JP2017085774A - ワニス処理装置、ワニス処理方法、及び、回転電機製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ステータとともに回転電機を構成するロータ(回転子)についても、複数のスロットをもつロータコア(回転子鉄心)と、このロータコアのスロットに装着されたコイル(ロータコイル)とを備えたものが知られている。
また、近年において、前記コイルは、導体サイズの大きな平角エナメル線をU字状に折り曲げて、略平行する2本の直線状の脚部と該脚部の一端を接続する頭部とを有する“セグメント導体”と呼ばれる部材によって形成されたりしている(下記特許文献1参照)。
ここで、ワニスをコイルに対して自然滴下させる場合には、その滴下位置を正確にコントロールすることが難しい。
例えば、一般的なステータコアは、円筒形状でその内周側にスロットが形成されており、軸方向両端面において前記スロットを開口させている。
そしてステータコアにコイルを装着した状態においては、前記開口の径方向外端及び径方向内端に対してワニスを滴下させ易い状態になっているものの径方向中央部はコイルが邪魔になって前記開口に対してワニスを直接滴下させることが難しい。
このため、スロット内壁面とコイルとの間、及び、コイル線間の全ての隙間にワニスを充填させ易くするためには、浸透力の高い低粘度なワニスをワニス処理に用いる必要がある。
従って、従来のワニス処理は、その作業性を良好なものにすることと、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることとの両立を図ることが困難になっている。
また、このことから従来の回転電機は、電気的信頼性に優れたものを容易に製造することが困難になっている。
前記ワニス処理方法によって前記ワニス処理を実施する回転電機製造方法である。
しかも、ワニスをコイルに供給するために、当該コイルとの当接によって変形する当接部材が用いられることから、コイルの線間などの微細な隙間の奥深くまで当該当接部材を当接させ得る。
即ち、本発明においては、前記当接部材を用いることにより粘度の高いワニスでも狭い隙間の奥深くに容易に到達させ得る。
従って、本発明によれば、作業性が良好で、且つ、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることが可能なワニス処理方法及びワニス処理装置を提供することができ、製造容易で電気的信頼性に優れた回転電機を提供することができる。
まず、はじめに前記ステータについて図1〜3を参照しつつ説明する。
図1は、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータに組み込まれているステータを表す概略斜視図であり、セグメント導体によってコイルが形成されてなるステータを表す概略斜視図である。
また、図2は、図1のステータを天地逆にし、図1の矢印「x」の方向から見たステータの様子を、要部を拡大して示した概略斜視図である。
さらに、図3は、図1のステータを水平面によって切断した場合の断面構造について要部を拡大して示したもので、一つのスロットの断面状況を示した概略断面図である。
また、この図3正面視左側の丸囲いによる図は、右図Y部の概略拡大図である。
即ち、図1に示したステータ1は、前記コイルエンド20a,20bがステータコア10の上下に配されており、以下においては、上側のコイルエンド20aを「第一コイルエンド」、下側のコイルエンド20bを「第二コイルエンド」、とそれぞれ呼び分けることがある。
該スロット11は、ステータコア10の全長にわたって形成されており、ステータコア10の上端面10a、及び、下端面10bには、図3に示したようなスロット11の断面形状と同形状の開口部11bが形成されている。
この板状突起12は、“ティース”などと呼ばれるもので、該ティース12は、ステータコア10の内側から該ステータコアの中心に向けて突出した状態で複数形成されている。
