JP2017098142A - イオン照射装置及び該装置を用いた表面分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】投射型結像法によるTOF-SIMSにおいて試料に照射される一次イオンの時間広がりを抑えることで、質量分解能、質量精度を向上させる。
【解決手段】一次イオンを試料Sの表面まで導くイオンビーム案内部3として、イオンを直交方向に加速する直交加速部4、無電場の飛行空間5、反射電場を形成するイオンリフレクタ6を含む、時間収束性を達成するリフレクトロンTOFMSのイオン光学系を用いる。イオンリフレクタとしてデュアルステージ式のものを用い、マミリン解を満たす二次収束位置よりも奥側の、一様電場の直線的な勾配を有する電位に所定の非線形の電位分布を示す補正電位を重畳させることによって、直交加速部3から出射されるイオンパケットの時間的な広がりはエネルギの三次以上のずれまで補正され、高い時間収束性が達成される。これにより、ごく薄いシート状の一様なイオンパケットが試料Sに照射されるため、高い質量分解能の良好な質量分析イメージング画像を得ることができる。
【選択図】図2
【解決手段】一次イオンを試料Sの表面まで導くイオンビーム案内部3として、イオンを直交方向に加速する直交加速部4、無電場の飛行空間5、反射電場を形成するイオンリフレクタ6を含む、時間収束性を達成するリフレクトロンTOFMSのイオン光学系を用いる。イオンリフレクタとしてデュアルステージ式のものを用い、マミリン解を満たす二次収束位置よりも奥側の、一様電場の直線的な勾配を有する電位に所定の非線形の電位分布を示す補正電位を重畳させることによって、直交加速部3から出射されるイオンパケットの時間的な広がりはエネルギの三次以上のずれまで補正され、高い時間収束性が達成される。これにより、ごく薄いシート状の一様なイオンパケットが試料Sに照射されるため、高い質量分解能の良好な質量分析イメージング画像を得ることができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、試料表面の分析を行うために該試料に対してイオンを照射するイオン照射装置、及び該装置を用いて試料の表面分析を行う、二次イオン質量分析装置などの表面分析装置に関する。
試料表面上の物質の二次元分布を観測する一手法としてイメージング質量分析と呼ばれる手法が知られている。イメージング質量分析では、レーザ光や一次イオンを一次粒子として試料表面に照射し、それに応じて試料表面から放出されたイオン(二次イオン)を質量分析する。一次粒子としてレーザ光を用いる装置としては、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法によるイオン源と飛行時間型質量分析計(TOFMS)とを組み合わせたマトリクス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI−TOFMS)が一般的である。
一方、一次粒子として一次イオンを用いる手法は二次イオン質量分析(SIMS=Secondary Ion Mass Spectrometry)法と呼ばれ、そのための装置としては、質量分析器として飛行時間型質量分析器を用いた飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)がよく知られている。TOF−SIMSはMALDI−TOFMSに比べて感度の点で不利であるものの空間分解能に優れる。そのため、TOF−SIMSを利用したイメージング質量分析は、シリコンウエハ等の工業用材料や製品の表面解析などに広く利用されるようになってきている。
TOF−SIMSを利用したイメージング質量分析では、試料上の或る程度広い領域内における各種イオンの強度分布を得るために次の二つの結像法が利用されている(非特許文献1参照)。
(1)走査型結像法:一次イオンビームを微小径に収束させて試料表面に照射し、その照射位置が試料表面上で移動するように該ビームで試料表面を二次元的に走査する。そして、試料上の測定点から放出されたイオンについての質量分析を測定点毎に逐次行うことで、試料上の所定の領域内の各測定点におけるマススペクトルデータを収集する。
(2)投射型結像法:一次イオンビームの径(断面積)を広げて試料表面に照射し、イオンビームが照射された試料上の広い範囲から放出されたイオンを、その二次元的な位置関係が維持されるように二次元検出器まで導いて検出する。それによって、試料上の異なる測定点から発したイオンの位置情報と質量情報とを同時に取得する。
(1)走査型結像法:一次イオンビームを微小径に収束させて試料表面に照射し、その照射位置が試料表面上で移動するように該ビームで試料表面を二次元的に走査する。そして、試料上の測定点から放出されたイオンについての質量分析を測定点毎に逐次行うことで、試料上の所定の領域内の各測定点におけるマススペクトルデータを収集する。
(2)投射型結像法:一次イオンビームの径(断面積)を広げて試料表面に照射し、イオンビームが照射された試料上の広い範囲から放出されたイオンを、その二次元的な位置関係が維持されるように二次元検出器まで導いて検出する。それによって、試料上の異なる測定点から発したイオンの位置情報と質量情報とを同時に取得する。
(1)の走査型結像法では多数の測定点毎に質量分析を順次実行する必要があるため、試料上の測定対象領域が広いと測定に要する時間が長くなる。これに対し、(2)の投射型結像法では、試料上の測定対象領域が広い場合でも1回の質量分析によって該領域内の全ての測定点におけるマススペクトルデータを得ることができる。そのため、走査型結像法に比べて測定所要時間を格段に短縮することができ、測定のスループットが高いという大きな利点がある。
こうしたTOF−SIMSでは、一次イオンが試料に照射されることで該試料から二次イオンが飛び出し、該イオンが飛行を開始した時点を起点とした飛行時間を計測する。そのため、試料上における二次イオンの発生時刻のばらつきが、得られたデータにおける質量分解能や質量精度の低下に繋がる。そこで一般には、一次イオンをパルス化して試料に照射する。これは、MALDI−TOFMSにおいてパルス化したレーザ光を試料に照射するのと同様である。
しかしながら、一次イオンの時間広がりを抑えるためにイオンビームのパルス幅を狭くしようとすると、一次イオンの量が少なくなり検出感度が低下する。一方、パルス幅を広くすると一次イオンの量は増加するものの時間広がりが広くなる。こうしたことから、走査型結像法、投射型結像法のいずれにおいても、試料に照射されるイオン量をできるだけ増やしつつ、その時間広がりを抑えることが必要になる。
また、投射型結像法によるTOF−SIMSでは、その進行方向に薄いシート状の一次イオンが試料に照射される。この場合、試料上の多数の測定点に到達する一次イオンの到達時刻にずれがあると、測定点毎に二次イオンの発生時刻のばらつきが生じる。そのため、正確な質量分析イメージング画像を取得するには、各測定点における一次イオンの到達時点の時間的な広がりをできるだけ抑えるというだけでなく、測定対象領域内における異なる測定点間でのイオンの到達時刻のずれも抑える必要がある。即ち、ごく薄いシート状の一次イオンが同時に試料上の測定対象領域に到達するようにする必要がある。
