JP2017092259A - 多層プリント配線基板におけるバックドリル加工方法及び基板加工装置 - Google Patents

多層プリント配線基板におけるバックドリル加工方法及び基板加工装置 Download PDF

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Abstract

【課題】バックドリル加工に際して、加工台、下板及び基板のそれぞれに存する傾斜や撓み等の誤差によって生じる残し代の長尺化を防止して、正確且つ精密なバックドリル加工を可能として、設計上の残し代自体をも短く設定することを可能とするものである。【解決手段】バックドリル加工を行うドリル自体によって下降距離情報を検出するとともに、その取得された下降距離情報をもとにした一定の算式に基づいて、所望の導体層までの実際の距離を算出するとともに、その距離に更に修正を加えることで、正確且つ精密なバックドリル加工の加工深さの制御を可能とするものである。【選択図】図1

Description

本発明は、多層プリント配線基板におけるバックドリル加工方法及び該加工方法を実施するに適した基板加工装置に関するものである。
従来、電子機器における超高速制御が要求されるに伴い、プリント配線基板においてはその多層化及び高密度化が図られて来た。そのような多層プリント配線基板においては、例えば電子部品を実装するため、あるいは多層となったプリント配線間を接続するために、スルーホール(貫通孔)を設け、そこに所定厚さの導電メッキを施している。例えば図2に示すように、上下に銅箔部よりなる表面導体層107と裏面導体層108が設けられ、最終的にはその表面導体層107と裏面導体層108に配線パターンをエッチング処理して施す基板101において、第1の絶縁層103と第2の絶縁層104の間に第1の内装導体層102が、また、第2の絶縁層104と第3の絶縁層105の間に第2の内装導体層106が設けられ、第1の内装導体層102を所望の導体層として、裏面導体層108とを接続させる場合、基板101自体の上下を貫通するスルーホールを設け、そこに導電メッキを施して、基板101の垂直方向に貫通した穴部109に所定厚さのメッキ部110が形成される。このメッキ部110は、裏面導体層108と接続することが求められる第1の内装導体層102とを接続するものとなるが、そのままでは、余長スルーホール部(以下、「余長部」と言う)が表面導体層107に至まで残存することとなる。
前記余長部が残存すると、例えば高速伝送の場合等にはその制御周波数が数GHz以上となり、余長部で反射や減衰が発生することから、当該基板101使用した電子機器においていずれもノイズ等の不具合の発生原因となり、当該基板101自体が不良品と評価されることとなる。そのため、その余長部を除去する加工に際しては、余分なメッキ部110を除去して余長部をできるだけ短縮化するバックドリル加工が必要となった。
前述のようにこのバックドリル加工においては、残存する余長部がノイズ等の不具合の原因となることから、最大限、すなわちその余長部がゼロとなるまでそのメッキ部110を除去することが望ましいものであるが、その一方で、絶縁層に挟み込まれた第1の内装導体層102の厚さが12乃至25μmであることから、裏面導体層108と第1の内装導体層102との確実な接続を維持するためにも、当該第1の内装導体層102の直前でバックドリル加工を停止する必要があった。そのため、バックドリル加工の深さの正確な制御が求められたが、現実には加工装置の加工台自体の傾斜や撓み、加工に際して使用される個々の下板の厚さの誤差、個々の基板自体、あるいは複数の基板を切り出す前の基板母板の厚さの誤差、測定装置によって生じる誤差等の複数の要因によって、バックドリル加工の深さの正確な制御は困難であった。そのため、基板メーカーが基板加工業者に基板の加工を依頼する際には、そのバックドリル加工に際して生じ得る誤差を勘案して、前記残存させる余長部の長さをあえてゼロとせず、設計上の残り代として若干の長さを指定して依頼していた。
このように、基板加工に際して残存する余長部の長さとして若干の長さの許容範囲が存在しているとはいえ、その若干の許容範囲内においてもできるだけ正確にその数値に近接するよう加工することが必要となることから、バックドリル加工の深さの正確な制御においては、プローブを用いる方法が用いられていた。すなわち、プローブの先端を基準位置(Z軸座標位置として0となる点)として、スピンドルを組み込んだ基板加工装置における、該スピンドルのロータ先端に設置されたドリルの先端位置をプローブの先端位置と同一の高さ位置に設定した上、プローブで加工台上に載置された基板の高さ位置を測定することにより、プローブの基準位置からその基板までの距離(M)を算出する。そして、基板自体の厚さはもとより、所望の導体層から表面導体層107までのメッキ部の設計上の長さである基準余長(Lnd)、及びメッキ部における設計上の残し代の長さ(td)は、事前に基板メーカーにより設計値として決定されていることから、基準余長(Lnd)から残し代の長さ(td)を控除したものが基準バックドリル深さ(L2d)となり、前記プローブによって測定されたプローブの基準位置からその基板までの距離(M)と、前記基準バックドリル深さ(L2d)の和が、ドリルの移動距離ということになる。それ故、その算出された移動距離となるまでドリルを降下させることによって、バックドリル加工がなされていた。
しかし、この方法によってバックドリル加工の深さを制御した場合、以下のような理由によって、正確な制御が困難となっていた。すなわち、第1に、プローブの先端位置とスピンドルに設置されたドリル先端位置との位置ズレが生じることである。プローブはあくまでドリルとは別体であることから、その先端位置を完全に一致させることは至難であり、一般に±20μm程度の誤差はやむを得ないところであった。第2に、バックドリル加工に際して使用される基板加工装置の加工台において、加工位置毎の加工台高さ自体にバラツキがあることである。多数の基板加工装置において、それぞれ加工台の複数の位置において加工台の高さを測定したところ、概ね、加工台自体に加工位置毎に高さのバラツキが約±50μm存在していることが判明した。第3に、加工に際して用いられる下板の厚さにおいても、その設定された厚さに対してバラツキがあることである。多数の下板についてその厚さを測定したところ、概ね約±20μmのバラツキが存在していることが判明した。第4に、多層プリント配線基板自体において、その設定された厚さに対してバラツキが存在していることである。一般に、多層プリント配線基板は樹脂層と導体配線層とを交互に加熱圧縮して形成されていることから、基板の設計上は、各層の厚さや全体としての板厚自体についての設計寸法が存在しているにしても、実際の製品としての基板においては、当然、各層の厚さはもとよりその基板自体の板厚にもバラツキが生じている。実際に多数の基板において設計値との誤差を測定してみると、概ね基板の厚さのバラツキは約±30μm存在していることが判明した。特に、多層プリント配線基板においては、配線となる導体層が全ての樹脂層間に均等に配されているのではなく、例えば1枚の基板のある部分には20層の導体層が設けられているのに対して、他の部分には導体層が8層しか配されていないというように1枚の基板の中でも導体層が不均一に配されていることから、同じ1枚の基板の中であっても、20層の導体層が設けられている部分の方が8層の導体層しか設けられていない部分に比して、板厚が厚くなるという傾向があった。
以上のように、バックドリル加工に際して、これらのバラツキによって最大±120μmの誤差が生じることとなる。そのため、そのバラツキを解消すべく、前記各バラツキの中で大きな割合を占める加工台の高さのバラツキを解消しようとしても、そのためにはメンテナンス及び修復のために高度且つ精密な技術が必要とされ、時間及びコストとして過分のものが掛かるにかかわらず、せいぜい±20μm程度の誤差にしかバラツキを縮小できなかった。その結果、それだけの時間とコストを掛けても、やはり±90μm程度の誤差が存在し、設計値である基準残し代に対して、±50μm程度の誤差で正確にバックドリル加工の深さ制御をしたいという顧客(基板メーカー)の要求仕様に答えることが困難であった。
そのため、より正確にバックドリル加工深さを制御するために、特開2014−33006号に示すような、基板の配線領域外にテスト用とも言うべきクーポンを設け、そこをバックドリル加工して得られた深さ情報に基づいて所望の位置へのバックドリル加工の加工深さを制御する方法が提案された。
しかし、実際にバックドリル加工を施すスルーホールとは別にクーポンを設置しなければならないことから、バックドリル加工の加工深さを正確且つ精密に制御することがやはり困難な上、製品としての基板の製造コストを増大させるという欠点があった。
一方、前記のように、ドリル自体とは別にプローブを設けて基板の高さ等を測定すると、プローブの先端位置とスピンドルに設置されたドリル先端位置との位置ズレが生じ、そのためスピンドルで実際に基板に対してバックドリル加工を施すと、その位置ズレだけで±20μm程度の誤差が生じてしまう。そのため、その誤差をなくすために、特開2014−187153号に示すような、直接ドリルで基板内の深さ位置を探知して、その位置を基準にバックドリル加工の加工深さを制御する方法が提案されている。
しかし、この方法においても電圧検出層を所望の内部配線層とは別に設けておかなければならないことから、やはりバックドリル加工の加工深さを正確且つ精密に制御することができないだけでなく、製品としての基板の製造コストを増大させるという欠点があった。
特開2014−33006号公報 特開2014−187153号公報
解決しようとする課題は、多層プリント配線基板におけるバックドリル加工において、当該加工深さを正確且つ精密に制御する必要があるところ、基板加工装置におけるスピンドルのドリルとは別体となるプローブによって、加工位置における当該基板の高さ位置を測定するとともに、設計値として決定されている基板自体の厚さ、基準余長(Lnd)及び基準残し代(td)に基づきバックドリル加工の深さ制御を行うと、加工を行うドリル自体の位置とプローブの位置との位置ズレ並びに、基板の設計値と実際の厚さとの相違によって、正確且つ精密な加工深さの制御が困難となり、また、それ以外の方法によっても、正確且つ精密な加工深さの制御が困難なだけでなく、製品としての基板の製造コストを増大させるという問題点であった。
本願発明は、第1に、基板加工装置の加工台自体の有する傾斜や撓み等、並びに加工に際して使用する下板自体の有する傾斜や撓み等によって生じる測定誤差を最小限に抑えるとともに、多層プリント配線基板において個々の基板毎に、また、1枚の基板においても、その部分部分において微妙な厚さの相違、並びに導体層の高さ位置の相違があることを前提に、バックドリル加工に際しての加工深さ制御の対象となる内装導体層における、設計値である基準余長に対する実際の高さ位置のズレと、当該導体層を含む基板自体の厚さにおける、設計値に対する実際の厚さのズレとの間に相関関係があることを発見し、その相関関係を利用して、ドリル自体による下降距離情報検出機構とともに、その検出された下降距離情報を集積及び演算して、バックドリル加工における正確且つ精密な加工深さ制御を可能にするものである。第2に、バックドリル加工における正確且つ精密な加工深さ制御を可能とする制御機構を有する加工装置を提供し、更にはその加工装置を使用したバックドリル加工の制御方法を提供するものである。
本願発明は、多層プリント配線基板に対してバックドリル加工を行うことができる基板加工装置における、バックドリル加工に際しての、スピンドルのドリルの下降距離を制御するコンピュータを使用した加工深さ制御機構であって、
スピンドルのドリルが検出対象物に接触することによって下降距離情報を検出してなる下降距離情報検出機構を有するとともに、
下記1乃至5各記載の位置情報等がそれぞれ記録される記憶媒体を有し、
1.設計上の基板厚さ、基準余長及び設計上の残し代の長さ並びにスルーホールの穴部に施されたメッキ部の層の所定厚さ及びドリルの先端角の角度についての数値情報、
2.基板加工装置の加工台上に載置された、少なくとも上面が導体層となる下板 において、下記設定により定められた測定ポイント及び各エリア域の平面上の座標位置情報、

格子状に複数のエリアを区画し、その各エリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント、あるいはその各エリア毎に更に同一の規格によって格子状に区切られたサブエリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント。
3.前記各測定ポイントに対して、バックドリル加工を行うドリルの設置されたスピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各測定ポイント毎の高さ位置情報、
4.基板加工装置の加工台上の前記下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは複数の多層プリント配線基板を切り出す前の母板(以下、単に「母板」と言う。)に存する各バックドリル加工位置の、平面上の座標位置情報、
