JP2017100068A - 選択還元型排ガス浄化用触媒 - Google Patents

選択還元型排ガス浄化用触媒 Download PDF

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Abstract

【課題】高温域においても、NOxをNHによって還元する反応に対する選択性が高く、かつ高い耐熱性を有する、選択還元型排ガス浄化用触媒の提供。
【解決手段】チャバサイト(CHA)型ゼオライト担体の細孔中に二価の鉄イオンが担持されており、かつ担体と二価の鉄イオンとの合計を基準として、金属換算で、二価の鉄イオンの担持濃度が5.0〜10.0wt%である選択還元型排ガス浄化用触媒。チャバサイト型ゼオライトとしてSAPO−34等のシリコアルミノ燐酸塩、SSZ−13等のアルミノケイ酸塩又はこれらの混合物を用いることが好ましく、耐熱性の観点からSAPO−34が好ましい。
【選択図】図9

Description

本発明は、選択還元型排ガス浄化用触媒に関する。
自動車用エンジン等のエンジンからの排ガスには、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物(NOx)等の浄化すべき成分が含有されており、特に酸素過剰雰囲気下で燃焼を行う場合には、NOxを生成しやすくなる。このような酸素過剰雰囲気下で排出されるNOxを、アンモニア等の還元剤を用いて還元する触媒として、選択還元型(SCR:Selective Catalytic Reduction)触媒が知られている。
SCR触媒としては、チャバサイト型ゼオライトに銅(Cu)を担持した排ガス浄化用触媒、及びβ型ゼオライトに鉄(Fe)を担持した排ガス浄化用触媒(Fe担持β型ゼオライト)が知られている。
なお、特許文献1では、硫酸第一鉄水溶液と結晶性シリコアルミノリン酸塩粒子とを混合して得た分散液を、噴霧、乾燥、焼成して、鉄成分を担持した結晶性シリコアルミノリン酸塩粒子の製造方法が記載されている(実施例11等)。
また、特許文献2では、骨格構造に少なくともケイ素、アルミニウム、リンを含むゼオライトに鉄、コバルト、パラジウム、銅等を担持した窒素酸化物浄化用触媒が記載されている(請求項1、段落[0079]等)。
また更に、特許文献3では、ゼオライトに常磁性の鉄(III)イオンを担持した窒素酸化物吸着材が記載されている(請求項1等)。
特開2012−140316号公報 特開2012−148272号公報 特開2007−245050号公報
SCR触媒として知られているCu担持SAPOは、NOxをNHによって還元する反応に対する活性が高いものの、例えば、500℃以上の高温域においては、NHを酸化してNOを生成する反応によってNHを消費してしまうため、NOx浄化率が低下するという問題がある。そのため、排気温度が高くなる使用環境では、Cu担持SAPOを有効に使用できなかった。
一方、SCR触媒としてまた知られているFe担持β型ゼオライトは、高温域でのNHの酸化による消費は少ないものの、β型ゼオライトの結晶構造が不安定であるため、水熱耐久性が低く、排ガス浄化用触媒で要求されている耐熱性を満たしていなかった(特許文献3)。
したがって、高温域においても高いNOx浄化活性を示し、かつ高い耐熱性を有する選択還元型排ガス浄化用触媒が望まれていた。
本発明者らは、鋭意努力した結果、下記の本発明に至ったものである。
(1)チャバサイト型ゼオライト担体の細孔中に二価の鉄イオンが担持されており、かつ
上記担体と前記二価の鉄イオンとの合計を基準として、金属換算で、上記二価の鉄イオンの担持濃度が5.0wt%〜10.0wt%である、
選択還元型排ガス浄化用触媒。
本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒によれば、チャバサイト型ゼオライト担体を用い、かつNHの酸化力がCuよりも低いFeを活性点とし、2価のFeを担持することによって、高温域におけるNOx浄化活性を高められ、NOのないStd.SCR反応条件下でも高い活性を得ることができる。また、本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒によれば、担体としてチャバサイト型ゼオライト担体を用いることによって、高い耐熱性を提供することができる。
図1は、比較例1、比較例3(a)、比較例3(b)、実施例1(a)(参考例)、及び実施例1(b)の試料について、500℃でStandard SCR、Fast SCRを用いて、定常SCR−NOx浄化率をプロットしたグラフである。 図2は、比較例1、及び実施例1(b)の試料について、400℃と500℃でのNHの酸化率の測定結果をプロットしたグラフである。 図3は、実施例1(b)、比較例1、及び比較例2の試料について、初期と耐久後のStandard SCR、Fast SCRを用いて500℃での定常SCR−NOx浄化率を測定し、劣化度を示したグラフである。 図4は、各種ゼオライトの細孔の大きさと、分子サイズとの比較を示すグラフである。 図5は、参考例1、実施例2、比較例6、比較例7、及び比較例8の試料について、500℃でStd SCRによるNOx浄化率(%)の測定結果をプロットしたグラフである。 図6は、参考例1、実施例2、比較例4、比較例5、及び比較例8の試料について、500℃でFast SCRによるNOx浄化率(%)の測定結果をプロットしたグラフである。 