JP2017094475A - 超硬合金製刃物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物及びその安価かつ簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】一方の金属板に凹部を形成する第一工程と、凹部に金属板の表面と略同一の高さまで溶射超硬合金被膜を形成する第二工程と、溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程と、改質部を含む金属板の表面に他方の金属板を重ね合わせた状態で、他方の金属板の側から棒状のツールを挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体を形成する第四工程と、改質部が少なくとも刃先の一部となるように、超硬合金製刃物前駆体を刃物形状に加工する第五工程と、を含むこと、を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法。
【選択図】図1
【解決手段】一方の金属板に凹部を形成する第一工程と、凹部に金属板の表面と略同一の高さまで溶射超硬合金被膜を形成する第二工程と、溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程と、改質部を含む金属板の表面に他方の金属板を重ね合わせた状態で、他方の金属板の側から棒状のツールを挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体を形成する第四工程と、改質部が少なくとも刃先の一部となるように、超硬合金製刃物前駆体を刃物形状に加工する第五工程と、を含むこと、を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法。
【選択図】図1
Description
本発明は超硬合金製刃物及びその製造方法に関し、より具体的には、刃先のみが超硬合金製である超硬合金製刃物及びその製造方法に関する。
各種工業用刃物には優れた切れ味と耐久性が求められるが、これ等を両立させることは極めて困難である。例えば、比較的切断が容易な紙用の刃物であっても、その切れ味の良さが発揮されるのは使用の初期段階のみであり、それ以後は急速に切れ味が低下して実用上使用が困難となる。
これに対し、例えば、特許文献1(特開平5−285883号公報)では、上下の丸形刃物により紙を切断するカッターにおいて、上下刃の少なくとも一方が、Y2O3を1.5〜4.5mol%含有するZrO250〜95重量部及びAl2O35〜50重量部の合計100重量部からなるZrO2−Al2O3複合焼結体からなることを特徴とする紙切断用カッターが開示されている。
上記特許文献1の紙切断用カッターにおいては、刃物同士の摩擦による焼き付きが防止できるだけでなく、上刃が金属製の場合は常に下刃により研磨されることになるので、長期に亘り優れた切れ味を発揮することができる、としている。
また、繊維の切断に用いられる刃物に関しては、例えば、特許文献2(特開平9−136288号公報)では、刃先が超硬合金から形成され、基体部が超硬合金と近似した熱膨張係数を有する金属から形成され、両者の整合部が溶接されてなることを特徴とする繊維用切断刃が開示されている。
上記特許文献2の繊維用切断刃においては、刃先が超硬合金から形成されているため、耐摩耗性に優れており、また基体部が超硬合金と近似した熱膨張係数を有する金属から形成されているため、繊維を切断する際の衝撃を基体部が吸収し、超硬合金の破損を防止することが可能である、としている。
更に、特許文献3(特開2004−237410号公報)では、ワークを切断する切断刃を有する切断装置において、前記切断刃は、刃先に向けて徐々に近接する第1の面と第2の面を有し、前記第1の面に硬質膜が形成されており、前記硬質膜の膜表面と前記硬質膜の刃先側の端面との角部が刃先として機能することを特徴とする切断装置、が開示されている。
上記特許文献3の切断装置においては、切断刃の第1の面に硬質膜を形成するだけで、この硬質膜の角部を所定の角度を有する刃先として機能させることができることから、硬質膜を極端に厚くする必要がなく、硬質膜と第1の面との密着性を高くでき、硬質膜の剥がれを防止することができる、としている。