5.前記基板もしくは母板の各バックドリル加工位置に前記スピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各バックドリル加工位置毎の高さ位置情報、
前記各エリア毎の座標位置情報と、多層プリント配線基板もしくはその母板に存するバックドリル加工位置の座標位置情報とから、バックドリル加工に際して下板上に多層プリント配線基板もしくはその母板を載置した状態で、前記下板の各エリアのそれぞれの座標値域内に存在するバックドリル加工位置を抽出する抽出機構と、
下記式に基づき個別バックドリル加工深さL2cを算出する算出機構を有して、
その算出された個別バックドリル加工深さL2cに基づき、基板加工装置におけるバックドリル加工の加工深さを自動制御してなるものである。
L2c=Lnd×(L2m−αave)/L2d−td+角tan1
Lnd=設計上の基準余長
L2m=加工台上の下板上に載置された多層プリント配線基板あるいはその母板の、下板の各エリア毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ
αave=加工台上の下板の、各エリア毎の測定ポイントの実測高さの平均値。
L2d=設計上の多層プリント配線基板厚さ
td=設計上の残し代の長さ
角tan1=スルーホールのメッキ部の層の所定の厚さ×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}
この加工深さ制御機構により、以下の利点が生じることとなる。
第1に、下板をエリア毎に区分して、そのエリア毎に測定ポイントを抽出した上、その測定ポイントの高さ位置情報からそのエリアの高さの平均値を算出し、また、その一方で当該エリアに対応する位置に存する、基板のバックドリル加工位置を抽出して、その測定された高さから前記下板の当該エリアにおける高さの平均値を控除することで(すなわち、L2m−αaveの計算式により)、そのバックドリル加工位置における基板自体の厚さを正確に検出することができる。そしてこの検出されたバックドリル加工位置における基板自体の厚さと、基板自体の設計上の厚さとの相違の関係は、所望の導体層の基板における実際の厚さ位置と、その設計上の厚さ位置との相違の関係と相関関係にあることから、基板自体を破壊することなくしては測定しえない所望の導体層の実際の厚さ位置を、当該相関関係に従って修正することによって認識することができ、各バックドリル加工位置毎に異なる誤差に合わせて、より精緻なバックドリル加工が可能となる。更に、バックドリル加工を行うドリルの有する先端角によって、基板のバックドリル加工位置の高さ情報は、ドリルの傾斜部が、スルーホールの穴部に施されたメッキ部の、穴部に対する内側に接触したことにより検出される。その一方で、残し代の上端部は、穴部に対して外側が長く、内側が短く傾斜して切削されることとなり、設計上の基準残し代の長さは、この外側の長い方で規定される。そのため、所望の導体層までの余長部となるメッキ部の長さが算出され、その長さから設計上の基準残し代の長さを控除した位置は、メッキ部の外側で規定されることとなる。しかし、その位置まで、バックドリル加工を行うには、ドリル先端に傾斜部が存在し、しかも前述のように基板の高さ位置の測定は、ドリルの傾斜部が、スルーホールの穴部に施されたメッキ部の、穴部に対する内側に接触したことにより検出されることから、メッキ部の内側においては、その外側の位置よりも深くまで加工される必要がある。すなわち、メッキ部の厚みに対するその内側と外側との高さ位置のズレが生じることとなり、その高さのズレは角tan1を算出することで修正される。これらの結果、バックドリル加工後のスルーホールに残存させる設計値としての残し代を短く設定しても、正確にその残し代の長さを実現できることとなる。そのため、大きな誤差を前提とした残し代を定める必要がなくなり、残し代自体を短く設定して、正確にその寸法を実現することで、残存する余長部から生じるノイズ等の不具合の発生を抑制することができる。しかも、この加工深さ制御機構は、既存のスピンドルのドリルを用いた下降距離情報検出機構に記憶媒体、抽出機構及び算出機構を付加することによって構成することができるものであって、下降距離情報検出機構を有する基板加工装置を低コストで改造することを可能にするものである。
第2に、プローブのようなドリルとは別体となるもので下降距離情報を検知せず、バックドリル加工に使用するドリル自体で下降距離情報を検知することから、検知に際しての高さ方向の原点となるゼロ点の位置のズレによる誤差の発生を防止することができる。
第3に、加工装置側においてコンピュータによる制御を行うものであることから、多層プリント配線基板側において、特別のクーポンや配線を行うという必要がなく、基板自体の製造コストを抑えることができる。
また、下降距離情報検出機構を具体的に、少なくとも高周波交流電源と、リアクタを含むバイパス回路と、高周波用の変流器を有し、高周波交流電源の出力の一方は筐体に接続し、他方は前記変流器の入力巻線を介して、筐体からは絶縁されたスピンドルに接続されるとともに、当該スピンドルとの接続の間に、リアクタを有するバイパス回路が筐体とを結んで設けられ、該スピンドルのロータのドリルが、導体である検出対象物と接触することによって、高周波交流電源からの高周波電流が変流器を介してスピンドルに、更に導体物及び導体層間の静電容量を介して前記高周波交流電源へ流入することで、変流器の出力側に電流が生じ、その電流の変化を検出器によって検出することにより、ドリルの下降距離情報を認識してなるものとするものである。
これにより、スピンドルのドリル先端の検出対象物への接触の有無の判定に際して、外乱要因が発生しにくい場合や、発生してもその外乱要因が判定精度に与える影響が少ない場合、あるいはフィルター等の当該外乱要因を排除する構成を別途設ける場合には、十分な判定精度を有する下降距離情報検出機構が構成されることになる上、変流器の入力巻線とスピンドルとを接続する結線の中間において、筐体との間を結んだバイパス回路を設けることにより、スピンドルがいわゆる浮き金属でなくなり、感電防止の保護機能を付ける必要がなくなる。そして更にそれによって、高調波電流等の電流がドリルを介して筐体へ流れ、それら電流によるドリルの金属面やドリル表面のコーティングの破損が防止され、ドリルの長期使用が可能とすることができる。
また下降距離情報検出機構の異なる構成として、下降距離情報検出機構を、高周波交流電源と、リアクタを含むバイパス回路と、キャンセル回路と、巻数が同じで逆巻となって接続する入力巻線とキャンセル巻線と1個以上の出力巻線を持つ高周波用の変流器を有し、キャンセル回路は、バイパス回路と同一の静電容量を有するリアクタを有する逆バイパス回路と、直列に配されたコンデンサとスイッチを1組とした上、該コンデンサとスイッチを複数組並列に配して1個の模擬回路として、筐体からは絶縁されたスピンドルに通電された場合に、スピンドルのモータの各相の巻線とスピンドル本体間、並びにスピンドル本体と筐体間にそれぞれ生じる静電容量に対応して模擬回路を複数セット有して、前記逆バイパス回路と該複数の模擬回路を並列に配してなり、検出対象物を基板加工装置の筐体内の加工台上に固定した上、前記高周波交流電源の出力の一方は前記筐体に接続するとともに、他方は前記変流器の入力巻線とキャンセル巻線の中間に接続し、該入力巻線の他端はスピンドル本体に接続するとともに、バイパス回路を介して筐体に接続し、キャンセル巻線の他端は、逆バイパス回路の一端及び各模擬回路の一端と並列に接続し、逆バイパス回路の他端は筐体に接続し、スピンドル本体から絶縁された筐体とスピンドルとの間に生じる静電容量に対応する模擬回路の他端は筐体に、スピンドル本体とモータ巻線との間に生じる静電容量に対応する模擬回路の他端はスピンドルのモータの各相の巻線と接続し、各対応する静電容量と略等しくなるよう模擬回路のスイッチを調整することにより、入力巻線とキャンセル巻線に流れる電流によって前記変流器に発生する磁束の方向を互いに打ち消し合わせることで、スピンドルのドリル先端と検出対象物との接触によって生じる電流の変化を、変流器から出力される電流の変化として検出器により検出することにより、ドリルの下降距離情報を認識してなるものとするものである。
また、下降距離情報検出機構の更に異なる構成として、下降距離情報検出機構を、高周波交流電源と、巻数の同じ2個の入力巻線と1個以上の出力巻線を持つ高周波用の変流器並びに、直列に配されたコンデンサとスイッチを1組として、該コンデンサとスイッチを複数組並列に配してなる模擬基板回路を有し、前記高周波交流電源出力の一方は前記筐体に接続するとともに、前記模擬基板回路の一方端子に接続し、他方は前記変流器の2個の入力巻線を介してそれぞれ、検出対象物と前記模擬基板回路の他方端子に接続し、基板加工装置の筐体から絶縁して、筐体内の加工台上に固定した検出対象物と筐体間に生じる静電容量と略等しくなるよう模擬基板回路のスイッチを調整することにより、各入力巻線電流が前記変流器に発生させる磁束が互いに打ち消し合うようにして、スピンドルのドリル先端と検出対象物との接触によって生じる電流の変化を、変流器から出力される電流の変化として検出器により検出することにより、ドリルの下降距離情報を認識してなるものである。
これらの構成を有する下降距離情報検出機構を使用することにより、スピンドルのドリル自体による高さ位置の正確且つ精密な測定がより容易となり、それによりバックドリル加工の加工深さ制御をより精密に行うことができるようになる。ひいては、バックドリル加工後のスルーホールに残存する残し代の長さを最小限にすることができる。
また、前記記載のいずれかの加工深さ制御機構を具備してなる基板加工装置である。
一方、前記いずれかの基板加工装置を使用して行うバックドリル加工方法として、
下記1乃至5各記載の位置情報等を記憶媒体に記録するとともに、
1.設計上の基板厚さ、基準余長及び設計上の残し代の長さ並びにスルーホールの穴部に施されたメッキ部の層の所定厚さ及びドリルの先端角の角度についての数値情報、
2.基板加工装置の加工台上に載置された、少なくとも上面が導体となる下板において、下記設定により定められた測定ポイント及び各エリア域の平面上の座標位置情報、

格子状に複数のエリアを区画し、その各エリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント、あるいはその各エリア毎に更に同一の規格によって格子状に区切られたサブエリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント。
3.前記各測定ポイントに対して、バックドリル加工を行うドリルの設置されたスピンドルを下降させることにより、下降距離情報検出機構によって測定されるその各測定ポイント毎の高さ位置情報、
4.基板加工装置の加工台上の前記下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは複数の多層プリント配線基板を切り出す前の母板(以下、単に「母板」と言う。)に存する各バックドリル加工位置の、平面上の座標位置情報、
5.前記基板もしくは母板の各バックドリル加工位置に前記スピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各バックドリル加工位置毎の高さ位置情報、
前記各エリア毎の座標位置情報と、多層プリント配線基板もしくはその母板に存するバックドリル加工位置の座標位置情報とから、バックドリル加工に際して下板上に多層プリント配線基板もしくはその母板を載置した状態で、前記下板の各エリアのそれぞれの座標値域内に存在するバックドリル加工位置を抽出した上で、
下記式に基づき自動計算された個別バックドリル深さL2cに基づき、基板加工装置におけるバックドリル加工の加工深さを自動制御してなるものである。
L2c=Lnd×(L2m−αave)/L2d−td+角tan1
Lnd=設計上の基準余長
L2m=加工台上の下板上に載置された多層ブリント配線基板あるいはその母板の、下板の各エリア毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ
αave=加工台上の下板の、各エリア毎の測定ポイントの実測高さの平均値
L2d=設計上の多層プリント配線基板厚さ
td=設計上の残し代の長さ
角tan1=スルーホールのメッキ部の層の所定の厚さ×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}
この基板加工装置を前記のように使用することにより、余計な製造コストを掛けることなく、各基板のバックドリル加工位置に合わせたより正確且つ精密な加工が可能となり、バックドリル加工後のスルーホールに残存する設計値としての残し代を短く設定しても、正確にその残し代を実現できることとなる。そのため、大きな誤差を前提とした残し代を定める必要がなくなり、残し代自体を短く設定して、正確にその寸法を実現することで、余長部から生じるノイズ等の不具合の発生を抑制することができる。