図7は、(a)実施例2、(b)比較例6、(c)比較例5、(d)比較例7の試料について、それぞれのFeの酸化状態をXAFSによりFeK端の吸収エネルギーを測定し、規格化し、さらにスペクトル高さ0.2のところでのX線吸収エネルギーの値(=Feの酸化状態の結果)を示すグラフである。 図8は、参考例1、実施例2、比較例6、及び比較例5の試料について、XAFSによるFeの平均酸化数の測定結果をプロットしたグラフである。 図9は、比較例8、参考例2、参考例3、実施例3、及び実施例4の試料ついて、400℃及び500℃でStandard SCRを用いて、定常SCR−NOx浄化率を測定した結果をプロットしたグラフである。 図10は、参考例2、参考例3、実施例3、実施例4の試料について、NH/NOx[−]を測定した結果を示したグラフである。 図11は、実施例3、実施例4の試料について、XAFSによるFeの平均酸化数の算出結果をプロットしたグラフである。 図12は、実施例3の試料について、試料温度(℃)に対するTCD電圧値(μV)の測定結果をプロットしたグラフである。 図13は、比較例9の試料について、試料温度(℃)に対するTCD電圧値の測定結果を相対値でプロットしたグラフである。 図14は、参考例2、参考例3、実施例3、実施例4の試料について、NO−TPD高温ピーク面積/低温ピーク面積の比を測定した結果をプロットしたグラフである。
《選択還元型排ガス浄化用触媒》
本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒では、チャバサイト型ゼオライト担体の細孔中に二価の鉄イオンが担持されており、かつ担体と二価の鉄イオンとの合計を基準として、金属換算で、二価の鉄イオンの担持濃度が5.0wt%〜10.0wt%である。
本明細書中において、鉄イオンを担体に担持するとは、鉄イオンを担体に担持すること、および/または鉄イオンを担体の細孔中にイオン交換することを意味する。
〈担体〉
本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒では、担体として、チャバサイト型ゼオライト担体が用いられる。具体的なゼオライトとしては、例えば、SAPO−34等のシリコアルミノリン酸塩、SSZ−13等のアルミノケイ酸塩、又はこれらの混合物等を使用できる。その中でも、耐熱性の点から、SAPO−34が好ましい。
チャバサイト(CHA)型ゼオライトは、細孔径が約3.8Åであり、分子の大きさがそれ以下であるNHを効率よく濃縮することができる。したがって、本発明によれば、チャバサイト型ゼオライトを担体に使用することで、NHによるNOx還元をより促進させることが可能である。
〈二価の鉄イオン〉
本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒では、チャバサイト型ゼオライト担体の細孔中に二価の鉄イオンが担持されている。
NHの酸化力がCuよりも低いFeを活性点とすることによって、特に高温域におけるNHの酸化による消費を抑制できるので、当該高温域におけるNOx浄化活性を顕著に改善することができる。
本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒では、二価の鉄イオンの担持濃度は、担体と二価の鉄イオンの合計を基準として、金属換算で、5.0wt%〜10.0wt%である。
本明細書中において、金属換算とは金属のみに基づく量をいい、例えばFeCl・4HOの場合、Cl・4HOを含まないFeのみの量をいう。
(なお、本明細書中において、「鉄の担持濃度」を「Fe担持濃度」という場合がある。)
二価の鉄イオンの担持濃度が5.0wt%未満であると、活性点数が少なくなり、最終的に得られる選択還元型排ガス浄化用触媒において十分なNOx浄化活性を達成できない場合がある。一方で、この担持濃度を10.0wt%超に増やしても、担体の細孔内に導入しきれない鉄イオンが単に増加するだけでSCR活性な細孔内の二価の鉄イオンの活性点数を増加させることができない場合がある。
この担持濃度は例えば、5.5wt%以上、6.0wt%以上、6.5wt%以上であってよい。また、この二価の鉄イオンの担持濃度は、例えば、9.5wt%以下、9.0wt%以下、8.5wt%以下であってよい。
そしてこの二価の鉄イオンの担持濃度は、7.0wt%以上、10.0wt%以下であると、より良好なNOx浄化率が得られ、NOx浄化率に対する低いNH酸化比率となり、好ましい。
なお、本発明に関して、鉄の酸化状態は、エックス線吸収微細構造分析(X−ray Absorption Fine Structure:XAFS)によって試料上の任意の部分を測定し、その透過光に基づいてFeK端のX線吸収の強度を規格化したエックス線吸収端近傍構造(X−ray Absorption Near Edge Structure:XANES)のスペクトルの高さ(intensity)が0.2になる場合のX線吸収エネルギーの値を得て、さらにこの値をFe箔、FeO、Fe、Fe等における測定値に基づいて換算した数値をいう(この数値を本明細書中において「平均酸化数」という。)。
本明細書中において、この平均酸化数が1.5以上、2.3未満の鉄イオンを「二価の鉄イオン」という。
またこの二価の鉄イオンは、イオンに加えて、酸化物、水和物を含んでもよい。