測定点間での一次イオンの到達時刻のずれの要因の一つは、空間的に広がった一次イオンビームを斜め方向から試料表面に照射するために、一つのイオンパケット内で、その断面内の位置によって各イオンの行路長が不揃いであることである。この問題を解決するために、特許文献1に記載のTOF−SIMSでは一次イオンの軌道を偏向させる手法が採られている。この手法によれば、一次イオン発生部から試料表面に至るまでの一次イオンの行路長の差異によって生じる、異なる測定点間での一次イオンの試料表面への到達時刻のばらつきは抑制される。
しかしながら、該特許文献1の段落[0045]にも記載されているように、上記手法によっては、一次イオン発生部から射出される時点において各イオンが存在する位置の空間的なばらつき等に起因する到達時刻のばらつき(つまりイオンビームの時間的な広がり)は解消されない。実際には、こうした要因によるイオンビームの時間的な広がりは数百nsecから数μsec程度存在する。そのため、イオンの行路長の差異による時間的なばらつきを補正したとしても、TOFMSにおいて十分に高い質量分解能を得るための、一次イオンビームのパルス幅が数nsec程度以下、という厳しい条件を満たすことは困難である。
このように投射型結像法を用いたTOF−SIMSにおいて高質量分解能、高質量精度を実現するには、一次イオン発生部からイオンが射出される際にイオンビームの断面内の各位置でイオンの進行方向にその位置が或る程度ばらついている場合であっても、一次イオンが試料表面に照射される時点ではイオンビームの時間的な広がりが十分に抑えられていることが重要である。
また上記のような問題点はTOF−SIMSだけでなく、イオンを試料の表面に照射し、それに応じて該試料から放出されたイオン以外の、例えばX線を含む光、電子、中性粒子などを検出する様々な表面分析装置においても同様である。
「[技術分類]2−8−2−1 質量分析全般技術/分布測定/二次元/MSイメージング」、特許庁、[online]、[平成27年10月6日検索]、インターネット<URL: http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/mass/2-8-2.pdf>
ワイリー(W.C. Wiley)、ほか1名、「タイム-オブ-フライト・マス・スペクトロメーター・ウィズ・インプルーブド・リゾリューション(Time-of-flight mass spectrometer with improved resolution)」、レビュー・オブ・サイエンティフィック。インスツルメンツ(Rev. Sci. Instrum.)、Vol.26 、1955年、pp.1150-1157
マミリン(B.A. Mamyrin)、ほか3名、「ザ・マス・リフレクトロン、ア・ニュー・ノンマグネティック・タイム・オブ・フライト・マス・スペクトロメータ・ウィズ・ハイ・リゾリューション(The mass-reflectron, a new nonmagnetic time-of-flight mass spectrometer with high resolution)」、ソビエト・フィジックス(Soviet Physics)-JETP 37、1973年、p.45-48
グイルハウス(M. Guilhaus)、ほか2名、「オーソゴナル・アクセラレイション・タイム・オブ・フライト・マス・スペクトロメトリ(Orthogonal Acceleration Time-of-flight Mass Spectrometry)」、マス・スペクトロメトリー・レビュー(Mass Spectrom. Rev.)、Vol.19、2000年、p.65-107
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、イオンを試料に照射して該試料表面の分析を行う際に、試料表面に到達するイオンの時間的なばらつきを抑えることができるイオン照射装置を提供することである。
また本発明の第2の目的は、特に投射型結像法によるイメージング質量分析等の表面分析を行うために、試料上の広い範囲にイオンを照射するイオン照射装置において、一つのイオン照射点(つまりは測定点)でのイオンの時間的な広がりを抑えるだけでなく、異なるイオン照射点間でのイオンの到達時刻のばらつきも抑えることである。
また、本発明のさらに他の目的は、イオンを試料に照射して該試料表面の分析を行う、TOF−SIMS等の表面分析装置において、試料表面に到達するイオンの時間的なばらつきを抑えることによって分析の精度や分解能などを向上させることである。
TOFMSでは一般に、試料成分由来のイオンに一定の初期エネルギを与えることで加速して飛行空間に導入し、該飛行空間中を飛行して来たイオンを検出器により検出する。質量電荷比が同じであるイオンは同時に検出器に到達することが望ましいが、例えばイオントラップの内部空間に保持されているイオンに初期エネルギを与えて加速する場合や、直交加速部に入射して来たイオンに初期エネルギを与えてその入射方向と略直交する方向に加速する場合には、加速されるときのイオンの初期位置にばらつきがあり、このばらつきが検出器へのイオンの到達時刻のばらつきをもたらすことがある。この問題を解消するために、従来、ワイリー・マクラーレン(Wiley-MacLaren)の条件を満たす二段加速型のイオン源を使用したTOFMS(非特許文献2参照)や、マミリン(Mamyrin)が提案したデュアルステージ方式のリフレクトロンを使用したTOFMS(非特許文献3参照)が知られている。また、本発明者らは、これら既存のTOFMSよりもさらにイオンの時間収束性を高めた、理想的なリフレクトロンにより近い構成のTOFMSを特許文献2で提案している。
これらTOFMSでは程度の差はあるものの、イオンの飛行開始時点での位置のばらつき等に起因するエネルギのばらつきがあっても、検出器にイオンが到達する時刻のばらつきを抑える、つまりは時間収束性を高めることができる。本発明者は、このようなTOFMSにおける、検出器へ到達するイオンの時間収束性の問題が、上述したTOF−SIMS等におけるイオン照射装置での試料表面に到達するイオンの時間的なばらつきの問題と実質的に同じである点に着目し、検出器でのイオンの時間収束性を高めることを意図したTOFMSの構成をイオン照射装置に利用することに想到し、本発明をするに至った。
即ち、上記課題を解決するためになされた本発明に係るイオン照射装置は、試料の表面にイオンを照射するイオン照射装置であって、
a)質量電荷比が同一であるイオンから成るイオンビームを形成するビーム形成部と、
b)前記ビーム形成部により形成されたイオンビームをパルス化して試料の表面まで導くイオンビーム案内部と、
を備え、前記イオンビーム案内部は、
b1)入射したイオンビームをその進行方向と略直交する方向にパルス的に加速する直交加速部と、
b2)該直交加速部により加速されたイオンが飛行する飛行空間と、
b3)前記直交加速部で加速され前記飛行空間中を飛行して前記試料の表面に到達するイオンパケットが時間収束するように、前記直交加速部に所定の加速電圧を印加する、及び/又は、前記飛行空間中に配置され、イオンを電場の作用によって折り返すイオンリフレクタに所定の電圧を印加する電圧発生部と、
を含むことを特徴としている。
a)質量電荷比が同一であるイオンから成るイオンビームを形成するビーム形成部と、
b)前記ビーム形成部により形成されたイオンビームをパルス化して試料の表面まで導くイオンビーム案内部と、
を備え、前記イオンビーム案内部は、
b1)入射したイオンビームをその進行方向と略直交する方向にパルス的に加速する直交加速部と、
b2)該直交加速部により加速されたイオンが飛行する飛行空間と、
