JP2017088984A - Ag合金膜、Ag合金膜の製造方法及びAg合金スパッタリングターゲット - Google Patents
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Abstract
【課題】500〜700℃の温度にて熱処理された後の熱伝導率が高く、表面が平坦である熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜、このAg合金膜を製造するためのAg合金膜の製造方法、及びAg合金スパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜であって、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有し、表面に、前記添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析していることを特徴とするAg合金膜。
【選択図】なし
【解決手段】熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜であって、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有し、表面に、前記添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析していることを特徴とするAg合金膜。
【選択図】なし
Description
本発明は、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜、このAg合金膜を製造するためのAg合金膜の製造方法、及びAg合金スパッタリングターゲットに関する。
ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気記録装置に用いられる記録媒体の記録方式として、熱アシスト磁気記録(HAMR)方式が検討されている。熱アシスト磁気記録方式とは、記録時に記録媒体の磁気記録層を加熱する方式である。熱アシスト磁気記録方式では、磁気記録媒体の磁気記録層を加熱することによって、磁気記録層の保磁力が低減するため、磁気記録層の材料としてFe−Pt合金のような磁気異方性の大きい磁性材料を用いることができる。磁気異方性の大きい磁性材料は、結晶粒径を微細化しても記録したデータが消失しにくく、データの保存安定性が高い。このため、熱アシスト磁気記録方式において用いる熱アシスト磁気記録媒体では、磁気記録層を構成する磁性材料の結晶粒径を微細化することができ、これによって記録容量を大きくすることが可能となる。
熱アシスト磁気記録媒体では、記録時に照射した熱が磁気記録層の面内方向に拡散したり、記録領域に滞留することによって、記録したデータの安定性が損なわれるおそれがある。そこで、記録後の磁気記録層の熱を速やかに基板方向に放出するため、磁気記録層と基板との間に熱伝導率が高い金属膜を配置することが行われている。この金属膜は、一般にヒートシンク層あるいは熱拡散制御膜と呼ばれている。
また、熱アシスト磁気記録媒体は、基板から順に各層を積層して製造するのが一般的である。このため、下層にあるヒートシンク層の表面粗さが大きいと、その表面粗さが上層にある磁気記録層等に順次反映されて、磁気記録媒体の表面粗さが大きくなる。ハードディスクドライブなどの磁気記録装置においては、磁気記録媒体の微少な領域にデータを記録させるために、磁気記録媒体と磁気ヘッドとの間の距離がナノオーダーレベルと極めて短くなっている。このため、磁気記録媒体の表面粗さが大きいと、磁気記録媒体と磁気ヘッドとが衝突し、破損する等の問題が生じる。従って、ヒートシンク層の表面粗さは極力小さくする必要がある。すなわち、ヒートシンク層は、熱伝導率が高いことに加えて、表面が平坦であることが要求される。
Agは、熱伝導率が高い金属であることから、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層の材料として注目されている。しかし、Agは再結晶温度が低いために、熱による結晶成長を生じやすい。従って、Agはスパッタ成膜時のプラズマのエネルギーによって結晶成長が生じ、これにより成膜直後において、表面粗さが大きく、膜表面の平滑性が十分でないという問題がある。このため、Ag膜に添加金属元素を添加して、表面の平坦性を向上させることが検討されている。
特許文献1には、熱アシスト記録用磁気記録媒体に用いられる熱拡散制御膜として、Ndおよび/またはYを0.05〜0.8原子%、並びにBiを0.05〜0.5原子%含有するAg合金膜が開示されている。
