JP2017095617A - 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および成形体、並びにそれらの製造方法 - Google Patents

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および成形体、並びにそれらの製造方法 Download PDF

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力弥 津川
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Abstract

【課題】高温低圧条件下で成形した場合でも十分な活性エネルギー線硬化性を保持する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層を有する、意匠性や耐薬品性に優れる加飾成形品の製造に好適に用いることのできる積層体、該積層体の製造方法および該積層体を用いる成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】
活性エネルギー線硬化性樹脂および融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層を有する積層体、および該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層を有する成形体に関する。
携帯電話などの携帯情報端末機器、ノート型パソコン、家電製品、自動車内外装部品などには樹脂成形品が多く使用されている。製品のコモディティ化が進む中、これらの製品においては、デザインによる差別化の需要が高まっている。樹脂成形品への塗料を用いない加飾方法として、印刷や着色を施した基材に硬化層を設けた加飾フィルムを用いる、インモールド転写成形法やフィルムインサート成形法、真空成形法などが提案されている。
消費者の価値観の多様化により昨今求められている少量多品種生産に対応するためには、成形型を用意する必要が無く、被着体の形状や材質に制限が無い手法である真空成形法が好ましく、さらには生産性および形状追従性を考慮すると、3次元表面加飾成形法と称される真空成形法[Three dimension Overlay Method(以下、「TOM成形」と称する)、例えば特許文献1参照]がより好ましい。
また、デザインの複雑化により、曲面や深絞りの形状が従来よりも多用される傾向にある。そのため、加飾フィルムには高い延伸性が必要となり、それに伴い硬化層にも延伸性が求められている。例えば特許文献2には、アフターキュアタイプの活性エネルギー線硬化性樹脂層が提案されている。すなわち、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の溶媒の蒸発または少量の活性エネルギー線の照射を行い、未硬化ないし半硬化状態の活性エネルギー線硬化性樹脂層を有するフィルムの賦形および射出成形による被着体との一体化を行った後、該未硬化ないし半硬化状態の活性エネルギー線硬化性樹脂層を完全に硬化させ、成形体を得る。
特開2002−067137号公報 特開2012−040814号公報
真空成形法においてアフターキュアタイプの活性エネルギー線硬化性樹脂層を有するフィルムを使用する場合、未硬化ないし半硬化状態の活性エネルギー線硬化性樹脂層が、50℃以上の高温かつ20kPa以下の低圧条件下に置かれることがある。特にTOM成形においては、積層体の両面が加熱および減圧される。また、ホットメルトタイプの粘接着材を用いる場合や、積層体に深絞りの形状を賦形する場合には、さらに高温低圧条件下での成形が必要となり、得られた活性エネルギー線硬化性成形体は、活性エネルギー線を長時間照射しても、活性エネルギー線硬化性樹脂層が十分に硬化しないことがあった。
本発明の目的は、高温低圧条件下に置かれても十分な活性エネルギー線硬化性を保持する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層を有する積層体および該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層を硬化させて得られる成形体、並びに前記積層体および前記活性エネルギー線硬化性成形体の製造方法を提供することにある。
本発明によれば、前記の目的は、
[1] 活性エネルギー線硬化性樹脂および融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
[2] 前記活性エネルギー線硬化性樹脂が(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂である、[1]の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
[3] 前記活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量が10〜99.9質量%の範囲であり、かつ前記融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤の含有量が0.1〜10質量%の範囲である、[1]または[2]の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
[4] 基材および[1]〜[3]のいずれかの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層を少なくとも有する積層体、
[5] 前記基材が非晶性樹脂からなる、[4]の積層体、
[6] 前記非晶性樹脂がアクリル系樹脂である、[5]の積層体、
[7] 前記アクリル系樹脂が、メタクリル系樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を含むアクリル系樹脂であり、
前記メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を80質量%以上有し、
前記ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含むメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を少なくとも1以上有し、かつメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を10〜80質量%、アクリル酸エステル共重合体ブロック(b2)を90〜20質量%の割合で含み、
メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、メタクリル系樹脂(A)が10〜99質量部であり、ブロック共重合体(B)が90〜1質量部である、[6]の積層体、
[8] さらに粘接着層を有する、[4]〜[7]のいずれかの積層体、
[9] 基材を準備する工程;
活性エネルギー線硬化性樹脂と融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を準備する工程;および
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を前記基材の少なくとも片面に塗布して活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する工程;
を少なくとも有する、[4]の積層体の製造方法、
[10] [4]〜[8]のいずれかの積層体を準備する工程;
成形型または被着体と前記積層体をチャンバーボックスに収容する工程;
前記チャンバーボックス内を減圧する工程;
前記積層体により前記チャンバーボックス内を二分する工程;
前記成形型または前記被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を、前記成形体または前記被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くして、前記成形型または前記被着体を前記積層体で被覆して活性エネルギー線硬化性成形体を得る工程;および
