JP2017094474A - 超硬合金製刃物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物及びその安価かつ簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】金属板の少なくとも一面に溶射超硬合金被膜を形成させる第一工程と、溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第二工程と、改質部が少なくとも刃先の一部となるように、金属板を刃物形状に加工する第三工程と、を含むこと、を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は超硬合金製刃物及びその製造方法に関し、より具体的には、刃先のみが超硬合金製である超硬合金製刃物及びその製造方法に関する。
各種工業用刃物には優れた切れ味と耐久性が求められるが、これ等を両立させることは極めて困難である。例えば、比較的切断が容易な紙用の刃物であっても、その切れ味の良さが発揮されるのは使用の初期段階のみであり、それ以後は急速に切れ味が低下して実用上使用が困難となる。
これに対し、例えば、特許文献1(特開平5−285883号公報)では、上下の丸形刃物により紙を切断するカッターにおいて、上下刃の少なくとも一方が、Yを1.5〜4.5mol%含有するZrO50〜95重量部及びAl5〜50重量部の合計100重量部からなるZrO−Al複合焼結体からなることを特徴とする紙切断用カッターが開示されている。
上記特許文献1の紙切断用カッターにおいては、刃物同士の摩擦による焼き付きが防止できるだけでなく、上刃が金属製の場合は常に下刃により研磨されることになるので、長期に亘り優れた切れ味を発揮することができる、としている。
また、繊維の切断に用いられる刃物に関しては、例えば、特許文献2(特開平9−136288号公報)では、刃先が超硬合金から形成され、基体部が超硬合金と近似した熱膨張係数を有する金属から形成され、両者の整合部が溶接されてなることを特徴とする繊維用切断刃が開示されている。
上記特許文献2の繊維用切断刃においては、刃先が超硬合金から形成されているため、耐摩耗性に優れており、また基体部が超硬合金と近似した熱膨張係数を有する金属から形成されているため、繊維を切断する際の衝撃を基体部が吸収し、超硬合金の破損を防止することが可能である、としている。
更に、特許文献3(特開2004−237410号公報)では、ワークを切断する切断刃を有する切断装置において、前記切断刃は、刃先に向けて徐々に近接する第1の面と第2の面を有し、前記第1の面に硬質膜が形成されており、前記硬質膜の膜表面と前記硬質膜の刃先側の端面との角部が刃先として機能することを特徴とする切断装置、が開示されている。
上記特許文献3の切断装置においては、切断刃の第1の面に硬質膜を形成するだけで、この硬質膜の角部を所定の角度を有する刃先として機能させることができることから、硬質膜を極端に厚くする必要がなく、硬質膜と第1の面との密着性を高くでき、硬質膜の剥がれを防止することができる、としている。
特開平5−285883号公報 特開平9−136288号公報 特開2004−237410号公報
上記特許文献1に開示されている紙切断用カッターにおいては、組成を最適化されたセラミックス部(刃先)が金属基材に接着又は接合されて使用されるため、当該セラミックス部の脱離が懸念される。また、刃先がセラミックス製であることから、刃先の鋭利化が困難であり、刃物が本来有する切れ味に限界がある。
上記特許文献2及び3に開示されている刃物は、刃先のみを超硬合金製としたものであり、金属基材への超硬合金部材の溶接や溶射超硬合金層の形成によって製造されている。ここで、溶射によって形成された超硬合金層と金属基材との界面強度は十分であるとは言い難く、一般的に溶射超硬合金層には不可避的に多くの欠陥が導入されることから、良好な刃先を形成することは困難である。また、超硬合金部材を溶接等によって金属基材に接合する場合、上記特許文献1に開示されている紙切断用カッターと同様に、当該超硬合金部材の脱離(接合強度不足)等が懸念されることに加え、当該溶接による超硬合金部材及び金属基材の特性劣化も問題となる。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物及びその安価かつ簡便な製造方法を提供することにある。