下記で詳しく説明するように、本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒では、二価の鉄イオンと所定の内径を有するチャバサイト型ゼオライトとの組み合わせを用い、固相で担持を行うことにより、二価の鉄イオン原料のイオン径とチャバサイト型ゼオライトの内径とが適合して、二価の鉄イオンをチャバサイト型ゼオライト細孔内の安定サイトに配置できること、チャバサイト型ゼオライトの細孔径よりNHの分子の大きさが小さいことから、細孔内にNHを効率よく濃縮できること、そしてこれらの安定した二価の鉄イオンと濃縮されたNHとの組合せにより、銅より酸化力の弱い鉄を用いることでNHの酸化を抑えつつかつ高温域での高いNOx浄化率の両方を達成できることという、チャバサイト型ゼオライトの細孔内に入ることの困難な三価の鉄イオン原料では、達成できない非常に優れた効果を奏する。
それに加えて、本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒では、二価の鉄イオンの担持濃度が、5.0wt%以上、10.0wt%以下であることにより、NH酸化を抑制し、NOxをNHによって還元する反応に対する選択性が高く、かつ高い耐熱性を有することができるものである。
《選択還元型排ガス浄化用触媒の製造方法》
本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒は任意の方法で製造することができ、例えば下記に示す方法で製造することができる。
具体的には、例えば本発明の選択還元型排ガス浄化用触媒は、下記の工程を下記の順で含む方法で製造することができる:
塩化鉄(II)とチャバサイト型ゼオライトとを混合する混合工程、
混合した前記塩化鉄(II)及びチャバサイト型ゼオライトを、酸素非含有雰囲気下で熱処理する熱処理工程、
熱処理した前記塩化鉄(II)及びチャバサイト型ゼオライトに水素還元を行う水素還元工程、及び
任意選択で、水素還元した前記塩化鉄(II)及びチャバサイト型ゼオライトに空気中で酸化処理を行う酸化処理工程。
〈混合工程〉
混合工程では、生成する触媒中に所望の量の鉄を担持するような量比で、塩化鉄(II)とチャバサイト型ゼオライトとを、目視で一様になるまで混合することができる。
混合の様式は、特に制限なく、単なる物理混合であることができる。
本発明に係るチャバサイト型ゼオライトとしては、特に制限なく、市販品を使用でき、塩化鉄(II)としても、特に制限なく、市販品を使用できる。
ただし、後の工程でチャバサイト型ゼオライトの細孔内に鉄を導入することから、塩化鉄中において水和物が少なく塩化鉄の割合が高ければ高いほど好ましい。なお、この例では二価の鉄イオンを供給源として塩化鉄(II)を使用した場合について具体的に説明したが、他の供給源を使用することも可能であり、例えば硝酸鉄(II)、硫酸鉄(II)等を使用することができる。
〈熱処理工程〉
次に混合工程の後で、酸素非含有雰囲気下において熱処理工程を行う。
なんらかの理論に拘束されることを望まないが、この熱処理工程により、鉄の酸化状態を酸素非含有雰囲気中で塩化鉄(III)に酸化させることなく塩化鉄(II)の状態で、チャバサイト型ゼオライトの細孔中に、塩化鉄(II)を取り込み、そして塩化鉄(II)から塩化物イオン(Cl)を除去して細孔内に二価の鉄イオンを形成させていると考えられる。
酸素非含有雰囲気とは酸素を含まない雰囲気のことをいう。よって本発明の酸素非含有雰囲気のガスとしては、酸素を含まなければ、特に制限なく、窒素、アルゴン等の気流下で行うことができる。また、積極的に水素等の還元成分との混合ガスで行ってもよい。
また塩化鉄(II)の水和物がチャバサイト型ゼオライトの細孔径より大きいことからすると、本発明では、塩化鉄(II)が細孔内に取り込まれる際に、水和物としてではなく、水和物を有さない塩化鉄(II)として取り込ませることができていると考えられる。
熱処理工程は、(低温の)前段階熱処理と(高温の)後段階熱処理からなる。
前段階熱処理の温度は、約100℃以上、約120℃以上、約140℃以上、約150℃以上であることができる。また、この温度は、約200℃以下、約180℃以下、約160℃以下であることができる。
そして前段階熱処理の時間は、約2時間以上、約4時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約10時間以上、約12時間以上であることができる。また、この時間は、約26時間以下、約24時間以下、約22時間以下、約18時間以下、約16時間以下、約14時間以下であることができる。
後段階熱処理の温度は、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約520℃以上であることができる。また、この温度は、約650℃以下、約600℃以下、約570℃以下であることができる。
後段階熱処理の時間は、約2時間以上、約4時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約10時間以上、約12時間以上であることができる。また、この時間は、約26時間以下、約24時間以下、約22時間以下、約18時間以下、約16時間以下、約14時間以下であることができる。
〈水素還元工程〉