特許文献2には、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として、Bi、Nd、Cu、Crから成る第一添加元素群から選択された元素を1つ以上含み、さらにZn、La、Ga、Ge、Sm、Gd、Sn、Inから成る第二添加元素群から選択された元素を少なくとも1つ以上含むAg合金膜が開示されている。
上述のとおり、熱アシスト記録用磁気記録媒体において、ヒートシンク層は、熱伝導率が高く、表面が平坦であることが要求される。また、熱アシスト記録用磁気記録媒体では、磁気記録層のFe−Pt合金を規則化させるために、使用前に500〜700℃の温度にて熱処理するのが一般的である。このため、ヒートシンク層は500〜700℃の温度にて熱処理された後の熱伝導率が高く、表面が平坦であることが要求される。
特許文献1及び特許文献2に記載されている添加金属元素を、Ag膜に添加することによって、表面の平坦性は向上する。しかしながら、Ag膜に添加金属元素を添加すると、熱伝導率は低下してしまう。このため、500〜700℃の温度にて熱処理された後に、熱伝導率と表面の平坦性とをバランスよく高いレベルで満足するAg合金膜を得るのは難しい。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、500〜700℃の温度にて熱処理された後の熱伝導率が高く、表面が平坦である熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜、このAg合金膜を製造するためのAg合金膜の製造方法、及びAg合金スパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のAg合金膜は、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜であって、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有し、表面に、前記添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析していることを特徴としている。
このAg合金膜は、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、表面に、前記添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析しているので、Agが有する高い熱伝導率を維持しつつ、表面粗さRa(平均表面粗さ)が低く、表面の平坦性に優れたものとなる。Ag合金膜の表面の平坦性に優れたものとなる理由としては、成膜直後はAg合金膜に添加した添加金属元素が酸素と結合した状態で存在することによって、Agの粒成長を抑制されるとともに、熱処理時には酸素と結合した状態の添加金属元素が表面に偏析することによって、表面の平滑性が熱により低下することが抑制されるためであると考えられる。また、熱伝導率が維持される理由としては、Ag合金膜の熱伝導性を低下させる要因となる添加金属元素が、酸素と結合した状態で表面に偏析することによって、Ag合金膜内の添加金属元素量が減少するためであると考えられる。
ここで、本発明のAg合金膜においては、膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあり、表面粗さRaが0.4nm以下であり、熱伝導率が100W/m・K以上であることが好ましい。
この場合、膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあるので熱容量が高く、熱伝導率が100W/m・K以上と高いので、記録時に照射された熱を速やかに基板方向に放射できる。また、表面粗さRaが0.4nmと低いので、熱アシスト磁気記録媒体の平坦性を実用上問題ないレベルに維持できる、従って、高記録容量の熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として好適に用いることができる。
この場合、膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあるので熱容量が高く、熱伝導率が100W/m・K以上と高いので、記録時に照射された熱を速やかに基板方向に放射できる。また、表面粗さRaが0.4nmと低いので、熱アシスト磁気記録媒体の平坦性を実用上問題ないレベルに維持できる、従って、高記録容量の熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として好適に用いることができる。
本発明のAg合金膜の製造方法は、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有するAg合金スパッタリングターゲットを用いて、Arと酸素とを体積比で99:1〜80:20の範囲にて含む混合ガス雰囲気にてスパッタリングを行うことによってAg合金膜を成膜するスパッタリング工程と、前記Ag合金膜を500℃以上700℃以下の温度にて熱処理する熱処理工程とを含むことを特徴としている。
