JP2017090691A - 反射防止膜及び光学素子 - Google Patents

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照房 國定
穣 澁谷
Minoru Shibuya
穣 澁谷
長野 秀樹
Hideki Nagano
秀樹 長野
正明 宮原
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正明 宮原
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Naoki Yamashita
直城 山下
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Abstract

【課題】樹脂製の光学部品(光学素子)の光学面に設けることができ、広い波長域範囲及び広い入射角度範囲において良好な反射防止性能を実現することができる反射防止膜及び当該反射防止膜を備えた光学素子を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するため、複数の光学薄膜からなる多層型の反射防止膜であって、最も基材側に設けられる光学薄膜が、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含む有機物含有層であり、最も表層側に設けられる光学薄膜が、屈折率が1.3以下である低屈折率層であることを特徴とする反射防止膜を提供する。
【選択図】図2

Description

本件発明は、反射防止膜及び光学素子に関し、特に樹脂製の光学部品(光学素子)の表面に設けられる反射防止膜及び当該反射防止膜が光学面に設けられた光学素子に関する。
従来より、車両の走行を補助したり、車両の走行状態を記録したりするなどの種々の目的で車両に複数の撮像装置(車載用撮像装置)を搭載することが行われている。夏季等の炎天下に停車された車両では、車室内温度が70℃以上に達する場合もある。また、エンジンルームの近傍はエンジンの駆動と共に高温になる。そのため、車載用撮像装置に用いられる光学部品には、100℃以上の高温耐久性が要求されている。また、車両の外部に設置される当該車載用撮像装置は風雨等に晒されるため、高温耐久性だけではなく、耐環境性や耐薬品性等についても要求される。
これらのことから、従来、車載用撮像装置には硝子製の光学部品が適用されている。屋外施設等に設置されて使用される監視用撮像装置についても同様に、高温耐久性等が要求されることから、硝子製の光学部品が適用されている。しかしながら、今後、車両に設置される車載用撮像装置の数は増大し、監視用撮像装置の設置台数も更に増大することが想定される。そのため、これらの撮像装置の光学部品として、硝子製の光学部品と同等の光学性能及び耐久性(高温耐久性、耐環境性及び耐薬品性等)を有する樹脂製の光学部品が求められている。樹脂製の光学部品は、硝子製の光学部品と比較すると、安価で大量生産が容易であるためである。
また、近年では、車載用撮像装置はいわゆるビューカメラとしての用途だけではなく、自動運転の実用化に向けたセンサーカメラとしての用途が拡大している。自動運転を実用化する上で、センサーカメラにより障害物等を精度よく検知することは極めて重要である。
ところで、車両には前照灯(ヘッドライト)として、走行用前照灯(ハイビーム)や、すれ違い用前照灯(ロービーム)が備えられている。夜間走行時には、自車に設置された車載用撮像装置に対して、対向車或いは後続車に設置された前照灯からの照射光が入射する場合がある。車載用撮像装置の光学系に対して、対向車等の前照灯から強度の高い照射光が入射し、そのレンズ表面で反射すると、強度の高い反射光が生じる場合がある。この強度の高い反射光が鏡筒内で多重反射して像面に達すると、ゴーストやフレア等の虚像が生じる。
車載用撮像装置がセンサーカメラとして使用される場合、上記ゴーストやフレア等の虚像が生じると、車両の自動運転制御システムがそれを障害物と判断するおそれがある。その場合、自動運転制御システムによって、車両が緊急停止させられたり、障害物を回避すべく車両の進行方向が変更させられたりする。しかしながら、障害物が実存しない場合、車両の緊急停止等が思わぬ事故につながるおそれもある。そのため、ゴーストやフレア等の発生を抑制する必要がある。
例えば、レンズ表面の反射に起因したゴーストやフレア等の発生を抑制する技術として、光の干渉作用を利用した反射防止膜が知られている。例えば、「特許文献1」〜「特許文献3」には、屈折率が1.3以下の光学薄膜(低屈折率層)を備え、光学面に対して広い入射角範囲で入射する入射光の反射率を低く抑制することのできる反射防止膜が開示されている。車載用撮像装置の光学系には、光学面に対して垂直方向だけではなく、種々の方向から光が入射する。従って、車載用撮像装置の光学系を構成するレンズの表面に、これらの反射防止膜を設ければ、上記ゴーストやフレアの発生を有効に抑制することができる。
特許文献1〜特許文献3に記載の反射防止膜は、いずれもウェットプロセスにより成膜され、中空シリカ粒子、フッ化マグネシウム等の微粒子を含む低屈折率層を備えている。これらの微粒子を含む層とすることにより、1.3以下の低い屈折率を実現している。また、上記反射防止膜では、反射防止性能を向上するため、上記低屈折率層の基材側に、ドライプロセスにより成膜された無機材料からなる光学薄膜を備えている。上記低屈折率層と、光学膜厚が厳密に設計された一又は複数の光学薄膜とを積層した多層型の反射防止膜とすることにより、反射防止性能の極めて良好な反射防止膜を得ることができる。
特開2010−15186号公報 特開2015−84031号公報 特開2012−215790号公報
しかしながら、樹脂製の光学部品に対して、上記特許文献に記載の反射防止膜を設けることは困難であった。
上記反射防止膜が備える低屈折率層は、いずれも熱処理工程を含むウエットプロセスにより成膜されている。各特許文献には、当該熱処理工程を100℃以上の高温で行うことが記載されている。そのため、樹脂製の光学部品の光学面にこれらの反射防止膜を設けた場合、当該熱処理工程において基材(樹脂製の光学部品)の変形等が生じるおそれがある。
また、上記多層型の反射防止膜とする場合、樹脂製の基材と無機材料からなる上記光学薄膜との線膨張係数差から、上記熱処理工程において生じる基材と光学薄膜との間の応力により、光学薄膜にクラックが入ったり、光学薄膜の膜剥がれが生じたりする場合がある。特に、120℃以上で熱処理を行う場合、この問題は顕著になる。
一方、上記熱処理工程における熱処理温度を低下させれば、樹脂製の基材の表面に上記多層型の反射防止膜を形成することは可能になる。しかしながら、この場合、高温耐久性が低く、120℃で3000時間の耐熱試験を行うと反射防止膜にクラックが生じたり、基材との密着性が低下したりする。そのため、車載用撮像装置等の光学部品に要求される耐久性を実現することが困難になる。
これらのことから、樹脂製の光学部品に対して、広い入射角度範囲において低い反射率を実現可能な多層型の反射防止膜を設け、ゴーストやフレアの発生を抑制することは困難であった。本件発明の課題は、樹脂製の光学部品の光学面に設けることができ、広い波長域範囲及び広い入射角度範囲において良好な反射防止性能を実現することのできる多層型の反射防止膜及び当該反射防止膜を備えた光学素子を提供することにある。
本件発明の課題を解決するために、本件発明に係る反射防止膜は、複数の光学薄膜からなる多層型の反射防止膜であって、最も基材側に設けられる光学薄膜が、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含む有機物含有層であり、最も表層側に設けられる光学薄膜が、屈折率が1.3以下である低屈折率層であることを特徴とする。
