JP2017087246A - 金型及びプレス加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス加工を繰り返しても、素材の金型に対する位置決め精度を良好に維持できるプレス加工用の金型を提供する。プレス加工された製品の形状や寸法の精度を良好に維持できるプレス加工方法を提供する。【解決手段】上型2と下型3を備えて、上型2と下型3の間に板状のワーク5を挟んで、ワーク5をプレス加工する金型4に、上型2に取り付けられて、ワーク5に当接してワーク5を凹入させる凸部22と、上型2に取り付けられて、次工程においてワーク5の位置決めに使用されるパイロット孔をワーク5に形成するパンチ28と、を備える。【選択図】図4

Description

本発明はプレス加工用の金型及びプレス加工方法に関する。
プレス加工工程を複数の工程に分割して、プレス加工を繰り返すことがある。特に、深絞りを行う場合や製品の形状が複雑な場合には、複数個の金型がプレス加工に関与する。例えば、特許文献1には、燃料電池の構成部品であるセパレータに溝条を成形する工程を、予備成形工程と、予備成形されたワークをさらに加工して、溝条を完成させる本成形工程に分割することが記載されている。この場合、予備成形工程と本成形工程において、それぞれ専用の金型が使用される。
このように、特定のワークの加工に複数個の金型が関与する場合は、金型を変えても金型に対するワークの相対的な位置が変化しないように、ワークを各金型に対して高精度に位置決めする必要がある。その手段としてパイロットピンとパイロット孔の組合せが知られている。パイロットピンとパイロット孔を使用して、ワークを金型に対して高精度に位置決めして実施されるプレス加工方法は、例えば、特許文献2に開示されている。
特許文献2に記載の方法では、最初に、セパレータの素材(厚さ0.3〜0.7mm程度のステンレス板やチタン板)を第1の金型装置に通して、2つのパイロット孔を所定ピッチで形成する。そして、パイロット孔が形成された素材は、リールに巻き取られる(第0057〜0059段落)。
リールに巻き取られた素材は、次の工程に搬送されて、第2の金型装置に通される。この時、素材は第1の金型装置で形成されたパイロット孔を基準にして、第2の金型装置に対して位置決めされる。そして、素材にはダミー溝が形成され、第2のリールに巻き取られる(第0060段落)。
第2のリールに巻き取られた素材は、最後の工程に搬送されて、第3の金型装置に通される。第3の金型装置は5つのステーションを備え、素材は5つのステーションを逐次移動して、加工される。この時、素材は各ステーションにおいて、第1の金型装置で形成されたパイロット孔を基準にして、位置決めされる(第0061〜0063段落)。
特開2003−249238号公報 特開2015−42418号公報
特許文献2に記載された方法では、第1の金型装置を使って素材に穿設されたパイロット孔を、第2の金型装置で素材の位置決めに使用し、更にその後、第3の金型装置の複数のステーションにおいて繰り返し使用している。一方、パイロット孔を素材の位置決めに使用すると、プレス加工の過程でパイロット孔の周囲に大きな応力が生じる。その結果、パイロット孔は変形する。パイロット孔の変形量は、プレス加工を繰り返す度に大きくなる。そして、変形量が許容範囲を超えると、そのパイロット孔は、もはや位置決め手段として用をなさなくなる。そのため、特許文献2に記載された方法では、特に最終工程において、素材の金型に対する位置決め精度が低下して、その結果、プレス加工された製品の形状や寸法の精度が低下すると言う問題が生じる場合があった。
本発明は、上記の問題を解決するために成されたものであり、プレス加工を繰り返しても、素材の金型に対する位置決め精度を良好に維持できるプレス加工用の金型を提供するものである。また、プレス加工を繰り返しても、プレス加工された製品の形状や寸法の精度を良好に維持できるプレス加工方法を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明に係る金型は、上型と下型を備えて、前記上型と前記下型の間に板状のワークを挟んで、前記ワークをプレス加工する金型において、前記上型と前記下型のいずれか一方に取り付けられて、前記ワークに当接して前記ワークを凹入させる凸部と、前記上型と前記下型のいずれか一方に取り付けられて、次工程において前記ワークの位置決めに使用されるパイロット孔を前記ワークに形成するパンチと、を備えるものである。
このように、金型に凸部とパンチを備えれば、ワークの成形の際に新たなパイロット孔が形成されるので、次工程において、歪みのないパイロット孔を使ってワークの位置決めを行うことができる。
前記パンチは、前記金型に進退自在に取り付けられるとともに、前記パンチを前記金型から進退させて前記ワークに打ち当てるアクチュエータを備えるようにしても良い。