このAg合金の製造方法によれば、スパッタリング工程において、Arと酸素とを体積比で99:1〜80:20の範囲にて含む混合ガス雰囲気にてスパッタリングを行うので、Ag合金スパッタリングターゲットに添加されている添加金属元素を酸素と結合した状態でAg合金膜に取り込ませることができる。酸素と結合した添加金属元素はAgの結晶内に溶解しにくいため、熱処理工程によってAg合金膜の表面に偏析する。従って、本発明のAg合金膜の製造方法によれば、表面に、添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析しているAg合金膜を得ることができる。
本発明のAg合金スパッタリングターゲットは、前記Ag合金膜の製造に用いるためのAg合金スパッタリングターゲットであって、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴としている。
このAg合金スパッタリングターゲットによれば、Arと酸素とを体積比で99:1〜80:20の範囲にて含む混合ガス雰囲気にてスパッタリングを行うことによって、添加金属元素が酸素と結合した状態で存在するAg合金膜を成膜することができる。
本発明によれば、500〜700℃の温度にて熱処理された後の熱伝導率が高く、表面が平坦である熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜、このAg合金膜を製造するためのAg合金膜の製造方法、及びAg合金スパッタリングターゲットを提供することが可能となる。
以下に、本発明の一実施形態であるAg合金膜、Ag合金膜の製造方法及びAg合金スパッタリングターゲットについて説明する。
本実施形態であるAg合金膜は、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのものである。
熱アシスト磁気記録録媒体は、一般に、基板/ヒートシンク層/配向制御層/磁気記録層/保護層からなる積層体である。配向制御層は、磁気記録層に含まれるFe−Pt合金などの磁性材料の結晶粒径や配向性を調整するための層である。基板とヒートシンク層との間には、非晶質下地層が介在していてもよい。
熱アシスト磁気記録録媒体は、一般に、基板/ヒートシンク層/配向制御層/磁気記録層/保護層からなる積層体である。配向制御層は、磁気記録層に含まれるFe−Pt合金などの磁性材料の結晶粒径や配向性を調整するための層である。基板とヒートシンク層との間には、非晶質下地層が介在していてもよい。
本実施形態であるAg合金膜は、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有する。本実施形態のAg合金膜において、添加金属元素は酸素と結合した状態で表面に偏析している。熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いられているAg合金膜において、添加金属元素が酸素と結合した状態で表面に偏析していることは、X線光電子分光(XPS)法により、深さ方向の元素分布と、添加金属元素の化学状態を分析することによって確認することができる。
In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgなどの添加金属元素は、Ag合金膜の表面の平坦性を向上させる作用効果を有する金属元素である。添加金属元素は、成膜直後はAg合金膜の膜内に添加金属元素が合金元素として酸素と結合した状態で存在する。この酸素と結合した合金元素がAg合金膜の膜内に存在することによって、Agの粒成長が抑制される。そして、熱処理時には添加金属元素が酸素と結合した状態で表面に偏析することによって、表面の平滑性が熱により低下することが抑制される。
ここで、Ag合金膜において添加される添加金属元素の含有量が1原子%未満の場合には、上述の作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、添加金属元素の含有量が6原子%を超える場合には、Ag合金膜の熱伝導率が許容範囲を超えて低下するおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、Ag合金膜における添加金属元素の含有量を1原子%以上6原子%以下、さらに好ましくは2原子%以上5原子%以下の範囲内に設定している。添加金属元素は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組合せて使用してもよい。