上記特許文献1に開示されている紙切断用カッターにおいては、組成を最適化されたセラミックス部(刃先)が金属基材に接着又は接合されて使用されるため、当該セラミックス部の脱離が懸念される。また、刃先がセラミックス製であることから、刃先の鋭利化が困難であり、刃物が本来有する切れ味に限界がある。
上記特許文献2及び3に開示されている刃物は、刃先のみを超硬合金製としたものであり、金属基材への超硬合金部材の溶接や溶射超硬合金層の形成によって製造されている。ここで、溶射によって形成された超硬合金層と金属基材との界面強度は十分であるとは言い難く、一般的に溶射超硬合金層には不可避的に多くの欠陥が導入されることから、良好な刃先を形成することは困難である。また、超硬合金部材を溶接等によって金属基材に接合する場合、上記特許文献1に開示されている紙切断用カッターと同様に、当該超硬合金部材の脱離(接合強度不足)等が懸念されることに加え、当該溶接による超硬合金部材及び金属基材の特性劣化も問題となる。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物及びその安価かつ簡便な製造方法を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成すべく、刃先のみを超硬合金製とする刃物の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、摩擦攪拌プロセスを用いて改質した溶射超硬合金被膜を金属板で挟み込むこと等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
一方の金属板に凹部を形成する第一工程と、
前記凹部に前記金属板の表面と略同一の高さまで溶射超硬合金被膜を形成する第二工程と、
前記溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程と、
前記改質部を含む前記金属板の表面に他方の金属板を重ね合わせた状態で、前記他方の金属板の側から棒状のツールを挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体を形成する第四工程と、
前記改質部が少なくとも刃先の一部となるように、前記超硬合金製刃物前駆体を刃物形状に加工する第五工程と、を含むこと、
を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法を提供する。
一方の金属板に凹部を形成する第一工程と、
前記凹部に前記金属板の表面と略同一の高さまで溶射超硬合金被膜を形成する第二工程と、
前記溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程と、
前記改質部を含む前記金属板の表面に他方の金属板を重ね合わせた状態で、前記他方の金属板の側から棒状のツールを挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体を形成する第四工程と、
前記改質部が少なくとも刃先の一部となるように、前記超硬合金製刃物前駆体を刃物形状に加工する第五工程と、を含むこと、
を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法を提供する。
第一工程で形成させた凹部に対して溶射(第二工程)を施すことで、安価かつ効率的に超硬合金被膜を形成させることができる。また、第三工程で用いる摩擦攪拌プロセスも円筒状のツールを回転させながら超硬合金被膜に圧入して移動させる簡便なプロセスであり、比較的容易に溶射超硬合金被膜の緻密化、金属結合相のナノ組織化及び金属板との接合強度向上を達成することができる。なお、摩擦攪拌プロセス中の材料流動及び入熱によって、溶射超硬合金被膜と金属板とは、冶金的に接合される。
また、第四工程において、第三工程で改質された溶射超硬合金被膜が刃先となるように、改質部を含む金属板の表面に他方の金属板を重ね合わせた状態で、他方の金属板の側から棒状のツールを挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施すことで、刃の略中央が溶射超硬合金被膜となる刃物を製造することができる。ここで、第三工程における摩擦攪拌プロセスによって溶射超硬合金被膜の機械的特性及び金属板との接合強度が向上していることから、刃先となる改質部が切断プロセス中に剥離・破損等することなく、良好な刃物を製造することができる。
