JP2017095573A - 印刷用インク、印刷膜、及びタッチパネル - Google Patents

印刷用インク、印刷膜、及びタッチパネル Download PDF

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直子 荒井
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文起 深津
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Yoshiyuki Suetsugu
義幸 末次
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Abstract

【課題】印刷(スクリーン印刷、フレキソ印刷等)によって、パターニング工程無しでダイレクトに微細な回路パターンを形成可能な、ナノワイヤを含有する印刷用インクを提供する。
【解決手段】少なくともナノワイヤ(A)と分散媒体(D)とを含む印刷用インクであって、25℃で測定した角周波数312rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.4以上である、印刷用インク。
【選択図】図3

Description

本発明は、印刷用インク、印刷膜、及びタッチパネルに関する。
従来、透明電極はITOが使用されている。しかし、ITOに用いられるインジウムは供給不安と価格高騰の問題を抱えている。さらに、電極回路を形成するためにはスパッタリングを用いる必要がある。
ITOに替わる透明電極製造手段として、銀ナノワイヤと増粘剤とを含む塗膜組成物をスクリーン印刷することが提案されている(特許文献1)。
また、基材上に形成した導電性繊維を含む導電層をパターニングし、形成されたパターンのエッジからはみ出した導電性繊維を除去する導電膜の製造方法が提案されている(特許文献2)。
特表2011−515510号公報 特許第5606769号公報
本発明の目的は、印刷(スクリーン印刷、フレキソ印刷等)によって、パターニング工程無しでダイレクトに微細な回路パターンを形成可能な、ナノワイヤを含有する印刷用インクを提供することである。
また、本発明の他の目的は、スクリーン印刷によって形成された印刷膜、パターニングされた透明電極、及びその製造方法等を提供することである。
特許文献1は、銀ナノワイヤを含むスクリーン印刷のための塗膜組成物を開示しているが、具体的に開示しているのは、幅約0.6cm×長さ5.6cmのバスバー(実施例2)及び約3×4インチの矩形の導電膜(実施例3)のみであって、線幅が例えば、500μm以下の微細な電極パターンをスクリーン印刷のみで形成することまでは具体的に開示されていない。
特許文献1に開示された組成物では、増粘剤を加えても必ずしも組成物中の銀ナノワイヤがスクリーン印刷用のスクリーン版(メッシュ)を通過できるとは限らないことがわかった。そのため、微細なパターンをスクリーン印刷によって形成した場合には、抵抗値が高いことがあり、回路として必要な導電性が得られない場合があった。
本発明者らは、ナノワイヤを導電性材料として含む印刷用インクを用いてスクリーン印刷によって微細な電極回路を形成するために必要な、印刷用インクの特性について鋭意検討を行った。
特に線幅が500μm以下の微細な線をスクリーン印刷しようとする場合、ナノワイヤがスクリーン版を通過できるか否か、均一に基材に付着して形状を保持できるか否かが、得られる電極回路の性能に大きく影響することを見出した。検討の結果、印刷用インクの粘度(見かけ粘度)だけではなく、インクのレオロジー特性を考慮する必要があることを見出した。そして、レオロジー特性が一定の範囲内である場合にナノワイヤがスクリーン版のメッシュをうまく通過し、かつ均一に基材に付着して形状を保持できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下の印刷用インク、印刷膜、タッチパネル等が提供される。
1.少なくともナノワイヤ(A)と分散媒体(D)とを含む印刷用インクであって、
25℃で測定した角周波数312rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.4以上である、印刷用インク。
2.さらに、25℃で測定した角周波数1rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.15以上である、1に記載の印刷用インク。
3.前記ナノワイヤ(A)が、導電性ナノワイヤである、1又は2に記載の印刷用インク。
4.前記導電性ナノワイヤが、銀又は銅を主成分とする金属ナノワイヤである、3に記載の印刷用インク。
5.前記ナノワイヤ(A)のアスペクト比が10以上であり、平均直径が150nm以下である、1〜4のいずれかに記載の印刷用インク。
6.前記分散媒体(D)が、水、及び沸点が160℃以上240℃以下の有機分散媒体から選択される1種以上との混合物である、1〜5のいずれかに記載の印刷用インク。
7.さらに、粘度調整剤(B)を含む、1〜6のいずれかに記載の印刷用インク。
8.前記粘度調製剤(B)が、セルロース系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上である、7に記載の印刷用インク。
9.さらに、バインダ(C)を含む、1〜8のいずれかに記載の印刷用インク。
10.前記バインダが、有機高分子及び無機高分子のいずれか一方又は両方を含む、9に記載の印刷用インク。
11.前記25℃で測定した角周波数1rad/sにおける貯蔵弾性率G”が、200Pa以下である、1〜10のいずれかに記載の印刷用インク。
12.スクリーン印刷又はフレキソ印刷に用いる、1〜11のいずれかに記載の印刷用インク。
13.1〜12のいずれかに記載の印刷用インクを、基材上にスクリーン印刷又はフレキソ印刷して得られる印刷膜。
14.表面抵抗が、100Ω/□以下である、13に記載の印刷膜。
15.全光線透過率が85%以上である、13又は14に記載の印刷膜。
16.13〜15のいずれかに記載の印刷膜付き基板。
17.16に記載の印刷膜付き基板を用いたタッチパネル。
18.1〜12のいずれかに記載の印刷用インクを、基材上にスクリーン印刷又はフレキソ印刷によって付着させることを含む、印刷膜の製造方法。
19.3〜12のいずれかに記載の印刷用インクを、スクリーン印刷又はフレキソ印刷によって、基材上に所望の電極回路を形成し、電極回路付き基板を製造する工程を含む、電極回路付き基板の製造方法。
20.3〜12のいずれかに記載の印刷用インクを用い、スクリーン印刷又はフレキソ印刷によって、基材上に所望の電極回路を形成し、電極回路付き基板を製造する工程、及び
前記電極回路付き基板をタッチパネルに組み込む工程
を含む、タッチパネルの製造方法。
本発明によれば、印刷用インク、印刷膜、印刷膜の製造方法、及びタッチパネル用透明電極フィルム等が提供できる。
印刷用インクを用いて基材上にスクリーン印刷を行っている際の全体像(a)、スキージ塗布時(b)及び版離れ中(c)の動作を示す模式図である。 実施例及び比較例で製造した印刷用インクの、角周波数312rad/sにおけるtanδ及び角周波数1rad/sにおけるtanδをプロットしたグラフである。 本発明で規定するレオロジー特性を満たしている印刷用インクを用いてスクリーン印刷して得られた線の光学顕微鏡写真である。 本発明で規定するレオロジー特性を満たしていない印刷用インクを用いてスクリーン印刷して得られた線の光学顕微鏡写真である。
A.印刷用インク
本発明の一実施形態の印刷用インクは、少なくともナノワイヤ(A)と分散媒体(D)とを含む印刷用インクであって、
25℃で測定した角周波数312rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.4以上であることを特徴とする。
さらに、25℃で測定した角周波数1rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが100以下であることが好ましい。
ナノワイヤを含む印刷用インクでスクリーン印刷を行う場合、インクの粘度を制御するだけではナノワイヤがスクリーン版のメッシュをうまく通らず、いわゆる粘度(見かけ粘度)だけを指標としていては、微細化は困難であることがわかった。
物質は固体的性質と液体的性質の両方を併せ持つ。印刷用インクも同様である。本発明者らは、印刷用インクの固体的性質と液体的性質のバランスについて検討し、印刷用インクのレオロジー特性を損失正接tanδで表現することを試行した。
G’:貯蔵弾性率(Pa);物質の固体的性質の尺度で、ひずみエネルギーを物質内に貯蔵することで変形の前(ひずむ前)の元の形に戻ろうとする能力(弾性回復性)の指標である。
G”:損失弾性率(Pa);物質の液体的性質の尺度で、ひずみエネルギーを熱として散逸することで流れる能力の指標である。
損失正接tanδは、その数値によって以下の特性を示唆する。
tanδ>1:液体的性質が強い。
tanδ=1:液体的性質と固体的性質が拮抗している。
tanδ<1:固体的性質が強い。
図1は、印刷用インク4を用いて基材1上にスクリーン印刷を行っている際の動作を示す模式図である。基材1の上方に配置されたメッシュスクリーン2の上にパターンが形成された版型(レジスト)3を重ねたスクリーン版を、スキージ5で押し下げ、スキージ5による印圧Bで版型3とメッシュスクリーン2を通してインク4を基材1上に付着させ(スキージ塗布)、スキージ角度C及びスキージ速度Dでスキージ5を移動させることによって版型3及びメッシュスクリーン2が基材1から離れ(版離れ)、インク4が基材1上に残る。
スクリーン版をスキージ5が押し下げてメッシュ2を通してインク4を基材に塗布しているときは、インク4はスキージ5とメッシュの狭い隙間、あるいは、メッシュのワイヤー間の狭い隙間を通過しなければならず、高いひずみ速度で変形される。従って、高せん断速度、あるいは、高周波数でのインクのレオロジー特性が重要になる。
一方、スキージ5の移動によって基材1からメッシュ2が離れるときのインクの変形はスキージ塗布時に比べ穏やか(変形量、変形速度ともに小さい)であり、塗布時に比べて低いひずみ速度での変形となるはずである。従って、低せん断速度、あるいは、低周波数でのインクのレオロジー特性が重要になる。
インク塗布時には、スクリーン版のメッシュ2にインク4が綺麗に入ることが必要であるのに対し、版離れ時には、インク4の糸引きが小さく、かつインク4が基材1上に留まる(インクがメッシュ側ではなく基材に付着すること、及び、付着後に流れない)ことが必要である。インクの固体的性質が強いと、塗布時に基材に押し付ける圧力が小さくなるので基材との密着力が小さくなる。また、版離れ時にインクがうまく変形できないため、メッシュ側に固定され基材に留まりにくくなる。
そこで、振動モード解析で、インクの貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”及び損失正接tanδを求めた。
