JP2017087372A - ワークの研削方法及び研削装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】基礎軸部の中心線をワークの回転軸に一致させる心出し作業を省略する。【解決手段】ワーク10における偏心軸部の外周部を研削するためのワークの研削方法において、偏心軸部の外周部の研削に先立って、外径dM.1が既知の第一マスターバー21をV受けチャック110に保持させてワーク10の回転軸LSに対する第一マスターバー21の偏心距離aM.1を測定する第一マスターバー測定工程と、基礎軸部11の外径dP.1、第一マスターバー21の外径dM.1、及び、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1に基づいて、軸LSに対する基礎軸部11の偏心距離aP.1を算出する基礎軸部偏心距離算出工程とを行っておき、偏心軸部の外周部の研削を行う際に、基礎軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.1に応じて砥石を周期的に進退動させるようにした。【選択図】 図9

Description

本発明は、ワークにおける偏心軸部の外周部を研削するためのワークの研削方法と、当該研削方法を実行するためのワークの研削装置とに関する。
図1に示すように、基礎軸部11と、基礎軸部11から偏心して設けられた偏心軸部12とを有する偏心ピン10は、エア・コンディショナーの圧縮機等、各種の装置に組み込まれている。この種の偏心ピン10には、高い寸法精度が要求される。このため、この種の偏心ピン10を加工する際には、凡その寸法に粗加工された偏心ピン10における基礎軸部11や偏心軸部12の外周部を研削して、偏心ピン10の各寸法を許容誤差の範囲内に収めることが行われている。
基礎軸部11と偏心軸部12の研削は、1回のセッティングで同時に行う場合もあるが、まず基礎軸部11を研削してから、基礎軸部11を基準として偏心軸部12を研削することが多い。基礎軸部11を基準として偏心軸部12を研削する装置(研削装置)としては、例えば、図2に示すように、軸Lを中心とする周回方向Aに回転可能な状態で支持されたV受けチャック110と、軸Lに交差する方向A(軸Lに非平行な方向)に進退動可能な砥石120とを備えたものが知られている。V受けチャック110は、V溝111aが形成されたVブロック111を有している。V溝111aは、図3に示すように、偏心ピン10の基礎軸部11を保持するための部分となっている。砥石120は、通常、円盤状に形成されており、その中心線Lを軸として回転可能(図中の矢印Aを参照。)となっている。特許文献1,2にも、図2に示す装置と同様の構造を有する装置が記載されている。
図2に示す研削装置100は、図3に示すように、V受けチャック110に偏心ピン10の基礎軸部11を保持させて、偏心軸部12の外周部に砥石120を当て、軸Lに交差する方向Aに砥石120を周期的に進退動させながら、偏心ピン10をV受けチャック110とともに周回方向Aに回転させることによって、偏心軸部12の外周部を研削するものとなっている。この種の研削装置100は、偏心軸部12の偏心量(軸Lに対する偏心軸部12の中心線LP.2(図1)の偏心距離)や、偏心軸部12の変位角度(基礎軸部11の中心線LP.1(図1)と偏心軸部12の中心線LP.2(図1)とを含む平面が、基礎軸部11の中心線LP.1を含む所定の基準面に対して為す角度。図12における変位角度φに相当。)等のパラメータを入力する仕様となっており、その入力されたパラメータに基づいて、砥石120を周期的に進退動させるようになっている。
ところが、上記の研削装置100で偏心軸部12を研削する際には、基礎軸部11の中心線LP.1(図1)が軸Lに一致するように正確に心出しを行う必要があった。この心出し作業は、例えば、V受けチャック110におけるVブロック111の下側に配されたスペーサーブロック112の厚さ(図中のy軸方向での厚み)を調節し、Vブロック111を支持する高さ(図中のy軸方向での高さ)を変更することによって行われる。ところが、スペーサーブロック112の厚さを調節する作業は、通常、スペーサーブロック112を削ったり、スペーサーブロック112を交換したりすることによって行うため、多大な時間と手間を要するものとなっていた。
特開2001−212746号公報 特開2003−094288号公報
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、基礎軸部と偏心軸部とを有するワークにおける基礎軸部を基準として偏心軸部の外周部を研削するワークの研削方法でありながら、基礎軸部の中心線をワークの回転軸に一致させる心出し作業を行う必要のない方法を提供することを目的とする。また、本発明のワークの研削方法を実行するためのワークの研削装置を提供することも本発明の目的である。
上記課題は、
基礎軸部と基礎軸部から偏心して設けられた偏心軸部とを有するワークにおける偏心軸部の外周部を研削するためのワークの研削方法であって、
軸Lを中心として回転可能な状態で支持されたV受けチャックにワークの基礎軸部を保持させ、基礎軸部の中心線LP.1を軸Lに対して平行に保ち、偏心軸部の外周部に当てた砥石を軸Lに交差する方向に周期的に進退動させながら、ワークをV受けチャックとともに軸Lを中心として回転させることによって、偏心軸部の外周部を研削するようにするとともに、
偏心軸部の外周部の研削に先立って、
外径dM.1が既知の第一マスターバーをV受けチャックに保持させ、軸Lに対する第一マスターバーの中心線LM.1の偏心距離aM.1を測定する第一マスターバー測定工程と、
少なくとも、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1とに基づいて、軸Lに対する中心線LP.1の偏心距離aP.1を算出する基礎軸部偏心距離算出工程と
を行っておき、
偏心軸部の外周部の研削を行う際に、
基礎軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.1に応じて砥石を周期的に進退動させる
ことを特徴とするワークの研削方法
を提供することによって解決される。
ここで、偏心軸部は、その研削前形状(本発明のワーク研削方法を用いて研削を行う前の形状)は勿論のこと、その研削後形状(本発明のワーク研削方法を用いて研削を行った後の目標形状)は、円柱状である必要はなく、楕円柱状や多角柱状やカム形状等の非円柱状であってもよい。偏心軸部の研削後形状が非円柱状であっても、砥石を周期的に進退動させることによって、そのような非円柱状に研削することができるからである。以下に述べる他の構成においても、偏心軸部が非円柱状であると実施できないという事情が無い限りは、偏心軸部の研削後形状が非円柱状である場合にも採用することができる。また、「軸部」とは、その中心線に沿って細長い立体的形状を意味する場合もあるが、本明細書における「軸部」とは、必ずしもその中心線に沿った細長い立体的形状に限定されない。例えば、板状体のように、その中心線に沿った長さ(厚み)が薄い立体的形状も「軸部」に含まれるものとする。
これにより、ワークの回転軸(V受けチャックの回転中心となる軸Lに一致する。以下、ワークの回転軸を、軸Lと同じ記号「L」を用いて「ワークの回転軸L」と表記することがある。)に対して基礎軸部の中心線LP.1が偏心していたとしても、基礎軸部の中心線LP.1をワークの回転軸Lに一致させる心出し作業を行うことなく、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。すなわち、ワークの回転軸Lに対して基礎軸部の中心線LP.1が偏心していたとしても、ワークの回転軸Lに対する基礎軸部の中心線LP.1の偏心距離aP.1が分かっていれば、偏心軸部の中心線(中心線LP.2とする。)の軌跡が分かるため、当該軌跡に合わせて砥石を進退動させることによって、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。この点、第一マスターバー測定工程で、ワークの回転軸Lに対する第一マスターバーの中心線LM.1の偏心距離aM.1を測定しておくことによって、基礎軸部偏心距離算出工程で、軸Lに対する中心線LP.1の偏心距離aP.1を算出することが可能になる。第一マスターバー測定工程で偏心距離aM.1を測定する方法、及び、基礎軸部偏心距離算出工程で偏心距離aP.1を算出する方法については、後で詳しく説明する。
