JP2017101918A - 冷凍サイクル装置、及び冷凍サイクル装置の制御方法 - Google Patents

冷凍サイクル装置、及び冷凍サイクル装置の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境条件に応じた適正な膨張弁の開度を設定することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を得ることを目的とする。
【解決手段】圧縮機、凝縮器、開度が可変である膨張弁、及び、蒸発器を、配管によって環状に接続し、冷媒を循環させる冷凍サイクル装置において、膨張弁の開度を制御する制御装置を備え、制御装置は、圧縮機を起動する際、膨張弁の入口の冷媒の状態に応じて膨張弁の開度を設定するものであり、圧縮機を起動する際の膨張弁の入口の冷媒が液相状態の場合、膨張弁の開度を、膨張弁の入口の冷媒が気液二相状態の場合における膨張弁の開度よりも小さくする。
【選択図】図2

Description

本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び、蒸発器を、配管によって環状に接続し、冷媒を循環させる冷凍サイクル装置、及びその制御方法に関する。
従来の冷凍サイクル装置においては、例えば、暖房運転の起動時に膨張弁の開度を予め設定された起動開度に設定し、低圧冷媒圧力が所定圧力以上であると、膨張弁の開度を起動開度より小さくし、低圧冷媒圧力が所定圧力より低下すると膨張弁の開度を大きく設定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、運転起動時に、蒸発器に流入する冷媒が過熱ガス状態であると判別された場合には、膨張弁の開度を増加させるものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、圧縮機の吐出管温度の変化を監視し、この吐出管温度の変化に対応して、次回起動時における膨張弁開度を学習させることで、次回起動時の膨張弁の開度を設定するものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、膨張弁の開度を、室外温度条件に従って段階的に調整して、圧縮機の設定周波数に適合した設定開度に到達させる制御を行うものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特許第3208923号公報(段落[0016]、[0017]) 特許第5022920号公報(段落[0005]) 特開平11−153366号公報(段落[0008]) 特開2000−337717号公報(段落[0010])
外気温度が低い環境条件において冷凍サイクル装置の運転を起動する場合、停止時に冷媒が室外機の機器内(蒸発器、アキュムレータ等)で液相状態となって溜まっているため、起動時に膨張弁に流入する冷媒が気液二相状態となり、冷媒密度が小さくなる。そのため、起動直後の運転では、低圧側の冷媒圧力が低下し、冷凍機油の循環不良が発生する。
また、外気温度が高い環境条件において冷凍サイクル装置の運転を起動する場合、高圧縮比運転となるため、起動時に圧縮機の吐出温度が過剰に上昇し易くなる。吐出温度が過剰に上昇すると、冷凍機油が劣化し、圧縮機の巻線の熱耐力が低下する。
従来の技術では、膨張弁の起動開度を大きく設定し、膨張弁の入り口側のサブクール(SC)が確保される所定の時間が経過してから、通常制御(吐出温度制御、室内機のSC制御)を開始していた。
しかし、外気温度が想定と異なる場合などの環境条件の変化、又は圧縮機の運転容量の変更等によっては、圧縮機への液バックが発生するという問題点があった。このため、運転効率の低下及び機器信頼性が低下するという問題点があった。
また、逆に起動開度が小さすぎる場合は、低圧側の冷媒圧力が低下して、圧縮機の吐出温度(Td)が過剰に上昇し、運転効率の低下及び機器信頼性が低下するという問題点があった。特に、GWP(Global Warming potential)が低い冷媒であるR32冷媒は、現在用いられているR410A冷媒と比べて、吐出温度(Td)が、15〜30K程度上昇する傾向があり、この問題点が顕著となる。
特許文献1〜4に記載の技術では、膨張弁の開度制御に伴う、高圧側の冷媒圧力、及び吐出温度への影響が考慮されていない。このため、環境条件によっては、圧縮機の吐出温度が過剰に上昇し、運転効率の低下及び機器信頼性が低下するという問題点があった。
さらに、特許文献2に記載の技術では、蒸発器に流入する冷媒が過熱ガス状態であると判別したあとに膨張弁の開度制御を行うため、応答遅れが生じて制御の即応性が低いという問題点があった。また、特許文献3に記載の技術では、次回起動時の膨張弁開度を学習させる必要があり、制御の即応性が低いという問題点があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、環境条件及び圧縮機の運転容量に応じた適正な膨張弁の開度を設定することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を得ることを目的とする。
また、外気温度が低い環境条件における低圧側の冷媒圧力の低下を抑制し、運転効率を向上することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を得ることを目的とする。
また、圧縮機の吐出温度の過剰な上昇を抑制し、機器信頼性を向上することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を得ることを目的とする。
また、膨張弁の開度制御の即応性を向上することができる冷凍サイクル装置及び冷凍サイクル装置の制御方法を得ることを目的とする。
本発明に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機、凝縮器、開度が可変である膨張弁、及び、蒸発器を、配管によって環状に接続し、冷媒を循環させる冷凍サイクル装置であって、膨張弁の開度を制御する制御装置を備え、制御装置は、圧縮機を起動する際、膨張弁の入口の冷媒の状態に応じて膨張弁の開度を設定するものであり、圧縮機を起動する際の膨張弁の入口の冷媒が液相状態の場合、膨張弁の開度を、膨張弁の入口の冷媒が気液二相状態の場合における膨張弁の開度よりも小さくする。
本発明は、環境条件及び圧縮機の運転容量に応じた適正な膨張弁の開度を設定することができる。
また、外気温度が低い環境条件における低圧側の冷媒圧力の低下を抑制し、運転効率を向上することができる。
また、圧縮機の吐出温度の過剰な上昇を抑制し、機器信頼性を向上することができる。
また、膨張弁の開度制御の即応性を向上することができる。
本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の全体制御フローを示す図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のPh線図である。 膨張弁の開度とCv値との関係を示す図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の基準開度演算フローを示す図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の低圧補正制御を説明するPh線図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の低圧補正制御フローを示す図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のTd補正制御フローを示す図である。 本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の動作結果の一例を示す図である。
実施の形態1.