インク塗布時(高周波数)と版離れ時(低周波数)とのレオロジー特性を分けて、角周波数312rad/sをインク塗布時における高周波数と見立て、角周波数1rad/sを版離れ時における低周波数と見立てて、それぞれの損失正接をtanδ及びtanδで表した。
本発明の一実施形態の印刷用インクは、25℃で測定した角周波数312rad/sにおける、印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.4以上であり、好ましくは0.45以上であり、さらに好ましくは0.5以上である。tanδが0.4以上であれば、ナノワイヤがうまくメッシュを通過し、基材上に所望の精細なパターンを形成することができる。tanδの上限は、通常1000であり、より好ましくは100であり、さらに好ましくは10である。
さらに、25℃で測定した角周波数1rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.15以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.25以上であり、0.28以上である。tanδが0.15以上であれば、抵抗値の低い印刷膜が得られる。tanδの上限は、通常1000であり、より好ましくは100であり、さらに好ましくは10である。
25℃で測定した角周波数1rad/sにおける貯蔵弾性率G’は、200Pa以下であることが好ましく、より好ましくは100Pa以下であり、さらに好ましくは1Pa以上50Paの範囲内である。
25℃で測定した角周波数1rad/sにおける損失弾性率G”は、100Pa以下であることが好ましく、より好ましくは80Pa以下であり、さらに好ましくは1Pa以上70Pa以下である。
25℃で測定した角周波数312rad/sにおける貯蔵弾性率G’は、1000Pa以下であることが好ましく、より好ましくは800Pa以下であり、さらに好ましくは10Pa以上700Pa以下の範囲内である。
25℃で測定した角周波数312rad/sにおける損失弾性率G”は、500Pa以下であることが好ましく、より好ましくは400Pa以下であり、さらに好ましくは50Pa以上350Pa以下の範囲内である。
「ナノワイヤ」とは一般に、導電性又は半導電性のナノファイバ(ナノ繊維)を意味する。
本発明で用いるナノワイヤ(A)は、導電性ナノワイヤであることが好ましい。導電性ナノワイヤは、組成物から得られる塗膜中でネットワークを形成して塗膜に導電性を与える。導電性ナノワイヤは、金属ナノワイヤであることが好ましい。
ナノワイヤを構成する金属としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、鉄、コバルト、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、オスミウム、イリジウムからなる群から選択されるいずれか1つ、又は当該群から選択される2以上からなる合金等が挙げられる。ナノワイヤは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。高い全光線透過率及び高い導電性を得る観点から、好ましくは金、銀及び銅から選択される金属を主成分とするナノワイヤであり、より好ましくは銀又は銅を主成分とするナノワイヤであり、特に好ましくは銀ナノワイヤである。
ここで、「主成分とする」とは、例えば、銀を主成分とするナノワイヤであれば、銀が50重量%以上を占めていることを意味し、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、あるいは銀が100重量%であってもよい。
ナノワイヤは、銀単独で形成されていてもよいが、銀単独ではマイグレーションの懸念がある。そのため、銀のマイグレーションを防止し得る銀以外の異種元素を含有することが好ましい。そのような異種元素としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、金(Au)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、インジウム(In)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、セリウム(Ce)、ケイ素(Si)、鉛(Pb)、及びパラジウム(Pd)が挙げられる。これらの元素のうち、アルミニウム、銅、ニッケル、カドミウム、金、亜鉛及びマグネシウムは、導電率を向上させる効果も有している。
このような異種元素は、0.1〜3原子%の割合で銀ナノワイヤ中に含まれることが好ましい。その量が0.1原子%未満の場合には、銀のマイグレーション防止効果が十分に発揮されず、他方3原子%を超えると、銀ナノワイヤの導電率が低下する傾向にある。金は2.5原子%以下の割合で含まれることが好ましい。
ナノワイヤの形状としては、例えば円柱状、直方体状、断面が多角形となる柱状等任意の形状をとることができるが、高い透明性が必要とされる用途では、円柱状や断面が5角形以上の多角形であるものが好ましい。
ナノワイヤの断面形状は、基材上にナノワイヤ分散液を塗布し、断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより検知することができる。
ナノワイヤの平均直径は、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましく、45nm以下であることが特に好ましい。耐久性を担保するため、ナノワイヤの平均直径は5nm以上であることがより好ましく、10nm以上、20nm以上としてもよい。
ナノワイヤの平均長は、1μm〜100μmであることが好ましく、3μm〜50μmがより好ましく、5μm〜30μmがさらに好ましい。ナノワイヤの平均長が長すぎるとナノワイヤ製造時に凝集物が生じる懸念があり、平均長が短すぎると、十分な導電性を得ることができない場合がある。
ナノワイヤの平均直径及び平均長は、ナノワイヤのサイズに応じ、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査式電子顕微鏡(SEM)又は光学顕微鏡を用い、TEM像やSEM像、光学顕微鏡像を観察することにより測定する。
平均直径は、100個のナノワイヤを観察し、それぞれの短軸方向の測定で最も短い箇所の長さを測定し、その平均値を平均直径とすることができる。また、平均長は、100個のナノワイヤを観察し、それぞれの長さを測定し、その平均値を平均長とすることができる。ナノワイヤが曲がっている場合、それを弧とする円を考慮し、その半径、及び曲率から算出される値の平均値を平均長とする。
また、印刷用インクを用いて得られる印刷膜中のナノワイヤの平均直径及び平均長は、印刷膜の対角線の交点を中心とした視野中にて観察されるナノワイヤについて測定を行う。視野中に100個のナノワイヤがない場合はさらに視野を広げて測定を行う。
ナノワイヤのアスペクト比としては、10以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜1,000,000が好ましく、100〜10,000がより好ましい。
アスペクト比とは、一般的には繊維状の物質の長辺と短辺との比(平均長/平均直径の比)を意味し、上述の方法で測定した平均長及び平均直径の値から算出できる。
本発明で用いることができる銀ナノワイヤの市販品は、水系分散媒体、イソプロピルアルコール(IPA)やエタノール等の有機系分散媒体に分散したものがあり、具体例としては、星光PMC株式会社製「銀ナノワイヤ水性分散液 T−AG103」、Seashell Technologies製「Silver Nanowires(品名:AgNW−25、AgNW−60、AgNW−115」、Blue Nano製「SLV−series Silver Nanowires(品名:SLV−NW−35、SLV−NW−90)、NANOGAP製「Silver Nanofibers(品名:NGAP NP Ag−3103−W、NGAP NP Ag−3103−E、NGAP NP Ag−3103−EG、NGAP NP Ag−3103−IPA、NGAP NP Ag−3103−Bt、NGAP NP Ag−3103−B」」等が挙げられる。銀ナノワイヤの種類は、求められる印刷膜の設計に応じて適宜選択することができる。
銀ナノワイヤの市販品は銀ナノワイヤを水系分散媒体又は有機系分散媒体に分散したものであり、通常、分散媒体中には分散剤が含まれているが、分散剤が何であるかは公表されていない。しかし、分散剤は極微量であるため、印刷用インクの組成や物性に大きな影響を及ぼすものではないと考えられる。
本発明の一実施形態の印刷用インクに用いる分散媒体(D)は、用いるナノワイヤが均一に分散できるものであれば特に限定されないが、水、及び沸点が160℃以上240℃以下の有機分散媒体から選択される1種以上との混合物であることが好ましい。上記沸点を有する有機分散媒体であれば、印刷膜から容易に揮発させることができる。
尚、印刷用インクに含まれる分散媒体(D)は、上記ナノワイヤ(A)の分散媒体の他、後述する粘度調整剤(B)やバインダ(C)を溶解するための溶媒を含み得る。さらに、分散媒体(D)には、印刷用インクの濃度調整等の目的で上記ナノワイヤの分散媒体や(B),(C)成分の溶媒とは別に添加される溶媒を含んでいてもよい。
水と上記有機分散媒体との混合比は、100:0〜5:95の範囲内が好ましく、90:10〜10:90の範囲内がより好ましく、85:15〜15:85の範囲内がさらに好ましい。
上記有機分散媒体としては、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングルコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒等が挙げられ、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングルコール等が好ましい。
本発明の一実施形態の印刷用インクは、さらに、粘度調整剤(B)を含んでいてもよい。尚、粘度調整剤(B)は、粘度の調整機能とバインダ機能を併せ持つものであってもよい。
粘度調整剤(B)としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリアクリル酸やポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等のアクリル系樹脂等が挙げられる。
本発明の一実施形態の印刷用インクは、さらにバインダ(C)を含んでいてもよい。バインダ(C)を含まない場合、印刷によって得られる印刷膜はナノワイヤ100%となるため、機械的及び化学的に弱く(イオン化しやすく溶けやすい)、不具合(断線やショート)が生じることがある。そのため、印刷用インクは、バインダ(C)及び/又はバインダ機能を有する粘度調整剤(B)を含むことが好ましい。
バインダ(C)は特に限定されず、塗膜を形成するために用いられる公知の材料であってよく、導電体を形成するために用いられる材料が好ましい。バインダ(C)は、非感光性のものでも、感光性のものでもよいが、非感光性のものが好ましい。