なお、前記ティース12は、突出方向先端部にステータコア10の周方向に広がる広幅に形成された広幅部12aを有しており、断面略T字状となっている。
そして、前記スロット11は、ティースの広幅部12aに該当する箇所から径方向外側がコイル収容箇所となっており、ステータコア10の内周面側においては周方向における幅が前記コイル収容箇所に比べて狭い線状開口部11aを形成させている。
本実施形態のステータ1は、これらのセグメント導体が互いに電気的に接続されて前記コイル20が形成されている。
なお、この4本の脚部とスロット11の内壁面との間にスロット絶縁紙40が介装されており、一番内周側の平角エナメル線とティース12の広幅部12aとの間にはスロット内から線状開口部11aに蓋をするような形でウェッジ60が介装されている。
本実施形態のステータ1におけるコイル20は、前記頭部によって接続されている側とは逆側となる脚部の他端側に当該脚部を略S字状に屈曲させてなる屈曲部211を有しているとともに該屈曲部211の先端にエナメル被膜(絶縁被覆)が除去された導体露出部211aを有しており、異なるセグメント導体の前記導体露出部211aが溶接されることによって形成されている。
従って、前記コイル20は、前記第一コイルエンド20aをセグメント導体の前記頭部によって形成させるとともに前記第二コイルエンド20bを前記屈曲部211によって形成させている。
また、本実施形態のステータ1は、この導体露出部211aに対して絶縁被覆を施しているものと同じワニスが両コイルエンド20a,20bやスロット内においてコイル線間に含浸硬化されており、前記コイル20とステータコア10のスロット内壁面との間の空隙部にも前記ワニスが含浸硬化されている。
前記回転電機製造方法においては、複数のセグメント導体20x,20x’をステータコア10にセットしてコイル20を形成させるコイル形成工程を実施した後に、該コイルをワニス処理するワニス処理工程を実施する。
なお、以下においては、セグメント導体の脚部に関し、頭部によって接続されている一端側を脚部の“基端”と称し、他端側を脚部の“先端”と称してコイル形成工程やワニス処理工程を説明する。
(a)長さがスロット11よりも長い2本の直線状の脚部と、該脚部の一端側をアーチ状に接続する頭部とを有するU字状のセグメント導体を複数用意し、次いで用意した前記セグメント導体20x,20x’の前記脚部21x,21x’の先端におけるエナメル被膜を剥離除去し、該脚部先端に導体を露出させた導体露出部21ax,21ax’を形成させる口出し工程。
(b)前記ステータコア10のスロット11に、該スロットの内壁面に沿うように折り曲げられたスロット絶縁紙40を収容させるとともにセグメント導体20x,21x’の脚部21x,21x’の先端を前記ステータコア10の一端側からスロット絶縁紙40の内側に差し入れ、前記先端がステータコア10の他端面よりも突出するようにしてセグメント導体をスロット11に収容させる導体収容工程(図4(ロ)参照)。
(c)前記導体収容工程によってスロット11に収容させたセグメント導体20x,21x’をステータコア10の端面よりも脚部突出方向僅かに外側において周方向Bに向かって傾倒するように折り曲げた後に、前記導体露出部21ax,21ax’を含む先端部分を逆向きに折り曲げて前記屈曲部211となる部分を形成させる導体屈曲工程(図4(ハ)参照)。
(d)電気的に接続すべきセグメント導体20x,21x’の導体露出部21ax,21ax’どうしを接近させてこれらを溶接し、該セグメント導体どうしを電気的に接続して、ステータコアにコイルが装着されたコイル装着体を作製する導体接続工程。
このような方法を採用することで全てのセグメント導体を一度にステータコア10に収容させることができる。
なお、本実施形態においては、このような一度の操作で全てのセグメント導体をステータコアに装着する方法に代えて、単にセグメント導体を一つずつ順番にステータコア10のスロット11に収容させる方法で導体収容工程(b)を実施しても良い。