<冷凍サイクル装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の構成図である。
図1に示すように、冷凍サイクル装置100は、室外機61、及び室内機62を備えている。室外機61と室内機62とは、液管5及びガス管7によって接続され、後述の冷媒回路20を構成している。室外機61は、熱源、例えば大気等へ放熱又は吸熱を行う。室内機62は、負荷、例えば室内空気への放熱又は吸熱を行う。なお、図1には室内機62を1台のみ備えた構成を示したが、複数台としてもよい。
<室外機の構成>
室外機61は、圧縮機1と、流路切り替え装置である四方弁8と、大気や水等の熱媒体と熱交換を行う室外熱交換器2と、減圧装置である膨張弁3とを備え、これらが冷媒配管で接続されている。室外機61は更に、大気や水等の熱媒体を室外熱交換器2に搬送する装置である室外ファン31を備えている。以下、室外機61を構成する各機器について順に説明する。
(圧縮機)
圧縮機1は例えば全密閉式圧縮機であり、制御装置50からの指令によってインバータで回転数を可変することができる圧縮機である。制御装置50は、空調負荷等に応じて圧縮機1の回転数を制御して、冷媒回路20を循環する冷媒流量を調整する。これによって、室内機62での放熱又は吸熱量を調整し、例えば負荷側が室内空気の場合は、室内空気温度を適正に保つことができる。
(四方弁)
四方弁8は、圧縮機1から吐出されたガス冷媒を室外熱交換器2又は室内熱交換器6に流すように流路を切り替えるために用いられる。四方弁8で流路を切り替えることで、例えば室外熱交換器2を凝縮器(放熱器)として機能させたり、蒸発器として機能させたりすることができる。
(室外熱交換器)
室外熱交換器2は、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器で、室外ファン31から供給された熱媒体としての外気と、冷媒との熱交換を行う。なお、室外熱交換器2において冷媒と熱交換する熱媒体は、外気(空気)に限らず、例えば水や不凍液等を熱源として利用できるようにしても良い。この場合、室外熱交換器2にはプレート熱交換器を用い、熱源側搬送装置には室外ファン31ではなくポンプを用いる。また、室外熱交換器2は、熱交換配管を地中に埋めて地熱を利用することで年間を通じて安定した温度の熱源を供給できるようにしても良い。
(膨張弁)
膨張弁3は、制御装置50からの指令によって開度を可変することができる弁である。膨張弁3は、例えば、電子制御式膨張弁(Linear Expansion Valve:LEV)を用いる。膨張弁3は、開度を変化させることで流路抵抗が変化する。膨張弁3の開度を設定する動作は後述する。
<室内機の構成>
室内機62は、室内空気等の熱媒体と熱交換を行う室内熱交換器6と、室内空気等の熱媒体を搬送する装置である室内ファン32とを備えている。以下、室内機62を構成する各機器について順に説明する。
(室内熱交換器)
室内熱交換器6は、例えばフィンアンドチューブ型熱交換器で構成され、室内ファン32から供給された熱媒体としての室内空気と、冷媒との熱交換を行う。なお、室内熱交換器6において冷媒と熱交換する熱媒体は、室内空気に限らず、例えば水や不凍液等を熱源として利用できるようにしても良い。この場合、室内熱交換器6にはプレート熱交換器を用い、負荷側搬送装置は室内ファン32ではなくポンプを用いる。
(接続配管)
液管5とガス管7は、室外機61と室内機62を接続する接続配管であり、接続に必要な所定の長さを持つ。また、一般的には液管5よりもガス管7の配管径は大きい。液管5は、室外機61の膨張弁3と、室内機62の室内熱交換器6との間に接続される。また、ガス管7は、室外機61の四方弁8と、室内機62の室内熱交換器6との間に接続される。このように液管5及びガス管7により室外機61と室内機62とが接続されることで、圧縮機1、四方弁8、室内熱交換器6、膨張弁3、室外熱交換器2、四方弁8の順に冷媒が循環する冷媒回路20が構成される。
<センサ類及び制御装置>
次に、冷凍サイクル装置100に備えられたセンサ類及び制御装置50について説明する。
圧縮機1の吐出側には、圧縮機1から吐出された冷媒の温度(以下、吐出温度Td)を検出する吐出温度センサ41が設けられている。圧縮機1の吐出側には、圧縮機1から吐出された冷媒の圧力(以下、吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42が設けられている。圧縮機1の吸入側には、圧縮機1から吐出された冷媒の圧力(以下、吸入圧力Ps)を検出する吸入圧力センサ43が設けられている。
室外機61には、室外熱交換器2内の冷媒と熱交換される空気(外気)の温度を検出する室外温度センサ44が設けられている。室内機62には、室内熱交換器6内の冷媒と熱交換される空気(室内空気)の温度を検出する室内温度センサ45が設けられている。
すなわち、暖房運転時において、室外温度センサ44は、蒸発器に吸い込まれる空気の温度(蒸発器吸込空気温度Tae)を検出し、室内温度センサ45は、凝縮器に吸い込まれる空気の温度(凝縮器吸込空気温度Tac)を検出する。また、冷房運転時において、室外温度センサ44は、凝縮器に吸い込まれる空気の温度(凝縮器吸込空気温度Tac)を検出し、室内温度センサ45は、蒸発器に吸い込まれる空気の温度(蒸発器吸込空気温度Tae)を検出する。