非感光性のバインダとしては、有機高分子及び/又は無機高分子を含むものが挙げられる。有機高分子又は無機高分子は下記の1種又は2種以上を用いてもよい。
有機高分子の具体例としては、ポリメタクリレート(例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エステルを含む共重合体)、ポリアクリレート(例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エステルを含む共重合体)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート)、フェノール又はクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂(例えば、Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、及びポリフェニルエーテル等の高芳香性を有する高分子、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、セルロース誘導体、シリコーン、シリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサン及びポリシラン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、EPR、SBR、EPDM)、含フッ素重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン)、及び炭化水素オレフィン(例えば、旭硝子株式会社製「LUMIFLON」(登録商標))、及び非晶質フルオロカーボン重合体又は共重合体(例えば、旭硝子株式会社製の「CYTOP」(登録商標)又はデュポン社製の「Teflon」(登録商標)AF)等が挙げられる。
無機高分子としては、アルコキシ基を有するシラン化合物の加水分解縮合物、並びにTi、Zr及びAlからなる群から選ばれた元素のアルコキシド化合物(以下、「特定アルコキシド化合物」ともいう。)を加水分解及び重縮合し、さらに所望により加熱、乾燥して得られるゾルゲル硬化物を挙げることができる。これらの無機高分子は、1種又は2種以上を用いてもよい。
上記ゾルゲル硬化物は、キズ及び磨耗に対して高い耐性を有するものが容易に製造できるという点から好ましい。
上記バインダ(C)として、アルコキシ基を有するシラン化合物の加水分解縮合物を含むバインダ組成物が好ましい。当該アルコキシ基を有するシラン化合物の加水分解縮合物は、(C’−1)〜(C’−5)から選択される1以上を含む。
(C’−1)アミノ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物
(C’−2)テトラアルコキシシラン化合物、
(C’−3)アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基を含まないオルガノアルコキシシラン化合物
(C’−4)エポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物
(C’−5)アルコキシ基を有するブロック化イソシアナトシラン化合物
バインダ組成物は、(C)成分として(C’−1)〜(C’−5)から選択される1以上を含む場合、さらに(C’−6)及び(C’−7)から選択される1以上を含んでもよい。
(C’−6)炭素間に二重結合を有するシラン化合物
(C’−7)メルカプト基及びアルコキシ基を有するシラン化合物
(C’−1)〜(C’−5)成分は、加水分解縮合物であり、(C’−6)〜(C’−7)成分は、加水分解縮合物であってもよい。加水分解縮合物は(C’−1)〜(C’−7)成分の単独の化合物の加水分解縮合物であってもよいし、(C’−1)〜(C’−7)成分の中の任意の2種以上からなる混合物の加水分解縮合物であってもよい。
アルコキシ基を含むシラン化合物とは、アルコキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物であり、アルコキシシラン化合物の部分縮合物とは、アルコキシシラン化合物の一部が縮合し、分子内にシロキサン結合(Si−O結合)を形成してなるポリアルコキシシラン化合物又はポリオルガノアルコキシシラン化合物を指す。
また、アルコキシ基を含むシラン化合物の加水分解縮合物とは、アルコキシ基を含むシラン化合物の加水分解縮合物の他に加水分解縮合前の該アルコキシ基を含むシラン化合物を含んでもよい。
アルコキシ基を有するシラン化合物の加水分解縮合物は、好ましくは(C’−1)〜(C’−5)の全てを含む。
(C’−1)アミノ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物
アミノ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物は、エポキシ基及びイソシアネート基を含まないアルコキシシラン化合物である。また、その部分縮合物(アミノ基含有ポリオルガノアルコキシシラン化合物)も用いることができる。これら化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物である、アミノ基含有オルガノアルコキシシラン化合物及びその部分縮合物は、例えば下記式(3)で表わすことができる。
Si(OR4−b ・・・(3)
[式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基;フェニル基;又はアミノ基(−NH基)、アミノアルキル基〔−(CH−NH基(ただし、xは1〜3の整数)〕)、アルキルアミノ基〔−NHR基(ただし、Rは炭素数1〜3のアルキル基)〕の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは、アミノ基、アミノアルキル基又はアルキルアミノ基のいずれかで置換された炭素数1〜3のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、bは1又は2である。Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のORは同一でも異なっていてもよい。]
上記式(3)において、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基については、後述する式(1)又は(2)と同じである。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基又はアミノ基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基である。好ましくはbは1である。
式(3)で表わされるアミノ基含有オルガノアルコキシシラン化合物の具体例としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N―(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
また、アミノ基含有ポリオルガノアルコキシシラン化合物としては、例えば、信越シリコーン株式会社製の「KBP−90」等が挙げられる。
(C’−2)テトラアルコキシシラン化合物
テトラアルコキシシラン化合物としては、テトラアルコキシシラン化合物又はシロキサン結合(Si−O結合)で結合された部分縮合物(ポリアルコキシシラン化合物)を用いることができる。これら化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
テトラアルコキシシラン化合物及びその部分縮合物は、例えば下記式(1)で表すことができ、特に下記式(6)で表される化合物が好適である。
Si(OR (1)
[式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシアルキル基である。複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
[式中、Rは、上記と同じであり、nは1〜15の整数である。]
式(1)及び(6)において、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、各種ブチル基が挙げられ、また、Rが炭素数1〜4のアルコキシアルキル基であるORとしては、例えば、2−メトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基等が挙げられる。
テトラアルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が挙げられる。
また、ポリアルコキシシラン化合物としては、多摩化学工業株式会社製の「Mシリケート51」「シリケート40」「シリケート45」、コルコート株式会社製の「メチルシリケート51」「メチルシリケート53A」「エチルシリケート40」「エチルシリケート48」等が挙げられる。
(C’−3)アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基を含まないオルガノアルコキシシラン化合物
オルガノアルコキシシラン化合物としては、オルガノアルコキシシラン化合物又はその部分縮合物を用いることができる。オルガノアルコキシシラン化合物は、アミノ基、エポキシ基、及びイソシアネート基を含まない。
これら化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オルガノアルコキシシラン化合物として、オルガノアルコキシシラン化合物及びその部分縮合物は、好ましくは2官能アルコキシシラン、3官能アルコキシシランであり、例えば下記式(2)で表わすことができ、特に下記式(7)で表される化合物が好適である。
Si(OR4−a ・・・(2)
[式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素化アルキル基又はフェニル基、Rは炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシアルキル基であり、aは1又は2である。Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のORは同一でも異なっていてもよい。]
[式中、R及びRは上記と同じであり、mは1〜15の整数である。]
式(2)及び(7)において、炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基等が挙げられ、フッ素化アルキル基としては、例えば、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基等が挙げられる。また、炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素数1〜4のアルキル基もしくはアルコキシアルキル基については、式(1)で説明した通りである。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基である。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基である。好ましくはaは1である。
