JP2017094912A - 車両のサイドエアバッグ装置 - Google Patents

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孝彰 二井
Takaaki Nii
孝彰 二井
藤澤 直樹
Naoki Fujisawa
直樹 藤澤
中村 真也
Shinya Nakamura
真也 中村
鈴木 裕之
Hiroyuki Suzuki
裕之 鈴木
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Abstract

【課題】本発明は、乗員の体格や衝突速度で変わる、乗員と車室内の壁面との隙間の大きさに応じて、適切にエアバッグの内圧を制御しながらエアバッグを展開することができる車両のサイドエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】本発明のエアバッグ13は、車幅方向に展開される部位で、車幅方向と交差する方向に沿ってエアバッグの内側に谷折りされ、エアバッグの車幅方向での展開幅が大きくなるにしたがい車幅方向に拡がる谷折り部17と、谷折り部に設けたベントホール21と、ベントホールと対向して谷折り部の両側稜線間に掛け渡され、エアバッグの車幅方向への展開にしたがい伸長し谷折り部に当接しベントホールを塞ぐカバー部材19を備え、カバー部材は、エアバッグの展開幅が大きくなるにつれ谷折り部と当接する領域を増しベントホールの開口面積が縮小するようベントホールを塞ぎ、エアバッグが所定幅以上に展開された際、ベントホールを全閉する。
【選択図】図3

Description

本発明は、乗員と車室内の壁面との間でエアバッグを展開させる車両のサイドエアバッグ装置に関する。
自動車(車両)では、シートに着座した乗員を車両の側面衝突時の衝撃から保護するため、サイドエアバッグ装置が装備される場合がある。
サイドエアバッグ装置の多くは、シートを構成するシートバックの側部に、インフレータと折り畳んだエアバッグとを収納した構造が用いられる。つまり、側面衝突が生ずると、折り畳まれたエアバッグが、インフレータから発生するガスにより、乗員と車室内の壁面(ドアの側部)との隙間で展開し、シート上の乗員を保護する。
ところで、エアバッグが展開される時の乗員と車室内の壁面との隙間は、乗員の体格や衝突速度によって変化する。乗員の体格が大柄であるほど隙間が狭くなり、乗員の体格が小柄であるほど隙間が広くなる。また、側面衝突の場合、車室内の壁面は衝撃を受けて車室内に侵入するが、壁面の侵入速度は、側面衝突の衝突速度で変化するため、衝突速度が高い場合と低い場合とで、エアバッグ展開時の壁面の侵入量が異なる。つまり、衝突速度が高いほど壁面の侵入量が多く隙間が狭くなり、衝突速度が低いほど侵入量が少なく隙間が広くなる。
ところが、エアバッグの大きさ(展開幅)は予め決められているため、乗員の体格や衝突速度によっては、展開時のエアバッグの内圧が変化してしまい常に最適な状態で展開するのは難しかった。
そのため従来から、乗員と車室内の壁面の隙間に応じて、段階的にエアバッグの展開の厚みを調整する技術が提案されている(特許文献1、2)。
特許文献1には、メインのバッグとサブのバッグとを備え、大柄な体格の乗員を保護する場合にはメインのバッグのみを展開させ、小柄な体格の乗員を保護する場合にはメインとサブの両方のバッグを展開させる技術が開示されている。
また、引用文献2には、エアバッグの展開を規制するテザーを破断させる構造を用いて、エアバッグの展開幅を1段幅から2段幅へ可変させる技術が開示されている。
特許4952321号公報 特開2004−189187号公報
しかしながら、上記技術は、乗員と車室内の壁面の隙間(展開スペース)に応じ、エアバッグの展開幅を大小二段に変えるだけなので、衝突速度で種々変化する隙間(乗員と壁面間)に対応して、適切にエアバッグが展開するわけではない。すなわち、衝突速度による影響までは考慮されていなかった。例えば、特許文献1では、乗員の体格で展開幅を制御しているが、小柄な乗員で衝突速度が高い状況では、乗員と車室内の壁面との隙間が比較的狭くなる場合があり、そのような場合に小柄乗員に合わせてエアバッグの展開幅を大きくしてしまうとエアバッグの内圧が高くなってしまうおそれがあった。
このように、従来から提案されている技術には、乗員の保護性能を向上する上で改善の余地があった。