なお、室外温度センサ44又は室内温度センサ45のうち、凝縮器吸込空気温度Tacを検出するセンサが、本発明における「第1温度センサ」に相当する。
また、室外温度センサ44又は室内温度センサ45のうち、蒸発器吸込空気温度Taeを検出するセンサが、本発明における「第2温度センサ」に相当する。
また、吐出温度センサ41は、本発明における「第3温度センサ」に相当する。
制御装置50は、マイクロコンピュータで構成され、CPU、RAM及びROM等を備えており、ROMには制御プログラム及び後述のフローチャートに対応したプログラム等が記憶されている。制御装置50は、各センサからの検出値に基づいて圧縮機1、膨張弁3、室外ファン31及び室内ファン32を制御する。また、制御装置50は四方弁8の切り替えにより冷房運転又は暖房運転を行う。なお、制御装置50は、室外機61に設けられていても良いし、室内機62に設けられていても良いし、また、室内制御装置と室外制御装置とに分けて構成し、互いに連携処理を行う構成にしても良い。
次に、冷媒回路20における暖房運転及び冷房運転について説明する。
<暖房運転時の冷媒の動作>
暖房運転時は、四方弁8が図1の実線で示される状態に切り替えられる。そして、圧縮機1から吐出した高温高圧の冷媒は、四方弁8を通過してガス管7へ流入する。その後、冷媒は、室内機62の室内熱交換器6へ流入する。室内熱交換器6は、暖房運転時は凝縮器として働くことから、室内熱交換器6に流入した冷媒は室内ファン32からの室内空気と熱交換して放熱し、温度が低下して過冷却状態の液冷媒となって、室内熱交換器6から流出する。
室内熱交換器6から流出した冷媒は、液管5へ流入する。その後、冷媒は、室外機61に流入する。そして、室外機61に流入した冷媒は、膨張弁3によって減圧されて気液二相冷媒となり、室外熱交換器2へ流入する。室外熱交換器2は、暖房運転時には蒸発器として働くことから、室外熱交換器2に流入した冷媒は室外ファン31からの室外空気と熱交換して吸熱、蒸発し、ガス状態の冷媒となって室外熱交換器2から流出する。室外熱交換器2から流出した冷媒は、四方弁8を通過して、圧縮機1へ吸入される。
<冷房運転時の冷媒の動作>
冷房運転時は、四方弁8が図1の点線で示される状態に切り替えられる。圧縮機1から吐出した高温高圧の冷媒は、四方弁8を通過して室外熱交換器2へ流入する。室外熱交換器2に流入する冷媒は、圧縮機1から吐出した高温高圧冷媒と略変わらない冷媒状態である。室外熱交換器2は、冷房運転時は凝縮器として働くことから、室外熱交換器2に流入した冷媒は、室外ファン31からの外気(大気)と熱交換して放熱し、温度が低下して過冷却状態の液冷媒となって、室外熱交換器2から流出する。
室外熱交換器2から流出した冷媒は、膨張弁3によって減圧されて気液二相冷媒となり、液管5に流入する。その後、冷媒は、室内機62の室内熱交換器6に流入する。室内熱交換器6は、冷房運転時には蒸発器として働くことから、室内熱交換器6に流入した冷媒は、室内ファン32からの室内空気と熱交換して吸熱、蒸発し、ガス状態の冷媒となって室内熱交換器6から流出する。室内熱交換器6から流出した冷媒は、ガス管7へ流入する。ガス管7へ流入した冷媒は、室外機61に流入する。そして、室外機61に流入した冷媒は、四方弁8を通過して、圧縮機1へ吸入される。
なお、本実施の形態1の冷凍サイクル装置100は、暖房運転と冷房運転とを切り替え可能に構成したが、本発明はこれに限定されない。暖房運転のみ又は冷房運転のみを実施する構成としても良い。この場合には四方弁8は設けなくても良い。
<制御動作>
次に、膨張弁3の開度を設定する制御動作を説明する。
膨張弁3の開度を設定する制御動作は、基準開度演算、低圧補正制御、及びTd補正制御に大別される。制御装置50は、圧縮機1を起動する際又は圧縮機1の運転容量を変更する際、逐次、これらの演算及び制御動作を行うことで、膨張弁3の開度を設定する。
以下、全体制御フローを説明したあと、演算及び制御動作の詳細について説明する。
(全体制御フロー)
図2は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の全体制御フローを示す図である。以下、図2の各ステップに基づき説明する。
(S101)
制御装置50は、基準開度演算(LPbase)を実施する。
基準開度演算において、制御装置50は、圧縮機1を起動した後又は圧縮機1の運転容量を変更した後における、凝縮温度の予測値Tc及び蒸発温度の予測値Teを演算する。そして、凝縮温度の予測値Tcと、蒸発温度の予測値Teと、圧縮機1に設定する運転容量の設定値(以下、圧縮機容量VPという)とに基づき、膨張弁3に設定する基準開度LPbaseを演算する。詳細は後述する。
(S102)
制御装置50は、現在の蒸発温度の実測値Teが、蒸発温度の予測値Teから所定温度(例えば5℃)を減算した値より低いか否かを判断する。
ここで、蒸発温度の実測値Teは、吸入圧力センサ43が検出した吸入圧力Psを、冷媒飽和ガス温度に換算することで求めることができる。なお、蒸発温度を検出する温度センサを別途設けても良い。