また、本発明の超硬合金製刃物は、前記刃先の全てを前記改質部とすること、が好ましい。本発明の超硬合金製刃物は、刃の略中央が溶射超硬合金被膜の改質部となっており、当該改質部は一定の領域を有していることから、刃先が曲線となっている場合であっても、当該刃先の全てを改質部とすることができる。加えて、本発明の超硬合金製刃物は、刃の略中央が溶射超硬合金被膜となっていることから、両刃とすることができると共に、刃先が後退しても溶射超硬合金被膜が存在することから、刃先の再研磨等によって長期間使用可能な刃物を実現することができる。
また、本発明の超硬合金製刃物の製造方法においては、前記第二工程において、高速フレーム溶射を用いること、が好ましい。溶射超硬合金被膜の形成に高速フレーム溶射を用いることで、溶射超硬合金被膜に空孔やラメラ界面等の欠陥が適度に導入され、第三工程における摩擦攪拌プロセスによる材料流動が容易になる。その結果、摩擦攪拌プロセスに用いるツールの長寿命化を図ることができる。
更に、本発明の超硬合金製刃物の製造方法においては、前記第三工程の後、前記改質部を含む前記金属板の表面を研磨すること、が好ましい。第三工程の摩擦攪拌プロセスによって金属板及び溶射超硬合金被膜の表面にツールマークやバリ等に起因する凹凸が形成されるため、研磨によって当該凹凸を低減することで、第四工程における重ね合わせ摩擦攪拌接合を精度よく施すことができる。
また、本発明は、
刃先部と本体部からなる超硬合金製刃物であって、
前記刃先部は超硬合金製であり、
前記本体部は金属製であり、
前記刃先部と前記本体部とは冶金的に接合されていること、
を特徴とする超硬合金製刃物、も提供する。
刃先部と本体部からなる超硬合金製刃物であって、
前記刃先部は超硬合金製であり、
前記本体部は金属製であり、
前記刃先部と前記本体部とは冶金的に接合されていること、
を特徴とする超硬合金製刃物、も提供する。
本発明の超硬合金製刃物は、刃先部のみが超硬合金製であることから、全てを超硬合金製とする場合と比較して材料コストが大幅に低減されている。また、本体部と刃先部は冶金的に接合されており、刃物の使用に対して十分な接合強度及び耐久性等を有している。ここで、本発明の超硬合金製刃物においては、刃先の全てが超硬合金製であることが好ましい。
本発明の超硬合金製刃物は、前記刃先部の超硬合金に含まれる結合相の平均結晶粒径が1μm以下であること、が好ましい。結合相の平均結晶粒径が1μm以下とナノ組織化していることで、刃先部は靭性を損なうことなく高硬度化が達成されている。
また、本発明の超硬合金製刃物は、前記本体部が鋼製であり、前記本体部の略全体が前記鋼の略焼入れ硬度を有していること、が好ましい。本体部を鋼製とすることで安価となり、本体部の略全体が焼入れされていることで、刃物として要求される適度な剛性等が付与されている。
更に、本発明の超硬合金製刃物は、前記結合相がコバルト系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1800HV以上であり、前記結合相がニッケル系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1400HV以上であること、が好ましい。刃先部の硬度がこれらの値を有することで、使用中の摩耗が抑制されており、長寿命化が達成されている。
なお、本発明の超硬合金製刃物は、本発明の超硬合金製刃物の製造方法によって好適に製造することができる。
本発明によれば、刃先のみが超硬合金製である超硬合金製刃物及びその製造方法であって、優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物及びその安価かつ簡便な製造方法を提供する。
以下、図面を参照しながら本発明の超硬合金製刃物及びその製造方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
(A)超硬合金製刃物の製造方法
図1に、本発明の超硬合金製刃物の製造方法に関する工程図を示す。本発明の超硬合金製刃物の製造方法は、金属板に凹部を形成する第一工程(S01)と、金属板の凹部に溶射超硬合金被膜を形成させる第二工程(S02)と、溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程(S03)と、重ね合わせ摩擦攪拌接合を施す第四工程(S04)と、改質部が少なくとも刃先の一部となるように、金属板を刃物形状に加工する第五工程(S05)と、を含んでいる。以下、各工程について詳細に説明する。