ただし、詳細については後述するが、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第一マスターバーの偏心距離aM.1とが分かっただけでは、基礎軸部偏心距離算出工程において、基礎軸部の偏心距離aP.1を算出することができない。すなわち、マスターバーを1本のみ使用(第一マスターバーのみを使用)して偏心距離aP.1を求めるためには、V受けチャックにおける基礎軸部を嵌め込むためのV溝(図11の符号111aを参照。)の開き角度θも知っておく必要がある。このため、本発明のワーク研削方法では、マスターバーを1本のみ使用する場合であっても、V溝の開き角度θを高精度で特定できるときには、基礎軸部の偏心距離aP.1を高精度で算出することができ、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で研削することができるものの、V溝の開き角度θを高精度で特定できないときには、基礎軸部の偏心距離aP.1を高精度で算出することができず、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で研削することができなくなる虞もある。この点、V溝の開き角度θを高精度で特定することは、技術上の理由で必ずしも容易ではない。
このため、本発明のワークの研削方法においては、
偏心軸部の外周部の研削に先立って、さらに、
外径dM.2が既知の第二マスターバーをV受けチャックに保持させ、軸Lに対する第二マスターバーの中心線LM.2の偏心距離aM.2を測定する第二マスターバー測定工程
を行っておき、
基礎軸部偏心距離算出工程において、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第二マスターバーの外径dM.2と、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1と、第二マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.2とに基づいて、偏心距離aP.1を算出する
ようにすると好ましい。
このように、第一マスターバーに加えて第二マスターバーを使用することによって、ワークの回転軸Lに対して基礎軸部の中心線LP.1が偏心しており、且つ、V溝の開き角度θを高精度で特定することができない場合であっても、基礎軸部の中心線LP.1をワークの回転軸Lに一致させる心出し作業を行うことなく、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。第二マスターバー測定工程で偏心距離aM.2を測定する方法、並びに、基礎軸部偏心距離算出工程で、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第二マスターバーの外径dM.2と、第一マスターバーの偏心距離aM.1とを用いて偏心距離aP.1を算出する方法については、後で詳しく説明する。
ところで、本発明のワークの研削方法において、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で切削するためには、第一マスターバーのみを使用する場合と、第一マスターバー及び第二マスターバーを使用する場合とのいずれにおいても、ワークの回転軸Lから偏心軸部の中心線LP.2までの偏心距離(偏心距離aP.2とする。)と、V受けチャックに保持されたワークの偏心軸部が基礎軸部に対してどの位置にあるのかを知っておく必要がある。後述するように、偏心軸部の偏心距離aP.2は、偏心軸部の中心線LP.2が、基礎軸部の中心線LP.1とワークの回転軸Lとを含む平面(平面αとする。)上にあれば、容易に求めることができるだけでなく、基礎軸部に対する偏心軸部の位置も特定することができる。このため、基礎軸部をV溝に嵌め込む際には、偏心軸部の中心線LP.2が平面α上となるように偏心軸部の位置を調整することが好ましい。しかし、偏心軸部の位置を調整する作業は必ずしも容易ではない。このため、以下の構成を採用すると好ましい。
すなわち、
偏心軸部の外周部の研削に先立って、さらに、
基礎軸部の中心線LP.1と軸Lとを含む平面αに対する、偏心軸部の中心線LP.2と軸Lとを含む平面βの変位角度φを測定する変位角度測定工程と、
少なくとも、基礎軸部の中心線LP.1に対する偏心軸部の中心線LP.2の偏心距離bと、基礎軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.1と、変位角度測定工程で測定された変位角度φとに基づいて、軸Lに対する中心線LP.2の偏心距離aP.2を算出する偏心軸部偏心距離算出工程と
を行っておき、
偏心軸部の外周部の研削を行う際に、さらに、変位角度測定工程で測定された変位角度φと、偏心軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.2とに応じて砥石を周期的に進退動させる
構成である。
このように、平面α(基礎軸部の中心線LP.1とワークの回転軸Lとを含む平面)に対する平面β(偏心軸部の中心線LP.2と軸Lとを含む平面)の変位角度φを予め測定しておくことによって、偏心軸部の中心線LP.2が平面α上にない場合(変位角度φが0°でない場合)であっても、基礎軸部に対する偏心軸部の位置を特定するだけでなく、偏心軸部の偏心距離aP.2を求めることも可能になる。したがって、基礎軸部をV溝に嵌め込む際に、偏心軸部の中心線LP.2が平面α上となるように偏心軸部の位置を調整しなくても、偏心軸部の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。変位角度測定工程で変位角度φを測定する具体的な方法、及び、偏心軸部偏心距離算出工程で、偏心距離bと、偏心距離aP.1と、変位角度φとに基づいて、偏心距離aP.2を算出する具体的な方法については、後で詳しく説明する。
ところで、上記課題は、
基礎軸部と基礎軸部から偏心して設けられた偏心軸部とを有するワークにおける偏心軸部の外周部を研削するためのワークの研削装置であって、
軸Lを中心として回転可能な状態で支持されたV受けチャックにワークの基礎軸部を保持させ、基礎軸部の中心線LP.1を軸Lに対して平行に保ち、偏心軸部の外周部に当てた砥石を軸Lに交差する方向に周期的に進退動させながら、ワークをV受けチャックとともに軸Lを中心として回転させることによって、偏心軸部の外周部を研削するものとされるとともに、
偏心軸部の外周部の研削に先立って、外径dM.1が既知の第一マスターバーをV受けチャックに保持させ、軸Lに対する第一マスターバーの中心線LM.1の偏心距離aM.1を測定する第一マスターバー測定モードと、
少なくとも、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1とに基づいて算出された軸Lに対する中心線LP.1の偏心距離aP.1に応じて砥石を周期的に進退動させながら、V受けチャックをワークとともに軸Lを中心として回転させることによって、偏心軸部の外周部を研削する偏心軸部研削モードと、
を備えたことを特徴とするワークの研削装置
を提供することによっても解決される。
本発明のワークの研削装置は、上述した本発明のワークの研削方法を実施する際に好適に使用することができるものとなっている。
以上のように、本発明によって、基礎軸部と偏心軸部とを有するワークにおける基礎軸部を基準として偏心軸部の外周部を研削するワークの研削方法でありながら、基礎軸部の中心線をワークの回転軸に一致させる心出し作業を行う必要のない方法を提供することが可能になる。また、本発明のワークの研削方法を実行するためのワークの研削装置を提供することも可能になる。
研削装置のワークとなる偏心ピンの一例を示した斜視図である。 従来の研削装置を示した斜視図である。 従来の研削装置を用いてワークを研削している様子を示した斜視図である。 本発明に係る研削装置を示した斜視図である。 本発明に係る研削装置を用いてワークを研削している様子を示した斜視図である。 ワークがV受けチャックとともに回転している様子を模式的に示した図である。 本発明に係る研削装置における入出力系統を示したブロック図である。 第一マスターバー測定工程(又は第二マスターバー測定工程)においてワークの回転軸Lを中心として第一マスターバー(又は第二マスターバー)を回転させている様子を模式的に示した図である。 V受けチャックのVブロックに設けられたV溝と、ワークの基礎軸部及び第一マスターバーとの寸法関係を模式的に示した図である。 V受けチャックのVブロックに設けられたV溝と、ワークの基礎軸部、第一マスターバー及び第二マスターバーとの寸法関係を模式的に示した図である。 ワークの回転中心Lワークの基礎軸部の中心線LP.1と、ワークの偏心軸部の中心線LP.2とが同一平面α上にある場合を模式的に示した図である。 ワークの回転中心Lとワークの基礎軸部の中心線LP.1とを含む平面α上にワークの偏心軸部の中心線LP.2がない場合を模式的に示した図である。 変位角度測定工程を行っているときのワークの様子を模式的に示した図である。