また、本件発明に係る光学素子は、樹脂製の光学素子本体の光学面に直接本件発明に係る反射防止膜を備えたことを特徴とする。
本件発明によれば、樹脂製の光学部品(光学素子)の光学面に設けることができ、広い波長域範囲及び広い入射角度範囲において良好な反射防止性能を実現することができる。
本件発明に係る反射防止膜の一態様として、中空シリカ膜(低屈折率層)を備えたときの層構成を模式的に示す図である。 実施例1で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 実施例1で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 実施例2で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 実施例2で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 実施例3で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 実施例3で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 実施例4で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 実施例4で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 実施例5で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 実施例5で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 実施例6で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 実施例6で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 比較例1で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 比較例1で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 比較例2で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 比較例2で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。 比較例3で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角0°)である。 比較例3で製造した反射防止膜の分光反射率を示す図(但し、光線の入射角60°)である。
1.反射防止膜
以下、本件発明に係る反射防止膜の実施の形態を説明する。本件発明に係る反射防止膜は、複数の光学薄膜からなる多層型の反射防止膜であり、最も基材側に設けられる光学薄膜が、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含む有機物含有層であり、最も表層側に設けられる光学薄膜が、屈折率が1.3以下である低屈折率層であることを特徴とする。
当該反射防止膜は光の干渉作用を利用した反射防止膜であり、複数の光学薄膜を備え、各界面において発生する界面反射光により、表面反射光を相殺させることにより、入射光の反射を抑制するようにしたものである。以下、基板を含め、当該反射防止膜を構成する各層(光学薄膜)の構成について説明する。
1−2.基材
まず、基材について説明する。本実施の形態において、基材は特に限定されるものではない。しかしながら、当該反射防止膜は主として光学用途で用いられる。そのため、光学用途に適した基材を用いることが好ましい。具体的には、光学用レンズ等の光学部品を基材として用いることができる。
上記低屈折率層は、主として、高温の熱処理工程を含む湿式成膜法により形成される。さらに、反射防止膜を設ける光学部品が、車載用撮像装置等の高温耐久性の要求される用途で用いられる場合もある。このように、当該反射防止膜は、製造過程又は使用過程において高温耐久性が要求される場合があるため、当該基材は耐熱性の高い材料からなることが好ましい。
耐熱性が高い材料とは、熱による変形が開始する温度(以下、熱変形温度)が高い材料であることを意味する。本明細書では、基材を構成する材料の融点及びガラス転移点のうち、低い方の温度を熱変形温度としたとき、この熱変形温度が100℃以上、好ましくは120℃以上である場合に、その材料を耐熱性の高い材料と称するものとする。
ここで、光学用途に適した基材として、使用する波長域の光線に対して透明な硝子製基材、又は、樹脂製基材が挙げられる。なお、本件発明において、使用する波長域は特に限定されるものではないが、例えば、可視光波長域(380nm〜800nm)、近赤外波長域(800nm〜2500nm)、近紫外波長域(200nm〜380nm)等に好適である。特に、可視光波長域及び近赤外波長域の光線が使用波長域であることが好ましい。
また、硝子製の基材は、樹脂製の基材と比較すると上記熱変形温度が高く、線膨張係数も低い。そのため、当該反射防止膜を設ける基材として硝子製の基材は好適である。しかしながら、本件発明では、樹脂製の光学部品の光学面に設けることのできる反射防止膜を提供することを課題の一つとしている。従って、以下では、主として、樹脂製の基材を用いた場合を例に挙げて説明する。
樹脂製の基材として、上述したとおり、100℃以上、好ましくは120℃以上の熱変形温度を有する樹脂材料からなる基材であればいずれも好適に用いることができる。特に、樹脂製の基材として、荷重たわみ温度が125℃以上の樹脂材料からなる基材を用いることが好ましい。但し、荷重たわみ温度とは、ISO 75−1,2(JIS 7191−1,2)に規定される試験法に準拠して測定したときの温度とする。これらの条件を満足する樹脂材料として、例えば、ポリカーボネイト系樹脂、鎖状オレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂を挙げることができる。
これらの樹脂材料からなる基材を用いることにより、当該反射防止膜の製造工程又は使用工程において高温の熱(例えば、80℃〜100℃程度)が負荷される場合も、当該基材が熱により変形することを防止することができる。また、このような耐熱性の高い材料からなる基材を用いると共に、当該反射防止膜を構成する光学薄膜のうち、最も基材側に配置する光学薄膜を次に説明する有機物含有層とすることにより、上記高温の熱が負荷されたときに、当該反射防止膜にクラックや膜剥がれが生じるのを防ぐことができる。
1−3.光学薄膜
次に、当該反射防止膜の具体的な層構成を説明するに先立ち、光学薄膜について説明する。最初に述べたように、当該反射防止膜は、複数の光学薄膜が積層された多層型の反射防止膜である。当該反射防止膜を構成する複数の光学薄膜のうち、最も基材側に配置される光学薄膜が有機物含有層であり、最も表層側に設けられる光学薄膜が低屈折率層である。有機物含有層と低屈折率層との間には、一層又は二層以上の他の光学薄膜が設けられていても良い。
ここで、本件明細書において、光学薄膜とは当該反射防止膜を構成する薄膜であって、光学干渉層として機能する薄膜をいうものとする。すなわち、本件明細書において、光学薄膜とは、入射光に対する界面反射光の位相変化を所定の値とすべく、薄膜の特性マトリックスに基づいて、屈折率と光学膜厚とが所定の値になるように、光学設計された薄膜をいうものとする。
