JP2017090729A - 累進多焦点レンズの設計方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】累進多焦点レンズの累進帯の上下長Lを設定するステップs1と、利用者の明視距離を近用視測定距離として設定するステップs2と、近用視測定距離での左右それぞれの近用度数を設定するステップs3〜s6,s8〜s11と、左および右の近用度数に基づいて、左および右のそれぞれの累進多焦点レンズの加入度数δL0およびδR0を決定するステップs7,s12と、左および右の累進多焦点レンズにおける累進帯の上端における加入度数δを0に設定するとともに、累進帯の下端における加入度数をδL0およびδR0に設定するステップs13とを含む。
【選択図】図3
Description
る。図1(B)は(A)におけるa−a断面における位置x(mm)と度数P(D)との関係を示している。
ち左右の像の見え方の差を「無理矢理」脳内で整合させているのである。そして左右の眼で焦点調整能力が異なっている状態で累進多焦点レンズを用いた眼鏡を装用したとしても、実際にははっきり見えている方の眼でのみ物体を見ている「単眼視」を助長させ、眼精疲労や近視の進行を抑制することはできないとの結論に至った。
左右の前記累進多焦点レンズにおける累進帯の上下長Lを設定するステップと、
近用視力が矯正されていない前記利用者の明視距離を近用視測定距離として設定するステップと、
前記利用者に対し、前記近用視測定距離の位置にある視標をテストレンズを介して視認させ、明視状態における左右それぞれのテストレンズの度数を左右それぞれの近用度数として設定するステップと
左および右の前記近用度数に基づいて、左および右のそれぞれの前記累進多焦点レンズの加入度数δL0およびδR0を決定するステップと、
左および右の前記累進多焦点レンズにおける前記累進帯の上端における加入度数を0に設定するとともに、当該累進帯の下端における加入度数をδL0およびδR0に設定するステップと、
を含むことを特徴とする累進多焦点レンズの設計方法としている。
累進多焦点レンズを用いた従来の遠近両用眼鏡は、加齢などによって近用視において衰えた焦点調整能力を補助、言い換えれば「代替」するものである。人の眼が水晶体の厚さを制御して焦点を調整しているのに対し、累進多焦点レンズは近用視に際して視線を変えたときに、その視線上にある累進帯の位置における度によって焦点を調整している。そして本発明者は、従来の遠近両用眼鏡では累進帯の下端での度(屈折率)の差に起因して結像位置にずれが生じ、累進帯に加入された度によって発生するこの位置ずれは、焦点調整能力自体が衰えた老視の人ではもはや補正することができないという問題に鑑み、その位置ずれを補正することができる累進多焦点レンズを発明した。そして当該発明に対して特許査定が下された(特許第5140768号)。
図2は視力(裸眼視力あるいは矯正視力)が1.0で、老視が無い人(以下、標準利用者とも言う)の眼における焦点調整能力を示す図である。この図に示したように、標準利用者の眼は、指標までの距離M(m)に対してその距離Mの逆数1/Mを度数P(D)としたレンズと同等であり、1m先の視標に対して1.0Dのレンズとして機能し、10m先の視標に対しても0.1Dのレンズとして機能する。そして25cmの眼前にある視標に対しては、原理的には、4.0Dのレンズとして機能する。周知のごとく、この25cm程度の距離は人が眼の疲れを感じることなく物体をはっきり見つづけることのできる、所謂「明視距離」であると言われている。しかし本発明者は、この明視距離と言われる距離では4.0Dもの屈折力が得られるように毛様体筋を強く収縮させていることから、実際には両眼視ができていないのではないかと考えた。そこで老視の無い人に対してこの明
視距離(25cm)に視標を置いたときの近用視力を測定してみた。その結果、一般に明視距離といわれる距離においても多くの人が左右の眼における焦点調整能力の差によって単眼視の状態にあることを知見した。
図3に本発明の位置実施例に係る累進多焦点レンズ(以下、レンズ)の設計方法の流れをs1〜s13の順に示した。まず左右のレンズの累進帯の上下長(以下、累進帯長L)を同一の値Lに設定する(s1)。なお累進帯長Lについては一律に所定値(例えば10mm)に設定しておいてもよいし、老視用の遠近両用眼鏡を作製するときと同様に近用視における瞳の位置に基づいて設定してもよい。すなわち老視が無く裸眼または矯正により両眼遠用視が可能な利用者に普段通りにスマートフォンや書籍などを見てもらって日常の近用視状態を再現させ、そのときの瞳の位置と上記の瞳孔中心の位置から累進帯長を設定してもよい。
定した左右それぞれの眼に対応する加入度数(δL0,δR0)に設定する。このような手順によって設計されたレンズを作製する際には、ここで設定した各種値をレンズメーカーに指定すればよい。この例では、累進帯長L、累進帯上端での加入度数0、累進帯下端での加入度数(δL0,δR0)をレンズメーカーは指定すればよい。レンズメーカーは、指定された各種設定値に基づいて累進帯の上端から下端にわたって加入度数が連続的に変化するレンズを製造する。なお本発明の実施例に係るレンズの設計方法は、レンズそのものの形状や光学特性を設計するためのものではなく、レンズメーカーに製造を指示する際の各種パラメーター(累進帯長、加入度数など)の設定手法に特徴を有している。したがって本実施例の方法で設計されるレンズは、一般的な累進多焦点レンズと同様にして製造できるものであり、従来と遠近両用眼鏡用のレンズと同様のコストで製造することができるという効果も奏するものとなっている。