そして熱処理工程の後で、水素還元工程を行う。水素還元とは、水素気流中又は水素を含む還元性気流中で一定時間所定の温度に保つことをいう。なんらかの理論に拘束されることを望まないが、この工程によって、ゼオライト細孔外や細孔内でも充分イオン交換されなかった鉄のイオン交換が進み、細孔内の負に帯電した安定サイトに二価の鉄イオンを配置でき、それにより高温使用時でもNOx浄化性の高い触媒を製造できると考えられる。
水素還元工程の温度は、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約500℃以上、約550℃以上、約580℃以上であることができる。またこの温度は、約900℃以下、約850℃以下、約800℃以下、約750℃以下、約700℃以下、約650℃以下、約630℃以下であることができる。
水素還元工程の時間は、約1時間以上、約1.5時間以上、約2時間以上であることができる。またこの時間は、約4時間以下、約3.5時間以下、約3時間以下、約2.5時間以下であることができる。
製造された鉄ゼオライト触媒では、上記のような、水素還元工程後に、SCR活性な細孔内鉄イオンの状態で配置されると考えられる。
(酸化処理工程)
さらに水素還元工程の後で、任意選択的に酸化処理工程を行うことができる。酸化処理工程とは、空気中で一定時間所定の温度に保つことをいう。なんらかの理論に拘束されることを望まないが、この工程によって、鉄イオンの安定サイトへの固定がより確実になり、さらに二価又はそれに近い状態に調節できると考えられる。
酸化処理工程の温度は、特に制限なく、約300℃以上、約350℃以上、約400℃以上、約450℃以上、約480℃以上であることができる。また、この温度は、約900℃以下、約850℃以下、約800℃以下、約750℃以下、約700℃以下、約650℃以下、約600℃以下、約550℃以下、約530℃以下であることができる。
酸化処理工程の時間は、約2分間以上、約4分間以上、約6分間以上、約8分間以上、約10分間以上であることができる。また、この温度は、約20分間以下、約18分間以下、約16分間以下、約14分間以下、約12分間以下であることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例において、SAPOは、すべてSAPO−34を意味する。
[実施例1]
[Fe/SAPO(Fe担持濃度:7.4wt%)の調製]
(工程1−1):混合工程・
2gの粉末FeCl・4HO水和物(和光純薬工業(株)、品番:095−00912)と、7gのSAPO−34(三菱樹脂(株))とを、室温下において、乳鉢に入れて混合した。
(工程1−2):熱処理工程
上記の工程1−1で得た試料を、高温炉を用いて、窒素気流下で、150℃12時間前熱処理を行い、次に500℃12時間後熱処理を行った。
(工程1−3):水素還元工程
上記の工程1−2で得た試料を、高温炉を用いて、水素気流下で、600℃で2時間を行い、試料を得た。
[比較例1(Cu/SAPOの使用)]
市販の三菱樹脂(株)製CuSAPO(Cu:2.5wt%、Si:9mol%)を用いた。
[比較例2]
[β型ゼオライト(Fe担持濃度:1wt%)の使用]
β型ゼオライト(Zeochem社、品名:ZEOCAT PB/25、品番3089999.900.900)を使用した。触媒金属としては、金属換算で約1wt%の鉄を用いた。
[比較例3]
[Fe/SAPO(Fe担持濃度:7.4wt%)の調製]
実施例1の工程1−1において、FeClの代わりにFeCl・6HO水和物(和光純薬工業(株)、品番:091−00872)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の触媒を得た。
[触媒活性評価(初期)]
実施例1、並びに比較例1、2及び3の触媒について、固定床流通型反応装置を用いて
触媒活性評価(初期)を評価した。
ここで、実施例1及び比較例3の触媒については、工程1−3の処理前と処理後との両方の触媒について、評価した。工程1−3の処理前の触媒を、それぞれ実施例1(a)(参考例)及び比較例3(a)の触媒とし、工程1−3の処理後の触媒を、それぞれ実施例1(b)及び比較例3(b)の触媒とした。
触媒活性評価(初期)は、下記の工程2−1及び工程2−2によって行った。
(工程2−1)
各試料を、O(10%)+CO(10%)+HO(8%)+N(残余)を含む混合ガスを用いて550℃の温度下10分間処理、次に下記Standard SCR(以下、Std SCRと記載する場合がある。)の混合ガスを用いて550℃の温度下5分前処理した。
(工程2−2)
次に上記の工程2−1の後で、各試料を下記(条件1)〜(条件4)で処理した。
(条件1)Std SCRの混合ガスを用いて500℃で10分間。
(条件2)(条件1)における熱処理を400℃で10分間。
(条件3)Fast SCR混合ガスを用いて500℃で10分間。
(条件4)(条件3)における熱処理を400℃で10分間。
(条件1)〜(条件4)のいずれかにおいて、10分間のうち、9分〜10分までのNO浄化率の平均値を、定常SCR−NO浄化率として測定した。
ここで、Std SCR反応及びFast SCR反応は、それぞれ下記のとおりである:
(Std SCR反応)
4NO+4NH+O=4N+6H
(Fast SCR反応)
NO+NO+2NH=2N+3H
Std SCR及びFast SCRに用いるガスの組成は、以下のようになっている。
Figure 2017100068
触媒量は1g、ガス流量は10リットル/分であった。