また、光学膜厚とは、当該光学薄膜を構成する材料の屈折率と、当該光学薄膜の物理膜厚(実際の膜厚)との積をいう。ここで、材料の屈折率は、例えば、当該反射防止膜の使用波長域における任意の波長の光線に対する屈折率とすることができる。当該材料の屈折率は、当該使用波長域内において設定した設計波長の光線に対する屈折率であってもよい。例えば、使用波長域が可視光波長域である場合、d線(587.6nm)に対する屈折率等を用いることができる。なお、設計波長は使用波長域内において、任意の波長を選択することができる。
1−4.有機物含有層
(1)基本構成
次に、有機物含有層について説明する。有機物含有層は、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含む光学薄膜である。有機物含有層は、当該反射防止膜を構成する光学薄膜のうち、最も基材側に配置される。すなわち、有機物含有層は当該反射防止膜を構成する光学薄膜のうち最も下層に配置される層(以下、「最下層」と称する。)である。
反射防止膜の最下層を当該有機物含有層とすることにより、樹脂製の基材の表面に直接反射防止膜を設けたときも、雰囲気温度の変化によらず、基材と反射防止膜との密着性を確保することができる。すなわち、当該有機物含有層を設けることにより、高温の熱が負荷された場合も、反射防止膜にクラックが生じたり、膜剥がれが生じたりすることを抑制することができる。そのため、当該反射防止膜を樹脂製の基材の表面に直接設けることができる。
これは次の理由による。樹脂材料の線膨張係数は、一般に、無機材料(無機酸化物を含む)の線膨張係数よりも大きい。そのため、反射防止膜の最下層が無機層である場合、高温の熱により樹脂製の基材が熱膨張変形したとき、無機層は基材の変形に追従することができない。そのため、基材と無機層との界面に生じた応力(熱応力)によって、無機層側にクラックが生じたり、いわゆる膜剥がれが生じたりする。これを防ぐには、基材と反射防止膜との間に、上記熱応力を緩和するための他の層等を介在させる必要がある。
これに対して、反射防止膜の最下層を有機物含有層とすることにより、最下層が無機層である場合と比較すると、樹脂製の基材と反射防止膜の最下層との線膨張係数差を小さくすることができる。そのため、高温の熱により樹脂製の基材が熱膨張変形しても、基材の変形に有機物含有層が所定の程度追従することができ、上記熱応力を緩和することができる。その結果、樹脂製の基材の表面に直接反射防止膜を設けたときも、当該有機物含有層にクラックが生じたり、基材と有機物含有層との間で膜剥がれが生じることを抑制することができる。また、当該有機物含有層と低屈折率層との間に、無機材料のみからなる無機層(光学薄膜)を介在させた場合も、有機物含有層が上記熱応力を緩和し、無機層にクラックが生じたり、無機層の膜剥がれが生じるのを抑制することができる。
このように、当該反射防止膜では樹脂製の基材の表面に当該反射防止膜を直接設けることができ、基材と反射防止膜との間に他の層等を介在せる必要がない。そのため、当該他の層等によって、入射光の一部が吸収されたり、反射防止特性が低下する等の不具合が生じることもない。従って、当該反射防止膜は、撮像光学系を構成する光学レンズ等、入射光の高い透過率が要求される光学部品の光学面に好適に用いることができる。
さらに、有機物含有層を最下層とすることにより、有機物含有層と低屈折率層との間に無機層を介在させた場合も無機層にクラックが生じたり、無機層の膜剥がれが生じることを抑制することができる。従って、当該反射防止膜を無機層を含む三層以上の光学薄膜を積層した多層型の反射防止膜を得ることが容易になり、広い波長域範囲及び広い入射角範囲にわってより反射防止性能の優れた反射防止膜を実現することが容易になる。
(2)有機物含有層の構成元素
有機物含有層は上述したとおり、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含む。珪素及び酸素と共に、炭素及び水素を含む層とすることにより、例えば、二酸化珪素膜(SiO膜)等の珪素及び酸素のみからなる層と比較すると、樹脂製基材との線膨張係数差を小さくすることができる。そのため、上述した熱応力を緩和する層として機能させることができる。
また、有機物含有層は、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含むと共に、珪素と炭素とが結合した珪素−炭素結合、及び、炭素と水素とが結合した炭素−水素結合を含むことが好ましい。なお、有機物含有層に珪素−炭素結合、炭素−水素結合が含まれているか否かは、赤外分光分析等により確認することができる。
さらに、当該有機物含有層は、有機系珪素化合物の重合物であることが好ましい。有機系珪素化合物として、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン等の炭化水素基又はメチル基を有する有機系珪素化合物を挙げることができる。これらの中でも、特に、ヘキサメチルジシロキサン又はテトラメチルジシロキサン等の有機系酸化珪素化合物であることがより好ましい。ヘキサメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等は取り扱いが容易である。また、これらの有機系酸化珪素化合物を重合させることにより得られる有機物含有層、すなわちシリコーン樹脂膜は、伸縮性に富み、高温の熱が負荷されたときに、上記熱応力を緩和する層として好適に機能する。
(3)有機物含有層の膜厚
当該有機物含有層は、当該反射防止膜に要求される反射防止特性を実現する上で、上記位相変化が適切になるような光学膜厚であることが求められる。従って、当該有機物含有層の物理膜厚は、当該有機物含有層を構成する材料の屈折率に応じて、当該有機物含有層の光学膜厚が所定の膜厚になるように定められる。
また、当該有機物含有層の物理膜厚は、上記熱応力を緩和するために有効な膜厚であることが好ましい。薄膜の物理膜厚が増加すると、一般に、膜内部における圧縮応力が増加する。そのため、物理膜厚が厚くなりすぎると、高温の熱が負荷されたときに、当該有機物含有層がその熱応力を十分に緩和することができなくなる場合がある。これらの観点から、有機物含有層の物理膜厚は、65nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが最も好ましい。
但し、当該反射防止膜を構成する他の光学薄膜の膜厚等に応じて、上記光学膜厚及び物理膜厚を調整することが好ましいのは勿論である。なお、上記構成元素を含む有機物含有層の屈折率は概ね1.45以上1.70以下となる。樹脂製の基材を用いた場合、有機物含有層の屈折率は、当該基材の屈折率と近い値を示す。従って、当該有機物含有層の物理膜厚を上記熱応力を緩和するために有効な物理膜厚にする、或いは、当該反射防止膜に要求される耐久性を確保するために要求される物理膜厚などの物理的観点から有機物含有層の膜厚を決定しても、他の光学薄膜の膜厚を調整することで、当該反射防止膜に要求される反射防止特性、すなわち使用波長領域における反射率を要求される値以下に低減することが可能になる。
(4)有機物含有層の屈折率
有機物含有層の屈折率は、上述したとおり概ね1.45以上1.70以下となる。このとき、当該有機物含有層の屈折率が、1.48以上1.63以下であると好ましく、1.51以上1.62以下であるとより好ましい。有機物含有層の屈折率が当該範囲内であるとき樹脂製の基材を用いたときに当該反射防止膜に要求される反射防止特性を実現することがより容易になり、反射防止特性のより良好な反射防止膜を得ることができる。
