JP2017090717A - トナー及びトナーの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温定着性と耐熱保存性を満足させ、さらに高温高湿下や低温低湿下などの環境においても高品質な画像を安定的に得られる環境安定性に優れたトナー。【解決手段】非晶性樹脂、樹脂組成物、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、該樹脂組成物は、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有し、該結晶性ポリエステル樹脂がウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂であり、該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性樹脂及び該結晶性ポリエステル樹脂の合計を基準として、1質量%以上20質量%以下であることを特徴とするトナー。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナー及びその製造方法に関する。
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及するに従い、高速印刷化や省エネルギー対応への要求が更に高まっている。また、ユーザーの使用環境も多様化しており、様々な環境下において高品質な画像を安定的に出力できることも求められている。
高速印刷に対応するため、定着工程においてトナーをより素早く溶融させる技術が検討されている。また、省エネルギー対応策として、定着工程での消費電力を低下させるために、トナーをより低い温度で定着させる技術が検討されている。
高速印刷に対応し、トナーの低温定着性を向上させるためには、トナーの結着樹脂のガラス転移点や軟化点を下げる、シャープメルト性を有する結着樹脂を用いる、といった方法がある。
近年、そのシャープメルト性をさらに向上させるために、結着樹脂に結晶性ポリエステル樹脂を含有させたトナーが開発されてきている。トナー中に結晶性ポリエステルを含有させることで、定着温度で素早く溶融しながらも、定着温度までは硬さを維持できるため、低温定着性と保存安定性を両立させる事が可能である。
特許文献1では、主たる結着樹脂と結晶性ポリエステルに加え、結晶性ポリエステル分散剤を使用し、結着樹脂と結晶性ポリエステル、結晶性ポリエステル分散剤の溶解度パラメーターの関係を規定したトナーが提案されている。溶解度パラメーターを所定の範囲に調整することにより、結着樹脂中に結晶性ポリエステルを微分散させかつトナー表面に偏在させないことにより、従来の保存性を満足しつつ低温定着性とフィルミングを良化させている。
また、低温定着性と保存安定性を両立させる手法の一つとして、結晶性樹脂の分子量を高めることが提案されている。この手法として、結晶性ポリエステルそのものの分子量を高めるほかに、ジイソシアネートやジアミンを用いた、ウレタン変性又はウレア変性された結晶性ポリエステルを用いる手法がある。
特許文献2では、分子内にウレタン又はウレア結合をもつ変性結晶性ポリエステルを用いたトナーが提案されている。変性された結晶性ポリエステル樹脂を用いることで、結晶性樹脂の重量平均分子量を高めることが可能となり、低温定着性と耐熱保存性を高いレベルで両立し、かつクリーニング性に優れたトナーが得られている。
特開2012−063559号公報 特開2013−186219号公報
しかし、上記の提案によるトナーを用いて高温高湿下での出力画像と低温低湿下での出力画像を比較したところ、印刷された画像上のトナー濃度が異なるものが得られる場合があった。したがって、前述の市場要求である、様々な環境下において高品質な画像を安定的に出力できるところまでは至っておらず、さらなる改善の余地がある。
本発明の目的は、上記の課題を解決したトナーを提供することにある。具体的には、低
温定着性と耐熱保存性を満足させ、さらに高温高湿下や低温低湿下などの環境においても高品質な画像を安定的に得られる環境安定性に優れたトナーを提供することである。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、低温定着性と耐熱保存性を満足させ、さらに高温高湿下や低温低湿下などの環境においても高品質な画像を安定的に得られる環境安定性に優れたトナーを提供するためには、特定の樹脂成分が反応した構造を含む樹脂組成物と、特定の変性ポリエステルを含有することが重要であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、非晶性樹脂、樹脂組成物、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
該樹脂組成物は、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有し、
該結晶性ポリエステル樹脂がウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂であり、
該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性樹脂及び該結晶性ポリエステル樹脂の合計を基準として、1質量%以上20質量%以下であることを特徴とする。
また、本発明は上記トナーの製造方法に関する。
本発明によれば、低温定着性と耐熱保存性を満足し、高温高湿下や低温低湿下などの環境においても高品質な画像を安定的に得られる環境安定性に優れたトナーを提供することができる。
本発明のトナーは、非晶性樹脂、樹脂組成物、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、該樹脂組成物は、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有し、該結晶性ポリエステル樹脂がウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂であり、該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性樹脂及び該結晶性ポリエステル樹脂の合計を基準として、1質量%以上20質量%以下であることが重要である。
上記特徴を満足するトナーは、これらを満たさないトナーに比べ、低温定着性及び耐熱保存性が格段に向上するとともに、優れた環境安定性が得られることが確認された。
この効果が発現するメカニズムは完全には明らかになっていないが、本発明者らは次のように推定している。
低温低湿下でのトナーの帯電過程においては、キャリアとの摺擦によってトナー粒子表面に発生した負電荷がトナー粒子の内部まで浸透し、帯電量が決まると考えられる。一方、ウレタン変性した結晶性ポリエステル樹脂は、分子中に比較的電気陰性度の高い窒素原子を含むことにより、電子をトラップしやすい性質をもつと考えられる。
そこで、このウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂をトナー粒子中に微分散させることにより、キャリアとの摺擦で発生した負電荷がトナー粒子表面近傍に分散して存在するウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂にトラップされるため、トナー粒子内部へ負電荷が移行しにくくなる。
それゆえ、低温低湿下でのトナー一粒一粒の帯電量が抑制され、高温高湿下との帯電量の差が縮まることによって優れた環境安定性が得られたと推定している。
<ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂>
上記のとおり、本発明のトナーにおいては、ウレタン変性された結晶性ポリエステル樹脂を含有することが重要である。そして、該ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、該非晶性樹脂及び該結晶性ポリエステル樹脂の合計を基準として、1質量%以上20質量%以下である。好ましくは、5質量%以上15質量%以下である。ウレタン変性結
晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲であることで、該ウレタン変性結晶性ポリエステルのトナー中への分散状態が微分散状態となり、更に良好な環境安定性が得られる。
該結晶性ポリエステル樹脂は、例えば脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールから生成される未変性の結晶性ポリエステルの末端をイソシアネートで変性したウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂でも、未変性の結晶性ポリエステル同士をジイソシアネートで結合させた構造を有するウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂でもよい。負電荷のトラップ効果と定着性の観点から、未変性の結晶性ポリエステル同士をジイソシアネートで結合させた構造を有するウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