従って、本実施形態においては、このコイル装着体に対して以下のワニス処理工程(e)を実施し、導体露出箇所に絶縁被膜を形成させて前記ステータを作製する。
該ワニス処理工程(e)は、例えば、下記(e1)〜(e3)の工程を順に行うことにより実施することができる。
(e2)ステータコア10に装着したコイルにワニスを供給し、該コイルにウェット状態の被膜(ウェット被膜)を形成するとともに該被膜に前記活性エネルギー線を照射する供給工程。
(e3)前記供給工程によってゲル化された被膜(ゲル被膜)を加熱することにより、前記ワニスを硬化させて硬化状態の被膜(硬化被膜)を形成する熱硬化工程。
また、前記ワニスは、上記例示の活性エネルギー線、又は、上記例示以外の活性エネルギー線の内、何れか一つに対して硬化反応を示せばよく、全ての活性エネルギー線によって硬化可能である必要性はない。
本実施形態のワニス処理工程においては、これらの中でも照射源を比較的容易に調達し易く、前記照射工程において厳重な管理を要しない点において前記光線により硬化可能なワニスを用いることが好ましい。
このような感光性且つ熱硬化性を有するワニスとしては、例えば、ラジカル重合可能なモノマーを主成分とし、該モノマー中に光の照射によってラジカルを発生させるラジカル発生剤を分散させたものを挙げることができる。
一方で、ワニスを高粘度なものとする方が、前記ウェット被膜の厚みを厚くさせることができるとともに線間での保持も良好になり、前記供給工程や前記熱硬化工程におけるコイル表面などからのワニスの脱離を抑制させることができる。
従って、良好なる作業性を確保しつつ電気的な信頼性の高いステータを作製するのに有利となる点においては、前記ワニスがある程度の粘度となっていることが好ましく、一般的な電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータに用いられるようなステータを作製する場合であれば、前記ワニスの粘度は25℃において0.05Pa・s以上10.0Pa・s以下であることが好ましく、1.0Pa・s以上5.0Pa・s以下であることがより好ましい。
なお、ここでいう「粘度」の値とは、JIS K5600−2−3:1999に規定されているコーン・プレート型粘度計(E型粘度計)を用いた測定方法により測定される値を意図しており、具体的には、試験例において示すような方法によって測定される値を意図している。
前記ワニスを上記のような好適な粘度に調整するには、溶媒、反応性希釈剤による希釈や、増粘剤を適宜添加すればよい。
前記熱硬化性のワニスが、活性エネルギー線の照射によって硬化反応を示すワニスであってもよい。
前記絶縁被膜は厚みが薄い方が乾燥時にアウトガスを生じにくく結果としてボイドの形成が抑制されることになる。
前記導体露出部における絶縁被膜の形成厚みが50μm以上であることが好ましいのは、絶縁被膜の厚みを50μm以上確保することで、この部分を絶縁耐圧に優れたものとすることができ、ピンホール等の欠陥の発生防止も図ることができるためである。
また、前記導体露出部における絶縁被膜の形成厚みが1000μm以下であることが好ましいのは、絶縁被膜の厚みを1000μm以下とすることで、この部分にクラックを発生させるおそれを低減させることができるためである。
このような観点から絶縁被膜の前記厚みは、100μm〜500μmであることが特に好ましい。
また、該照射は、前記ワニスとして、紫外光の散乱に有効となるマイカ、セリサイト、タルクなどの板状鉱物粒子、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物粒子を含有するワニスを用い、該ワニスによる被膜内において光を多重反射させることにより被膜全体における硬化度の均一化を図るようにして実施してもよい。さらには光ファイバ−を用いて必要な箇所のみ照度の高い光線を照射することも可能である。
このためには、前記照射は、少なくとも常温(25℃)における粘度が10Pa・s以上となるようにワニスをゲル化させることが好ましく、前記粘度が50Pa・s以上となるようにワニスをゲル化させることが特に好ましい。