(5)有機物含有層の成膜方法
有機物含有層の成膜方法は特に限定されるものではない。当該有機物含有層の成膜方法の一例として、例えば、化学的成長法を挙げることができる。化学的成長法により、有機物含有層を成膜することで、基板上に、当該有機含有層の構成成分(珪素、炭素、酸素、水素)を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により珪素、炭素、酸素及び水素を構成元素として含む膜を堆積することができる。
当該有機物含有層の成膜方法として、特に、化学的気相成長法(CVD法)の一種であるプラズマ重合法(プラズマCVD法)を採用することが好ましい。プラズマ重合法によれば、上述した各種有機珪素化合物の重合物からなる有機物含有層を容易に成膜することができる。特に、ヘキサメチルジシロキサン又はテトラメチルジシロキサンを原料ガスとして用い、プラズマ重合法により成膜することで、基板上に珪素、炭素、水素及び酸素を含み、珪素−炭素結合及び炭素−水素結合を含む有機物含有層を得ることができる。この際、高周波グロー放電プラズマ、直流グロー放電プラズマ、直流アーク放電プラズマなどを用いることができる。
このプラズマ重合法により得られた有機物含有層を赤外分光分析により分析すると、Si−C伸縮振動(珪素−炭素結合)、C−H伸縮振動(炭素−水素結合)、Si−O伸縮振動(珪素−酸素結合)が確認される。よって、当該方法により得られた有機物含有層は、シロキサン骨格を含むシリコーン樹脂膜であり、上述したとおり、上記熱応力を緩和する層として好適に機能する。
1−5.低屈折率層
(1)基本構成
次に、低屈折率層について説明する。低屈折率層は、屈折率が1.3以下の光学薄膜である。低屈折率層は、当該反射防止膜を構成する光学薄膜のうち、最も表層側に配置される最表層である。すなわち、反射防止膜に対して光が入射する側の媒質(例えば、空気)と、反射防止膜との界面に当該低屈折率層が配置される。光の干渉作用を利用した反射防止膜では、入射光側の媒質との界面に配置された光学薄膜の屈折率が低いほど、入射光の反射を良好に抑制することができる。
ここで、設計波長近傍の狭い波長範囲であれば、単層の光学薄膜のみからなる反射防止膜であっても良好な反射防止性能を実現することが可能である。しかしながら、単層の光学薄膜のみからなる反射防止膜では、可視光波長域等の広い波長域全域にわたって良好な反射防止性能を実現することは困難である。また、単層の光学薄膜からなる反射防止膜では、入射光の入射角が大きくなると、一般に反射率が増加する傾向にある。そこで、本件発明では、上記有機物含有層と当該低屈折率層とを積層した多層型の反射防止膜とすることにより、広い波長域範囲及び広い入射角度範囲において良好な反射防止性能を実現することができる。なお、ここでいう良好な反射防止性能とは、0°の入射角で入射する入射光の反射率が例えば可視光波長域を使用波長域とする場合、その70%以上の波長域において(例えば、440nm〜700nm)の波長域全域において1.5%以下であることをいい、好ましくは当該反射率が1.0%以下であることをいうものとする。また、当該波長域において、60°の入射角で入射する入射光の反射率が10%以下であることをいい、好ましくは当該反射率が8%以下であることをいい、さらに好ましくは当該反射率が6%以下であることをいう。
(2)低屈折率層の構成材料
当該低屈折率層の屈折率が1.30以下であれば、当該低屈折率層の構成材料は特に限定されるものではない。しかしながら、現時点において、光学薄膜を成膜可能な材料であって、且つ、屈折率が1.3以下の材料は少ない。例えば、二酸化珪素(以下、「シリカ」又は「SiO」と表記する場合がある)の屈折率は1.49であり、フッ化マグネシウム(以下、「MgF」と表記する場合がある)の屈折率は1.38である。従って、ドライプロセス等の通常の薄膜成膜プロセスにより成膜したシリカ膜、或いはフッ化マグネシウム膜の屈折率は材料自体の屈折率と同じであり、1.3以下の光学薄膜を得ることができない。
そこで、当該低屈折率層は、層内に空気を含有する光学薄膜からなることが好ましい。低屈折率層と空気を含有する光学薄膜として構成すれば、シリカやフッ化マグネシウム等層構成材料自体の屈折率が1.30よりも大きくても、屈折率が1.30以下の低屈折率層を得ることができる。このような低屈折率層は、例えば、中空部、空隙部或いは空孔部等を備え、これらの中空部、空隙部或いは空孔部等内に空気を含有する光学薄膜により構成することができる。
このとき、中空部、空隙部或いは空孔部等により光学薄膜内に導入される空気の大きさはナノサイズであることが好ましい。但し、ナノサイズとは、150nm未満であることをいい、好ましくは100nm以下であることをいうものとする。中空部、空隙部或いは空孔部の最大長径をナノサイズにすることにより、光学薄膜内にナノサイズの空気を導入することができる。
光学薄膜内に存在する空気の大きさがナノサイズを超えると、光の散乱(ヘイズ)が発生する。撮像光学系を構成する光学レンズ(光学部品)等に当該反射防止膜を適用した場合には、このヘイズがフレア等の原因になる。よって、ヘイズを良好に防止するという観点から、当該光学薄膜内に導入される空気の大きさは上述のとおり100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましい。
また、光学薄膜内にナノサイズの空気を均一に分散配置するという観点から、上記中空部、空隙部或いは空孔部等の大きさや形状は均一であり、光学薄膜内にこれらが均一に分散配置されていることが好ましい。このように構成することで、当該光学薄膜内における空気の分布が均一になり、屈折率分布のない光学薄膜を得ることができる。以下、低屈折率層に適用可能な空気を含有する光学薄膜の具体例を説明する。
i)中空シリカ膜
まず、層内に空気を含有する光学薄膜として、中空シリカ粒子を含む膜(ここでは、「中空シリカ膜」と称する。)を挙げることができる。この中空シリカ膜とは、中空シリカ粒子を含む膜をいうものとする。ここで、当該中空シリカ粒子とは、図1(a)に模式的に示すように、バルーン構造(中空構造)を有するシリカ粒子を指すものとし、シリカからなる外殻部11aと、この外殻部11aに周囲が完全に囲まれた中空部11bとから構成されたシリカ粒子11をいうものとする。この中空シリカ粒子11を含む光学薄膜(例えば、図1(b)に示す光学薄膜10)は、中空シリカ粒子11内の中空部11bによって当該光学薄膜10内にナノサイズの空気を導入することができる。また、粒径の均一な中空シリカ粒子11を用いて、光学薄膜10を成膜することにより、当該光学薄膜10内に中空シリカ粒子11を規則的に配置することができる。その場合、光学薄膜10内において中空部11bも規則的に配置されるため、当該光学薄膜10内にナノサイズの空気を規則的に分散配置させることができる。
また、中空シリカ粒子11は、その平均粒径D50が5nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒径が上記範囲内の中空シリカ粒子11を用いることにより、当該中空シリカ膜内にナノサイズの空気を導入することができる。また、中空部11bの大きさが小さいため、中空部11b内の空気によって上記ヘイズが発生することもない。さらに、平均粒径が当該範囲内であれば、当該中空シリカ膜の物理膜厚を数nm単位で精密に制御することができる。これらの効果を得る上で、中空シリカ粒子11の平均粒径D50は10nm以上85nm以下であることが好ましく、20nm以上70nm以下であることがさらに好ましい。