このような、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸ユニット及びアルコールユニットを有する結晶性ポリエステル部位、並びにイソシアネートに由来するイソシアネートユニットを有する。該結晶性ポリエステル部位は、炭素数6以上18以下の脂肪族ジオールを主成分として含むアルコール成分と、炭素数6以上18以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を主成分として含むカルボン酸成分との縮重合体であることが好ましい。本願において、主成分とは、その含有量が50質量%以上であることを示す。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂のDSC測定による吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、耐熱保存性の観点から40〜100℃の範囲であることが好ましい。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの重量平均分子量(以下、Mwと記載)は、定着の観点から5000〜100000が好ましく、より好ましくは6000〜90000、さらに好ましくは8000〜80000である。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸ユニット、アルコールユニット及びイソシアネートユニットを有し、該ユニットの総モル数を基準として、イソシアネートユニットの含有量が1.0mol%以上10.0mol%以下であることが、環境安定性及び低温定着性の観点から好ましい。より好ましくは、2mol%以上7mol%以下である。
なお、カルボン酸ユニット、アルコールユニット及びイソシアネートユニットとは、それぞれカルボン酸成分、アルコール成分及びイソシアネート成分のモノマーに由来するユニットを示す。
イソシアネートユニットの含有量が上記下限以上であることで、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂の負電荷のトラップ効果が良好になり、環境安定性が向上する。イソシアネートユニットが上記範囲より多い場合は、トナーの帯電サイトが増えることにより、トナーの帯電性は良化するものの、環境安定性という観点では上記範囲のものが好ましい。該イソシアネートユニットは、直鎖脂肪族ジイソシアネートに由来するユニットであることが好ましく、炭素数4以上8以下の直鎖脂肪族ジイソシアネートに由来するユニットであることがより好ましい。
以降の説明において、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂に用いられる、アルコール成分、カルボン酸成分、イソシアネート成分についてそれぞれ示す。
[アルコール成分]
アルコール成分としては、ジオールが好ましく、脂肪族ジオールがより好ましく、炭素数が2以上36以下の範囲であることが好ましく、6以上18以下であることがより好ましい。また直鎖型脂肪族ジオールがさらに好ましい。
脂肪族ジオールが直鎖型であることで、ポリエステル樹脂の結晶性が向上し、融点が降下しにくいため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性が良好になる。また、炭素数が36を超えると、実用上、材料の入手が困難な場合がある。
アルコール成分は、直鎖型脂肪族ジオールの含有量が使用アルコール成分の80モル%以上100モル%以下であることが好ましく、より好ましくは90モル%以上100モル%以下である。80モル%以上では、ポリエステル樹脂の結晶性が向上し、融点が上昇す
るため、耐トナーブロッキング性、及び低温定着性がより良好となる。
直鎖型脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、入手容易性を考慮するとエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
その他必要に応じて使用されるジオールとしては、炭素数2〜36の上記以外の脂肪族ジオール(1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);炭素数4〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記する)〔エチレンオキサイド(以下EOと略記する)、プロピレンオキサイド(以下POと略記する)、ブチレンオキサイド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど)のAO(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30);ポリラクトンジオール(ポリε−カプロラクトンジオールなど);及びポリブタジエンジオールなどが挙げられる。
さらにその他必要に応じて使用されるジオールとしては、他の官能基を有するジオールを用いてもよい。官能基を有するジオールとしては、カルボキシル基を有するジオール、スルホン酸基又はスルファミン酸基を有するジオール、及びこれらの塩等が挙げられる。
カルボキシル基を有するジオールとしては、ジアルキロールアルカン酸[C6〜24のもの、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸など]が挙げられる。
スルホン酸基又はスルファミン酸基を有するジオールとしては、スルファミン酸ジオール[N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸(アルキル基のC1〜6)又はそのAO付加物(AOとしてはEO又はPOなど、AOの付加モル数1〜6):例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸PO2モル付加物など];ビス(2−ヒドロキシエチル)スルフォネートなどが挙げられる。
これらの中和塩基を有するジオールの中和塩基としては、例えば前記炭素数3〜30の3級アミン(トリエチルアミンなど)及び/又はアルカリ金属(ナトリウムなど)が挙げられる。
上記アルコール成分のうち、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下が、炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数6以上18以下、さらに好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオールから選ばれることが好ましい。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノ
ール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコールなどが挙げられる。
[カルボン酸成分]
カルボン酸成分としては、ジカルボン酸が好ましい。ジカルボン酸成分としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、脂肪族ジカルボン酸は直鎖型のカルボン酸がより好ましい。
ジカルボン酸としては、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、デシルコハク酸など);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕、炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸など)などが挙げられる。
なお、ジカルボン酸としては、上述のものの酸無水物又は炭素数1〜4の低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
これらジカルボン酸の中では、脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖型のカルボン酸)を単独で用いるのが特に好ましいが、脂肪族ジカルボン酸と共に芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、及び、これらの低級アルキルエステル類が好ましい。)を共重合したものも同様に好ましい。芳香族ジカルボン酸の共重合量としては20モル%以下が好ましい。
本発明において、上記カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下が、炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数6以上18以下、さらに好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸から選ばれるカルボン酸であることが好ましい。