本発明のワークの研削方法及び研削装置の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。
1.ワーク
まず、本発明の研削装置で研削を行うワークについて説明する。図1は、本発明の研削装置のワーク10となる偏心ピンの一例を示した斜視図である。本発明の研削装置は、図1に示すように、基礎軸部11と、基礎軸部11から偏心して設けられた偏心軸部12とを有するワーク10における偏心軸部12の外周部を研削するためのものとなっている。ワーク10は、偏心軸部12を1つのみ有するものであってもよいが、偏心軸部12を複数有するものであってもよい。図1に示すワーク10は、偏心軸部12として、第一偏心軸部12aと第二偏心軸部12bとを有している。第一偏心軸部12aと第二偏心軸部12bとの間には、中間軸部13が設けられている。また、第一偏心軸部12aにおける中間軸部13と反対側には、突出軸部14が設けられている。基礎軸部11、偏心軸部12(第一偏心軸部12a及び第二偏心軸部12b)、中間軸部13並びに突出軸部14は、いずれも円柱状に形成される。ただし、研削装置100を用いて偏心軸部12の外周部を研削する前の状態にあっては、偏心軸部12が完全な円柱状となっていなくても、研削装置100で偏心軸部12の外周部を研削した後には円柱状となるため、特に問題はない。
図1に示すワーク10において、基礎軸部11の中心線LP.1と、偏心軸部12の中心線LP.2(第一偏心軸部12aの中心線LP.2−1及び第二偏心軸部12bの中心線LP.2−2)と、中間軸部13の中心線LP.3と、突出軸部14の中心線LP.4は、互いに平行となるように形成される。ただし、研削装置100を用いて偏心軸部12の外周部を研削する前の状態にあっては、基礎軸部11の中心線LP.1に対して偏心軸部12の中心線LP.2が完全に平行になっていなくても、研削装置100で偏心軸部12の外周部を研削した後には平行となるため、特に問題はない。また、中間軸部13の中心線LP.3と、突出軸部14の中心線LP.4は、基礎軸部11の中心線LP.1と一致する(中心線LP.1の延長線上となる)ように形成される。これに対し、偏心軸部12の中心線LP.2は、基礎軸部11の中心線LP.1に対して偏心した状態(中心線LP.1の延長線上とならない状態)で形成される。
図1に示すように、基礎軸部11と偏心軸部12とを備えたワーク10は、エア・コンディショナーの圧縮機における偏心ピン等として用いられる。
2.研削装置
続いて、本発明の研削装置について説明する。図4は、本発明に係る研削装置100を示した斜視図である。図5は、本発明に係る研削装置100を用いてワーク10を研削している様子を示した斜視図である。本実施態様において、研削装置100は、図4に示すように、V受けチャック110と、砥石120と、変位測定手段130と、設定・操作手段160(図7を参照。)と、制御手段150(図7を参照。)等とを備えたものとなっている。図5に示すように、V受けチャック110は、ワーク10の基礎軸部11を保持した状態で固定するためのものとなっており、砥石120は、ワーク10の偏心軸部12の外周部を研削するためのものとなっている。変位測定手段130は、通常、研削後のワーク10の寸法が目標値に対してどの程度の誤差があるのかを測定するためのものであるが、本実施態様においては、この変位測定手段130を、後述する第一マスターバー測定工程や第二マスターバー測定工程等においても用いるようにしている。設定・操作手段160は、研削装置100を制御するのに必要な各種のパラメータ等を設定するとともに、研削装置100の起動又は停止する等の操作を行うためのものとなっている。制御手段150は、研削装置100における各部を制御するためのものとなっている。以下、研削装置100を構成する各部について、順に説明する。
2.1 V受けチャック
V受けチャック110は、図4に示すように、V溝111aが形成されたVブロック111と、ワーク押圧手段113とを有している。V溝111aは、図5に示すように、ワーク10の基礎軸部11を嵌め込むための部分となっている。ワーク押圧手段113は、押圧部113aと、押圧部113aをスライド可能に支持する支持部113bとを備えており、押圧部113aによって、ワーク10の基礎軸部11におけるV溝111aに嵌め込まれた側とは逆側の側面をVブロック111側へ押し付けるためのものとなっている。このように、Vブロック111のV溝111aと、ワーク押圧手段113の押圧部113aとでワーク10の基礎軸部11を挟み込んだ状態で保持することによって、ワーク10をV受けチャック110に対して動かない状態で固定できるようになっている。
ところで、Vブロック111は、Vブロックホルダ114を介して、回転盤140に対して一体的に固定されている。また、ワーク押圧手段113における支持部113bも、取付ベース115を介して、回転盤140に対して一体的に固定されている。回転盤140は、回転駆動機構(図7におけるV受けチャック用回転駆動機構170)に接続されており、軸Lを中心とした周回方向Aに回転するようになっている。このため、V受けチャック用回転駆動機構が駆動されると、図6に示すように、ワーク10は、V受けチャック110とともに、軸Lを中心とする周回方向Aへ回転するようになっている。
図6は、ワーク10がV受けチャック110とともに回転している様子を模式的に示した図である。図6は、ワーク10の回転軸Lに垂直な平面で切断した断面で示している。図6においては、偏心軸部12及び砥石120を二点鎖線でハッチングなしで描いている。また、図6では、図示の便宜上、基礎軸部11に対する偏心軸部12の縮尺を、図1に示したワーク10から変更するとともに、ワーク押圧手段113等の部材を省略して描いている。図6(a)に示す状態からワーク10が軸Lを中心として周回方向Aへ90°回転すると、同図(b)の状態となり、同図(b)の状態からさらに90°回転すると、同図(c)の状態となり、同図(c)の状態からさらに90°回転すると、同図(d)の状態となり、同図(d)の状態からさらに90°回転すると、1周して同図(a)の状態となり、以降、これが繰り返される。図6から明らかなように、基礎軸部11の中心線LP.1が、軸L(ワークの回転軸)に一致しておらず偏心した状態となっていると、基礎軸部11は、軸Lを中心に公転運動をするようになる。
2.2 砥石
砥石120は、軸L回りに回転するワーク10における偏心軸部12の外周部を研削できるものであれば、その形態を限定されない。本実施態様において、砥石120は、図5に示すように、軸Lを中心とした円盤状に形成しており、その外周面が、ワーク10を研削するための研削面となっている。この砥石120は、回転駆動機構(図7における砥石用回転駆動機構180)に接続されており、軸Lを中心とする周回方向Aへ回転することで、偏心軸部12の外周部を研削するようになっている。本実施態様においては、砥石120の回転軸Lをワーク10の回転軸Lと平行に設定しているが、偏心軸部12に求められる形状によっては(例えば、偏心軸部12を斜円柱状や斜楕円柱状等に形成する場合には)、ワーク10の回転軸Lに対して砥石120の回転軸Lを傾斜させてもよい。また、本実施態様においては、研削対象を第一偏心軸部12aから第二偏心軸部12bへ切り替える等、砥石120の研削対象を切り替えることができるように、砥石120をz軸方向にもスライド移動させることができるようにしている。
また、砥石120は、スライド駆動機構(図7における砥石用スライド駆動機構190)に接続されており、ワークの回転軸Lに交差する方向Aに進退動することが可能となっている。本発明に係る研削装置100では、ワーク10をV受けチャック110に保持させる際に、基礎軸部11の中心線LP.1をワーク10の回転軸Lに一致させる心出し作業を特に行わないだけでなく、偏心軸部12の中心線LP.2をワーク10の回転軸Lに一致させる心出し作業も特に行わないため、多くの場合、偏心軸部12の中心線LP.2も、ワーク10の回転軸Lから偏心した状態となっている。このため、ワーク10を軸L回りに回転させると、図6に示すように、基礎軸部11だけでなく、偏心軸部12も、軸Lを中心に公転運動をするようになる。砥石用スライド機構190は、このように公転運動をする偏心軸部12を所望の外径に研削できるように、砥石120を方向Aに進退動させるものとなっている。図6(b),(c),(d)における破線部は、それぞれ1つ前の状態における砥石120を示している。本実施態様においては、砥石120を進退動させる方向Aをワーク10の回転軸Lと垂直に設定しているが、方向Aは、回転軸Lに対して非垂直としてもよい。