このような理由から、本実施形態では、Ag合金膜における添加金属元素の含有量を1原子%以上6原子%以下、さらに好ましくは2原子%以上5原子%以下の範囲内に設定している。添加金属元素は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組合せて使用してもよい。
本実施形態であるAg合金膜は、膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあり、表面粗さRaが0.4nm以下であり、熱伝導率が100W/m・K以上である。
このAg合金膜は、膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあるので、熱容量が高く、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いた場合に記録時に照射された熱を吸収することができる。また、熱伝導率が100W/m・K以上と高いので、記録時に照射された熱を速やかに基板方向に放射できる。さらに、表面粗さRaが0.4nmと低いので、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いた場合でも、熱アシスト磁気記録媒体の平坦性を実用上問題ないレベルに維持できる。このため、本実施形態のAg合金膜は、高記録容量の熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として好適に用いることができる。
このAg合金膜は、膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあるので、熱容量が高く、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いた場合に記録時に照射された熱を吸収することができる。また、熱伝導率が100W/m・K以上と高いので、記録時に照射された熱を速やかに基板方向に放射できる。さらに、表面粗さRaが0.4nmと低いので、熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いた場合でも、熱アシスト磁気記録媒体の平坦性を実用上問題ないレベルに維持できる。このため、本実施形態のAg合金膜は、高記録容量の熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として好適に用いることができる。
次に、本実施形態であるAg合金膜の製造方法について説明する。本実施形態であるAg合金膜の製造方法は、スパッタリング工程と熱処理工程とを含む。スパッタリング工程は、Ag合金スパッタリングターゲットを用いて、Arと酸素とを体積比で99:1〜80:20、更に好ましくは99:1〜90:10の範囲にて含む混合ガス雰囲気にてスパッタリングを行うことによってAg合金膜を成膜する工程である。熱処理工程は、Ag合金膜を500℃以上700℃以下の温度にて熱処理する工程である。
Ag合金スパッタリングターゲットは、不可避不純物のうち、酸素の含有量は50質量ppm以下であることが好ましい。また、Fe、Pb、Biの含有量は30質量ppm以下であることが好ましい。
Ag合金スパッタリングターゲットは、スパッタ面における平均結晶粒径が250μm以下であることが好ましい。平均結晶粒径が250μmを超えると、Ag合金の結晶間に大きな空孔が形成されて、スパッタ面の凹凸が大きくなり、スパッタリングによる成膜時の異常放電が発生し易くなるおそれがある。平均結晶粒径は150μm以下であれば更に好ましい。
本実施形態であるAg合金膜の製造方法において、スパッタリング工程では、上述のAg合金スパッタリングターゲットを用いて、スパッタリングを行うことによってAg合金膜を成膜する。スパッタ装置としては、マグネトロンスパッタ方式のスパッタ装置を用いることができる。スパッタ装置の電源としては、直流(DC)電源、高周波(RF)電源、中周波(MF)電源、交流(AC)電源のいずれも選択可能である。
本実施形態では、スパッタ装置にスパッタガスとしてArと酸素とを含む混合ガスを供給して、その混合ガス雰囲気にてスパッタリングを行う。スパッタリングで使用するスパッタガスに少量の酸素を加えることによって、添加金属元素が酸素と結合した状態でAg合金膜内に取り込まれることになる。
ここで、スパッタガスの酸素の含有量が少なくなりすぎると、酸素と結合した状態でAg合金膜内に取り込まれる合金元素の量が少なり、Ag合金膜の熱伝導性と表面の平坦性との改善効果が低下するおそれがある。一方、スパッタガスの酸素の含有量が多くなりすぎると、過剰の酸素がAg合金膜内に取り込まれて、Agが酸化しAg合金膜の熱伝導性が低下するおそれがある。
このため、本実施形態では、スパッタガスのArと酸素の割合は、体積比で99:1〜80:20の範囲に設定している。