b3)前記直交加速部で加速され前記飛行空間中を飛行して前記試料の表面に到達するイオンパケットが時間収束するように、前記直交加速部に所定の加速電圧を印加する、及び/又は、前記飛行空間中に配置され、イオンを電場の作用によって折り返すイオンリフレクタに所定の電圧を印加する電圧発生部と、
を含むことを特徴としている。
本発明に係るイオン照射装置においてイオンビーム案内部は、直交加速方式のリニア型TOFMS又はリフレクトロン型TOFMSのイオン光学系と実質的に同じ構成を有し、それらTOFMSにおいてイオンを検出する検出器に代えて、測定対象である試料が設置された構成が採られる。即ち、本発明に係るイオン照射装置では、イオンビーム案内部にあって、直交加速部で加速され、飛行空間中を飛行して来たイオンパケットが試料表面に照射される。
上記イオンビーム案内部としてリニア型TOFMSのイオン光学系と実質的に同じ構成が採られる場合には、ワイリー・マクラーレンの条件を満たす二段加速型の直交加速部(以下、ワイリー・マクラーレン型加速部という場合がある)を用いればよい。それによって、飛行空間中を飛行するイオンパケットの時間的な広がりは一次のエネルギのずれまで補正され、直交加速部に入射して来たイオンビームに、エネルギのばらつきをもたらす位置のばらつきがあっても、イオンパケットが試料表面に到達する時点で該イオンパケットの時間的な広がりを或る程度抑えることができる。
またイオンビーム案内部としてリフレクトロン型TOFMSのイオン光学系と実質的に同じ構成が採られる場合には、マミリンが提案したデュアルステージ方式のリフレクトロンを用いればよい。非特許文献3、特許文献2等に記載されているように、マミリン解を満たすデュアルステージ式リフレクトロンは、飛行空間中を飛行するイオンパケットの時間的な広がりを、二次のエネルギのずれまで補正することができる。そのため、上述したワイリー・マクラーレン型加速部を用いたリニア型TOFMSのイオン光学系を採用した場合に比べてイオンパケットの時間収束性を高めることができる。
ただし、マミリン解を満たすデュアルステージ式リフレクトロンを用いても、3次以上のエネルギのずれは補正されない。そこで、さらに一層イオンパケットの時間収束性を高めたい場合には、特許文献2に記載されているような理想リフレクトロン又はそれに準じたリフレクトロンを用いればよい。こうしたリフレクトロンは、イオンリフレクタによる反射電場におけるイオン光軸上の電位勾配が少なくとも一部で非線形である。
具体的には、例えば電圧発生部は、イオンリフレクタの中心軸に沿った座標をXとしたとき、該イオンリフレクタの中心軸に沿って、該イオンリフレクタの全体に亘り電位が単調に変化し、その結果、逆関数XA(U)が一意的に得られる所定の電位UA(X)が該イオンリフレクタの中空領域に形成されるように該イオンリフレクタに電圧を印加することで、該イオンリフレクタ内部の座標X0で電位E0である位置にN次収束位置を形成するとともに、座標X0であるN次収束位置を始点とする奥側の空間において、該座標X0の近傍では{U(X)−E0}N+3/2に比例する式で近似でき、且つ前記座標X0から奥側で滑らかな関数となる所定の補正電位XC(U)を前記所定の電位XA(U)に重畳させるようにイオンリフレクタに電圧を印加すればよい。
この場合、補正電位XC(U)が重畳されている範囲では、反射電場におけるイオン光軸上の電位勾配は非線形である。
この場合、補正電位XC(U)が重畳されている範囲では、反射電場におけるイオン光軸上の電位勾配は非線形である。
イオンリフレクタがデュアルステージ式である場合には、該イオンリフレクタ内部の二次収束位置を始点とする該始点の境界付近に、N=2である{U(X)−E0}3.5に比例する補正電位を重畳するか、或いは、該イオンリフレクタ内部の一次収束位置を始点とする該始点の境界付近に、N=1である{U(X)−E0}2.5に比例する補正電位を重畳すればよい。
このようなイオンリフレクタを用いたリフレクトロン型TOFMSでは、加速時点でイオンがその進行方向に空間的に広がっていても、イオンリフレクタでイオンを反射させた後、検出器上でイオンを時間的に収束させることができ、それによって高い質量分解能を実現できる。したがって、検出器の代わりに測定対象の試料を設置することで、該試料の表面においてイオンを高い精度で時間的に収束させることができる。
本発明に係るイオン照射装置において、ビーム形成部は一次イオンを生成するイオン源を含む。このイオン源におけるイオン生成手法は特に限定されないが、例えば、液体金属イオン源、クラスタイオン源、ガスフィールドイオン源、放電を利用したイオン源などを用いることができる。また、イオン源において複数の質量電荷比を有するイオンが生成される場合、ビーム形成部は、イオン源で生成された各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別するイオン選別部を備える構成とするとよい。イオン選別部としては、四重極マスフィルタなどの、質量分析計において使用されている各種の質量分離器を用いることができる。
また本発明に係るイオン照射装置において、イオンビーム案内部はイオンビームの空間的な重心を調整する重心調整部をさらに有し、それによって試料表面上で一次イオンが照射される位置を調整又は変更できる構成とするとよい。具体的に、重心調整部は例えば、直交加速部にイオンを導入する際にイオンに付与する初期エネルギ(つまり導入電圧)を調整する調整部や、直交加速部に導入されるイオンの位置をずらす偏向電極及び該電極に所定の電圧を印加する電圧発生部などとすることができる。
また本発明に係るイオン照射装置において、ビーム形成部はイオンを蓄積するイオン蓄積部を有し、該イオン蓄積部に一旦蓄積したイオンを出射して直交加速部に導入する構成としてもよい。イオン蓄積部としては、電場によってイオンを閉じ込めるリニア型イオントラップなどを用いることができる。
この構成によれば、イオン蓄積部で空間密度を高めたイオンビームを直交加速部に送り込むことができるので、より多くの量のイオンを試料に照射することができる。それによって、イオン照射に応じて試料から放出された二次イオンなどを観測する際に、その感度を向上させることができる。
また本発明に係るイオン照射装置では、ごく狭い断面積に絞ったイオンビームを試料に照射する構成とすることもできるが、試料上の二次元的に或る程度広い範囲に同時にイオンを照射する構成とすることもできる。
そのために本発明に係るイオン照射装置において、ビーム形成部は直交加速部へのイオンの入射方向と該直交加速部における加速方向との両方に略直交する方向に広がった所定幅のイオンビームを該直交加速部へ入射し、該直交加速部は入射した所定幅のイオンビームをその入射方向に所定長さだけパルス的に加速することにより、二次元的に広がりを有するイオンを試料に照射する構成とするとよい。
この構成では、二次元的に広がりを有する、つまりはシート状のイオンパケットが試料に照射されることになるが、そのイオンの広がりの面と試料表面とが平行になっていないと、そのイオン照射面内での各照射位置におけるイオン到達時刻にばらつきが生じる。そこで、この発明に係るイオン照射装置では、試料を保持する試料ステージを備え、該試料ステージは傾動自在であることが好ましい。この場合、試料ステージの傾動量やその方向をユーザが調整できるようにするとよい。この構成によれば、ユーザが試料ステージの傾きを適宜微調整することによって、試料の表面と入射するイオンの広がりの面とが平行になるようにして、試料表面にイオンが照射される時間のずれを軽減することができる。また、平板状である試料の底面と表面との平行性が悪い(つまりは試料表面が傾斜している)場合であっても、試料ステージを傾けることで、試料の表面と入射するイオンの広がりの面とが平行になるようにすることができる。