尚、ドリルの先端がスルーホールの穴部を進行することによってメッキ部が切削されて行くものの、ドリルにおいてメッキ部を切削するのは傾斜部であって、その先端角頂部ではない。そのため、ドリルの先端角頂部の位置と、余長部の残し代を画するドリルの傾斜部の位置との間にズレが生じるだけでなく、残し代の上端部は、穴部に対して外側が長く、内側が短く傾斜して切削されることとなる。そのため、基準残し代の長さとしては、穴部に対して外側となる先端位置において規定されることとなるが、その残し代となるメッキ部の内側と外側の高さのズレは、メッキ部の所定の厚みに対する角tan1を算出することで修正される。すなわちスルーホールのメッキ部の層の所定の厚さ×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}により算出された数値によって計算上で補正することで、バックドリル加工の加工深さの制御をより精密に行うことができるようにしたものである。
また更に、前記いずれかの基板加工装置を使用して行うバックドリル加工方法として、
下記1乃至5記載の位置情報等を記憶媒体に記録するとともに、
1.設計上の基板厚さ、基準余長及び設計上の残し代の長さ並びにメッキ部を設ける前のバックドリル加工を行うスルーホールの穴部の半径及びドリルの先端角の角度についての数値情報、
2.基板加工装置の加工台上に載置された、少なくとも上面が導体となる下板において、下記設定により定められた測定ポイント及び各エリア域の平面上の座標位置情報、

格子状に複数のエリアを区画し、その各エリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント、あるいはその各エリア毎に更に同一の規格によって格子状に区切られたサブエリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント。
3.前記各測定ポイントに対して、バックドリル加工を行うドリルの設置されたスピンドルを下降させることにより、下降距離情報検出機構によって測定されるその各測定ポイント毎の高さ位置情報、
4.基板加工装置の加工台上の前記下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは複数の多層プリント配線基板を切り出す前の母板(以下、単に「母板」と言う。)に存する各バックドリル加工位置の、平面上の座標位置情報、
5.前記基板もしくは母板上に厚さの既知であるアルミ上板を載置した状態で、その各バックドリル加工位置に前記スピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各バックドリル加工位置毎の高さ位置情報、
前記各エリア毎の座標位置情報と、多層プリント配線基板もしくはその母板に存するバックドリル加工位置の座標位置情報とから、バックドリル加工に際して下板上に多層プリント配線基板もしくはその母板を載置した状態で、前記下板の各エリアのそれぞれの座標値域内に存在するバックドリル加工位置を抽出した上で、
下記式に基づき自動計算された個別バックドリル深さL2cに基づき、基板加工装置におけるバックドリル加工の加工深さを自動制御してなるものである。
L2c=Lnd×(L2m1−αave−tAL)/L2d−td+tAL+角tan2
Lnd=設計上の基準余長
L2m1=加工台上の下板上に載置された多層ブリント配線基板あるいはその母板に、更に既知の厚さを有するアルミ上板を載置・固定した状態での、下板の各エリア毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ
αave=加工台上の下板の、各エリア毎の測定ポイントの実測高さの平均値
L2d=設計上の多層プリント配線基板厚さ
td=設計上の残し代の長さ
tAL=アルミ上板の規定厚さ
角tan2=メッキ部を設ける前のスルーホールの半径×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}
これにより、以下のような誤差の発生を防止して、精緻なバックドリル加工を可能とするものである。すなわち、第1に、バックドリル加工位置にはスルーホールの穴部が存在して開口していることから、既に基板の表面の穴部の部分には導体層が存在しなくなっている上、ドリル先端は先端角を有する先端角頂部となっていることから、バックドリル加工を始めるに当たって、スルーホールの穴部の中心とバックドリル加工を行うドリルの中心との芯ズレが生じる可能性がある。そしてその芯ズレが生じた場合には、バックドリル加工位置の基板高さが正確に測定されないこととなることから、その数値自体に実際の高さ位置と誤差が生じ、その数値を前提として算出される個別のバックドリルの加工深さにも誤差を生じさせることとなる。そのため、万一その芯ズレが発生した場合でも、それらの誤差を発生させないために、基板の上に載置されたアルミ上板を含めた高さ位置を測定し、最終的にそのアルミ上板の厚さを計算上で補正するものである。第2に、前述のようにバックドリル加工位置にはスルーホールの穴部が存在して開口していることから、バックドリル加工中においても、ドリルが斜行して芯ズレの生じる可能性がある。そしてその芯ズレが生じた場合、バックドリル加工の加工深さの制御に際して、メッキ部の残し代の長さがその制御通りとならず、誤差を生じさせることとなる。そのため、バックドリル加工中のドリルの斜行を防止するためにも、基板の上にアルミ上板を載置した状態でバックドリル加工を行うものである。第3に、ドリルの先端角頂部がアルミ上板に接触することによって、基板の上に載置されたアルミ上板を含めた高さ位置が測定されるのに対し、ドリルの先端がスルーホールの穴部を進行することによってメッキ部が切削されて行くものの、ドリルにおいてメッキ部を切削するのは傾斜部であって、その先端角頂部ではない。そのため、ドリルの先端角頂部の位置と、余長部の残し代(残し代の上端部は、穴部に対して外側が長く、内側が短く傾斜して切削されることとなり、残し代の長さとしては、穴部に対して外側となる先端位置において規定される。)を画する傾斜部の位置との間にズレが生じる。このズレはまさに角tan2、すなわちメッキ部を設ける前のスルーホールの半径×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}に該当し、前記方法においては、そのズレを計算上で補正して、バックドリル加工の加工深さの制御を正確且つ精密に行うことができるようにしたものである。
また更に、前記バックドリル加工方法に付加して、基板加工装置の加工台上の下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは母板上に厚さの既知であるアルミ上板を載置した上、更にその上にスピンドルにより切削可能な絶縁性の上板を載置するものである。
これにより、以下のように誤差の発生を防止して、連続してより正確且つ精密なバックドリル加工を可能とするものである。すなわち、バックドリル加工を行うスルーホールの穴内面がメッキ加工されてメッキ部を形成していることから、バックドリル加工を行うとその導電性のメッキ部から糸状の切子が発生して、ドリルに付着することとなる。そのため、その切子が付着したドリルを使用して、バックドリル加工の事前準備としての下板や基板等の高さ測定を行うと、その付着した導電性の切子が測定誤差を招来する原因となる。絶縁性の上板がアルミ上板に載置されることにより、次のバックドリル加工において、その絶縁性の上板から切子が発生して、このドリルに付着した導電性の切子を押し上げドリルから自動的に離脱させることとなる。これにより、このドリルによって引き続き下板や基板の高さ測定を行っても、メッキ部の切子による誤差の発生を防止することができることとなる。
請求項1記載の発明にかかるバックドリル加工の加工深さ制御機構は、基板に対するバックドリル加工の加工深さを低コストで、正確且つ精密に制御できることから、加工後の基板によって生ずるノイズ等の不具合をなくすとともに、基板自体を低コストで製造できるという優れた効果を有するものである。また、当該加工深さ制御機構は、既存の下降距離情報検出機構を有する基板加工装置に付加することができるものであり、低コストで正確且つ精密なバックドリル加工を可能とする基板加工装置を提供することができるという効果をも有するものである。
請求項2記載の発明にかかるバックドリル加工の加工深さ制御機構は、簡単な構成の下降距離情報検出機構により精緻な加工深さ制御を可能とするとともに、同時に感電に対する安全性を確保しつつ、ドリルの寿命を損なうことのないものである。
請求項3乃び4記載の発明にかかるバックドリル加工の加工深さ制御機構は、いずれも下降距離情報検出機構における外乱要因を排除して、より容易に精緻な加工深さ制御を可能とするという、優れた効果を有するものである。
請求項5記載の発明にかかる基板加工装置並びに請求項6記載の発明にかかるバックドリル加工方法は、いずれも基板に対するバックドリル加工の加工深さを低コストで、正確且つ精密に制御して、加工後の基板によって生ずるノイズ等の不具合をなくすとともに、基板自体を低コストで製造できるという優れた効果を有するものである。
請求項7記載の発明にかかるバックドリル加工方法は、芯ズレによって生じる測定誤差を低コストでなくし、より容易に精緻な加工深さ制御を可能とするという、優れた効果を有するものである。
請求項8記載の発明にかかるバックドリル加工方法は、精緻なバックドリル加工を連続的に行うことを低コストで可能とするという、優れた効果を有するものである。
図1は、本願発明の実施例1に示す加工深さ制御機構を具備してなる基板加工装置の構成を示す模式図である。 図2は、検出対象物たる基板の構造を示す模式図である。 図3は、下板の仮想線によるエリア等の分割状況を示す模式図である。 図4は、本実施例1におけるバックドリル加工に際しての、ドリル先端部分の部分拡大図であって、寸法状況を示す模式図である。 図5は、図4の更に拡大図である。 図6は、本実施例2におけるバックドリル加工に際しての、寸法状況を示す模式図である。 図7は、図6の部分拡大図である。 本実施例3に示す加工深さ制御機構を具備してなる基板加工装置における、CNC制御回路を除く、スピンドルと下降距離情報検出機構との回路を示す模式図である。 本実施例4に示す加工深さ制御機構を具備してなる基板加工装置における、CNC制御回路を除く、スピンドルと下降距離情報検出機構との回路を示す模式図である。
バックドリル加工を低コストで且つ加工深さの制御精度を向上させて、ノイズ等の不具合発生の原因となるスルーホールの残り代を最小限にするという目的を、ドリル自体で下降距離情報を検出する下降距離情報検出機構を使用した上、加工台自体や下板の傾きや撓み等から生じる誤差、更には個々の基板自体に存する設計値との誤差の影響を排するよう測定箇所を定め、その測定数値を一定の算式に当てはめることによって、所望の導体層の位置をより正確に把握して、その算出された加工深さまでバックドリル加工の距離を正確且つ精密に制御することで実現したものである。そしてこの算式は、基板内部の所望の導体層の設計上の厚さ位置と実際の厚さ位置との関係が、基板自体の設計上の厚さと実際の厚さとの関係と相関関係にあるという知見に基づいている。この場合、加工深さ制御においてより正確性を高めるのであれば、基板のバックドリル加工を行う位置と、当該バックドリル加工を行う位置の鉛直下における下板位置のそれぞれの高さ位置を測定して、当該バックドリル加工位置における基板の厚さを算出すればよいが、それは不必要に時間とコストを掛けることとなるため、下板を一定のエリア毎に区切り、その中での平均値を求めることにより、基板の厚さを算出することとしたものである。これは、時間及びコストと正確性との両立を図ったものである。
また、芯ズレによる誤差の発生を防止するという目的を、アルミ上板を基板の上に載置してバックドリル加工を行うことで実現するものであり、更に、アルミ上板を基板に載置して連続してバックドリル加工を行った際に生じる不具合を、当該アルミ上板の上に絶縁性の上板を載置することによって解消するものである。
図1は、本願発明にかかる実施例である下降距離情報検出機構Kを具備した基板加工装置Aを示す模式図である。aはスピンドルであって、検出対象物となる基板101の上側に設けられ、スピンドル本体1と該スピンドル本体1に対してセラミックベアリングによって支持されるロータ2、及び該ロータ2に支持されたバックドリル加工に使用するドリル3からなる。尚、当該スピンドルにおいては、セラミックベアリングに代えてエアーベアリングを使用してもよい。Aは当該スピンドルaによってバックドリル加工を行う基板加工装置である。そして、スピンドルaの下降距離情報検出機構K(以下、検出機構Kという)は、検出対象物たる基板101に対するスピンドルaの高さ位置情報を検出するものであって、スピンドルaに電気回路で接続された検出装置4として具体化されている。尚、本実施例ではスピンドルaが1本の場合を示しているが、基板加工装置としては、同様の基板を複数同時加工できるよう、一般に複数のスピンドルが装備されている。そのため、その複数のスピンドルの本数に対応して、検出装置4も同数装備する構成になる。ところで、スピンドルaはビーム29に絶縁物30を介して固定され、当該ビーム29は駆動装置(図示せず)により筐体27に対して移動自在となっていることから、スピンドルa自体が基板加工装置Aの筐体27に対してX軸方向(紙面横方向)には移動自在に固定される。また、Z軸方向(紙面上下方向)には、Z軸駆動装置31により個別に駆動できるように構成されている。他方、Y軸方向(紙面奥行き方向)には、加工台26が駆動装置(図示せず)により移動自在となることにより、そこに固定された基板101が連動して移動する構成となっている。更に、ビーム29は筐体27と導通し、加工台26も筐体27と導通している(その導通関係を図1では点線の接続で示している。)。