ここで、スパッタガスの酸素の含有量が少なくなりすぎると、酸素と結合した状態でAg合金膜内に取り込まれる合金元素の量が少なり、Ag合金膜の熱伝導性と表面の平坦性との改善効果が低下するおそれがある。一方、スパッタガスの酸素の含有量が多くなりすぎると、過剰の酸素がAg合金膜内に取り込まれて、Agが酸化しAg合金膜の熱伝導性が低下するおそれがある。
このため、本実施形態では、スパッタガスのArと酸素の割合は、体積比で99:1〜80:20の範囲に設定している。
本実施形態であるAg合金膜の製造方法において、熱処理工程では、Ag合金膜を500℃以上700℃以下の温度にて熱処理する。この熱処理工程によって、酸素と結合した合金元素がAg合金膜の表面に偏析する。これによって、Ag合金膜の熱伝導性を低下させる要因となる添加金属元素が、合金元素として酸素と結合した状態で表面に偏析するので、Ag合金膜内の熱伝導性が向上する。Ag合金膜(ヒートシンク層)の上に、磁気記録層を積層した後に行うことが好ましい。これによって、記録層のFe−Pt合金の規則化を同時に行えるためである。
<Ag合金スパッタリングターゲット>
(Ag合金スパッタリングターゲットの製造)
純度99.99%以上のAg、純度99.9%以上のIn、Sn、Ga、Cu、Al、Ti、Mgの金属原料を準備した。準備した各金属原料を表1に示す組成になるように秤量した。次に、秤量した各金属原料を、大気中で1100℃にて溶解、鋳造を行って、約100mm×135mm×35mmのAg合金素材を得た。
(Ag合金スパッタリングターゲットの製造)
純度99.99%以上のAg、純度99.9%以上のIn、Sn、Ga、Cu、Al、Ti、Mgの金属原料を準備した。準備した各金属原料を表1に示す組成になるように秤量した。次に、秤量した各金属原料を、大気中で1100℃にて溶解、鋳造を行って、約100mm×135mm×35mmのAg合金素材を得た。
次いで、得られたAg合金素材に対して、冷間圧延を行った。その後、大気中にて650℃で1時間の熱処理を施し、水冷して約200mm×250mm×9mmの板材に成形した。
板材に成形したAg合金素材を機械加工し、直径152.4mm、厚さ6mmのAg合金スパッタリングターゲットを得た。
本発明例1〜19及び比較例1〜4にて製造したAg合金スパッタリングターゲットについて、樹脂埋め、研磨、粒界エッチングを施したターゲットのスパッタ面について光学顕微鏡にて対物10倍、接眼10倍の倍率で写真撮影を行い、この写真からJIS G0551に記載の切断法によりターゲットスパッタ面の平均結晶径を測定した。その結果、全てのAg合金スパッタリングターゲットにおいて、スパッタ面の平均結晶粒径は約120μmであった。
また、本発明例1〜19及び比較例1〜4にて製造したAg合金スパッタリングターゲットについて、不純物含有量をICP発光分光法により測定した。その結果、全てのAg合金スパッタリングターゲットにおいて、酸素は40質量ppm以下であった。また、金属不純物については、Fe、Pb、Biはいずれも10質量ppm以下であった。
<Ag合金膜>
(Ag合金膜の成膜と組成の分析)
上記本発明例1〜19及び比較例1〜4にて製造したAg合金スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレート材にはんだ付けし、これをスパッタ装置(ULVAC社製 SIH−450H)に装着した。そして、表2、3に示す通り条件にてガラス基板上に、厚さ5μmのAg合金膜を成膜し、そのAg合金膜の組成をICP発光分光分析法にて分析した。その結果を表3に示す。
(Ag合金膜の成膜と組成の分析)
上記本発明例1〜19及び比較例1〜4にて製造したAg合金スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレート材にはんだ付けし、これをスパッタ装置(ULVAC社製 SIH−450H)に装着した。そして、表2、3に示す通り条件にてガラス基板上に、厚さ5μmのAg合金膜を成膜し、そのAg合金膜の組成をICP発光分光分析法にて分析した。その結果を表3に示す。
(Ta膜/Ag合金膜/Al2O3膜からなる積層体の作製)
上記本発明例1〜19及び比較例1〜4にて製造したAg合金スパッタリングターゲット、及び市販されている同じサイズのTaターゲット、Al2O3ターゲットをスパッタ装置(ULVAC社製 SIH−450H)に装着した。Ag合金スパッタリングターゲットは、無酸素銅製のバッキングプレート材にはんだ付けしてからスパッタ装置に装着した。そして、表面に厚さ100nmのSiO2層を有するSiウェーハ(基板)上に、Ta膜を5nm、Ag合金膜を50nm、Al2O3膜を10nmの厚さでこの順番に成膜した3層の積層構造を有する積層体を得た。この積層体のTa膜は、熱アシスト磁気記録方式用の磁気記録媒体の非晶質下地層に、Al2O3膜は、熱アシスト磁気記録方式用の磁気記録媒体の配向制御層に相当する層として、実験的に用いている。なお、各膜の成膜条件は表2、3に示す通りである。また、それぞれのターゲットは成膜前に表2の条件にて、成膜用の基板をセットしないプレスパッタリングを60分間実施し、ターゲット表面の機械加工層を十分に除去した。
