JP2017067512A - 外径測定器およびそれを用いた研削装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】クランクピン等の偏心運動するワークを加工する際に、加工中に正確にワーク径を測定することができる測定装置を提供する。【解決手段】ピン径測定装置10は、自転せずに公転のみの旋回運動をするワーク55を研削する研削装置80に用いられる。加工中または停止中のいずれかに、ワーク55の外径を計測する。ワーク55に当接する接触子21を先端部に有するデジタルセンサ20と、デジタルセンサ20を収容する貫通穴が中央部に形成され長手方向に延びるVベース19と、このVベース19の先端側であって接触子21の両側にほぼV字状に配置される3個の保持部材41、42を有する。3個の保持部材41、42は、V字状の一方辺側に2個、他方辺側に1個配置され、一方辺側に配置される2個の保持部材はワーク55の軸方向について接触子21を挟んで位置する。【選択図】 図5

Description

本発明は、旋回運動するピンまたは丸棒状のワークの外径を測定する測定器およびそれを用いる装置に係り、特にエンジンのクランクピン等を研削する際に好適な外径測定器およびそれを用いた研削装置に関する。
従来のピン径測定装置の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載のものは本願出願人の発明に係るものであるが、ワークを砥石で研削中に、測定ヘッドと砥石との接触を防止するとともに、旋回運動するワークに測定装置を追従させて、時時刻刻におけるワークの正確な外径の測定を可能としている。そのため、ピン径測定装置は、切り込み方向に移動する刃物台に固定した固定アームと、固定アームに平行に移動する可動アームと、固定アームと可動アームのそれぞれに支点部材で連結され、互いに平行な2本の連結アームとで平面四節リンク機構を形成している。さらに、ワークの径を測定する測定ヘッドを、平面四節リンク機構に保持している。これにより、ワークの旋回運動に測定ヘッドを追従させている。
クランクピンの直径を測定する従来の装置の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の装置では、研磨機械の研磨運転中にクランクシャフトのクランクピンの直径を測定するため、砥石とともにスライド運動するスライド部に支持部を設け、この支持部に対して回転する第1アームと、第1アームに対して回転する第2アームと、第2アームに保持した参照装置と、計測装置とを設けている。計測装置に隣り合って、ループ状の案内装置が設けられ、この案内装置がクランクシャフトへ計測装置を導くようになっている。
特許文献3には、回転加工中の部品の外径を瞬間的に測定し、その測定結果を動的に演算して、加工装置を制御することが記載されている。本公報においては、加工装置を研削装置とし、クランクシャフトを研削することが例示されている。その際、クランクシャフトのクランクピンの外径を測定する測定装置が、クランクシャフトに近接して配置されている。また、特許文献4には、クランクピンのような回転軸から偏心したワークの加工において、省スペース化、小型化した簡単なワークの外径測定装置を提供することが開示されている。この特許文献4においては、三点接触法により、3個の接触子を円筒面に接触させて、円筒形を求めている。
特開2005−195484号公報 特表平11−513317号公報 特表2008−501536号公報 特開2007−160458号公報
上記従来のワーク加工装置においては、いずれも加工中にワークの外径を正確に把握するために、種々の工夫がなされている。例えば、特許文献1では四節リンク機構を採用することにより、円筒状ワークの動きにピン径測定装置を追従させている。そのため、加工中に発生するびびり等の振動が極小であれば、簡単な装置で、正確な測定が可能である。しかし、振動が大きくなったり、または測定装置の組み立て誤差があると測定誤差が生じる恐れがある。つまり、ワークに対して測定装置を、ワークの外周の2点で保持しているため、測定点及び2点の保持点で形成される面外の力や円筒軸方向の力が加わると、ワークに対して測定装置が傾いてしまい、この傾きはわずかであっても、加工深さが微小な研削装置等では、相対的に大きな加工誤差になる。