左右一方のレンズに累進帯を設けて、当該累進帯の加入度数を左右の眼の近用視測定距離における近用度数の差に設定してもよい。例えば右眼の近用度数が+1.25で左眼の近用度数が+1.00である場合は、以下の表4に示したように、右眼のレンズにのみ累進帯を設けてその加入度数を0.25に設定するのである。
上記実施例に係る方法に基づいて設計したレンズを用いて近用視眼鏡や遠用視兼用眼鏡を作る際、設計値をそのまま採用して処方することが望ましいが、一般的な眼鏡用レンズは既製品であり、遠用度数、加入度数、累進帯長などの設定値は飛び値である。また設定可能な数値範囲も限定されている。例えば加入度数(δL0,δR0)が0.25D刻みであったりする。すなわち実際の眼鏡レンズの処方は、多種多様な既製品のレンズから最適なレンズを指定するための「指示書」であるとも言える。したがって実際の処方では、設計値に最も近似した設定値を有するレンズを選択するように処方する場合が多い。
4 近用部、10 累進帯、11 累進帯の上端、12 累進帯の下端、L 累進帯長
左右の前記累進多焦点レンズにおいて、前記眼鏡を装用する前記利用者が正面を見たときの瞳孔中心に対応する位置を上端とした累進帯の上下長Lを設定するステップと、
近用視力が矯正されていない前記利用者の明視距離を近用視測定距離として設定するステップと、
前記利用者に対し、前記近用視測定距離の位置にある視標をテストレンズを介して視認させ、明視状態における左右それぞれのテストレンズの度数を左右それぞれの近用度数として設定するステップと
左および右の前記近用度数に基づいて、左および右のそれぞれの前記累進多焦点レンズの加入度数δL0およびδR0を決定するステップと、
左および右の前記累進多焦点レンズにおける当該累進帯の上端における加入度数を0に設定するとともに、当該累進帯の下端における加入度数をδL0およびδR0に設定するステップと、
を含むことを特徴とする累進多焦点レンズの設計方法としている。
そして上記設計方法に基づいて設計された左右それぞれの累進多焦点レンズを備えたことを特徴とする眼鏡も本発明の範囲としており、当該眼鏡は、
老視がなく裸眼視力あるいは矯正視力によって両眼遠用視が可能な利用者が装用するための眼鏡であって、
左および右の前記累進多焦点レンズは、前記眼鏡を装用する前記利用者が正面を見たときの瞳孔中心に対応する位置を上端とした累進帯を備え、
左および右の前記累進多焦点レンズの前記累進帯の上端では加入度数が0であり、
左および右の前記累進多焦点レンズの前記累進帯の下端の加入度数δ L0 およびδ R0 は、前記利用者が近用視測定距離の位置にある視標を左眼および右眼で視認したときに明視状態となる左眼の近用度数および右眼の近用度数に基づいて設定されている、
ことを特徴とする眼鏡としている。
Claims (5)
- 老視がなく裸眼視力あるいは矯正視力によって両眼遠用視が可能な利用者が装用する眼鏡に用いられる左右の眼に対応する左右一組の累進多焦点レンズの設計方法であって、
左右の前記累進多焦点レンズにおける累進帯の上下長Lを設定するステップと、
近用視力が矯正されていない前記利用者の明視距離を近用視測定距離として設定するステップと、
前記利用者に対し、前記近用視測定距離の位置にある視標をテストレンズを介して視認させ、明視状態における左右それぞれのテストレンズの度数を左右それぞれの近用度数として設定するステップと
左および右の前記近用度数に基づいて、左および右のそれぞれの前記累進多焦点レンズの加入度数δL0およびδR0を決定するステップと、
左および右の前記累進多焦点レンズにおける前記累進帯の上端における加入度数を0に設定するとともに、当該累進帯の下端における加入度数をδL0およびδR0に設定するステップと、
を含むことを特徴とする累進多焦点レンズの設計方法。 - 請求項1において、前記加入度数δL0およびδR0を決定するステップでは、前記左および右のそれぞれの前記累進多焦点レンズにおける累進帯の下端における加入度数の差を、前記左および右の近用度数の差にすることを特徴とする累進多焦点レンズの設計方法。
- 請求項1または2において、左および右の前記累進多焦点レンズにおける前記累進帯の上端から下方に向かう距離xにおける加入度数をδL0×x/LおよびδR0×x/Lに設定するステップを含むことを特徴とする累進多焦点レンズの設計方法。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記近用視測定距離は特定の距離であることを特徴とする進多焦点レンズの設計方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の設計方法に基づいて設計された左右それぞれの累進多焦点レンズを備えたことを特徴とする眼鏡。
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