このように、パンチをワークに打ち当てるアクチュエータを金型に備えれば、パンチをワークに打ち当てるタイミングを任意に選択することができる。そのため、パンチをワークに打ち当てるタイミングの最適化が容易になる。
前記パンチと前記凸部は、前記上型と前記下型のいずれか一方の同一の型に固定されるともに、前記パンチの前記金型からの突出高さを、前記凸部の前記金型からの突出高さよりも低くするようにしても良い。
このように、パンチを金型に固定すれば、アクチュエータが不要になるので、金型を簡易に構成することができる。
前記上型と前記下型のいずれか一方に取り付けられて、前工程で前記ワークに形成されたパイロット孔に挿嵌されて、前記ワークを前記金型に対して位置決めするパイロットピンを備えるようにしても良い。
このように、金型にパイロットピンを備えれば、ワークの位置決め精度が向上する。その結果、次工程で使用されるパイロット孔の位置精度が向上する。
前記金型は、複数のステーションを備え、前記ワークを前記複数のステーション間で逐次移動させて前記ワークをプレス成形する金型であって、前記パンチと前記パイロットピンをそれぞれ少なくとも1つのステーションに備えるようにしても良い。
本発明に係るプレス加工方法は、上記いずれかの金型を使用するプレス加工方法であって、前記凸部を前記ワークに当接させると同時、又は当接させた後で、前記パンチを前記ワークに打ち当てて、前記ワークにパイロット孔を形成するものである。
本発明に係るプレス加工方法は、前工程において前記ワークに形成されたパイロット孔に前記パイロットピンを挿嵌させて、その後、前記凸部を前記ワークに当接させ、さらに前記凸部を前記ワークに当接させると同時、又は当接させた後で、前記パンチを前記ワークに打ち当てて、前記ワークにパイロット孔を形成するものであっても良い。
本発明によれば、プレス加工工程が完了する度に、新たなパイロット孔が形成され、次工程において、その新たに形成されたパイロット孔を使ってワークの位置決めがされる。そのため、その工程でパイロット孔に生じた変形の影響が次工程に波及しない。その結果、次工程においてもワークの位置決め精度が良好に維持される。また、複数回のプレス加工を繰り返す場合であっても、製品の形状や寸法の精度が良好に維持される。
本発明の第1の実施形態に係るプレス加工装置の構成図であって、図1(a)はラムを上昇させた状態、図1(b)はラムを下降させた状態をそれぞれ示している。 図1に記載のプレス加工装置が備える金型の構成図であって、図2(a)は金型の平面図であり、図2(b)は金型の正面図であり、図2(c)は金型を図2(a)のA−A’線で切断した断面図であり、図2(d)は金型を図2(a)のB−B’線で切断した断面図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレス加工方法における金型とワークの形態の変化を時系列に沿って示す図であって、図3(a−1)、図3(b−1)及び図3(c−1)は、図2(c)に対応する断面図であり、図3(a−2)、図3(b−2)及び図3(c−2)は、図2(d)に対応する断面図である。 本発明の第1の実施形態に係るプレス加工方法における金型とワークの形態の変化を、図3に続けて時系列に沿って示す図であって、図4(a−1)、図4(b−1)及び図4(c−1)は、図2(c)に対応する断面図であり、図4(a−2)、図4(b−2)及び図4(c−2)は、図2(d)に対応する断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る金型の正面図である。 本発明の第2の実施形態に係るプレス加工方法における金型とワークの形態の変化を時系列に沿って示す図であって、図6(a−1)、図6(b−1)及び図6(c−1)は、図5に記載の金型4を図2(a)のA−A’線に相当する面で切断した断面図であり、図6(a−2)、図6(b−2)及び図6(c−2)は、図5に記載の金型4を図2(a)のB−B’線に相当する面で切断した断面図である。 図1に記載のプレス加工装置が備える金型の別の構成例を示す平面図である。
以下、本発明の実施形態に係る金型とプレス加工方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
(プレス加工装置)
図1(a)は本発明の実施形態に係るプレス加工装置1の構成図である。このプレス加工装置1は、上型2と下型3を備える金型4で板状のワーク5を挟んで、プレス加工を行う装置である。なお、本明細書では図1(a)に示したZ軸を使用する。本明細書では、「上下」及び「高低」はZ軸座標の大小を意味する。例えば、+Z方向(Z軸座標が大きくなる方向)の移動を「上昇」と言い、−Z方向(Z軸座標が小さくなる方向)の移動を「下降」と言う。