前記活性エネルギー線硬化性成形体に活性エネルギー線を照射する工程;
を有する成形体の製造方法、
[11] [1]〜[3]のいずれかの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層を有する成形体、
[12] [10]の方法で得られる、[11]の成形体
を提供することにより達成される。
本発明の積層体は、50℃以上の高温かつ20kPa以下の低圧条件下で成形する場合も十分な活性エネルギー線硬化性を保持できるので、意匠性や耐薬品性に優れる加飾成形品の製造、特に真空成形法による加飾成形品の製造に好適に用いることができる。
本発明の積層体の層構成の一例である。
[活性エネルギー線硬化性樹脂組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化性樹脂および融点が40℃以上の活性エネルギー線硬化開始剤とを含む。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン系樹脂および(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ系樹脂などを用いることができる。これらの活性エネルギー線硬化性樹脂は工業的に製造され市販されているものも用いることができ、例えば(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂としては、DIC株式会社製のユニディックV−6850、日立化成社製のヒタロイド7975および大成ファインケミカル社製のアクリット8KX−078などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するウレタン系樹脂としては、日立化成社製のヒタロイド7902−1、大成ファインケミカル社製のアクリット8UH−078、DIC株式会社製のユニディックRC29−124などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ系樹脂としては、荒川化学工業社製のビームセット1200Wなどが挙げられる。これらの中でも、タック性および取扱い性の観点から(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂が好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂の重量平均分子量は25000以上であることが好ましい。このようなアクリル系樹脂を含む本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、溶媒を蒸発させる操作で半硬化し、係る樹脂組成物からなる層を有する積層体はロール巻き取りが可能になる。さらに、この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる活性エネルギー線硬化性樹脂層は、200%を超えて延伸されても割れや基材からの剥がれが生じず、基材と同様に賦形される。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCと称する)分析により標準ポリスチレンを検量線作成に用いた換算値として算出した値である。
活性エネルギー線硬化性樹脂として(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂を用いる場合、成形性(延伸性)並びに硬化後の耐薬品性および耐擦傷性の観点から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物におけるアクリル系樹脂の含有量は好ましくは10質量%〜99.9質量%であり、より好ましくは20質量%〜99.9質量%、さらに好ましくは35質量%〜99.9質量%である。
本発明に用いる活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などが挙げられるが、反応速度が速く、活性エネルギー線発生装置が比較的安価であるという点から、紫外線が好ましい。
本発明に用いる活性エネルギー線硬化開始剤は、その融点が40℃以上であり、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは80℃以上である。このような活性エネルギー線硬化開始剤を使用すると、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を高温低圧条件下で成形した場合でも活性エネルギー線硬化開始剤が揮散せず、活性エネルギー線の照射により前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させることができる。
かかる活性エネルギー線硬化開始剤の構造は特に限定されず、例えば、α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、モノアシルホスフィンオキサイド系化合物、ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物などを挙げることができ、硬化速度などを勘案して適宜選択することができる。以下に、各化合物の一例を例示する。
α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE127)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE184)などが挙げられる。
α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE369E)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE907)などが挙げられる。
オキシムエステル系化合物としては、2−(ベンゾイルオキシイミノ)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1−オクタノン(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE OXE01)、6−[1−(アセチルオキシイミノ)エチル]−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル(2−メチルフェニル)ケトン(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE OXE02)などが挙げられる。
モノアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニル(2,4,6−トリメキシベンゾイル)ホスフィンオキシド(例えばBASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO)などが挙げられる。
ビスアシルホスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(例えばBASFジャパン株式会社製;IRGACURE819)などが挙げられる。
