JP2014226013A - ワニス処理方法、回転電機製造方法、及び、ワニス - Google Patents

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Hirofumi Fujii
弘文 藤井
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Abstract

【課題】作業性が良好で、且つ、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることが可能なワニス処理方法を提供し、ひいては製造容易で電気的信頼性に優れた回転電機を提供すること。
【解決手段】回転電機用コアに絶縁被覆導体からなるコイルを装着した後に前記絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させ、該被膜を熱硬化させて前記コイルをワニス処理するワニス処理方法であって、活性エネルギー線によっても硬化可能なワニスで前記被膜を形成させ、活性エネルギー線を前記被膜に照射して前記ワニスの粘度を増大させた後に前記熱硬化を実施することを特徴とするワニス処理方法などを提供する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、回転電機のコイルエンドのワニス処理方法、該ワニス処理を実施して回転電機を製造する回転電機製造方法、及び、該回転電機製造方法に用いるワニスに関する。
従来、車載用の回転電機として、エンジンの回転といった運動エネルギーを電気的なエネルギーに変換するための発電機や、バッテリーに蓄えられた電気的なエネルギーを駆動エネルギーに変換するための電動機などが知られている。
このような回転電機の主構成要素の一つであるステータ(固定子)は、一般に、複数のスロットをもつステータコア(固定子鉄心)と、このステータコアの軸方向両端からそれぞれ軸方向外側に突出するコイルエンドを形成しながらスロット内に装着されたコイル(ステータコイル)とを備えている。
前記ステータコイルは、通常、軟銅線などの導体にエナメル被膜によって絶縁被覆がされた巻線などの絶縁被覆導体によって形成されている。
また、近年において、前記コイルは、導体サイズの大きな平角エナメル線をU字状に折り曲げて、略平行する2本の直線状の脚部と該脚部の一端を接続する頭部とを有する“セグメント導体”と呼ばれる部材によって形成されたりしている(下記特許文献1参照)。
このセグメント導体型のステータを作製するのに際しては、頭部により接続された一端側とは逆側となる脚部の他端において導体を露出させた状態にしたセグメント導体を、コイルを形成させるのに必要な数だけステータコアのスロットに収容させて、しかも、両脚部の導体露出箇所がステータコアの端面よりも軸方向外側に突出した状態となるようにした後で、異なるセグメント導体の前記導体露出箇所どうしを電気溶接やロウ材溶接することによって電気的に接続させる方法で前記ステータコイルが形成されている。
ところで、このようなセグメント導体や前記巻線によって形成されたコイルに対しては、コアに対する固定、絶縁被覆の損傷防止などといった回転電機に対する信頼性確保の目的でワニス処理が行われている(下記特許文献2参照)。
前記ワニス処理は、一般的には熱硬化性のワニスを用いて実施されており、回転電機用コアに絶縁被覆導体からなるコイルを装着した後にコイルエンドやストッロ内における絶縁被覆導体の表面に前記ワニスで被膜を形成させ、該ワニスを熱硬化させる方法によって実施されている。
また、前記ワニス処理は、コイルを形成している絶縁被覆導体の線間にワニスを含浸させることにより、当該線間から空隙を除去して部分放電開始電圧を向上させる目的で実施されたりもしている。
このようなワニス処理においては、低粘度なワニスを用いる方が被膜への気泡巻き込みを抑制させうるとともに当該ワニスを線間に含浸させ易い点において有利となる。
反面、低粘度なワニスを用いてワニス処理を実施すると、前記ワニスを硬化させるべく加熱を行った際に当該ワニスの粘度がさらに低下するために絶縁被覆導体に対する付着力が低下して該絶縁被覆導体表面から脱離し易くなる。
このようにして熱硬化時にワニスが絶縁被覆導体から脱離するとワニス処理を行う必要の無い箇所に硬化被膜を形成させるおそれがあり、熱硬化後に不要箇所からワニスの硬化被膜を除去する作業が必要になるおそれがある。