また、上記特許文献2に記載の装置では、案内装置を設けているので、測定位置に測定装置を導くことは容易であるが、測定中はやはりワークの外周円筒面の2点で測定装置を接触させる構造であるから、特許文献1と同様に、面外の力や軸方向の力が加わると、測定装置が設定した姿勢からずれて傾き、測定誤差を引き起こす可能性がある。また、研削等においては、砥石は焼結材等を用いるので微視的に見れば必ずしも表面が平たんではないので、研削中にわずかな振動を引き起こして外径測定値に変動を生じる恐れもある。
さらに上記特許文献3では、ワーク径の測定値に変動が生じることを前提に、計測結果の演算処理について開示している。そのため、ワーク径測定装置が測定中に、測定値そのものの変動を抑えて測定精度を向上させるために、測定装置をワークにいかに保持するかについては、考慮されていない。特許文献4では、3点接触法により測定の迅速化が図られているが、測定子を3個必要とするため、装置が大型化して砥石等の邪魔になる恐れがあるとともに、装置が複雑化する。また、円筒面を前提にしているから、ワークが円筒面から微小に異なっていれば、その分測定精度が低下する。
本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、クランクピン等の偏心運動するワークを加工する際に、加工中に正確にワーク径を測定することができる測定装置を提供することにある。本発明の他の目的は上記目的に加え、測定装置の組み立て誤差に基づく測定変動の恐れやワークの加工中にびびり等の振動が発生しても、ワークをより確実に保持して正確なワーク径を得るとともに、簡易な構成でワーク径の測定装置を実現することにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、旋回運動をするワークを加工する加工装置に用いられ、加工中または停止中のいずれかに前記ワークの外径を計測する外径測定器において、前記ワークに当接する接触子を先端部に有するセンサと、前記センサを収容する貫通穴が中央部に形成され長手方向に延びるVベースと、このVベースの先端側であって前記接触子の両側にほぼV字状に配置される3個の保持部材とを有し、前記3個の保持部材はV字状の一方辺側に2個、他方辺側に1個配置され、一方辺側に配置される2個の保持部材はワークの軸方向について前記接触子を挟んで位置することにある。
本発明は、自転せずに公転のみの旋回運動をするワークを加工する装置にも好適に使用することができる。
そしてこの特徴において、前記保持部材は、ワークの軸方向に対して、他方辺側に配置される1個の位置をほぼ前記接触子の位置とするのがよく、一方辺側に配置される2個の保持部材の位置を前記接触子から等距離離れた位置とするのが好ましい。ここで前記接触子から等距離離れた位置とは、2個の保持部材のそれぞれとワークとの接触点から前記接触子までの距離が等距離離れている位置ということを意味する。また、前記ワークは円筒状または円柱状であり、前記保持部材は、円筒軸または円柱軸に実質的に垂直に配置するのがよい。さらに、前記保持部材は、前記ワークに点接触となるよう前記ワークへの当接側形状を円柱状または円筒状または三角形の突起状としてもよい。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、内燃機関のクランク軸が有するクランクピン等の旋回運動するワークを研削する研削装置において、回転運動し回転軸に直角な方向に進退自在な砥石と、ワークを回転させる駆動機構と、前記砥石に当接して配置されるワークに近接しかつ前記砥石とワークとの当接部から離れた周方向位置に配置される外径測定器と、一端側を前記砥石の駆動機構に回動可能に固定されたアームとを備え、前記外径測定器は、ワークの半径方向に可動で先端部にワークに当接する接触子を有するセンサと、前記センサを内部に収容し先端部がV字状に形成されたVベースと、前記VベースのV字状端面に配置した3個の保持部材とを有し、前記3個の保持部材はV字状の一方辺側に2個、他方辺側に1個配置され、一方辺側に配置される2個の保持部材はワークの軸方向について前記接触子を挟んで位置し、前記ワークの旋回とともに前記砥石が進退してワークとの当接位置を上下方向に変化させ、前記外径測定器がワークと砥石の当接位置の変化に追随可能になるように前記アームは回動可能で有り、前記アームは、前記外径測定器がワークと砥石の当接位置の変化に追随するように駆動される。
そしてこの特徴において、前記ワークは円筒状または円柱状であり、前記保持部材は、円筒軸または円柱軸に実質的に垂直に配置するのがよく、前記保持部材は、ワークの軸方向に対して、他方辺側に配置される1個の位置をほぼ前記接触子の位置とし、一方辺側に配置される2個の位置を前記接触子から実質的に等距離離れた位置とするのが好ましい。