そこで、本発明の目的は、乗員の体格や衝突速度で変わる、乗員と車室内の壁面との間の隙間の大きさに応じて、適切にエアバッグの内圧を制御しながらエアバッグを展開することができる車両のサイドエアバッグ装置を提供する。
本発明の態様は、シートに着座した乗員と車室内の壁面との間でエアバッグを展開させる車両のサイドエアバッグ装置であって、エアバッグは、エアバッグの車幅方向に展開される部位において、車幅方向と交差する方向に沿ってエアバッグの内側に谷折りされ、エアバッグの車幅方向での展開幅が大きくなるにしたがって車幅方向に拡がる谷折り部と、谷折り部に設けられ、エアバッグ内のガスを外部に排出するベントホールと、ベントホールと対向して谷折り部の両側の稜線間に伸縮性を有して掛け渡され、エアバッグの車幅方向への展開にしたがい伸長するとともに谷折り部に当接してベントホールを塞ぐカバー部材とを備え、カバー部材は、エアバッグの展開幅が大きくなるにつれて谷折り部と当接する領域を増してベントホールの開口面積が縮小するようベントホールを塞ぎ、エアバッグが所定幅以上に展開された際に、ベントホールを全閉するものとした。
本発明によれば、側面衝突時、例えば、乗員と車室内の壁面との隙間が広く、エアバッグが所定幅以上に展開されるような場合には、拡がった谷折り部とカバー部材とが当接され、ベントホールの開口がカバー部材によって完全に塞がれた全閉状態とされる。これによってエアバッグ内から排出されるガスの量が抑制されるためエアバッグの展開幅を確保した状態でエアバッグの内圧を適切な状態に維持することができる。
一方、乗員と車室内の壁面との隙間が所定幅より狭く、エアバッグの展開幅が所定幅以下に規制されるような場合では、谷折り部が車幅方向へ拡がるのが抑制されて屈曲された状態に維持される。つまり、エアバッグ内のガスがベントホールから排出可能な状態とされる。この場合、エアバッグの展開幅が大きくなるほど、谷折り部とカバー部材との当接領域が増え、カバー部材によって塞がれるベントホールの領域が増えてベントホールの開口面積が減少される。つまり、エアバッグの展開幅が狭いほど、エアバッグ内のガスの排出量が増え、エアバッグの展開幅が広いほどエアバッグ内のガスの排出量が少なくなるよう制御される。したがって、エアバッグの展開幅に応じてベントホールからのガスの排出量を調整してエアバッグの内圧を適切な状態に制御することができる。
したがって、側面衝突時、乗員と車室内の壁面との隙間の大きさに応じて、エアバッグの展開後の厚み(展開幅)とエアバッグの内圧を適切な状態に制御することができ、乗員の保護性能を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態に係る態様となるサイドエアバッグ装置を示す斜視図。 同サイドエアバッグ装置のエアバッグの分解斜視図。 乗員と車室内の壁面との間の隙間の大きさに応じたエアバッグの展開状態を説明する図1中のA−A線に沿う断面図。 本発明の第2の実施形態に係る態様における乗員と車室内の壁面との間の隙間の大きさに応じたエアバッグの展開状態を説明する断面図。 本発明の第3の実施形態に係る態様における乗員と車室内の壁面との間の隙間の大きさに応じたエアバッグの展開状態を説明する断面図。
以下、本発明を図1から図3に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用したサイドエアバッグ装置を、同装置を搭載した車両の一部と共に示している。
図1において、1は、車体(図示しない)に形成された車室内、3は、車室内1の側部に設けられたフロントドア(本願の車室内の壁面に相当)、5は、フロントドア3と隣接して車室内1のフロア1aに据え付けられたフロントシート(本願のシートに相当)である。
フロントシート5は、乗員Mが座るシートクッション5aと乗員Mの背を支えるシートバック5bとを有している。そして、例えばシートバック5bのドア側の側部には、サイドエアバッグ装置11が収納されている。
サイドエアバッグ装置11は、所定の大きさに折り畳んだエアバッグ13(図1中の二点鎖線で図示)と、同エアバッグ13をガスで膨張させるインフレータ15とを有している。インフレータ15は、図示はしないが側面衝突を検知する衝突センサに接続されている。エアバッグ13は、例えば扁平袋状に展開するよう折り畳められる。そして、衝突センサにて側面衝突が検知されると、インフレータ15が作動し、発生するガスがエアバッグ13に供給される。これにより、折り畳まれたエアバッグ13は、図1中の実線に示されるように乗員Mの側部とフロントドア3の内面(車室内の壁面)との間の隙間へ侵入し、車幅方向に展開(扁平袋状)される。