η1≧ (η0×200) ・・・(1)
η2≧ η0 ・・・(2)
このワニスの硬化物により形成させる被膜(硬化被膜)は、十分な絶縁性を有することが好ましい。
なお、本明細書中における「絶縁性」とは、約0.1mm厚みの試料に対してJIS C2103:2006の6.6.3項に規定の絶縁破壊電圧の試験を実施した際に、10kV/mmの絶縁破壊強さを示すことを意味する。
そして、本実施形態における硬化被膜は、50kV/mm以上、望ましくは70kV/mm以上の絶縁破壊強さを示すワニス硬化物で形成させることが好ましく、少なくとも、前記導体露出部においては、最小被膜厚み[t(mm)]と前記ワニス硬化物の絶縁破壊強さ[VBD(kV/mm)]とが、下記関係式(3)を満足させていることが好ましい。
(2×t×VBD) ≧ 10kV ・・・(3)
なお、この工程は、従来のモータ製造方法と同様にして実施することができる。
本実施形態のワニス処理装置は、本実施形態のワニス処理方法で用いられる装置である。
図5に示すように、前記ワニス処理装置50は、ステータコア10にコイル20が装着されてなるコイル装着体100に対し、ワニスを供給する供給部53と、コイル装着体100に対し、活性エネルギー線を照射する照射部52と、該照射部52や前記供給部53に対してコイル装着体100を相対移動させるための移動機構51を備えている。
前記回転軸51bは、その中心軸線が垂直方向となるように配され前記ターンテーブル51aを回転させ得るべく移動機構51に備えられている。
即ち、前記移動機構51は、前記回転軸51bの中心軸を上部に延長した延長線上にコイル装着体100の中心が位置するようにターンテーブル51a上にコイル装着体100を載置することで当該コイル装着体100を軸周りに回転可能となるように構成されている。
本実施形態においては、コイル装着体100に対するワニス処理を、この軸周りに回転可能な状態にして実施する。
より詳しくは、本実施形態のワニス処理は、第二コイルエンド20bが上側となるようにコイル装着体100をターンテーブル51a上に載置して実施する。
前記当接部材としては、例えば、スポンジ状のものや刷毛状のものを採用することができ、本実施形態の当接部材は複数の毛状体を束ねてなる刷毛部材53aである。
該刷毛部材53aは、各毛状体が曲げ応力に対して容易に屈曲変形するとともに応力を解除した場合には各毛状体が弾性復元力により屈曲前の状態に復元するものである。
前記供給部53は、前記刷毛部材53aの長さ方向一端部を保持する中空パイプ53bを備えている。
なお、以下においては、中空パイプ53bによって保持されている刷毛部材53aの“一端部”を刷毛部材の“基端部”と称し、中空パイプ53bによって保持されている側とは逆の他端部を刷毛部材の“先端部”と称することがある。
前記中空パイプ53bは、全長に亘って前記刷毛部材53aが挿入されておらず、他端側には前記刷毛部材53aの収容されていない空間部が形成されている。
前記中空パイプ53bは、この他端側に開口径に対応する外径を有するチューブを着脱自在に接続するための機構が備えられている。
なお、中空パイプと刷毛部材とが一体化されたものが「刷毛ノズル」や「ノズル刷毛」などの商品名で塗装関連商品として市販されており、本実施形態の供給部53は、このような市販品を用いて構成させても良い。
前記供給部53は、ワニス供給チューブ53cにより前記中空パイプ53bの内部にワニスが充填され、該ワニスが刷毛部材53aの毛状体の間に浸透し、該刷毛部材53aの先端部にワニスが到達し得るように構成されている。
即ち、本実施形態の前記ワニス供給機構は、前記中空パイプ53bと前記ワニス供給チューブ53cとを備えている。
第一供給部53’は、第二コイルエンド20bの導体露出部にワニスを供給することができるように構成されている。
即ち、ワニス処理装置50は、第一供給部53’の刷毛部材53aによって導体露出部に対してワニスを刷毛塗りして当接ワニスにより前記導体露出部にウェット被膜を形成し得るように構成されている。