また、同様の効果を達成するために、試料ステージを傾けるのではなく、直交加速部からイオンを射出する際のイオンパケットの面の傾きを調整してもよい。そのためには、直交加速部の前段に、例えば印加電圧に応じて直交加速部に導入されるイオンの進行方向の角度や該イオンの幅方向の傾きを変更可能である偏向器を設けたり、或いは、イオンを直交加速部に導入する際に該直交加速部においてイオンを押し出す押出電極やイオンを引き込む引込み電極に印加する電圧を調整したりすればよい。
また本発明に係る表面分析装置は、上述した本発明に係るイオン照射装置を用いた表面分析装置であって、該イオン照射装置により試料の表面に照射されたイオンに対し、該試料から二次粒子として放出されたイオン(つまりは二次イオン)、中性粒子、光子、又はフォノンのいずれかを観測することを特徴としている。
上述したようなイオンビームをごく狭い断面積に絞って試料に照射するイオン照射装置をこうした表面分析装置に用いれば、イオンビームが照射された試料上の微小な領域から発したイオン、中性粒子、光子、又はフォノンのいずれかを観測することができる。こうした表面分析装置を用いて試料上の或る程度広い範囲に対する観測を行いたい場合には、試料上でイオンビームが照射される位置を連続的に又はステップ状に走査しながら、それぞれ異なる位置(測定点)における観測を行えばよい。これは走査型結像法による観測に相当する。
一方、試料上の二次元的に或る程度広い範囲に同時にイオンを照射するイオン照射装置を表面分析装置に用いれば、試料上の或る程度広い範囲に対するイオン、中性粒子、光子、又はフォノンのいずれかの観測を一斉に行うことができる。これは投射型結像法による観測に相当する。
本発明に係る表面分析装置は特に、試料から放出された二次イオンを飛行時間型質量分析計(TOFMS)で計測するTOF−SIMSに有用である。何故なら、上述したように、TOF−SIMSにおいて高い質量分解能、質量精度を得るためには一次イオンが試料表面に照射される時点でそのイオンビームの時間的な広がりが十分に抑えられていることが重要であるが、本発明に係るイオン照射装置を用いることで、そうしたイオンビームの時間的な広がりをかなり抑えることが可能であるからである。
特に、試料上の二次元的に或る程度広い範囲に同時にイオンを照射するイオン照射装置をTOF−SIMSに用いることで、試料上の二次元的な範囲に対する高質量分解能、高質量精度のイメージング質量分析を短い時間で行うことができる。
本発明に係るイオン照射装置によれば、パルス化したイオンを試料に照射する際に、試料表面にイオンが到達する時点でのその到達時刻のばらつきを抑えることができる。それによって、試料表面にイオンが照射される時間が短くなるだけでなく、より空間的に密度の高いつまりは量の多いイオンをごく短時間に試料表面に照射することができる。したがって、本発明に係るイオン照射装置を例えばTOF−SIMSに用いることによって、一次イオンビームの時間広がりに起因する質量分解能の低下を改善し、高い質量分解能、高い質量精度を実現することができるとともに、測定感度を向上させることができる。
また本発明に係るイオン照射装置によれば、試料上の或る程度広い範囲にイオンを照射する場合に、その範囲内の各位置にそれぞれイオンが到達する時刻のばらつきを抑えることもできる。即ち、イオンビームの進行方向に対しては空間的にごく狭く、該進行方向に直交する又は斜交する方向に空間的に略一様に広がっているシート状のイオンビームを試料に照射することができる。したがって、本発明に係るイオン照射装置を例えば投射型結像法によるTOF−SIMSに用いることによって、試料上の二次元的な測定対象領域内の各位置から二次イオンが飛び出すタイミングが揃うため、その位置毎に正確なマススペクトルを得ることができる。それによって、正確な質量分析イメージング画像を取得することができる。
さらにまた、本発明に係るイオン照射装置を用いることで、例えば、試料表面上でナノ秒程度の高い時間分解能で以て、入射するイオンと固体表面上の物質との化学反応などを観察することが可能となり、従来では実現できなかった新たな表面分析手法が実現可能となる。
以下、本発明に係るイオン照射装置を用いた表面分析装置の一実施例であるTOF−SIMSについて、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本実施例のTOF−SIMSの全体構成図、図2はビーム案内部の構成図である。
図1は本実施例のTOF−SIMSの全体構成図、図2はビーム案内部の構成図である。
図1に示すように、本実施例のTOF−SIMSは、一次イオンを生成するイオン源1と、イオン源1で生成されたイオンの中で特定の質量電荷比m/zを有するイオンのみを選別する質量選別部2と、直交加速部4、飛行空間5、イオンリフレクタ6を含むイオンビーム案内部3と、測定対象である試料Sを保持する試料保持部7と、一次イオンの照射に応じて試料Sから放出された二次イオンを質量電荷比に応じて分離する飛行時間型質量分析器8と、二次元的に広い検出面を有する検出器9と、該検出器9による検出データを処理するデータ処理部10と、を備える。
イオン源1としては、SIMSで広く用いられている液体金属イオン源やクラスタイオン源、ガスフィールドイオン源、その他の放電現象を利用した各種プラズマイオン源など、様々な方式のイオン源を用いることができる。質量選別部2としては、電極に印加する電圧を変えることによって選別するイオンの質量電荷比値や質量電荷比範囲などを任意に制御することができる四重極マスフィルタのほか、質量電荷比に対応する飛行時間に応じて分離されたイオンのうちの特定の質量電荷比を有するイオンをゲート電極によって選別する方法、磁場を用い特定の質量電荷比を有するイオンを選別する方法、電場と磁場とを重畳させるウィーンフィルタ、などを用いることができる。なお、イオン源1において生成されるイオンの質量電荷比が揃っている場合には、質量選別部2を設ける必要はない。
イオンビーム案内部3及び飛行時間型質量分析器8の構成を、図2を参照しつつ詳述する。
図2に示すように、直交加速部4は、平板状の押出電極41、グリッド状の引込電極42、複数の加速電極43、及び、それら各電極41〜43にそれぞれ所定の電圧を印加する加速電圧生成部44、を含む。質量選別部2からZ軸方向に送られて来るイオンビームは、平行に配置された押出電極41と引込電極42との間の偏平な加速空間45に導入される。なお、このとき、イオンビームのX軸方向の空間的な広がりは小さいが、Y軸方向には或る程度の広がり(ここではイオンビームのY軸方向の幅をByとする)を持つ。
図2に示すように、直交加速部4は、平板状の押出電極41、グリッド状の引込電極42、複数の加速電極43、及び、それら各電極41〜43にそれぞれ所定の電圧を印加する加速電圧生成部44、を含む。質量選別部2からZ軸方向に送られて来るイオンビームは、平行に配置された押出電極41と引込電極42との間の偏平な加速空間45に導入される。なお、このとき、イオンビームのX軸方向の空間的な広がりは小さいが、Y軸方向には或る程度の広がり(ここではイオンビームのY軸方向の幅をByとする)を持つ。