図2は、この展開初期のエアバッグ13(図1中の実線)の分解斜視図が示され、図3は同エアバッグ13が、乗員Mとフロントドア3間の大小異なる隙間で展開したときを示している(図1中のA−A線に沿う断面に相当)。なお、図3(a)は、隙間が比較的狭く、エアバッグ13の展開幅が小さい場合、図3(b)は、隙間が中間の状態で、エアバッグ13の展開幅が図3(a)状態より大きく所定幅より小さい場合、図3(c)は、隙間が広くエアバッグ13が所定幅以上で展開された場合を示している。
エアバッグ13には、乗員Mの体格や側面衝突の衝突速度により変化する、乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間に応じて、展開幅と内圧を可変しながら展開させる工夫が施されている。
図2および図3を参照して、扁平袋状に展開するエアバッグ13について詳細に説明する。エアバッグ13は、車幅方向(幅方向)に延びるよう展開される部位に谷折り部17を有している。谷折り部17は、少なくとも車両前方側を向いた部分に設けられている。ここでは、エアバッグ13の車幅方向に展開される部位の全周に亘って谷折り部17が設けられている。谷折り部17は、例えば幅方向全周の中央部から車幅方向と交差する方向に沿ってエアバッグ13の内部(内側)へ谷折りして形成される(図3)。この谷折り部17は、ガスがエアバッグ13へ供給され、車幅方向へ展開(膨張)されるにしたがい、折り畳んだ状態、つまり両側の稜線17a,17aが重なり合う状態から、次第に車幅方向に拡がるよう構成されている。すなわち、エアバッグ13は、車幅方向での展開幅が大きくなるにしたがって、谷折り部17の両側の稜線17a,17aが互いに離れるよう谷折り部17を拡げながら展開される。
図1〜図3に示されるように谷折り部17のうち、例えばシート前方に配置される谷折り部両側の稜線17a、17a間には、エアバッグ13のガスを外部へ逃がすベントホール21が設けられている。ベントホール21は、例えば谷折り部17の中央の稜線17bと交差する方向に延びる細長の開口部で形成される。具体的にはベントホール21は、谷折り部17の両側の稜線17a,17aの一方の稜線17a近傍から、中央の稜線17bを横切って、他方の稜線17a近傍まで開口させる帯形の開口部18で形成される。
また、谷折り部17のうち、ベントホール21(開口部18)が形成される部位、ここでは、シート前方に配置される谷折り部両側の稜線17a、17a間には、ベントホール21(開口部18)と対向して伸縮性を有するカバー部材19が掛け渡されている。つまり、シート前方の谷折り部分の稜線17a、17a間にだけ、ベントホール21を覆うようにカバー部材19が掛け渡してある。このカバー部材19は、例えばゴム部材や伸縮可能な布部材などのシート状部材から構成される。さらに述べるとカバー部材19は、例えば稜線17a、17a間に多少の隙間を残して位置決められ、その弛んだ状態から谷折り部17の展開動作に追従して伸長が始まるようにしてある。この伸長機能によりカバー部材19は、エアバッグ13が車幅方向へ展開するにしたがい、谷折り部17の稜線17a、17a間が拡がるのに合わせて伸長し、谷折り部17の車幅方向に展開して拡げられた部分と当接する。カバー部材19は、この稜線17a、17a間での伸長により、図3(a)〜(c)に示されるようにエアバッグ13の車幅方向への展開が進むにしたがい、すなわち谷折り部17が車幅方向へ拡がるにしたがい、谷折り部17の両稜線17a、17a(端側)から中央に向かい次第に谷折り部17と当接される当接領域が増えるという挙動を生じさせる。
つまり、エアバッグ13は、カバー部材19と谷折り部17の当接される部分が増えるにしたがい、徐々にベントホール21(開口部18)が閉塞され開口面積が縮小されるように構成されている。さらに述べればカバー部材19は、車幅方向での展開幅が大きくなるにしたがって、ベントホール21の開口面積が縮小されるよう谷折り部17との当接領域を増やし、谷折り部17との当接領域が最大、すなわち谷折り部17が最大に拡げられた状態でベントホール21を完全に閉塞する、つまり全閉状態となるよう構成されている。