式(2)で表わされるオルガノアルコキシシラン化合物の中で、3官能アルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、エチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリブトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルトリプロポキシシラン、デシルトリブトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフッ素化アルキル(トリアルコキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。また2種類のアルコキシ基を含むメチルジメトキシ(エトキシ)シラン、エチルジエトキシ(メトキシ)シラン等も挙げられる。
2官能アルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビス(2−メトキシエトキシ)ジメチルシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等が挙げられる。
ポリオルガノアルコキシシラン化合物の具体例としては、多摩化学工業株式会社製の「MTMS−A」、コルコート株式会社製の「SS−101」、東レ・ダウコーニング株式会社製の「AZ−6101」「SR2402」「AY42−163」等が挙げられる。
(C’−4)エポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物
エポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物は、エポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物であって、アミノ基及びイソシアネート基を含まないアルコキシシラン化合物である。また、その部分縮合物(エポキシ基含有ポリオルガノアルコキシシラン化合物)も用いることができる。これら化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基及びアルコキシ基を有するシラン化合物である、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン化合物及びその部分縮合物は、例えば下記式(4)で表わすことができる。
Si(OR4−c ・・・(4)
[式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基;フェニル基;又はグリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは、グリシドキシ基又は3,4−エポキシシクロヘキシル基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、cは1又は2である。Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のORは同一でも異なっていてもよい。]
上記式(4)において、炭素数1〜4のアルキル基については、前記式(1)で説明した通りであり、炭素数1〜6のアルキル基は前記式(2)の炭素数1〜10のアルキル基のうち炭素数1〜6のものである。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基又はグリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基又はグリシドキシ基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基である。好ましくは、bは2である。
式(4)で表わされるエポキシ基含有オルガノアルコキシシラン化合物の具体例としては、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(C’−5)アルコキシ基を有するブロック化イソシアネートシラン化合物
アルコキシ基を有するブロック化イソシアネートシラン化合物(一般的にブロック化イソシアナトシラン化合物、ブロック化イソシアナートシラン化合物とも称される)は、アルコキシ基及びブロック化イソシアネート基を含むが、アミノ基及びエポキシ基を含まないアルコキシシラン化合物である。また、その部分縮合物(ブロック化イソシアネート基含有ポリオルガノアルコキシシラン化合物)も用いることができる。これら化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、ブロック化イソシアナトシラン化合物とは、イソシアネート基をオキシム等のブロック剤で保護して不活性としておき、加熱により脱ブロック化してイソシアネート基が活性化(再生)されるイソシアナトシラン化合物(一般的にイソシアネートシラン化合物とも称される)である。
アルコキシ基を有するブロック化イソシアネートシラン化合物である、ブロック化イソシアネート基含有オルガノアルコキシシラン化合物及びその部分縮合物は、例えば下記式(5)で表わすことができる。
Si(OR4−d ・・・(5)
[式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基;フェニル基;又はブロック化イソシアネート基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基であり、Rの少なくとも1つは、ブロック化イソシアネート基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、dは1又は2である。Rが複数ある場合、複数のRは同一でも異なっていてもよく、複数のORは同一でも異なっていてもよい。]
上記式(5)において、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜6のアルキル基、については、前記式(1)又は(4)で説明した通りである。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基又はブロック化イソシアネート基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。好ましくはRは炭素数1〜4のアルキル基である。好ましくはdは1である。
前記式(5)で表わされるブロック化イソシアネート基含有オルガノアルコキシシラン化合物の具合例としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン等の化合物におけるイソシアネート基を、ブロック化剤で保護したものが挙げられる。これらの中で、好ましい化合物としては、3−ブロック化イソシアナトプロピルトリエトキシシランを挙げることができる。
イソシアネート基のブロック化剤としては、アセトオキシム、2−ブタノンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、メチルイソブチルケトオキシム等のオキシム化合物、ε−カプロラクタム等のラクタム類、モノアルキルフェノール(クレゾール、ノニルフェノール等)等のアルキルフェノール類、3,5−キシレノール、ジ−t−ブチルフェノール等のジアルキルフェノール類、トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルのようなアセト酢酸エステル等の活性メチレン化合物類、メタノール、エタノール、n−ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の水酸基含有エーテル類、乳酸エチル、乳酸アミル等の水酸基含有エステル類、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトアニリド、ダイマー酸アマイド等の酸アミド類、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、コハク酸イミド、フタル酸イミド等の酸イミド類等を使用できる。またブロック化剤解離温度を制御するため、ジブチル錫ジラウレート等の触媒を併用してもよい。
(C’−6)炭素間2重結合を有するシラン化合物
(C’−6)成分は、ビニル基、アクリル基、メタクリル基等の炭素間2重結合を有する基を含むシラン化合物であって、好ましくはアルコキシ基を含む。また、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基は含まない。
尚、(C’−6)成分の「炭素間2重結合」は、芳香族二重結合を含まない。本明細書において、芳香族二重結合とは、4n+2個(nは0以上の整数)のπ電子を有する環状共役化合物における二重結合である。
バインダ組成物は(C’−6)炭素間2重結合を有するシラン化合物を含む場合、熱硬化に加え、光硬化(UV硬化)、電子線硬化(EB硬化)が可能となる。
炭素間2重結合を有するシラン化合物としては、その部分縮合物(炭素間2重結合を有する基を含有するポリオルガノアルコキシシラン化合物)も用いることができる。これら化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素間2重結合を有するシラン化合物及びその部分縮合物は、例えば下記式(20)で表すことができる。
20 Si(OR214−e ・・・(20)
[式中、R20は炭素数1〜4のアルキル基;ビニル基;又はビニル基、アクリル基及びメタクリル基の中から選ばれる1以上の基を有する置換基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基であり、R20の少なくとも1つは、ビニル基、アクリル基及びメタクリル基の中から選ばれる1以上の基を有する置換基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。R21は炭素数1〜4のアルキル基であり、eは1又は2である。R20が複数ある場合、複数のR20は同一でも異なっていてもよく、複数のOR21は同一でも異なっていてもよい。]
上記式(20)において、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基については、式(1)又は(4)で説明した通りである。好ましくは、R20は炭素数1〜4のアルキル基、又はビニル基、アクリル基及びメタクリル基の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。好ましくは、eは1である。
ビニル基、アクリル基及びメタクリル基の中から選ばれる1以上の基を有する置換基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基は、好ましくは、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基及びメタクリロキシ基の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基であり、より好ましくは、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基及びメタクリロキシ基の中から選ばれる1以上の基で置換された炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4)のアルキル基である。