ここで前記接触子から等距離離れた位置とは、上述したように、2個の保持部材のそれぞれとワークとの接触点から前記接触子までの距離が等距離離れている位置ということを意味する。
本発明によれば、偏心運動するワークの加工中において、ワーク径を測定する測定装置として、接触子部とこの接触子部を挟んでワークの円周方向両側にV字状に配置した合計3個の保持部材を設けたので、加工中に正確にワーク径を測定できる。また、保持部材は単純形状であるから、測定装置の組み立て誤差やワークの加工中のびびり等の振動も吸収でき、正確な測定が可能になる。さらに、V字状に3個の保持部材を配置するだけであるから、ワークを確実に保持できる簡易な構成となる。
本発明に係る研削装置の一実施例における砥石部の正面図である。 本発明に係る研削装置の一実施例の側面図である。 本発明に係る研削装置を用いた加工を説明する図である。 本発明に係る外径測定器の一実施例の部分断面図および側面図、A−A、B−B断面図である。 図4に用いた保持部材およびその変形例の取り付け状態を説明する図である。 比較例で示した保持部材の取り付け状態を説明する図である。
以下、本発明に係る外径測定器(ピン径測定装置とも称す)及びこの外径測定器を備える研削装置を、図面を用いて説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施例に係るピン径測定装置10及びそれを備える研削装置80の概略図であり、図1は研削装置80の正面図、図2は研削装置80の側面図である。研削対象であるワーク55は、詳細を後述するように、内燃機関のクランク軸が有するクランクピン55である。なお、本実施例ではクランクピンの研削加工を例にとり説明するが、本発明はクランクピンの研削加工に限るものではなく、自転せずに公転する(以下旋回運動と称す)丸棒や円筒材の研削加工や旋削加工等の加工一般に適用できる。
公転し自転もするワークについては、クランク軸をある旋回位置、たとえば真横に固定することで、クランクピンを回転させればよく、測定器を一定位置に固定できるので測定誤差も少なくなる。即ち、測定及び研削等の加工を容易に行うことができ、本発明の装置においても容易に精度良く測定、研削を行うことができる。しかしながら、内燃機関のクランク軸が有するクランクピンについては、自転しないため、加工が難しくなり、測定器の位置も変えながら測定し、研削も旋回運動するワークに追従しながら行う必要がある。本発明は、ワークが公転し自転する場合はもちろん、公転して自転はしない場合においても適用でき、精度良く測定及び研削できるものである。
図1において、研削装置80では、回転運動(図1では時計回りの回転)する砥石84が砥石支持部材83に回転可能に支持されている。なお、砥石84は図2に示すように、回転駆動機構(モータ)88により回転駆動される。砥石支持部材83は、砥石84の回転軸に直角な方向に進退(B/F)可能に設けられた砥石ベース82に固定されている。砥石ベース82の下面には、間隔を置いてガイドレール81に係合する直動ガイド85が設けられている。直動ガイド85は、基礎に固定されたレール上を抵抗少なく滑動する。砥石ベース82を進退させる直動機構86が砥石ベース82上に配置されている。なお、本実施例では、ガイドレール81と直動ガイド85で砥石ベース82を進退させているが、ボールねじやリニアベアリング、ボールスプライン等の他の直動機構を用いてもよいことは言うまでもない。
砥石支持部材83の上部には、柄杓状のアーム12の一端が、回転中心12aで回転可能に取り付けられている。アーム12の他端には、ピン径測定装置(外径測定器)10が回転中心12bで回転可能に取り付けられている。砥石84にはワークであるクランクピン55が当接しており、ピン径測定装置10の先端部はクランクピン55と砥石84との当接部とは異なる周方向位置で、クランクピン55に当接する。砥石84とクランクピン55とが安定して当接するように、アーム12及びピン径測定装置10には、砥石84に近づくような力を付与するばね等の付勢手段(図示せず)が、砥石ベース82または砥石支持部材83とアーム12やピン径測定装置10の間に設けられている。クランクピン55が旋回運動すると、それに応じて砥石84が進退(F/B)するが、付勢手段によりピン径測定装置10はクランクピン55に追従して移動することが可能になる。