これらの中でも、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が硬化した後の黄変が小さいことから、ヒドロキシアルキルフェノン系化合物およびアシルホスフィンオキサイド系化合物が好ましい。これらの活性エネルギー線硬化開始剤は、それぞれ単独で使用してもよく、また複数を組み合わせて使用してもよい。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線硬化開始剤の含有量は、硬化性の観点から好ましくは0.4質量%〜15質量%であり、より好ましくは1質量%〜12質量%である。活性エネルギー線硬化開始剤の含有量が0.4質量%よりも少ないと、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が十分に硬化せず、耐薬品性に劣る傾向となる。活性エネルギー線硬化開始剤の含有量が15質量%よりも多いと、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の耐熱性が低下するとともに、真空成形や延伸が困難になる傾向となる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、有機溶媒を含有していてもよい。有機溶媒としては、塗料を調製する際に通常使用される有機化合物を使用でき、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;メタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール;セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類またはこれらの混合物が挙げられる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線を照射して得られる硬化層の硬度及び耐擦傷性の向上を目的として、無機ナノ粒子や有機ナノ粒子などの各種フィラー、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの滑剤を含有していてもよい。
無機ナノ粒子の粒子径(ダイナミック光散乱光度計により測定)は10〜100nmが好ましく、20〜50nmがより好ましい。100nmを超えると白化などの外観品位が悪化する傾向となり、10nmよりも小さいと硬度及び耐擦傷性の向上効果が小さくなる傾向となる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、耐久性の向上を目的とする紫外線吸収剤、光安定剤;塗工性の改善を目的とするレベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、粘弾性調整剤など;機能性向上を目的とする帯電防止剤、防汚剤、難燃剤などをさらに含有してもよい。
[積層体]
本発明の積層体は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層、および基材を少なくとも有する。
本発明の積層体は、130℃かつ0.5kPa条件下で成形した後の活性エネルギー線硬化性樹脂層の硬化率が30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。ここで硬化率とは、積層体の活性エネルギー線硬化性樹脂層の吸光度に対する、活性エネルギー線硬化性樹脂に活性エネルギー線を照射して得られた硬化物の吸光度の比を意味する。130℃かつ0.5kPa条件下で成形した後の硬化率が30%以上であると、活性エネルギー線硬化性樹脂層が十分に硬化し、硬化層は耐薬品性に優れる。
また、本発明の積層体は、130℃かつ0.5kPa条件下で成形した後の活性エネルギー線硬化性樹脂層の硬化性保持率が55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。ここで硬化性保持率とは、成形前の活性エネルギー線硬化性樹脂層の硬化率に対する、成形後の活性エネルギー線硬化性樹脂層の硬化率の比を意味する。硬化性保持率が55%以上であると、活性エネルギー線硬化開始剤の含有量が少なくても活性エネルギー線硬化性樹脂層が十分に硬化し、硬化層は耐薬品性に優れる。硬化性保持率を55%以上とするために、融点が40℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である活性エネルギー線開始剤を使用すればよい。
<活性エネルギー線硬化性樹脂層>
本発明の積層体は、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる活性エネルギー線硬化性樹脂層を有する。係る活性エネルギー線硬化性樹脂層は、例えば、グラビア塗工、コンマコート塗工、スリットダイ塗工、スクリーン印刷法などの公知の方法で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を基材に塗布することで得られ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が溶媒を含有する場合には溶媒を揮散させてもよい。また、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が溶媒を含まない場合には溶融押出法、好ましくは基材との共押出法によっても成形できる。
活性エネルギー線硬化性樹脂層の厚さは1μm〜50μmの範囲であることが好ましく、3μm〜30μmの範囲がより好ましい。厚さがこの範囲にあると、積層体の成形時(延伸時)に活性エネルギー線硬化性樹脂層が基材の変形に追従することができる。また活性エネルギー線の照射による硬化が十分に進行し、耐薬品性や耐擦傷性に優れる硬化層となる。
<基材>
基材としては非晶性樹脂からなるものが好ましく、例えばABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、PVC樹脂(ポリ塩化ビニル樹脂)、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、あるいは結晶融解熱量が5J/g以下のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂およびそれらの共重合体、並びにそれらの混合物が挙げられる。成形性の観点からは、(メタ)アクリル樹脂組成物またはポリエステル樹脂が好ましく、成形時の割れや破断を抑制する観点から、メタクリル系樹脂(A)およびエラストマー成分を含有するメタクリル樹脂組成物がより好ましい。
メタクリル樹脂組成物からなる基材を用いる場合、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、好ましくは30000〜180000、より好ましくは50000〜130000である。30000未満では基材の打ち抜き加工性などの靭性が低下する傾向となり、180000を越えると基材の成形が困難になり加工条件範囲が狭くなる傾向にある。なお、重量平均分子量は、GPC分析により標準ポリスチレンを検量線作成に用いた換算値として算出した値である。
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%であることがより好ましく、メタクリル酸エステルのみの重合体であってもよい。かかるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニルなどのメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル;が挙げられる。中でもメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
メタクリル系樹脂(A)は、上記したメタクリル酸エステルに由来する構造単位のうち、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%であることがより好ましく、メタクリル酸メチルのみの重合体であってもよい。
メタクリル樹脂(A)に含有し得る、メタクリル酸エステルに由来する構造単位以外の構造単位としては、例えばアクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アリールエステル、アクリル酸シクロアルキルエステル、芳香族ビニル化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの、ビニル系単量体に由来する構造単位が挙げられる。
メタクリル樹脂(A)の製造方法に特に制限はなく、市販品を用いてもよい。