2.3 変位測定手段
変位測定手段130は、ワークの回転軸Lを中心として回転する円筒体(第一マスターバー21、第二マスターバー22又は偏心軸部12等)の振れ(例えば、図8における振れΔhを参照。)を測定できるものとなっている。変位測定手段130には、各種の位置測定センサを用いることができる。本実施態様において、変位測定手段130は、図5に示すように、測定アーム131と、押えアーム132と、アーム支持部133とを備えたものとなっている。この変位測定手段130は、測定アーム131と押えアームとの間に円筒体(第一マスターバー21、第二マスターバー22又は偏心軸部12等)を挟み込み、軸Lを中心として公転運動をする当該円筒体に追従して揺動変位する測定アーム131の変位量を読み取ることで、当該円筒体の振れを測定するものとなっている。本実施態様において、変位測定手段130は、後述する第一マスターバー測定工程で第一マスターバー21の偏心距離aM.1(図8を参照。)を測定する際や、後述する第二マスターバー測定工程で第二マスターバー22の偏心距離aM.2(図8を参照。)を測定する際だけでなく、後述する変位角度測定工程において偏心軸部12の変位角度φ(図12を参照。)を測定する際にも用いることができるものとなっている。
2.4 設定・操作手段
設定・操作手段160(図7を参照。)は、ワーク10における基礎軸部11の外径dP.1や、偏心軸部12の外径dP.2(目標値)や、後述する基礎軸部11に対する偏心軸部12の偏心距離bや、後述する第一マスターバー21の外径dM.1や、ワーク10の回転速度(回転速度ωとする。)や、砥石120の回転速度(回転速度ωとする。)等、研削装置100を制御するのに必要な各種のパラメータ等を設定するためのものとなっている。後述するマスターバーを1本のみ用いる場合(第一マスターバー21のみを用いる場合)には、上記パラメータに加えて、V受けチャック110のVブロック111におけるV溝111aの開き角度θ(図9を参照。)も、設定・操作手段に設定される。また、後述するマスターバーを2本用いる場合(第一マスターバー21及び第二マスターバー22(図10を参照。)を用いる場合)には、上記パラメータに加えて、第二マスターバー22の外径dM.2も、設定・操作手段に設定される。
また、設定・操作手段160は、上記の各種パラメータの設定に加えて、研削装置100の起動若しくは停止、又は、研削装置100の動作モードの切替等の操作を行うものとなっている。本実施態様においては、後述するように、研削装置100の動作モードとして、後述する第一マスターバー測定工程を実行する第一マスターバー測定モードと、後述する第二マスターバー測定工程を実行する第二マスターバー測定モードと、後述する変位角度測定工程を実行する変位角度測定モードと、後述するワーク研削工程を実行するワーク研削モード等が設けられているところ、設定・操作手段160を操作することによって、これらを切り替えることができるようになっている。設定・操作手段160は、上記の機能を発揮できるものであれば、その種類を限定されない。設定・操作手段としては、押ボタンスイッチやロータリースイッチやレバースイッチ等の操作スイッチを備えた操作パネルの他、タッチパネル等が例示される。
2.5 制御手段
図7は、本発明に係る研削装置100における入出力系統の一例を示したブロック図である。本実施態様において、制御手段150は、図7に示すように、パラメータ記憶部151と、基礎軸部偏心距離算出手段153と、偏心軸部偏心距離算出手段154と、砥石進退動制御手段155等とを備えたものとなっており、設定・操作手段160や変位測定手段130等から入力された信号(入力信号)に基づいて、V受けチャック用回転駆動機構170や、砥石用回転駆動機構180や、砥石用スライド駆動機構190等の各種出力機器に制御信号を出力するものとなっている。
パラメータ記憶部151は、設定・操作手段160から入力されたパラメータを記憶するための部分となっている。本実施態様においては、設定・操作手段160から入力されたパラメータとして、基礎軸部11の外径dP.1、偏心軸部12の外径dP.2(目標値)、基礎軸部11に対する偏心軸部12の偏心距離b、V溝111aの開き角度θ、第一マスターバー21の外径dM.1、第二マスターバー22の外径dM.2、ワーク10の回転速度ω、及び、砥石120の回転速度ω等が、パラメータ記憶部151に記憶されるようになっている。また、パラメータ記憶部151には、変位測定手段130等の測定装置が測定した値(測定値)も記憶される。本実施態様においては、変位測定手段130の測定値として、第一マスターバー21の偏心距離aM.1と、第二マスターバー22の偏心距離aM.2と、後述する偏心軸部12の変位角度φも、パラメータ記憶部151に記憶されるようになっている。パラメータ記憶部151は、不揮発性メモリや揮発性メモリ等の記憶装置で構成される。
基礎軸部偏心距離算出手段153は、パラメータ記憶部151に記憶されたパラメータに基づいて、ワーク10の回転軸Lに対する基礎軸部11の中心線LP.1の偏心距離aP.1を算出するためのものとなっている。基礎軸部偏心距離算出手段153で算出された基礎軸部11の偏心距離aP.1は、パラメータ記憶部151に記憶される。偏心距離aP.1の具体的な算出方法については、後で詳しく説明する。偏心軸部偏心距離算出手段154は、パラメータ記憶部151に記憶されたパラメータに基づいて、ワーク10の回転軸Lに対する偏心軸部12の中心線LP.2の偏心距離aP.2を算出するためのものとなっている。偏心軸部偏心距離算出手段154で算出された偏心軸部の偏心距離aP.2は、パラメータ記憶部151に記憶される。偏心距離aP.2の具体的な算出方法については、後で詳しく説明する。砥石進退動制御手段155は、パラメータ記憶部151に記憶された各種パラメータに基づいて、砥石用スライド駆動機構に制御信号を出力するためのものとなっている。基礎軸部偏心距離算出手段153、偏心軸部偏心距離算出手段154及び砥石進退動制御手段155は、通常、CPU(中央処理装置)等の演算装置で構成される。
3.ワークの研削方法
続いて、上記「2.研削装置」の欄で述べた研削装置100を用いて図1に示すワーク10を研削する方法について具体的に説明する。本発明の研削方法は、少なくとも、第一マスターバー測定工程と、基礎軸部偏心距離算出工程と、ワーク研削工程とを経ることにより、ワーク10の偏心軸部12の外周部を研削するものとなっている。第一マスターバー測定工程と基礎軸部偏心距離算出工程は、ワーク研削工程に先立って行う工程となっている。以下、本発明の研削方法を構成する各工程について順に説明する。
3.1 第一マスターバー測定工程
第一マスターバー測定工程は、研削装置100の動作モードが第一マスターバー測定モードに設定されている場合に実行される。第一マスターバー測定工程では、図8に示すように、第一マスターバー21をV受けチャック110に保持させ、軸L(ワークの回転軸)に対する第一マスターバー21の中心線LM.1の偏心距離aM.1を測定する工程である。図8は、第一マスターバー測定工程においてワークの回転軸Lを中心として第一マスターバー21を回転させている様子を模式的に示した図である。図8は、ワークの回転軸Lに垂直な平面で切断した断面で示している。図8では、図示の便宜上、ワーク押圧手段113(図5を参照。)等の部材を省略して描いている。
第一マスターバー測定工程において、第一マスターバー21の偏心距離aM.1を測定する方法は、特に限定されない。本実施態様においては、図5に示した変位測定手段130における測定アーム131と押えアーム132との間に第一マスターバー21を挟み込み、図8に示すように、第一マスターバー21の外周面における最高点Tが最も低くなるとき(図8(a))と、最も高くなるとき(図8(c))との差(第一マスターバー21の最高点Tの振れΔh)を測定することによって、第一マスターバー21の偏心距離aM.1を測定している。軸Lに対する第一マスターバー21の偏心距離aM.1は、第一マスターバー21の最高点Tの振れΔhを2分の1にすることによって算出することができる。変位測定手段130によって測定された第一マスターバー21の偏心距離aM.1は、図7に示すように、制御手段150のパラメータ記憶部151に記憶される。
3.2 基礎軸部偏心距離算出工程(第二マスターバー測定工程を実行しない場合)