すなわち、ベントホール21の開度は、谷折り部17とカバー部材19の内面とが、両端側から次第に当接するという挙動により可変される。そして、ベントホール21の開度は、カバー部材19の内面と谷折り部17の外面とカバー部材19の内面とが当接する当接領域が増すにしたがい、小さくなる方向に連続して可変(全開〜全閉)され、谷折り部17が最も拡がった状態で全閉される。なお、本実施形態では、エアバッグ13の車幅方向での展開幅が所定幅以上となると、谷折り部17が最も拡がった状態となりベントホール21が全閉状態とされる。これにより、乗員Mの体格や衝突速度により変る隙間(乗員Mとフロントドア3間)に応じて、エアバッグ13の内圧が可変されるようにしている。
つぎに、このように構成されたサイドエアバッグ装置11の作用を説明する。
側面衝突が衝突センサ(図示しない)にて検知されると、サイドエアバッグ装置11はインフレータ15が作動され、発生するガスがエアバッグ13へ供給される。これにより、シートバック5bに収められたエアバッグ13は、まずシートバック5bから乗員M横の隙間、すなわち乗員Mの側部とフロントドア3の内面(車室内の壁面)との間の隙間へ侵入する。続いてエアバッグ13は、乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間を埋めるよう車幅方向へ展開する。このとき、エアバッグ13の車幅方向での展開状態(展開幅)に応じて、谷折り部17の展開が調整され、カバー部材19によってベントホール21の開口面積、すなわちエアバッグ13内のガスの排出量が制御される。
以下に図3を用いてベントホール21の開口面積が最大、すなわちベントホール21が全開の状態、ベントホール21の開口面積が中間の状態、ベントホール21の開口面積が最小、すなわちベントホール21が全閉の状態のそれぞれについて説明する。
まず、図3(a)に示すようにベントホール21が全開となる場合を説明する。例えば、側面衝突時の衝突速度が比較的高く(速く)、フロントドア3の侵入量が大きくなる状況では、エアバッグ13の展開時における乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間が比較的狭い状態δ1となる。
このときのエアバッグ13は、車幅方向での展開幅が狭い隙間δ1に規制された状態で乗員Mの側部とフロントドア3の内面との間に介在される。すると、図3(a)に示されるように谷折り部17の展開(拡開)も抑制され、両端の稜線17a,17a近くの部分だけがカバー部材19に当接されて谷折り部17の大部分はカバー部材19から遠ざかったままの屈曲状態で展開される。このため、エアバッグ部分に有るベントホール21は、カバー部材19に塞がれることなく、最大開度、つまり最大に開口される。これによって、エアバッグ13内の圧力(ガス)は、ベントホール21、谷折り部17とカバー部材19との間の谷状の隙間を通じて逃げるという、最も外部へ逃げ易い状態、すなわちベントホール21からのガス排出量が最大となる状態から逃げる。
これにより、乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間が狭い状態であっても、エアバッグ13は、最もエアバッグ13内部の圧力(ガス)が逃げやすい状態を形成しながら展開するので、エアバッグ13の内圧が高くなるのを抑制することができる。またエアバッグ13の展開後にフロントドア3がさらに侵入してきても、ベントホール21から多くのガスを逃がすことができるので、エアバッグ13の内圧は過度にならず、最適な状態に維持される。
次に、図3(c)に示されるようにベントホール21が全閉となる場合を説明する。
例えば、側面衝突時の衝突速度が比較的低く(遅い)、フロントドア3の侵入量が少ない状況では、エアバッグ13の展開時における乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間が比較的広い状態δ3となる。
このときのエアバッグ13は、幅方向での展開幅が規制されることなく、広い隙間δ3に合わせて最大限、すなわち最後まで展開された状態で、フロントドア3と乗員Mとの間に介在される。エアバッグ13は、車幅方向に所定幅以上に展開されると、図3(c)に示されるように谷折り部17も最大に拡がった状態まで展開され、最大に伸長したカバー部材19の内面との当接領域が最大となり、カバー部材19がベントホール21全体を塞ぐ。これにより、ベントホール21が全閉、すなわち開口面積が最小となり、最もガスが外部へ逃げ難い状態、すなわちベントホール21からのガスの排出量が最小の状態となる。