上記本発明例1〜19及び比較例1〜4にて製造したAg合金スパッタリングターゲット、及び市販されている同じサイズのTaターゲット、Al2O3ターゲットをスパッタ装置(ULVAC社製 SIH−450H)に装着した。Ag合金スパッタリングターゲットは、無酸素銅製のバッキングプレート材にはんだ付けしてからスパッタ装置に装着した。そして、表面に厚さ100nmのSiO2層を有するSiウェーハ(基板)上に、Ta膜を5nm、Ag合金膜を50nm、Al2O3膜を10nmの厚さでこの順番に成膜した3層の積層構造を有する積層体を得た。この積層体のTa膜は、熱アシスト磁気記録方式用の磁気記録媒体の非晶質下地層に、Al2O3膜は、熱アシスト磁気記録方式用の磁気記録媒体の配向制御層に相当する層として、実験的に用いている。なお、各膜の成膜条件は表2、3に示す通りである。また、それぞれのターゲットは成膜前に表2の条件にて、成膜用の基板をセットしないプレスパッタリングを60分間実施し、ターゲット表面の機械加工層を十分に除去した。
(熱伝導率の測定)
積層体の電気伝導率を四探針法により測定した。得られた電気伝導率を、下記のWiedemann−Franz則の式を用いて熱伝導率に換算した。下記の式において、Kは熱伝導率、σは電気伝導率、kBはボルツマン定数、eは電荷素量、Tは温度である。得られた成膜直後の熱伝導率を、表3に示す。
積層体の電気伝導率を四探針法により測定した。得られた電気伝導率を、下記のWiedemann−Franz則の式を用いて熱伝導率に換算した。下記の式において、Kは熱伝導率、σは電気伝導率、kBはボルツマン定数、eは電荷素量、Tは温度である。得られた成膜直後の熱伝導率を、表3に示す。
なお、積層体の最表面は絶縁体のAl2O3膜であり、Ag合金膜の下層はTa膜であるが、Ag合金膜の電気抵抗は他の膜と比べて十分低いと考えられるため、測定した電気伝導率はほぼAg合金層の電気伝導率を反映していると考えられる。
(表面粗さRa)
積層体の表面粗さRaを、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製 SPI3800N)により測定した。なお、Ta膜、Al2O3膜単独の表面粗さRaは約0.1nmであることを確認しており、今回得られた0.2nmを超える表面粗さRaについてはほぼAg合金に起因する表面粗さRaであると判断した。得られた成膜直後の表面粗さRaを、表3に示す。
積層体の表面粗さRaを、原子間力顕微鏡(セイコーインスツルメンツ社製 SPI3800N)により測定した。なお、Ta膜、Al2O3膜単独の表面粗さRaは約0.1nmであることを確認しており、今回得られた0.2nmを超える表面粗さRaについてはほぼAg合金に起因する表面粗さRaであると判断した。得られた成膜直後の表面粗さRaを、表3に示す。
(熱処理後の熱伝導率と表面粗さRa)
積層体を、600℃の温度で熱処理した。熱処理は、窒素雰囲気中で、1℃/秒の速度にて600℃まで昇温し、600℃の温度で1分間保持した後、室温まで放冷することによって行った。
熱処理後の積層体について、熱伝導率と表面粗さとを上記の方法を用いて測定した。得られた熱処理後の熱伝導率と表面粗さを、表3に示す。
積層体を、600℃の温度で熱処理した。熱処理は、窒素雰囲気中で、1℃/秒の速度にて600℃まで昇温し、600℃の温度で1分間保持した後、室温まで放冷することによって行った。
熱処理後の積層体について、熱伝導率と表面粗さとを上記の方法を用いて測定した。得られた熱処理後の熱伝導率と表面粗さを、表3に示す。
(熱処理後のAg合金膜の合金元素の偏析と合金元素と酸素の結合の有無)
熱処理後の積層体についてX線光電子分光(XPS)法により、深さ方向の元素分布を測定し、Ag合金膜中の添加金属元素がAl2O3膜との界面側に偏析しているかどうかを確認した。使用したXPS装置はアルバックファイ社製ESCA5600LSであり、使用したX線種はAl−Kαである。その結果を表3に添加金属元素の偏析の有無として示す。偏析の有無ついては深さ方向の元素分布分析結果にてAg合金膜の表面側(Al2O3膜側)で、Ta膜側あるいはAg合金膜内部に比べて合金元素が濃縮していることを判断基準とした。また偏析している添加金属元素の化学状態を分析し、添加金属元素が酸素と結合しているかどうかを、光電子の束縛エネルギーのスペクトルを測定し、酸素が検出され、かつ各添加元素のピーク位置が金属状態の基準ピーク位置より高エネルギー側にシフトしていることをもって確認した。その結果を表3に添加金属元素と酸素の結合の有無として示す。なおXPS測定の際はAgのピーク位置でエネルギー補正を行った。