また、熱硬化時にワニスが絶縁被覆導体から脱離するとワニスの硬化被膜の厚みが十分に確保されないおそれがある。
従って、従来のワニス処理は、その作業性を良好なものにすることと、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることとの両立を図ることが困難になっている。
また、このことから従来の回転電機は、電気的信頼性に優れたものを容易に製造することが困難になっている。
特開2005−124388号公報 国際公開第WO2004/098028号公報
本発明は、上記のような問題の解決を図ることを課題としており、作業性が良好で、且つ、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることが可能なワニス処理方法を提供し、ひいては製造容易で電気的信頼性に優れた回転電機を提供することを課題としている。
上記のような課題を解決するためのワニス処理方法に係る本発明は、回転電機用コアに絶縁被覆導体からなるコイルを装着した後に前記絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させ、該被膜を熱硬化させて前記コイルをワニス処理するワニス処理方法であって、活性エネルギー線によっても硬化可能なワニスで前記被膜を形成させ、活性エネルギー線を前記被膜に照射して前記ワニスの粘度を増大させた後に前記熱硬化を実施することを特徴にしている。
また、上記のような課題を解決するための回転電機製造方法に係る本発明は、回転電機用コアに絶縁被覆導体からなるコイルを装着した後に前記絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させ、該被膜を熱硬化させて前記コイルのワニス処理を実施する回転電機製造方法であって、前記ワニス処理を活性エネルギー線によっても硬化可能なワニスを用いて実施し、活性エネルギー線を前記被膜に照射して前記ワニスの粘度を増大させた後に前記熱硬化を実施することを特徴にしている。
さらに、ワニスに係る本発明は、上記のような回転電機製造方法に用いられ、所定の粘度を有することを特徴にしている。
本発明においては、熱硬化性を有するとともに活性エネルギー線によっても硬化反応を生じさせ得るワニスを用い、該ワニスの熱硬化に先立って活性エネルギー線の照射によって前記被膜を形成しているワニスの粘度を増大させることから、熱硬化時における絶縁被覆導体からのワニスの脱離を防止することができる。
即ち、本発明によれば、作業性が良好で、且つ、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることが可能なワニス処理方法を提供することができ、製造容易で電気的信頼性に優れた回転電機を提供することができる。
一実施形態の回転電機製造方法において作製されるステータの一例を示した概略斜視図。 図1のステータの一部を拡大して示した概略斜視図。 図1のステータの断面構造を模式的に示した概略断面図。 セグメント導体を用いたコイル形成方法を模式的に示した概略正面図。 実施例における評価用試料(試料2A)の作製方法を模式的に示した該略斜視図。 実施例における評価実験3の実験方法を模式的に示した該略正面図。
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、はじめに本発明のワニス処理方法が実施される回転電機の製造方法に関し、該製造方法によって作製する回転電機のステータの一例について図1〜3を参照しつつ説明する。
図1は、電気自動車やハイブリッッド自動車の駆動用モータに組み込まれているステータを表す概略斜視図であり、セグメント導体によってコイルが形成されてなるステータを表す概略斜視図である。
また、図2は、図1のステータを天地逆にし、図1の矢印「x」の方向から見たステータの様子を、要部を拡大して示した概略斜視図である。
さらに、図3は、図1のステータを水平面によって切断した場合の断面構造について要部を拡大して示しもので、一つのスロットの断面状況を示した概略断面図である。
また、この図3正面視左側の丸囲いによる図は、右図Y部の該略拡大図である。