プレス加工装置1は、支持部材6とラム7を備えている。ラム7は支持部材6に対して昇降する。つまり、ラム7は+Z方向または−Z方向に移動する。ラム7の下面には、図示しない締結手段によって上型2が固定されていて、上型2はラム7と一体になって昇降する。下型3は図示しないプレスベッドの上面に固定されている。
ラム7の上面には2本のガイドポスト8が固定されている。ガイドポスト8は中実円柱状の金属部品である。ガイドポスト8の先端はブッシュ9を介して、支持部材6にZ軸方向に摺動自在に支持されている。また、ガイドポスト8の支持部材6の上面から突出した部位には、リング状のストッパ10が取り付けられている。ストッパ10は、ガイドポスト8が支持部材6から抜け落ちるのを防ぐ「抜け止め」である。なお、プレス加工装置1は、合計4組のガイドポスト8とブッシュ9を備えているが、そのうち2組は、図示された2組の裏に隠れていて見えない。このように構成されているので、ラム7は支持部材6に対して平行な姿勢を保ったまま、Z軸方向に移動することができる。
支持部材6とラム7の間に油圧シリンダブロック11が配置されている。油圧シリンダブロック11は、図示しない油圧シリンダを備えている。そして油圧シリンダには、第1のピストン12と第2のピストン13が、摺動自在に取り付けられている。第1のピストン12は、ラム7と対面する側において、油圧シリンダブロック11から突出して、Z軸方向に進退する。第2のピストン13は、支持部材6と対面する側において、油圧シリンダブロック11から突出して、Z軸方向に進退する。
このように構成されているので、第2のピストン13を油圧シリンダブロック11に押し入れると、第1のピストン12は油圧シリンダブロック11から押し出される。逆に、第2のピストン13を油圧シリンダブロック11から引き出すと、第1のピストン12は油圧シリンダブロック11の中に引き込まれる。なお、第2のピストン13の先端は支持部材6に固定されていて、第2のピストン13は支持部材6とともに昇降する。
また、ラム7の上面には、2枚のスライドプレート14が載置されている。このスライドプレート14は、図示しないエアシリンダ装置で駆動されて、ラム7に対して、図において矢印で示す方向に摺動する。図1(a)に示す状態においては、2枚のスライドプレート14は、第1のピストン12の直下から離れた位置にあって、互いに離隔している。スライドプレート14がこの位置にあれば、ラム7を上昇させた場合に、第1のピストン12とスライドプレート14が干渉することがない。つまり、スライドプレート14がこの位置にあれば、ラム7を上昇させることができる。また、図1(b)に示すように、2枚のスライドプレート14をラム7の中央、つまり第1のピストン12の直下に寄せて、その後、第1のピストン12を油圧シリンダブロック11から突出させると、第1のピストン12はスライドプレート14に当接する。第1のピストン12がスライドプレート14に当接すると、ラム7は第1のピストン12に押されて下降する。
また、プレス加工装置1は固定板15を備えている。固定板15は支持部材6の上方に配置されて、図示しないフレームに固定された構造部材である。そして、固定板15の下面には、合計4本(図示は2本)の固定ロッド16が固定されている。固定ロッド16は中実円柱状の金属部品である。この固定ロッド16の他方端は油圧シリンダブロック11に固定されている。つまり、油圧シリンダブロック11は固定ロッド16を介して、固定板15に固定されている。また、固定ロッド16はブッシュ17を介して支持部材6に支持されていて、支持部材6は固定ロッド16に対して自在に摺動する。
また、固定板15の上部には、サーボモータ18が図示しない出力軸を下向きにして固定されている。この出力軸には図示しないボールねじが固定されている。そして、ボールねじには図示しないナットが螺合していて、ナットは昇降部材19に固定されている。したがって、サーボモータ18の出力軸を回転させると、ナットはボールねじに対して進退し、その結果、昇降部材19は固定板15に対して昇降する。また、支持部材6は昇降部材19に固定されていて、支持部材6は昇降部材19とともに昇降する。そのため、サーボモータ18の出力軸を回転させると、支持部材6は固定板15に対して昇降する。
また、プレス加工装置1は、図示しないコンピュータを備える制御装置20によって制御される。制御装置20は操作盤21を備え、作業者は操作盤21の図示しないスイッチ類を介して、プレス加工装置1に対して、各種の操作入力を行う。