さらに、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を用いてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
[イソシアネート成分]
イソシアネート成分としては、イソシアネート、ジイソシアネート又は3価以上のポリイソシアネートが挙げられるが、ジイソシアネートが好ましい。
ジイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。なかでも、直鎖脂肪族ジイソシアネートが好ましく、炭素数4以上8以下の直鎖脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。また、必要により、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
上記芳香族ジイソシアネートの具体例(3価以上のポリイソシアネートを含む)としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び/又は4,4’
−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20重量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例(3価以上のポリイソシアネートを含む)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
上記脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
上記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
また、上記ジイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。
具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど)、ウレタン変性TDIなどのジイソシアネートの変性物及びこれらの2種以上の混合物[たとえば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。
これらのうちで好ましいものは炭素数6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートであり、より好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、及びIPDIである。
本発明に用いられるウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、以下のような方法により製造することができる。前記したカルボン酸成分とアルコール成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応せしめた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで未変性の結晶性ポリエステルを得ることができる。
その後、上記反応系を上圧に戻した後、前記したイソシアネート成分を投入して反応させることにより、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応又は重縮合反応において、得られる結晶性ポリエ
ステルの強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は上記の製造方法に限らず、従来公知の製造方法で製造されたものであってもよい。
<ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有する樹脂組成物>
本発明におけるトナーでは、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有することが重要である。
該グラフト(共)重合体が含有されていない場合、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂が非晶性樹脂中で微分散しにくくなり、低温低湿下でのトナー粒子一粒一粒の帯電量が抑制されにくくなってしまう。
また該樹脂組成物の含有量は、非晶性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましい。含有量がこの範囲にあるとき、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体による非晶性樹脂中への結晶性ポリエステルの微分散が効率的に行われると考えられる。
また、該樹脂組成物中の、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体の含有量は、90質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
また、該樹脂組成物は、該グラフト共重合体を構成するモノマーユニットとして、アクリロニトリル又はメタアクリロニトリルなどに由来する、窒素原子を含む官能基を有するモノマーユニットを含有することが好ましい。構成モノマーユニットとして窒素原子を含む官能基を有するモノマーユニットを含有することにより、ウレタン変性された結晶性ポリエステル樹脂との親和性が増し、結晶性ポリエステルの微分散効果が高まると考えられる。なお、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
該窒素原子を含む官能基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどが挙げられる。
窒素原子を含む官能基を有するモノマーユニットの含有量は、該樹脂組成物を構成する全モノマーユニットの総モル数を基準として、10.0mol%以上50.0mol%以下であることが好ましく、15.0mol%以上45.0mol%以下であることがより好ましい。
ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体に好ましく用いられるポリオレフィンは、二重結合を一つ有する不飽和炭化水素の重合体又は共重合体であれば特に限定されず、様々なポリオレフィンを用いることができる。特にポリエチレン系、ポリプロピレン系が好ましく用いられる。該樹脂組成物中の、ポリオレフィンの含有量は、45質量%以上55質量%以下であることが好ましい。
スチレンアクリル系ポリマーに用いることのできるビニル基を有するビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。
例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンのようなスチレン及びその誘導体などのスチレン系単位。
メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなアミノ基含有α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;アクリロニトリル、メタアクリ
ロニトリル、アクリルアミドのようなアクリル酸又はメタクリル酸誘導体などの窒素原子を含むビニル系単位。
マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸のような不飽和二塩基酸;マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物のような不飽和二塩基酸無水物;マレイン酸メチルハーフエステル、マレイン酸エチルハーフエステル、マレイン酸ブチルハーフエステル、シトラコン酸メチルハーフエステル、シトラコン酸エチルハーフエステル、シトラコン酸ブチルハーフエステル、イタコン酸メチルハーフエステル、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル、フマル酸メチルハーフエステル、メサコン酸メチルハーフエステルのような不飽和二塩基酸のハーフエステル;ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸のような不飽和二塩基酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸のようなα,β−不飽和酸;クロトン酸無水物、ケイヒ酸無水物のようなα,β−不飽和酸無水物、前記α,β−不飽和酸と低級脂肪酸との無水物;アルケニルマロン酸、アルケニルグルタル酸、アルケニルアジピン酸、これらの酸無水物、及びこれらのモノエステルなどのカルボキシル基を含むビニル系単位。
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸エステル類、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)スチレン、4−(1−ヒドロキシ−1−メチルヘキシル)スチレンなどの水酸基を含むビニル系単位。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニルのようなアクリル酸エステル類などのアクリル酸エステルからなるエステル単位。