まず500℃でのStd SCRにおいて、活性種及び調製方法が異なる場合について評価した。
結果は、比較例1の試料では62.6%、比較例3の試料では(工程1−3)なしで8.4%(比較例3(a))及び(工程1−3)ありで43.6%(比較例3(b))であるのに対し、実施例1の試料では(工程1−3)なしで52.4%(工程1−3)(実施例1(a))(参考例)及び(工程1−3)ありで66.6%(実施例1(b))となった(図1)。
こうしたことから、触媒活性評価(初期)においては、実施例1では、NOを含まないStd SCRであっても、(工程1−3)の水素還元処理を行うことにより、定常SCR−NOx浄化率が高くなり、62.6%のCu/SAPO(比較例1)より高い66.6%(実施例1(b))もの高い活性を示すことが判明した。
そして500℃でのFast SCRを用いて同様に評価すると、結果は下記のとおりであった(図1):
比較例1の触媒:65.2%、
比較例3(a)の試料: 71.4%
比較例3(b)の試料: 76.4%
実施例1(a)(参考例)の試料: 81.8%
実施例1(b)の試料: 82.0%
こうしたことから、初期においては、NOを含むFast SCRでは、(工程1−3)の水素還元処理の有無に関わらず、500℃という高温域では従来のCu/SAPO(比較例1)より、実施例1及び比較例3の活性種がFeである試料の方が高い定常SCR−NOx浄化率を有することが判明した。
以上から、図1に示すように、FeClを用いたSAPOは、水素還元処理を行うことにより比較例1に匹敵するStd SCR活性を示す触媒となったこと、そして三価の鉄塩よりも二価の鉄塩を使用することが好ましく、FeClを用いたSAPO(実施例1)は、FeClを用いたSAPO(比較例3)及びCu/SAPO(比較例1)より、Fast SCRにおける反応活性が高いことが判明した。
[NH酸化率測定]
各試料について、固定床流通型反応装置を用いて、NH(700ppm)+O(10%)+CO(10%)+HO(8%)+N(残余)の混合ガスを用いて、触媒量1g、混合ガスの流量10リットル/分の条件で、400℃、500℃でのNH酸化率を測定した。
上記(工程2−2)後の実施例1(b)と比較例1の試料について上記の[NH酸化率測定]を行った。その結果、図2に示すように、比較例1の試料では、400℃で71.2%、500℃で90.0%と高い率でNHを酸化してしまっていたが、実施例1の試料では、400℃で6.7%、500℃で19.8%とNHの酸化を非常に低く抑えられることが判明した。
そうしたことから実施例1(b)は、Cu/SAPO(比較例1)に比較してNHを酸化してNOを発生する率が遙かに低いという利点を有することが確認された。
そこでこれらの結果に基づいて考察すると次のようになる。
まず一般的には、官能基の数の多さ等から、塩化鉄(III)の方が塩化鉄(II)より分子サイズが大きく、また塩化鉄(II)水和物の方が塩化鉄(II)よりも分子サイズが大きい。そして塩化鉄(II)2・4・6水和物は、空気中において加熱すると分解し、250℃で塩化鉄(III)と塩化水素になることが知られている。
そして、なんらかの理論に拘束されることを望まないが、塩化鉄(III)を用いると、細孔内に拡散しにくく、熱処理工程において、細孔外で塩が分解し、凝集することによって、細孔内の安定サイトに鉄がイオン交換されにくく、定常SCR−NOx浄化率が低いと考えられる(比較例3(a))
これに対し、なんらかの理論に拘束されることを望まないが、本発明に係る触媒では、塩化鉄(II)をゼオライトと固相イオン交換後に、酸素のない酸素非含有雰囲気で熱処理することによって、2価の鉄(II)を細孔径内に入れることができたと考えられる。そして塩化鉄(II)の水和物がチャバサイト型ゼオライトの細孔径より大きいことからすると、塩化鉄(II)が細孔内に取り込まれる際に、水和物としてではなく、水和物を有さない塩化鉄(II)として取り込まれることを達成できたと考えられるものである。その結果、チャバサイト型ゼオライトの小さな細孔径による制約により、塩化物イオンが除去されても、細孔内のイオン交換サイトに安定化されることによりFe3+に酸化されることなく、二価の鉄イオンのままであることにより高活性を達成できたと考えられる。
さらになんらかの理論に拘束されることを望まないが、次に水素還元処理によって十分イオン交換されなかった鉄についてもイオンが交換されて、二価の鉄イオンが細孔内の安定サイトに配置されることが促進されることによって、NOx還元反応中においても、鉄イオン価数変化を防ぎ、その結果触媒のNH−SCR活性が向上したと考えられる。
こうしたことから、本発明に係る触媒では、二価の鉄イオンを担持することにより、NOのないStd.SCR反応条件下でも高温においても高いSCR活性と、さらには鉄イオンを用いることによるアンモニアの酸化率が低い利点と、を併せ持つ触媒を製造できたと考えられる。
[触媒活性評価(耐久)]
耐久評価として、下記の工程2−3及び2−4を行った。
(工程2−3):水熱耐久処理
水をバブリングした空気雰囲気中において、750℃で24時間電気炉中で試料を処理した。
(工程2−4)
上記(条件1)及び(条件3)を使用して上記工程2−2を行った。
図3に、上記[触媒活性評価(初期)]と、[触媒活性評価(耐久)]で得られたNOx浄化率から、下記のように算出した各触媒の劣化度を示す。