式(20)で表される化合物の具体例として、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリルシラン化合物(アクリル基含有シラン化合物)、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シラン化合物が挙げられる。
(C’−7)メルカプト基及びアルコキシ基を有するシラン化合物
メルカプト基及びアルコキシ基を有するシラン化合物は、チオール基(IUPAC;別名は水硫基、メルカプト基、スルフヒドリル基)を有する基を含むシラン化合物であって、アルコキシ基を含む。また、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基は含まない。また、トリアジンチオール基を有する基を含むシラン化合物であってもよい。
(C’−7)成分の具体例としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。アルコキシオリゴマーとしては、信越化学工業株式会社製X−41−1805、X−41−1818、X−41−1810等が挙げられる。さらに、トリアジンチオール基含有シリコーンアルコキシオリゴマーとしては、信越化学工業株式会社製X−24−9451、X−24−9452,X−24−9453,X−24−9454が挙げられる。
バインダ組成物は、粒子成分(C”)を含んでもよい。粒子成分(C”)としては、有機高分子微粒子及び無機微粒子が挙げられる。粒子成分(C”)は、有機高分子微粒子及び無機微粒子のいずれか一方を含んでもよく、有機高分子微粒子及び無機微粒子の両方を含んでもよい。
有機高分子微粒子としては、エチレン系不飽和化合物(アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、スチレン、酢酸ビニル等)を重合させたものが例示される。
有機高分子微粒子は、製造性、組成物中における分散性、組成物の塗工性及び塗膜の透明性等の観点から、平均粒子径が1〜200nmの範囲にあるものが好ましく、1〜100nmの範囲にあるものがより好ましい。尚、この有機高分子微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。また、動的光散乱法によって測定できない場合は、X線小角散乱法によって測定してもよい。
上記動的光散乱法は、例えば有機高分子微粒子をイオン交換水で100倍希釈した液を動的光散乱法粒子径分布測定装置(ベックマンコールター株式会社製、コールターカウンターN5)を用いて測定を行い、ユニモーダル解析(単分散モード解析)による平均粒子径を求める。これを5回繰り返し行い、5回分の平均粒子径の平均値を有機高分子の平均粒子径とすることができる。
当該有機高分子微粒子は、分散媒体に分散させた形態で用いることが好ましく、分散媒体としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール等の低級アルコール、メチルセロソルブ等のセロソルブ類等が好ましく挙げられる。このような分散媒体を用いることにより、有機高分子微粒子の分散性が向上し、沈降を防ぐことができる。さらに好ましくは分散媒体が水のものである。分散媒体が水の場合、前述した(C’−1)〜(C’−5)成分由来のSi−O結合を含むマトリックスの形成の際の、シラン化合物の加水分解、縮合反応にも使用できる。
有機高分子微粒子の製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法、例えば、乳化重合法や微細懸濁重合法等を採用することができる。
乳化重合法は、エチレン性不飽和単量体、水性分散媒体、アニオン性又はノニオン性界面活性剤からなる乳化剤及び水溶性重合開始剤を用いて、微細な液滴に乳化させて上記単量体混合物を包む界面活性剤ミセル層内で重合を進め、有機高分子微粒子の分散液を得る方法である。
一方、微細懸濁重合液は、まず、水性媒体中に、前記単量体、油溶性重合開始剤、乳化剤及び必要に応じその他添加剤を加えてプレミックスし、ホモジナイザにより均質化処理して、油滴の粒子径調節を行う。次いで均質化処理した液を重合器に送り、重合反応を行い、有機高分子微粒子の分散液を得る方法である。
上記いずれかの方法も、重合温度は30〜80℃程度である。
乳化重合に用いる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性過酸化物、これらの開始剤又はクメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシドに、酸性亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等の水溶性アゾ化合物等を挙げることができる。
一方、微細懸濁重合に用いる油溶性重合開始剤としては、例えば、ジアシルパーオキシド類、ケトンパーオキシド類、パーオキシエステル類、パーオキシジカーボネート類等の油溶性有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
有機高分子微粒子の具体例としては、一方社油脂工業株式会社製のエマルション系高分子紫外線吸収剤ULS−700、ULS−1700、ULS−383MA、ULS−1383MA、ULS−383MG、ULS−385MG、ULS−1383MG、ULS−1385MG、ULS−635MH等、日信化学工業株式会社製ビニブラン700、701、711、日本ゼオン株式会社製ニポールシリーズ等が挙げられる。
前記有機高分子微粒子を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機微粒子としては、銀や銅等の金属微粒子、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ITO、ATO(三酸化アンチモン)等の金属酸化物微粒子が挙げられる。
無機微粒子は好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカとは、コロイドシリカ、コロイド珪酸ともいう。水中では、水和によって表面にSi−OH基を有する酸化ケイ素のコロイド懸濁液をいい、珪酸ナトリウムの水溶液に塩酸を加えると生成する。最近は、新しい調製法が次々に開発され、非水溶液中に分散したものや、気相法で作った微粉末状のものがあり、また、中空タイプのものもあり、粒子径も数nmから数μmのものまで多彩である。
無機微粒子の平均粒子径としては1〜200nm程度のものが好ましい。粒子の組成は不定で、シロキサン結合(−Si−O−、−Si−O−Si−)を形成して、高分子化しているものもある。粒子表面は多孔性で、水中では一般的に負に帯電している。
尚、上記平均粒子径は例えば無機微粒子を乾燥・焼成・粉砕した後、BET比表面積測定装置(モノソーブMS−17)を用いて、窒素吸着法によりBET比表面積を求め、真状粒子と仮定したときの粒子径に換算することで測定できる。BET比表面積により平均粒子系が測定できない場合は、X線小角散乱法によって測定してもよい。
コロイダルシリカの市販品としては、扶桑化学工業株式会社製「超高純度コロイダルシリカ」クォートロンPLシリーズ(品名:PL−1、PL−3、PL−7)、同社製「高純度オルガノゾル」や、日産化学工業株式会社製「コロイダルシリカ(品名:スノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスO、スノーテックスO−40、スノーテックスC、スノーテックスN、スノーテックスS、スノーテックス20L、スノーテックスOL等)」や「オルガノシリカゾル(品名:メタノールシリカゾル、MA−ST−MS、MA−ST−L、IPA−ST、IPA−ST−MS、IPA−ST−L、IPA−ST−ZL、IPA−ST−UP、EG−ST、NPC−ST−30、MEK−ST、MEK−ST−MS、MIBK−ST、XBA−ST、PMA−ST、DMAC−ST、PGM−ST等)」が挙げられる。
(C”)成分として、コロイダルシリカを、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
バインダ組成物は、分散媒体(D)を含んでいてもよい。
前述したように、バインダ組成物は、(C”)成分の無機微粒子、有機微粒子等が分散媒体中に分散された状態で使用することができる。バインダ組成物に用いる分散媒体(D)は、上記粒子(C”)、ナノワイヤ(A)等を均一に混合し分散できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、水の他、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類等の有機系分散媒体を挙げることができる。これら有機系分散媒体のうち、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
その他の分散媒体の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、キシレン、ジクロロエタン、トルエン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸エトキシエチル等が挙げられる。
これらの分散媒体の中で、分散媒体としての性能の観点から、水及びアルコール類が好ましい。
(D)成分として、前記分散媒体を1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(任意添加成分)
バインダ組成物には、上記成分以外に、必要に応じ、従来組成物に用いられる公知の各種添加成分(E)を適宜含有させることができる。
必要に応じ含有させることのできる添加成分(E)としては、例えば、分散安定剤、レベリング剤、可とう性付与剤、さらには潤滑性付与剤、酸化防止剤、硫化防止剤、金属腐食防止剤、防腐剤、ブルーイング剤、消泡剤(発泡防止剤)、光安定化剤、耐候性付与剤、着色剤、微粒子の分散剤(沈降防止剤)や微粒子表面活性の改質剤、触媒、光重合開始剤、チクソトロピック剤等を挙げることができる。
〈レベリング剤〉
バインダ組成物には、得られる印刷膜の平滑性、並びにコートの際のフロー性を向上させるために、レベリング剤を添加することができ、それらの添加剤として、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、並びに、フッ素系とアクリル系が複合化されたレベリング剤等が挙げられる。全て、印刷膜表面に働き、表面張力を低下させる。各々特徴があり、目的に応じて使用することができる。表面張力の低下能力は、シリコーン系とフッ素系が強いが、アクリル系とビニル系はリコートを行う場合、濡れ不良が生じにくく有利である。