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類などのメタクリル酸エステルからなるエステル単位。
本発明に用いられるポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有する樹脂組成物は、前述したこれらの重合体同士の反応や、一方の重合体のモノマーと他方の重合体との反応等、公知の方法によって得ることができる。
<非晶性樹脂>
本発明のトナーに用いられる非晶性樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分とすることが好ましい。
ポリエステル樹脂のポリエステル部位に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。ここで、分岐ポリマーを作製する場合には、非晶性樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用することが好ましい。従って、ポリエステルユニットの原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下の多価アルコールモノマーを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオー
ル、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体;
Figure 2017090717
(式中、Rはエチレン又はプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
式(B)で示されるジオール類;が挙げられる。
Figure 2017090717
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独で又は複数を併用して用いることができる。
ポリエステル樹脂のポリエステル部位に用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール
三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、特に1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独で又は複数を併用して用いることができる。
非晶性樹脂は、ポリエステル樹脂及び他の樹脂成分を含有するハイブリッド樹脂であってもよい。例えば、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド樹脂が挙げられる。ハイブリッド樹脂のような、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニットとポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニット及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方又は両方の樹脂の重合反応を行う方法が好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸又はメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明では、非晶性樹脂として、上記のビニル系樹脂以外にも、公知の樹脂化合物を併用することができる。このような樹脂化合物としては、例えばフェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
また、非晶性樹脂のピーク分子量は8000以上13000以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、非晶性樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。さらに、非晶性樹脂の水酸基価は2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、低温定着性と保存性の観点から好ましい。
また、非晶性樹脂は、低分子量の非晶性樹脂Bと高分子量の非晶性樹脂Aを混ぜ合わせて使用してもよい。高分子量の非晶性樹脂Aと低分子量の非晶性樹脂Bの含有比率(A/B)は質量基準で10/90〜60/40であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
高分子量の非晶性樹脂Aのピーク分子量は10000以上20000以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量の非晶性樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
低分子量の非晶性樹脂Bの数平均分子量は1500以上3500以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量の非晶性樹脂の酸価は10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
<その他の樹脂>
本発明においては、顔料分散性を向上させたり、トナーの帯電安定性、耐ブロッキング性を改善したりする目的で上記非晶性樹脂以外に下記の重合体を本発明の効果を阻害しない量で添加することも可能である。
その他の樹脂としては、例えば以下の樹脂が挙げられる。ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸
エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
<ワックス>
本発明のトナーにはワックスを用いてもよい。ワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。
パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、定着ラチチュードと画像安定性を両立させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス、又はカルナバワックスのような脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。
本発明では、ワックスは、非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。含有量が1質量部以上であると離型剤添加の効果が好適に発揮され、高温でのオフセットや分離不良が起こりにくくなる。一方、20質量部以下であると、トナーの機械的強度が良好になり、連続出力時の画像安定性が低下しにくい。
<着色剤>
本発明のトナーには着色剤を用いてもよい。着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の使用量は、非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物などが挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。荷電制御剤の添加量は、非晶性樹脂及び結晶性ポリエステル樹脂の合計100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
<無機微粒子(主に外添剤)>
本発明のトナーには、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムのような無機微粒子が好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m/g以上400m/g以下の無機微粒子が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m/g以上50m/g以下の無機微粒子であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、また長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、又は、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、好ましくは2質量%以上15質量%以下、より好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
<製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、溶融混練法、乳化転相法、懸濁重合法、乳化凝集法など、従来から公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。結晶性ポリエステルを非晶性樹脂中に微分散させるという観点から、非晶性樹脂、樹脂組成物、結晶性ポリエステル樹脂を溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を有する溶融混練法が好ましい。