また、スピンドルaは3相モータ22を内蔵し、該3相モータ22は、3相200Vの商用電源Vとインバータ28を介して、その各相に接続されている。
スピンドルaは下降距離情報検出機構K内のバイパス回路5を介して筐体に接続しており、商用周波数やインバータ28の出力電圧が有する高調波に対しては電気的には筐体27と低インピーダンスとなっているのに対し、高周波発振器6からの電流の周波数に対しては高インピーダンスとなっている。スピンドルaのロータ2はスピンドル本体1に対してセラミックベアリングによって支持されていることから、各スピンドル本体1とロータ2間は絶縁されている。しかし、各スピンドル本体1とロータ2間には静電容量CRが存在することから、高周波的には導通していると言えることとなる(尚、図1において静電容量CRの存在を示すために、スピンドル本体1とロータ2間がコンデンサを介して接続されているように点線で記載されているが、この記載は単にスピンドル本体1とロータ2間に静電容量CRが存在していることを模式的に表すために記載したに過ぎないものであって、実際に何らかの接続や部品が存在している訳ではない。)。同様に、スピンドル本体1とビーム29間には静電容量CSが存在し(尚、ビーム29は筐体27に導通されていることとから、筐体27と同じ電位となるため、作図の都合上、静電容量CSはスピンドル本体1と筐体27間に記載している。)、また、スピンドル本体1と各モータ巻線23、24、25間には静電容量CU、CV、CWがそれぞれ存在し、更に、後述する下板111の下板上面銅箔層112と加工台26間には静電容量CPが存在している。
一方、スピンドルaにおいて、ロータ2とドリル3間は導通している。また、筐体27自体はアース32されている。
ところで、下板111自体は絶縁物であることから、加工台26の表面に対して電気的に絶縁されているが、下板111の上面側は銅箔が貼られて下板上面銅箔層112が形成され、一般的に該下板上面銅箔層112の面積は大きく、且つ、下板111は薄いものであることから、下板111の下板上面銅箔層112と加工台26間の静電容量CPは非常に大きく、高周波的には導通状態となる。
因みに、本実施例においては、下板111自体は後述するようにガラスエポキシ樹脂製の板であって絶縁物であるが、下板111自体をアルミ板製としてもよい。その場合、ドリルの下降距離情報検出に当たって、スピンドルaのドリル3先端が導体である検出対象物、例えば基板101の表面導体層107に接触すれば、変流器7の出力巻線16側に生じる電流が増加するだけで、検出器9が電流の変化を検出することは、下板111自体が絶縁物である場合と変わりない。
基板101の内部構造詳細は図2に 示すように多層構造となっている。ただし、本実施例においては説明の簡略化のために内装導体層及び絶縁層を2層及び3層としているが、実際にバックドリル加工が必要な基板は10層以上である。そしてこの基板101は、3層となった絶縁層103、104、105と表面及び裏面導体層107、108、並びに第1の絶縁層103と第2の絶縁層104との間の一部分において挟み込まれている第1の内層導体層102、及び第2の絶縁層104と第3の絶縁層105との間の一部分において挟み込まれている第2の内層導体層106からなっている。導体層102、106、107、108はいずれも銅箔であり、その厚さは12乃至25μmである。また、各絶縁層103、104、105は熱可塑性樹脂製であって、それぞれその厚さは50乃至100μmである。表面導体層107から裏面導体層108までを貫くスルーホールの穴部109が設けられており、その内周面は銅メッキされたメッキ部110となっている。そして、第1の内層導体層102を所望の内層導体層として、第1の内層導体層102の直近までスルーホールの穴部109に対してバックドリル加工、すなわち、表面導体層107側から第1の内層導体層102の直近まで、スルーホールの穴部109の径より若干大径のドリルによって、その穴部109に設けられたメッキ部110の銅メッキを削り取る加工をするものであり、その際の加工深さを正確且つ精密に制御することを目的としている。
また、バックドリル加工に際しては、加工台26上に下板111を載置して固定した上、その上に前記基板101を載置・固定して行うこととなる。その下板111は1500μmの厚さのガラスエポキシ樹脂製の板に、上面に下板上面銅箔層112を設けたものである。尚、下板111の上下面に銅箔層を設けても、あるいは下板111自体をアルミ板製としてもよいが、少なくとも下板111の上面が導体層であることが必要となる。
一方、4は検出装置であって、高周波発振器6、変流器7、検波回路8及び検出器9、更にはバイパス回路5とキャンセル回路10とからなり、高周波発振器6は0.3Wで略0.5乃至2MHzの高周波の交流を発振するのが適切であるが、ここでは、1MHzの高周波を発振する。その出力された高周波の交流はGNDライン11を経て筐体27に接続し、もう一方の出力ライン12は変流器7の入力巻線13とキャンセル巻線14の中間に接続されている。変流器7は、前記両巻線13,14がmと指示された側から右回りに同数回巻かれ、入力巻線13の巻き終わりと、キャンセル巻線14の巻始めが接続している。そして、鉄芯15を挟んで設けられる出力巻線16の両端は、4個のダイオードからなる検波回路8に接続し、該検波回路8は検出器9に接続している。
一方、バイパス回路5は、リアクタLと抵抗Rとを並列に接続して構成され、その回路5の一端は入力巻線13の巻始めの端部とスピンドル本体1との中間に、また他端は筐体27に接続されている。バイパス回路5においては、下降距離情報の検出用に使用される高周波発振器6からの高周波電流に対しては高いインピーダンスを有するとともに、商用電源Vと繋がりスピンドルaを作動させるインバータ28において付加される高調波電流に対しては低いインピーダンスを有するように設定するため、リアクタLのインダクタンスは50乃至100μHの範囲に設定されている。リアクタLのインダクタンスが50μH未満であれば検出用に使用される高周波電流がバイパス回路5に流れてしまい、ドリル3と所望の導体層との接触を的確に検知することが困難となり、逆に100μHを超えるとインバータ28からの高調波電流等も流さなくなり、スピンドルaに対するアースとしての効果が低減して安全性を保持することが困難となるからである。本実施例においては、リアクタLのインダクタンスは75μHで抵抗成分は略0Ωに、また、抵抗Rの抵抗値は200Ωで、インダクタンス成分は略0μHに設定されている。
また、キャンセル回路10は、4個の模擬回路17−1、17−2、17−3、17−4と1個の逆バイパス回路18とからなっている。各模擬回路17−1、17−2、17−3、17−4はそれぞれ、8個のコンデンサ20と8個のディップスイッチ21がそれぞれ直列に配され、その直列に配されたコンデンサ20とディップスイッチ21を1組として、それら8組を並列に配してなるものである。これらのコンデンサ20は、それぞれ異なる容量のものであり、ここではそれぞれ10pF、20pF、40pF、80pF、160pF、320pF、640pF、1280pFの 容量の物を使用している(尚、図1においては、各模擬回路のコンデンサ20及びディップスイッチ21を省略して、それぞれ2組のみ記載している。)。そして、17−1の模擬回路の一端は変流器7のキャンセル巻線14の巻き終わりと接続され、他端は筐体27に接続されている。また、17−2から17−4の各模擬回路の一端は、スピンドル本体1に内蔵された3相モータ22のU相、V相、W相に各々接続し、他端は変流器7のキャンセル巻線14の巻き終わりと接続されている。そして、17−1の模擬回路の静電容量はスピンドル本体1と筐体27間の静電容量CSに、17−2から17−4の各模擬回路の静電容量は、スピンドル本体1に内蔵された3相モータ22の各巻線23,25,24とスピンドル本体1間の静電容量CU、CW,CVに、それぞれ略同じとなるようディップスイッチ21で設定可能なように設置されている。そして事前に、検出対象物を基板加工装置Aの加工台26上に固定して、スピンドル本体1と筐体27間の静電容量CSを、また、スピンドル本体1に内蔵された3相モータ22の各相の巻線23、24、25とスピンドル本体1間の静電容量CU、CV、CWをそれぞれ測定しておき、それと略同一の静電容量となるよう、各模擬回路17−1、17−2、17−3、17−4の各8個のディップスイッチ21を適宜通電状態とする。尚、前記各静電容量CS、CU、CV、CWは、略200乃至500pFである。また、本実施例ではスピンドル本体1とロータ2間にセラミックベアリングを使用していることから、その間の静電容量CRは略200pFであり、下板111の下板上面銅箔層112と加工台間の静電容量CPは、基板101の大きさに左右されるものの、概ね500乃至1000pFであることから、本実施例では1000pFとなるものを使用した。
一方、逆バイパス回路18は、バイパス回路5と同一のリアクタL´と抵抗R´を同様に並列に接続してなり、その回路18の一端は変流器7のキャンセル巻線14の巻き終わりに接続し、他端は筐体27に接続している。
本構成においては、非検出中はドリル3と基板101の表面導体層107、あるいは下板111の下板上面銅箔層112が接触していないため、スピンドルのモータ巻線23,24,25にインバータ28からの前記高調波電圧が印加されても、その電流はバイパス回路5を通して筐体27に流れ込むため、スピンドル本体1は接地と同様になり、感電に対する安全対策を設ける必要がない。従って、下降距離情報の検出に際して、ドリル3と基板101の表面導体層107あるいは下板111の下板上面銅箔層112が接触しても、ドリル3に高調波電流が流れてドリル3表面のコーティングを損傷する等の、ドリル3の寿命を損なうことがない。
また、下降距離情報の検出精度についても、以下のように正確性の高いものとなる。すなわち、非検出中は検出装置4の高周波発振器6からの高周波電圧による電流が変流器7の入力巻線13に流れ、同時に、各静電容量CS、CU、CV、CW並びにバイパス回路5のリアクタLを介して前記入力巻線13に電流が流れ込むことになるが、キャンセル回路10の各模擬基板17−1、17−2、17−3,17−4において生じる静電容量がそれら各静電容量CS、CU、CV、CWと略等しくなるよう、事前に各スイッチ21が操作されていることから、各模擬基板17−1、17−2、17−3,17−4には各静電容量に略等しい静電容量が発生し、更に、バイパス回路5におけるリアクタLと同一のリアクタL´の設けられた逆バイパス回路18が設けられているため、それら各模擬基板17−1、17−2、17−3,17−4並びに逆バイパス回路18のリアクタL´を介して、前記入力巻線13に流れ込む電流と略同一の電流がキャンセル巻線14に流れ込むことになる。そのため、入力巻線13とキャンセル巻線14にそれぞれ発生する磁束が打ち消し合うこととなり、変流器の鉄芯15は励磁されず、出力巻線16には出力電流は流れず、検出器9が電流の変化を誤検出することが無い。
一方、下降距離情報の検出開始にあたり、Z軸駆動装置31によりスピンドルaが押し下げられ、例えば そのドリル3が基板101の表面導体層107に接触した場合、ドリル3には新たに、検出装置4の高周波発振器6を電源として、スピンドル本体1とロータ2間に生じる静電容量CRと、基板101の表面導体層107からスルーホールの穴部109のメッキ部110を通って導通する下板111の下板上面銅箔層112と加工台26間に生じる静電容量CPを介して略1MHzの高周波電流が流れるが、その電流は入力巻線13にしか流れず、キャンセル巻線14には流れないため、変流器7の鉄芯15はその新たな電流で励磁され、出力巻線16側に出力電流が発生することから、その電流の変化を、4個のダイオードからなる検波回路8を通して検出器9で検出することにより、スピンドルaのドリル3が基板101の所望の導体層である表面導体層107に接触したことが判明することとなる。尚、当然のことながら、下降距離情報の検出に際して、ドリル3と基板101の表面導体層107とが接触しても、ドリル3に高調波電流が流れることはなく、ドリル3表面のコーティングを損傷する等のドリルの寿命を損なうことがない。
加工台26上に載置・固定された下板111の上に載置・固定された基板101の高さ位置についての検出の場合と、下板111の下板上面銅箔層112に対するドリル3の接触によりその高さ位置を検出する場合は、その検出する対象物が異なるだけで、その正確な検出を可能とするメカニズムは上記と同様である。
このように、キャンセル回路10を設けることにより、3相モータ22の各相の巻線23、24、25とスピンドル本体1間に生じる静電容量CU、CV、CW並びに、スピンドル本体1と筐体27間に生じる静電容量CSを介して変流器7の入力巻線1に流入する電流と略同量の電流を、各模擬回路17−1、17−2,17−3,17−4の設置によってキャンセル巻線14に流入させ、更に、高調波電流がスピンドルaのドリル3に流入することを防止するために設けられたバイパス回路5のリアクタLによって入力巻線13に流入する電流についても、略同量の電流を逆バイパス回路18によってキャンセル巻線14に流入させることで、入力巻線13とキャンセル巻線14を有する変流器7に発生する磁束の方向を打ち消し合わせ、変流器7の鉄芯15は励磁されず、出力巻線16には出力電流は流れない。このように、変流器7の入力巻線13に流入する電流によって生じる磁束を打ち消すことで、下降距離情報の検出前に生じている、変流器7の出力巻線16側に対する外乱要因をキャンセルすることができる。これにより、スピンドルaのドリル3と所望の導体物との接触の有無を電流の変化ではなく、ロータ2とスピンドル本体1間の静電容量CR及び、下板111の下板上面銅箔層112と加工台26間の静電容量CPの直列回路に電流が流れたか否かの“1”あるいは“0”の信号によって検出できることとなり、判定が容易になる。