なお、ここでは、蒸発温度の予測値Teから所定温度を減算したが、本発明はこれに限定されない。蒸発温度の実測値Teが予測値Teより低いか否かを判断するようにしても良い。
(S103)
現在の蒸発温度の実測値Teが、蒸発温度の予測値Teから所定温度を減算した値より低い場合、制御装置50は、低圧補正制御を実施する。
低圧補正制御において、制御装置50は、凝縮温度の予測値Tcと蒸発温度の予測値Teとに基づき、凝縮器の凝縮圧力と蒸発器の蒸発圧力との差圧の予測値ΔPを演算する。そして、凝縮器の凝縮圧力と蒸発器の蒸発圧力との差圧の実測値ΔPと、差圧の予測値ΔPとに基づき、膨張弁3の開度を補正する低圧補正開度ΔLPteを演算する。詳細は後述する。
(S104)
現在の蒸発温度の実測値Teが、蒸発温度の予測値Teから所定温度を減算した値より低く無い場合、制御装置50は、低圧補正開度ΔLPteをゼロに設定し、ステップS106へ進む。
(S105)
制御装置50は、蒸発温度の実測値Teが、蒸発温度の予測値Teから所定温度(例えば3℃)を減算した値より大きいか否かを判断する。又は、制御装置50は、膨張弁3の設定開度LPと基準開度LPbaseとの差分の絶対値が、基準開度LPbaseの所定割合(例えば30%)より小さいか否かを判断する。条件を満たす場合にはステップS106へ進み、制御装置50は、Td補正制御を実施する。一方、条件を満たさない場合にはステップS107へ進む。
即ち、蒸発温度の実測値Teと予測値Teとの偏差が小さくなった場合、又は、現在の設定開度LPと基準開度LPbaseとの偏差が小さくなった場合、制御装置50は、Td補正制御を実施する。
(S106)
制御装置50は、Td補正制御を実施する。
Td補正制御において、制御装置50は、凝縮温度の予測値Tcと、蒸発温度の予測値Teと、圧縮機容量VPとに基づき、圧縮機1から吐出される冷媒の吐出温度の目標値Tdmを演算する。そして、吐出温度センサ41が検出した吐出温度Tdの実測値と、吐出温度の目標値Tdmとの差分に基づき、膨張弁3の開度を補正するTd補正開度ΔLPtdを演算する。詳細は後述する。
(S107)
制御装置50は、現在の補正開度ΔLPhoに、低圧補正開度ΔLPte、及びTd補正開度ΔLPtdを加算して、補正開度ΔLPhoを更新する。なお、補正開度ΔLPhoの初期値はゼロである。
(S108)
制御装置50は、基準開度LPbaseに補正開度ΔLPhoを加算して、設定開度LPを求める。そして膨張弁3の開度を設定開度LPに制御する。その後、ステップS101へ戻り、上記動作を繰り返し実施する。
次に、基準開度演算、低圧補正制御、及びTd補正制御の詳細を説明する。
(基準開度演算)
図3は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のPh線図である。
図4は、膨張弁の開度とCv値との関係を示す図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の基準開度演算フローを示す図である。以下、図3及び図4を参照しつつ、図5の各ステップに基づき説明する。
(S201)
制御装置50は、現在の運転状態が暖房又は冷房の何れであるかを判断する。冷房の場合、ステップS202へ進む。暖房の場合、ステップS203へ進む。
(S202)
制御装置50は、室外温度センサ44が検出した外気温度ATを、凝縮器吸込空気温度Tacとして取得する。また、室内温度センサ45が検出した室内温度Trを、蒸発器吸込空気温度Taeとして取得する。
(S203)
制御装置50は、室外温度センサ44が検出した外気温度ATを、蒸発器吸込空気温度Taeとして取得する。また、室内温度センサ45が検出した室内温度Trを、凝縮器吸込空気温度Tacとして取得する。
(S204)
制御装置50は、圧縮機1を起動する際又は圧縮機1の運転容量を変更する際に、圧縮機1に設定する周波数fの制御指示値を読み込む。
(S205)
制御装置50は、圧縮機1の押しのけ量Vst[cc]に周波数f[Hz]を乗算することで、圧縮機1を起動する際又は圧縮機1の運転容量を変更する際に、圧縮機1に設定する運転容量の設定値(圧縮機容量VP[cc×Hz])を算出する。なお、押しのけ量Vstは、圧縮機1に固有の値であり、予めROM等に記憶される。
(S206)
制御装置50は、ΔTe及びΔTcを演算する。
図3に示すように、安定運転時において、蒸発温度Teは蒸発器吸込空気温度TaeよりΔTeだけ低い温度となる。また、安定運転時において、凝縮温度Tcは凝縮器吸込空気温度TacよりΔTcだけ高い温度となる。即ち、ΔTeは、圧縮機1を起動した後又は圧縮機1の運転容量を変更した後の安定運転時における蒸発温度Teと、蒸発器吸込空気温度Taeとの差の予測値である。また、ΔTcは、圧縮機1を起動した後又は圧縮機1の運転容量を変更した後の安定運転時における凝縮温度Tcと、凝縮器吸込空気温度Tacとの差の予測値である。
以下、ΔTe及びΔTcの演算例を説明する。
(ΔTe)
蒸発器での冷媒と空気(熱媒体)とのエネルギーバランスより、以下の式(1)、式(2)が成り立つ。
Figure 2017101918
VP:圧縮機容量[cc×Hz]
ρs:圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
η:体積効率[−]