これにより、エアバッグ13は、最もエアバッグ13の圧力(ガス)が逃げにくい状態を形成しながら展開するので、フロントドア3の侵入量が少なく展開幅が大きい状態でもエアバッグ13の内圧を適切な状態に保ち続けられる。
また、ベントホール21の開口面積が全開と全閉の中間の状態、すなわち、エアバッグ13の車幅方向での展開幅が図3(a)の状態より大きく、図3(c)の状態(所定幅)より小さい場合について説明する。
図3(b)に示されるように、例えば、側面衝突時の衝突速度が、上記高低の衝突速度の中間にあたる場合は、フロントドア3の侵入量も中間の侵入量となるため、エアバッグ13の展開時における乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間が上記隙間δ1,δ3の中間となる隙間δ2となる。
このときのエアバッグ13は、車幅方向での展開幅が隙間δ1より大きく隙間δ3より小さい中間の隙間δ2に規制され、エアバッグ13が中間段階まで展開した状態で乗員Mの側部とフロントドア3の内面との間に介在される。この状況では、ベントホール21の開口面積は、このカバー部材19に対する谷折り部17の当接領域の大小で可変されるため、ベントホール21から外部へ逃げる圧力(ガス)は、隙間δ2の大きさに応じて可変される。
すなわち、エアバッグ13の展開幅が大きくなるにしたがいカバー部材19に対する谷折り部17の当接領域が増すことで、ベントホール21の開口面積は縮小され、ガス排出量が少なくなるよう調整される。したがって、エアバッグ13の内圧は、各種の中侵入速度の状況、すなわち乗員Mの側部とフロントドア3の内面との隙間の大きさ応じて適切な状態に保ち続けられる。なお、谷折り部17は、隙間の大きさに応じて展開する(拡がる)ため、図3(b)に示すように伸長したカバー部材19と谷折り部17とが当接する領域の範囲(端〜中央)は、谷折り部17の展開具合で規定される。
以上のようにベントホール21が付いた谷折り部17、伸縮性を有するカバー部材19を組み合わせて、例えば、衝突速度が高くエアバッグ13展開時の乗員Mとフロントドア3との隙間が小さいときには、エアバッグ13の圧力を外部に逃がしやすく、それよりも衝突速度が低くエアバッグ13展開時の乗員Mとフロントドア3との隙間が大きくなるにしたがい、エアバッグ13の圧力を外部に逃げにくくしたことにより、エアバッグ13の内圧は、乗員Mとフロントドア3との間の隙間具合に応じて可変される。
それ故、エアバッグ13は、乗員Mの体格や側面衝突の衝突速度で変わる、乗員Mとフロントドア3(車室内の壁面)との間の隙間δ1〜δ3の大きさに応じて、適切に内圧を制御しながら展開できる。特に谷折り部17が、少なくとも車両前方側の部位に配置されることにより、適切なエアバッグ13の車幅方向の展開が期待できる。
しかも、ベントホール21は、谷折り部17の稜線方向と交差する方向に延びる細長の開口部18で形成したことにより、ベントホール21の開度が、全開、すなわちベントホール21の最大開度から、全閉、最小開度まで連続して可変でき、隙間δ1〜δ3の大きさに応じた適切なエアバッグ13の内圧調整が可能となる。
このように、本実施形態によれば、側面衝突時、乗員Mとロントドア3(車室内の壁面)との隙間の大きさに応じて、エアバッグ13の展開後の厚み(展開幅)とエアバッグ13の内圧を適切な状態に制御することができるので、乗員Mの保護性能をより向上させることができる。
図4は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、ベントホール21を帯形の開口部でなく、複数、例えば2個の通孔31,31(開口部)から形成して、ベントホール21の開口面積を可変可能としたものである。
具体的には、図4に示されるように2個の通孔31,31は、谷折り部17のエアバッグ部分に、中央の稜線17bから異なる位置にそれぞれ設けられる。これにより、図4(a)に示されるように乗員Mとフロントドア3との間が狭い隙間δ1のときは(谷折り部17の両端を受けるとき)、双方の通孔31,31は開口される(全開)。そして、図4(b)および図4(c)のように乗員Mとフロントドア3との間が中間の隙間δ2〜広い隙間δ3となるにしたがい(カバー部材19と当接する谷折り部17の領域が増加)、通孔31,31の開口がカバー部材19により次第に遮られる(中間〜全閉)。エアバッグ13の圧力は、乗員Mとフロントドア3との隙間の大きさに応じて段階的に可変される(制御)。