所定のタイミングで加速電圧生成部44から押出電極41及び引込電極42にそれぞれ所定の直流電圧が印加されると、加速空間45には引出電場が形成され、そのときに該加速空間45を通過していたイオンはX軸方向にエネルギを付与されて引込電極42の外方に引き出される。さらにイオンは、加速電極43への印加電圧によって形成されている加速電場によりX軸方向に加速され、X軸方向の速度成分とZ軸方向の速度成分とを合成した方向(X軸に対してZ軸方向に傾斜した方向)へと飛び出す。上述したように加速空間イオンビームはY軸方向にByの幅を有し、またZ軸方向に或る程度の長さ(ここではこの長さをBzとする)を持つイオンが同時に加速される。したがって、広さがBz×Byの矩形状であってごく薄い(X軸方向の高さがごく小さい)シート状のイオンパケットが直交加速部4から射出される。
飛行空間5は真空雰囲気に維持されるハウジング51内に形成され、外部の電場や磁場の影響を受けない。即ち、飛行空間5はイオンが電場や磁場の影響を受けずに飛行する自由飛行空間である。上述したように直交加速部4から射出されたイオンパケットは飛行空間5内に投入され飛行する。投入されたイオンの進行方向に向かって飛行空間5の奥側には、多数のガードリング電極61、バックプレート62、及び反射電圧生成部63を含むイオンリフレクタ6が設置され、このイオンリフレクタ6により形成される反射電場によってイオンパケットは反射される。そして、反射されたイオンパケットは飛行空間5中を再び飛行し、最終的に試料Sの表面に到達する。試料保持部7は、五軸(X,Y,Z,Θ,Φ)方向に移動自在であって上面に試料Sが載置される試料ステージ71と、該試料ステージ71を上記五軸方向にそれぞれ移動させるモータ等の駆動機構を含むステージ駆動部72を含む。
飛行時間型質量分析器8は、試料Sの上方に設置された加速電極81と、上記ハウジング51内に形成されている飛行空間82と、を含むリニア型の構成である。即ち、上述したようなシート状のイオンパケットが一次イオンとして試料Sに照射されると、試料Sの表面に存在する各種成分に由来する二次イオンが試料Sから飛び出す。この二次イオンは、図示しない電圧生成部から加速電極81に印加されている電圧によって形成される加速電場によって一定の初期エネルギを付与され、無電場、無磁場である飛行空間82へと送り出される。そして、飛行空間82中を飛行する間に二次イオンは質量電荷比に応じて分離され、異なる質量電荷比を有する二次イオンは時間差を有して検出器9に到達する。
二次イオンは、一次イオンが照射された試料S上の二次元領域全体から飛び出すが、この二次イオンはZ軸、Y軸方向の位置をほぼ保ったまま飛行して検出器9に到達する。検出器9はこうして二次元的に広がった状態で到達する二次イオンをその位置毎に検出し、到達したイオンの量に応じた検出データを出力する。したがって、データ処理部10では、試料S上の(Z,Y)座標が異なる位置毎に飛行時間とイオン強度との関係を示すスペクトルデータが得られ、飛行時間を質量電荷比に換算することでマススペクトルデータが求まる。そして、このマススペクトルデータに基づいて、任意の質量電荷比における質量分析イメージング画像が作成される。
このように本実施例のTOF−SIMSは、投射型結像法によるイメージング質量分析が可能なTOF−SIMSである。
このように本実施例のTOF−SIMSは、投射型結像法によるイメージング質量分析が可能なTOF−SIMSである。
こうしたTOF−SIMSにおいて、試料Sの表面に照射される一次イオンは次のような条件を満たしていることが望ましい。
(1)試料Sの表面に照射されるイオンパケットのZ軸、Y軸方向の広がりはそれぞれ数mm〜数cm程度であり、そのイオン照射領域内でイオンができるだけ一様な分布を持つこと。
(2)試料Sの表面と平行な面に収束されたシート状であるイオンパケットに含まれる全てのイオンが同時に試料Sの表面に到達すること。即ち、イオン照射領域内の異なる各位置においてイオンの時間収束性が高く、且つ、その各位置間でのイオンの到達時間のずれもできるだけ小さいこと(ただし、ここでは試料Sの表面は平坦であるとする)。
(1)試料Sの表面に照射されるイオンパケットのZ軸、Y軸方向の広がりはそれぞれ数mm〜数cm程度であり、そのイオン照射領域内でイオンができるだけ一様な分布を持つこと。
(2)試料Sの表面と平行な面に収束されたシート状であるイオンパケットに含まれる全てのイオンが同時に試料Sの表面に到達すること。即ち、イオン照射領域内の異なる各位置においてイオンの時間収束性が高く、且つ、その各位置間でのイオンの到達時間のずれもできるだけ小さいこと(ただし、ここでは試料Sの表面は平坦であるとする)。
特に上記(2)の条件は、高い質量分解能、高い質量精度を達成するうえで重要である。本実施例のTOF−SIMSでは、本発明者らが開発した直交加速型質量分析装置用の理想リフレクトロン(特許文献2参照)をイオンビーム案内部3に利用することによって、試料Sの表面上におけるイオンの高い時間収束性を実現している。
まず、上記理想リフレクトロンを用いたリフレクトロン型TOFMSの一例について図3を参照して要点を説明する。ここでいう「理想リフレクトロン」とは、或るエネルギE0以上では飛行時間広がりについて無限の高次の項までエネルギ収束が可能なものであり、最も重要なのはエネルギについての完全等時性である。TOFMSにおいて初期エネルギがEであるイオンの飛行時間T(E)は次の(1)式で表すことができる。
T(E)=T(E0)+(dT/dE)(E−E0)+(1/2)(d2T/dE2)・(E−E0)2+(1/6)(d3T/dE3)(E−E0)3+… …(1)
完全等時性とは(1)式において一次以上の全ての微分係数の項が0になることである。
T(E)=T(E0)+(dT/dE)(E−E0)+(1/2)(d2T/dE2)・(E−E0)2+(1/6)(d3T/dE3)(E−E0)3+… …(1)
完全等時性とは(1)式において一次以上の全ての微分係数の項が0になることである。
図3(a)はリフレクトロン型TOFMSの概略構成図であり、上はイオン軌道が載るZ−X平面上、下はY−X平面上の構成である。イオンは加速領域100で初期エネルギを付与され、無電場飛行空間101中を飛行する。そして、イオンリフレクタ102により反射されて無電場飛行空間101中を戻り検出器103に到達する。図3(b)はイオン光軸上の概略的な電位分布を示す。
このリフレクトロンは、マミリンらが提案したデュアルステージ式リフレクトロンを基にしたものである。デュアルステージ式リフレクトロンにおけるイオンイオンリフレクタは、図3中に1stとして示した第1ステージと2ndとして示した第2ステージという二段階の一様電場により構成される。無電場飛行空間101及びイオンリフレクタ102の第1ステージにおける電位分布は図3(b)中に実線で示すとおりである。イオンリフレクタ102の第2ステージにおける電位分布は図3(b)中に実線及び点線の直線で示すとおりである。即ち、第1、第2ステージにおける電場はいずれも一様電場であるから、電位勾配は直線状であり、第1ステージと第2ステージとではその直線の傾きが相違する。よく知られているように、この構成では、各ステージの電位勾配つまりは電場を適切に定めることによって、イオンが検出器103に到達する時点での飛行時間の広がりを該イオンが持つエネルギの二次微分まで補正することができる。即ち、(1)式における一次及び二次の微分係数が0になる。しかしながら、この場合には、3次以上の微分係数は0にならない。なお、上述したように2段の一様電場において最適化されたモデルの電位分布XA(U)をベース電位と呼ぶ。