Δhe:冷凍効果[kJ/kg]
AK:蒸発器AK値[kW/K]
ΔTe:蒸発器温度差予測値[K]
Figure 2017101918
VPstd:定格条件での圧縮機容量[cc×Hz]
ρsstd:定格条件での圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
AKstd:定格条件での蒸発器AK値[kW/K]
Δhe:冷凍効果[kJ/kg]
AK:蒸発器AK値[kW/K]
ΔTestd:定格条件での蒸発器温度差予測値[K]
η=一定、AK=一定と仮定して、式(1)、式(2)を整理すると、以下の式(3)となる。
Figure 2017101918
式(3)の左辺は、定格条件での試験値等からΔTeの一次関数で近似できるため、式(3)を変形して係数をαとしてまとめると、ΔTeは以下の式(4)となる。
Figure 2017101918
制御装置50は、圧縮機容量VPを式(4)に代入して、ΔTeを演算する。
(ΔTc)
次に、ΔTcの演算例を説明する。
凝縮器での冷媒と空気(熱媒体)とのエネルギーバランスより、以下の式(5)、式(6)が成り立つ。
Figure 2017101918
VP:圧縮機容量[cc×Hz]
ρs:圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
η:体積効率[−]
Δhe:冷凍効果[kJ/kg]
AK:蒸発器AK値[kW/K]
ΔTc:凝縮器温度差予測値[K]
Figure 2017101918
VPstd:定格条件での圧縮機容量[cc×Hz]
ρsstd:定格条件での圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
AKstd:定格条件での蒸発器AK値[kW/K]
Δhe:冷凍効果[kJ/kg]
AK:蒸発器AK値[kW/K]
ΔTcstd:定格条件での凝縮器温度差予測値[K]
η=一定、AK=一定と仮定して、式(5)、式(6)を整理し、係数をβとしてまとめると、ΔTcは以下の式(7)となる。
Figure 2017101918
制御装置50は、圧縮機容量VPを式(7)に代入して、ΔTcを演算する。
(S207)
制御装置50は、現在の蒸発器吸込空気温度Tae、及び演算したΔTeを、下記式(8)に代入して、蒸発温度の予測値Teを演算する。
Figure 2017101918
制御装置50は、現在の凝縮器吸込空気温度Tac、及び演算したΔTcを、下記式(9)に代入して、凝縮温度の予測値Tcを演算する。
Figure 2017101918
(S208)
制御装置50は、凝縮温度の予測値Tcと、蒸発温度の予測値Teと、圧縮機容量VPとに基づき、膨張弁3の基準Cv値(Cv_b)を求める。
以下、基準Cv値(Cv_b)の演算例を説明する。
膨張弁3のCv値は、以下の式(10)の関係が成り立つ。
Figure 2017101918
Cv:流量係数[−]
Gr:冷媒循環量[kg/s]
ρl:膨張弁入口冷媒密度[kg/m
ΔP:高低圧差圧[MPa]
冷媒循環量Grは、以下の式(11)で表される。
Figure 2017101918
ρs:圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
η:体積効率[−]
圧縮機1を起動した後又は圧縮機1の運転容量を変更した後における、膨張弁3の基準Cv値(Cv_b)は、式(10)及び式(11)より、以下の式(12)となる。
Figure 2017101918
ρs:予測値Teにおける圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
ΔP:予測値Tc及び予測値Teにおける高低圧差圧の予測値[MPa]
制御装置50は、凝縮温度の予測値Tc及び蒸発温度の予測値Teを、飽和温度を用いて凝縮圧力Pd及び蒸発圧力Psに換算して、ΔPを算出する。
また、上記式(3)の関係から、予測値Teを用いてρsを算出する。
また、膨張弁3の入り口の冷媒が液相状態であると想定してρl=液密度(一定)とする。なお、η=一定(固有値)とする。
制御装置50は、これらの値を式(12)に代入して、膨張弁3の基準Cv値(Cv_b)を演算する。
(S209)
制御装置50は、凝縮温度の予測値Tcと、蒸発温度の予測値Teと、圧縮機容量VPとに基づき、圧縮機1から吐出される冷媒の吐出温度の目標値Tdmを求める。
例えば、圧縮機1の吸入過熱度がゼロである場合における、凝縮温度Tc、蒸発温度Te、及び圧縮機容量VPに対する吐出温度Tdの特性の、理論値又は実験データ等を、予めROM等にテーブルとして記憶しておく。そして、このテーブルを参照して、予測値Tc、予測値Te、及び圧縮機容量VPに対応する吐出温度Tdを、吐出温度の目標値Tdmとする。即ち、図3に示すように、吐出温度の目標値Tdmは、圧縮機1の吸入過熱度がゼロである場合の吐出温度Tdである。
(S210)
制御装置50は、ステップS209で求めた吐出温度の目標値Tdmが、吐出温度上限許容値Tdmaxを超えるか否かを判断する。
ここで、吐出温度上限許容値Tdmaxは、圧縮機1に固有の値であり、予めROM等に記憶される。
(S211)