第二供給部53”は、セグメント導体とスロット内壁面との間の隙間にワニスを供給することができるように構成されている。
第二供給部53”は、第一コイルエンド20aを構成しているセグメント導体がステータコア10の端面より上方に突出をしている基端部位においてセグメント導体とステータコア10の端面との両方に刷毛部材53aを当接させる形でワニス処理装置50に備えられている。
即ち、ワニス処理装置50は、ターンテーブル上に載置されたコイル装着体100のステータコア10の上面(図1における下端面10b)においてスロットが開口している部位に対してワニスを供給することでセグメント導体とスロット内壁面との間の隙間に上から下へとワニスを充填し得るように構成されている。
そして、前記照射部52は、供給部53によるワニス供給地点よりも回転方向下流側において第二コイルエンド20bに対して活性エネルギー線を照射すべく線源を配している。
まず、第一コイルエンド20aが下方を向き、第二コイルエンド20b(導体露出部側)が上方を向くように、前記コイル装着体100をターンテーブル上に載置する。
そして、ターンテーブルの回転によりコイル装着体100が軸周りに回転するようにコイル装着体100をターンテーブル51aに対して位置合わせを行う。
次いで、刷毛部材53aの先端が導体露出部に当接する状態となるように第一供給部53’をセットする。
なお、本実施形態においては、セグメント導体の脚部先端に導体露出部が形成されており、この導体露出部どうしの電気的な結合が、コイル装着体100の回転軸方向におけるコア両端部の内の一端部側において行われている。
従って、本実施形態のコイル装着体100は、前記回転軸周りに導体露出部が環状に配置されている。
言い換えれば、前記導体露出部は、前記回転軸を中心に描かれる仮想円に沿って配置されている。
そのため、上記のようにセットされた第一供給部53’の刷毛部材53aは、ターンテーブル51aを回転させた際に仮想円に沿って配置されている全ての導体露出部に順次当接されることになる。
第二供給部53”の刷毛部材53aは、ターンテーブル51aを回転させてコイル装着体100を軸周りに回転させた際には、前記隙間に差し込んだ先端部が屈曲状態となって一旦は隣り合うスロット間においてスロットの外側に出た状態になる。
しかしながら、当該刷毛部材53aは、毛状体が前記のように弾性復元力を有しているので前記回転によって次のスロット11の位置に到達した際に、改めてこのスロットの内壁面とコイルとの隙間に先端部が差し込まれる状態になる。
なお、前記刷毛部材53aは、コイル積層体の回転中にステータコアやコイルに当接されることになるが、当接される相手材の形状に応じて変形可能な柔軟性を有しているため毛状体が破損するなど自身に損傷が与えられたり、逆にコイルのエナメル被膜を傷付けたりして相手材を損傷したりするおそれが低い。
即ち、本実施形態においては、ワニス供給チューブ53cを通じて刷毛部材53aにワニスを供給することで、コイルの線間の隙間やコイルとスロット内壁面との間の隙間などに対して前記刷毛部材53aを通じてワニスを充填するとともに導体露出部に対してワニスによるウェット被膜を形成する供給工程が実施される。
なお、本実施形態の供給工程においては、前記ターンテーブル51aを回転させることにより、コイル装着体100において前記仮想軸線AXを周回する方向に配置された複数のスロット及び導体露出部に対しワニスの供給を順に実施する。
そして、活性エネルギー線は、このワニス供給地点からコイル装着体の回転方向下流側において連続的に照射する。
このコイル装着体を回転しつつワニスの供給と活性エネルギー線の照射とを連続的に実施することにより、ワニス供給地点での被膜の形成と、光照射地点での被膜の高粘度化とが交互に繰り返してそれぞれ複数回ずつ実施されることになる。
このことにより多大な手間を要することなく、ワニスによって形成される被膜が幾重にも塗り重ねられることになり導体露出部に対して絶縁信頼性の高い絶縁被覆を施すことが可能となる。