中空シリカ膜は、上記中空シリカ粒子11を含み、且つ、屈折率が1.3以下の光学薄膜であれば、その具体的な形態は特に限定されるものではない。例えば、図1(b)に示すように、中空シリカ粒子11がバインダ12により結着された光学薄膜(中空シリカ膜)10とすることができる。当該構成を採用することにより、互いに隣接する中空シリカ粒子11同士をバインダ12により密着させると共に、中空シリカ粒子11を有機物含有層等のその下層の光学薄膜20と密着させることができる。そのため、中空シリカ粒子11の脱落のない耐久性に優れた光学薄膜10を得ることができる。
このとき、図1(b)に示すように、バインダ12により中空シリカ粒子11を結着する際に、中空シリカ粒子11の表面全面をバインダ12により薄く被覆すると共に、中空シリカ粒子11間にそれぞれ空隙部13を残した上で、当該バインダ12により隣接する中空シリカ粒子11同士を結着させることが好ましい。すなわち、中空シリカ粒子11の外側がバインダ12により薄く被覆された状態で、互いに隣接する中空シリカ粒子12の接点付近のみがバインダ12により相互に結着されていることが好ましい。当該形態によれば、互いに隣接する中空シリカ粒子11間の空隙部13をバインダ12で充填することなく、中空シリカ粒子10同士を強固に密着させることができる。さらに、中空シリカ粒子11間の空隙部13により、光学薄膜10内により多くの空気を導入することができる。そのため当該光学薄膜10の空気含有率が大きくなり、当該光学薄膜10の屈折率をより低くすることができる。このとき、粒径の均一な大きさの中空シリカ粒子11を用いれば、当該光学薄膜10内における空隙部13の大きさも略均一にすることができ、空隙部13を当該光学薄膜10内に規則的に分散配置することができる。従って、中空シリカ粒子11の表面全面をバインダ12により薄く被覆すると共に、中空シリカ粒子11間にそれぞれ空隙部13を残した上で、当該バインダ12により隣接する中空シリカ粒子11同士を結着させた光学薄膜10によれば、当該光学薄膜10内におけるナノサイズの空気の分布を精密に制御することが可能になる。
ここで、中空シリカ粒子11を結着するバインダ12としては、樹脂材料又は金属アルコキシドを採用することができる。樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、シクロオレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(登録商標)等或いはこれらの単量体化合物を挙げることができる。これらの樹脂材料は紫外線硬化性、常温硬化性、又は熱硬化性の化合物であることが好ましい。バインダ12として樹脂材料を用いる場合、次のような方法により中空シリカ膜を得ることができる。まず、中空シリカ粒子11とこれらの樹脂材料とを混合する。必要に応じて重合開始剤や架橋剤等をこの混合物に添加し、溶剤等により適切な濃度に希釈して塗工液を調製する。そして、ディップコート法、スピンコート法、スプレー法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法等の湿式法により、基材上に上記有機物含有層等を介して塗工液を適切な厚みとなるように塗布する。その後、紫外線照射、或いは熱処理を施すことなどにより重合・架橋して、溶媒を揮発させること等により当該中空シリカ膜を得ることができる。
また、金属アルコキシドとしては、当該金属アルコキシドを溶媒に溶解または懸濁して、ゾルを形成し加水分解・重合によりゲルが生成される材料であることが好ましい。例えば、アルコキシシラン又はシルセスキオキサン等の加水分解・重合によりシリカゲルが生成される材料を用いることが好ましい。バインダ12として、金属アルコキシドを用いる場合、次のような方法により中空シリカ膜を得ることができる。まず、中空シリカ粒子11と、これらの金属アルコキシドとを、溶媒に溶解又は懸濁してゾルゲル剤を調製する。そして、基材上に上記有機物含有層等を介してゾルゲル剤をスプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、フローコート法、バーコート法等の湿式法により塗布する。そして、加水分解により中空シリカ粒子11を含むゲルを作成し、溶媒を揮発させること等により、中空シリカ膜を得ることができる。
ii)多孔質シリカ膜
次に、上記空気を含有する光学薄膜として、多孔質シリカを含む膜(多孔質シリカ膜)を挙げることができる。当該多孔質シリカ膜は、多孔質シリカを含み、或いは多孔質シリカからなり、屈折率が1.30以下の光学薄膜であれば、その具体的な態様は特に限定されるものではない。例えば、多孔質シリカ粒子を含む膜、或いは、ゾルゲル法等により成膜された多孔質シリカエアロゲル膜などを挙げることができる。多孔質シリカ膜として、特に、メソ孔を多数含むメソポーラスシリカ多孔質膜を用いることが好ましい。当該メソポーラスシリカ多孔質膜とは、膜内に多数のメソ孔を備えたシリカの低密度構造体である。メソ孔とは、径が2nm〜50nm程度の細孔をいう。当該メソ孔は膜内に均一に規則正しく設けられていることが当該光学薄膜内にナノサイズの空気を規則的に分散配置させる上で好ましい。
当該多孔質シリカ膜の形態、成膜方法等は特に限定されるものではない。例えば、メソポーラスシリカ多孔質膜の場合、次のようにして成膜することができる。まず、アルコキシシランを界面活性剤、触媒等を含む溶液をエージングして、アルコキシシランを加水分解・重合させることにより多孔質シリカ粒子を含む溶液を得ることができる。その後、基材上に有機物含有層等を介して、当該多孔質シリカ粒子を含む溶液を塗布し、乾燥して溶媒を除去し、60〜150℃の温度で焼成することなどにより、多孔質シリカを含む膜を得ることができる。
iii)フッ化マグネシウム粒子膜
次に、上記空気を含有する光学薄膜として、フッ化マグネシウム粒子を含む膜(フッ化マグネシウム粒子膜)を挙げることができる。当該フッ化マグネシウム粒子は中空粒子であってもよいし、中空部を有さない微粒子であってもよい。中空粒子を用いる場合、当該フッ化マグネシウム粒子膜は上記中空シリカ膜において、中空シリカ粒子を中空フッ化マグネシウム粒子に置き換えた構成とすることができる。また、中空部を有さないフッ化マグネシウム粒子を用いる場合、互いに隣接するフッ化マグネシウム粒子間に空隙部を設けることにより屈折率が1.30以下の光学薄膜を得ることができる。フッ化マグネシウム自体の屈折率は、1.38であり、二酸化珪素と比較すると屈折率が低い。そのため、上記中空シリカ膜の場合と比較すると、光学薄膜中に導入するナノサイズの空気の量は少なくてもよい。成膜方法等は、上記中空シリカ膜と同様の方法を採用することができる
(3)低屈折率層の膜厚
当該低屈折率層は、有機物含有層と同様に、当該反射防止膜に要求される反射防止特性を実現する上で、上記位相変化が適切になるような光学膜厚であることが求められる。このとき、上記低屈折率層は中空微粒子等を含む構成であるため、低屈折率層の膜厚が薄くなりすぎると、均一な厚みで当該低屈折率層を成膜することが困難になる。また、当該低屈折率層の厚みが厚くなると、上記位相変化を適切な値とすることが困難になる。これらの理由から、当該低屈折率層の物理膜厚は、80nm以上150nm以下の範囲内であることが好ましい。
(4)低屈折率層の屈折率