劣化度=[(初期のNOx浄化率)−(耐久後のNOx浄化率)]/(初期のNOx浄化率)×100
実施例1(b)は、ゼオライト種がCHA型であっても、活性種がCuである場合(比較例1)、又は活性種がFeであっても、ゼオライト種がβ型である場合(比較例2)に比較して、Std SCR活性およびFast SCR活性が、劣化しにくいことが判明した。
また水熱耐久処理の鉄のイオン状態への影響を見てみると以下のようであった。
まず上記[触媒活性評価(初期)]に記載のように、塩化鉄(II)で調製した実施例1ほどではなかったものの(図1,実施例1(b))、塩化鉄(III)に水素還元処理を行うと一部イオン交換が進行し定常SCR−NOx浄化率は向上した(図1、比較例3(b))。
水熱耐久処理を行うと、ゼオライト種がCHA型であっても活性種がCuである場合(比較例1)、または活性種がFeであってもゼオライト種がβ型である場合(比較例2)は、活性種がゼオライト細孔内のイオン交換サイトに安定化されにくい。β型ゼオライトの場合、細孔が大きいために、細孔外および細孔中の二価の鉄イオンがFe3+に容易に酸化されてしまい、またゼオライトそのものも熱安定性が低く、耐久性があまり良好でなくなった(図3、比較例2)結果、実施例1(b)より、劣化度が大きくなったと考えられる。
こうしたことから、ゼオライトの細孔径に二価の鉄イオンを担持した本発明の触媒の方が優れたSCR活性を有すること、および優れた水熱耐久性を有することが確認された。
また本実施例においては、水素還元処理に関連して、必要に応じて、触媒のイオン交換率を算出し、また任意選択的に必要な場合、水素還元工程後に酸化処理工程を行っている。
(イオン交換率)
イオン交換率とは触媒担体中のイオン交換サイト(酸点)上のHを触媒金属のイオンで置き換えた率のことをいい、触媒金属が二価の鉄イオンの場合、2つの酸点を電気的に当量の1つの二価の鉄イオンが置き換えることになる。
具体的には、イオン交換率は式(金属イオン原子数)×(金属イオン価数)/(触媒担体中の酸点の数)×100によって算出できる。
イオン交換率は、触媒担体上の酸点に対する担持されるFeイオンの量を調整することによって所望の値に調製することができ、約1%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約35%以上とすることができ、一方、約100%以下、約90%以下、約85%以下とすることができる。
(酸化処理工程)
酸化処理工程として次の条件を使用した。
(工程3−1)
試料を電気炉に入れ、空気中500℃で10分間酸化処理した。
下記にさらに酸化処理工程を行った例を示す。
〈参考例1及び実施例2、並びに比較例4〜比較例7〉
詳細を下記表2にまとめているように、実施例1で、(1)(工程1−1)で実施例1のFeCl又は比較例3のFeClのいずれを用いたか、(2)(工程1−3)の処理を行ったか否か、(3)イオン交換率を5%又は37%のいずれかになるように調整したか、の点を除き、実施例1と同じ手順を行い、さらに(工程3−1)を行って試料を得た。(Fe担持濃度はいずれも7.4wt%である。)
Figure 2017100068
[比較例8]
[Cu/SAPO(Cu担持濃度:2.5wt%)]
100gの2.5質量%の酢酸銅水溶液中に100gのSAPO(三菱樹脂(株))を加え、室温下で10分間攪拌後、120℃に加熱して蒸発乾固させて粉末とし、次に空気中800℃で10分間熱処理して、試料を得た。
[触媒活性評価(酸化処理工程有り、Std SCR)]
参考例1、実施例2及び比較例6、7、8の試料について、工程3−1:酸化処理工程を行った後で、上記触媒活性評価(初期)の工程2−1〜工程2−2の(条件1)を用いて触媒活性を評価した。
図5に示すように、NOx浄化率は、参考例1、比較例7が低く、比較例6,比較例8、実施例2がより高かった。特に、FeClを用い水素還元処理を行った(実施例2の)試料は、比較例8のCu/SAPOより高い値を示した。またFeClを用いた場合でも、水素還元工程なし(比較例7)より、水素還元工程あり(比較例6)の方が高い値を示した。
具体的には、水素還元工程の後で、さらに酸化処理工程を行うと、イオン交換率が37%の場合、NOが存在しないStd SCRにおいてもNOx浄化率が、酸化力が高いとされるCu/SAPOに対し(実施例2)/(比較例8)=1.29倍にもなった。
そしてイオン交換率が5%になるとイオン交換率の値に対応したNOx浄化率となるものの(参考例1)、イオン交換率37%で、水素還元工程がなく塩化鉄(III)を用いた試料(比較例7)とほぼ同等のNOx浄化能を示した。
こうしたことから、水素還元工程の後に酸化処理を行なった図5の中でも、特に塩化鉄(II)を用いる場合に、塩化鉄(III)を用いた場合におけるよりも、NOx浄化能を向上させることができることが判明した。
[触媒活性評価(酸化処理工程有り、Fast SCR)]
同様に参考例1,実施例2及び比較例4、5,8の試料について、工程3−1の酸化処理工程を行った後で、上記触媒活性評価(初期)の工程2−1〜工程2−2(条件3)を用いて触媒活性を評価した。
上記試料について、Fast SCR条件下で評価すると、図6に示すように、塩化鉄(II)を用いてイオン交換率が5%しかない試料(参考例1)においても、イオン交換率が37%の試料(実施例2)およびCu/SAPO(比較例8)に近いNOx浄化率を示し、またNOの存在によりNOx浄化能が向上する傾向がある塩化鉄(III)を用いた場合(水素還元工程あり及びなし)も近いNOx浄化能を示した。