以下、溶融混練法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、非晶性樹脂、樹脂組成物、結晶性ポリエステル樹脂並びに必要に応じてワックス、着色剤、荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、非晶性樹脂中に結晶性ポリエステル樹脂等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂の混合物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂混合物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(トナー粒子)を得る。中でも、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にトナー粒子の球形化処理を行うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
さらに必要に応じて、トナー粒子の表面に外添剤が外添処理される。外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<樹脂の重量平均分子量の測定方法>
樹脂のTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定した。
まず、室温で24時間かけて、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。その後得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得た。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整した。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定した。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、80
7の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用した。
<無機微粒子のBET比表面積の測定>
無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なった。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いた。測定条件の設定及び測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続されている。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明における無機微粒子のBET比表面積とした。
なお、BET比表面積は以下のようにして算出した。
まず、無機微粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と外添剤の窒素吸着量Va(モル/g)を測定した。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル/g)を縦軸とした吸着等温線を得た。次いで、外添剤の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル/g)を、下記のBET式を適用して求めた。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて該の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、該で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm)から、下記の式に基づいて、無機微粒子のBET比表面積S(m/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10−18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル−1)である。)
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定した。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤した。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gの外添剤を入れた。
無機微粒子を入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続した。なお、真空脱気の際には、無機微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気した。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となった。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外した。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差から外添剤の正確な質量を算出した。なお、この際に、試料セル内の外添剤が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をした。
次に、無機微粒子が入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付けた。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、該装置の分析ポートに試料セルをセットした。なお、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なった。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出した。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却した。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入してトナーに窒素分子を吸着
させた。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより該吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換した。なお、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定した。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出した。さらに、このVmの値を用いて、上述したように無機微粒子のBET比表面積を算出した。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定した。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定した。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れた。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定した。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なった。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡をあらかじめ除去した。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加えた。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加した。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させた。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整した。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させた。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続した。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節した。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整した。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なった。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出した。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」を重量平均粒径(D4)とした。