低屈折率層の屈折率は、1.30以下であることが求められ、1.28以下であることがより好ましく、1.25以下であることがさらに好ましい。低屈折率層の屈折率が低い程、より反射防止性能に優れた反射防止膜を得ることができる。ここで、低屈折率層が上述した空気を含有する層である場合、空気の含有率が高いほど、その屈折率は低くなる。しかしながら、空気の含有率が高くなると、シリカ或いはフッ化マグネシウム等の層構成材料の密度が低下することから、低屈折率層の耐久性が低下する傾向にある。従って、低屈折率層の耐久性を確保するという観点から、低屈折率層が層内に空気を含有する層である場合、当該低屈折率層の屈折率は1.17以上であることが好ましく、1.19以上であることがより好ましい。より屈折率が低い低屈折率層を得るには、多孔質シリカ膜よりも、中空シリカ膜又はフッ化マグネシウム粒子膜の方が好ましい。中空シリカ粒子又はフッ化マグネシウム粒子は粒子自体に耐久性があり、層内における空気含有率が増加しても多孔質シリカ膜よりも耐久性の高い光学薄膜を得ることが容易であるためである。
(5)低屈折率層のヘイズ率
当該低屈折率層のヘイズ率は1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが好ましい。特に、撮像光学系の光学部品に当該反射防止膜を適用する場合、当該低屈折率層のヘイズ率は0.3%以下であることが好ましい。特に、撮像装置の撮像光学系を構成する光学部品において、当該反射防止膜のヘイズ率が0.3%を超えると、上記フレア等が発生するおそれがあり、好ましくない。
1−6.中間層
(1)基本構成
上述したとおり、当該反射防止膜において、有機物含有層と低屈折率層との間に一層又は二層以上の他の光学薄膜が設けられていても良い。ここでは、有機物含有層と低屈折率層との間に設けられた光学薄膜を中間層と称する。有機物含有層と低屈折率層との間に、一層又は二層以上の中間層を設けることにより、設計波長近傍の狭い波長域だけではなく、使用波長域全域等の広い波長域範囲及び広い入射角度範囲においてより良好な反射防止性能を実現することが容易になる。但し、当該反射防止膜において、有機物含有層と低屈折率層との間に介在する層であって、光学薄膜として機能する層は全て中間層と称するものとする。
(2)中間層構成材料
当該中間層は、無機材料からなる無機光学薄膜(無機層)であることが好ましく、屈折率が1.30より大きく2.50以下の光学薄膜であることがより好ましい。例えば、SiO、Alを含むSiO、Al、MgF等の中屈折率材料からなる光学薄膜、TiO、Nb、Si、LaTi、ZrTi、ZrOなどの高屈折率材料からなる光学薄膜などであることが好ましい。但し、中屈折率膜とは、屈折率が1.30より大きく1.70以下の光学薄膜をいうものとし、高屈折率膜とは、屈折率が1.70より大きく2.50以下の光学薄膜をいうものとする。但し、上記列挙した各種材料は一例であって、当該中間層は他の無機材料からなる光学薄膜であってもよい。
中間層は、ドライプロセスにより成膜された無機光学薄膜であることが好ましい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセスにより成膜された真空蒸着膜、或いは、スパッタ膜であることが好ましい。さらに、真空蒸着法において、プラズマソース或いはイオンソースを使用し、酸素ラジカル又は酸素イオンを使用したアシスト蒸着法により成膜された真空蒸着膜であることも好ましい。これらのドライプロセスにより成膜された光学薄膜により中間層を構成することにより、中間層の光学膜厚を精密に制御することが容易になる。当該反射防止膜に要求される反射防止特性を実現する上で、物理膜厚が5nm〜15nm程度の極薄い光学薄膜を成膜する必要がある。そのような場合であっても、ドライプロセスによれば、再現性よく、安定的にそのような光学薄膜を成膜することができる。但し、中間層の成膜方法はドライプロセスに限定されるものではない。
(3)中間層の積層数
本件発明に係る反射防止膜において、広い波長域範囲及び広い入射角範囲においてより良好な反射防止特性を得るためには、当該反射防止膜は一層以上の中間層を備えることが好ましく、二層以上の中間層を備えることがより好ましい。このとき、中間層はいずれも上記無機光学薄膜であることが好ましい。さらに、有機層物含有層と低屈折率層との間に、有機物含有層側から順に上記中間屈折率層と上記高屈折率層とが交互に複数層積層されていることがより好ましい。
中間層の積層数の上限値は特に限定されるものではない。当該反射防止膜の広帯域化を図る上では、中間層の積層数が多い方が好ましい。しかしながら、積層数が多くなり過ぎると、入射光の透過率が低下したり、ヘイズ率が増加するおそれが生じる。従って、中間層全体の物理膜厚等によっても異なるが、中間層の積層数は中間層全体の物理膜厚にもよるが、八層以下であることが好ましく、六層以下であることがより好ましい。
(4)中間層の膜厚
また、中間層の物理膜厚は特に限定されるものではない。各中間層の物理膜厚は、各中間層に要求される光学膜厚に適した膜厚であることが求められる。中間数の積層数が多くなると、中間層全体の物理膜厚が厚くなる。中間層全体の厚みが厚くなりすぎると、当該反射防止膜全体の応力バランスが崩れるおそれがある。その場合、有機物含有層を最下層としても、有機物含有層一層では上記熱応力を十分に緩和することができず、中間層等にクラックが生じたり、膜剥がれ等が生じるおそれがあるため好ましくない。
1−7.機能層
当該反射防止膜は、有機物含有層を最下層とし、低屈折率層を最表層とし、有機物含有層と低屈折率層との間に任意の層として中間層を備える。当該反射防止膜において、光学干渉層として機能する光学薄膜はこれらの層に限定される。しかしながら、光学干渉層として機能せず、当該反射防止膜の反射防止特性に影響を与えないが、当該反射防止膜の表面等において所定の機能を発揮する層(ここでは、「機能層」と称する。)を設けてもよい。当該機能層は、使用波長域の光線に対して透明であり、且つ、光学的に意味を成さない極めて薄い層であるものとする。例えば、当該反射防止膜の表面に、すなわち、低屈折率層の表面に、表面の硬度、耐擦傷性、耐候性、耐溶剤性、撥水性、撥油性、防曇性、親水性、耐防汚性、導電性等の各種表面特性を向上するための機能層を設けてもよい。また、当該反射防止膜と基材との間、すなわち有機物含有層の下層に、当該反射防止膜と基材との密着性を向上するための機能層(密着性向上層)を備えていてもよい。
機能層を構成する材料としては、例えば、屈折率が1.30以上2.50以下であって、使用波長域の光線に対して透明な材料を用いることができる。また、当該機能層の物理膜厚は0.1nm以上30nm以下であることが好ましい。機能層の物理膜厚が0.1nm未満であると、当該機能層に要求される各種機能を発揮することが困難になる。一方、機能層の物理膜厚が30nmを超えると、屈折率が上記範囲内であっても当該反射防止膜の反射防止特性に光学的な影響を及ぼす場合があり好ましくない。
1−8.反射防止膜全体における各層の膜厚比
上述した反射防止膜全体の応力バランスを考慮したとき、反射防止膜全体の物理膜厚は500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。このとき、反射防止膜を構成する光学干渉層の全積層数は三層以上九層以下であることが好ましい。当該光学干渉層の全積層数が三層以上であるとは、基材側から順に、有機物含有層、少なくとも一層の中間層及び低屈折率層を備えることを意味する。