エラストマー成分としては、例えば直鎖重合体、コアシェル型を含むグラフト共重合体、ソフトブロックとハードブロックからなるブロック共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。中でも、成形時の割れや破断を抑制する観点から、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を1つ以上とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とを有するブロック共重合体(B)が好ましい。以下、係るブロック共重合体(B)について説明する。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とする。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは98質量%以上である。
かかるメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどが挙げられる。中でも透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
かかるメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えばアクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のメタクリル酸エステルとともに共重合することで、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量は、好ましくは5000以上150000以下、より好ましくは12000以上100000以下である。
ブロック共重合体(B)中にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が複数ある場合、それぞれのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の割合は、好ましくは10質量%〜70質量%であり、より好ましくは25質量%〜60質量%である。ブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の割合が10質量%〜70質量%にあると、成形時の基材の割れや破断を抑制できる。ブロック共重合体(B)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が複数含まれる場合には、上記の割合は、すべてのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の合計質量として算出する。
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とする。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
かかるアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでいてもよい。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
かかるアクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらアクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のアクリル酸エステルとともに共重合することで、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量およびアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量は、ブロック共重合体(B)を製造する過程において、重合中および重合後にサンプリングした中間生成物および最終生成物(ブロック共重合体(B)のGPC分析により標準ポリスチレンを検量線作成に用いた換算値として求めた重量平均分子量から算出される値である。
ブロック共重合体(B)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合は好ましくは10質量%〜60質量%、より好ましくは20質量%〜55質量%である。ブロック共重合体(B)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合が上記範囲内にあると、成形時の基材の割れや破断を抑制できる。ブロック共重合体(B)にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が複数含まれる場合には、上記の割合は、すべてのアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計質量として算出する。
エラストマー成分を含有するメタクリル樹脂組成物からなる基材を用いる場合、メタクリル樹脂(A)10質量部〜99質量部とエラストマー成分1質量部〜90質量部を含み、好ましくはメタクリル樹脂(A)70質量部〜90質量部とエラストマー成分30質量部〜10質量部を含む。メタクリル樹脂組成物におけるメタクリル樹脂(A)の含有量が10質量部よりも少ない場合、基材の表面硬度が低下する傾向となる。
エラストマー成分を含有するメタクリル樹脂組成物からなる基材は、他の重合体や、フィラー、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、蛍光体などの添加剤をさらに含有してもよい。
メタクリル樹脂組成物の製造方法に特に限定はなく、例えばメタクリル樹脂(A)とエラストマー成分をニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて溶融混練できる。
基材の厚さは、機械的強度、取扱いの容易さ、経済性などの観点から、25μm〜1000μmが好ましく、50μm〜500μmがより好ましい。25μm未満であると延伸時に基材が破断しやすくなる傾向となり、1000μmを超えると成形性が悪くなる傾向となる。
基材は着色または染色されていてもよく、着色または染色が異なる複数の層から形成されていてもよい。
基材は、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などによって製造できる。中でも、靭性および取扱い性に優れる観点から、押出成形法が好ましい。
本発明の積層体は、活性エネルギー線硬化性樹脂層および基材の他に、意匠層、アンカー層および/または粘接着層を有していてもよい。
意匠層は被着体に所望の意匠性を付与するための層であり、印刷層、蒸着層、着色樹脂層のいずれか一層またはこれらを組み合わせた複数の層から形成されてもよい。
意匠層は活性エネルギー線硬化性樹脂層と基材の間に設けられていてもよいし、基材において活性エネルギー線硬化性樹脂層とは他方の面に設けられていてもよいし、これらの両方に設けられていてもよい。また、基材の全面に形成しても、または部分的に、例えば図柄又は図柄背景として形成してもよい。意匠層の厚さは、成形性の観点から、0.1μm〜100μmであることが好ましい。
印刷層は、スクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などに一般的に使用される、ポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂などの樹脂をバインダーとして、顔料または染料を着色剤として含有する樹脂組成物からなることが好ましい。印刷層を形成する方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法が挙げられる。
蒸着層は、スパッタや真空蒸着などに使用される金属または金属酸化物を特に制限なく使用でき、例えば金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、インジウムやそれらの酸化物等が挙げられる。また、これらの金属または金属酸化物は、単独で使用してもよく、2以上の混合物として使用してもよい。蒸着層を形成する方法としては、蒸着やスパッタなどの真空成膜法や、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられる。