図2において、紙面の前側にはクランクシャフト50を駆動するクランクシャフト駆動部が、後側には砥石部がそれぞれ配置されている。クランクシャフト駆動部は、クランクシャフト50の両端部を回転支持する回転支持部62を有し、クランクシャフト50の一方端に取り付けた回転駆動機構(モータ)64により、クランクシャフト50は回転駆動される。
クランクシャフト50の詳細と、クランクピン55と砥石84との関係を、図3を併用して説明する。図3(a)に詳細を示すように、クランクシャフト50は軸方向に異なる2か所にその回転中心から偏心した部分、すなわちクランクピン55を有している。2本のクランクピン55は周方向に180°位相を変えて、配置されている。図2では、左側のクランクピン55が下死点の位置にあり、右側のクランクピンが上死点の位置にある。
クランクシャフト50の回転を図示しないセンサで検出して、制御装置100に入力信号94として入力する。一方、制御装置100からはモータ64を制御する制御出力信号96が指令される。同様に、砥石84と砥石ベース82を駆動する直動機構86から回転信号93や位置信号92が制御装置100に入力され、制御装置100からそれぞれ指令信号97,98が出力される。この時、ピン径測定装置10からワークであるクランクピン55の外径が制御装置100に入力信号91として入力される。制御装置100は、これらの各入力信号92〜94に基づいて各駆動装置64、88、86を駆動し、ピン径測定装置10の入力信号91に基づいて、研削装置80がクランクピン55を所定値まで研削したか否かを判断する。そして、クランクピン55の外径が所定の許容範囲に入ったら、研削を終了する。
本実施例で示す研削対象のクランクシャフト50は、図3(a)に示すように、フロントシャフト51とリアフランジ52との間に、ワークであるクランクピン55で連結された1対のクランクウェブ54が複数設けられ、それら各部をジャーナル53で結合して構成されている。図3(a)の右側のクランクピン55は、上死点に達しており、この時のクランクピン55の最高位置となる外周上の点、すなわち真上の点を基準点Pとする。
図3(b)に示すように、クランクシャフト50が回転運動をすると、クランクピン55は旋回運動をし、それに応じて砥石84は最大Δxだけ進退する。クランクピン55上の基準点Pは、クランクピン55が上死点位置では真上になり、その時砥石84は位置84(B)に位置し、クランクピン55の水平位置よりわずかに下方で砥石84はクランクピン55に当接する。クランクシャフト50の回転が進み、クランクピン55が水平位置まで90°回転すると、基準点Pは水平位置となり、基準点Pと周方向180°異なる点で砥石84とクランクピン55は当接する。この時砥石84は位置84(C)に位置し、最後方位置から前方へΔxだけ移動している。さらにクランクピン55が回転してクランクピン55が下死点に到達すると、基準点Pは最低位置となり、クランクピン55は水平よりわずかに上方で砥石84に当接する。この時砥石84は位置84(B)に位置し、Δxだけ前進している。さらに90°だけクランクシャフト50の回転が進むと、クランクピン55は、水平位置に達した基準点Pで砥石84に当接する。この時砥石84は、最後方位置である位置84(A)にある。このようにクランクシャフト50の回転に対するクランクピン55と砥石84の当接位置の関係が変化するので、研削加工中のクランクピン55の外径を、加工中に安定して計測するためには、計測部において接触子21とクランクピン55が安定して接触することが必要になる。
図4ないし図6に、安定して測定可能な本発明に係るピン径測定装置10の詳細を示す。図4はピン径測定装置10の先端部分の断面図および側面図である。図1に示したようにピン径測定装置10は、一端側をアーム12に回転可能に取り付けられた細長い概略棒状をしており、その先端部は図4に示す形状になっている。ピン径測定装置10の先端部には、中央部に外径測定センサであるデジタルセンサ20が保持されるように断面矩形状または台形状または円形の穴が貫通したVベース19を有している。ここでは、センサとしてデジタルセンサ20を用いて説明しているが、アナログセンサを用いても良いことは言うまでも無い。また、本発明で用いられるセンサとしては、その先端部が測定対象に当接し、測定対象を押圧するように付勢され、測定対象のサイズの変動を先端部の移動距離として検出するタイプのものを好適に使用することができるが、これに限定されるものでは無く、様々なタイプのセンサを使用することができる。