これに対し、本発明者らが開発した理想リフレクトロンでは、上記ベース電位XA(U)に適切に算出した補正電位XC(U)を重畳して、その和の電位XR(U)=XA(U)+XC(U)が完全等時性を満たすようにする。マミリン解によって達成される二次までの時間収束性を乱すことがないように、補正電位XC(U)を重畳させる始点は第2ステージ中に定まるマミリン解における二次収束位置とし、この位置よりも奥側だけに補正電位XC(U)を重畳する。詳しい説明は省略するが、理論的な補正電位XC(U)は次の(2)式で表される。
また、理想的には、補正電位XC(U)の重畳を開始する点付近における該補正電位XC(U)は半整数であるの3.5のべき乗で近似されている。即ち、XC(U)∝(U−1)3.5である。
ベース電位XA(U)に上述した補正電位XC(U)を加えた電位分布を有する電場がイオンリフレクタ102内に形成されるように、該イオンリフレクタ102を構成する各ガードリング電極に印加する電圧を定めることによって、検出器103に到達するイオンの完全等時性を実現することができる。
ベース電位XA(U)に上述した補正電位XC(U)を加えた電位分布を有する電場がイオンリフレクタ102内に形成されるように、該イオンリフレクタ102を構成する各ガードリング電極に印加する電圧を定めることによって、検出器103に到達するイオンの完全等時性を実現することができる。
なお、デュアルステージ式リフレクトロンではなく、ワイリー・マクラーレンの条件を満たす一段階の一様電場により一次収束を達成したシングルステージ式のリフレクトロンにおいても同様に、ベース電位に補正電位を重畳することで、理想リフレクトロンを実現することができる。ただし、デュアルステージ式リフレクトロンのほうが非線形である補正電位が小さくて済むので、不所望のイオンの発散と軸外れによる時間収差の影響を抑え易い。
上記理想リフレクトロンは、加速領域100から発したイオンが検出器103に到達する際のイオンの完全等時性を実現するものであるから、基本的には、検出器103を試料Sに置き換えることで該試料S表面でのイオンの時間収束性を実現することが可能である。ただし、図3(a)に示したようなTOFMSの場合、イオンリフレクタ102を出たイオンが検出器103に達するまでの経路は無電場であるのに対し、図2に示したように、本実施例のTOF−SIMSでは、試料Sの上方空間には加速電極81による二次イオン引き出しのための加速電場が形成されており、一次イオンもその加速電場を通過することになる。そのため、イオンの完全等時性を実現するためのイオンリフレクタ6内部の電位分布は、上記加速電場の影響も考慮して算出される。
なお、ごく薄いシート状のイオンパケットが試料Sに到来したとしても、そのイオンパケットの広がりの面と試料Sの表面とが平行でないと、その面内の位置によってイオンが到達する時刻がばらつくことになり、二次イオンの質量分解能の低下に繋がる。そこで、本実施例のTOF−SIMSでは、ステージ駆動部72により試料ステージ71を適宜傾動させることで、試料Sの表面と一次イオンであるイオンパケットの広がり面との平行性を確保できるようにしている。具体的には、ユーザが、二次イオンスペクトルにおいて特定の質量電荷比を有するピークの幅を観察しながら、その幅ができるだけ小さくなるようにつまりは質量分解能ができるだけ良好になるように試料ステージ71の傾きを微調整すればよい。
次に、上述した理想リフレクトロンの構成をイオンビーム案内部3に用いたときの、全イオン飛行経路上の電位分布と、その効果を実証するためのシミュレーションについて説明する。
図4はイオン軌道のシミュレーション計算の際に想定したイオンビーム案内部3の電極等の幾何形状及び配置を示す図、図5は図4に示した構成における全イオン飛行経路上の電位分布を示す図、図6は図5中のイオンリフレクタ6における詳細な電位分布を示す図である。図4及び図5では、各部を示す符号と区別するためにサイズ(単位はmm)を示す数値を括弧[]内に記載している。
図4はイオン軌道のシミュレーション計算の際に想定したイオンビーム案内部3の電極等の幾何形状及び配置を示す図、図5は図4に示した構成における全イオン飛行経路上の電位分布を示す図、図6は図5中のイオンリフレクタ6における詳細な電位分布を示す図である。図4及び図5では、各部を示す符号と区別するためにサイズ(単位はmm)を示す数値を括弧[]内に記載している。
無電場の自由飛行空間以外の、イオンを加速又は減速させる領域は、イオンを初期的に加速するための加速領域Pa、加速領域Paから排出されたイオンが無電場である飛行空間5を通過した後に該イオンを反射させる反射領域Pb、反射されたイオンが飛行空間5を再び通過した後に該イオンを試料Sの表面に照射する試料保持領域Pcの三つである。加速領域Pa内の加速空間45においてイオンは、Z軸方向に初期エネルギEz=600eVで進行しているものとする。押出電極41と引込電極42との間の間隔は4mmであって、それら電極41、42にそれぞれ印加される電圧及びその後のX軸方向の長さ40mmの領域に配置された加速電極43に印加される電圧によって、イオンはX軸方向に加速される。
加速空間45におけるイオンのX軸方向の初期広がりは2mmであると想定する。このイオンの初期的なX軸方向の位置の相違のために、飛行空間5中を飛行するイオンは10.6〜14.6keVの幅の運動エネルギを持つことになる。これらイオンがイオンリフレクタ6による反射領域Pbで反射された後(ただし、イオンが持つエネルギに応じて反射領域Pbへの侵入長は異なる)、再び飛行空間5中を飛行する。上述したように、試料保持領域Pcには、低い初期運動エネルギを持って生成される二次イオンを加速するための電場が常に形成されている。そのため、図5に示すように、正極性である一次イオンを試料Sに入射して該試料Sから正極性である二次イオンを出射させる場合には、試料Sに向かう一次イオンは試料保持領域Pcにおいて進行するに伴い減速される力を受けることになる。
上述したように、試料S表面においてイオンの等時性を実現するためのイオンリフレクタ6内部での電位分布を算出する際には、試料保持領域Pcにおける減速電場も考慮する。具体的には、特許文献2に記載された方法に従い、10keVを超えたエネルギを持つイオンに対して飛行時間が等しくなるように、マミリン解を満たす二次収束条件(a,p)を求め(ここでaは二次収束点の位置、pはイオンリフレクタの第1ステージで失われるイオンエネルギの割合)、その二次収束点の位置(a={87+18√(5)}/6)(このときp=4/5)よりも奥の領域における非線形の補正電位を求め、これを電位勾配が直線であるベース電位に加えて理想的な電位分布を算出した。図6から分かるように、補正後の電位勾配は僅かにカーブしているだけで、線形電位からのずれは僅かであることが分かる。
実際にイオンの等時性が実現できているか否かをイオン軌道のシミュレーションで調べた結果を図7〜図9に示す。図7は直交加速部4から試料S表面までの間のイオン軌道、図8は直交加速部4付近でのイオン軌道の拡大図、図9は試料Sの表面付近でのイオン軌道の拡大図である。