図1に、本発明の超硬合金製刃物の製造方法に関する工程図を示す。本発明の超硬合金製刃物の製造方法は、金属板に凹部を形成する第一工程(S01)と、金属板の凹部に溶射超硬合金被膜を形成させる第二工程(S02)と、溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程(S03)と、重ね合わせ摩擦攪拌接合を施す第四工程(S04)と、改質部が少なくとも刃先の一部となるように、金属板を刃物形状に加工する第五工程(S05)と、を含んでいる。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)第一工程(S01:凹部の形成)
第一工程(S01)は、金属板の表面に凹部を形成させる工程である。凹部を形成させる方法は特に限定されず、従来公知の種々の切削加工等を用いることができる。
第一工程(S01)は、金属板の表面に凹部を形成させる工程である。凹部を形成させる方法は特に限定されず、従来公知の種々の切削加工等を用いることができる。
図2に第一工程の模式図を示す。金属板2の任意の領域に形成させる凹部4の大きさ及び形状は、所望する溶射超硬合金被膜の厚さ及び形状等によって決定すればよいが、深さHは100〜1000μmとすることが好ましい。
凹部4を形成させる位置は、最終的に超硬合金製刃物の刃先となる位置とすればよい。また、凹部4の幅Wが刃先の後退可能領域となることから、当該幅Wは刃先の形状及び想定される使用期間等によって決定すればよい。
金属板2の種類は特に限定されず、従来公知の種々の金属材を用いることができるが、鋼を用いることが好ましく、焼き入れした鋼を用いることがより好ましい。金属板2を鋼とすることで安価となり、焼き入れした鋼を用いることで、刃物として要求される適度な剛性等を付与することができる。また、金属板2の形状及び大きさは、超硬合金製刃物の形状及び大きさに応じて適宜決定すればよい。
(2)第二工程(S02:溶射超硬合金被膜の形成)
第二工程(S02)は、溶射を用いて金属板2の凹部4に超硬合金被膜を形成させる工程である。図3に第二工程の模式図を示す。
第二工程(S02)は、溶射を用いて金属板2の凹部4に超硬合金被膜を形成させる工程である。図3に第二工程の模式図を示す。
金属板2の表面に形成させる溶射超硬合金被膜6の厚さは、金属板2の表面と略同一となるようにすることが好ましい。つまり、溶射超硬合金被膜6の厚さは第一工程(S01)にて形成させた凹部4の深さHによって決定されるが、例えば、100〜1000μmとすることが好ましい。溶射超硬合金被膜6の厚さを100〜1000μmとすることで、第三工程(S03)における摩擦攪拌プロセスによって膜厚方向に十分に攪拌することができると共に、金属板2と溶射超硬合金被膜6との接合強度を効率的に向上させることができる。
溶射方法は特に限定されず、ガス燃焼エネルギーや電気エネルギー(プラズマ、アーク等)を利用した各種溶射法を用いることができる。具体的には、ガスフレーム溶射、高速ガスフレーム溶射(HVOF)、アーク溶射、プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射(VPS)等を用いることができる。ここで、第三工程(S03)における摩擦攪拌プロセスを容易にする観点から、摩擦攪拌プロセス中の材料流動を促進する空孔やラメラ界面を溶射超硬合金被膜に適度に導入できる高速フレーム溶射(HVOF)を用いることが好ましい。
更に、溶射超硬合金被膜6の種類も特に限定されず、従来公知の種々の組成を有する超硬合金を用いることができ、例えば、コバルト系又はニッケル系の金属結合相を有する超硬合金を用いることができる。
(3)第三工程(S03:摩擦攪拌プロセス)
第三工程(S03)は、第二工程(S02)で形成させた溶射超硬合金被膜6の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する行程である。
第三工程(S03)は、第二工程(S02)で形成させた溶射超硬合金被膜6の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する行程である。