こうした複数の通孔31,31を用いた構造で、ベントホール21の開口面積を、乗員Mとフロントドア3との隙間の大きさに応じて可変するようにしても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
図5は、本発明の第3の実施形態を示す。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例で、エアバッグ13が展開するときの挙動を利用して、カバー部材19を、展開する谷折り部17のエアバッグ部分へ引き寄せるようにしたものである。
具体的には、帯形に開口するベントホール21内に、紐などの索状部材35を挿通させ、索状部材35の一端部をカバー部材19の中央側の内面に連結し、他端部をカバー部材19とは反対側のエアバッグ部分の内面に連結したものである。
このように索状部材35で、カバー部材19とそれとは反対側のエアバッグ部分とを連結すると、エアバッグ13の展開(膨張)に伴い、索状部材35の張力が増加される。この張力により、カバー部材19は、谷折り部17側へ引き寄せられる。
この引き寄せにより、展開する谷折り部17とカバー部材19とは当接しやすくなり、ベントホール21をより確実に閉塞して、ベントホール21の開口面積を乗員Mとフロントドア3との隙間具合に応じて、可変することができる。
むろん、本実施形態の索状部材35の構成を第2の実施形態のベントホール21(通孔31,31)に適用しても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、上述した実施形態における各構成およびそれの組合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であることはいうまでもない。また本発明は、上述した実施形態によって限定されることはなく、「特許請求の範囲」によってのみ限定されることはいうまでもない。
3 フロントドア(車室内の壁面)
5 フロントシート(シート)
11 サイドエアバッグ装置
13 エアバッグ
17 谷折り部
19 カバー部材
21 ベントホール
35、39 索状部材

Claims (5)

  1. シートに着座した乗員と車室内の壁面との間でエアバッグを展開させる車両のサイドエアバッグ装置であって、
    前記エアバッグは、
    前記エアバッグの車幅方向に展開される部位において、車幅方向と交差する方向に沿って前記エアバッグの内側に谷折りされ、前記エアバッグの車幅方向での展開幅が大きくなるにしたがって車幅方向に拡がる谷折り部と、
    前記谷折り部に設けられ、前記エアバッグ内のガスを外部に排出するベントホールと、 前記ベントホールと対向して前記谷折り部の両側の稜線間に伸縮性を有して掛け渡され、前記エアバッグの車幅方向への展開にしたがい伸長するとともに前記谷折り部に当接して前記ベントホールを塞ぐカバー部材と、を備え、
    前記カバー部材は、前記エアバッグの展開幅が大きくなるにつれて前記谷折り部と当接する領域を増して前記ベントホールの開口面積が縮小するよう前記ベントホールを塞ぎ、前記エアバッグが所定幅以上に展開された際に、前記ベントホールを全閉する
    ことを特徴とする車両のサイドエアバッグ装置。
  2. 前記谷折り部は、前記エアバッグの少なくとも車両前方側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドエアバッグ装置。
  3. 前記ベントホールは、
    前記谷折り部の稜線と交差する方向に沿って延びる細長の開口部で形成される
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のサイドエアバッグ装置。
  4. 前記ベントホールは、
    前記谷折り部の中央の稜線を挟んだエアバッグ部分に、当該中央の稜線から異なる位置にそれぞれ設けた複数の開口部で形成される
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のサイドエアバッグ装置。
  5. 前記エアバッグは、更に、前記ベントホールを貫通して設けられ、一端部が前記カバー部材に連結され、他端部が前記カバー部材とは反対側のエアバッグ内面に連結される索状部材を有する
    ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両のサイドエアバッグ装置。
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