そして、その検出された下降距離情報等を基板加工装置AのCNC制御回路Sにおいて、以下の通り記録し、また、抽出し、更に計算する各ステップを経ることによって、バックドリル加工の深さを正確且つ精密に制御することとなる。
すなわち、第1に、基板101は一定の設計上の厚さをもって製造されていることから、その設計上の基板厚さL2dが存在している。また、第一の内装導体層102を所望の導体層として、表面導体層107と裏面導体層108とを貫通するスルーホールにおいて、裏面導体層108と第一の内装導体層102とを結ぶメッキ部110を残して、その余のメッキ部110を削り取るバックドリル加工を行う場合、表面導体層107から所望の導体層である第一の内装導体層102までの長さを基準余長L2dと言う。そして、基板101の製造に際してどのように絶縁層と導体層とを構成するかは予め決定されていることから、その所望の導体層が特定されれば、この基準余長Lndは基板101の中における設計上の数値として特定されることとなる(図4参照)。
バックドリル加工によってメッキ部110を削り取ることとなるが、その際、メッキ部110の残し代110−1となるべき長さはゼロとなることが、理論上は一番望ましいことである。
一方、前述したように、裏面導体層108と所望の導体層である第一の内装導体層102とを結ぶメッキ部110を残して、その余のメッキ部110を削り取るバックドリル加工を行うに際しては、どうしても加工誤差が生じることから、予め設計上の残し代としての所定の寸法tdが定められている(図4参照)。
これらの基準余長L2d及び設計上の残り代の長さtdの数値をCNC制御回路Sの記憶媒体S1に記録させる。
また、スルーホールの穴部109に施されたメッキ部110の層の所定の厚さqとドリル3の先端角の角度θの数値をCNC制御回路Sの記憶媒体S1に記録させる。
第2に、基板101にバックドリル加工を施す際に使用する下板111は四角形であることから、これを加工台26に載置・固定した状態で、縦横4等分、合計16個のエリア201に分割する仮想線を引き、それらに各エリアを縦横2等分、合計4個のサブエリア202に分割する仮想線を引く(図3参照)。そして、このサブエリア202毎にその対角線の交点、すなわち各サブエリア202の中心を下板111の測定ポイント203とする。すなわち、下板111には64個の測定ポイント203を設定したこととなる。尚、この測定ポイント203は、基板101の実際の厚さを測定し、また所望の導体層の実際の位置を算定する際の基礎となる数値を測定する位置であり、また、前記算定に際しては下板111についての測定値の平均値を使用することから、下板111に偏在しないように、しかも、一定の規則性をもって定められる必要がある。一般に下板111は縦横33.5cm×50cmの四角形であることから、エリア201はその16等分、サブエリア202は更にその4等分したもので平均値を採れば、殆ど誤差が生じないことが判明したが、その下板111の大きさによっては、その分割数を増やす等、エリア201及びサブエリア202の大きさを適宜調整することが考えられる。
また、例えば、一枚の基板101に100個のスルーホールを設けて、その100個のスルーホールそれぞれに対してバックドリル加工を施す場合、ここではエリア201毎の測定ポイント203(本実施例においては1個のエリア201に4個の測定ポイント203が存在する。)の平均値を使用することになるが、もしも迅速性あるいは経済性よりも正確性を期すならば、前記設例で言うならば、基板101を加工台26上の下板111に載置・固定した際に、そのバックドリル加工位置となる100個の穴部109それぞれに対応する下板111の位置を特定し、その各位置を測定ポイント203とすることになる。しかしこの方法では、基板101の100個の穴部109それぞれに対応する位置を下板111上で特定しなければならないことから、かなりの手間を要することとなり、時間とコストの増加を招来することとなる。ここではエリア201毎の下板111の高さ位置の平均値を求めることとして、迅速性及び経済性と正確性との両立を図ったものである。そのため、基板101あるいはその基板101を切り出す前の母板の大きさや、バックドリル加工を必要とする穴部110の数等とも、また、その必要とする正確性とも関連させて、下板111に設けるエリア201及びサブエリア202数を適宜に決定すればよい。
そして、下板111内の特定の位置を原点(すなわち縦横のXY座標として(0、0)となる位置)として定め、各エリア201毎にそれを識別する番号を付した上で、それぞれのエリア201の範囲を座標によって特定するとともに、各測定ポイント203の座標位置も特定する。前述のように本実施例には1個のエリア201に4個のサブエリア202が設けられ、その各サブエリア202の中心が測定ポイント203となることから、1個のエリア201に4個の測定ポイント203が存在することとなる。例えば、1番との識別番号を付したエリア201には1番から4番の測定ポイント203が、また、2番との識別番号を付したエリア201には5番から8番の測定ポイント203が存在することとなる。そのため、前記各エリア201毎に、そのエリア201内に存在する測定ポイント203を分類して、CNC制御回路Sの記憶媒体S1に記録させる。
第3に、下板111を加工台26に載置・固定した状態で、前記各測定ポイント203の高さ位置を前述の基板加工装置Aの下降距離情報検出機構Kを使用して測定する。下板111の上面は下板上面銅箔層112となっていることから、この下板上面銅箔層112にスピンドルaのロータ2のドリル3先端が接触すれば、検出器9において電流の変化が検出されて接触したことが判明する。そして、その電流の変化が検出された時点の高さ位置が測定される。この測定作業を全ての測定ポイント203で行うとともに、その各測定ポイント203での測定結果、すなわち高さ位置情報がCNC制御回路Sの記憶媒体S1に自動的に記録される。そして、CNC制御回路S内の算出機構S3において、前記各エリア201毎に分類された測定ポイント203の高さ位置情報の平均値αaveを算出して、その平均値αaveが当該エリア201の高さ位置情報として記憶媒体S1に記録される。例えば前記1番との識別番号を付したエリア201には1番から4番の測定ポイント203が存在することから、その1番から4番の測定ポイント203の高さ位置情報の平均値αaveを算出して、それが1番のエリア201の高さ位置情報として記憶媒体S1に記録されることとなる。その結果、本実施例においては16個のエリア201に分割されていることから、識別番号として1番から16番のエリア201が存在することとなり、そのそれぞれに平均値αave が算出されることとなる。尚、この各エリア201毎に行う、測定ポイント203の高さ位置情報の平均値αaveの算出は、後述するバックドリル加工深さL2cの算出に際して行ってもよい。
第4に、基板101の各穴部109のXY座標位置をCNC制御回路Sの記憶媒体S1に記録させる。例えば100個のスルーホールの穴部109が設けられた1枚の基板101において、その100個の穴部109に対して、基板101の特定の位置を原点(すなわち縦横のXY座標として(0、0)となる位置)として定め、その100個の穴部109のそれぞれの座標位置を特定する。例えば第1の穴部109−1の座標位置は(1、1)、第2の穴部109−2の座標位置は(1、2)というようになる。そして、その100個の穴部109それぞれについて識別する番号を付した上で、その座標位置をCNC制御回路Sの記憶媒体S1に記録させる。
第5に、加工台26上に載置・固定した下板111上に、バックドル加工を行う基板101を載置・固定した上、CNC制御回路S内の抽出機構S2において、その状態での、バックドリル加工を施す各穴部109のXY座標上の位置と下板に設けた各エリア201のXY座標位置とを照合して、各エリア201毎に対応する穴部109を抽出する。その際、下板111の原点とした位置と、基板101の原点とした位置とが、下板111上に基板101を載置・固定した際に鉛直方向に重なり合うならば、その穴部109の座標位置とエリア201の座標位置とを比較するだけで照合及び抽出可能となるが、その両者の原点の位置がズレでいるならば、そのズレ量を計算して、一方の座標数値を補正して対応関係を照合して抽出することとなる。例えば、下板111の原点(0,0)の位置と、基板101の原点(0,0)の位置とが鉛直方向に重なり合っていた場合には、第1のエリア201が(0,0)(4,0)(4,4)(0,4)で区切られた正方形の範囲内であった場合に、基板101の第1の穴部109−1の座標位置が(2,2)であれば、当該穴部109−1が第1のエリア201内に存在していることは明らかであるが、下板111の原点(0,0)の位置が、基板101に対してX軸方向に10だけズレていた場合、すなわち下板111の原点(0,0)の位置が基板101の(10,0)の位置と鉛直方向に重なり合っていた場合には、前記第1のエリア201が下板111での原点の位置を基準とする座標位置として(0,0)(4,0)(4,4)(0,4)であるということは、これを基板101の原点の位置を基準とする座標位置に換算すると、(10,0)(14,0)(14,4)(10,4)ということになる。そうすると、前記第1の穴部109−1の座標位置は基板101の原点の位置を基準とする座標位置で(2,2)であることから、第1の穴部109−1は、下板111の第1のエリア201には存在していないこととなる。このような下板111と基板101との各原点の位置にズレが存在する場合には、このズレを測定してそのズレ量に応じて座標数値を修正する機能が必要となることは言うまでもない。
第6に、加工台26上に載置・固定した下板111上に載置・固定した基板101の各穴部109の高さ位置を、前述の基板加工装置Aの下降距離情報検出機構Kを使用して測定する。各穴部109は、基板101の表面側から裏面側までその内周面を含めメッキ部110となっている上、表面側のメッキ部110の周囲には表面導体層107が存在することから、このメッキ部110及び表面導体層107にスピンドルaのロータ2のドリル3先端が接触すれば、検出器9において電流の変化が検出されて接触したことが判明する。そして、その電流の変化が検出された時点の高さ位置が測定される。この測定作業を全ての穴部109で行うとともに、各穴部109毎にその各穴部109での測定結果、すなわち高さ位置情報がCNC制御回路Sの記憶媒体S1に自動的に記録させる。
第7に、前記第5に記載した下板111の各エリア201と、基板101の穴部109との対応関係に基づき、CNC制御回路Sの算出機構S3において、前記第6で測定された各穴部109の高さから、前記第3で算出された当該穴部109に対応する下板111のエリア201の平均高さαaveを控除し、その控除後の数値が当該穴部109における基板101の実際の厚さとして、CNC制御回路Sの記憶媒体S1に自動的に記録させる。例えば前述したように、下板111の原点(0,0)の位置と、基板101の原点(0,0)の位置とが鉛直方向に重なり合っていた場合には、第1のエリア201が(0,0)(4,0)(4,4)(0,4)で区切られた正方形の範囲内であった場合に、基板101の第1の穴部109−1の座標位置が(2,2)であれば、当該穴部109−1が第1のエリア201内に存在していることとなるため、この第1の穴部109−1で測定された高さ位置の数値から第1のエリア201の高さの平均値αaveを控除し、その控除後の数値を、当該第1の穴部109−1の位置での基板101の厚さとして、CNC制御回路Sの記憶媒体S1に記録させる。そして、この計算を全ての穴部109において同様に行う。尚、この計算は、前記第3で述べたエリア201の高さの平均値αaveを算出する場合と同様に、後述するバックドリル加工深さL2cの算出に際して行ってもよい。
この、各穴部109の位置における高さ位置の数値から、下板111の各エリア201毎の高さ位置の平均値を控除するというこの算式によって、加工台26自体に存在する傾斜や撓み、更に下板111自体に存在する傾斜や撓み等の、下板の高さ位置のズレを生じさせる諸要因は排除されることとなり、加工台26の水平や撓みを解消させるためのメンテナンスや精密な微調整手続を省略でき、また、下板111自体の厚さの精密さも要求されないこととなる。特に、加工台26の傾斜や撓みは、基板101の加工範囲において一般に約±50μmの誤差として現れ、更に、その上に載置される下板111にも傾斜や撓み更には下板111自体の製造に由来する誤差が存在することから、その加工台26自体が有する誤差と下板111自体の有する誤差が相まって、従来はバックドリル加工の深さ制御において、大きな誤差を発生させる要因となっていた。しかし、本実施例においては、前述のように各穴部109の位置における高さ位置の数値から、下板111の各エリア201毎の高さ位置の平均値を控除するという算式を適用することにより、ドリル3を使用した下降距離情報検出機構Kによる測定誤差として、下板111及び基板101(実際には、基板101の各穴部109)それぞれの高さ位置につき、±5μm程度の誤差が生じうることは避けがたいものの、両者の誤差を合計しても±10μm程度の誤差に収めることができるようになった。