熱処理後の積層体についてX線光電子分光(XPS)法により、深さ方向の元素分布を測定し、Ag合金膜中の添加金属元素がAl2O3膜との界面側に偏析しているかどうかを確認した。使用したXPS装置はアルバックファイ社製ESCA5600LSであり、使用したX線種はAl−Kαである。その結果を表3に添加金属元素の偏析の有無として示す。偏析の有無ついては深さ方向の元素分布分析結果にてAg合金膜の表面側(Al2O3膜側)で、Ta膜側あるいはAg合金膜内部に比べて合金元素が濃縮していることを判断基準とした。また偏析している添加金属元素の化学状態を分析し、添加金属元素が酸素と結合しているかどうかを、光電子の束縛エネルギーのスペクトルを測定し、酸素が検出され、かつ各添加元素のピーク位置が金属状態の基準ピーク位置より高エネルギー側にシフトしていることをもって確認した。その結果を表3に添加金属元素と酸素の結合の有無として示す。なおXPS測定の際はAgのピーク位置でエネルギー補正を行った。
添加金属元素(In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti、Mg)の含有量が本発明の範囲内にあるAg合金スパッタリングターゲットを用いて、Arと酸素との比率が本発明の範囲内にあるスパッタガスの雰囲気中にてスパッタリングを行うことによって成膜したAg合金膜を、本発明の範囲内の温度にて熱処理することによって製造した本発明例1〜19のAg合金膜は、表面に添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析していることが確認された。また、本発明例1〜19のAg合金膜は、成膜後及び熱処理後の熱伝導率、成膜後及び熱処理後の表面粗さRaがバランスよく優れていることが確認された。
一方、比較例1のAg合金膜は、添加金属元素(Sn)の含有量が、本発明の範囲よりも少ないAg合金スパッタリングターゲットを用いて製造したものである。このAg合金膜は、表面粗さRaが大きくなった。
比較例2のAg合金膜は、添加金属元素(Sn)の含有量が、本発明の範囲よりも多いAg合金スパッタリングターゲットを用いて製造したものである。このAg合金膜は、熱伝導率が低かった。
比較例2のAg合金膜は、添加金属元素(Sn)の含有量が、本発明の範囲よりも多いAg合金スパッタリングターゲットを用いて製造したものである。このAg合金膜は、熱伝導率が低かった。
比較例3のAg合金膜は、添加金属元素(Sn)の含有量が、本発明の範囲内にあるAg合金スパッタリングターゲットを用い、酸素を含まないスパッタガスの雰囲気中にてスパッタリングを行うことによって成膜したものである。このAg合金膜は、表面に添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析しておらず、また熱伝導率が低かった。
比較例4のAg合金膜は、添加金属元素(Sn)の含有量が、本発明の範囲内にあるAg合金スパッタリングターゲットを用い、本発明の範囲よりも酸素を多量に含むスパッタガスの雰囲気中にてスパッタリングを行うことによって成膜したものである。このAg合金膜は、熱伝導率が低かった。
Claims (4)
- 熱アシスト磁気記録媒体のヒートシンク層として用いるためのAg合金膜であって、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有し、表面に、前記添加金属元素が酸素と結合した状態で偏析していることを特徴とするAg合金膜。
- 膜厚が20nm以上200nm以下の範囲にあり、表面粗さRaが0.4nm以下であり、熱伝導率が100W/m・K以上であることを特徴とする請求項1に記載のAg合金膜。
- In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有するAg合金スパッタリングターゲットを用いて、Arと酸素とを体積比で99:1〜80:20の範囲にて含む混合ガス雰囲気にてスパッタリングを行うことによってAg合金膜を成膜するスパッタリング工程と、前記Ag合金膜を500℃以上700℃以下の温度にて熱処理する熱処理工程とを含むことを特徴とする請求項1に記載のAg合金膜の製造方法。
- 請求項1に記載のAg合金膜の製造に用いるためのAg合金スパッタリングターゲットであって、In、Sn、Ga、Cu、Al、Ti及びMgからなる群より選ばれる一種又は二種以上の添加金属元素を合計で1原子%以上、6原子%以下の範囲にて含有し、残部がAg及び不可避不純物からなる組成を有することを特徴とするAg合金スパッタリングターゲット。
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2015
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