41,42を介して電力系統へ不平衡電流および無効電流を供給する。第2電力変換器30には、第1電力変換器20へ供給する電力分の有効電流と、電力系統へ注入する無効電流および不平衡電流が流れる。これらの電流ベクトルの総和の大きさが、第2電力変換器30の電流容量を超過してしまうと、許容発熱量を超過し、第2電力変換器30は、破壊に至るおそれがある。そのため、第2電力変換器30が出力する電流ベクトルの総和の大きさは、第2電力変換器30の電流容量を超過しないよう制限する必要がある。
電圧補償装置は、電力系統に対する直列補償装置であるため、その特性を最大限生かすには、直列補償動作を優先することが好ましい。第2電力変換器30の出力電流を制限する場合には、直列補償を行う第1電力変換器20への電力供給分である直流リンク24の電圧制御のための第2電力変換器20の有効電流指令に対して第2電力変換器30の電流容量を優先的に割り当てる。
図11は、本実施形態の電圧補償装置の一部である第2制御回路82gを例示するブロック図である。
図11に示すように、電圧補償装置の第2制御回路82gは、電流指令ベクトル演算部(第10演算部)131と、無効電流制限値演算部132と、不平衡電流制限値演算部133と、電流制限回路(リミッタ)134〜137と、をさらに含む。電流指令ベクトル演算部131は、直流電圧制御部95、無効電流指令値設定部103、および不平衡電流成分抽出部115の出力に接続されている。電流指令ベクトル演算部131の出力は、また、無効電流制限値演算部132および不平衡電流制限値演算部133に接続されている。無効電流制限値演算部132の出力は、電流制限回路135に接続されている。不平衡電流制限値演算部133の出力は、電流制限回路136,137にそれぞれ接続されている。電流制限回路134は、直流電圧制御部95と、加算器112との間に直列に接続されている。電流制限回路135は、無効電流指令値設定部103と、加算器113との間に直列に接続されている。電流制限回路136は、不平衡電流成分抽出部115の一方の出力と、加算器112との間に直列に接続されている。電流制限回路137は、不平衡電流成分抽出部115の他方の出力と、加算器113との間に直列に接続されている。
電流指令ベクトル演算部131は、有効電流指令値、無効電流指令値、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値を入力して、これらのベクトル和を計算する。電流指令ベクトル演算部131は、このベクトル和の大きさが、第2電力変換器30の出力電流の最大値を超過しないように、無効電流制限値演算部132および不平衡電流制限値演算部133の電流制限値を設定する。たとえば、有効電流指令値と無効電流指令値とのベクトル和の大きさが、第2電力変換器30の出力電流容量を上回っている場合には、無効電流制限値演算部132は、無効電流指令値を制限して、ベクトル和の大きさが第2電力変換器30の出力電流容量以下となるような値を計算する。さらに、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値を加えたベクトル和の大きさが、第2電力変換器30の出力電流を上回っている場合には、次のように動作する。不平衡電流制限値演算部133は、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値を、有効電流指令値および無効電流指令値のベクトル和に加えた全体のベクトル和の大きさが、第2電力変換器30の出力電流容量以下となるような値を設定する。
直流電圧制御部95と加算器112との間に接続されている電流制限回路134の制限値は、第2電力変換器30の出力電流容量以下の値にあらかじめ設定されている。
無効電流指令値設定部103と、加算器113との間に接続されている電流制限回路135の制限値は、有効電流指令値および無効電流指令値のベクトル和の大きさにもとづいて設定される。
不平衡電流成分抽出部115と、加算器112との間に接続された電流制限回路136の制限値、および、不平衡電流成分抽出部115と、加算器113との間に接続された電流制限回路137の制限値は、有効電流指令値および無効電流指令値のベクトルに逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値を加えたベクトル和の大きさにもとづいて設定される。
本実施形態の電圧補償装置の動作について説明する。
図12(a)〜図12(d)は、本実施形態の電圧補償装置の動作を説明するために、有効電流指令値、無効電流指令値、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値をベクトルで示した図の例である。
図12(a)〜図12(d)の一点鎖線の円は、第2電力変換器30の出力電流容量Iaの大きさを示している。図12(a)では、有効電流指令値Ipの大きさは、第2電力変換器30の出力電流容量Ia以下の値に設定されている。この場合の無効電流指令値Iqのベクトルは、有効電流指令値Ipのベクトルと加算したときに、これらのベクトル和の大きさIOUTは、出力電流容量Iaを超えている。このような場合には、不平衡電流指令値は、有効電流分Ip1および無効電流分Iq1とも0に設定され、有効電流指令値Ipおよび無効電流指令値Iqのベクトル和以下になるように、無効電流指令値Iqの大きさが制限される。つまり、Iq’≦(Ia−Ip1/2となるように無効電流指令値Iq’の電流制限値が設定される(図12(b))。