シリコーン系レベリング剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体等を用いることができる。シリコーン系レベリング剤の市販品としては、東レ・ダウコーニング株式会社製FZ−2118、FZ−77、FZ−2161等、信越化学工業株式会社製KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341等、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4453、TSF4460等、ビックケミー・ジャパン株式会社製BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−348、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−3510、BYK−3570等のポリエーテル変性シリコーンオイル(ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル)等を挙げることができる。
また、150℃以上の耐熱性が必要な場合は、ポリエステル変性やベンゼン環を有するアラルキル変性シリコーンオイルが適している。ポリエステル変性シリコーンオイルの市販品としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製BYK−310、BYK−315、BYK−370等、ベンゼン環を有するアラルキル変性シリコーンオイルの市販品としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製BYK−322、BYK−323等が挙げられる。
フッ素系レベリング剤としては、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体等を用いることができる。
フッ素系レベリング剤の市販品としては、DIC株式会社製のMEGAFACシリーズ、住友スリーエム株式会社製のFCシリーズ等を挙げられる。
アクリル系レベリング剤の市販品としては、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK358N、BYK−361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392等、フッ素を導入したBYK−340等が挙げられる。
このようなレベリング剤を配合することにより、印刷膜の仕上がり外観が改善され、均一な印刷膜を形成することができる。レベリング剤の使用量は、組成物全量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.02〜5質量%である。
レベリング剤を配合する方法としては、バインダ組成物を調製する際に配合してもよいし、印刷を行う直前に印刷用インクに配合してもよく、さらにはバインダ組成物の調製と印刷を行う直前の両方の段階で配合してもよい。
本発明の一実施形態の印刷用インクに用いられる分散媒体(D)及び添加成分(E)としては、上記バインダ組成物に用いられる分散媒体(D)及び添加成分(E)と同様のものを用いることができる。
本発明の一実施形態の印刷用インクは、本発明の効果を損なわない範囲で上記(A)〜(E)成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態の印刷用インクにおける(A)〜(E)成分の合計重量に対する各成分の配合割合(重量%)は以下の範囲であることが好ましい。
ナノワイヤ(A):0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.3〜3重量%
粘度調整剤(B):0〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%
バインダ(C):0〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%
分散媒体(D):70〜99.5重量%、好ましくは80〜99.3重量%、より好ましくは90〜99.0重量%
添加剤(E):0〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%
また、(A)〜(C)及び(E)成分の合計重量(固形分総量)に対する各成分の配合割合(重量%)は以下の範囲であることが好ましい。
ナノワイヤ(A):1〜100重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%
粘度調整剤(B):0〜99重量%、好ましくは1〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%
バインダ(C):0〜80重量%、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%
添加剤(E):0〜60重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.2〜15重量%
(A)〜(C)及び(E)成分の合計重量(固形分総量)100重量部に対する分散媒体(D)の配合割合は、120〜50000重量部の範囲内であり、好ましくは500〜20000重量部の範囲内であり、より好ましくは1000〜15000重量部の範囲内である。
上記配合割合であれば、本発明で規定するレオロジー特性を満たす印刷用インクを製造することが容易となる。
次に、印刷用インクの製造方法について説明する。
ナノワイヤ(A)が破壊されずに均一に分散した印刷用インクが製造できれば、混合方法、混合順序は特に限定されないが、(B)〜(E)成分を混合した組成物を調製し、これにナノワイヤ(A)の水分散液を加えることが望ましい。
また、粘度調整剤(B)は、固体であっても液体であっても、予め分散媒体と混合してからナノワイヤと混合するとよい。
[印刷用インクの調製方法]
本発明の一実施形態の印刷用インクは、上記バインダ組成物を調製し、これにナノワイヤ(A)を加えて製造することが好ましい。
バインダ組成物は、(C’−2)、(C’−3)成分及び(C’−4)成分と、(C”)〜(D)成分とを接触させて得られた反応液に、(C’−5)成分を加えて反応させた後、さらに(C’−1)成分を加えて反応させて組成物を調製する。
また、(C’−2)、(C’−3)成分及び(C’−4)成分と、(C”)〜(D)成分、必要に応じて(E)成分の触媒を含む混合物を加熱することにより得られる反応生成物に、(C’−5)成分を加えて反応させた後、さらに(C’−1)成分を加えて反応させて組成物を調製することがより好ましい。
具体的には、少なくとも(C’−2)、(C’−3)成分及び(C’−4)成分と、(C”)成分である有機高分子微粒子及び、必要に応じて(E)成分の触媒を含む第1混合液を調製し、次に(C”)成分及び、必要に応じて(E)成分の触媒からなる無機微粒子分散液を混合して第2混合液を調製し、さらに(C’−5)成分を加えて第3混合液を調製する。この第3混合液に(C’−1)成分を加えて組成物を調製する。
このように、各成分を分離してバインダ組成物を調製した後にナノワイヤ(A)を添加、混合すると、印刷用インクの液保存安定性(ゲル化しない等)が向上するため好ましい。
特に、(C”)成分の添加量増により液中の水の量が増加した際に、この効果がより発揮される。例えば、(C’−2)、(C’−3)、(C’−4)、(C”)成分である有機高分子微粒子及び、必要に応じて(E)成分の触媒を混合した後、(C”)成分である無機微粒子を加える。次に、(C’−5)成分を混合し、さらに(C’−1)成分を加えて、組成物を調製するとよい。
尚、分散媒体(D)は、印刷用インクを調製後、さらに加えることにより印刷用インクを希釈することができる。
上記バインダ組成物及び印刷用インクのような混合材料の液保存安定性は、液pHに影響し易いことが知られている(例えば、「ゾル−ゲル法のナノテクノロジーへの応用/監修:作花済夫」シーエムシー出版)。バインダ組成物の調製においては、(C’−1)成分及び(C”)成分である無機微粒子として塩基性成分が混合されるため、混合順序によって液pHが変化する。液pH値、例えば、校正用pH標準液で補正したポータブルpHメーター(ハンナ社製:商品名 チェッカー1)で評価した液pH値としては、上記の第一の混合液及び第二の混合液はpH≦6、第三の混合液及び最終の混合液はpH≦7とすることが好ましい。特に、第三の混合液、即ち(C’−1)成分の混合時に液pHが8を越えると、液安定性が低下する恐れがある。組成物の調製開始時から調製終了時まで、液は酸性状態に保つことが好ましい。即ち、このような条件が維持されるような手順で、組成物を調製することが好ましい。
また、上記の第1の混合液、第2の混合液、及び第3の混合液は、各成分の混合後、加熱処理することが好ましい。温度は、好ましくは30℃〜130℃、より好ましくは、50℃〜90℃であり、加熱処理時間は、好ましくは30分〜24時間、より好ましくは、1時間〜8時間である。混合、加熱手段については、均一に混合、加熱できる手段であれば特に制限はない。
このように加熱することで、液内の(C’−1)、(C’−2)、(C’−3)、(C’−4)及び(C’−5)成分の縮合反応が進み、耐久性が向上する。(C’−1)、(C’−2)、(C’−3)、(C’−4)及び(C’−5)成分の反応は、溶液Si−NMRで解析可能であり、それにより適した構造に設計できる。30℃未満や30分未満では反応が極端に遅い場合が多く、また130℃超や24時間超の場合には、(C’−1)、(C’−2)、(C’−3)、(C’−4)及び(C’−5)成分の反応が進みすぎ、バインダ組成物のゲル化が進行し、分散媒体で希釈できなくなり、その結果、ナノワイヤを混合することができなくなるおそれがある。
(C’−1)成分を混合した後のバインダ組成物も、加熱処理することが好ましい。室温での混合の場合、攪拌効率の影響を受けやすく、これに起因して(C’−1)成分の分散度が低い場合は、塗膜の透明性(全光線透過率低下、ヘイズ上昇)が低下する恐れがある。温度は、好ましくは30℃〜130℃、より好ましくは50℃〜90℃であり、時間は、好ましくは5分〜10時間、より好ましくは15分〜6時間である。混合、加熱手段については、均一に混合、加熱できる手段であれば特に制限はない。30℃未満や5分未満では加熱処理の効果が乏しい場合が多く、また130℃超や10時間超だと、バインダ組成物のゲル化が進行し、分散媒体で希釈できなくなり、その結果、ナノワイヤを混合することができなくなるおそれがある。
印刷用インクのレオロジー特性は、粘度調整剤(B)及び/又はバインダ(C)の種類やインクへの配合割合によって調節することができる。特に、有機高分子及び無機高分子を含む複合バインダは、有機成分と無機成分の両方を含み、レオロジー特性の調節がし易い。
本発明の一実施形態の印刷用インクは、スクリーン印刷又はフレキソ印刷用のインクとして使用できる。
特に、導電性ナノワイヤを(A)成分として含む印刷用インクをスクリーン印刷に用いることにより、パターン化された微細な透明電極回路を容易に製造できる。