なお、ワニスが供給されてから、当該ワニスが脚部先端まで行き渡り、且つ、余分なワニスが排除されて残りのワニスで均質な被膜が形成されるまでにはある程度の時間を要する。
従って、0.05mPa・s〜10mPa・sの粘度のワニスを用いる場合であれば、回転速度はワニス供給地点から光照射地点までの移動時間が2〜5秒となるように設定されることが好ましい。
また、コアの回転は、回転速度と回転半径との積が0.5m・rpm〜2m・rpmとなるように実施することが好ましい。
なお、前記第一供給部53’と前記第二供給部53”とで供給するワニスを共通させる必要はなく、例えば、導体露出部における厚みの厚い被膜形成を行い、且つ、スロット内に対するワニスの含浸性を勘案して、第一供給部53’によって供給するワニスの粘度を第二供給部53”によって供給するワニスの粘度よりも高粘度とすることができる。
また、上記効果は、ステータのみならずロータを作製する場合においても同様に発揮される効果である。
また、上記効果は、自動車用の駆動モータだけではなく、モータやジェネレータといった各種の回転電機全般に対して広く発揮される効果である。
(ワニス)
ワニス処理を行うためのワニスとして、以下の(A)〜(C)を混合して感光性且つ熱硬化性を有するワニスを調製した。
(A)日東シンコー社製のコイルワニス(型名「NV−2040」、25℃における粘度:80mPa・s)100質量部
(B)日東シンコー社製の促進剤(型名「No.2」)0.3質量部
(C)日東シンコー社製の触媒(型名「No.15」)1質量部
上記の「NV−2040」の粘度は、以下のような測定により求めた。
測定器:東機産業社製のE型粘度計、型名「RE80U」
コーンの角:48分
コーンの直径:48mm
コーン回転数:100rpm
(試料1Aについての評価)
幅:3.2mm、厚み:1.8mmの平角エナメル線(日立マグネットワイヤ社製、商品名:OFC−AIW(P2C))を約10cm長さに切り出し、2%伸長後、片端から2cmの区間にわたってエナメル被膜を剥離して銅導体を露出させた部分(導体露出部)を形成させ評価用試料(試料1A)とした。
前記ワニス((A)〜(C)混合物)を収容させた槽を用意し、前記試料1Aを導体露出部が下端となるように保持した状態で前記の槽に室温で浸漬させ、導体露出部全体が液面下に没した時点で前記試料1Aを引き上げ、その状態で10分間保持した。
次いで、この試料1Aを上下逆向きにしてワニスの付着した導体露出部側が上端となるようにし、このワニス付着箇所に対し250Wの超高圧水銀灯による光照射を3分間実施し、導体露出部を被覆しているワニスの粘度を増大させた。
この光照射した試料1Aを、再びワニス付着部分が下端となるように保持した状態でオーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を行い、ワニスの熱硬化を実施し、前記導体露出部に前記ワニスの硬化物からなる絶縁被膜を形成させた。
そして、導体露出部の中間位置(エナメル線の末端から1cm内側の位置)においてエナメル線の3.2mm幅の面に形成された絶縁被膜の厚みを測定した。
また、光照射を実施しなかった点を除いて試料1Aと同様に作製した試料1Bに関しても同様に絶縁被膜の厚みを測定した。
結果を、下記表1に示す。
(試料2Aについての評価)
試料1A、1Bと同じ平角エナメル線(日立マグネットワイヤ社製、商品名:OFC−AIW(P2C)、幅:3.2mm、厚み:1.8mm)を20cm長さに切断したもの4本とを用意し、この4本の平角エナメル線を2列2段に束ねた試料(試料2A)を作製した。
なお、図6に示すように、この試料2A(TA2)は、束ねた4本の平角エナメル線(E)の両端部を糸で縛って作製し、且つ、厚み0.13mmで大きさ数ミリ角のスペーサー(図示せず)を所定の間隔で挟み込むことによって線間に隙間を形成させるようにして作製した。