以上のように構成されているので、作業者が操作盤21の図示しないスイッチ類を操作すると、プレス加工装置1の運転が開始される。その後、プレス加工装置1は制御装置20で制御されて、ワーク5に対してプレス加工を行う。つまり、制御装置20はサーボモータ18を動作させて、上型2を下降させ、ワーク5を上型2と下型3で挟む。その後、制御装置20はサーボモータ18を逆方向に動作させて、上型2を上昇させる。なお、上型2は、後述するパンチとパンチを動作させるアクチュエータを備えていて、このアクチュエータも制御装置20によって制御される。
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態に係る金型4の詳細な構成を説明する。前述したように、金型4は上型2と下型3とから構成される。そして図2(a)〜(c)に示すように、上型2の下型3と対面する面には、ワーク5(図2において図示せず)に凹凸を形成する凸部22が形成されている。下型3の上型2と対面する面には、凸部22と対になる凹部23が形成されている。また、上型2と下型3の間にはストリッパープレート24が配置されている。ストリッパープレート24は、図2(a)に示すように、平面形において凸部22を取り囲む「ロ」字形の金属板であって、上型2及び下型3とほぼ同寸の平板である。また、ストリッパープレート24は、図2(b)及び図2(c)に示すように、ばね要素25を介して上型2に取り付けられている。
図2(a)、図2(b)及び図2(d)に示すように、上型2の下面には4本のパイロットピン26が取り付けられている。パイロットピン26はワーク5(図2において図示せず)に穿設されたパイロット孔に挿嵌されて、ワーク5を金型4に対して位置決めする位置決め部材である。図2(b)及び図2(d)に示すように、パイロットピン26の先端はテーパーしているので、パイロット孔がパイロットピン26に対してずれた位置にある場合、パイロット孔の縁部はこのテーパー面に当接する。そのため、パイロットピン26をパイロット孔に挿嵌すると、パイロット孔の縁部がこのテーパー面に押されるので、パイロット孔は正規の位置に誘導される。つまり、ワーク5は正規の位置に誘導される。また、図2(d)に示すように、下型3のパイロットピン26と相対する部位にはレセス27が形成されている。上型2を下降させて、上型2を下型3に重ねると、パイロットピン26はレセス27に差し込まれる。なお、ストリッパープレート24には貫通穴が穿設されていて、パイロットピン26はこの貫通穴に挿通されている。
パイロットピン26の下端は、図2(b)に示すように、ストリッパープレート24の下面より低い位置、つまり下型3に近い位置にある。ストリッパープレート24の下面は、図2(c)に示すように、凸部22の下面より下、つまり下型3に近い位置にある。そのため、図示しないワーク5を下型3の上に置いて、上型2を下降させると、最初に、パイロットピン26がワーク5のパイロット孔に挿嵌され、その後に、ストリッパープレート24がワーク5に当接する。そして、最後に凸部22がワーク5に当接する。
上型2には、図2(a)に示すように、4本の円柱状のパンチ28が取り付けられている。パンチ28は、ワーク5に、後述するパイロット孔を打ち抜く打ち抜き型である。また、上型2は、図2(d)に示すように、パンチ28を下型3に向けて進退させるエアシリンダ29を備えている。エアシリンダ29は、パンチ28に推力を与えて、パイロット孔を打ち抜くアクチュエータとして機能する。下型3のパンチ28を受ける位置にはパンチ28とペアになるダイ30が形成されている。ダイ30は下型3を貫通している。なお、ストリッパープレート24には貫通穴が穿設されていて、パンチ28はこの貫通穴に挿通されて、ワーク5に到達する。
(プレス加工方法)
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施形態に係るプレス加工方法を説明する。
プレス加工に当たっては、まず、図3(a−1)に示すように、上型2を上昇させて(上型2を下型3から離して)、作業者が加工前のワーク5を下型3の上に置く。ワーク5には、図3(a−2)に示すように、前工程においてパイロット孔31aが穿設されている。作業者はパイロット孔31aが下型3のレセス27に重なるように、ワーク5を下型3の上に置く。なお、この時、パンチ28は上型2の中に引き込まれている。
ワーク5を下型3の上に置いたら、作業者は操作盤21を操作して、プレス加工装置1の運転を開始させる。以後、プレス加工装置1と金型4は、制御装置20によって制御される。
制御装置20は、サーボモータ18を回転させて、上型2を下降(下型3に接近)させる。上型2が下降すると、図3(b−2)に示すように、まず、パイロットピン26がワーク5に到達し、その後、パイロットピン26はワーク5のパイロット孔31aに挿嵌される。この結果、ワーク5は上型2に対して位置決めされる。なお、図3(b−1)に示すように、この時、凸部22とストリッパープレート24は、まだワーク5に到達していない。つまり、凸部22とストリッパープレート24はワーク5に当接していない。