着色樹脂層に使用される樹脂としては、例えばポリビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。着色樹脂層は、溶液キャスト法、溶融流延法、押出成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法などによって製造できる。
アンカー層は、基材と意匠層との接着性を向上させるために、所望により設けられる層である。アンカー層としては、二液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などからなる樹脂組成物を使用でき、意匠層を形成する方法および意匠層の材質を考慮して適宜選択できる。アンカー層の厚さは通常0.1〜5μmであることが好ましい。
粘接着層は積層体を被着体に固定するための層である。積層体が粘接着層を備えると、本発明の積層体と被着体とを貼り合わせる工程において粘接着剤を塗布する工程が不要となり好ましい。粘接着層は、活性エネルギー線硬化性樹脂層とは他方の面の基材上または意匠層上に設けられる。
粘接着層は、基材および被着体のいずれにも接着性を有する成分、または意匠層および被着体のいずれにも接着性を有する成分、例えばアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、およびそれらの混合物や共重合体などからなる樹脂組成物を用いることができる。取扱い性の観点から、室温において粘接着性が低くかつ加熱時に粘接着性が発現するホットメルトタイプであることがより好ましい。
粘接着層を形成する方法としては、グラビアコート法、コンマコート法、スリットダイコート法などの方法が好適に用いられる。また、共押出法によって基材と同時に成形してもよい。粘接着層の厚さは、剥離強度の観点から0.1μm〜200μmが好ましい。
[成形体]
本発明の積層体を賦形すること、または賦形すると同時に被着体と一体化させることで、活性エネルギー線硬化性成形体を得ることができる。活性エネルギー線硬化性成形体の活性エネルギー線硬化性樹脂層は、活性エネルギー線を照射することで硬化する。本発明の成形体は、耐薬品性、表面平滑性、表面光沢などに優れる。また本発明の基材に印刷が施された場合には絵柄などが鮮明に表示される。また、金属層を有する積層体を使用した場合は、金属に近い鏡面光沢性が得られる。
被着体としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属、セラミック、木材などが挙げられ、それらの複合材料でもよい。中でも、複雑な形状を安価に作製できるアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、PVC樹脂、ABS樹脂、AS樹脂などの熱可塑性樹脂が好ましい。
積層体を被着体の表面に一体化させ、活性エネルギー線硬化性成形体を得る方法としては、フィルムインサート成形法や真空成形法、TOM成形などが挙げられ、生産性や成形性の観点から、TOM成形が好ましい。
積層体をTOM成形するための真空成形装置は、例えば特開2002−067137号公報に記載の真空成形装置または特開2005−262502号公報に記載の被覆装置を好適に用いることができ、真空成形装置は、成形型または被着体と、積層体とを設置して閉塞し減圧することが可能なチャンバーボックスを備える。
成形体の製造方法は、成形型または被着体と積層体とをチャンバーボックスに収容する工程;前記チャンバーボックス内を減圧する工程;前記積層体によって前記チャンバーボックス内を二分する工程;前記成形型または前記被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を、前記成形型または前記被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くして、前記成形型または前記被着体を前記積層体で被覆して活性エネルギー線硬化性成形体を得る工程;および前記活性エネルギー線硬化性成形体に活性エネルギー線を照射する工程;を有する。なお、成形型または被着体と積層体とをチャンバーボックスに収容する工程において、積層体によってチャンバーボックス内を二分する工程を同時に実施してもよい。
チャンバーボックス内を減圧する工程において、チャンバーボックス内の圧力は0.1kPa〜20kPaであることが好ましく、0.1kPa〜10kPaであることがより好ましい。圧力が20kPaよりも高い場合、成形型または被着体を積層体で被覆する工程において正確に積層体を賦形することが困難となり、圧力が0.1kPaよりも低い場合、成形に要する時間が増加し、生産性が低下する傾向となる。
上述の成形体の製造方法は、前記積層体を加熱して軟化させる工程をさらに有することが好ましい。この工程において、積層体の温度は、使用する基材および活性エネルギー線硬化性樹脂層の組成によっても変化しうるが、通常50℃〜150℃まで加熱することが好ましく、100℃〜140℃まで加熱することがより好ましい。積層体の温度が50℃未満の場合、十分に積層体が軟化せず、成形不良となる傾向となる。一方、150℃を超える場合、積層体の過剰軟化や変質が生じ、成形体の品位が低下する傾向となる。なお、チャンバーボックス内を減圧する工程と、積層体を加熱して軟化させる工程とを同時に実施してもよい。
成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を、成形体または被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くして、成形型または被着体を積層体で被覆して活性エネルギー線硬化性成形体を得る工程において、成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力は50kPa〜500kPaにすることが好ましく、100kPa〜400kPaにすることがさらに好ましい。成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力が50kPaよりも低い場合、成形型または被着体を積層体で被覆する工程において積層体を正確に賦形することが困難となる。成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力が500kPaよりも高い場合、活性エネルギー線硬化性成形体をチャンバーボックスから取り出す際に大気圧(約100kPa)とする時間が掛かり、生産性が低下する傾向となる。
成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を、成形体または被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くする方法としては、成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックスを大気圧に開放したり、成形型または被着体を有しない方のチャンバーボックスに圧縮空気を供給する方法が挙げられる。圧縮空気を供給することにより、積層体を成形型または被着体により密接させて成形することができ、成形型または被着体の形をさらに正確に積層体へ転写することができる。
得られた活性エネルギー線硬化性成形体に活性エネルギー線を照射することで、硬化層を備える成形体を製造できる。活性エネルギー線を照射する時間および活性エネルギー線の線量は、活性エネルギー線硬化性樹脂が十分に硬化する程度であれば特に制限はない。
上述の方法によれば、積層体の両面が高温低圧条件下に置かれる真空成形法によって成形体を形成する場合であっても、十分な活性エネルギー線硬化性を有する活性エネルギー線硬化性成形体を得られ、該活性エネルギー線硬化性成形体に活性エネルギー線を照射することで、十分に硬化した硬化層を有する成形体が得られる。