Vベース19のワーク55に当接する側は、矩形断面をV字型にカットした形状であり、さらに、研削装置80に取り付けられた場合に上側になる部分は、砥石84との干渉を避けるため、上下方向をカットされた形状となっている。Vベース19の中央部を貫通して配置されるデジタルセンサ20はリニアセンサであり、先端部にルビー等の球で形成された接触子21を有する。
Vベース19のV字を構成する斜面には、断面が台形状の上側取付板44と下側取付板45が取り付けられており、各取付板44、45にはワーク55に点接触するように配置された上側保持部材41と下側保持部材42がロー付け43等で固定されている。ここで上側保持部材41と下側保持部材42には、ワーク55を傷つける恐れがないようまた研削加工中変形しないよう、金属製の丸棒または丸チューブを用いている。上側取付板44および下側取付板45の表面からの高さを合わせるために、上側取付板44および下側取付板45の表面には、上側保持部材41および下側保持部材42の取り付け位置に溝を予め形成しておくことが好ましい。
次に、図5及び図6を用いて、ピン径測定装置10の先端部に配置される接触子21と保持部材41、42の詳細を説明する。図5(a)は、クランクピン55と保持部材41、42との関係を示す正面図および左右側面図である。理解を容易にするため、接触子21は錐状の先がとがった丸棒としているが、上述した通り球状の接触子21であってもよい。また、保持部材41、42も丸棒としているが、円筒や角棒、三角柱状棒であってもよい。いずれの場合でも、円筒面に接する際に点接触を疑似でき、かつクランクピン55の研削加工中に変形しない強度を有するようにその外径を選定する。また、その軸方向長さは、上側に位置する場合には、研削加工中に砥石84と干渉しない長さとするのがよい。本実施例では、使用時に上側に位置する上側保持部材41と下側に位置する下側保持部材42を、いずれも同じ長さとしている。
上側保持部材41は、間隔を置いて2個設けられており、それぞれ、クランクピン55の軸に、その長手方向が実質的に垂直になるように配置されている。下側保持部材42は、1個だけ設けられており、これもクランクピン55の軸に、その長手方向が実質的に垂直になるように配置されている。したがって、2つの上側保持部材41同士は、ほぼ平行になっている。ここで、上側保持部材41および下側保持部材42は、図4に示すようにピン径測定装置10の先端部に配置されるVベース19上に取り付けられるので、Vベース19の傾きに応じて互いに角度θをなすように取り付けられている。この角度θは、90°〜150°程度であれば、ワークであるクランクピン55を安定して保持できる。
クランクピン55を保持部材41、42で安定して保持する場合、上側保持部材41と下側保持部材42のクランクピン55の軸方向位置も重要となる。クランクピン55に外力が作用しない場合には、クランクピン55は保持部材41,42で3点支持されているので、保持部材41,42の軸方向位置にかかわらず、安定してクランクピン55を保持でき、接触子21の位置でのクランクピン55の外径の測定に支障を起こさない。しかしながら、実際の研削加工中には、研削部で砥石84により接線方向の力が発生するとともに、砥石84の表面の微小な凹凸により小さな変動力が発生する。これらは、通常は研削部とは周方向にほぼ反対側に位置するクランクピン55の測定部にも影響し、接触子21による測定精度を低下させる恐れがある。
そこで、本発明においては、2個の上側保持部材41、41を、接触子21の位置を挟んで軸方向にほぼ等距離だけ離し、下側保持部材42を接触子21の軸方向位置とほぼ同じ軸方向位置に定めている。これにより、上側保持部材41と下側保持部材42がクランクピン55に当接する3点で形成される3角形は二等辺三角形になり、接触子21がクランクピン55に接触する点をこの二等辺三角形に投影すると、二等辺三角形のほぼ中央部付近(端ではない所)に位置することになる。この場合、接触子21は、上側保持部材41と下側保持部材42により、安定した測定が可能になる。
なお、切削加工により接触子21に加えられる外力の程度がそれほど大きくなければ、上側保持部材41、下側保持部材42の軸方向位置は必ずしも接触子21から等距離である必要はない。ただし、その場合においても、3個の保持部材41、42とクランクピン55との当接位置が作る三角形内に接触子21の投影位置を含むと、接触子21を用いた安定した測定が可能になる。
上記実施例では上側保持部材41を2個、下側保持部材42を1個としたが、その逆に上側保持部材41を1個、下側保持部材42を2個としてもよい。ただし、その場合においても、保持部材41、42と接触子21との間では、上記の軸方向位置関係を満足する必要がある。