B.印刷膜、印刷膜付き基板及びその製造方法等
本発明の一実施形態の印刷膜は、上記印刷用インクを用いて、基材上にスクリーン印刷又はフレキソ印刷して得られることを特徴とする。
基材に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン系樹脂(例:JSR株式会社製「ARTON」、日本ゼオン株式会社製「ZEONOR」「ZEONEX」)、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート等のセルロース系樹脂、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、プラスチックレンズ用樹脂ポリメチルメタクリレート、脂環式ポリオレフィン、アクリロニトリルスチレン共重合体、メタクリルスチレン共重合体、脂環式アクリル、ジグリコールジアリルカーボネート、ジアリルフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エピスルフィド等を挙げることができ、前記ポリマーを複数混合したポリマーアロイ・ポリマーブレンドでもよい。また、上記樹脂を複数積層した積層構造体でもよい。上記樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂(特にポリエチレンテレフタラート)、ポリオレフィン系樹脂及びポリカーボネート樹脂が好ましい。
これらの樹脂を素材とする基材は、透明、半透明のいずれであってもよく、また着色されていてもよいし、無着色のものでもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。透明性に優れ、無着色のものが好ましい。
また、基材は樹脂製基材に限定されず、ガラス基材であってもよい。
基材の厚さに特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常、5μm〜30mm程度、好ましくは15μm〜10mmである。
図3は、本発明で規定するレオロジー特性を満たしている印刷用インクを用いてスクリーン印刷して得られた線(L/S=150/150(μm))の光学顕微鏡写真(倍率:171倍)である。これに対し図4は、本発明で規定するレオロジー特性を満たしていない印刷用インクを用いてスクリーン印刷して得られた線(L/S=150/300(μm))の光学顕微鏡写真(倍率: 171倍)である。
本発明の一実施形態の印刷膜は、少なくともナノワイヤ(A)、及び粘度調整剤(B)及び/又はバインダ(C)を含み、所望の形状(例えば、電極回路パターン)で基材上に付着してなる。
スクリーン印刷した直後の印刷膜はナノワイヤ(A)、分散媒体(D)、及び、好ましくは粘度調整剤(B)及び/又はバインダ(C)を含んでいるが、分散媒体(D)は印刷膜から揮発し、印刷膜は基材に密着する。
本発明の一実施形態の印刷膜のドライ膜厚は、好ましくは0.001〜500μmの範囲内であり、より好ましくは0.005〜100μmの範囲内であり、さらに好ましくは0.01〜10μmの範囲内である。
本発明の一実施形態の印刷膜の表面抵抗は、好ましくは200Ω/□以下であり、より好ましくは100Ω/□以下である。
本発明の一実施形態の印刷膜の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
本発明の一実施形態の印刷膜では、スクリーン印刷によって500μm以下の線幅を実現できる。線幅は、得られる印刷膜の用途に応じて500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、170μm以下、160μm以下、150μm以下、140μm以下、130μm以下、120μm以下、110μm以下、及び100μm以下と適宜選択すればよい。
本発明の一実施形態の印刷膜付き基板は、上記印刷膜(電極回路パターン)を有し、タッチパネル等の電子機器の部品として用いることができる。
本発明の一実施形態の印刷膜の製造方法は、上記印刷用インクを、基材上にスクリーン印刷又はフレキソ印刷によって付着させることを含むことを特徴とする。
スクリーン印刷及びフレキソ印刷の方法は特に限定されず、公知のものを用いればよい。
本発明の一実施形態の印刷用インクによれば、325メッシュ以上のスクリーンでもナノワイヤが通過でき、微細な線幅の回路パターンを形成できる。スクリーンの目開きは、目的とする印刷膜に応じて適宜選択すればよいが、例えば、電極回路を目的とする場合には、300〜650メッシュの範囲が好ましく、400〜500メッシュの範囲がより好ましい。
本発明の一実施形態の印刷膜の製造方法によれば、スクリーン印刷又はフレキソ印刷のみでダイレクトに基材上に回路パターンを形成できるため、従来のITO透明電極のような真空設備、パターニング工程が不要である。そのため、工程が簡略化でき、導入も容易である。
また、基材樹脂の選択の自由度が高く、熱に弱い基材、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)以外の基材(フィルム)への印刷も可能である。
上記印刷膜の製造方法によれば、平面状の基材だけでなく曲面状の基材であっても印刷膜を形成できる。
本発明の一実施形態の電極回路付き基板の製造方法は、導電性ナノワイヤ(A)を含む前記印刷用インクを用い、スクリーン印刷又はフレキソ印刷によって、基材上に所望の電極回路を形成し、電極回路付き基板を製造する工程を含むことを特徴とする。
上記方法によれば、基材上にダイレクトに電極回路を作製でき、電極回路付き基板を容易に製造することができる。
本発明の一実施形態のタッチパネルの製造方法は、導電性ナノワイヤ(A)を含む前記印刷用インクを用い、スクリーン印刷又はフレキソ印刷によって、基材上に所望の電極回路を形成し、電極回路付き基板を製造する工程、及び前記電極回路付き基板をタッチパネルに組み込む工程を含むことを特徴とする。
本発明の一実施形態の電極回路付き基板を用いることにより、タッチパネル等の電子機器の製造が容易になる。
以下、実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
[バインダ組成物の製造]
製造例1
表1の組成を有するバインダ組成物を調製した。
尚、表1の商品名で記載した成分は、具体的には以下である:
ULS−1385MG有機高分子微粒子、一方社油脂工業株式会社製(水分散/固形分濃度30質量%)、平均粒子径55〜75nm(前述の動的光散乱法により測定))
Mシリケート51:テトラメトキシシランの部分縮合物(平均3〜5量体)であるポリアルコキシシラン、多摩化学工業株式会社製
IPA−ST−L:コロイダルシリカ、日産化学工業株式会社製(イソプロパノール(IPA)分散、コロイダルシリカ濃度30質量%、平均粒子径40〜50nm(前述のBET比表面積測定装置を用いた測定法で測定))
IPA−ST:コロイダルシリカ、日産化学工業株式会社製(IPA分散、コロイダルシリカ濃度30質量%、平均粒子径10〜15nm(前述のBET比表面積測定装置を用いた測定法で測定))
容積50mlのサンプル管に、有機高分子微粒子:ULS−1385MG((C'')成分+(D)成分)0.80gを仕込み、500rpmで撹拌しながら、1−メトキシ−2−プロパノール((D)成分)4.3g、水((D)成分)0.50g、酢酸((E)成分)0.50g、Mシリケート51((C’−2)成分)0.40g、メチルトリメトキシシラン((C’−3)成分)1.5g、ジメトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン((C’−4)成分)0.6gの順に、それぞれ1分間かけて滴下した。引き続き、室温、500rpmで60分撹拌後、一日静置し、これをA液とした。
容積20mlのサンプル管に、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン1.10g及び2−ブタノンオキシム(イソシアネート基のブロック化剤)0.4gを仕込み、室温、500rpmで10分撹拌後、一日静置し、これをC液とした。イソシアネート基がブロック化されたことについては、13C−NMRでイソシアネート基のシグナルが消失することにより確認した。3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランと2−ブタノンオキシムの配合量の合計をブロック化イソシアナトシラン化合物:(C’−5)成分の量とした。
冷却管を取り付けた200ml三口フラスコに、A液と撹拌子を入れ、500rpmで撹拌しながら、B液としてIPA−ST−L((C”)成分+(D)成分)6.60gを5分間かけて滴下し、室温で60分間撹拌した。続いて、窒素気流下、600rpm、80℃で3時間加熱した。引き続き、C液を加え、同条件にて80℃で4時間撹拌後、室温で一晩静置した。
さらに、これにD液として3−アミノプロピルトリメトキシシラン((C’−1)成分)0.40gを2分間かけて滴下した。室温で10分撹拌後、さらに窒素気流下、700rpm、80℃で3時間加熱した。
製造例2
表1に示す成分及び配合量を用いた他は製造例1と同様にして組成物を調製した。
[印刷用インクの製造]
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである:
・2wt%銀ナノワイヤA1水分散液:星光PMC株式会社製「銀ナノワイヤ水性分散液 T−AG103」(固形分濃度:2wt%,平均直径:40nm,平均長:20μm)原液
・1.5wt%銀ナノワイヤA1水分散液:星光PMC株式会社製「銀ナノワイヤ水性分散液 T−AG103」(固形分濃度:2wt%,平均直径:40nm,平均長:20μm)に水を加え、固形分濃度1.5wt%の分散液とした。
・1.5wt%銀ナノワイヤA2水分散液:星光PMC株式会社製「銀ナノワイヤ水性分散液 T−AG103」(固形分濃度:2wt%,平均直径:40nm,平均長:12μm)に水を加え、固形分濃度1.5wt%の分散液とした。
・1wt%銀ナノワイヤA1水分散液:星光PMC株式会社製「銀ナノワイヤ水性分散液 T−AG103」(固形分濃度:2wt%,平均直径:40nm,平均長:20μm)に水を加え、固形分濃度1wt%の分散液とした。
・3wt%60SH−10000溶液:信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース「メトローズ 60SH−10000」(粉末)をジエチレングリコール/水混合分散媒体に溶解させ、固形分濃度3wt%の溶液とした。
・3wt%65SH−30000溶液:信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース「メトローズ 65SH−30000」(粉末)を1,3−ブタンジオール/水混合分散媒体に溶解させ、固形分濃度3wt%の溶液とした。
・3wt%60SH−10000溶液:信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース「メトローズ 60SH−10000」(粉末)を1,3−ブタンジオール/水混合分散媒体に溶解させ、固形分濃度3wt%の溶液とした。