<トナー粒子の平均円形度の測定方法>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定した。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は、1視野が512画素×512画素であり、1画素あたり0.37×0.37μmの画像処理解像度で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円形当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が真円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなるほど円形度は小さい値になる。
各粒子の円形度を算出後、円形度0.2〜1.0の範囲を800分割したチャンネルに振り分け、各チャンネルの中心値を代表値として平均値を計算し平均円形度の算出を行う。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.02g加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm以上200.00μm以下に限定し、トナーの平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
<ワックス及び結晶性ポリエステルのDSC吸熱量(ΔH)の測定>
本発明におけるトナー等(トナー、結晶性ポリエステル)の最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
トナーを試料とする場合において、最大吸熱ピーク(結着樹脂由来の最大吸熱ピーク)がワックス及び結晶性樹脂以外の樹脂の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークの吸熱量をそのままワックス及び結晶性樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量として扱う。一方、トナーを試料とする場合において、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂の吸熱ピークが結着樹脂の最大吸熱ピークと重なっている場合は、ワックス及び結着樹脂以外の樹脂に由来する吸熱量を、得られた最大吸熱ピークの吸熱量から差し引く必要がある。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、最大吸熱ピークの吸熱量(ΔH)はピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
<トナー中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量の測定>
トナーをメチルエチルケトン(MEK)中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、トナーとMEKをよく混ぜ、試料の合一体が無くなるまで、更に12時間以上静置する。得られた溶液を3500rpmで20分間遠心分離(遠心機「H−18」、株式会社コクサン社)した後、固形分を回収し、乾固する。
乾固したサンプルを75℃の加熱下でMEKに溶解し、遠心分離によって分離した上澄み液から、結晶性ポリエステル樹脂を得る。該結晶性ポリエステル樹脂を用い、調整前のトナーの重量と得られた結晶性ポリエステルの重量より、含有量を算出する。
<トナーからの、結晶性ポリエステル樹脂中の、イソシアネートユニットの含有量の測定>
結晶性ポリエステル樹脂中のイソシアネートユニットの含有量は、NMRを用い、以下の手法にて算出した。
前記の手法にて分離した結晶性ポリエステル樹脂を5mg精秤し、重クロロホルム(CDCL)を600μL加えて溶解後、H−NMR測定を行い、各ピークの積分値より組成比を算出した。具体的な装置条件については以下のとおりである。
(測定条件)
測定装置 JNM-ECA400 FT-NMR(JEOL)
測定核種:
溶媒:CDCl(重クロロホルム)
測定周波数:400MHz
パルス幅:3.125μs
周波数範囲:7500Hz
積算回数:64回
測定温度:室温
以上本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、本発明は何らこれに限定されるものではない。
[非晶性樹脂A1の製造例]
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:
28.0質量部(0.17モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)・2−エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・無水トリメリット酸:
1.3質量部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、(第2反応工程)、Tg=57℃の非晶性樹脂A1を得た。
[結晶性ポリエステル樹脂B1の製造例]
・エチレングリコール:21.4質量部(0.35モル;樹脂B1のモノマーの総モル数に対して46.5mol%)
・セバシン酸:69.8質量部(0.35モル;樹脂B1のモノマーの総モル数に対して46.5mol%)
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
・2−エチルヘキサン酸錫:0.5質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた(第1反応工程)。
・ヘキサメチレンジイソシアネート:8.7質量部(0.05モル;樹脂B1のモノマーの総モル数に対して7.0mol%)
その後、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、上記材料を加え、常圧下にて100℃で3時間反応させることにより結晶性ポリエステル樹脂B1を得た(第2反応工程)。得られた結晶性ポリエステル樹脂B1のピーク分子量、融解ピーク温度を表1に示す。
Figure 2017090717
[結晶性ポリエステル樹脂B2〜B14の製造例]
結晶性ポリエステル樹脂B1製造例において、第1反応工程の多価アルコール成分及び/又は多価カルボン酸成分のそれぞれのモノマー及び質量部数、反応時間を表1となるように変更し、第2反応工程のモノマー及び質量部数を変更したほかは同様にして反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂B2〜B14を得た。結晶性ポリエステル樹脂B2〜B14の物性を表1に示す。
[樹脂組成物C1の製造例]
・低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業(株)製ビスコール660P):
51.6質量部(0.11モル;樹脂組成物モノマーの総モル数に対して15.0mol%)
・キシレン:25.0質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に175℃の温度まで昇温した。
・スチレン:30.7質量部(0.29モル;樹脂組成物モノマーの総モル数に対して42.0mol%)
・アクリロニトリル:14.5質量部(0.27モル;樹脂組成物モノマーの総モル数に対して39.0mol%)
・アクリル酸:0.5質量部(0.01モル;樹脂組成物モノマーの総モル数に対して1.0mol%)
・アクリル酸ブチル:2.7質量部(0.02モル;樹脂組成物モノマーの総モル数に対して3.0mol%)
・キシレン:10.0質量部
・ジーt−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート:0.5質量部
その後、上記材料を3時間かけて滴下し、さらに30分間撹拌した。次いで、溶剤を留去して、ポリプロピレンにスチレン系樹脂がグラフト結合した樹脂を含む樹脂組成物C1を得た。得られた樹脂組成物C1のピーク分子量、軟化点を表2に示す。GPC測定にお
いて、原料のポリプロピレンに相当するピークは認められなかった。
[樹脂組成物C2〜C6の製造例]
樹脂組成物C1製造例において、構成するモノマー及び質量部数を変更したほかは同様にして反応を行い、樹脂組成物C2〜C6を得た。樹脂組成物C2〜C6の物性を表2に示す。C2〜C5においても、GPC測定で、原料のポリプロピレンに相当するピークは認められなかった。
Figure 2017090717
<トナー製造例1>
・非晶性樹脂1 90質量部
・結晶性ポリエステル樹脂B1 10質量部
・樹脂組成物C1 5質量部