基礎軸部偏心距離算出工程は、少なくとも、上記の第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1(図8を参照。)と、第一マスターバー21の外径dM.1(図9を参照。)と、ワーク10における基礎軸部11の外径dP.1(図9を参照。)とに基づいて、軸Lに対するワーク10の基礎軸部11の中心線LP.1の偏心距離aP.1(図9を参照。)を算出する工程である。基礎軸部偏心距離算出工程は、上述した制御手段150における基礎軸部偏心距離算出手段153によって実行される。基礎軸部11の偏心距離aP.1は、基礎軸部11の外径dP.1と、第一マスターバー21の外径dM.1と、第一マスターバー21の偏心距離aM.1とを用いて、以下のように求めることができる。
図9は、V受けチャック110のVブロック111に設けられたV溝111aと、ワーク10の基礎軸部11及び第一マスターバー21との寸法関係を模式的に示した図である。図9は、ワークの回転軸Lに垂直な平面(以下、「切断面」と表記する。)で切断した断面で示している。図9において、第一マスターバー21は、二点鎖線でハッチング無しで描いている。図9では、図示の便宜上、基礎軸部11に対する第一マスターバー21の縮尺を実際よりも大きくして描くとともに、ワーク押圧手段113(図5を参照。)等の部材を省略して描いている。図9における点Cは、前記切断面とワーク10の回転軸Lとの交点であり、点CP.1は、前記切断面と基礎軸部11の中心線LP.1との交点であり、点CM.1は、前記切断面と第一マスターバー21の中心線LM.1との交点であり、点Pは、V溝111aを形成する一対の傾斜面111a,111aの交線と前記切断面との交点であり、点QP.1は、基礎軸部11と傾斜面111aとの前記切断面上における接点であり、点QM.1は、第一マスターバー21と傾斜面111aとの前記切断面上における接点である。また、図9における角度θは、V溝111aを形成する一対の傾斜面111a,111aが為す角度(V溝111aの開き角度)である。
図9を見ると、点C(ワーク10の回転軸L)に対する点CP.1(基礎軸部11の中心線LP.1)の偏心距離aP.1は、線分CP.1の長さに一致するため、下記式1で表すことができることが分かる。
Figure 2017087372
ここで、上記式1における右辺第一項(線分CM.1の長さ)は、軸Lに対する第一マスターバー21の偏心距離aM.1に一致するため、下記式2で表すことができる。
Figure 2017087372
また、上記式1における右辺第二項(線分PCM.1の長さ)は、図9から、第一マスターバー21の外径dM.1と、V溝111aの開き角度θとを用いて、下記式3で表すことができる。
Figure 2017087372
さらに、上記式1における右辺第三項(線分PCP.1の長さ)は、図9から、基礎軸部11の外径dP.1と、V溝111aの開き角度θとを用いて、下記式4で表すことができる。
Figure 2017087372
上記式2,3,4を、上記式1の右辺に代入すると、上記式1は、下記式5で表すことができる。
Figure 2017087372
上記式5における第一マスターバー21の偏心距離aM.1は、上述した第一マスターバー測定工程で測定されており、図7に示すように、制御手段150におけるパラメータ記憶部151に記憶されている。また、上記式5における第一マスターバー21の外径dM.1と、基礎軸部11の外径dP.1と、V溝111aの開き角度θは、予め特定されている。第一マスターバー21の外径dM.1と、基礎軸部11の外径dP.1と、V溝111aの開き角度θは、図7に示すように、設定・操作手段160に入力されて制御手段150におけるパラメータ記憶部151に記憶されている。このため、ワーク10の回転軸Lに対する基礎軸部11の中心線LP.1の偏心距離aP.1は、上記式5に、偏心距離aM.1と外径dM.1と外径dP.1と開き角度θを当てはめることによって算出することができる。
したがって、ワーク10の回転軸Lに対して基礎軸部11の中心線LP.1が偏心している場合であっても、上記式5を用いて算出した偏心距離aP.1に応じて砥石120を周期的に進退動させることによって、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。すなわち、基礎軸部11の中心線LP.1をワークの回転軸Lに一致させる心出し作業を行うことなく、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。
ところで、図9では、第一マスターバー21の外径dM.1が基礎軸部11の外径dP.1よりも大きくなっていたが、第一マスターバー21の外径dM.1が基礎軸部11の外径dP.1よりも小さい場合や基礎軸部11の外径dP.1に等しい場合でも、上記式5は成立する。すなわち、第一マスターバー21は、V溝111aの傾斜面111a,111aに接するのであれば、その外径dM.1は、限定されない。
ただし、上記式5は、第一マスターバー21の偏心距離aM.1と基礎軸部11の外径dP.1と第一マスターバー21の外径dM.1に加えて、V溝111aの開き角度θをパラメータとして含んでいる。これらのパラメータのうち、偏心距離aM.1、外径dP.1及び外径dM.1は、高精度で特定することが比較的容易であるが、V溝111aの開き角度θを高精度で特定することは、必ずしも容易ではない。このため、V溝111aの開き角度θを高精度で特定できるときには、上記式5で得られた偏心距離aP.1を用いて、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することができるものの、V溝111aの開き角度θを高精度で特定できないときには、上記式5で得られた偏心距離aP.1を用いて、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することは、必ずしも容易ではない。このため、本実施態様においては、上記の第一マスターバー測定工程に加えて、以下の第二マスターバー測定工程を実行するようにしている。
3.3 第二マスターバー測定工程
第二マスターバー測定工程は、研削装置100の動作モードが第二マスターバー測定モードに設定されている場合に実行される。第二マスターバー測定工程では、図8に示すように、第二マスターバー22をV受けチャック110に保持させ、軸L(ワークの回転軸)に対する第二マスターバー22の中心線LM.2の偏心距離aM.2を測定する工程である。第二マスターバー測定工程において、第二マスターバー22の偏心距離aM.2を測定する方法は、特に限定されない。本実施態様においては、上述した第一マスターバー測定工程における第一マスターバー21の偏心距離aM.1の測定と同様の方法で、第二マスターバー22の偏心距離aM.2を測定するようにしている。第二マスターバー測定工程は、上記の基礎軸部偏心距離算出工程よりも先立って実行される。第二マスターバー測定工程を実行する場合には、基礎軸部偏心距離算出工程は、以下のように変更される。
3.4 基礎軸部偏心距離算出工程(第二マスターバー測定工程を実行する場合)
上記の第二マスターバー測定工程を実行する場合には、基礎軸部偏心距離算出工程では、少なくとも、上記の第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1(図8を参照。)と、上記の第二マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.2(図8を参照。)と、第一マスターバー21の外径dM.1(図10を参照。)と、第二マスターバー22の外径dM.2(図10を参照。)と、ワーク10における基礎軸部11の外径dP.1(図10を参照。)とに基づいて、軸Lに対するワーク10の基礎軸部11の中心線LP.1の偏心距離aP.1(図10を参照。)が算出される。具体的には、基礎軸部11の偏心距離aP.1は、以下のように求めることができる。
図10は、V受けチャック110のVブロック111に設けられたV溝111aと、ワーク10の基礎軸部11、第一マスターバー21及び第二マスターバー22との寸法関係を模式的に示した図である。図10は、ワーク10の回転軸Lに垂直な平面(以下、「切断面」と表記する。)で切断した断面で示している。図10において、第一マスターバー21及び第二マスターバー22は、二点鎖線でハッチング無しで描いている。点C、点CP.1、点CM.1、点P、点QP.1点QM.1及び角度θが意味することは、図9で述べたものと同一である。さらに、図10では、前記切断面と第二マスターバーの中心線LM.2との交点を点CM.2とし、第二マスターバー22と傾斜面111aとの前記切断面上における接点を点QM.2としている。図10における基礎軸部11と第一マスターバー21との寸法関係は、図9と同様であるため、上記式5は、図10の場合においても成立する。