吐出温度の目標値Tdmが吐出温度上限許容値Tdmaxを超える場合、制御装置50は、吐出温度の目標値Tdmと吐出温度上限許容値Tdmaxとの差分に応じた、Cv補正値ΔCvtdを演算する。
このCv補正値ΔCvtdは、ゼロより大きい値であり、吐出温度の目標値Tdmと吐出温度上限許容値Tdmaxとの差分が大きいほど値が大きい値に設定する。即ち、吐出温度の目標値Tdmが吐出温度上限許容値Tdmaxより大きい場合には、膨張弁3の開度を増加させるようにCv値を補正することで、起動後の吐出温度Tdが吐出温度上限許容値Tdmax以上にならないようにする。
(S212)
吐出温度の目標値Tdmが吐出温度上限許容値Tdmaxを超え無い場合、制御装置50は、Cv補正値ΔCvtdをゼロに設定し、ステップS213へ進む。
(S213)
制御装置50は、Cv値を設定開度LPへ変換する変換関数fLEVを用いて、膨張弁3の基準Cv値(Cv_b)にCv補正値ΔCvtdを加算した値を、開度設定値に換算して、基準開度LPbaseを求める。
図4に示すように、Cv値[−]と設定開度LP[pulse]とは、膨張弁3に固有の対応関係がある。このような対応関係を変換関数fLEVとして近似して、予めROM等に記憶する。なお、設定開度LPとCv値との対応関係をテーブル情報として記憶しても良い。
制御装置50は、基準開度演算を終了し、ステップS102(図2)へ進む。
(低圧補正制御)
図6は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の低圧補正制御を説明するPh線図である。
図7は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の低圧補正制御フローを示す図である。
上述した基準開度LPbaseは、膨張弁3の入り口の冷媒が液相状態であると想定してもとめた開度である。膨張弁3の入り口の冷媒が気液二相状態の場合、液相状態と比べて冷媒密度が低下するため、圧損が増加し、低圧側の冷媒圧力の低下(低圧の引き込み)が発生する場合がある。
図6において、実線は、低圧側の圧力が安定時(予測値Tc、予測値Te)の冷媒サイクル(膨張弁3の入り口の冷媒が液相状態)を示している。点線は、低圧側の圧力が低下時の冷媒サイクル(膨張弁3の入り口の冷媒が気液二相状態)を示している。
このようなことから、現在の蒸発温度Teが予測値Teより低い場合に、制御装置50は、膨張弁3の入り口の冷媒が気液二相状態(密度小)と判定し(S102)、低圧補正制御を実施する。そして、凝縮温度が予測値Tc、蒸発温度が予測値Teとなるように、膨張弁3の開度を補正することで、低圧側の圧力の低下を抑制する。
以下、低圧補正開度ΔLPteの演算例を説明する。
上記式(10)及び式(11)の関係より、低圧側の圧力が安定時(予測値Tc、予測値Te)の冷媒サイクルでは、下記式(13)が成り立つ。また、低圧側の圧力が低下時(凝縮温度の実測値Tc、蒸発温度の実測値Te)の冷媒サイクルでは、下記式(14)が成り立つ。
Figure 2017101918
Cvte:補正後Cv値[−]
ρs:予測値Teにおける圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
η:体積効率[−]
VP:圧縮機容量[cc×Hz]
ρl:膨張弁入口冷媒密度[kg/m
ΔP:予測値Tc及び予測値Teにおける高低圧差圧の予測値[MPa]
Figure 2017101918
Cv:補正前Cv値[−]
ρs:実測値Teにおける圧縮機吸入冷媒密度[kg/m
η:体積効率[−]
VP:圧縮機容量[cc×Hz]
ρl:膨張弁入口冷媒密度[kg/m
ΔP:凝縮器の凝縮圧力Pdと蒸発器の蒸発圧力Psとの差圧の実測値[MPa]
上記式(13)及び式(14)を整理すると、以下の式(15)となる。
Figure 2017101918
よって、予測値Tc、予測値Teを実現するのに必要な低圧補正開度ΔLPteは、以下の式(16)となる。
Figure 2017101918
fLEV:変換関数
次に、低圧補正制御の動作を、図7の各ステップに基づき説明する。
(S301)
制御装置50は、凝縮温度の予測値Tcと蒸発温度の予測値Teとに基づき、高低圧差圧の予測値ΔPを演算する。例えば、凝縮温度の予測値Tc及び蒸発温度の予測値Teを、それぞれ飽和温度を用いて凝縮圧力Pd及び蒸発圧力Psに換算する。そして、凝縮圧力Pd及び蒸発圧力Psの差分から、高低圧差圧の予測値ΔPを算出する。
(S302)
制御装置50は、吐出圧力センサ42が検出した吐出圧力Pd、及び吸入圧力センサ43が検出した吸入圧力Psの差分から、高低圧差圧の実測値ΔPを算出する。なお、凝縮温度を検出する温度センサ及び蒸発温度を検出する温度センサを別途設け、圧力換算することで、高低圧差圧の実測値ΔPを算出しても良い。
(S303)
制御装置50は、上記式(3)の関係から、予測値Teを用いてρsを算出する。
(S304)
制御装置50は、上記式(3)の関係から、現在の蒸発温度の実測値Teを用いてρsを算出する。
ここで、蒸発温度の実測値Teは、吸入圧力センサ43が検出した吸入圧力Psを、冷媒飽和ガス温度に換算することで求めることができる。なお、蒸発温度を検出する温度センサを別途設けても良い。
(S305)
制御装置50は、設定開度LPをCv値へ変換する変換関数fLEVCvを用いて、現在の設定開度LPをCv値に変換する。