そして、該オーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を行い、ワニスの熱硬化を実施し、平角エナメル線の線間において前記ワニスの硬化物からなる被膜を形成させた。
このときオーブン中にアルミホイルを試料2Aの下方に配置しておき、60分間の前記加熱後にアルミホイルを目視にて観察することで、熱硬化中におけるワニスの脱離の有無を確認した。
また、前記加熱後に試料2Aを分解し、ワニスの滴下を行った上端から、下端に向けてどの程度の距離までワニスが到達しているかを計測し、この到達距離[D1(cm)]を試料長さ(20cm)で除した百分率によりワニスの含浸性を評価した。
試料2Aと同様にして作製した試料2Bに対し、試料2Aと同様に上端に前記ワニスを0.2ml滴下し、同じ姿勢のまま10分間保持した後に、この試料2Bの下方から250Wの超高圧水銀灯による光照射を3分間実施した。
この光照射した試料2Bを、試料2Aと同様にアルミホイルをセットしたオーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を行い、該加熱中におけるワニスの脱離状況を確認した。
また、試料2Aと同様に試料上端からのワニスの到達距離により含浸性についての評価を行った。
試料2A、試料2Bと同様にして作製した試料2Cに対し、試料2Aと同様に上端に前記ワニスを0.2ml滴下し、同じ姿勢のまま10分間保持した後にオーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を行い前記ワニスを熱硬化させ、ワニスの脱離状況の確認とワニスの含浸性の計測とを実施した。
ただし、この試料2Cは、温度が150℃となるように加熱してワニスの前記滴下を実施した。
結果を、下記表2に示す。
50:ワニス処理装置、51:移動機構、52:照射部、53:供給部
Claims (6)
- 回転電機の固定子又は回転子を形成させるべく用いられ、
前記固定子用のコア又は前記回転子用のコアに装着されたコイルに対してワニスによる被膜を形成させるためのワニス処理装置であって、
前記コイルに前記ワニスを供給するための供給部を備え、
該供給部が、前記コイルに当接される当接部材と、コイルに当接させた前記当接部材を通じて該コイルに前記ワニスを供給するワニス供給機構とを備え、
前記当接部材が、当接させた前記コイルの形状に応じて変形可能な柔軟性を有しているワニス処理装置。 - 前記当接部材が、複数の毛状体を束ねてなる刷毛部材である請求項1記載のワニス処理装置。
- 回転電機の固定子又は回転子を形成させるべく、前記固定子用のコア又は前記回転子用のコアに装着されたコイルに対してワニスによる被膜を形成させるワニス処理方法であって、
前記コイルに前記ワニスを供給するための供給部を備えたワニス処理装置を用い、
前記供給部が前記コイルに当接される当接部材及び該当接部材に前記ワニスを供給するワニス供給機構を備え、
前記当接部材が当接させたコイルの形状に応じて変形可能な柔軟性を有しており、
コイルに当接させた前記当接部材に対して前記ワニス供給機構によってワニスを供給し、該ワニスを前記当接部材を通じて前記コイルに供給し、該コイルに供給した前記ワニスを硬化させて前記被膜を形成させるワニス処理方法。 - 複数のスロットが前記コアに備えられ、前記コイルが前記スロットに収容されて前記コアに装着されており、
前記当接部材を通じて供給したワニスを、前記コアのスロット内壁面とコイルとの間の隙間に充填し、該充填したワニスを硬化させる請求項3記載のワニス処理方法。 - 前記当接部材が、複数の毛状体を束ねてなる刷毛部材である請求項3又は4記載のワニス処理方法。
- 回転電機の固定子又は回転子を形成させるべく、前記固定子用のコア又は前記回転子用のコアに装着されたコイルに対してワニスによる被膜を形成させるワニス処理が実施される回転電機製造方法であって、
請求項3乃至5の何れか1項に記載のワニス処理方法によって前記ワニス処理を実施する回転電機製造方法。
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