さらに、上記実施例では保持部材41、42をクランクピン55の中心軸に対してほぼ垂直になる方向に配置しているが、1個しか配置しない側の保持部材をクランクピン55の軸に対してほぼ垂直にすれば、同一側に配置する2個の保持部材間では、「ハ」の字になるように配置しても構わない。この場合も、クランクピン55は安定して保持部材41、42で保持可能となる。
次に、2本同一側に配置される保持部材の変形例を、図5(b)〜(d)に示す。図5(b)は、図4で示した取付板44、45と保持部材を一体化した場合である。保持部材を一体化するのは、加工性を向上させるためであるから、取付板45bの上に断面三角形状の突起41b、41bを機械加工で形成する。機械加工が容易なように保持部材である突起41bの形状を断面三角形状にしている。
図5(c)は、取付板45cに予め溝を作成して、その溝に保持部材である丸棒または円筒41cをロー付け43c等で固定したものである。これは、上記実施例をさらに具体化した例である。図5(d)は、取付板46と保持部材43dを、Vベース19の長手方向に長くして取付板をスペーサ46として利用したものである。この場合、スペーサ46を変えるだけで、異なる径や軸長のクランクピン55に容易に対応できる。
次に上記実施例および変形例で示した保持部材41、42の作用・効果を、比較例と比較して、図6を用いて説明する。図6(a)は、上記実施例に示した本発明に係る保持部材41、42とワークであるクランクピン55の関係を示す図である。上記したように、2個の上側保持部材41、41はクランクピン55の軸方向に間隔Wを置いて配置され、これらの軸方向ほぼ中央位置に、下側保持部材42が配置されている。接触子21は、ほぼ下側保持部材42と同じ軸方向位置にある。このように接触子21および保持部材41、42を配置すると、研削加工により砥石84とクランクピン55との当接部に、接線方向荷重とともに何らかの要因で軸方向荷重Fや曲げモーメントM等が発生しても、測定部に設けた保持部材41、42は、荷重モーメントMや軸方向荷重Fに抗して、測定部を安定して保持できる。
これに対して、図6(b)で示す上下に各1個の保持部材72、71を配置した場合には軸方向荷重には抗することが可能であるが、荷重モーメントMに対しては支持手段がないので容易にモーメントMに屈して、接触子21の位置を維持することが困難になる。図6(c)の場合には、3個の保持部材71〜73を用いてクランクピン55を保持している。しかし、クランクピン55の軸方向荷重及び長手方向曲げモーメントには耐え得るものの、軸方向ほぼ同一位置に配置した2個の保持部材71、72周りのモーメントMに対しては、支持手段がない。そのため、モーメントMによりクランクピン55のピン径測定装置10に対する相対姿勢が変化し、接触子21の位置を維持することが困難になる。
図6(d)は、上記実施例と同様に、2個の上側保持部材72、74と、1個の下側保持部材71を設けている。実施例とは上側保持部材72、74の軸方向位置が異なっているため、クランクピン55の荷重モーメントMに対して、抗することが困難になっている。この図からわかるように2個設ける保持部材72,74の軸方向位置は重要であり、この図6(d)の場合には、保持部材71、72、74がクランクピン55と接触する点が形成する三角形内に、接触子21を投影した点が入らなくなっている。あるいは、入ったとしても三角形内の端部(各辺または頂点の付近)に位置することになる。
図6(e)は、いわゆる不静定の場合である。クランクピン55を確実に保持しようとして、保持部材71、72、74、75の数を4個以上にすると、1個の保持部材、例えば保持部材75がクランクピン55から浮いてしまい、逆に保持部材75をクランクピン55に接触させようとすると、保持部材72が浮く、というような不具合を生じる。この場合、砥石84とクランクピン55の当接部で研削加工中に生じる力により、測定部には振動またはがたつきが生じ、不安定な測定となる。
以上説明したように、本実施例および変形例では、3個の保持部材を、接触子を挟んで周方向に1個と2個に分けて配置し、軸方向には、接触子とほぼ同じ位置に1個側の保持部材を配置し、2個側の保持部材を接触子からほぼ等距離だけ離して配置したので、クランクピンと砥石の当接部で発生する力やモーメントの影響を容易に打ち消すことができる。特に2個側の保持部材を接触子からほぼ等距離に配置したので、微小な変動があっても接触子はその中間の平均値を検出するので、測定精度が低下する恐れがない。また、上記説明では、自転せずに公転するワークを例にとり説明したが、自転と公転の双方を行うワークを加工する場合に適用できることは言うまでもない。