ここで、変換関数fLEVCvは、図4に示したように、Cv値[−]と設定開度LP[pulse]との対応関係から求めても良いし、テーブル情報として記憶しても良い。
(S306)
制御装置50は、ステップS301〜S305で求めた各値を、上記式(15)に代入して、補正後Cv値であるCvteを演算する。
(S307)
制御装置50は、Cvteを開度設定値に換算した値と、現在のCv値を開度設定値に換算した値との差分を、低圧補正開度ΔLPteとして求める。
制御装置50は、低圧補正制御を終了し、ステップS105(図2)へ進む。
(Td補正制御)
図8は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のTd補正制御フローを示す図である。以下、図8の各ステップに基づき説明する。
(S401)
制御装置50は、凝縮温度の予測値Tcと、蒸発温度の予測値Teと、圧縮機容量VPとに基づき、圧縮機1から吐出される冷媒の吐出温度の目標値Tdmを求める。
例えば、圧縮機1の吸入過熱度がゼロである場合の、凝縮温度Tc、蒸発温度Te、及び圧縮機容量VPに対する吐出温度Tdの特性の理論値又は実験データ等を、予めROM等にテーブルとして記憶しておく。そして、このテーブルを参照して、予測値Tc、予測値Te、及び圧縮機容量VPに対応する吐出温度Tdを、吐出温度の目標値Tdmとする。即ち、図3に示すように、吐出温度の目標値Tdmは、圧縮機1の吸入過熱度がゼロである場合の吐出温度Tdである。
(S402)
制御装置50は、吐出温度センサ41が検出した現在の吐出温度Tdと、吐出温度の目標値Tdmとの差分に応じた、Cv補正値ΔCvtdを演算する。
このCv補正値ΔCvtdは、ゼロより大きい値であり、現在吐出温度Tdと吐出温度の目標値Tdmとの差分が大きいほど値が大きい値に設定する。
また、Cv補正値ΔCvtdは、吐出温度Tdが目標値Tdmより大きい場合には正の値に設定し、吐出温度Tdが目標値Tdmより小さい場合には負の値に設定する。即ち、吐出温度Tdの実測値が目標値Tdmより大きい場合には、膨張弁3の開度を増加させ、吐出温度Tdの実測値が目標値Tdmより小さい場合には、膨張弁3の開度を減少させることで、吐出温度Tdが目標値Tdmとなるようにする。
(S403)
制御装置50は、現在のCv値にΔCvtdを加算した値を、開度設定値に換算した値と、現在のCv値を開度設定値に換算した値との差分を、Td補正開度ΔLPtdとして求める。
制御装置50は、Td補正制御を終了し、ステップS107(図2)へ進む。
<動作結果>
図9は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の動作結果の一例を示す図である。
図9に示すように、起動時及び圧縮機容量VPを変更した際における膨張弁3の基準開度は、圧縮機容量VPに比例した値となる。
現在の蒸発温度Teの実測値が予測値Teより所定温度以上低い場合には、膨張弁3の入り口の冷媒が気液二相状態(密度小)と判定し、低圧補正制御が実施される。これにより、膨張弁3の開度が低圧補正開度ΔLPteだけ増加し、低圧側の圧力の低下が抑制される。
蒸発温度の実測値Teと予測値Teとの偏差が小さくなった場合、又は、膨張弁3の現在の設定開度LPと基準開度LPbaseとの偏差が小さくなった場合には、Td補正制御が実施される。これにより、膨張弁3の開度がTd補正開度ΔLPtdだけ増加又は減少し、吐出温度Tdが目標値Tdmとなるように制御される。
<効果>
以上のように本実施の形態1においては、制御装置50は、圧縮機1を起動する際又は圧縮機1の運転容量を変更する際、凝縮器吸込空気温度Tacと、蒸発器吸込空気温度Taeと、圧縮機容量VPとに基づき、圧縮機1を起動した後又は圧縮機1の運転容量を変更した後における、冷媒の凝縮温度の予測値Tc及び冷媒の蒸発温度の予測値Teを求める。そして、凝縮温度の予測値Tcと、蒸発温度の予測値Teと、圧縮機容量VPとに基づき、膨張弁3に設定する開度を決定する。
このため、環境条件及び圧縮機容量VPに応じた適正な膨張弁3の開度を設定することができる。よって、圧縮機1への液バックを防止することができ、機器信頼性を向上することができる。また、圧縮機1を起動した後又は圧縮機1の運転容量を変更した後における、予測値Tc及び予測値Te*を求めることから、膨張弁3の開度制御の即応性を向上することができる。
また本実施の形態1においては、予測値Tcと予測値Teとに基づき、凝縮圧力と蒸発圧力との差圧の予測値ΔPを求め、凝縮器吸込空気温度Tacと蒸発器吸込空気温度Taeとに基づき、凝縮圧力と蒸発圧力との差圧の実測値ΔPを求める。そして、差圧の予測値ΔPと実測値ΔPとに基づき、低圧補正開度ΔLPteを求め、膨張弁3に設定する開度を補正する。
このため、外気温度が低い環境条件における低圧側の冷媒圧力の低下(低圧引き込み)を抑制することができる。また、低圧側の冷媒圧力の低下を抑制することで、冷媒循環量を増加することができ、暖房能力を向上することができる。また、低外気起動時の低圧引き込みを抑制することで、運転効率の低下を抑制することができ、省エネルギー性を向上することができる。