本発明者は上記目的を達成すべく、刃先のみを超硬合金製とする刃物の製造方法について鋭意研究を重ねた結果、摩擦攪拌プロセスを用いて改質した溶射超硬合金被膜が刃先となるように厚板を切り出すこと等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
金属板の少なくとも一面に溶射超硬合金被膜を形成させる第一工程と、
前記溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第二工程と、
前記改質部が少なくとも刃先の一部となるように、前記金属板を刃物形状に加工する第三工程と、を含むこと、
を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法を提供する。
第一工程で溶射を用いることで、安価かつ効率的に超硬合金被膜を形成させることができる。また、第二工程で用いる摩擦攪拌プロセスも円筒状のツールを回転させながら超硬合金被膜に圧入して移動させる簡便なプロセスであり、比較的容易に溶射超硬合金被膜の緻密化、金属結合相のナノ組織化及び金属板との接合強度向上を達成することができる。なお、摩擦攪拌プロセス中の材料流動及び入熱によって、溶射超硬合金被膜と金属板とは、冶金的に接合される。
また、第三工程において、第二工程で改質された溶射超硬合金被膜が刃先となるように金属板を切断することで、容易に超硬合金製刃物を製造することができる。ここで、第二工程における摩擦攪拌プロセスによって溶射超硬合金被膜の機械的特性及び金属板との接合強度が向上していることから、刃先となる改質部が切断プロセス中に剥離・破損等することなく、良好な刃物を製造することができる。
本発明の超硬合金製刃物の製造方法においては、前記金属板の厚さを前記超硬合金製刃物の刃幅と略同一とし、前記第三工程において、前記金属板を厚さ方向に対して略水平に切り出すこと、が好ましい。金属板の厚さを超硬合金製刃物の刃幅と略同一とすることで、当該金属板をスライスするのみで刃物前駆体を切り出すことができる。
また、本発明の超硬合金の製造方法においては、前記第一工程において、高速フレーム溶射を用いること、が好ましい。溶射超硬合金被膜の形成に高速フレーム溶射を用いることで、溶射超硬合金被膜に空孔やラメラ界面等の欠陥が適度に導入され、第二工程における摩擦攪拌プロセスによる材料流動が容易になる。その結果、摩擦攪拌プロセスに用いるツールの長寿命化を図ることができる。
また、本発明は、
刃先部と本体部からなる超硬合金製刃物であって、
前記刃先部は超硬合金製であり、
前記本体部は金属製であり、
前記刃先部と前記本体部とは冶金的に接合されていること、
を特徴とする超硬合金製刃物、も提供する。
本発明の超硬合金製刃物は、刃先部のみが超硬合金製であることから、全てを超硬合金製とする場合と比較して材料コストが大幅に低減されている。また、本体部と刃先部は冶金的に接合されており、刃物の使用に対して十分な接合強度及び耐久性等を有している。
本発明の超硬合金製刃物は、前記刃先部の超硬合金に含まれる結合相の平均結晶粒径が1μm以下であること、が好ましい。結合相の平均結晶粒径が1μm以下とナノ組織化していることで、刃先部は靭性を損なうことなく高硬度化が達成されている。
また、本発明の超硬合金製刃物は、前記本体部が鋼製であり、前記本体部の略全体が前記鋼の略焼入れ硬度を有していること、が好ましい。本体部を鋼製とすることで安価となり、本体部の略全体が焼入れされていることで、刃物として要求される適度な剛性等が付与されている。