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および成形体は、良好な耐薬品性、取扱い性および表面平滑性を活かして、意匠性の要求される成形品、特に加飾成形が求められる、例えば広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明部品;家具、ペンダント、ミラーなどのインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材などの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコンなどの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク、壁紙、楽器などに好適に用いられる。
次に、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されない。なお、本発明における評価方法は、以下の方法で行った。
[活性エネルギー線硬化性樹脂層の成形性(成形性(1))]
真空成形によって得られる活性エネルギー線硬化性成形体において、活性エネルギー線硬化性樹脂層の成形性(延伸性)を目視により評価した。
○:活性エネルギー線硬化性樹脂層に割れ、剥がれ、白化などの欠点が見られない。
△:活性エネルギー線硬化性樹脂層の一部に割れ、剥がれ、白化などの欠点が見られる。
×:活性エネルギー線硬化性樹脂層の全面に割れ、剥がれ、白化などの欠点が見られる。
[積層体の成形性(成形性(11))]
真空成形によって得られる活性エネルギー線硬化性成形体において、基材の成形性(延伸性)を目視により確認した。
○:積層体が被着体形状に隙間なく賦形されている。
×:積層体の一部が追従不十分であり、被着体と隙間が生じている。
〔硬化性保持率〕
まず、積層体の活性エネルギー線硬化性樹脂層の赤外分光スペクトルを、ATRユニットGolden Gate(Specac社製)を取り付けたフーリエ変換赤外分光光度計FTS−3000MX(BIO−RAD社製)で測定し、1408cm−1のピーク強度からベースラインを差し引いた時の吸光度(Abs)を求めた。
次に、積層体に対して、高圧水銀灯(HI−TECH社製のHTE−3000)を用いて7000mJ/cmの光量の紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂層を硬化させた硬化物からなる層(以下、硬化層と称する)を形成した。得られた硬化層の赤外分光スペクトルを、上述と同じ方法で測定し、吸光度(Abs)を求めた。
そして、硬化前の活性エネルギー線硬化性樹脂層の吸光度に対する、硬化物からなる層の吸光度の比を算定して硬化率1とした。
また、前記積層体と同じ積層体を後述の方法で真空成形して得られた活性エネルギー線硬化性成形体の活性エネルギー線硬化性樹脂層について、上記硬化率1と同様の方法で硬化率2を算定した。
さらに、硬化率1に対する硬化率2の比を算定することで、真空成形前後における積層体の硬化性保持率とした。
〔耐薬品性〕
後述の方法で真空成形して得られた活性エネルギー線硬化性成形体の活性エネルギー線硬化性樹脂層に、前記高圧水銀灯を用いて7000mJ/cmの光量の紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂層を硬化させて硬化層を形成した。硬化層に、トルエンおよびイソオクタンの1:1混合溶液(FuelC)、エタノールまたはメチルエチルケトン(MEK)をそれぞれ1mL滴下し、室温で24時間放置した。その後、滴下部分を流水および中性洗剤(ライオン株式会社製;Mama Lemon(登録商標))で十分に洗浄したのち、蒸留水で洗浄し、圧縮空気で水分を除去した。その後、上述の薬品を滴下した部分の硬化層の状態を目視で観察した。
○:薬品の滴下跡が見られない。
△:観察する角度によって僅かに薬液の跡が見られる。
×:どの角度でも薬液の跡が見られる。
以下に示す参考例において、使用する各物質は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用した。また、各物質の移送および供給は窒素雰囲気下で行なった。
参考例1 [メタクリル樹脂(A−1)の合成]
メタクリル酸メチル95質量部およびアクリル酸メチル5質量部からなる単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.28質量部を加え溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混合して混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応を開始して3時間後に温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機によりビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状のメタクリル樹脂(A)(以下「メタクリル樹脂(A−1)」と称する)を得た。
参考例2 [ブロック共重合体(B−1)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、乾燥トルエン735g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20mmolを含有するトルエン溶液39.4gを加え、さらにsec−ブチルリチウム1.17mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル35.0gを加え、1時間反応させた。得られた反応混合物の一部をサンプリングし、GPC分析により標準ポリスチレンを検量線作成に用いた換算値として反応混合物中のポリメタクリル酸メチルの重量平均分子量(以下、Mw(b1-1)と称する)を求めた結果、40000であった。
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.5gおよびアクリル酸ベンジル10.5gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして上述の方法で重量平均分子量を測定したところ80000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw(b1-1)は40000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw(b2))を40000であると決定した。
続いて、メタクリル酸メチル35.0gを加え、反応液を25℃に戻して時間攪拌することで、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)」と称する)を形成した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注いでブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−1)」と称する)を析出させてろ過後80℃、約133Paで12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−1)の重量平均分子量Mw(B)は120000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は80000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック(B1−2)の重量平均分子量(Mw(b1-2)と称する)を40000であると決定した。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw(b1-1)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量Mw(b1-2)が共に40000なので、Mw(b1)は40000である。
参考例3 [基材(F−1)の製造]