図10を見ると、点C(ワークの回転軸L)に対する点CP.1(基礎軸部11の中心線LP.1)の偏心距離aP.1は、線分CP.1の長さに一致するため、下記式6で表すことができることが分かる。
Figure 2017087372
ここで、上記式6における右辺第一項(線分CM.2の長さ)は、軸Lに対する第二マスターバー22の偏心距離aM.2に一致するため、下記式7で表すことができる。
Figure 2017087372
また、上記式6における右辺第二項(線分PCP.1の長さ)は、図10から、基礎軸部11の外径dP.1と、V溝111aの開き角度θとを用いて、下記式8で表すことができる。
Figure 2017087372
さらに、上記式6における右辺第三項(線分PCM.2の長さ)は、図10から、第二マスターバー22の外径dM.2と、V溝111aの開き角度θとを用いて、下記式9で表すことができる。
Figure 2017087372
上記式7,8,9を、上記式6の右辺に代入すると、上記式6は、下記式10で表すことができる。
Figure 2017087372
上記式5,10から、V溝111aの開き角度θを消去して、偏心距離aP.1について整理すると、下記式11が得られる。
Figure 2017087372
上記式11における第一マスターバー21の偏心距離aM.1は、上述した第一マスターバー測定工程で測定されている。また、上記式11における第二マスターバー22の偏心距離aM.2は、上述した第二マスターバー測定工程で測定されている。第一マスターバー21の偏心距離aM.1と第二マスターバー22の偏心距離aM.2は、図7に示すように、制御手段150におけるパラメータ記憶部151に記憶されている。さらに、上記式11における第一マスターバー21の外径dM.1と、第二マスターバー22の外径dM.2と、基礎軸部11の外径dP.1は、予め特定されている。第一マスターバー21の外径dM.1と、第二マスターバー22の外径dM.2と、基礎軸部11の外径dP.1は、図7に示すように、設定・操作手段160に入力されて制御手段150におけるパラメータ記憶部151に記憶されている。加えて、上記式11は、上記式5とは異なり、V溝111aの開き角度θをパラメータとして含んでいない。このため、ワーク10の回転軸Lに対する基礎軸部11の中心線LP.1の偏心距離aP.1は、上記式11に、偏心距離aM.1と偏心距離aM.2と外径dM.1と外径dM.2と外径dP.1を当てはめることによって、算出することができる。
したがって、ワーク10の回転軸Lに対して基礎軸部11の中心線LP.1が偏心しており、且つ、V溝111aの開き角度θが特定できない場合であっても、上記式11を用いて算出した偏心距離aP.1に応じて砥石120を周期的に進退動させることによって、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。すなわち、基礎軸部11の中心線LP.1をワークの回転軸Lに一致させる心出し作業や、V溝111aの開き角度θを厳密に設定する作業を行うことなく、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能になる。
ところで、図10では、第二マスターバー22の外径dM.2が基礎軸部11の外径dP.1よりも小さくなっていたが、第二マスターバー22の外径dM.2が基礎軸部11の外径dP.1よりも大きい場合や基礎軸部11の外径dP.1に等しい場合でも、上記式11は成立する。ただし、第二マスターバー22の外径dM.2が第一マスターバー21の外径dM.1に等しい場合には、上記式11は成立しない。すなわち、第二マスターバー22は、V溝111aの傾斜面111a,111aに接し、且つ、その外径dM.2が第一マスターバー21の外径dM.1と異なっていれば、その外径dM.2は、限定されない。
ただし、上記式5や上記式11から得られた偏心距離aP.1を用いて偏心軸部12の外周部を適切に研削するためには、ワーク10の回転軸Lから偏心軸部12の中心線LP.2までの偏心距離aP.2(図11及び図12を参照。)と、V受けチャック110に保持されたワーク10の偏心軸部12が基礎軸部11に対してどの位置にあるのかが分かっていなければならない。基礎軸部11に対する偏心軸部12の位置は、図11に示すように、偏心軸部12の中心線LP.2が、基礎軸部11の中心線LP.1とワークの回転軸Lとを含む平面α上にあるように、ワーク10の基礎軸部11をV受けチャック110に保持させることができれば、特定することができる。また、偏心距離aP.2も、以下で述べるように、容易に求めることができる。
ここで、図11は、ワーク10の回転中心Lワーク10の基礎軸部11の中心線LP.1と、ワーク10の偏心軸部12の中心線LP.2とが同一平面α上にある場合を模式的に示した図である。図11は、ワーク10の回転軸Lに垂直な平面(以下、「切断面」と表記する。)で切断した断面で示している。図11において、偏心軸部12は、二点鎖線でハッチング無しで描いている。また、図11では、図示の便宜上、基礎軸部11に対する偏心軸部12の縮尺を、図1に示すワーク10とは変更して描いている。図11における点C、点CP.1、点P及び点QP.1が意味することは、図10で述べたものと同一である。さらに、図11では、前記切断面と偏心軸部12の中心線LP.2との交点を点CP.2としている。
例えば、図11に示すように、基礎軸部11の中心線LP.1と偏心軸部12の中心線LP.2との間にワーク10の回転軸Lが位置する場合(y軸方向負側からy軸方向正側に向かって、中心線LP.1、回転軸L、中心線LP.2の順に並ぶ場合、又は、中心線LP.2、回転軸L、中心線LP.1の順に並ぶ場合)には、偏心距離aP.2は、基礎軸部11の中心線LP.1に対する偏心軸部12の中心線LP.2の偏心距離(距離bとする。)と、ワーク10の回転軸Lに対する基礎軸部11の中心線LP.1の偏心距離aP.1との差(=b−aP.1)に一致する。一方、ワーク10の回転軸Lと偏心軸部12の中心線LP.2との間に基礎軸部11の中心線LP.1が位置する場合(y軸方向負側からy軸方向正側に向かって、回転軸L、中心線LP.1、中心線LP.2の順に並ぶ場合、又は、中心線LP.2、中心線LP.1、回転軸Lの順に並ぶ場合)には、偏心距離aP.2は、偏心距離aP.1と偏心距離bとの和(=b+aP.1)に一致する。また、ワーク10の回転軸Lと基礎軸部11の中心線LP.1との間に偏心軸部12の中心線LP.2が位置する場合(y軸方向負側からy軸方向正側に向かって、回転軸L、中心線LP.2、中心線LP.1の順に並ぶ場合、又は、中心線LP.1、中心線LP.2、回転軸Lの順に並ぶ場合)には、偏心距離aP.2は、偏心距離aP.1と偏心距離bとの差(=aP.1−b)に一致する。
このように、偏心軸部12の中心線LP.2が、基礎軸部11の中心線LP.1とワークの回転軸Lとを含む平面α上にあれば、基礎軸部11に対する偏心軸部12の位置や、ワーク10の回転軸Lに対する偏心軸部12の偏心距離aP.2を容易に知ることができるため、基礎軸部11をV溝111aに嵌め込む際には、偏心軸部12の中心線LP.2が平面α上となるように偏心軸部12の位置を調整することが好ましい。しかし、この偏心軸部12の位置の調整は、必ずしも容易ではない。したがって、図12に示すように、平面α上に偏心軸部12の中心線LP.2がない場合(同図に示す変位角度φが0°でない場合)であっても、基礎軸部11に対する偏心軸部12の位置(変位角度φ)や、偏心軸部12の偏心距離aP.2を求めることができるようにしておくことが好ましい。このため、本実施態様においては、さらに、以下の変位角度測定工程と偏心軸部偏心距離算出工程とを実行するようにしている。
ここで、図12は、ワーク10の回転中心Lとワーク10の基礎軸部11の中心線LP.1とを含む平面α上にワークの偏心軸部の中心線LP.2がない場合を模式的に示した図である。図12は、ワーク10の回転軸Lに垂直な平面(以下、「切断面」と表記する。)で切断した断面で示している。図12において、偏心軸部12は、二点鎖線でハッチング無しで描いている。また、図12では、図示の便宜上、基礎軸部11に対する偏心軸部12の縮尺を、図1に示すワーク10とは変更して描いている。図12における点C、点CP.1、点CP.2、点P及び点QP.1が意味することは、図11で述べたものと同一である。さらに、図12における角度φは、基礎軸部11の中心線LP.1とワークの回転軸Lとを含む平面αに対する、偏心軸部12の中心線LP.2とワークの回転軸Lとを含む平面βの変位角度である。