10…ピン径測定装置(外径測定器)、12…アーム、12a、12b…回転中心、19…Vベース、20…デジタルセンサ、21…接触子、30…測定機構、41…上側保持部材、41b…突起、41c…保持部材、42…下側保持部材、43、43c…ロー付け、43d…保持部材、44…上側取付板、45…下側取付板、45b、45c…一体型取付板、46c…ロー付け、46d…スペーサ、50…クランクシャフト、51…フロントシャフト、52…リアフランジ、53…ジャーナル、54…クランクウェブ、55…ワーク(クランクピン)、61…クランクシャフト・ベース、62、63…回転支持部、64…回転駆動機構(モータ)、71〜75…保持部材、80…研削装置、81…ガイドレール、82…砥石ベース、83…砥石支持部材、84…砥石、84(A)〜84(C)…砥石位置、85…直動ガイド、86…直動機構、88…回転駆動機構(モータ)、91〜94…入力信号、96〜98…出力信号、100…制御装置

Claims (9)

  1. 旋回運動をするワークを加工する加工装置に用いられ、加工中または停止中のいずれかに前記ワークの外径を計測する外径測定器において、
    前記ワークに当接する接触子を先端部に有するセンサと、前記センサを収容する貫通穴が中央部に形成され長手方向に延びるVベースと、このVベースの先端側であって前記接触子の両側にほぼV字状に配置される3個の保持部材とを有し、前記3個の保持部材はV字状の一方辺側に2個、他方辺側に1個配置され、一方辺側に配置される2個の保持部材はワークの軸方向について前記接触子を挟んで位置することを特徴とする外径測定器。
  2. 前記保持部材は、ワークの軸方向に対して、他方辺側に配置される1個の位置を前記接触子の位置としたことを特徴とする請求項1に記載の外径測定器。
  3. 前記保持部材は、ワークの軸方向に対して、一方辺側に配置される2個の位置を前記接触子から等距離離れた位置としたことを特徴とする請求項1または2に記載の外径測定器。
  4. 前記ワークは円筒状または円柱状であり、前記保持部材は、円筒軸または円柱軸に垂直に配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の外径測定器。
  5. 前記保持部材は、前記ワークに点接触となるよう前記ワークへの当接側形状を円柱状または円筒状または三角形の突起状としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の外径測定器。
  6. 内燃機関のクランク軸が有するクランクピン等の旋回運動するワークを研削する研削装置において、
    回転運動し回転軸に直角な方向に進退自在な砥石と、前記ワークを回転させる駆動機構と、前記砥石に当接して配置されるワークに近接しかつ前記砥石と前記ワークとの当接部から離れた周方向位置に配置される外径測定器と、一端側を前記砥石の駆動機構に回動可能に固定されたアームとを備え、
    前記外径測定器は、前記ワークの半径方向に可動で先端部に前記ワークに当接する接触子を有するセンサと、前記センサを内部に収容し先端部がV字状に形成されたVベースと、前記VベースのV字状端面に配置した3個の保持部材とを有し、前記3個の保持部材はV字状の一方辺側に2個、他方辺側に1個配置され、一方辺側に配置される2個の保持部材は前記ワークの軸方向について前記接触子を挟んで位置し、前記ワークの旋回とともに前記砥石が進退して前記ワークとの当接位置を上下方向に変化させ、前記外径測定器が前記ワークと前記砥石の当接位置の変化に追随可能になるように前記アームが回動可能であることを特徴とする研削装置。
  7. 前記ワークは円筒状または円柱状であり、前記保持部材は、円筒軸または円柱軸に垂直に配置したことを特徴とする請求項6に記載の研削装置。
  8. 前記保持部材は、ワークの軸方向に対して、他方辺側に配置される1個の位置をほぼ前記接触子の位置とし、一方辺側に配置される2個の位置を前記接触子から等距離離れた位置としたことを特徴とする請求項6または7に記載の研削装置。
  9. 請求項6に記載の研削装置であって、
    前記外径測定器が、請求項2または5に記載の外径測定器であることを特徴とする研削装置。
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