シミュレーション計算では、m/z=1000であるイオンが加速空間45をZ軸方向に初期運動エネルギ600eVで飛行しており、X軸方向の初期位置の相違によって、自由飛行空間に入射したときのイオンの運動エネルギが10.6〜14.6keVの幅でばらついている状況を想定した。イオンは加速領域Paから出て反射領域Pbで反射された後に試料保持領域Pcに到達するが、その間、Z軸方向には等速度運動を続ける。このため、飛行空間5における運動エネルギが10.6〜14.6keVの幅を持つイオンパケットに対して飛行時間が等しくなるのであれば、図8において位置ずれがある全てのイオンは試料Sの表面で同一のZ座標位置に到達する筈である。実際に、図9に示した結果から、X軸方向に異なる位置から出発した全てのイオンが試料S表面では1点、つまりは同一のZ座標位置に到達していることが確認できる。即ち、これは理想的なイオン等時性が実現されていることを意味する。こうしたシミュレーションの結果によれば、X軸方向に初期位置の幅(運動エネルギの幅)を持つイオンパケットに対し、飛行時間は21.858μsecを中心に1nsec以内のばらつきの範囲に収まることが確認できた。即ち、高いレベルの等時性を実現できていることが確認された。
また、上述したように一次イオンが試料Sの表面に衝突した際に生じる二次イオンの軌道のシミュレーション結果を図10及び図11に示す。図11は図10に示した二次イオンの軌道の試料Sの表面付近での拡大図である。ここでは、m/z=500である二次イオンが初期エネルギ2eV、広がり角度±10°で試料Sの表面から離脱するとしたと仮定した。図10、図11から、試料Sの表面から発したイオンは初期位置分布をほぼ保ったまま試料保持領域Pcを通り抜けている様子が確認できる。したがって、試料保持領域Pcの直後に適切なイオン結像レンズ系を配置し、その後に位置敏感型の検出器を用いてイオンを検出することで、投射型結像法によるTOF−SIMSを実現することができることが分かる。
上記実施例では、特許文献2に記載の、広いエネルギ広がりを持つイオンパケットに対し高いイオン等時性を実現できる理想リフレクトロンをイオンビーム案内部3として用いていた。しかしながら、試料Sの表面に到達するイオンパケットの時間広がりの許容度を広げるのであれば、必ずしも理想リフレクトロンを用いなくてもよい。
最も簡単であるのは、上述したワイリー・マクラーレンの条件を満たす二段加速型のイオン源を使用したリニアTOFMSと同等のイオン光学系をイオンビーム案内部3として用いる構成である。この構成を図12に示す。直交加速部4で一次イオンを加速して飛行空間5に導入し、飛行空間5中を飛行して来た一次イオンを試料S表面に到達させるのは上記実施例と全く同じである。上記説明のように、この場合には一次の時間収束性のみが達成されるから、上述した理想リフレクトロンを用いた場合に比べると時間収束性はかなり劣る。
最も簡単であるのは、上述したワイリー・マクラーレンの条件を満たす二段加速型のイオン源を使用したリニアTOFMSと同等のイオン光学系をイオンビーム案内部3として用いる構成である。この構成を図12に示す。直交加速部4で一次イオンを加速して飛行空間5に導入し、飛行空間5中を飛行して来た一次イオンを試料S表面に到達させるのは上記実施例と全く同じである。上記説明のように、この場合には一次の時間収束性のみが達成されるから、上述した理想リフレクトロンを用いた場合に比べると時間収束性はかなり劣る。
また別の構成として、マミリンらによるデュアルステージ方式のリフレクトロンをイオンビーム案内部3に用いてもよい。これは上記実施例で補正電位をベース電位に加えない場合に相当し、このときには二次の時間収束性を達成することができる。したがって、ワイリー・マクラーレン型加速器を用いた場合に比べれば時間収束性は優れ、理想リフレクトロンを用いた場合に比べると時間収束性は劣る。
このように本実施例のTOF−SIMSでは、TOFMSにおいて検出器に到達するイオンの時間収束性を改善するように構成された様々な飛行時間型質量分離器におけるイオン光学系をイオンビーム案内部3として利用することができる。
このように本実施例のTOF−SIMSでは、TOFMSにおいて検出器に到達するイオンの時間収束性を改善するように構成された様々な飛行時間型質量分離器におけるイオン光学系をイオンビーム案内部3として利用することができる。
また、上記実施例のTOF−SIMSでは、Z軸方向に直交加速部4に入射された一次イオンビームをZ軸方向に所定長さだけ切り出して加速するため、直交加速部4に連続的にイオンビームが供給される場合には、直交加速部4における、いわゆるデューティサイクルの問題によりイオンの利用効率は低くなる。つまり、イオン照射に利用されずに廃棄されるイオンが多くなる。これは直交加速方式のTOFMSと同様である(非特許文献4参照)。そこで、直交加速部4でのイオンの利用効率を改善するために、質量選別部2において電場(又は磁場)の作用によって一時的にイオンを捕捉し、蓄積していたイオンをパケット状に直交加速部4に送り込み、このイオンの送り込みとタイミングを合せて直交加速を行うようにしてもよい。イオンを蓄積するためには、例えばリニア型のイオントラップなどを用いればよい。
また、試料Sの表面上に一次イオンを照射する領域の位置を調整するには、Z軸方向については、直交加速部4にイオンを導入する際にイオンに付与する初期運動エネルギ(つまり直交加速部4に導入されるイオンが持つZ軸方向のエネルギ)を調整すればよい。一方、Y軸方向の位置については、初期運動エネルギを変更しても対応できないので、直交加速部4へ入射するイオンをY軸方向に偏向させる偏向電極を該直交加速部4の直前に設けるようにするとよい。このようにして、試料Sが載置された試料ステージ71をY軸−Z軸面内で移動させることなく、試料S上で一次イオンが照射される領域の位置を調整したり変更したりすることができる。
また、上記実施例では、試料ステージ71を傾動させることで試料Sの表面と該表面に入射するイオンパケットの広がり面との平行性を確保するようにしていたが、試料ステージ71を機械的に傾ける代わりに、直交加速部4において出射される際のイオンパケットの広がり面を傾けるようにしてもよい。そのためには、直交加速部4の前段にビーム偏向器を設け、該ビーム偏向器により直交加速部4へ入射するイオンの入射方向をYZ面に対して僅かに傾けるようにするとよい。或いは、イオンを直交加速部4に導入する際の押出電極41又は引込電極42への印加電圧を調整することによってもイオンパケットの面と試料Sの表面との平行性を調整することができる。この場合にも、上記説明と同様に、ユーザが、二次イオンスペクトルにおいて特定の質量電荷比を有するピークの幅を観察しながら、その幅ができるだけ小さくなるように調整すればよい。
また上記実施例では、一次イオンの質量電荷比を揃えるために直交加速部4の手前に質量選別部2を設けていたが、この質量選別部2に代えて、無電場の飛行空間5内に電場で開閉するブラインド(非特許文献4参照)を設け、このブラインドで特定の質量電荷比を有するイオンを選別するようにしてもよい。
また上記実施例は本発明に係るイオン照射装置を投射型結合法によるTOF−SIMSに適用したものであり、観測対象の二次粒子は試料S表面から放出された脱離イオンであった。しかしながら、同様の構成のイオン照射装置は、試料Sの表面の或る程度広い範囲に、ごく薄いシート状の一次イオンを一様に照射し、それに応じて試料Sから放出されるイオン以外の様々な粒子や電磁波等を観測する様々な表面分析装置に利用することができる。例えば、イオン照射に応じて試料Sから放出される光、X線、中性粒子などを観測する表面分析装置一般に利用が可能である。より具体的には、空間的に異なる分布を持つ固体表面に一次イオンを一様に照射し、その後の該固体表面における化学反応を光又は脱離粒子などをナノ秒の時間分解能で測定する表面分析装置などへの適用が可能である。