更に、本発明の超硬合金製刃物は、前記結合相がコバルト系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1800HV以上であり、前記結合相がニッケル系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1400HV以上であること、が好ましい。刃先部の硬度がこれらの値を有することで、使用中の摩耗が抑制されており、長寿命化が達成されている。
なお、本発明の超硬合金製刃物は、本発明の超硬合金製刃物の製造方法によって好適に製造することができる。
本発明によれば、刃先のみが超硬合金製である超硬合金製刃物及びその製造方法であって、優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物及びその安価かつ簡便な製造方法を提供する。
本発明の超硬合金製刃物の製造方法に関する工程図である。 第二工程(S02)における摩擦攪拌プロセスの模式図である。 第三工程(S03)の一態様を示す模式図である。 本発明の超硬合金製刃物の一態様を示す外観図である。 超硬合金製刃物10の断面模式図である。 実施例で得た溶射超硬合金被膜のSEM写真である。 摩擦攪拌プロセスを施した試料の概観写真である。 摩擦攪拌プロセスを施した溶射超硬合金被膜のSEM写真である。 摩擦攪拌プロセスを施した溶射超硬合金被膜のTEM写真である。 摩擦攪拌プロセス前後における溶射超硬合金被膜のビッカース硬度である。 摩擦攪拌プロセス前後における溶射超硬合金被膜(コバルト結合相)のビッカース硬度である。 超硬合金製刃物前駆体の概観写真である。 超硬合金製刃物の概観写真(刃先部拡大)である。
以下、図面を参照しながら本発明の超硬合金製刃物及びその製造方法の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
(A)超硬合金製刃物の製造方法
図1に、本発明の超硬合金製刃物の製造方法に関する工程図を示す。本発明の超硬合金製刃物の製造方法は、金属板の少なくとも一面に溶射超硬合金被膜を形成させる第一工程(S01)と、溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第二工程(S02)と、改質部が少なくとも刃先の一部となるように、金属板を刃物形状に加工する第三工程(S03)と、を含んでいる。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)第一工程(S01:溶射超硬合金被膜の形成)
第一工程(S01)は、溶射を用いて金属板の表面に超硬合金被膜を形成させる工程である。
溶射方法は特に限定されず、ガス燃焼エネルギーや電気エネルギー(プラズマ、アーク等)を利用した各種溶射法を用いることができる。具体的には、ガスフレーム溶射、高速ガスフレーム溶射(HVOF)、アーク溶射、プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射(VPS)等を用いることができる。ここで、第二工程(S02)における摩擦攪拌プロセスを容易にする観点から、摩擦攪拌プロセス中の材料流動を促進する空孔やラメラ界面を溶射超硬合金被膜に適度に導入できる高速フレーム溶射(HVOF)を用いることが好ましい。
金属板の種類は特に限定されず、従来公知の種々の金属材を用いることができるが、鋼を用いることが好ましく、焼き入れした鋼を用いることがより好ましい。金属板を鋼とすることで安価となり、焼き入れした鋼を用いることで、刃物として要求される適度な剛性等を付与することができる。また、金属板の形状及び大きさは刃物の形状によって適宜最適化すればよく、例えば、円筒状又は円柱状の金属材を用いることで、丸刃を製造することもできる。
更に、溶射超硬合金被膜の種類も特に限定されず、従来公知の種々の組成を有する超硬合金を用いることができ、例えば、コバルト系又はニッケル系の金属結合相を有する超硬合金を用いることができる。