その結果、バックドリル加工に際しての加工深さ制御の誤差が小さくなるだけでなく、加工台26の表面の傾斜や撓み等を厳密に補正するというメンテナンスや微調整手続も不要となるものである。
第8に、CNC制御回路Sの算出機構S3において、各穴部109毎に以下の計算を行い、個別のバックドリル加工深さL2cを算出する。
L2c=Lnd×(L2m−αave)/L2d−td+角tan1
Lnd=設計上の基準余長。
L2m−αaveの数値は、前記第7の工程で計算され記録されている。
L2d=設計上の基板101の厚さ。
td=設計上の残し代の長さ。
角tan1=スルーホールの穴部109に施されたメッキ部110の層の厚さq×tan{(180度−ドリル3の先端角の角度θ)÷2}
この算式において、(L2m−αave)/L2dによって、設計上の基板101厚さと、バックドリル加工を施す各穴部109の位置における実際の基板101厚さとの比が算出される。一方、所望の導体層である第一の内装導体層102の基板101内における高さ位置は設計上定まっていることから、この基板101の表面から当該第一の内装導体層102までの距離も当然設計上定まっている。この設計上の距離が基準余長Lndである。そして、基板101自体の設計上の厚さL2dと各穴部109における基板101の実際の厚さL2m−αaveとの比が、所望の導体層である第一の内装導体層102の基板101内における設計上の高さ位置すなわち基準余長Lndと、当該穴部109における基板101の実際の高さ位置から第一の内装導体層102の実際の高さ位置を控除した、基板101の表面から第一の内装導体層102までの実際の距離との比に等しい関係にあることが判った。そのため、基準余長Lndに、前記(L2m−αave)/L2dの算式によって算出される、設計上の基板101厚さL2dと、バックドリル加工を施す各穴部109の位置における実際の基板101厚さとの比を乗じることにより、所望の導体層である第一の内装導体層102の基板101内における実際の高さ位置、すなわち余長部の実際の長さが算出されることとなる。
前述したようにαaveは、その各穴部109が存在する下板111のエリア201毎の平均の高さを示す数値であることから、完全に厳密ではないかもしれないものの、経済性や迅速性との兼ね合いから個々の穴部109に対応する位置での下板111の高さ位置を測定して算出するよりも、合理性を有しているとはいえ、エリア201という概念を用いて平均値での算出を行っていること、また、そもそも測定精度の問題もあり、前記算出された当該穴部109における基板101の表面から所望の導体層までの実際の距離に誤差が存在しないということはできない。そのため、いわゆる安全係数として一定の残し代は必要となるが、本実施例のように当該穴部109における基板101の表面から所望の導体層までの客観的な実際の距離と、その算出された距離との間に誤差が少なければ、安全係数を低く見積もる、すなわちその残り代の長さも短く設定することができる。そのような意味で予め設定された残り代を基準残り代tdと言い、その基準残り代tdを、その算出された穴部109における基板101の表面から所望の導体層までの実際の距離から控除することとなる。
ところで、バックドリル加工を行うドリル3は先端角θを有して、その先端は先端角頂部3−1を形成している。そのため、スルーホールの設けられた位置での基板101の高さ位置を測定するためにドリル3が下降して来た際、ドリル3の先端角頂部3−1が穴部109内にまで進行し、基板101の表面側にまで延びているメッキ部110の内側に傾斜部3−2が接触することにより、ドリル3先端と基板101との接触が下降距離情報検出機構Kにより測定されることとなる。すなわち、その時点ではドリル3の先端角頂部3−1は実際の基板101高さ位置よりも低い位置に到達していることとなる。そして、バックドリル加工に際しては、ドリル3の先端がスルーホールの穴部109を進行することによってメッキ部110が切削されて行くものの、ドリル3においてメッキ部110を切削するのは傾斜部3−2であって、その先端角頂部3−1ではないことから、ドリル3の先端角頂部3−1の位置と、余長部の残し代110−1の長さを画するドリル3の傾斜部3−2の位置との間にズレが生じるだけでなく、残し代110−1の上端部は、穴部109に対して外側が長く、内側が短く傾斜して切削されることとなる(図5参照)。一方、設計上の残し代の長さtdは、残し代110−1の穴部109に対して外側が長くなっている先端部分で規定されることから、その残し代110−1となるメッキ部110の内側と外側の高さのズレは、メッキ部110の厚みに対する角tan1を算出することで修正される。すなわちスルーホールのメッキ部110の層の厚さ×tan{(180度−ドリルの先端角θの角度)÷2}により算出された数値によって計算上で補正することで、バックドリル加工の加工深さの制御を正確且つ精密に行うことができるようにしたものである。
その結果、スピンドルaのロータ2のドリル3が基板101に接触していない一定点を高さ方向の原点として、そこから当該穴部109における基板101表面の高さ位置が測定されていることから、その基板101表面までの距離と、更にバックドリル加工の加工深さL2cを合計した距離だけドリル3が移動したことが検知された時点で、バックドリル加工を停止すれば、正確な深さでバックドリル加工を行うことができることとなる。
このように、記録、抽出、算出の各ステップをCNC制御回路Sにおいて自動的に行い、短時間で各穴部109へのバックドリル加工の加工深さを正確且つ精密に制御しつつ行うことができる。
尚、前記各ステップの順序は一例であり、当然のことながら論理的に先後関係を有するステップ、すなわち例えば第8ステップにおける算出は、その算出に際して使用される各数値が事前に記録あるいは抽出あるいは算出されていなければならないという意味で、その先後関係に拘束されるものの、逆に第1ステップと第2ステップのように、論理的に先後関係を有さないものについては、本実施例として記載したステップの先後関係に拘束されるものではなく、先後関係を入れ替えることが可能である。
以上のように本実施例における基板加工装置Aは、ドリル3自体で下降距離情報を検出しうる下降距離情報検出機構Kを有する上、当該ドリル3によって測定された下板111や基板101の高さ位置情報に基づき、前記算式に従ってバックドリル加工の加工深さを算出する、記憶媒体S1、抽出機構S2、及び算出機構S3を有するCNC制御回路Sを有するものである。そして更に、本実施例におけるバックドリル加工方法を使用することにより、その算出された加工深さに基づきスピンドルaのドリル3の加工距離を正確且つ精密に制御してバックドリル加工を行うことができることから、迅速且つ経済的に、しかもバックドリル加工を施す各穴部109における基板101の実際の厚さ及び基板101表面からその所望の導体層までの実際の距離に応じて精密にバックドリル加工をすることが可能となる。また、その結果、設計上の残し代の長さtdも最小限にすることが可能となって、低コストでノイズ等の不具合発生の少ない加工済み基板101を提供することができる。
因みに、第7のステップにおいて述べたように、測定誤差として±10μm程度の誤差は避けがたいところ、それに加えてエリア201毎のバラツキや基板101加工中の熱変位等も誤差を発生させる要因となることから、それらを加味しても、本実施例においてはバッグリル加工の加工深さによる残し代の長さの誤差を±40μm程度の範囲に収めることができると考えられた。そのため、以下の試験用基板に100個のスルーホールを設けた上、本実施例の基板加工装置Aを本実施例に示す方法によりそれら100個のスルーホールの穴部に対してバックドリル加工を行った。そしてその試験体の各穴部をカットした上、実際の残し代の長さを顕微鏡下で測定して、基準残し代の長さと比較したところ、いずれも±25μm以内の相違しかないことが確認できた。
試験体及び設定の内容
縦横 33.5cm×50cm
絶縁層 熱可塑性樹脂であるガラスエポキシ樹脂による3層構造(裏面側から第1乃至第3の絶縁層とする)とし、それぞれ75μmの厚さとする。
導体層 銅箔により、試験体表面及び裏面並びに、第1絶縁層と第2絶縁層の間に第1内装導体層を、第2絶縁層と第3絶縁層の間に第2内装導体層を設け、それぞれの厚さを20μmとする。
Lnd 170μm
L2d 265μm
td 50μm
スルーホールのメッキ部の層の厚さ 40μm
ドリルの先端角角度 130度
下板の内容
縦横厚さ 33.5cm×50cm×1.5mm
素材 ガラスエポキシ樹脂
下板上面銅箔層の厚さ 20μm
図6は、バックドリル加工に際しての加工台26上への下板111を介しての基板101の載置・固定に際して、基板101の上に、厚みの既知なるアルミ上板301を載置して固定し、更にその上にベークライト製のベーク上板302を載置・固定した状態を示すものである。
このように上板301,302を使用する場合の実施例では、バックドリル加工の加工深さの制御のための測定や算式において、以下の点が異なるだけである。
すなわち、第1に、アルミ上板301は導電性であるものの、ベーク上板302は絶縁性であることから、加工台26上に下板111を載置・固定し、その上に基板101を載置・固定した上、更にアルミ上板301及びベーク上板302を載置・固定した状態で、基板101の各穴部109に該当するXY座標の位置における当該アルミ上板301の高さ位置L2m1を、ドリル3を使用した下降距離情報検出機構Kにより検出する。すなわち、実施例1において、下板111に載置・固定された基板101の各穴部109の高さ位置を下降距離情報検出機構Kにより検出していたのに代えて、当該各穴部109のXY座標位置に基づき、基板101上にアルミ上板301を載置・固定した状態で、各穴部109に該当するXY座標位置の高さ位置を測定する。この時、ベーク上板302は非導電性であることから、ドリル3が接触してもその位置情報が下降距離情報検出機構Kにより検出されることがなく、アルミ上板301にドリル3の先端角頂部3−1が接触して初めてその位置情報が下降距離情報検出機構Kにより検出されることとなる。そしてこの高さ位置を、実施例1における、加工台26上の下板111上に載置・固定された基板101の各穴部109の高さ位置に代えて、算式に使用する。当該アルミ上板301上の測定位置と、下板111のエリア201との対応関係を把握すること、また、その対応関係にあるエリア201の下板111の平均高さを控除すること等は、実施例1と同じである。
第2に、本実施例においては、基板101の各穴部109の高さ位置ではなく、基板101の各穴部109に該当するXY座標の位置における当該アルミ上板301の高さ位置L2m1を測定していることから、基板101の厚さを算出するに際しては、アルミ上板301の厚さを控除する必要があり、
L2m1−αave−tAL
の算式によって、基板101の厚さを算出することとなる。尚、tALはアルミ上板301の厚さであって、後述するようにこの厚さは設計上設定されている。
第3に、基板101の測定による厚さと設計上の厚さとの比から、所望の導体層に存する設計上の基準余長に基づき、その実際の余長部の長さを算出した後、設計上の残し代の長さtdを控除して、バックドリル加工の加工深さL2cを算出するに当たっては、アルミ上板301の厚さだけでなく、ドリル3の先端角θによって生じるドリル3の先端角頂部3−1の位置と、穴部109に施されたメッキ部110と接触するドリル3の傾斜部3−2との高さ位置の相違距離(以下、この距離を「角tan2」と言う。)を加える必要がある。
すなわち、バックドリル加工を開始する前の、スピンドルaのドリル3の原点となるべき位置(高さを示すZ座標において0となる位置)からそのアルミ上板301までの下降距離をPとすると、この距離Pは加工台26上に下板111を載置・固定し、その上に基板101を載置・固定した上、更にその上にアルミ上板301を載置・固定した状態で、そのアルミ上板301にドリル3の先端角頂部3−1が接触することによって下降距離情報検出機構Kにより検知されることとなる。その時点では、ドリル3の先端角頂部3−1は実際のアルミ上板301の高さ位置と同じ高さ位置にあることとなる。そして、バックドリル加工に際しては、ドリル3の先端がスルーホールの穴部109を進行することによってメッキ部110が切削されて行くものの、ドリル3においてメッキ部110を切削するのは傾斜部3−2であって、その先端角頂部3−1ではないことから、ドリル3の先端角頂部3−1の位置と、余長部の残し代110−1を画するドリル3の傾斜部3−2の位置との間にズレが生じるだけでなく、残し代110−1の上端部は、穴部109に対して外側が長く、内側が短く傾斜して切削されることとなる。一方、設計上の残し代の長さtdは、穴部109に対して外側が長くなっている残し代110−1の先端部分で規定されることから、ドリル3の先端角頂部3−1の位置と、残し代110−1となるメッキ部110の外側の高さとのズレは、スルーホールの加工を行った際のスルーホール穴の半径(穴部109の半径とメッキ部110の厚さを加えたもの)に対する角tan2を算出することで修正される(図7参照)。