また、薄いシート状である試料に対しイオンを照射し、該試料を透過して来たイオン(二次イオン)を観測する透過型の分析手法も考えられる。要するに、シート状のイオンを一次粒子として用い、二次粒子として光子や、原子、分子などのイオン、準安定粒子などを観測する全ての表面分析装置に本発明は適用可能である。
さらにまた、投射型結像法によるTOF−SIMSやそのほかの表面分析装置のみならず、走査型結像法によるTOF−SIMSやそのほかの表面分析装置にも本発明は有用であることは明らかである。
また、上記実施例や上記様々な変形例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…イオン源
2…質量選別部
3…イオンビーム案内部
4…直交加速部
41…押出電極
42…引込電極
43…加速電極
44…加速電圧生成部
45…加速空間
5…飛行空間
51…ハウジング
6、102…イオンリフレクタ
61…ガードリング電極
62…バックプレート
63…反射電圧生成部
7…試料保持部
71…試料ステージ
72…ステージ駆動部
8…飛行時間型質量分析器
81…加速電極
82…飛行空間
9、103…検出器
10…データ処理部
S…試料
100、Pa…加速領域
101…無電場飛行空間
Pb…反射領域
Pc…試料保持領域
2…質量選別部
3…イオンビーム案内部
4…直交加速部
41…押出電極
42…引込電極
43…加速電極
44…加速電圧生成部
45…加速空間
5…飛行空間
51…ハウジング
6、102…イオンリフレクタ
61…ガードリング電極
62…バックプレート
63…反射電圧生成部
7…試料保持部
71…試料ステージ
72…ステージ駆動部
8…飛行時間型質量分析器
81…加速電極
82…飛行空間
9、103…検出器
10…データ処理部
S…試料
100、Pa…加速領域
101…無電場飛行空間
Pb…反射領域
Pc…試料保持領域
Claims (13)
- 試料の表面にイオンを照射するイオン照射装置であって、
a)質量電荷比が同一であるイオンから成るイオンビームを形成するビーム形成部と、
b)前記ビーム形成部により形成されたイオンビームをパルス化して試料の表面まで導くイオンビーム案内部と、
を備え、前記イオンビーム案内部は、
b1)入射したイオンビームをその進行方向と略直交する方向にパルス的に加速する直交加速部と、
b2)該直交加速部により加速されたイオンが飛行する飛行空間と、
b3)前記直交加速部で加速され前記飛行空間中を飛行して前記試料の表面に到達するイオンパケットが時間収束するように、前記直交加速部に所定の加速電圧を印加する、及び/又は、前記飛行空間中に配置され、イオンを電場の作用によって折り返すイオンリフレクタに所定の電圧を印加する電圧発生部と、
を含むことを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1に記載のイオン照射装置であって、
前記イオンビーム案内部はイオンリフレクタを含み、
前記電圧生成部は、前記イオンリフレクタによる反射電場におけるイオン光軸上の電位勾配が少なくとも一部で非線形となるように該イオンリフレクタに所定の電圧を印加することを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項2に記載のイオン照射装置であって、
前記電圧生成部は、前記イオンリフレクタの中心軸に沿った座標をXとしたとき、該イオンリフレクタの中心軸に沿って、該イオンリフレクタの全体に亘り電位が単調に変化し、その結果、逆関数XA(U)が一意的に得られる所定の電位分布UA(X)が該イオンリフレクタの中空領域に形成されるように該イオンリフレクタに電圧を印加することで、該イオンリフレクタ内部の座標X0で電位E0である位置にN次収束位置を形成するとともに、座標X0であるN次収束位置を始点とする奥側の空間において、該座標X0の近傍では{U(X)−E0}N+3/2に比例する式で近似でき、且つ前記座標X0から奥側で滑らかな関数となる所定の補正電位XC(U)を前記所定の電位XA(U)に重畳させるように、前記イオンリフレクタに電圧を印加することを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1に記載のイオン照射装置であって、
前記イオンビーム案内部は、マミリン解を満たすデュアルステージ方式のイオンリフレクタを含むことを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1に記載のイオン照射装置であって、
前記直交加速部は、ワイリー・マクラーレン条件を満たす二段加速法による加速を行うものであることを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のイオン照射装置であって、
前記ビーム形成部は、液体金属イオン源、クラスタイオン源、ガスフィールドイオン源、又は、放電を利用したイオン源のいずれか一つを含むことを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオン照射装置であって、
前記ビーム形成部は、特定の質量電荷比を有するイオンを選別する選別部を含むことを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン照射装置であって、
前記イオンビーム案内部は、イオンビームの空間的な重心を調整する重心調整部をさらに有することを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載のイオン照射装置であって、
前記ビーム形成部はイオンを蓄積するイオン蓄積部を有し、該イオン蓄積部に一旦蓄積したイオンを出射して前記直交加速部に導入することを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1〜9のいずれか1項に記載のイオン照射装置であって、
前記ビーム形成部は前記直交加速部へのイオンの入射方向と該直交加速部における加速方向との両方に略直交する方向に広がった所定幅のイオンビームを該直交加速部へ入射し、該直交加速部は入射した所定幅のイオンビームをその入射方向に所定長さだけパルス的に加速することにより、二次元的に広がりを有するイオンを試料に照射することを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項10に記載のイオン照射装置であって、
試料を保持する試料ステージを備え、該試料ステージは傾動自在であることを特徴とするイオン照射装置。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載のイオン照射装置を用いた表面分析装置であって、
前記イオン照射装置により試料の表面に照射されたイオンに対し、該試料から二次粒子として放出されたイオン、中性粒子、光子、又はフォノンのいずれかを観測することを特徴とする表面分析装置。 - 請求項12に記載の表面分析装置であって、
試料から放出された二次イオンを飛行時間型質量分析計で計測する飛行時間型二次イオン質量分析装置であることを特徴とする表面分析装置。
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