上記の結果に示されるように、水素還元工程を行い、さらに酸化処理工程を行うと、塩化鉄(II)の酸化状態が良好な状態に保たれ、製造された触媒がさらに優れた効果を奏することが示された。
[Feの平均酸化数の評価]
図7中に(a)実施例2、(b)比較例6、(c)比較例5、(d)比較例7、それぞれのFeK端について、XAFSを用いて、下記の測定条件で常温で測定しピークトップで規格化したXANESのスペクトルの高さ(intensity)が0.2になる場合のX線吸収エネルギーの値の結果を示す。
なお、通常貴金属の平均酸化数を算出する上では、規格化したスペクトルの高さの0.5の値を使用するのが一般的であるが、Feの場合、構造的な配位環境に由来するプリエッジピークが強くでてFeの酸化状態との相関性のばらつきが大きくなるため、0.5を避けて0.2の場合を使用した。
(測定条件)
絶対エネルギー:0.2eV
図7に示されるように、測定値は、それぞれ、7106(eV)(図7中(a))、7108.8(eV)(図7中(b))、約7112.2(eV)(図7中(c))、約7112.2(eV)(図7中(d))となった。
これらのエネルギー値を、同じ手法で測定したFe箔で約7102(eV)、FeOで約7107.8(eV)、Feで約7109.8(eV)、Feで約7112.2(eV)に基づき、Feの平均酸化数に変換した結果を図8に示す。
図8に示されるように、Feの平均酸化数は、参考例1、実施例2は、0超2未満であり、比較例6は2よりやや大きく、比較例5は3であることが判明した。
これらの触媒のXAFSによる測定結果に基づいたFeの平均酸化数を算出すると、図8に示すように、イオン交換率37%では、塩化鉄(II)を用いた試料では、1.5(実施例2)(イオン交換率5%の参考例1は実施例2のイオン交換率との比に対応した値)と、0超2未満の範囲にあり、一方、塩化鉄(III)を用いた試料(比較例6)では、2超と高めの値であったが、塩化鉄(II)を用いた場合でも、水素還元工程なしだと、3(比較例5)と非常に高くなってしまっていた。
こうしたことから、なんらかの理論に拘束されることを望まないが、二価の鉄イオンを触媒担体の細孔内の安定サイトに配置させることができたとしても、水素還元工程を行わないと、酸化により、二価の鉄イオンがFe3+に酸化されてしまうようであり、逆にFe3+に水素還元工程続いて酸化処理工程を行っても、Fe3+が細孔内の触媒担体の安定サイトに配置されていないため、初期であるにも関わらず触媒活性評価において充分な浄化能を発揮できなかったものと考えられる。
一方、なんらかの理論に拘束されることを望まないが、二価の鉄イオンを細孔内の安定サイトに配置させた上で、水素還元工程、それに続く酸化処理を行うと、Feの平均酸化数が0超2.12以下の良好な状態に保たれて、上記のようにStd SCR条件下でCu/SAPOより良好なNOx浄化能を示し、イオン交換率5%のものでも、数によらず触媒の質によることによって、Fast SCR条件下で他の触媒と同等のNOx浄化能を示すことができたと考えられる。
以上から、塩化鉄(II)を用いた場合には、二価の鉄イオンのまま触媒担体の細孔内の安定サイトに配置させ、水素還元工程を行い、その状態からさらに酸化処理工程を行うとFeをさらに良好に適度な酸化状態できることが判明した。
[実施例3]
[Fe/SAPO(Fe担持濃度:7.4wt%)の調製]
FeClを原料とし、二価の鉄イオンの担持濃度が7.4wt%となるようにした点を除き、上記工程1−1、工程1−2の手順に従い試料を得、φ0.5mm〜1mmの破砕ペレットに成形した。
得られた試料を、固定床流通式の炉を用いて、O(10%)+CO(10%)+HO(8%)+N(残余))の混合ガスで、500℃10分間の酸化前熱処理を行った。
さらに固定床流通式の炉を用いて、H(3%)+CO(10%)+HO(8%)+N(残余)の混合ガスで、600℃で30分の還元熱処理を行った。
[実施例4、参考例2〜参考例3]
[Fe/SAPO(Fe担持濃度:10.0wt%、1.0wt%、及び3.0wt%)の調製]
Fe担持濃度が、それぞれ、10.0wt%(実施例4)、1.0wt%(参考例2)、3.0wt%(参考例3)となるようにした点を除き、実施例3と同様の手順で、試料を得た。
(NOx浄化率測定(Std SCR))
実施例3、実施例4、参考例2、実施例3、比較例8の試料について、上記(工程2−1)を行った後で、上記NOx浄化率測定法の(工程2−2)(条件1)(条件2)を用いて触媒活性を評価した。
図9に示すように、500℃でのStd SCRにおいて、比較例8の試料では50.5%であるのに対し、実施例3の試料では65.9%及び実施例4の試料では67.5%であった。
こうしたことから、実施例3〜実施例4ではNOを含まないStd SCRにおいても、定常SCR−NOx浄化率が高くなり、Cu/SAPO(比較例8)より高い活性を示すことが判明した。
図9に、触媒担体をSAPOとし、活性種(銅又は鉄)及び担持割合が異なる場合を示す。本発明に係る触媒(実施例3)は、Cu/SAPO(比較例8)より、500℃のStd SCRにおける反応活性が高く、二価の鉄イオンの担持割合をさらに上げると、さらに反応活性が高くなった。