言い換えると、実施例1においても述べたように、メッキ部110の残し代110−1の上端部は、穴部109に対して外側が長く、内側が短く傾斜して切削されることとなることから、設計上の残し代の長さtdとしては、穴部109に対して外側となる先端位置において測定することとなる。そうすると、測定値に基づき、Lnd×(L2m1−αave−tAL)/L2dの算式により算出された実際の余長部の長さから、設計上の残し代の長さtdを控除した数値は、メッキ部110におけるバックドリル加工がなされる距離を示しているものの、ドリル3の先端角頂部3−1がアルミ上板301に接触してから、バックドリル加工の終了時点までの実際に必要となるドリル3の移動距離を示しているものではないこととなる。この実際に必要となるドリル3の移動距離を算出するためには、ドリル3の先端角頂部3−1の位置と、ドリル3の傾斜部3−2がメッキ部110に接触している位置(前述したように、残し代110−1の長さは穴部109に対する外側の位置で測定することから、残し代110−1となるメッキ部110の外側の位置)とのズレを修正する必要があり、以下の算式で導かれる数値(この数値が角tan2となる。)を加える必要がある。
角tan2=β×tan{(180度−ドリル先端角の角度θ)÷2}
β=スルーホールの加工を行った際のスルーホール穴の半径(穴部109の半径とメッキ部110の厚さを加えたもの)
その結果、各穴部109におけるバックドリル加工の各加工深さL2cは、以下の計算式により算出されることとなる。
L2c=Lnd×(L2m1−αave−tAL)/L2d−td+tAL+角tan2
Lnd=設計上の基準余長。
L2m1=加工台26上の下板111上に載置された基板101に、更に既知の厚さを有するアルミ上板301を載置・固定した状態での、下板111の各エリア201毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ。
αave=加工台26上の下板111の、各エリア201毎の測定ポイント203の実測高さの平均値。
L2d=基板101の設計上の厚さ。
td=設計上の残し代の長さ。
tAL=アルミ上板301の厚さ。
この場合、アルミ上板301として使用するアルミ板は、その厚さが既知であれば足りるが、その使用に際しての扱い易さと、発生するアルミ上板301自体の厚さの誤差の範囲等を勘案すれば、0.15mm程度の厚さのものを使用するのが適切である。この場合、その厚さのバラツキとして±10μm程度の誤差が発生するものの、アルミ上板301を使用しない場合には、バックドリル加工を行う穴部109の中心線と、バックドリル加工を行うドリル3の中心線とを厳密に一致させる必要があり、更に、バックドリル加工中においてもドリル3が斜行して芯ズレが発生しないように強固に保持する必要があることから、その手間、あるいは両中心線のズレあるいは芯ズレによって発生するバックドリル加工の加工深さの誤差を勘案すれば、アルミ上板301を使用することによって、当該中心線のズレによる誤差の発生を防止することは意味のあることである。
一方、メッキ部110を有する穴部109をドリル3によりバックドリル加工すると、当該メッキ部110がドリル3により切削されて、特異的な糸状の切り子が発生する。基板101上にアルミ上板301が載置されていると、この糸状の切り子がドリル3先端に付着した状態で、アルミ上板301と接触することから、下降距離情報検出機構Kによって次のスルーホールの穴部109の下降距離情報を検出する際に、その糸状の切り子が外乱要因となって、正確な下降距離情報の検知を阻害することとなる。そのため、こまめにドリル3先端に付着したその切り子を除去すればよいが、多数の基板に多数のバックドリル加工を連続して行う場合、その除去のために要する時間及び手間が基板加工のコストを増加させることとなる。そのため、そのドリル3先端に付着する糸状の切り子を簡易且つ迅速に除去する方法として、バックドリル加工を行うに際して、アルミ上板301の上に更にベークライト製のベーク上板302を載置・固定したものである。これにより、ドリル3先端に糸状の切り子が付着した状態で次のスルーホールの穴部109の下降距離情報を検出しようとすると、最初にドリル3先端がベーク上板302に接触してベーク上板302を穿孔して行くことから、絶縁物であるベーク上板302の切り子が、ドリル3先端に付着していたメッキ部110の糸状の切り子を押し出して除去することとなる。これにより、特別の除去手段を取ることなく連続的なスルーホールの穴部109に対する下降距離情報の検出を可能とするものである。
因みに、アルミ上板301(厚さ0.15mm)及びベーク上板302(厚さ1mm)を使用した本実施例についても、実施例1の場合と同じ試験体及び条件で100個のスルーホールの穴部に対してバックドリル加工を行った。そしてその試験体の各穴部をカットした上、実際の残し代の長さを顕微鏡下で測定して、基準残し代の長さと比較したところ、いずれも±25μm以内の相違しかないことが確認できた。
ところで、基板加工装置における下降距離情報検出機構として、実施例1においては、検出器9における電流の変化を検知するに際して外乱要因を除去すべく、キャンセル回路10やバイパス回路5等を設けたが、より簡略化した下降距離情報検出機構K1としては、高周波発振器6、変流器7a、検波回路8、検出器9及びバイパス回路で形成してもよい。すなわち、図8に記載するように、高周波電源である高周波発振器6からGDNライン11を基板加工装置Bの筐体27に接続するとともに、出力ライン12は変流器7aの入力巻線3の一端に接続し、更に該入力巻線13の他端とスピンドル本体1を接続する。そして、この変流器7aの入力巻線3とスピンドル本体1との接続の中間に、バイパス回路5を設けるものである。言うならば、実施例1に示す下降距離情報検出機構Kにおいて、キャンセル回路10部分を省略した構成であり、そのため変流器としてキャンセル巻線14のない変流器7aが使用されることとなるが、その点が異なるだけである。
この実施例における下降距離情報検出機構K1では、当該機構K1自体としては外乱要因を排除する手当がなされていない。そのため、スピンドル本体1とロータ2間に使用されるベアリングがエアベアリングの場合のように、スピンドル本体1とロータ2間の静電容量CRが1000pF以上と大きくなる等、ドリル先端が表面導体層と接触したか否かの判定精度の低下が十分に許容できるものとなる場合や、別途、変流器の入力巻線に流れる電流を、高周波発振器から流れる特定の周波数の電流だけに限定するフィルターを設けた場合には、下降距離情報検出機構K1を簡素な構成として、低コストで設けることができる。しかも、変流器7aの入力巻線13とスピンドル本体1とを接続する結線の中間において、筐体27との間を結んだバイパス回路5が設けられていることで、スピンドルaがいわゆる浮き金属でなくなり、感電防止の保護機能を付ける必要がなくなる上、それによって、高調波電流等の電流がドリル3を介して筐体27へ流れ、それら電流によるドリル3の金属面やドリル3表面のコーティングの破損が防止され、ドリル3の長期使用が可能となるものである。
そして、少なくとも当該実施例における下降距離情報検出機構K1は従来より使用されて来た下降距離情報検出機構K1であることから、この下降距離情報検出機構K1を使用して、それに実施例1において説明した記憶、抽出、算出機構を有するCNC制御回路Sを組み込むことで、従前の基板加工装置をバックドリル加工の加工深さを正確且つ精密に制御しうる基板加工装置とすることができるものである。
尚、感電防止のために別の機構を設け、またドリルの損傷等についても配慮する必要がない場合には、前記バイパス回路5すら省略した下降距離情報検出機構を使用することも考えられる。
図9に実施例4を示す。図1に示す実施例1は、スピンドル1をビーム29(筐体27と同電位)から絶縁されていることから、基板101は加工台26に対して絶縁、非絶縁のどちらでも可能な方式となっているのに対して、本例は、スピンドル1は図示しないビーム(筐体27と同電位)に絶縁しないで直接取り付けられているのに対し、基板101は加工台26とは絶縁されて、加工台26上に載置されているものである。本実施例においては、この絶縁のために下板111を使用していることから、アルミ製の下板111は使用できない。
本実施例における下降距離情報検出機構K2は図9に記載するように、直列に配されたコンデンサ50とディップスイッチ51を1組として、該コンデンサとスイッチを複数組並列に配してなる模擬基板回路52を有するものである。すなわち、検出対象物たる基板101を基板加工装置Cの筐体27から絶縁して、筐体27内の加工台26上に、下板上面銅箔層112を有するガラスエポキシ樹脂製の下板111により絶縁して固定した上、高周波発振器6の一方はGNDライン11から前記筐体27に接続するとともに、前記模擬基板回路52の一方端子に接続し、もう一方の出力ライン12は、同方向に同巻数として巻き終わりと巻き初めとを接続した変流器7bの2個の入力巻線13、13aの中間に接続することにより、各入力巻線13、13aは逆巻の同巻数のコイルとなって、各入力巻線13、13aに同量の電流が流れた場合、変流器7bの鉄芯15に発生する磁束の方向は打ち消し合うこととなり、出力巻線16側には電流は発生しないこととなる。また、前記変流器7bの2個の入力巻線13、13aの各他端は、一方は検出対象物たる基板101の表面導体層107と、他方は前記模擬基板回路52の他方端子に接続されている。そして、検出対象物たる基板101の表面導体層107と筐体27間に生じる静電容量と略等しくなるよう模擬基板回路52のディップスイッチ51を調整することにより、各入力巻線13、13aに同量の電流が流れた場合、前記変流器7aに発生させる磁束の方向を互いに打ち消し合うようにして、スピンドルaのドリル3先端と検出対象物たる基板101の表面導体層107との接触によって生じる電流の変化を、変流器7aから出力される電流の変化として検出器9により検出してなる下降距離情報検出機構K3である。
実施例4に示す下降距離情報検出機構K2は、下降距離情報検出に際しての外乱要因の排除を可能とするものであり、既に既知のものとして基板加工装置に組み込まれている場合にも、実施例3の場合と同様に、これらの下降距離情報検出機構K2を使用して、それに実施例1において説明した記憶、抽出、算出機構を有するCNC制御回路Sを組み込むことで、従前の基板加工装置をバックドリル加工の加工深さを正確且つ精密に制御しうる基板加工装置とすることができるものである。
本願発明における下降距離情報検出機構を組み込んだ基板加工装置並びに該基板加工装置の使用方法は、基板のスルーホールに対するバックドリル加工に際して、当該基板自体の有する厚さの誤差や撓み、あるいは下板の厚さの誤差、更には基板加工装置の加工台自体の傾斜や撓み等の多数の要因から生じる加工深さの誤差の発生を防止し、その加工深さを正確且つ精密に制御することを可能とするものであり、翻っては設計上の残し代の長さを短く設定することができることから、ノイズの発生等の不具合を防止できる基板の加工を低コストで実現しうるものであり、バックドリル加工に限らず、基板に対する一定深さまでの穴開け加工においても、その加工深さを正確且つ精密に制御することを可能とするものである。
A、B、C 基板加工装置
K、K1、K2 下降距離情報検出機構
a スピンドル
1 スピンドル本体
2 ロータ
3 ドリル
3−1 先端角頂部
3−2 傾斜部
4 検出装置
5 バイパス回路
6 高周波発振器
7、7a、7b 変流器
8 検波回路
9 検出器
10 キャンセル回路
11 GNDライン
12 出力ライン
13、13a 入力巻線
14 キャンセル巻線
15 鉄芯
16 出力巻線
17−1 模擬回路
17−2 模擬回路
17−3 模擬回路
17−4 模擬回路
18 逆バイパス回路
20 コンデンサ
21 ディップスイッチ
22 3相モータ
23 U相の巻線
24 V相の巻線
25 W相の巻線
26 加工台
27 筐体
28 インバータ
29 ビーム
30 絶縁物
31 Z軸駆動装置
32 アース
50 コンデンサ
51 ディップスイッチ
52 模擬基板回路
101 基板
102 第1の内層導体層
103 第1の絶縁層
104 第2の絶縁層
105 第3の絶縁層
106 第2の内装導体層
107 表面導体層
108 裏面導体層
109、109−1、109−2 穴部
110 メッキ部
110−1 残し代
111 下板
112 下板上面銅箔層
201 エリア
202 サブエリア
203 測定ポイント
301 アルミ上板
302 ベーク上板
V 商用電源
L リアクタ
L´ リアクタ
R 抵抗
R´ 抵抗
S CNC制御回路
S1 記憶媒体
S2 抽出機構
S3 算出機構
q メッキ部の層の所定厚さ
θ ドリルの先端角の角度

Claims (8)

  1. 多層プリント配線基板に対してバックドリル加工を行うことができる基板加工装置における、バックドリル加工に際しての、スピンドルのドリルの下降距離を制御するコンピュータを使用した加工深さ制御機構であって、