摩擦攪拌プロセスは、1991年に英国のTWI(TheWelding Institute)で考案された接合技術である摩擦攪拌接合法を、金属材の表面改質法として応用したものである。摩擦攪拌接合は高速で回転する円柱状のツールを接合したい領域に圧入(ツール底面にプローブと呼ばれる突起を有しており、該プローブが圧入される)し、摩擦熱によって軟化した被接合材を攪拌しながら接合したい方向に走査することで接合を達成する技術である。回転するツールによって攪拌された領域は一般的に攪拌部と呼ばれ、接合条件によっては材料の均質化および結晶粒径の減少に伴う機械的特性の向上がもたらされる。摩擦攪拌による材料の均質化および結晶粒径の減少に伴う機械的特性の向上を表面改質として用いる技術が摩擦攪拌プロセスであり、近年広く研究の対象になっている。なお、本発明で用いる摩擦攪拌プロセス用ツールの底面には、必ずしもプローブを有している必要はなく、プローブを有さない所謂フラットツールを用いることができる。
図4に第三工程(S03)における摩擦攪拌プロセスの模式図を示す。高速回転する円筒状の摩擦攪拌プロセス用ツール8を金属板2の表面に形成させた溶射超硬合金被膜6に圧入し、摩擦攪拌プロセス用ツール8を任意の方向に移動させることで、溶射超硬合金被膜6に改質領域10を形成することができる。なお、摩擦攪拌プロセス用ツール8を圧入後、移動させることなく引き抜いた場合には、摩擦攪拌プロセス用ツール8の底面形状に対応した改質領域10が得られる。摩擦攪拌プロセス用ツール8で攪拌された領域には材料流動が生じ、溶射超硬合金被膜6に存在する空隙等の欠陥を消失させると共に結合相の結晶粒を微細化することができる。
また、摩擦攪拌プロセス時に発生する材料流動および入熱により、溶射超硬合金被膜6と金属板2とは冶金的に接合される。加えて、改質された溶射超硬合金被膜6と金属板2との接合界面近傍において、金属板2の硬度は摩擦攪拌プロセス前よりも高くなる。
摩擦攪拌プロセス用ツール8には、溶射超硬合金被膜6よりも機械的特性(硬度、耐熱衝撃性および摩擦攪拌プロセス時の温度における変形抵抗等)に優れたものを使用することができる。摩擦攪拌プロセス時に摩擦攪拌プロセス用ツール8の破片が溶射超硬合金被膜6に混入する場合を考慮すると、摩擦攪拌プロセス用ツール8は超硬合金製であることが好ましい。超硬合金製の摩擦攪拌プロセス用ツール8は溶射超硬合金被膜6よりも機械的特性に優れたものを使用する必要があり、例えば、溶射超硬合金被膜6よりも高硬度のものを選択する必要がある。
摩擦攪拌プロセスの主要なプロセスパラメータとしては、ツール回転速度、ツール移動速度及びツール荷重等を挙げることができる。これらのプロセスパラメータは、溶射超硬合金被膜6の種類及び厚さや、所望する改質領域の大きさ及び硬度上昇の程度等に応じて適宜設定すればよい。
(4)第四工程(S04:重ね合わせ摩擦攪拌接合)
第四工程(S04)は、重ね合わせ摩擦攪拌接合によって超硬合金製刃物前駆体を形成する工程である。
第四工程(S04)は、重ね合わせ摩擦攪拌接合によって超硬合金製刃物前駆体を形成する工程である。
図5に第四工程(S04)における重ね合わせ摩擦攪拌接合の模式図を示す。改質部10を含む金属板2の表面に他方の金属板2’を重ね合わせた状態で、他方の金属板2’の側から摩擦攪拌接合用ツール12を挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体14を形成させる。
ここで、第三工程(S03)における摩擦攪拌プロセスにおいては、円筒状の摩擦攪拌プロセス用ツールを好適に用いることができるが、重ね合わせ摩擦攪拌接合においては底部に突起部(プローブ)16を有する摩擦攪拌接合用ツール12を用いることが好ましい。突起部(プローブ)16の長さ及び形状等は特に限定されないが、突起部(プローブ)16の底面が被接合界面の直上となるように設定することで、良好な接合界面を得ることができる。
摩擦攪拌接合用ツール12には、他方の金属板2’よりも機械的特性(硬度、耐熱衝撃性および摩擦攪拌接合時の温度における変形抵抗等)に優れたものを使用することができ、例えば、超硬合金製ツールや各種セラミックス製ツールを用いることができる。
重ね合わせ摩擦攪拌接合の主要なプロセスパラメータとしては、ツール回転速度、ツール移動速度及びツール荷重等を挙げることができる。これらのプロセスパラメータは、他方の金属板2’の種類及び厚さや、所望する接合領域の大きさ及び接合強度等に応じて適宜設定すればよい。
(5)第五工程(S05:刃物形状への加工)
第五工程(S05)は、重ね合わせ摩擦攪拌接合によって得られた超硬合金製刃物前駆体14に加工を施して刃物形状とする工程である。