金属板の表面に形成させる溶射超硬合金被膜の厚さは刃先部の形状及び大きさ等によって適宜調整すればよいが、例えば、100〜1000μmとすることが好ましい。溶射超硬合金被膜の厚さを100〜1000μmとすることで、第二工程(S02)における摩擦攪拌プロセスによって膜厚方向に十分に攪拌することができると共に、金属板と溶射超硬合金被膜との接合強度を効率的に向上させることができる。
(2)第二工程(S02:摩擦攪拌プロセス)
第二工程(S02)は、第一工程(S01)で形成させた溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する行程である。
摩擦攪拌プロセスは、1991年に英国のTWI(TheWelding Institute)で考案された接合技術である摩擦攪拌接合法を、金属材の表面改質法として応用したものである。摩擦攪拌接合は高速で回転する円柱状のツールを接合したい領域に圧入(ツール底面にプローブと呼ばれる突起を有しており、該プローブが圧入される)し、摩擦熱によって軟化した被接合材を攪拌しながら接合したい方向に走査することで接合を達成する技術である。回転するツールによって攪拌された領域は一般的に攪拌部と呼ばれ、接合条件によっては材料の均質化および結晶粒径の減少に伴う機械的特性の向上がもたらされる。摩擦攪拌による材料の均質化および結晶粒径の減少に伴う機械的特性の向上を表面改質として用いる技術が摩擦攪拌プロセスであり、近年広く研究の対象になっている。なお、本発明で用いる摩擦攪拌プロセス用ツールの底面には、必ずしもプローブを有している必要はなく、プローブを有さない所謂フラットツールを用いることができる。
図2に第二工程(S02)における摩擦攪拌プロセスの模式図を示す。高速回転する円筒状の摩擦攪拌プロセス用ツール2を金属板4の表面に形成させた溶射超硬合金被膜6に圧入し、摩擦攪拌プロセス用ツール2を任意の方向に移動させることで、溶射超硬合金被膜6に改質領域8を形成することができる。なお、摩擦攪拌プロセス用ツール2を圧入後、移動させることなく引き抜いた場合には、摩擦攪拌プロセス用ツール2の底面形状に対応した改質領域8が得られる。摩擦攪拌プロセス用ツール2で攪拌された領域には材料流動が生じ、溶射超硬合金被膜6に存在する空隙等の欠陥を消失させると共に結合相の結晶粒を微細化することができる。
また、摩擦攪拌プロセス時に発生する材料流動および入熱により、溶射超硬合金被膜6と金属板4とは冶金的に接合される。加えて、改質された溶射超硬合金被膜6と金属板4との接合界面近傍において、金属板4の硬度は摩擦攪拌プロセス前よりも高くなる。
摩擦攪拌プロセス用ツール2には、溶射超硬合金被膜6よりも機械的特性(硬度、耐熱衝撃性および摩擦攪拌プロセス時の温度における変形抵抗等)に優れたものを使用することができる。摩擦攪拌プロセス時に摩擦攪拌プロセス用ツール2の破片が溶射超硬合金被膜6に混入する場合を考慮すると、摩擦攪拌プロセス用ツール2は超硬合金製であることが好ましい。超硬合金製の摩擦攪拌プロセス用ツール2は溶射超硬合金被膜6よりも機械的特性に優れたものを使用する必要があり、例えば、溶射超硬合金被膜6よりも高硬度のものを選択する必要がある。
摩擦攪拌プロセスの主要なプロセスパラメータとしては、ツール回転速度、ツール移動速度及びツール荷重等を挙げることができる。これらのプロセスパラメータは、溶射超硬合金被膜の種類及び厚さや、所望する改質領域の大きさ及び硬度上昇の程度等に応じて適宜設定すればよい。
(3)第三工程(S03:刃物形状への加工)
第三工程(S03)は、第二工程(S02)で改質された溶射超硬合金被膜が刃先となるように金属板を切断等する行程である。
通常、溶射超硬合金被膜には欠陥が存在することに加え、溶射超硬合金被膜と金属板との接合強度も十分ではないため、溶射超硬合金被膜を有する金属板を切断すると溶射超硬合金被膜の剥離や欠け等が生じてしまう。これに対し、本発明の超硬合金製刃物の製造方法では第二工程(S02)における摩擦攪拌プロセスによって溶射超硬合金被膜の機械的特性及び金属板との接合強度が向上していることから、刃先となる改質部が切断プロセス中に剥離・破損等することなく、良好な刃物を製造することができる。