サーボモータ18がさらに回転して、上型2をさらに下降(下型3に接近)させると、図3(c−1)に示すように、ストリッパープレート24がワーク5に当接する。その後、ばね要素25は圧縮され、ばね要素25の反発力によって、ストリッパープレート24はワーク5に押し当てられる。そして、ワーク5はストリッパープレート24に押圧されて、下型3に押し当てられる。この時、凸部22は、まだワーク5に当接していない。なお、パイロットピン26の先端は、図3(c−2)に示すように、レセス27に差し込まれる。
上型2がさらに下降(下型3に接近)すると、凸部22はワーク5に当接し、図4(a−1)に示すように、ワーク5は凹部23の中に押し込まれて変形する。その結果、ワーク5の成形が完了する。この時、図4(a−2)に示すように、パンチ28はまだ上型2の中に引き込まれている。
ワーク5の成形が完了すると、制御装置20は、図4(b−1)に示すように、上型2を下降させたまま、エアシリンダ29を動作させて、図4(b−2)に示すようにパンチ28を上型2から押し出す。そして、上型2から押し出されたパンチ28は、ワーク5を打ち抜く。前述したように、ダイ30は下型3を貫通しているので、パンチ28で打ち抜かれたスクラップは、ダイ30を通って下型3の下方に落下する。なお、制御装置20は、ラム7の高さでワーク5の成形の完了を判断する。例えば、サーボモータ18が出力する回転角度信号が、ラム7が最低位置にあることを示した時に、制御装置20はエアシリンダ29を動作させる。
ワーク5の打ち抜きが完了したら、制御装置20は、エアシリンダ29を逆方向に動作させて、パンチ28を引き上げる。そして、制御装置20は、サーボモータ18を逆方向に回転させて、上型2を上昇(下型3から離隔)させる。その後、図4(c−1)に示すように、ワーク5は、図示しない作業者によって金型4から取り出される。また、図4(c−2)に示すように、金型4から取り出されたワーク5は、パンチ28によってパイロット孔31bが打ち抜かれている。このパイロット孔31bは、次のプレス加工工程において位置決めに使用される。
(第2の実施形態)
上記の第1の実施形態においては、金型4にエアシリンダ29(アクチュエータ)を備えて、パンチ28を金型4から進退させて、ワーク5に打ち当てるようにしたが、パンチ28は金型4に固定されていても良い。以下、パンチ28を金型4に固定した第2の実施例について説明する。
図5は、第2の実施形態に係る金型4の正面図である。この金型4もプレス加工装置1に取り付けて使用され、上型2にパンチ28を備えている点で第1の実施形態に係る金型4と共通する。しかしながら、パンチ28が上型2に固定されている点、及びエアシリンダ29を備えない点で第1の実施形態に係る金型4と異なる。また、図5に示すように、パンチ28の上型2からの突出高さは、凸部22の上型2からの突出高さより低くされている。両者の間には、図5においてdで示す差がある。このため、上型2を下降させると、凸部22が先にワーク5に当接する。そして、パンチ28は凸部22に遅れてワーク5に当接する。
なお、図5においては、ストリッパープレート24とばね要素25の図示を省略している。また、凸部22とストリッパープレート24の平面形は、図2(a)に示した第1の実施形態に係る金型4と同一である。また、平面図におけるパイロットピン26とパンチ28の配置も第1の実施形態に係る金型4と同一である。
次に、図6(a−1)ないし図6(c−2)の各図を参照して、図5に図示された金型4によるプレス加工のプロセスを説明する。なお、図6(a−1)、図6(b−1)及び図6(c−1)は、金型4を図2(a)のA−A’線に相当する面で切断した断面図である。また、図6(a−2)、図6(b−2)及び図6(c−2)は、金型4を図2(a)のB−B’線に相当する面で切断した断面図である。
図5に図示された金型4によるプレス加工に当たっては、まず、図6(a−1)に示すように、上型2を上昇させて(上型2を下型3から離して)、作業者が加工前のワーク5を下型3の上に置く。ワーク5には、図6(a−2)に示すように、前工程においてパイロット孔31aが穿設されている。作業者はパイロット孔31aが下型3のレセス27に重なるように、ワーク5を下型3の上に置く。その後、作業者は操作盤21を操作して、プレス加工装置1の運転を開始させる。以後、プレス加工装置1と金型4は、制御装置20によって制御される。
制御装置20は、サーボモータ18を回転させて、上型2を下降(下型3に接近)させる。上型2が下降すると、まず、パイロットピン26がワーク5のパイロット孔31aに挿嵌される。その結果、ワーク5は上型2に対して位置決めされる。サーボモータ18をさらに回転させて、上型2をさらに下降(下型3に接近)させると、ストリッパープレート24がワーク5に当接する。その後、上型2がさらに下降(下型3に接近)すると、図6(b−1)に示すように、凸部22がワーク5に当接する。この時、パンチ28は、図6(b−2)に示すように、まだワーク5に当接していない。その後、上型2はさらに下降(下型3に接近)して、図6(c−1)に示すように、ワーク5は凸部22によって凹部23の中に押し込められて、成形される。