第五工程(S05)は、重ね合わせ摩擦攪拌接合によって得られた超硬合金製刃物前駆体14に加工を施して刃物形状とする工程である。
図6に第五工程(S05)における加工の模式図を示す。改質部10が刃の略中央部となるように金属板2及び2’を加工することで、刃先が超硬合金製の超硬合金製刃物18を得ることができる。ここで、加工方法は特に限定されず、従来公知の種々の切削加工及び放電加工や研磨等を用いることができる。
通常、溶射超硬合金被膜6には欠陥が存在することに加え、溶射超硬合金被膜6と金属板(2,2’)との接合強度も十分ではないため、溶射超硬合金被膜6を有する金属板(2,2’)を切断すると溶射超硬合金被膜6の剥離や欠け等が生じてしまう。これに対し、本発明の超硬合金製刃物の製造方法では第三工程(S03)における摩擦攪拌プロセスによって溶射超硬合金被膜6の機械的特性及び金属板(2,2’)との接合強度が向上していることから、刃先となる改質部10が切断プロセス中に剥離・破損等することなく、良好な超硬合金製刃物18を製造することができる。
金属板(2,2’)を切断した後、形状の微修正や刃立て等を行うことで超硬合金製刃物18を得ることができる。なお、上述の通り、改質領域10における溶射超硬合金被膜は優れた機械的特性を有していることから、刃欠け等を生じることなく鋭い刃先を形成することができる。
(B)超硬合金製刃物
図7に本発明の超硬合金製刃物の一態様を示す概略断面図を示す。超硬合金製刃物18は本体部20と刃先部22とを有し、刃先部22のみが超硬合金製となっている。なお、本発明の超硬合金製刃物18は、本発明の超硬合金製刃物の製造方法によって好適に得ることができる。
図7に本発明の超硬合金製刃物の一態様を示す概略断面図を示す。超硬合金製刃物18は本体部20と刃先部22とを有し、刃先部22のみが超硬合金製となっている。なお、本発明の超硬合金製刃物18は、本発明の超硬合金製刃物の製造方法によって好適に得ることができる。
刃先部22は改質領域10となっている。改質領域10に含まれる結合相の結晶粒は微細化されており、平均結晶粒径が1μm以下であることが好ましい。
また、溶射超硬合金被膜6に存在する空隙等の欠陥は摩擦攪拌プロセス等によって消失し、改質領域10に含まれる欠陥は大幅に低減されている。加えて、溶射超硬合金被膜6と本体部20とは冶金的に接合されており、溶射超硬合金被膜6と本体部20(金属板2)との接合界面近傍において、本体部20(金属板2)の硬度は他の領域と比較して高くなっている。
以上、本発明の超硬合金製刃物及びその製造方法の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
板厚2mmのSKD11板材の表面に深さ0.5mm、幅8mmの凹部を形成し(第一工程:S01)、当該凹部に対して高速フレーム溶射を施し、SKD11板材の表面と略同一となるように溶射超硬合金被膜を形成させた(第二工程:S02)。原料粉末にはガスアトマイズ法で製造された平均粒径40μmのWC−12mass%Ni粒子を用いた。
次に、溶射超硬合金被膜に対して摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成させた(第三工程:S03)。摩擦攪拌プロセスには直径が12mmの円柱形状をした超硬合金(WC−Co)製のツールを用い、600rpmの速度で回転する該ツールを3400kgの荷重で溶射超硬合金被膜に圧入させた。ツールの移動速度は50mm/minとし、アルゴンガスをフローさせることでツールおよび試料の酸化を防止した。
次に、溶射超硬合金被膜を有するSKD11板材の表面を研磨して面出しした後、溶射超硬合金被膜を有する面に別のSKD11板材(板厚2mm)を当接させ、当該SKD11板材表面から重ね摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体を得た(第四工程:S04)。重ね摩擦攪拌接合には長さが1.5mmのプローブを有する円柱形状の超硬合金(WC−Co)製ツールを用い、500rpmの速度で回転する該ツールを2000kgの荷重で溶射超硬合金被膜に圧入させた。ツールの移動速度は50mm/minとし、アルゴンガスをフローさせることでツールおよび試料の酸化を防止した。