・ワックス(フィッシャートロプシュワックス、融点90℃) 5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 5質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
該処方で示した原材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s−1、回転時間5minで混合した後、温度125℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、分級ローター回転数を50.0s−1で分級を行った。得られたトナー粒子は、重量平均粒径(D4)が6.5μmであった。
得られたトナー粒子100質量部に、一次平均粒子径13.0nmのシリカ微粒子:1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM75型、三井三池化工機(株)製)で周速度45m/sec、5min混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー1を得た。トナー1の粒径及び円形度を表3に示す。
<トナー製造例2〜19、21〜25>
表2に示す通り、材料の添加部数を変更した以外は、トナー製造例1と同様に行った。トナー2〜19、21〜25の概要を表3に示す。
Figure 2017090717
<トナー製造例20>
[ケチミン1の合成]
撹拌棒及び温度計を装備した反応容器に、イソホロンジアミン170部及びメチルエチルケトン75部を入れ、50℃で5時間反応させて、ケチミン1を得た。ケチミン1は、アミン価が418mgKOH/gであった。
[樹脂粒子分散液1の作製]
撹拌棒及び温度計を装備した反応容器に、水683部、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部及び過硫酸アンモニウム1部を入れ、400rpmで15分間撹拌した後、75℃に昇温し、5時間保持した。次に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30部を加え、75℃で5時間熟成して、樹脂粒子分散液1を得た。レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA社製)を用いて
、樹脂粒子分散液1の粒度分布を測定したところ、体積平均粒径が0.14μmであった。
[水系媒体1の調製]
水990部、83部の樹脂粒子分散液1、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)37部及び酢酸エチル90部を混合し、水系媒体1を得た。
[トナー粒子の製造]
水1200部、シアン顔料 (大日精化社製:Pigment Blue 15:3)5
40部及び1200部の非晶性樹脂A1を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した後、2本ロールを用いて150℃で30分間混練した。次に、圧延冷却した後、パルペライザーを用いて粉砕し、マスターバッチ1を得た。
撹拌棒及び温度計を装備した容器に、378部の非晶性樹脂A1、50部の融点が90℃のフィッシャートロプシュワックス、20部の樹脂組成物C4、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物2部及び酢酸エチル947部を入れ、80℃に昇温して
、5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次に、500部のマスターバッチ1及び酢酸エチル500部を加えて、1時間混合し、原料液1を得た。
1324部の原料液1を容器に移し、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/h、ディスクの周速度を6m/sとして、粒径が0.5mmのジルコニアビーズを80体積%充填して、3パスした。次に、非晶性樹脂A1の65質量%酢酸エチル溶液1042.3部を加え、上記の条件で1パスし、分散液1を得た。分散液1は、130℃、30minによる固形分濃度が50質量%であった。
200部の結晶性ポリエステルB12及び酢酸エチル400部を2Lの容器に入れ、75℃に昇温した後、氷水浴中で27℃/minで急冷した。次に、粒径が3mmのガラスビーズ500mlを加え、バッチ式サンドミル装置(カンペハピオ社製)を用いて、10時間粉砕し、結晶性ポリエステル分散液1を得た。
664部の分散液1、73.9部の結晶性ポリエステル分散液1、4.6部のケチミン1を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、5000rpmで1分間混合した後、1200部の水系媒体1を加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、13000rpmで20分間混合し、乳化スラリー1を得た。
撹拌機及び温度計を装備した容器に、乳化スラリー1を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成し、分散スラリー1を得た。100部の分散スラリー1を減圧濾過した。次に、以下の(1)〜(4)の操作を2回行い、濾過ケーキ1を得た。
(1)濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。
(2)濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。(3)濾過ケーキに10質量%塩酸100部を加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて12000rpmで10分間混合した後、濾過した。
(4)濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。
循風乾燥機を用いて、濾過ケーキ1を45℃で48時間乾燥させた後、目開きが75μmのメッシュで篩い、トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に、一次平均粒子径13.0nmのシリカ微粒子:1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM75型、三井三池化工機(株)製)で周速度45m/sec、5min混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させトナー20を得た。トナー20の粒径及び円形度を表3に示す。
<磁性コア粒子の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe60.2質量%
MnCO 33.9質量%
Mg(OH) 4.8質量%
SrCO 1.1質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、ジルコニア(φ10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で、1000℃で3時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe)d上記式において、a=0.39、b=0.11、c=0.01、d=0.50
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(φ10mm)のボールを
用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで2時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(φ1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで4時間粉砕し、フェライトスラリーを得た。
工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、約36μmの球状粒子に造粒した。
工程5(本焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%以下)で、1150℃で4時間焼成した。
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、磁性コア粒子1を得た。
<コート樹脂の製造例>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量部
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量部
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量部
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量部
メチルエチルケトン 31.3質量部
