JP6108201B2 - 熱アシスト磁気記録媒体用ヒートシンク層 - Google Patents
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しかし、記録層の結晶粒径を微細にすると、磁気的に記録したデータが周囲の熱の影響で消える熱揺らぎの問題がある。これを防止するために、記録層に磁気異方性エネルギーが高い材料を用いればよいが、ヘッドの書き込み磁界の限界を超えてしまうために、記録が困難になるといった新たな問題が発生する。これらの問題を解決する方式として、熱アシスト磁気記録方式が提案されている。(例えば、特許文献1)
熱アシスト磁気記録方式では、記録層5にFe−PtやCo−Pt等の磁気異方性エネルギーが高い材料が用いられる。上述したように、磁気異方性エネルギーが高い場合は、ヘッドの書き込み磁界の制約があるため、情報の書き込みの際には記録層5を瞬間的に加熱して保磁力を低下させ、この間にヘッドから記録磁界を印加して情報を書き込み記録する。この方式を実現するためには、書き込んだ情報を失わないようにするため、書き込み後は加熱した記録層5から熱を奪って速やかに冷却し、一旦低下した保磁力を高めなければならない。そのために、熱アシスト磁気記録媒体にはヒートシンク層2が形成されている。
しかし、Cu膜をヒートシンク層として使用した場合は、Cu膜の粗大な結晶粒により膜の表面粗さが増大し、ヒートシンク層上に配置される記録層がヒートシンク層の凹凸に追従して形成され、信号のノイズが大きくなるという問題が生じる場合がある。また、Cu膜は柔らかいために、記録や再生時における機械的強度が不足している問題がある。この問題を解決するために、Cuに0.1〜1原子%のZrを添加したヒートシンク層が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明の目的は、平滑性に加え、さらに耐食性を兼備した熱アシスト磁気記録媒体用ヒートシンク層を提供することにある。
すなわち、本発明は、原子比における組成式がCu100−x−Tix、0.1≦x≦10.0で表され、残部が不可避的不純物でなる熱アシスト磁気記録媒体用ヒートシンク層である。
また、前記Tiの50原子%以下をZrで置換することもできる。
本発明におけるヒートシンク層は、Cuを主成分とする。その理由は、Cuは熱伝導率が高く安価であり、比較的入手しやすいからである。熱伝導率が高い金属元素としてAu、AgやAlがあるが、AuおよびAgは高価である上、入手が困難である。また、Alは融点が660℃と低く、熱アシスト磁気記録媒体の製造プロセス中の加熱により溶融したり、加熱により結晶化して表面粗さが大きくなったりする可能性がある。尚、熱アシスト磁気記録媒体の製造プロセス温度は、例えば、J.Vac.Sci.Tecnol.A27(4)Jul/Aug(2009)では、およそ700℃と記載されている。そのため、本発明では、融点がこれよりも高いCuをヒートシンク層の主成分とした。
一方、Tiの添加量の下限値は、0.1原子%とした。これは、Tiの添加量が0.1原子%未満であると、熱伝導率は増加するものの、ヒートシンク層の結晶粒の粗大化を防ぐ効果が少なく、表面粗さが大きくなりやすいからである。したがって、本発明におけるTiの添加量の範囲は、0.1〜10.0原子%とした。
しかし、TiをZrで置換する場合は、耐食性を著しく損なわない範囲にする必要がある。Cuに添加するTiの添加量の50原子%を超える量をZrで置換した場合は、従来技術に係るヒートシンク層と同様に耐食性が著しく劣化する。そのため、本発明ではTiを置換するZrの量は、Tiの添加量の50原子%以下の範囲で適宜調整できる。
上記で作製したターゲット材をキャノンアネルバ株式会社製のDCマグネトロンスパッタ装置(型式番号:C−3010)のチャンバ内に配置し、チャンバ内を真空到達度2×10−5Pa以下となるまで排気を行った後、寸法50mm×25mmのガラス基板上にArガス圧0.6Pa、投入電力500Wの条件にて膜厚100nmのヒートシンク層を形成した。
(1)耐食性
ヒートシンク層を形成したガラス基板を1.0体積%硝酸水溶液に30分間浸漬し、浸漬後の硝酸水溶液中におけるTiまたはZrの溶出量をICP発行分析法により測定した。
(2)表面粗さ
ヒートシンク層表面において、測定長さ300nmの範囲で、JIS B 0601−2001で規定される算術平均粗さ(Ra)を株式会社キーエンス製の原子間力顕微鏡(AFM)(型番:VN−8010)により測定した。各測定結果を表1に示す。
成膜用の基板には2.5インチのガラス基板を用い、先ず、室温にて膜厚20nmの下地層(Ni−37.5Ta原子%)を形成し、次いで、下地層上に100nmのヒートシンク層を形成した。次に、各試料をスパッタ装置内で、赤外線ランプヒーターにより660℃の真空加熱処理を行った。
上記で作製した、各ヒートシンク層について以下の評価を行った。
HYSITRON社製のナノインデンターを用いて、ヒートシンク層に圧子を100μNの荷重で押し当て、圧子がヒートシンク層の表面から内部へ到達した深さを測定した。尚、圧子がヒートシンク層内部への到達深さが小さい程、ヒートシンク層が硬いことを意味する。
(2)耐食性
ヒートシンク層を形成したガラス基板を0.5体積%硝酸水溶液に90秒間浸漬し、浸漬後の硝酸水溶液中におけるCu、TiおよびZrの合計溶出量をICP発行分析法により測定した。
(3)表面粗さ
セイコーインスツル株式会社製の原子間力顕微鏡(AFM)(型番:SPA300)により、測定面積500nm2の範囲で、JIS B 0601−2001で規定される算術平均粗さ(Ra)を測定した。尚、算術平均粗さ(Ra)の測定は1試料につき3点測定し、その平均値を採用した。
(4)熱伝導率
スパッタ装置およびスパッタ条件を上記(1)〜(3)で行った条件と同様にして、上述のNi−37.5原子%Ta下地膜形成を行わずに、2.5インチのガラス基板上に100nmのヒートシンク層を室温にて成膜した。次に、各試料を真空炉内で660℃の真空加熱処理を行い、熱伝導率評価用の試料を作製した。
得られた各試料の比抵抗を4探針法により室温にて測定し、Wiedemann−Franz則により熱伝導率を算出した。測定結果を表2に示す。
また、本発明のヒートシンク層の表面粗さ(Ra)は、比較例よりも小さいことから、表面平滑性に優れていることが確認できた。また、本発明のヒートシンク層の熱伝導率は、比較例と同等で、高い熱伝導率を有していることが確認できた。
上記で作製した各スパッタリングターゲット材を用い、実施例2に記載の(2)〜(4)と同一の条件にて、耐食性、表面粗さ、熱伝導率の評価を行った。測定結果を表3に示す。
また、Cuに特定量のTiおよびZrを複合添加した本発明のヒートシンク層は、Tiの50原子%以下をZrで置換することにより、少ないTi量でも耐食性が向上し、優れた表面平滑性と高い熱伝導率を有していることが確認できた。
2 ヒートシンク層
3 軟磁性裏打ち層
4 配向制御層
5 記録層
6 保護層
Claims (2)
- 原子比における組成式がCu100−x−Tix、0.1≦x≦2.0で表され、残部が不可避的不純物でなることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体用ヒートシンク層。
- 前記Tiの50原子%以下をZrで置換することを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気記録媒体用ヒートシンク層。
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