図3に、第三工程(S03)の一態様を示す模式図を示す。本発明の超硬合金製刃物の製造方法においては、金属板4の厚さを超硬合金製刃物10の刃幅と略同一とし、第三工程において、金属板4を厚さ方向に対して略水平に切り出すこと、が好ましい。金属板4の厚さを超硬合金製刃物10の刃幅と略同一とすることで、金属板4をスライスするのみで刃物前駆体を切り出すことができる。
金属板4を切断した後、形状の微修正や刃立て等を行うことで超硬合金製刃物10を得ることができる。なお、上述の通り、改質領域8における溶射超硬合金被膜は優れた機械的特性を有していることから、刃欠け等を生じることなく鋭い刃先を形成することができる。
(B)超硬合金製刃物
図4に本発明の超硬合金製刃物の一態様を示す外観図を示す。超硬合金製刃物10は本体部12と刃先部14とを有し、刃先部14のみが超硬合金製となっている。なお、本発明の超硬合金製刃物は、本発明の超硬合金製刃物の製造方法によって好適に得ることができる。
図5に超硬合金製刃物10の断面模式図を示す。刃先部14は溶射超硬合金被膜6となっており、先端部分は改質領域8となっている。改質領域8に含まれる結合相の結晶粒は微細化されており、平均結晶粒径が1μm以下であることが好ましい。
また、溶射超硬合金被膜6に存在する空隙等の欠陥は摩擦攪拌プロセス等によって消失し、改質領域8に含まれる欠陥は大幅に低減されている。加えて、溶射超硬合金被膜6と金属板4とは冶金的に接合されており、溶射超硬合金被膜6と金属板4との接合界面近傍において、金属板4の硬度は他の領域と比較して高くなっている。
以上、本発明の超硬合金製刃物及びその製造方法の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
板厚10mmのSKD61板材に対し、高速フレーム溶射法を用いて溶射超硬合金被膜を形成させた(第一工程:S01)。原料粉末にはガスアトマイズ法で製造された平均粒径40μmのWC−20mass%CrC−7mass%Ni粒子を用いた。
溶射超硬合金被膜のSEM写真を図6に示す。溶射超硬合金被膜はSKD61板材表面に約300μmの厚さで形成されているが、溶射超硬合金被膜には空隙等の欠陥(図6中の黒い領域、代表的なものを矢印で示している)が多数存在していることが確認できる。
次に、溶射超硬合金被膜に対して摩擦攪拌プロセスを施した(第二工程:S02)。摩擦攪拌プロセス後の試料の概観写真を図7に示す。摩擦攪拌プロセスには直径が12mmの円柱形状をした超硬合金(WC−Co)製のツールを用い、600rpmの速度で回転する該ツールを3400kgの荷重で溶射超硬合金被膜に圧入させた。ツールの移動速度は50mm/minとし、アルゴンガスをフローさせることでツールおよび試料の酸化を防止した。
摩擦攪拌プロセスを施した溶射超硬合金被膜のSEM写真を図8に示す。摩擦攪拌プロセスを施す前の溶射超硬合金被膜には空隙等の欠陥が多数存在していたが、摩擦攪拌プロセス後の溶射超硬合金層には該欠陥がほとんど確認できない。また、摩擦攪拌プロセス前は組織が不均質であるが、摩擦攪拌プロセスによって均質化されていることが分かる。
摩擦攪拌プロセスを施した溶射超硬合金被膜のTEM写真を図9に示す。摩擦攪拌プロセス前の溶射超硬合金被膜にはSEM観察では判別が困難な、非常に微小な欠陥が多数存在していたが、摩擦攪拌プロセスを施すことで該欠陥が消失し、溶射超硬合金被膜の緻密化が進んでいることが分かる。また、ニッケル結合相の結晶粒はナノメートルオーダー(1μm以下)にまで微細化されていることが確認できる。