一方、Fe担持割合が少ないと(参考例2、参考例3)、400℃及び500℃のいずれのStd SCRにおいても、Cu/SAPO(比較例8)の反応活性に及ばなかった。
上記工程2−1の(条件1)後の参考例2、参考例3、実施例3、実施例4の試料について、500℃において、上記(条件1)の[NO浄化率測定]におけるNH消費量をNO転化量で割った比を算出し、プロットした。
その結果を図10に示す。図10を参照すると、NH3/NOx比はFe担持濃度の増加とともに低下し、特に二価の鉄イオンの担持濃度が5.0wt%以上の場合にNOxの浄化に対してNH3の酸化が顕著に抑制されていることがわかる。
(イオン交換率の測定)
参考例2、参考例3、実施例3、実施例4の試料について、イオン交換率の測定を行った。測定結果は、7%(参考例2)、22%(参考例3)、52%(実施例3)、81%(実施例4)となった。
(Feの平均酸化数の評価)
(a)実施例3、(b)実施例4、それぞれのFeK端について、XAFSを用いて、下記の測定条件で測定しピークトップで規格化したXANESのスペクトルの高さ(intensity)が0.2になる場合のX線吸収エネルギーの値の結果を示す。

(なお、通常貴金属の酸化状態を算出する上では、規格化したスペクトルの高さの0.5の値を使用するのが一般的であるが、Feの場合、構造的な配位環境に由来するプリエッジピークが強くでてFeの酸化状態との相関性のばらつきが大きくなるため、0.5を避けて0.2の場合を使用している。)
(測定条件)
絶対エネルギー:0.2eV
測定値は、それぞれ、7106.5(eV)、7108(eV)となった。
これらのエネルギー値を、同じ手法で測定したFe箔で約7102(eV)、FeOで約7107.8(eV)、Feで約7109.8(eV)、Feで約7112.2(eV)に基づき、Feの酸化数に変換すると、図11に示すように、1.5(実施例3)、2.2(実施例4)であった。
このことから、実施例3,4はいずれも、二価のFeイオンが多いと考えられる。
本発明に係る触媒は、なんらかの理論に拘束されることを望まないが、上記の熱処理工程、水素還元工程などにより、XAFSの測定結果に基づく値に示されるように、二価の鉄イオンの多いより良好な状態で鉄が、ゼオライト細孔内のイオン交換サイトに配置されると考えられるものである。
そして本発明に係る触媒は、このように二価の鉄イオンが、ゼオライト細孔内のイオン交換サイトに配置されることにより、実施例3、実施例4の測定結果に示すように、図9に示すようにStd SCRかつ500℃といった高温下においてもNOx浄化率が高く、さらに図10に示すようにNH酸化率が低いこと、触媒の耐熱性が高いこと、さらにアンモニアの酸化率が低い利点を有することができているものである。
さらに本発明に係る触媒により製造された鉄ゼオライト触媒では、二価の鉄イオンの担持濃度を増やすとさらに高活性が得られるものである。
[比較例9]
[(Feを担持していないSAPO)]
鉄の担持濃度が0wt%、すなわち、鉄を担持していないSAPOを使用した。
(NO−TPD 高温ピーク面積/低温ピーク面積の比の測定)
参考例2、参考例3、実施例3、実施例4の試料について、NO−TPD測定を行った。
すなわち、NOを吸着させた後にHe気流下で試料を加熱し、試料温度(℃)に対し脱離するNOに対応して検出されるTCD電圧値[μV]を測定した。
TCD電圧値のプロファイルから、各試料における上記高温ピーク及び低温ピークを算出した。
実施例3の試料について、測定結果をプロットしたグラフを図12に示す。実施例3では低温ピークと高温ピークとの2つのピークが観察された。
一方、比較例9の試料について、同様に測定すると、図13に示されるように、この試料は低温ピークのみ観察され、高温ピークを有さなかった。
この高温ピークは細孔内のイオン交換サイトにイオン交換した二価の鉄イオンの量に依存し、低温ピークはゼオライトに弱く吸着したNOと考えられる。
そこで、測定時の温度が、230℃超、500℃以下のものを高温ピーク面積とし、50℃以上、230℃以下のものを低温ピーク面積として、低温ピーク面積に対する高温ピーク面積の比を算出した。
高温ピーク面積/低温ピーク面積の比は、NO−TPDに供した触媒当たりの活性点数の多さを示すものといえる。
測定結果は、図14に示すように、Fe担持濃度が増加するにつれて、高温ピーク面積/低温ピーク面積の比が増加し、5〜10wt%で活性点数が多くなっており、Fe担持濃度が約7.4wt%近傍で最大となり、実施例4の場合にそれに次ぐ大きさとなった。この結果は図9,10と良く整合する。
以上から、塩化鉄(II)等の二価の鉄イオンの塩を用いた場合には、熱処理工程、水素還元工程などにより、二価の鉄イオンのまま触媒担体の細孔内の安定サイトに配置させることだけでなく、二価の鉄イオンの担持濃度が、好ましくは約5.0wt%〜約10.0wt%、さらに好ましくは約6.0wt%〜約10.0wt%であることにより、非常に優れた触媒を得ることができることが明らかになった。

Claims (1)

  1. チャバサイト型ゼオライト担体の細孔中に二価の鉄イオンが担持されており、かつ
    前記担体と前記二価の鉄イオンとの合計を基準として、金属換算で、前記二価の鉄イオンの担持濃度が5.0wt%〜10.0wt%である、
    選択還元型排ガス浄化用触媒。
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