・アロンA−7185:東亞合成株式会社製「高分子カルボン酸系増粘剤 アロンA−7185」(固形分濃度17%)原液
・6wt%アロンA−7185溶液:東亞合成株式会社製「高分子カルボン酸系増粘剤 アロンA−7185」(固形分濃度17%)にジエチレングリコール/水混合分散媒体を加え、固形分濃度6wt%の溶液とした。
・チノビスADE:BASFジャパン株式会社製「粘性調整剤 アニオン性ポリマー チノビスADE」原液
・1wt%レオジック260H溶液:東亞合成株式会社製「架橋型アクリル系水性樹脂 レオジック260H」(粉末)を1,3−ブタンジオール/水混合分散媒体に溶解させ、固形分濃度1wt%の溶液とした。
・1wt%レオジック845H溶液:東亞合成株式会社製「架橋型アクリル系水性樹脂 レオジック845H」(粉末)を1,3−ブタンジオール/水混合分散媒体に溶解させ、固形分濃度1wt%の溶液とした。
・0.5wt%ASPU112溶液:DIC株式会社製ポリウレタン「クリスボンASPU112」(固形分濃度30wt%,IPA溶液)にIPAを加え、固形分濃度0.5wt%の溶液とした。
・0.5wt%ジュリマーA−613溶液:東亞合成株式会社製アクリルポリマー「ジュリマーA−613」(固形分濃度25wt%,水溶液)に水を加え、固形分濃度0.5wt%の溶液とした。
実施例1
2wt%銀ナノワイヤA1水分散液((A)成分+(D)成分)3.75gと2wt%製造物2溶液((C)成分+(D)成分)3.75gを混合し、さらに3wt%60SH−10000溶液((B)成分+(D)成分)5gを加え、株式会社シンキー製「自転公転ミキサー あわとり練太郎ARE−250」を用いて撹拌し、印刷用インクを得た。
得られた印刷用インクについて、レオロジー特性の評価を行った。
<レオロジー特性(貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、損失正接tanδ)の評価>
Anton Paar社製レオメータ「Physica MCR 301」を用いて、以下の手順で測定した。測定は室温(25℃)で、コーンプレートフィクスチャー(直径50mm、傾斜角1°)を用いた。
まず、25℃に温調した測定部(コーンプレート間のギャップ)にサンプルを挿入し、せん断速度1s−1で60秒間せん断変形を与えた後にせん断を停止し120秒間静置した。次に線形応答領域であるひずみ1%で角周波数を500rad/sから0.1rad/sに変化させながら貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、損失正接tanδを測定した。
固体成分を含むサンプルでのレオロジー測定では測定結果が、サンプルが事前に受けた変形の履歴(具体的にはサンプル挿入時の変形の度合い等)に影響されることがある。そのため、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、損失正接tanδを測定する前に、一定のせん断変形と静置時間を与えて状態を整えた。
得られたレオロジー特性値を表2に示す。
角周波数312rad/sにおける損失正接tanδを横軸とし、角周波数1rad/sにおける損失正接tanδを縦軸としてプロットしたグラフを図2に示す。
また、得られた印刷用インクを、東レ株式会社製易接着PETフィルムU48(100μm厚)上に、20mm角の四角形がパターニングされたスクリーン版(ステンレスメッシュ,325メッシュ,線径16μm)を用いて、スクリーン印刷を行った。印刷膜は100℃で30分乾燥させた。
得られた印刷膜の全光線透過率,ヘイズ,表面抵抗を測定した。得られた結果を表2に示す。
(1)全光線透過率
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)にて、ASTMD1003に準拠し、基材及び印刷膜からなる積層体を用いて基材を基準に印刷膜の全光線透過率を測定した。
(2)ヘイズ
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)にて、ASTMD1003に準拠し、基材及び印刷膜からなる積層体を用いて基材を基準に印刷膜のヘイズ値を測定した。
(3)表面抵抗測定
低抵抗率計(Loresta−GP MCP−T−610、三菱化学製)にて、JIS K 7194に準拠し、四探針測定法により印刷膜の表面抵抗を測定した。
実施例2〜4,7〜10,及び比較例1〜5
表2に示す組成とした以外は実施例1と同様の手順で印刷用インク及び印刷膜を製造し、評価した。得られた結果を表2及び図2に示す。
実施例5
3wt%60SH−10000溶液((B)成分+(D)成分)3gと2wt%製造物2溶液((C)成分+(D)成分)5.25gを、あわとり練太郎ARE−250を用いて撹拌し、さらに1wt%銀ナノワイヤA1水分散液((A)成分+(D)成分)5.25gを加え、再度あわとり練太郎ARE−250を用いて撹拌することで印刷用インクを得た。
得られた印刷用インクを用いて実施例1と同様にして印刷膜を製造した。得られた印刷用インク及び印刷膜に関し、実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表2及び図2に示す。
実施例6、11及び12
表2に示す組成とした以外は実施例5と同様の手順で印刷用インク及び印刷膜を製造し、評価した。得られた結果を表2及び図2に示す。
表2−3中の「O.L.」はサンプルに流れる電流が規定されている電流値に達せず、表面抵抗値の測定不可であったことを意味する。
実施例と比較例とで、印刷用インクの見かけ粘度は同等であった。
表2の結果から、銀ナノワイヤの含量、全光線透過率及びヘイズが同等であっても、312rad/sでの損失正接tanδが0.4未満の比較例では、表面抵抗値が測定不可であり、スクリーン印刷で電極回路をうまく形成できなかった。これに対し、312rad/sでの損失正接tanδが0.4以上の実施例では、表面抵抗値が小さく、電極回路として使用可能であった。
図2のグラフから、312rad/sでの損失正接tanδが0.4未満であり、かつ1rad/sでの損失正接tanδが0.15未満の範囲では、スクリーン印刷によって、電極回路を形成することが困難であることがわかる。
本発明の一実施形態の印刷用インクによって、プリンテッドエレクトロニクス、印刷による回路形成が可能となる。特に透明性を求められるタッチパネルやアンテナ等の透明電極製造に有用である。
1 基材(ワーク)
2 メッシュ(スクリーン)
3 版型(レジスト)
4 インク
5 スキージ
A クリアランス
B スキージ印圧
C スキージ角度
D スキージ速度

Claims (20)

  1. 少なくともナノワイヤ(A)と分散媒体(D)とを含む印刷用インクであって、
    25℃で測定した角周波数312rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.4以上である、印刷用インク。
  2. さらに、25℃で測定した角周波数1rad/sにおける、前記印刷用インクの貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’で表される損失正接tanδが0.15以上である、請求項1に記載の印刷用インク。
  3. 前記ナノワイヤ(A)が、導電性ナノワイヤである、請求項1又は2に記載の印刷用インク。
  4. 前記導電性ナノワイヤが、銀又は銅を主成分とする金属ナノワイヤである、請求項3に記載の印刷用インク。
  5. 前記ナノワイヤ(A)のアスペクト比が10以上であり、平均直径が150nm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の印刷用インク。
  6. 前記分散媒体(D)が、水、及び沸点が160℃以上240℃以下の有機分散媒体から選択される1種以上との混合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の印刷用インク。
  7. さらに、粘度調整剤(B)を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の印刷用インク。
  8. 前記粘度調製剤(B)が、セルロース系樹脂及びアクリル系樹脂からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項7に記載の印刷用インク。
  9. さらに、バインダ(C)を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の印刷用インク。
  10. 前記バインダが、有機高分子及び無機高分子のいずれか一方又は両方を含む、請求項9に記載の印刷用インク。
  11. 前記25℃で測定した角周波数1rad/sにおける貯蔵弾性率G”が、200Pa以下である、請求項1〜10のいずれかに記載の印刷用インク。
  12. スクリーン印刷又はフレキソ印刷に用いる、請求項1〜11のいずれかに記載の印刷用インク。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の印刷用インクを、基材上にスクリーン印刷又はフレキソ印刷して得られる印刷膜。
  14. 表面抵抗が、100Ω/□以下である、請求項13に記載の印刷膜。
  15. 全光線透過率が85%以上である、請求項13又は14に記載の印刷膜。
  16. 請求項13〜15のいずれかに記載の印刷膜付き基板。
  17. 請求項16に記載の印刷膜付き基板を用いたタッチパネル。
  18. 請求項1〜12のいずれかに記載の印刷用インクを、基材上にスクリーン印刷又はフレキソ印刷によって付着させることを含む、印刷膜の製造方法。
  19. 請求項3〜12のいずれかに記載の印刷用インクを、スクリーン印刷又はフレキソ印刷によって、基材上に所望の電極回路を形成し、電極回路付き基板を製造する工程を含む、電極回路付き基板の製造方法。
  20. 請求項3〜12のいずれかに記載の印刷用インクを用い、スクリーン印刷又はフレキソ印刷によって、基材上に所望の電極回路を形成し、電極回路付き基板を製造する工程、及び
    前記電極回路付き基板をタッチパネルに組み込む工程
    を含む、タッチパネルの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018207931A1 (ja) 2017-05-12 2018-11-15 三井化学株式会社 組換え微生物、組換え微生物を用いたピリドキサミン又はその塩の製造方法、及び組換え微生物を用いたピリドキサール又はその塩の製造方法
WO2019230633A1 (ja) * 2018-05-30 2019-12-05 Dowaエレクトロニクス株式会社 銀ナノワイヤインクおよび透明導電膜の製造方法並びに透明導電膜
WO2023233892A1 (ja) * 2022-05-30 2023-12-07 信越化学工業株式会社 親水性組成物

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