有効電流指令値Ipおよび無効電流指令値Iqのベクトル和の大きさが第2電力変換器30の出力電流容量Iaよりも小さい場合には、逆相有効電流指令値Ip1および逆相無効電流指令値Iq1の大きさが制限される。図12(c)に示すように、有効電流指令値Ipおよび無効電流指令値Iqのベクトル和の大きさが第2電力変換器30の出力電流容量Ia以下の場合でも、逆相有効電流指令値Ip1および逆相無効電流指令値Iq1のベクトル和の大きさによって、第2電力変換器30の出力電流容量Iaを超過する場合がある。このような場合には、不平衡電流制限値演算部133によって、ベクトル和が出力電流容量Ia以下になるように、逆相有効電流Ip1および逆相無効電流指令値Iq1を制限する。図12(c)の例では、逆相無効電流指令値Iq1の大きさを、全体のベクトル和の大きさIOUTが、第2電力変換器30の出力電流容量Ia以下になるように、Iq1’の大きさが制限される(図13d)。
電流指令値の制限の手順は、上述に限られない。たとえば、有効電流を優先して出力するために、無効電流分を先に制限するようにすることもできる。図12(c)の場合において、不平衡電流の有効電流指令値Ip1および無効電流指令値Iq1を制限する前に、ベクトル和の大きさIOUTが出力電流容量Ia以下となるように、無効電流指令値Iqを制限するようにしてもよい。そして、この場合には、無効電流指令値IqをゼロにしてもIOUTが出力電流容量Iaよりも大きい場合に、不平衡電流の無効電流指令値Iq1を制限し、その後有効電流指令値Ip1を制限する。
本実施形態の電圧補償装置の作用および効果について説明する。
本実施形態の電圧補償装置では、有効電流指令値を制限する電流制限回路134に加えて、無効電流指令値を制限する電流制限回路135と、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値をそれぞれ制限する電流制限回路136,137とを有するので、第2電力変換器30におけるそれぞれの電流の出力を個別に制限することができる。さらに、電圧補償装置では、有効電流指令値、無効電流指令値、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値のベクトル和の大きさを計算する電流指令ベクトル演算部131を有しているので、優先的に制限すべき電流指令値を設定することができる。そして、電圧補償装置では、電流指令ベクトル演算部131の出力にもとづいて、無効電流指令値の制限値を設定する無効電流制限値演算部132を有しているので、有効電流指令値および無効電流指令値のベクトル和の大きさが第2電力変換器30の出力電流容量を超えないように、無効電流指令値の制限値を設定することができる。さらに、電圧補償装置では、逆相有効電流指令値および逆相無効電流指令値のベクトル和の大きさを制限値を計算する不平衡電流制限値演算部133とを有するので、第2電力変換器30は、不平衡電流成分の出力を制限することができる。
このようにして、本実施形態の電圧補償装置では、直流リンク24の直流電圧制御を優先して、各相の直列変圧器11,13,15を介した直列電圧補償を優先的に行うようにすることができる。
以上説明した実施形態によれば、高速かつ連続的に電力系統の電圧を適正値に補償する電圧補償装置を実現することができる。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
1〜1d 電圧補償装置、2a〜2c 入力端子、3a〜3c 出力端子、6a〜6c 上流、7a〜7c 下流、10〜10b 電源補償部、11,13,15 直列変圧器、12a,12b,14a,14b,16a,16b 二次巻線の端子、20 第1電力変換器、21a 高圧入力端子、21b 低圧入力端子、22a〜22c 交流出力端子、23a〜23f スイッチング素子、24 直流リンク、26 フィルタ、30 第2電力変換器、31a 高圧直流端子、31b 低圧直流端子、32a〜32c 交流端子、33a〜33f スイッチング素子、41,42 並列変圧器、51,52 インダクタ、61〜64 電流検出器、71〜74 交流電圧検出器、75 直流電圧検出器、80〜80g 制御部、81 第1制御回路、82〜82g 第2制御回路、91 直交座標変換部、92 電圧補償量演算部、93 電圧指令演算部、94 ゲート駆動信号生成部、95 直流電圧制御部、96 直交座標変換部、97 交流電流制御部、98 ゲート駆動信号生成部、101 電源角度検出部、102 直交座標変換部、103 無効電流指令値設定部、104 抽出部、105 係数器、106 判定部、111 交流成分抽出部、112,113 加算器、114 係数器、115 不平衡電流成分抽出部、121 系統電圧値演算部、122 無効電流指令値設定部、123 指令値データ部、131 電流指令ベクトル演算部、132 無効電流制限値演算部、133 不平衡電流制限値演算部、134〜137 電流制限回路

Claims (11)

  1. 自己消弧形の第1スイッチング素子を有する第1インバータ回路を含む第1電力変換器と、
    三相交流の第1相、第2相および第3相にそれぞれ直列に接続された一次巻線と前記第1電力変換器の出力に接続された二次巻線とを含む第1変圧器、第2変圧器および第3変圧器と、
    直流リンクを介して前記第1電力変換器に接続された第2電力変換器と、
    前記第1相〜前記第3相のうちの二相の線間に二次巻線が接続された第4変圧器と、
    前記第1相〜前記第3相のうちの他の二相の線間に二次巻線が接続された第5変圧器と、