メタクリル樹脂(A−1)80質量部、ブロック共重合体(B−1)20質量部およびカーボンブラック(三菱化学株式会社製;#980)2質量部を、二軸押出機(東芝機械株式会社製;TEM−28)を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出し、切断することによって、メタクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたメタクリル樹脂組成物のペレットを、ギアポンプおよび10μmサイズのポリマーフィルターを設置したベント付の65mmΦの一軸押出機に、先端に幅900mmのダイがついたT型溶融押出機を用いて、押出温度250℃、吐出量40kg/hにて押出し、80℃の金属鏡面弾性ロールと、80℃の金属鏡面剛体ロールで挟み込んで製膜し、10m/分で引き取り、厚さ300μmの基材(F−1)を製膜した。
参考例4 [基材(F−2)の製造]
参考例3において、メタクリル樹脂(A−1)80質量部およびブロック共重合体(B−1)20質量部の代わりに、ポリエチレンテレフタレート(帝人デュポンフィルム株式会社製;テトロン(登録商標))100質量部を用いたこと以外は、参考例3と同様の方法で基材(F−2)を製膜した。
参考例5 [熱可塑性エラストマー(E−1)の合成]
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン64L、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)0.20Lを仕込み、有機ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.3L(開始剤中のリチウム原子に対して、量論比で15倍相当)を仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン2.3Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン23Lを加えて4時間重合を行い、さらにスチレン2.3Lを加えて3時間重合を行った。得られた反応液をメタノール80Lに注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体を得た。続いて、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体10kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水添物(以下、熱可塑性エラストマー(E−1)と称する)を得た。得られた熱可塑性エラストマー(E−1)の重量平均分子量は107000、スチレン含有量は21質量%、水素添加率は85%、分子量分布は1.04であった。
参考例6 [ポリビニルアセタール樹脂(V−1)の合成]
平均重合度500、けん化度99モル%のポリビニルアルコール樹脂100gを溶解した水溶液に、n−ブチルアルデヒド75gおよび35〜37%塩酸110gを添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液中に懸濁させて攪拌しながら後処理をし、pH=7になるまで洗浄し、揮発分が0.3%になるまで乾燥することにより、アセタール化度が80モル%のポリビニルアセタール樹脂(V−1)を得た。
参考例7 [極性基含有ポリプロピレン系樹脂(P−1)の合成]
ポリプロピレン(プライムポリマー社製のプライムポリプロF327)42g、無水マレイン酸160mgおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン42mgを、バッチミキサーを用いて180℃およびスクリュー回転数40rpmの条件下で溶融混練し、極性基含有ポリプロピレン系樹脂(P−1)を得た。得られた極性基含有ポリプロピレン系樹脂(P−1)のMFR[230℃、荷重2.16kg(21.18N)]は6g/10分であり、融点は138℃であった。なお、融点は10℃/minで昇温した際の示差走査熱量測定曲線の吸熱ピークから読み取った値である。
参考例8 [基材(F−3)の製造]
熱可塑性エラストマー(E−1)100質量部、ポリビニルアセタール樹脂(V−1)19質量部および極性基含有ポリプロピレン系樹脂(P−1)25質量部を、二軸押出機(東芝機械社製TEM−28)を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出し、切断することによって、粘接着剤組成物のペレットを製造した。
粘接着剤組成物のペレットおよび参考例3に記載のメタクリル樹脂組成物のペレットをそれぞれ単軸押出機(ジーエム三正株式会社製;VGM25−28EX)のホッパーに投入し、マルチマニホールドダイを用いることで、幅約30cm、厚さ400μmの共押出積層体を得た。各層の厚さは押出流量により制御し、基材の厚さは300μm、粘接着層の厚さは100μmとした。
[実施例1]
アクリル系紫外線硬化型樹脂(DIC株式会社製;ユニディックV−6850、固形分50%)100質量部、活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO、融点88℃〜92℃)2質量部、ナノコロイダルシリカ懸濁液(日産化学工業会社製;MEK−AC−4130Y、固形分30%)33質量部およびシリコーン樹脂(大成ファインケミカル株式会社製;8SS−723、固形分48%)1質量部を混合し、固形分濃度が30%となるようにメチルエチルケトン75質量部で希釈し、十分撹拌して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
基材(F−1)を22cm×29cmに切り出し、その片面に、バーコーターを用いて上述の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工し、90℃で5分間熱風乾燥し、膜厚10μmの活性エネルギー線硬化性樹脂層を有する積層体を得た。
真空成形には、チャンバーボックス(C1)とチャンバーボックス(C2)を閉めることでチャンバーボックス(C)を形成する成形機(布施真空株式会社製;NGF−0406−T)を使用した。前記成形機のチャンバーボックス(C2)に方形盆状の成形型(縦9.5cm×横9.5cm×高さ4cm)を入れ、チャンバーボックス(C2)の開口部(縦13.5cm×横22.5cm)を上述の積層体で覆った。チャンバーボックス(C2)に成形型を収容させた状態で、チャンバーボックス(C1)とチャンバーボックス(C2)の合わせ面で前記積層体を挟むようにチャンバーボックス(C1)とチャンバーボックス(C2)とを閉め、チャンバーボックス(C)を形成した。その後、90秒間でチャンバーボックス(C)内を0.5kPaに減圧した。このとき、減圧度の非平衡および積層体の自重によって積層体がたわむため、チャンバーボックス(C1)およびチャンバーボックス(C2)内の圧力を適宜調整して積層体を平行に保った。減圧と平行して赤外線加熱装置により積層体を120秒間加熱し、積層体の温度が130℃に到達したとき、速やかにチャンバーボックス(C1)内を大気圧に戻すことで成形型を積層体で被覆し、活性エネルギー線硬化性成形体を成形した。なお、積層体の温度は放射温度計によって測定した。その後、チャンバーボックス(C)を開放し、成形型および活性エネルギー線硬化性成形体をチャンバーボックス(C2)から取り出し、成形型から活性エネルギー線硬化性成形体を取り外して観察したところ、積層体は最大で400%延伸されていた。得られた活性エネルギー線硬化性成形体の評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO)の代わりに活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;イルガキュア2959、融点87℃〜92℃)を用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を得た。