前述したように、パンチ28は凸部22に遅れて、ワーク5に当接する。そして、ワーク5の成形が完了するまでに、パンチ28はワーク5を打ち抜いて、図6(c−2)に示すように、パイロット孔31bを穿設する。なお、前述したように、ダイ30は下型3を貫通しているので、パンチ28で打ち抜かれたスクラップは、ダイ30を通って下型3の下方に落下する。
以後のプロセスは第1の実施形態の場合と同一である。つまり、その後、上型2は制御装置20によって制御されて上昇する。そして、成形が完了したワーク5は作業者の手によって金型4の外に搬出される。
このように、第1の実施形態においては、ワーク5の成形の完了後に、第2の実施形態においては、ワーク5の成形の開始後に、それぞれワーク5にパイロット孔31bを穿設するので、パイロット孔31bには成形過程でワーク5に生じる応力に起因する変形が生じない。そのため、次のプレス加工工程におけるワーク5の位置決め精度が向上する。
(金型の変形例)
上記において、1台の金型4がプレス加工の1工程に関与する例、つまり、金型4がワーク5を1回だけプレスする例を示したが、金型4はこのようなものには限定されない。1台の金型4に、プレス加工の1工程に対応するステーションが複数個配置されていても良い。例えば、金型4は、図7に示すようなステーションa〜dを備えて、ワーク5からセパレータ32を製造するものであっても良い。
この金型4のステーションaには、セパレータ32において燃料等の流路として機能する溝条部32aを予備成形する予備成形凸部22aが形成されている。ステーションbには、ステーションaで予備成形された溝条部32aをさらに成形して溝条部32aを完成させる本成形凸部22bが形成されている。ステーションcには、セパレータ32の貫通穴32bを穿設する貫通孔打抜凸部22cが形成されている。そしてステーションdには、セパレータ32の輪郭32cを打ち抜く輪郭打抜凸部22dが形成されている。
ワーク5は、まずステーションaに搬入され、ステーションaにおいて、溝条部32aが予備成形される。その後、ワーク5は図示しない移送装置(例えば、巻き取りリール)によってステーションbに移送されて、溝条部32aが本成形される。さらにワーク5はステーションcに移送されて、貫通穴32bが形成され、最後に、ステーションdにおいて輪郭32cが切り出されて、セパレータ32が完成する。
この金型4は、上記の構成に加えて、ステーションaに4本のパンチ28aを備えている。パンチ28aは、図示しないエアシリンダで駆動されて、次工程、つまりステーションbにおいてワーク5の位置決めに使用されるパイロット孔を打ち抜く打ち抜き型である。
ステーションbには、4本のパイロットピン26bと4本のパンチ28bが備えられている。パイロットピン26bは、前工程、つまりステーションaにおいてパンチ28aによって形成されたパイロット孔に挿嵌されて、ワーク5を金型4に対して位置決めする位置決め部材である。パンチ28bは、次工程、つまりステーションcにおいてワーク5の位置決めに使用されるパイロット孔を打ち抜く打ち抜き型である。
ステーションcには、4本のパイロットピン26cと4本のパンチ28cが備えられている。パイロットピン26cは、前工程、つまりステーションbにおいてパンチ28bによって形成されたパイロット孔に挿嵌されて、ワーク5を金型4に対して位置決めする位置決め部材である。パンチ28cは、次工程、つまりステーションdにおいてワーク5の位置決めに使用されるパイロット孔を打ち抜く打ち抜き型である。
ステーションdには、4本のパイロットピン26dが備えられている。パイロットピン26dは、前工程、つまりステーションcにおいてパンチ28cによって形成されたパイロット孔に挿嵌されて、ワーク5を金型4に対して位置決めする位置決め部材である。
このように、金型4はステーションa〜cにパンチ28a〜28cを備えているので、次工程において、つまりステーションb〜dにおいてワーク5の位置決めに使用されるパイロット孔を打ち抜くことができる。また金型4はステーションb〜dにパイロットピン26b〜26dを備えているので、直前の工程で、つまりステーションa〜cで打ち抜かれたパイロット孔を使用して、ワーク5を金型4に位置決めすることができる。
なお、図7においては、下型3、ストリッパープレート24及びばね要素25の図示を省略している。