上記材料を、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、2.0質量部のアゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してコート樹脂を得た。
<磁性キャリア製造例>
コート樹脂 20.0質量%
トルエン 80.0質量%
上記材料をビーズミルで分散混合し、樹脂液を得た。
該磁性コア粒子100質量部をナウタミキサに投入し、さらに、該樹脂液を樹脂成分として2.0質量部になるようにナウタミキサに投入した。減圧下で温度70℃に加熱し、100rpmで混合し、4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、得られた試料をジュリアミキサーに移し、窒素雰囲気下、温度100℃で2時間熱処理した後、目開き70μmの篩で分級して磁性キャリア1を得た。得られた磁性キャリア1の体積分布基準50%粒径(D50)は、38.2μmであった。
以上のトナー1〜25と該磁性キャリア1で、トナー濃度が8.0質量%になるようにV型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s−1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1〜25を得た。
Figure 2017090717
<実施例1>
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C9075 PRO改造機を用い、シアン位置又は/及びマゼンタ位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、紙上のトナーの載り量が所望になる画像を形成し、後述の評価を行った。改造点としては、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧V、及びレーザーパワーを自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表5に示す。
[低温定着性評価]
紙:CS−680(68.0g/m)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
紙上のトナーの載り量:1.20mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧V、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙の中心に10cmの画像を配置
定着試験環境:低温低湿環境:温度15℃/湿度10%RH(以下「L/L」)
定着温度:170℃
プロセススピード:450mm/sec
上記評価画像を出力し、低温定着性を評価した。画像濃度低下率の値を低温定着性の評価指標とした。画像濃度低下率は、X−Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X−Rite社製)を用い、先ず、中心部の画像濃度を測定した。次に、画像濃度を測定し
た部分に対し、4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけてシルボン紙により定着画像を摺擦(5往復)し、画像濃度を再度測定した。そして、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)を測定した。
(評価基準)
A:濃度低下率2.0%未満 (優れている)
B:濃度低下率2.0%以上、5.0%未満 (良好である)
C:濃度低下率5.0%以上、15.0%未満 (本発明として問題ないレベル)
D:濃度低下率15.0%以上 (本発明として許容できないレベル)
[環境安定性]
低温低湿環境下及び高温高湿環境下(温度30℃/湿度80%RH)における、5000枚目のベタ画像の画像濃度をそれぞれ測定し、これらの濃度差を算出した。この濃度差をトナーの環境安定性の指標とした。なお、画像濃度は前記したX−Riteカラー反射濃度計で測定した。
(評価基準)
A:濃度差0.10未満 (優れている)
B:濃度差0.10以上、0.15未満 (良好である)
C:濃度差0.15以上、0.25未満 (本発明として問題ないレベル)
D:濃度差0.25以上 (本発明として許容できないレベル)
[保存性]
100ccのポリカップにトナー5gを入れ、温度及び湿度可変型の恒温槽(55℃41%)に48時間放置し、放置後にトナーの凝集性を評価した。凝集性は、ホソカワミクロン社製パウダーテスタPT-Xにて0.5mmの振幅にて10秒間、目開き20μmの
メッシュで振るった際に、残ったトナーの残存率を評価指標とした。
(評価基準)
A:残存率2.0%未満 (非常に優れている)
B:残存率2.0%以上、10.0%未満 (良好である)
C:残存率10.0%以上、15.0%未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:残存率15.0%以上 (本発明では許容できない)
<実施例2〜20、及び比較例1〜5>
二成分系現像剤2〜25を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 2017090717

Claims (8)

  1. 非晶性樹脂、樹脂組成物、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナー粒子を有するトナーにおいて、
    該樹脂組成物は、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有し、
    該結晶性ポリエステル樹脂がウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂であり、
    該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性樹脂及び該結晶性ポリエステル樹脂の合計を基準として、1質量%以上20質量%以下であることを特徴とするトナー。
  2. 前記樹脂組成物は、窒素原子を含む官能基を有するモノマーユニットを有し、
    前記樹脂組成物を構成する全モノマーユニットの総モル数を基準として、該窒素原子を含む官能基を有するモノマーユニットの含有量が10.0mol%以上50.0mol%以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記結晶性ポリエステル樹脂はカルボン酸ユニット、アルコールユニット及びイソシアネートユニットを有し、
    該ユニットの総モル数を基準として、イソシアネートユニットの含有量が、1.0mol%以上10.0mol%以下である請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記イソシアネートユニットが、直鎖脂肪族ジイソシアネートに由来するユニットである請求項3に記載のトナー。
  5. 前記イソシアネートユニットが、炭素数4以上8以下の直鎖脂肪族ジイソシアネートに由来するユニットである請求項3又は4に記載のトナー。
  6. 前記ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂は、前記アルコールユニット及び前記カルボン酸ユニットを含有する結晶性ポリエステル部位を有し、
    該結晶性ポリエステル部位が、炭素数6以上18以下の脂肪族ジオールを主成分として含むアルコール成分と、炭素数6以上18以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を主成分として含むカルボン酸成分と、の縮重合体である請求項3〜5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記トナーが、前記非晶性樹脂、前記樹脂組成物、及び前記結晶性ポリエステル樹脂を溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を経て製造される請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー。
  8. 非晶性樹脂、樹脂組成物、及び結晶性ポリエステル樹脂を溶融混練し、得られた混練物を粉砕する工程を有するトナーの製造方法であって、
    該樹脂組成物は、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーがグラフト重合している重合体を含有し、
    該結晶性ポリエステル樹脂がウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂であり、
    該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、該非晶性樹脂及び該結晶性ポリエステル樹脂の合計を基準として、1質量%以上20質量%以下であることを特徴とするトナーの製造方法。
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