このとき、当該反射防止膜全体における各層の膜厚比は次の範囲内であることが好ましい。当該反射防止膜全体の物理膜厚を100としたとき、有機物含有層の物理膜厚は3.0以上22.0以下であることが好ましく、5.0以上20.0以下であることがより好ましい。また、当該反射防止膜全体の物理膜厚を100としたとき、低屈折率層の物理膜厚は35.0以上56.0以下であることが好ましく、37.0以上52.0以下であることがより好ましい。当該反射防止膜全体の物理膜厚が上記範囲内であって、当該反射防止膜全体の物理膜厚に対する上記有機物含有層の物理膜厚が上記範囲内である場合に、反射防止膜全体の応力バランスを維持した上で、反射防止特性の良好な反射防止膜を実現することが容易になる。このとき、低屈折率層の物理膜厚の膜厚比が上記範囲内であると、中間層の物理膜厚を考慮したときに、当該反射防止膜全体の応力バランスが更に良好になる。そのため、中間層を一層以上積層した場合も、反射防止特性のより良好な反射防止膜を樹脂製の光学部品の光学面に設けることができる。
2.光学素子
本件発明に係る光学素子は、上記記載の反射防止膜を備えることを特徴とする。光学素子としては、撮像装置又は投影装置の撮像光学系又は投影光学系などを構成する各種光学素子を挙げることができる。より具体的には、レンズ、プリズム(色分解プリズム、色合成プリズム等)、偏光ビームスプリッタ(PBS)、カットフィルタ(赤外線用、紫外線用等)などを挙げることができる。特に、撮像装置として、一眼レフカメラ等のレンズ交換式撮像装置、デジタルスチルカメラ等のレンズ固定式撮像装置、或いは携帯電話等の各種携帯用電子機器に搭載される撮像装置等を挙げることができ、本件発明に係る光学素子は、これら各種撮像装置の撮像光学系を構成するレンズであることが好ましい。特に、これらのレンズであって、当該レンズ本体(光学素子本体/基材)が樹脂製であることが好ましい。
上述したとおり、本件発明に係る反射防止膜は、最下層が有機物含有層であるため、高温の熱が負荷された場合も、反射防止膜にクラックが生じたり、膜剥がれが生じたりすることを抑制することができる。そのため、当該反射防止膜を樹脂製の基材の表面に直接設けることができる。また、本件発明に係る反射防止膜は、有機物含有層と低屈折率層の少なくとも二層を備え、広い波長域範囲及び広い入射角範囲にわたって良好な反射防止性能を実現することができる。従って、上記各種撮像装置の撮像用光学系を構成するレンズに、本件発明に係る反射防止膜を適用すれば、反射光に起因するゴーストやフレア等の発生を抑制することができる。また、当該反射防止膜は、反射防止特性が極めて良好であるため、例えば、99%以上の透過率で入射光を光学素子本体に入射させることができる。
次に、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1では、表1に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズ(基材/光学素子本体)の光学面に成膜した。以下、各層の成膜方法を説明する。
(1)有機物含有層
まず、ポリカーボネート製のレンズの表面に、直流グロー放電プラズマを用いたプラズマCVD法により有機物含有層を成膜した。具体的には、当該レンズをCVD装置のチャンバー内に収容し、排気してチャンバー内を真空にした。そして、真空状態となったチャンバー内に、成膜原料ガスとして、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガス、アルゴンガス及び酸素ガスを導入し、チャンバー内で直流グロー放電プラズマを発生させることにより、レンズの表面に有機物含有層を成膜した。
当該有機物含有層の膜厚を触診式段差計で測定したところ50nmであった。また、上記と同様の方法でポリカーボネート製基材の表面に成膜した有機物含有層を赤外分光分析装置を用いて分析したところ、当該有機物含有層はSi−C伸縮振動、C−H伸縮振動、Si−O伸縮振動、Si−H伸縮振動が確認された。従って、当該有機物含有層は、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含むと共に、珪素−炭素結合、炭素−水素結合、珪素−酸素結合、珪素−水素結合を含む層であることが確認された。
(2)中間層
次に、この有機物含有層が成膜されたレンズの表面に、電子線蒸着法により中間層を成膜した。具体的には、当該レンズを、光学用蒸着装置(電子線蒸着装置)のチャンバー内に収容し、排気してチャンバー内を真空にした。そして、電子線を放出させ、上記有機物含有層の表面に、有機物含有層側から順に、中間層として物理膜厚が5nmの酸化チタン膜(TiO膜)、物理膜厚が121nmのシリカ膜を一層ずつ成膜した。
(3)低屈折率層
次に、上記有機物含有層、中間層(酸化チタン膜、シリカ膜)が成膜されたレンズの表面に、湿式法により低屈折率層を成膜した。具体的には、溶媒に中空シリカ粒子(平均粒径D50=60nm)と、バインダ成分としてのアクリル樹脂とを溶解、分散させた塗工液を調製し、当該塗工液をスピンコーター法により上記中間層の表面に塗布した。その後、クリーンオーブンにより、130℃でバインダ成分を硬化し、低屈折率層として中空シリカ膜を成膜した。当該低屈折率層の物理膜厚及び屈折率を分光エリプソンメータで測定したところ、物理膜厚は116nm、屈折率は1.20であった。なお、当該反射防止膜全体の物理膜厚を100としたときの、各層(有機物含有層、中間層全体、低屈折率層)の物理膜厚の比を表11に示す。他の実施例及び比較例についても同様である。
Figure 2017090691
実施例2では、表2に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表2に示すとおりである。表2に示すとおり、実施例2では中間層として、基材側から順に二酸化チタン膜、シリカ膜、二酸化チタン膜の3層を有機物含有層と低屈折率層との間に設けた。
Figure 2017090691
実施例3では、表3に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表3に示すとおりである。表3に示すとおり、実施例3では中間層として、シリカ膜、二酸化チタン膜、シリカ膜、二酸化チタン膜の4層を基材側から順に有機物含有層と低屈折率層との間に設けた。
Figure 2017090691
実施例4では、表4に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表4に示すとおりである。表4に示すとおり、実施例4では中空シリカ膜の屈折率が1.25になるように塗工液中のアクリル樹脂の量を増加させた。また、中間層は実施例3と同様に、シリカ膜、二酸化チタン膜、シリカ膜、二酸化チタン膜の4層を基材側から順に有機物含有層と低屈折率層との間に設けた。
Figure 2017090691
実施例5では、表5に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表5に示すとおりである。但し、フッ化マグネシウム粒子膜は、中空部を有さないフッ化マグネシウムの微粒子(平均粒径D50=30nm)を用いた以外は、中空シリカ膜と同様にして成膜した。また、中間層は実施例3と同様に、シリカ膜、二酸化チタン膜、シリカ膜、二酸化チタン膜の4層を基材側から順に有機物含有層と低屈折率層との間に設けた。
Figure 2017090691
実施例6では、表6に示す層構成を有する反射防止膜を環状オレフィン樹脂のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表6に示すとおりである。また、中間層は実施例3と同様に、シリカ膜、二酸化チタン膜、シリカ膜、二酸化チタン膜の4層を基材側から順に有機物含有層と低屈折率層との間に設けた。
Figure 2017090691
比較例
[比較例1]
比較例1では、表7に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表7に示すとおりである。但し、比較例1では、有機物含有層の物理膜厚を70nmにした。