以上説明したように、本発明によれば、プレス加工の過程で生じたパイロット孔の変形の影響が後工程に及ばないので、後工程においてもワーク5を金型4に対して精度良く位置決めすることができる。このため、プレス加工で得られる製品の形状や寸法の精度が向上し、該製品を組み立てて得られる最終製品の性能が向上する。
なお、上記実施形態は、本発明の具体的な実施形態の例示であって、本発明の技術的範囲は、上記実施形態によっては限定されない。本発明は、特許請求の範囲に示された技術的思想の限りにおいて、自由に、変形または改良して実施することができる。
例えば、図1に示されたプレス加工装置1は例示であって、本発明の技術的範囲は、図1によっては限定されない。また図2ないし図7に示された金型4は例示であって、本発明の技術的範囲は、図2ないし図7によっても限定されない。
上記実施形態において、サーボモータ18によって駆動されるプレス加工装置1を例示したが、プレス加工装置1はサーボモータ18によって駆動されるものには限定されない。プレス加工装置1は、油圧で駆動される液圧式プレス加工装置であっても良い。プレス加工装置1を回転電動機で駆動する場合に回転運動を往復運動に変換する機構はボールねじのようなスクリュー機構には限定されない。例えば、スクリュー機構に代えて、クランク機構やカム機構を備えても良い。
図2ないし図7に示した金型4の形態は例示である。特に、パイロットピン26(26b〜26d)とパンチ28(28a〜28c)の数と位置は例示であって、パイロットピン26とパンチ28の数と位置は限定されない。また、パンチ28は、前々工程で打ち抜かれたパイロット孔と同じ位置にパイロット孔を打ち抜くように配置されても良い。例えば、図7において、ステーションcのパンチ28cは、ステーションaにおいてパンチ28aによって打ち抜かれたパイロット孔31c(つまり、ステーションbで位置決めに使用されたパイロット孔=ステーションcでは使用されないパイロット孔)と同じ位置にパイロット孔を打ち抜くように配置されても良い。この場合、パンチ28cは、変形後のパイロット孔31cより大きなパイロット孔が開けられるようなサイズを選ぶと良い。
また、図2に示した金型4において、金型4が、一連のプレス工程の最初の工程で使用される場合は、パイロットピン26は不要である。つまり、図2に示した金型4において、パイロットピン26を備えない場合がある。
上記実施形態においては、パイロットピン26(26b〜26d)とパンチ28(28a〜28c)を上型2に取り付けた例を示したが、これらは下型3に取り付けられても良い。
また、上記実施形態においては、パイロットピン26(26b〜26d)とパンチ28(28a〜28c)の断面形を円形にしたが、これらの断面形は円形には限定されない。これらの断面形は、楕円形であっても良いし多角形であっても良い。
パンチ28を駆動して、パンチ28に推力を与えるアクチュエータはエアシリンダ29には限定されない。例えば、油圧シリンダをアクチュエータにしても良いし、回転電動機とスクリュー機構あるいはカム機構を組合せて、アクチュエータを構成しても良い。
図2(a)に示した凸部22とストリッパープレート24の平面形は例示であって、これらの平面形は図2(a)によっては限定されない。また、図7に示したセパレータ32の形態及び形状は例示であって、セパレータ32の形態及び形状は図7によっては限定されない。
図7に示されたステーションa〜dにおけるプレス加工の具体的な態様や加工順序、つまり各工程におけるプレス加工の具体的な態様や加工順序は例示である。したがって、本発明に係る金型やプレス加工方法によってなされるプレス加工の具体的な態様や加工順序は図7によっては限定されない。
また、上記実施形態において、ワーク5が作業者の手によって、金型4に搬入及び搬出される例を示したが、本発明に係るプレス加工方法は、このようなものには限定されない。プレス加工装置1にローダ/アンローダを備えて、ワーク5の金型4への搬出入を機力で自動的に行うようにしても良い。また、上記実施形態において、作業者が、パイロット孔31aが下型3のレセス27に重なるように、ワーク5を下型3の上に置くことを示した。つまり、ワーク5の下型3に対する粗位置決めを作業者が行う例を示したが、粗位置決めを自動化しても良い。例えば、プレス加工装置1に撮像装置を備えて、撮像装置が撮像したワーク5の画像に基づいて、ワーク5を下型3に対して粗位置決めするようにしても良い。
上記実施形態において、凸型22がワーク5に当接すると同時、又は当接した後で、パンチ28をワーク5に当接させると説明した。しかしながら、凸型22がワーク5に当接した後で、パンチ28をワーク5に当接させてパイロット孔31bを打ち抜くことが望ましい。特に、ワーク5に当接した凸型22が更に下降して、つまりワーク5の成形が進行して、成形が完了する直前に、パンチ28をワーク5に当接させるようにすれば、ワーク5に生じる応力を極めて小さくすることができる。その結果、パイロット孔31bの位置と形状の精度を高いレベルに保つことができる。あるいは、第1の実施形態で示したように、ワーク5の成形の完了後に、パンチ28をワーク5に当接させてパイロット孔31bを打ち抜くようにすれば、更に望ましい。