また本実施の形態1においては、予測値Tcと、予測値Teと、圧縮機容量VPとに基づき、圧縮機1の運転容量を変更した後における、圧縮機1から吐出される冷媒の吐出温度の目標値Tdmを求める。そして、吐出温度Tdの実測値と目標値Tdmとの差分に基づき、Td補正開度ΔLPtdを求め、膨張弁3に設定する開度を補正する。
このため、圧縮機1の吐出温度の過剰な上昇を抑制し、圧縮機1の運転保障範囲内で高効率な運転を実現することができる。よって、機器信頼性を向上することができる。
また本実施の形態1においては、吐出温度の目標値Tdmが、吐出温度上限許容値Tdmaxを超える場合、吐出温度上限許容値Tdmaxと目標値Tdmとの差分に基づき、膨張弁3に設定する開度を補正する。
このため、予測値Te、予測値Tcを用いて算出した吐出温度の目標値Tdmが、圧縮機1の運転保障範囲外の高温となる場合には、予め、膨張弁3の開度を増加させるように補正することで、圧縮機1の湿り吸入運転により運転保障範囲内で起動動作が可能となる。
<変形例>
なお、膨張弁3の開度を設定する制御動作において、基準開度演算(S101)、低圧補正制御(S103)、及びTd補正制御(S106)を行う実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。基準開度演算、低圧補正制御、及びTd補正制御のうち、任意の1つ又は2つを実行する制御でも良い。
例えば、図2において、ステップS102〜S104を省略し、基準開度演算及びTd補正制御により、膨張弁3の開度を設定しても良い。また例えば、図2において、ステップS105、S106を省略し、基準開度演算及び低圧補正制御により、膨張弁3の開度を設定しても良い。また例えば、図2において、ステップS102〜S107を省略し、基準開度演算のみにより、膨張弁3の開度を設定しても良い。また例えば、図2において、ステップS101を省略し、基準開度を任意の開度に設定した後、低圧補正制御及び低圧補正制御により、膨張弁3の開度を補正しても良い。
1 圧縮機、2 室外熱交換器、3 膨張弁、5 液管、6 室内熱交換器、7 ガス管、8 四方弁、20 冷媒回路、31 室外ファン、32 室内ファン、41 吐出温度センサ、42 吐出圧力センサ、43 吸入圧力センサ、44 室外温度センサ、45 室内温度センサ、50 制御装置、61 室外機、62 室内機、100 冷凍サイクル装置。

Claims (7)

  1. 圧縮機、凝縮器、開度が可変である膨張弁、及び、蒸発器を、配管によって環状に接続し、冷媒を循環させる冷凍サイクル装置において、
    前記膨張弁の開度を制御する制御装置を備え、
    前記制御装置は、
    前記圧縮機を起動する際、前記膨張弁の入口の前記冷媒の状態に応じて前記膨張弁の開度を設定するものであり、
    前記圧縮機を起動する際の前記膨張弁の入口の前記冷媒が液相状態の場合、前記膨張弁の開度を、前記膨張弁の入口の前記冷媒が気液二相状態の場合における前記膨張弁の開度よりも小さくする、
    冷凍サイクル装置。
  2. 前記制御装置は、
    前記圧縮機を起動する際の前記膨張弁の入口の前記冷媒が液相状態の場合における前記膨張弁の開度を基準開度とし、
    前記膨張弁の入口の前記冷媒が気液二相状態の場合、低圧補正開度を演算し、前記基準開度に前記低圧補正開度を加算する、
    請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
  3. 前記低圧補正開度は、前記冷媒の凝縮温度および蒸発温度が予測値となるように演算されるものである、請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
  4. 前記制御装置は、
    前記圧縮機を起動する際の前記膨張弁の入口の前記冷媒が液相状態の場合における前記膨張弁の開度を基準開度とし、
    前記冷媒の蒸発温度の実測値が、前記冷媒の蒸発温度の予測値から所定温度を減算した値より大きい場合、または前記膨張弁の設定開度と前記基準開度との差分の絶対値が所定の値より小さい場合、Td補正開度を演算し、前記基準開度に前記Td補正開度を加算する、
    請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
  5. 前記Td補正開度は、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の吐出温度と目標とする吐出温度との差分に応じたものである、請求項4に記載の冷凍サイクル装置。
  6. 前記冷媒は、R410Aよりも比熱比が高い、請求項1〜5の何れか一項に記載の冷凍サイクル装置。
  7. 圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び、蒸発器を、配管によって環状に接続し、冷媒を循環させる冷凍サイクル装置の制御方法において、
    前記圧縮機を起動する際の前記膨張弁の入口の前記冷媒が液相状態の場合、前記膨張弁の開度を、前記膨張弁の入口の前記冷媒が気液二相状態の場合における前記膨張弁の開度よりも小さくすることを含む冷凍サイクル装置の制御方法。
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