図10に摩擦攪拌プロセス前後における溶射超硬合金被膜のビッカース硬度(溶射超硬合金層の表面から深さ150μmの位置における水平方向プロファイル)を示す。ビッカース硬度は荷重2.94N(300gf)、保持時間15秒の条件で測定を行った。摩擦攪拌プロセス前における溶射超硬合金被膜の硬度は約1250HV程度であり、欠陥が存在する領域では1000HVを下回る硬度となっている。これに対し、摩擦攪拌プロセス後では硬度が大幅に向上し、1400HV以上の領域が広範囲に確認された。なお、コバルト系の金属結合相を有する溶射超硬合金被膜に対して同様のプロセスを施した場合、1800HV以上の領域が広範囲に確認された。コバルト系金属結合相を有する溶射超硬合金被膜について、摩擦攪拌プロセス前後におけるビッカース硬度(溶射超硬合金層の表面から深さ150μmの位置における水平方向プロファイル)を図11に示す。
次に、摩擦攪拌プロセスによって改質した超硬合金被膜が刃先となるように、放電加工によって金属板を厚さ方向に対して略水平に切り出して、厚さ1.5mmの超硬合金製刃物前駆体を得た(第三工程:S03)。当該超硬合金製刃物前駆体の概観写真を図12に示す。金属板の幅が35mmであることから、一枚の金属板から多数の超硬合金刃物前駆体を得ることができる。図12において、刃先部の超硬合金に剥離及び欠け等は認められず、良好な状態で存在していることが分かる。なお、図12の超硬合金製刃物前駆体の表面に表れている模様は、放電加工による切断に起因するものである。
超硬合金製刃物前駆体の刃先部に研磨を施し、刃立てして得られた超硬合金製刃物の概観写真(刃先部拡大)を図13に示す。刃先は極めて鋭利な状態となっており、一般的な溶射超硬合金被膜では実現不可能(欠陥の存在等によって刃立てが困難)な刃先角度となっている。また、刃先部の超硬合金に剥離及び欠け等は認められない。
以上の結果より、摩擦攪拌プロセスを施した溶射超硬合金被膜を刃先とし、金属板をスライスする態様で刃物を製造することで、優れた機械的特性を有する超硬合金製の刃先部が金属基材に強固に接合された超硬合金製刃物を、安価かつ簡便に製造できることが確認できる。
2・・・摩擦攪拌プロセス用ツール、
4・・・金属板、
6・・・溶射超硬合金被膜、
8・・・改質領域、
10・・・超硬合金製刃物、
12・・・本体部、
14・・・刃先部。

Claims (7)

  1. 金属板の少なくとも一面に溶射超硬合金被膜を形成させる第一工程と、
    前記溶射超硬合金被膜の少なくとも一部に摩擦攪拌プロセスを施し、改質部を形成する第二工程と、
    前記改質部が少なくとも刃先の一部となるように、前記金属板を刃物形状に加工する第三工程と、を含むこと、
    を特徴とする超硬合金製刃物の製造方法。
  2. 前記金属板の厚さを前記超硬合金製刃物の刃幅と略同一とし、
    前記第三工程において、前記金属板を厚さ方向に対して略水平に切り出すこと、
    を特徴とする請求項1に記載の超硬合金製刃物の製造方法。
  3. 前記第一工程において、高速フレーム溶射を用いること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の超硬合金製の製造方法。
  4. 刃先部と本体部からなる超硬合金製刃物であって、
    前記刃先部は超硬合金製であり、
    前記本体部は金属製であり、
    前記刃先部と前記本体部とは冶金的に接合されていること、
    を特徴とする超硬合金製刃物。
  5. 前記刃先部の超硬合金に含まれる結合相の平均結晶粒径が1μm以下であること、
    を特徴とする請求項5に記載の超硬合金製刃物。
  6. 前記本体部が鋼製であり、
    前記本体部の略全体が前記鋼の略焼入れ硬度を有していること、
    を特徴とする請求項4又は請求項5に記載の超硬合金製刃物。
  7. 前記結合相がコバルト系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1800HV以上であり、
    前記結合相がニッケル系結合相である場合の前記刃先部のビッカース硬度が1400HV以上であること、
    を特徴とする請求項4〜6のうちのいずれかに記載の超硬合金製刃物。
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