パンチ28をワーク5に当接させるタイミングは、ワーク5の成形深さ(=凹部23の深さ)に応じて変更されても良い。一般にワーク5の成形深さ)が浅い場合には、パイロット孔31bに生じる歪みは小さいので、その場合には、凸型22がワーク5に当接するタイミングとパンチ28がワーク5に当接するタイミングを接近させることができる。ワーク5の成形深さが特に浅い場合には、凸型22がワーク5に当接すると同時にパンチ28をワーク5に当接させても良い場合がある。
また、第1の実施形態に係る金型4を使用する場合には、制御装置20にインストールされる制御プログラムの設定を変更することで、パンチ28をワーク5に当接させるタイミングを任意に変更することができる。第2の実施形態に係る金型4を使用する場合には、前記タイミングは、凸部22とパンチ28の突出高さの差dによって決定される。例えば、dを0にすれば、パンチ28は凸部22と同時にワーク5に当接する。dを大きくすれば、パンチ28がワーク5に当接するタイミングは、凸部22がワーク5に当接するタイミングに比べて大きく遅れる。
なお、本発明の適用対象は、燃料電池のセパレータの製造には限定されない。本発明は、様々な素材及び製品の加工及び製造に適用される。
1 プレス加工装置
2 上型
3 下型
4 金型
5 ワーク
6 支持部材
7 ラム
8 ガイドポスト
9 ブッシュ
10 ストッパ
11 油圧シリンダブロック
12 第1のピストン
13 第2のピストン
14 スライドプレート
15 固定板
16 固定ロッド
17 ブッシュ
18 サーボモータ
19 昇降部材
20 制御装置
21 操作盤
22 (22a〜22d)凸部
23 凹部
24 ストリッパープレート
25 ばね要素
26(26b〜26d)パイロットピン
27 レセス
28(28a〜28c)パンチ
29 エアシリンダ
30 ダイ
31a〜31c パイロット孔
32 セパレータ
32a 溝条部
32b 貫通穴
32c 輪郭






Claims (7)

  1. 上型と下型を備えて、前記上型と前記下型の間に板状のワークを挟んで、前記ワークをプレス加工する金型において、
    前記上型と前記下型のいずれか一方に取り付けられて、前記ワークに当接して前記ワークを凹入させる凸部と、
    前記上型と前記下型のいずれか一方に取り付けられて、次工程において前記ワークの位置決めに使用されるパイロット孔を前記ワークに形成するパンチと、
    を備える金型。
  2. 前記パンチは、前記金型に進退自在に取り付けられるとともに、
    前記パンチを前記金型から進退させて前記ワークに打ち当てるアクチュエータを備える、
    請求項1に記載の金型。
  3. 前記パンチと前記凸部は、前記上型と前記下型のいずれか一方の同一の型に固定されるともに、
    前記パンチの前記金型からの突出高さは、前記凸部の前記金型からの突出高さよりも低くされている、
    請求項1に記載の金型。
  4. 前記上型と前記下型のいずれか一方に取り付けられて、
    前工程で前記ワークに形成されたパイロット孔に挿嵌されて、前記ワークを前記金型に対して位置決めするパイロットピンを備える、
    請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金型。
  5. 複数のステーションを備え、前記ワークを前記複数のステーション間で逐次移動させて前記ワークをプレス成形する金型であって、
    前記パンチと前記パイロットピンをそれぞれ少なくとも1つのステーションに備える、
    請求項4に記載の金型。
  6. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金型を使用するプレス加工方法であって、
    前記凸部を前記ワークに当接させると同時、又は当接させた後で、前記パンチを前記ワークに打ち当てて、前記ワークにパイロット孔を形成するプレス加工方法。
  7. 請求項4又は請求項5に記載の金型を使用するプレス加工方法であって、
    前工程において前記ワークに形成されたパイロット孔に前記パイロットピンを挿嵌させて、
    その後、前記凸部を前記ワークに当接させ、
    さらに、前記凸部を前記ワークに当接させると同時、又は当接させた後で、前記パンチを前記ワークに打ち当てて、前記ワークにパイロット孔を形成するプレス加工方法。



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