[実施例3]
実施例2において、基材(F−1)の代わりに基材(F−2)を用いた以外は実施例2と同様にして積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を得た。
[実施例4]
実施例1において、活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO)2質量部の代わりに活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO、融点88℃〜92℃)1質量部および活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;イルガキュア2959、融点87℃〜92℃)1質量部の混合物を用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を得た。
[実施例5]
実施例1において活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO)の代わりに活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;イルガキュア907、融点70℃〜75℃)を用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を得た。
[実施例6]
実施例1において活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO)の代わりに活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;イルガキュア184、融点45℃〜49℃)を用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を得た。
[比較例1]
実施例1において活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ルシリンTPO)の代わりに活性エネルギー線硬化開始剤(BASFジャパン株式会社製;ダロキュア1173、融点4℃)を用いた以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を得た。


上記表1の結果から、融点が70℃以上の活性エネルギー線硬化開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂層を有する積層体は、真空成形による成形性が良好で、真空成形後も活性エネルギー線硬化性に優れ、さらに活性エネルギー線照射後は耐薬品性に優れた成形体が得られる。
[実施例7]
実施例1において基材(F−1)の代わりに基材(F−3)を、成形型の代わりにプロピレン(日本ポリプロ株式会社製;MA3)からなる方形盆状の被着体(縦9.5cm×横9.5cm×高さ5.0cm、厚さ170μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、積層体および活性エネルギー線硬化性成形体を作製した。
得られた活性エネルギー線硬化性成形体を観察したところ、積層体は最大で400%延伸されていた。活性エネルギー線硬化性成形体における活性エネルギー線硬化性樹脂層および基材の成形性並びに積層体と被着体との接着性は良好であった。さらに紫外線を照射して得られた成形体は、実施例1と同じく耐薬品性に優れていた。
本発明の積層体は、看板部品、ディスプレイ部品、照明部品、インテリア部品、建築用部品、輸送機関係部品、電子機器部品、医療機器部品、機器関係部品、交通関係部品など、加飾成形が求められる幅広い分野において有効に使用できる。
1 活性エネルギー線硬化性樹脂層
2 基材
3 意匠層(任意)
4 粘接着層(任意)
11 積層体

Claims (12)

  1. 活性エネルギー線硬化性樹脂および融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
  2. 前記活性エネルギー線硬化性樹脂が(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系樹脂である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
  3. 前記活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量が10〜99.9質量%の範囲であり、かつ前記融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤の含有量が0.1〜10質量%の範囲である、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
  4. 基材および請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなる層を少なくとも有する積層体。
  5. 前記基材が非晶性樹脂からなる、請求項4に記載の積層体。
  6. 前記非晶性樹脂がアクリル系樹脂である、請求項5に記載の積層体。
  7. 前記アクリル系樹脂が、メタクリル系樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を含むアクリル系樹脂であり、
    前記メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を80質量%以上有し、
    前記ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含むメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を少なくとも1以上有し、かつメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を10〜80質量%、アクリル酸エステル共重合体ブロック(b2)を90〜20質量%の割合で含み、
    メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、メタクリル系樹脂(A)が10〜99質量部であり、ブロック共重合体(B)が90〜1質量部である、請求項6に記載の積層体。
  8. さらに粘接着層を有する、請求項4〜7のいずれかに記載の積層体。
  9. 基材を準備する工程;
    活性エネルギー線硬化性樹脂と融点が40℃以上である活性エネルギー線硬化開始剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を準備する工程;および
    前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を前記基材の少なくとも片面に塗布して活性エネルギー線硬化性樹脂層を形成する工程;
    を少なくとも有する、請求項4に記載の積層体の製造方法。
  10. 請求項4〜8のいずれかに記載の積層体を準備する工程;
    成形型または被着体と前記積層体をチャンバーボックスに収容する工程;
    前記チャンバーボックス内を減圧する工程;
    前記積層体により前記チャンバーボックス内を二分する工程;
    前記成形型または前記被着体を有しない方のチャンバーボックス内の圧力を、前記成形体または前記被着体を有する方のチャンバーボックス内の圧力よりも高くして、前記成形型または前記被着体を前記積層体で被覆して活性エネルギー線硬化性成形体を得る工程;および
    前記活性エネルギー線硬化性成形体に活性エネルギー線を照射する工程;
    を有する成形体の製造方法。
  11. 請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層を有する成形体。
  12. 請求項10の方法で得られる、請求項11に記載の成形体。
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