    スピンドルのドリルが検出対象物に接触することによって下降距離情報を検出してなる下降距離情報検出機構を有するとともに、
    下記1乃至5各記載の位置情報等がそれぞれ記録される記憶媒体を有し、
    1.設計上の基板厚さ、基準余長及び設計上の残し代の長さ並びにスルーホールの穴部に施されたメッキ部の層の所定厚さ及びドリルの先端角の角度についての数値情報、
    2.基板加工装置の加工台上に載置された、少なくとも上面が導体層となる下板 において、下記設定により定められた測定ポイント及び各エリア域の平面上の座標位置情報、

    格子状に複数のエリアを区画し、その各エリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント、あるいはその各エリア毎に更に同一の規格によって格子状に区切られたサブエリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント。
    3.前記各測定ポイントに対して、バックドリル加工を行うドリルの設置されたスピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各測定ポイント毎の高さ位置情報、
    4.基板加工装置の加工台上の前記下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは複数の多層プリント配線基板を切り出す前の母板(以下、単に「母板」と言う。)に存する各バックドリル加工位置の、平面上の座標位置情報、
    5.前記基板もしくは母板の各バックドリル加工位置に前記スピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各バックドリル加工位置毎の高さ位置情報、
    前記各エリア毎の座標位置情報と、多層プリント配線基板もしくはその母板に存するバックドリル加工位置の座標位置情報とから、バックドリル加工に際して下板上に多層プリント配線基板もしくはその母板を載置した状態で、前記下板の各エリアのそれぞれの座標値域内に存在するバックドリル加工位置を抽出する抽出機構と、
    下記式に基づき個別バックドリル加工深さL2cを算出する算出機構を有して、
    その算出された個別バックドリル加工深さL2cに基づき、基板加工装置におけるバックドリル加工の加工深さを自動制御してなる加工深さ制御機構。
    L2c=Lnd×(L2m−αave)/L2d−td+角tan1
    Lnd=設計上の基準余長
    L2m=加工台上の下板上に載置された多層プリント配線基板あるいはその母板の、下板の各エリア毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ
    αave=加工台上の下板の、各エリア毎の測定ポイントの実測高さの平均値。
    L2d=設計上の多層プリント配線基板厚さ
    td=設計上の残し代の長さ
    角tan1=スルーホールのメッキ部の層の所定の厚さ×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}
  2. 下降距離情報検出機構を、少なくとも高周波交流電源と、リアクタを含むバイパス回路と、高周波用の変流器を有し、高周波交流電源の出力の一方は筐体に接続し、他方は前記変流器を介して、筐体からは絶縁されたスピンドルに接続されるとともに、当該スピンドルとの接続の間に、リアクタを有するバイパス回路が筐体とを結んで設けられ、該スピンドルのロータのドリルが、導体である検出対象物と接触することによって、高周波交流電源からの高周波電流が変流器を介してスピンドルに、更に導体物及び導体層間の静電容量を介して前記高周波交流電源へ流入することで、変流器の出力側に電流が生じ、その電流の変化を検出器によって検出することにより、ドリルの下降距離情報を認識する下降距離情報検出機構としてなるものとした、請求項1記載の加工深さ制御機構。
  3. 下降距離情報検出機構を、高周波交流電源と、リアクタを含むバイパス回路と、キャンセル回路と、巻数が同じで逆巻となって接続する入力巻線とキャンセル巻線と1個以上の出力巻線を持つ高周波用の変流器を有し、キャンセル回路は、バイパス回路と同一の静電容量を有するリアクタを有する逆バイパス回路と、直列に配されたコンデンサとスイッチを1組とした上、該コンデンサとスイッチを複数組並列に配して1個の模擬回路として、筐体からは絶縁されたスピンドルに通電された場合に、スピンドルのモータの各相の巻線とスピンドル本体間、並びにスピンドル本体と筐体間にそれぞれ生じる静電容量に対応して模擬回路を複数セット有して、前記逆バイパス回路と該複数の模擬回路を並列に配してなり、検出対象物を基板加工装置の筐体内の加工台上に固定した上、前記高周波交流電源の出力の一方は前記筐体に接続するとともに、他方は前記変流器の入力巻線とキャンセル巻線の中間に接続し、該入力巻線の他端はスピンドル本体に接続するとともに、バイパス回路を介して筐体に接続し、キャンセル巻線の他端は、逆バイパス回路の一端及び各模擬回路の一端と並列に接続し、逆バイパス回路の他端は筐体に接続し、スピンドル本体から絶縁された筐体とスピンドルとの間に生じる静電容量に対応する模擬回路の他端は筐体に、スピンドル本体とモータ巻線との間に生じる静電容量に対応する模擬回路の他端はスピンドルのモータの各相の巻線と接続し、各対応する静電容量と略等しくなるよう模擬回路のスイッチを調整することにより、入力巻線とキャンセル巻線に流れる電流によって前記変流器に発生する磁束の方向を互いに打ち消し合わせることで、スピンドルのドリル先端と検出対象物との接触によって生じる電流の変化を、変流器から出力される電流の変化として検出器により検出することにより、ドリルの下降距離情報を認識する下降距離情報検出機構としてなるものとした、請求項1記載の加工深さ制御機構。
  4. 下降距離情報検出機構を、高周波交流電源と、巻数の同じ2個の入力巻線と1個以上の出力巻線を持つ高周波用の変流器並びに、直列に配されたコンデンサとスイッチを1組として、該コンデンサとスイッチを複数組並列に配してなる模擬基板回路を有し、前記高周波交流電源出力の一方は前記筐体に接続するとともに、前記模擬基板回路の一方端子に接続し、他方は前記変流器の2個の入力巻線を介してそれぞれ、検出対象物と前記模擬基板回路の他方端子に接続し、基板加工装置の筐体から絶縁して、筐体内の加工台上に固定した検出対象物と筐体間に生じる静電容量と略等しくなるよう模擬基板回路のスイッチを調整することにより、各入力巻線電流が前記変流器に発生させる磁束が互いに打ち消し合うようにして、スピンドルのドリル先端と検出対象物との接触によって生じる電流の変化を、変流器から出力される電流の変化として検出器により検出することにより、ドリルの下降距離情報を認識する下降距離情報検出機構としてなるものとした、請求項1記載の加工深さ制御機構。
  5. 請求項1乃至4記載のいずれかの加工深さ制御機構を具備してなる基板加工装置。
  6. 請求項5記載のいずれかの基板加工装置を使用して行うバックドリル加工方法であって、
    下記1乃至5各記載の位置情報等を記憶媒体に記録するとともに、
    1.設計上の基板厚さ、基準余長及び設計上の残し代の長さ並びにスルーホールの穴部に施されたメッキ部の層の所定厚さ及びドリルの先端角の角度についての数値情報、
    2.基板加工装置の加工台上に載置された、少なくとも上面が導体層となる下板において、下記設定により定められた測定ポイント及び各エリア域の平面上の座標位置情報、

    格子状に複数のエリアを区画し、その各エリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント、あるいはその各エリア毎に更に同一の規格によって格子状に区切られたサブエリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント。
    3.前記各測定ポイントに対して、バックドリル加工を行うドリルの設置されたスピンドルを下降させることにより、下降距離情報検出機構によって測定されるその各測定ポイント毎の高さ位置情報、
    4.基板加工装置の加工台上の前記下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは複数の多層プリント配線基板を切り出す前の母板(以下、単に「母板」と言う。)に存する各バックドリル加工位置の、平面上の座標位置情報、
    5.前記基板もしくは母板の各バックドリル加工位置に前記スピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各バックドリル加工位置毎の高さ位置情報、
    前記各エリア毎の座標位置情報と、多層プリント配線基板もしくはその母板に存するバックドリル加工位置の座標位置情報とから、バックドリル加工に際して下板上に多層プリント配線基板もしくはその母板を載置した状態で、前記下板の各エリアのそれぞれの座標値域内に存在するバックドリル加工位置を抽出した上で、
    下記式に基づき自動計算された個別バックドリル深さL2cに基づき、基板加工装置におけるバックドリル加工の加工深さを自動制御してなるバックドリル加工方法。
    L2c=Lnd×(L2m−αave)/L2d−td+角tan1
    Lnd=設計上の基準余長
    L2m=加工台上の下板上に載置された多層ブリント配線基板あるいはその母板の、下板の各エリア毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ
    αave=加工台上の下板の、各エリア毎の測定ポイントの実測高さの平均値
    L2d=設計上の多層プリント配線基板厚さ
    td=設計上の残し代の長さ
    角tan1=スルーホールのメッキ部の層の所定の厚さ×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}
  7. 請求項5記載のいずれかの基板加工装置を使用して行うバックドリル加工方法であって、
    下記1乃至5記載の位置情報等を記憶媒体に記録するとともに、
    1.設計上の基板厚さ、基準余長及び設計上の残し代の長さ並びにメッキ部を設ける前のバックドリル加工を行うスルーホールの穴部の半径及びドリルの先端角の角度についての数値情報、
    2.基板加工装置の加工台上に載置された、少なくとも上面が導体層となる下板において、下記設定により定められた測定ポイント及び各エリア域の平面上の座標位置情報、

    格子状に複数のエリアを区画し、その各エリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント、あるいはその各エリア毎に更に同一の規格によって格子状に区切られたサブエリア毎に同一の基準によって定められた1個の測定ポイント。
    3.前記各測定ポイントに対して、バックドリル加工を行うドリルの設置されたスピンドルを下降させることにより、下降距離情報検出機構によって測定されるその各測定ポイント毎の高さ位置情報、
    4.基板加工装置の加工台上の前記下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは複数の多層プリント配線基板を切り出す前の母板(以下、単に「母板」と言う。)に存する各バックドリル加工位置の、平面上の座標位置情報、
    5.前記基板もしくは母板上に厚さの既知であるアルミ上板を載置した状態で、その各バックドリル加工位置に前記スピンドルを下降させることにより、前記下降距離情報検出機構によって測定されるその各バックドリル加工位置毎の高さ位置情報、
    前記各エリア毎の座標位置情報と、多層プリント配線基板もしくはその母板に存するバックドリル加工位置の座標位置情報とから、バックドリル加工に際して下板上に多層プリント配線基板もしくはその母板を載置した状態で、前記下板の各エリアのそれぞれの座標値域内に存在するバックドリル加工位置を抽出した上で、
    下記式に基づき自動計算された個別バックドリル深さL2cに基づき、基板加工装置におけるバックドリル加工の加工深さを自動制御してなるバックドリル加工方法。
    L2c=Lnd×(L2m1−αave−tAL)/L2d−td+tAL+角tan2
    Lnd=設計上の基準余長
    L2m1=加工台上の下板上に載置された多層ブリント配線基板あるいはその母板に、更に既知の厚さを有するアルミ上板を載置・固定した状態での、下板の各エリア毎の座標値域内に存在するものとして抽出された各バックドリル加工位置における実測高さ
    αave=加工台上の下板の、各エリア毎の測定ポイントの実測高さの平均値
    L2d=設計上の多層プリント配線基板厚さ
    td=設計上の残し代の長さ
    tAL=アルミ上板の規定厚さ
    角tan2=メッキ部を設ける前のスルーホールの半径×tan{(180度−ドリルの先端角の角度)÷2}
  8. バックドリル加工に際して、基板加工装置の加工台上の下板の上に載置された多層プリント配線基板もしくは母板上に厚さの既知であるアルミ上板を載置した上、更にその上にスピンドルにより切削可能な絶縁性の上板を載置して行う、請求項7記載のバックドリル加工方法。
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