Figure 2017090691
[比較例2]
比較例2では、表8に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表8に示すとおりである。比較例2では、本件発明にいう低屈折率層の代わりに屈折率が1.48のシリカ膜を最表層とした。
Figure 2017090691
[比較例3]
比較例3では、表9に示す層構成を有する反射防止膜をポリカーボネート製のレンズの光学面に実施例1と略同様の方法で成膜した。なお、各層の屈折率及び物理膜厚は表9に示すとおりである。但し、比較例3では、本件発明にいう有機物含有層を設けず、シリカ膜を当該反射防止膜の最下層とした。
Figure 2017090691
〈評価〉
1.評価方法
上記実施例1〜実施例6で製造した各反射防止膜と、比較例1〜比較例3の反射防止膜の反射防止特性(分光反射率)と、外観について評価した。
(1)反射防止特性
上記各反射防止膜に対する光線の入射角を0°及び60°とし、測定波長域を440nm〜700nmの範囲とし、各反射防止膜の分光反射率を測定した。分光反射率の測定に際しては、顕微分光測定器および分光エリプソメーターを使用した。
(2)外観
成膜後の上記反射防止膜の外観をそれぞれ目視により評価した。特に、当該反射防止膜に対する皺、クラックの有無、膜剥がれの有無等を評価した。
2.評価結果
(1)反射防止特性
図1〜図12にそれぞれ実施例1〜実施例6の反射防止膜の測定結果を示す。また、図13〜図18に比較例1〜比較例3の反射防止膜の測定結果を示す。また、表10に各測定波長範囲における、入射角0°の光線と、入射角60°の光線における最大反射率を示す。
図1〜図12及び表10に示すように実施例1〜実施例6の反射防止膜は、入射角0°の光線に対して極めて良好な反射防止特性を示し、当該測定波長範囲における最大反射率はいずれも1.0%以下であった。また、入射角60°の光線に対しても良好な反射防止特性を示し、当該測定波長範囲における最大反射率はいずれも7.0%以下であった。
一方、比較例1〜比較例3の反射防止膜において、本件発明にいう低屈折率層を有する比較例1及び比較例3の反射防止膜は、実施例1〜実施例6の反射防止膜と同等の良好な反射防止特性を示した。しかしながら、最表層が屈折率が1.48のシリカ膜である比較例2の反射防止膜は、入射角0°の光線に対する最大反射率が2.04%、入射角60°の光線に対する最大反射率が10.28%であり、実施例1〜実施例6の反射防止膜と比較すると、反射防止特性が低いことが確認された。
(2)外観
一方、表10に示すように実施例1〜実施例6の反射防止膜は、良好な外観を有し、各反射防止膜を構成する各層にクラック、剥がれなどが生じず、皺も観察されなかった。これに対して、比較例3の反射防止膜は、全面にクラックが観察された。比較例3の反射防止膜の最下層はシリカ層であり、当該反射防止膜は本件発明にいう有機物含有層を備えていない。このように最下層がシリカ層(無機層)の反射防止膜を樹脂製の基材の表面に直接成膜すると、中空シリカ膜を成膜する際に行った140℃の熱処理工程において、熱応力が基材と反射防止膜との間に負荷され、当該熱応力によって反射防止膜の全面にクラックが生じたと考えられる。一方、比較例1の反射防止膜は、全面に皺が観察された。比較例1の反射防止膜は本件発明にいう有機物含有層を備えている。しかしながら、当該有機物含有層の物理膜厚は70nmであり、上述した有機物含有層の好ましい物理膜厚を超えている。比較例1の反射防止膜では、中間層を4層備え、中間層全体の物理膜厚が107nmと比較的厚い。従って、有機物含有層を反射防止膜の最下層とすることにより、熱応力は緩和されクラックが生じるのを抑制することは可能であるが、中間層の物理膜厚によっては、この比較例1の場合のように、皺が観察されることが確認された。よって、有機物含有層の物理膜厚と、中間層の積層数及び物理膜厚とは、当該反射防止膜全体の応力バランスを考慮した上で、適切な厚みとすることが好ましく、上述した65nm以下とすることがより好ましい。
Figure 2017090691
Figure 2017090691
本件発明に係る反射防止膜によれば、樹脂製の光学部品の光学面に設けることができ、広い波長域範囲及び広い入射角度範囲において良好な反射防止性能を実現することができる。

Claims (15)

  1. 複数の光学薄膜が積層されてなる多層型の反射防止膜であって、
    最も基材側に設けられる光学薄膜が、珪素、酸素、炭素及び水素を構成元素として含む有機物含有層であり、
    最も表層側に設けられる光学薄膜が、屈折率が1.3以下である低屈折率層であること、
    を特徴とする反射防止膜。
  2. 前記有機物含有層は、珪素と炭素とが結合した珪素−炭素結合、及び、炭素と水素とが結合した炭素−水素結合を含む請求項1に記載の反射防止膜。
  3. 前記有機物含有層の物理膜厚が50nm以下である請求項1又は請求項2に記載の反射防止膜。
  4. 前記有機物含有層の物理膜厚が30nm以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  5. 当該反射防止膜全体の物理膜厚を100としたとき、前記有機物含有層の物理膜が3.0以上22.0以下である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  6. 当該反射防止膜全体の物理膜厚を100としたとき、前記低屈折率層の物理膜厚が35.0以上56.0以下である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  7. 前記低屈折層が、当該層内に空気を含有する空気含有層である請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  8. 前記低屈折率層が、中空シリカ粒子を含む層である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  9. 前記低屈折率層が、多孔質シリカを含む層である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  10. 前記低屈折率層が、フッ化マグネシウム粒子を含む層である請求項1から9のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  11. 前記有機物含有層と、前記低屈折率層との間に、無機材料からなる一層又は多層の光学薄膜を備える請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  12. 前記有機物含有層と、前記低屈折率層との間には、前記無機材料からなる光学薄膜以外の層を備えない請求項11に記載の反射防止膜。
  13. 前記基材が樹脂製基材である請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  14. 前記基材が、ポリカーボネート系、鎖状オレフィン系、又は環状オレフィン系樹脂製の基材である請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の反射防止膜。
  15. 樹脂製の光学素子本体の光学面に、請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の反射防止膜を直接備えることを特徴とする光学素子。
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