    前記第2電力変換器と前記第4変圧器の前記二次巻線との間に接続された第1インダクタと、
    前記第2電力変換器と前記第5変圧器の前記二次巻線との間に接続された第2インダクタと、
    前記第1変圧器の上流と前記第2変圧器の上流との間の線間の電圧を表す第1電圧データ、前記第2変圧器の上流と前記第3変圧器の上流との間の線間の電圧を表す第2電圧データ、前記第1変圧器の下流と前記第2変圧器の下流との間の線間の電圧を表す第3電圧データ、前記第2変圧器の下流と前記第3変圧器の下流との間の線間の電圧を表す第4電圧データ、および前記直流リンクの両端の電圧を表す第5電圧データにもとづいて、前記第1スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する第1制御回路と、
    前記第1インダクタに流れる電流を表す第1電流データ、第2インダクタに流れる電流を表す第2電流データ、および前記第5電圧データにもとづいて、前記直流リンクを介して前記第1電力変換器に有効電力を供給するように前記第2電力変換器を制御する第2制御回路と、
    を備え、
    前記第1制御回路は、
    前記第1電圧データ〜前記第4電圧データにもとづいて、前記第1相〜前記第3相の各系統電圧を計算し、前記系統電圧と、あらかじめ設定された目標電圧との差分を出力する第1演算部と、
    前記第5電圧データおよび前記差分にもとづいて、前記第1電力変換器が出力する電圧の振幅を決定し、前記差分の符号によって、前記系統電圧と同相の電圧を出力するか、逆相の電圧を出力するかを決定する第2演算部と、
    を含む電圧補償装置。
  2. 前記第2電力変換器は、自己消弧形の第2スイッチング素子を有する第2インバータ回路を含み、
    前記第2制御回路は、
    前記第5電圧データにもとづいて、前記第1電力変換器に供給する有効電流指令値を設定する第3演算部と、
    前記有効電流指令値、前記第1電流データ、および前記第2電流データにもとづいて、前記第1電力変換器に供給する電流の振幅および位相を設定する第4演算部と、
    を含み、
    前記第4演算部の出力にもとづいて、前記第2スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する請求項1記載の電圧補償装置。
  3. 前記第2制御回路は、
    前記第1相〜前記第3相の電圧を検出して位相を計算する第5演算部と、
    前記第1相〜前記第3相のうちの1つの相の電流を表す第3電流データ、前記第1相〜第3相のうちの他の相の電流を表す第4電流データ、および前記第5演算部の出力にもとづいて、無効電流指令値を生成する第6演算部と、
    をさらに含み、
    前記第4演算部は、前記第3演算部の出力、前記第1電流データ、前記第2電流データ、および前記第6演算部の出力にもとづいて前記第2スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する請求項2記載の電圧補償装置。
  4. 前記第2制御回路は、前記第6演算部の計算結果から、交流成分を抽出する第7演算部をさらに含む請求項3記載の電圧補償装置。
  5. 前記第2制御回路は、前記第5演算部の出力、前記第3電流データおよび前記第4電流データにもとづいて、前記第1相〜前記第3相の無効電流および有効電流の逆相成分を抽出する第8演算部をさらに含む請求項3記載の電圧補償装置。
  6. 前記第6演算部は、
    前記第1相〜前記第3相の電圧が目標電圧の上限値よりも大きく、かつ、前記第3演算部から出力された無効電流に進み無効電流が含まれているときには、前記進み無効電流を相殺する指令値を出力し、
    前記第1相〜前記第3相の電圧が目標電圧の下限値よりも小さく、かつ、前記第3演算部から出力された無効電流に遅れ無効電流が含まれているときには、前記遅れ無効電流を相殺する指令値を出力する請求項3〜5のいずれか1つに記載の電圧補償装置。
  7. 前記第2制御回路は、
    前記系統電圧および前記系統電圧に関連付けられた無効電流指令値の組を有するデータベースと、
    前記データベースを検索して前記系統電圧に応じた無効電流指令値を出力する第9演算部と、をさらに含む請求項1〜6のいずれか1つに記載の電圧補償装置。
  8. 前記第2制御回路は、
    前記第2電力変換器が出力する有効電流を制限する第1電流制限部と、
    前記第2電力変換器が出力する無効電流を制限する第2電流制限部と、
    をさらに含み、
    前記第2電流制限部によって設定された電流制限は、前記第1電流制限部によって設定された電流制限よりも優先される請求項2〜4のいずれか1つに記載の電圧補償装置。
  9. 前記第2制御回路は、
    前記第2電力変換器が出力する有効電流の逆相成分を制限する第3電流制限部と、
    前記第2電力変換器が出力する無効電流の逆相成分を制限する第4電流制限部と、
    前記第2電流制限部、前記第3電流制限部および前記第4電流制限部における電流制限の優先順位を設定する第10演算部と、
    をさらに含む請求項8記載の電圧補償装置。
  10. 前記第1変圧器〜前記第3変圧器のそれぞれの二次側巻線は、スター結線された請求項1〜9のいずれか1つに記載の電圧補償装置。
  11. 前記第1変圧器〜前記第3変圧器のそれぞれの二次側巻線は、デルタ結線された請求項1〜9のいずれか1つに記載の電圧補償装置。
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