3.5 変位角度測定工程
変位角度測定工程は、研削装置100の動作モードが変位角度測定モードに設定されている場合に実行される。変位角度測定工程では、平面α(基礎軸部11の中心線LP.1とワーク10の回転軸Lとを含む平面)に対する平面β(偏心軸部12の中心線LP.2とワークの回転軸Lとを含む平面)の変位角度φ(以下、「偏心軸部12の変位角度φ」と呼ぶことがある。)を測定する工程となっている。変位角度測定工程において、偏心軸部12の変位角度φを測定する具体的な方法は、特に限定されない。本実施態様においては、図5に示した変位測定手段130における測定アーム131と押えアーム132との間に偏心軸部12を挟み込み、図13に示すように、偏心軸部12の外周面における最高点Sの変位を測定するとともに、ワーク10の回転角度を監視することによって、偏心軸部12の変位角度φを測定している。具体的には、以下のように行っている。
ここで、図13は、変位角度測定工程を行っているときのワーク10の様子を模式的に示した図である。図13は、ワーク10の回転軸Lに垂直な平面で切断した断面で示している。図13において、偏心軸部12は、二点鎖線でハッチング無しで描いている。また、図13では、図示の便宜上、基礎軸部11に対する偏心軸部12の縮尺を、図1に示すワーク10とは変更するとともに、ワーク押圧手段113や変位計測手段130等の部材を省略して描いている。図13(a)〜(l)は、ワーク10を図13(a)に示す初期状態(基礎軸部11をV受けチャック110に保持させた直後の状態)から軸Lを中心とする周回方向Aへ30°ずつ回転させていった場合を段階的に描いている。ワーク10を図13(l)に示す状態から周回方向Aへさらに30°回転させると、ワーク10は1周して図13(a)に示す状態に戻る。図13における直線Lは、初期状態(図13(a))における偏心軸部12の最高点Sの高さを表している。
すなわち、変位測定手段130によって、偏心軸部12の最高点Sの変位を読み取り、初期状態(図13(a)に示す状態)から、最高点Sが最も高くなるとき(図13(b)に示す状態となったとき)までの、ワーク10における軸L回りの回転角度(以下、「最高点到達角度」と呼ぶことがある。)を測定することによって、偏心軸部12の変位角度φを測定している。最高点到達角度は、偏心軸部12の変位角度φに一致する。最高点到達角度(偏心軸部12の変位角度φ)は、上記のV受けチャック用回転駆動機構の駆動源であるモーターの回転角度を読み取ること等によって知ることができる。このため、V受けチャック用回転駆動機構の駆動源であるモーターには、サーボモーターやステッピングモーター等、回転角度を出力できるものを使用すると好ましい。
このように、変位角度測定工程を実行することによって、偏心軸部12の変位角度φが0°ではない場合(偏心軸部12の中心線LP.2が平面α(図12を参照。)上にない場合)であっても、基礎軸部11に対する偏心軸部12の位置を求めることが可能となっている。また、後述する偏心軸部偏心距離工程において、偏心軸部12の偏心距離aP.2を求めることも可能となっている。したがって、ワーク10の基礎軸部11をV受けチャック110に保持させる際に、偏心軸部12の変位角度φが0°になるように偏心軸部12の位置を調整する作業を行うことなく、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能となっている。
3.6 偏心軸部偏心距離算出工程
偏心軸部偏心距離算出工程は、基礎軸部11の中心線LP.1に対する偏心軸部12の中心線LP.2の偏心距離b(図12を参照。)と、上記の基礎軸部偏心距離算出工程で算出された基礎軸部11の偏心距離aP.1(図12を参照。)と、上記の変位角度測定工程で測定された偏心軸部12の変位角度φ(図12を参照。)とに基づいて、ワーク10の回転軸Lに対する中心線LP.2の偏心距離aP.2を算出する工程である。偏心軸部偏心距離算出工程は、上述した制御手段150における偏心軸部偏心距離算出手段154(図7を参照。)によって実行される。ワーク10の回転軸Lに対する偏心軸部12の偏心距離aP.2は、基礎軸部11に対する偏心軸部12の偏心距離bと、基礎軸部11の偏心距離aP.1と、偏心軸部12の変位角度φとを用いて、以下のように求めることができる。
ただし、偏心距離aP.2を算出するのに使用する式は、図12に示すように、基礎軸部11の中心線LP.1がワーク10の回転中心Lよりも点Pに近い側にあるとき、すなわち、点Cを中心とし、傾斜面111a,111aに接する円(図12における破線で描いた円を参照。以下、この円のことを「基準円」と呼ぶ。)の外径よりも、基礎軸部11の外径が小さい場合と、基礎軸部11の中心線LP.1がワーク10の回転中心Lよりも点Pに遠い側にあるとき、すなわち、上記基準円の外径よりも、基礎軸部11の外径が大きい場合とで異なる。以下、上記基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が小さい場合と、上記基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が大きい場合とに分けて説明する。
3.6.1 基準円の外径よりも基礎軸部の外径が小さい場合
上記基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が小さい場合には、上述した図12における三角形CP.1P.2に余弦定理を当てはめると、下記式12が得られる。
Figure 2017087372
上記式12は、偏心距離aP.2についての2次方程式である。上記式12を偏心距離aP.2について解くと下記式13が得られる。
Figure 2017087372
上記式13における基礎軸部11の偏心距離aP.1は、上述した基礎軸部偏心距離算出工程で算出され、図7に示すパラメータ記憶部151に記憶されている。また、上記式13における基礎軸部11に対する偏心軸部12の偏心距離bは、ワーク10を設計する際の数値がそのまま用いられる。偏心距離bは、図7に示すように、設定・操作手段160に入力されて制御手段150におけるパラメータ記憶部151に記憶されている。さらに、上記式13における偏心軸部12の変位角度φは、上記の変位角度測定工程によって測定され、図7に示すパラメータ記憶部151に記憶されている。このため、ワーク10の回転軸Lに対する偏心軸部12の中心線LP.2の偏心距離aP.2は、上記式13に、基礎軸部11の偏心距離aP.1と、基礎軸部11に対する偏心軸部12の偏心距離bと、偏心軸部12の変位角度φとを当てはめることによって算出することができる。
ただし、上記式13は、右辺第二項の符号が「+」と「−」の場合があるため、下記式14と下記式15との2つの式を含んでいる。すなわち、上記式13では、偏心軸部12の偏心距離aP.2を、下記式14で求められる値と下記式15で求められる値との二者択一まで特定することができるものの、それだけでは、一義的には特定することができないものとなっている。
Figure 2017087372
Figure 2017087372
しかし、基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が小さい場合において、偏心距離aP.2を、上記式14と上記式15のいずれを用いて一義的に算出できるのかは、
[条件1] b−aP.1 ・sinφ≧0 (aP.2が実数になる。)
[条件2] aP.2≧0 (aP.2は距離なので必ず0以上。)
[条件3] 上記式14と上記式15とが上記条件1,2を満たす異なる解を同時に持たない。
という条件から数学的に確定することができる。
また、基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が小さい場合において、偏心距離aP.2を、上記式14と上記式15のいずれを用いて一義的に算出できるのかは、偏心距離aP.1と偏心距離bとがaP.1≦bの関係を満たす場合と、aP.1>bの関係を満たす場合とのそれぞれにつき、変位角度φが、0°≦φ≦90°の範囲にある場合と、90°≦φ≦180°の範囲にある場合と、180°≦φ≦270°の範囲にある場合と、270°≦φ≦360°の範囲にある場合の図面をそれぞれ描き、それらの図面から数学的に検討することによっても確定することができる。
例えば、変位角度φが0°≦φ≦90°の範囲にあり、且つ、変位距離aP.1と変位距離bとがaP.1≦bの関係を満たすときには、上記式14で変位距離aP.2を一義的に算出することができる。
3.6.2 基準円の外径よりも基礎軸部の外径が大きい場合