超硬合金製刃物前駆体の概観写真及び断面写真を図8及び図9にそれぞれ示す。図8は重ね摩擦攪拌接合を施した金属板の表面であり、摩擦攪拌接合された領域が確認できる。また、図9の断面写真において、溶射超硬合金被膜が2枚の金属板の略中央に挟み込まれた構造が確認できる。ここで、溶射超硬合金被膜と2枚の金属板との間に剥離等の欠陥は認められず、良好な接合体が得られていることが分かる。
次に、溶射超硬合金被膜の改質部が刃先となるように超硬合金製刃物前駆体を加工し、超硬合金製刃物を得た(第五工程:S05)。切削加工及び研磨により刃先部を形成させたが、改質部に剥離及び欠け等の欠陥は認められなかった。
以上の結果より、本発明の超硬合金製刃物の製造方法によって、優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された本発明の超硬合金製刃物を、安価かつ簡便に製造できることが確認できる。
2,2’・・・金属板、
4・・・凹部、
6・・・溶射超硬合金被膜、
8・・・摩擦攪拌プロセス用ツール、
10・・・改質領域、
12・・・摩擦攪拌接合用ツール、
14・・・超硬合金製刃物前駆体、
16・・・突起部(プローブ)、
18・・・超硬合金製刃物、
20・・・本体部、
22・・・刃先部。
4・・・凹部、
6・・・溶射超硬合金被膜、
8・・・摩擦攪拌プロセス用ツール、
10・・・改質領域、
12・・・摩擦攪拌接合用ツール、
14・・・超硬合金製刃物前駆体、
16・・・突起部(プローブ)、
18・・・超硬合金製刃物、
20・・・本体部、
22・・・刃先部。
Claims (8)
- 一方の金属板に凹部を形成する第一工程と、
前記凹部に前記金属板の表面と略同一の高さまで溶射超硬合金被膜を形成する第二工程と、
前記溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第三工程と、
前記改質部を含む前記金属板の表面に他方の金属板を重ね合わせた状態で、前記他方の金属板の側から棒状のツールを挿入して重ね合わせ摩擦攪拌接合を施し、超硬合金製刃物前駆体を形成する第四工程と、
前記改質部が少なくとも刃先の一部となるように、前記超硬合金製刃物前駆体を刃物形状に加工する第五工程と、を含むこと、
を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法。 - 前記刃先の全てを前記改質部とすること、
を特徴とする請求項1に記載の超硬合金製刃物の製造方法。 - 前記第二工程において、高速フレーム溶射を用いること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の超硬合金製刃物の製造方法。 - 前記第三工程の後、前記改質部を含む前記金属板の表面を研磨すること、
を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の超硬合金製刃物の製造方法。 - 刃先部と本体部からなる超硬合金製刃物であって、
前記刃先部は超硬合金製であり、
前記本体部は金属製であり、
前記刃先部と前記本体部とは冶金的に接合されていること、
を特徴とする超硬合金製刃物。 - 前記刃先部の超硬合金に含まれる結合相の平均結晶粒径が1μm以下であること、
を特徴とする請求項5に記載の超硬合金製刃物。 - 前記本体部が鋼製であり、
前記本体部の略全体が前記鋼の略焼入れ硬度を有していること、
を特徴とする請求項5又は請求項6に記載の超硬合金製刃物。 - 前記結合相がコバルト系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1800HV以上であり、
前記結合相がニッケル系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1400HV以上であること、
を特徴とする請求項5〜7のうちのいずれかに記載の超硬合金製刃物。
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JP2015231432A JP2017094475A (ja) | 2015-11-27 | 2015-11-27 | 超硬合金製刃物及びその製造方法 |
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- 2015-11-27 JP JP2015231432A patent/JP2017094475A/ja active Pending
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