図示は省略するが、上記基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が大きい場合について図を描き、同図における三角形CP.1P.2に余弦定理を当てはめて得られた式を、上記「3.6.1 基準円の外径よりも基礎軸部の外径が小さい場合」と同様に、偏心距離aP.2について解くと、下記式16が得られる。
Figure 2017087372
ただし、上記式16は、右辺第二項の符号が「+」と「−」の場合があるため、下記式17と下記式18との2つの式を含んでいる。すなわち、上記式16では、偏心軸部12の偏心距離aP.2を、下記式17で求められる値と下記式18で求められる値との二者択一まで特定することができるものの、それだけでは、一義的には特定することができないものとなっている。
Figure 2017087372
Figure 2017087372
しかし、基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が大きい場合において、偏心距離aP.2を、上記式17と上記式18のいずれを用いて一義的に算出できるのかは、上記の「3.6.1 基準円の外径よりも基礎軸部の外径が小さい場合」の欄で述べたのと同様、上記条件1〜3から数学的に確定することができる。また、基準円の外径よりも基礎軸部11の外径が大きい場合において、上記式17と上記式18のいずれを用いて一義的に算出できるのかは、上記の「3.6.1 基準円の外径よりも基礎軸部の外径が小さい場合」の欄で述べたのと同様、それぞれの場合について図面を描いて数学的に検討することによっても確定することができる。例えば、変位角度φが0°≦φ≦90°の範囲にあり、且つ、変位距離aP.1と変位距離bとがaP.1≦bの関係を満たすときには、上記式17で変位距離aP.2を一義的に算出することができる。
3.6.3 小括
このように、偏心軸部偏心距離算出工程を実行することによって、偏心軸部12の変位角度φが0°ではない場合(偏心軸部12の中心線LP.2が平面α(図12を参照。)上にない場合)であっても、変位角度φが90°単位でどのような範囲にあるのかや、偏心距離aP.1と偏心距離bとがaP.1≦bの関係を満たすか否かといった、大まかな条件を満たしさえすれば、偏心軸部12の偏心距離aP.2を一義的に求めることが可能となっている。したがって、ワーク10の基礎軸部11をV受けチャック110に保持させる際に、偏心軸部12の変位角度φが0°になるように偏心軸部12の位置を調整する作業を行うことなく、偏心軸部12の外周部を所望の寸法精度で研削することが可能となっている。
3.7 ワーク研削工程
ワーク研削工程は、研削装置100の動作モードがワーク研削モードに設定されている場合に実行される。本実施態様において、ワーク研削工程は、基礎軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.1と、変位角度測定工程で測定された変位角度φと、偏心軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.2とに応じて砥石を、図6に示すように、周期的に進退動させることによって、ワーク10における偏心軸部12の外径が所定の目標となるまで、偏心軸部12の外周部を研削するようになっている。
10 偏心ピン(ワーク)
11 基礎軸部
12 偏心軸部
12a 第一偏心軸部
12b 第二偏心軸部
13 中間軸部
14 突出軸部
21 第一マスターバー
100 研削装置
110 V受けチャック
111 Vブロック
111a V溝
111a 傾斜面
111a 傾斜面
112 スペーサーブロック
113 ワーク押圧手段
113a 押圧部
113b 支持部
114 Vブロックホルダ
115 取付ベース
120 砥石
130 変位測定手段
131 測定アーム
132 押えアーム
133 アーム支持部
140 回転盤
150 制御手段
151 パラメータ記憶部
153 基礎軸部偏心距離算出手段
154 偏心軸部偏心距離算出手段
155 砥石進退動制御手段
160 設定操作手段
170 V受けチャック用回転駆動機構
180 砥石用回転駆動機構
190 砥石用スライド駆動機構

Claims (4)

  1. 基礎軸部と基礎軸部から偏心して設けられた偏心軸部とを有するワークにおける偏心軸部の外周部を研削するためのワークの研削方法であって、
    軸Lを中心として回転可能な状態で支持されたV受けチャックにワークの基礎軸部を保持させ、基礎軸部の中心線LP.1を軸Lに対して平行に保ち、偏心軸部の外周部に当てた砥石を軸Lに交差する方向に周期的に進退動させながら、ワークをV受けチャックとともに軸Lを中心として回転させることによって、偏心軸部の外周部を研削するようにするとともに、
    偏心軸部の外周部の研削に先立って、
    外径dM.1が既知の第一マスターバーをV受けチャックに保持させ、軸Lに対する第一マスターバーの中心線LM.1の偏心距離aM.1を測定する第一マスターバー測定工程と、
    少なくとも、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1とに基づいて、軸Lに対する中心線LP.1の偏心距離aP.1を算出する基礎軸部偏心距離算出工程と
    を行っておき、
    偏心軸部の外周部の研削を行う際に、
    基礎軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.1に応じて砥石を周期的に進退動させる
    ことを特徴とするワークの研削方法。
  2. 偏心軸部の外周部の研削に先立って、さらに、
    外径dM.2が既知の第二マスターバーをV受けチャックに保持させ、軸Lに対する第二マスターバーの中心線LM.2の偏心距離aM.2を測定する第二マスターバー測定工程
    を行っておき、
    基礎軸部偏心距離算出工程において、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第二マスターバーの外径dM.2と、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1と、第二マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.2とに基づいて、偏心距離aP.1を算出する
    請求項1記載のワークの研削方法。
  3. 偏心軸部の外周部の研削に先立って、さらに、
    基礎軸部の中心線LP.1と軸Lとを含む平面αに対する、偏心軸部の中心線LP.2と軸Lとを含む平面βの変位角度φを測定する変位角度測定工程と、
    少なくとも、基礎軸部の中心線LP.1に対する偏心軸部の中心線LP.2の偏心距離bと、基礎軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.1と、変位角度測定工程で測定された変位角度φとに基づいて、軸Lに対する中心線LP.2の偏心距離aP.2を算出する偏心軸部偏心距離算出工程と
    を行っておき、
    偏心軸部の外周部の研削を行う際に、さらに、変位角度測定工程で測定された変位角度φと、偏心軸部偏心距離算出工程で算出された偏心距離aP.2とに応じて砥石を周期的に進退動させる
    請求項1又は2記載のワークの研削方法。
  4. 基礎軸部と基礎軸部から偏心して設けられた偏心軸部とを有するワークにおける偏心軸部の外周部を研削するためのワークの研削装置であって、
    軸Lを中心として回転可能な状態で支持されたV受けチャックにワークの基礎軸部を保持させ、基礎軸部の中心線LP.1を軸Lに対して平行に保ち、偏心軸部の外周部に当てた砥石を軸Lに交差する方向に周期的に進退動させながら、ワークをV受けチャックとともに軸Lを中心として回転させることによって、偏心軸部の外周部を研削するものとされるとともに、
    偏心軸部の外周部の研削に先立って、外径dM.1が既知の第一マスターバーをV受けチャックに保持させ、軸Lに対する第一マスターバーの中心線LM.1の偏心距離aM.1を測定する第一マスターバー測定モードと、
    少なくとも、基礎軸部の外径dP.1と、第一マスターバーの外径dM.1と、第一マスターバー測定工程で測定された偏心距離aM.1とに基づいて算出された軸Lに対する中心線LP.1の偏心距離aP.1に応じて砥石を周期的に進退動させながら、V受けチャックをワークとともに軸Lを中心として回転させることによって、偏心軸部の外周部を研削する偏心軸部研削モードと、
    を備えたことを特徴とするワークの研削装置。
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