なお、図1は、前記ステータコア10の内側の中空部分が上下方向に貫通した状態となるようにステータ1を縦置きした様子を示しており、この図にも示されているように、前記ステータ1は、短い円筒形状のステータコア10と、該ステータコア10に装着されたコイル20とを有する。
即ち、図1に示したステータ1は、前記コイルエンド20a,20bがステータコア10の上下に配されており、以下においては、上側のコイルエンド20aを「第一コイルエンド」、下側のコイルエンド20bを「第二コイルエンド」、とそれぞれ呼び分けることがある。
円筒状の前記ステータコア10は、その内面側に複数条のスロット11が形成されており、この複数条のスロット11が、ステータコア10の周方向(矢印Bの方向)に所定の間隔を設けて互いに略平行するようにして配設されている。
該スロット11は、ステータコア10の全長にわたって形成されており、ステータコア10の上端面10a、及び、下端面10bには、図3に示したようなスロット11の断面形状と同形状の開口部11bが形成されている。
前記ステータコア10においては、上記のように複数のスロット11が並行することから、その間が板状となっている。
この板状突起12は、“ティース”などと呼ばれるもので、該ティース12は、ステータコア10の内側から該ステータコアの中心に向けて突出した状態で複数形成されている。
なお、前記ティース12は、突出方向先端部にステータコア10の周方向に広がる広幅に形成された広幅部12aを有しており、断面略T字状となっている。
そして、前記スロット11は、ティースの広幅部12aに該当する箇所から径方向外側がコイル収容箇所となっており、ステータコア10の内周面側においては周方向における幅が前記コイル収容箇所に比べて狭い線状開口部11aを形成させている。
このステータコア10のスロット11には、U字状に折り曲げ加工された平角エナメル線からなるセグメント導体の脚部がそれぞれ4本ずつ収容されており、径方向内側から外向きに一列に並んだ状態で計4本の脚部が収容されている。
本実施形態のステータ1は、これらのセグメント導体が互いに電気的に接続されて前記コイル20が形成されている。
なお、この4本の脚部とスロット11の内壁面との間にスロット絶縁紙40が介装されており、一番内周側の平角エナメル線とティース12の広幅部12aとの間にはスロット内から線状開口部11aに蓋をするような形でウェッジ50が介装されている。
なお、前記セグメント導体は、直線状の2本の脚部と該脚部の一端を曲線状に接続する頭部とを有し、前記2本の脚部を略平行させて前記U字状に形成されている。
本実施形態のステータ1におけるコイル20は、前記頭部によって接続されている側とは逆側となる脚部の他端側に当該脚部を略S字状に屈曲させてなる屈曲部211を有しているとともに該屈曲部211の先端にエナメル被膜(絶縁被覆)が除去された導体露出部211aを有しており、異なるセグメント導体の前記導体露出部211aが溶接されることによって形成されている。
従って、前記コイル20は、前記第一コイルエンド20aをセグメント導体の前記頭部によって形成させるとともに前記第二コイルエンド20bを前記屈曲部211によって形成させている。
なお、本実施形態の前記コイル20は、前記導体露出部211aの表面に前記エナメル被膜とは別のワニスの硬化被膜が形成されて絶縁被覆が施されている。
また、本実施形態のステータ1は、この導体露出部211aに対して絶縁被覆を施しているものと同じワニスが両コイルエンド20a,20bやスロット内においてコイル線間に含浸硬化されており、前記コイル20とステータコア10のスロット内壁面との間の空隙部にも前記ワニスが含浸硬化されている。
該ワニスによる導体露出部211aにおける絶縁被膜の形成や、線間含浸は、本実施形態の自動車用モータの製造方法におけるワニス処理によって形成されている。
以下に、図4を参照しつつ、本実施形態の駆動用モータの製造方法について説明する。
本実施形態の自動車用モータの製造方法においては、複数のセグメント導体20x,20x’をステータコア10にセットしてコイル20を形成させるコイル形成工程を実施した後に、該コイルをワニス処理するワニス処理工程を実施する。
なお、以下においては、セグメント導体の脚部に関し、頭部によって接続されている一端側を脚部の“基端”と称し、他端側を脚部の“先端”と称してコイル形成工程やワニス処理工程を説明する。
前記コイル形成工程は、例えば、以下の(a)〜(d)の工程を順に行うことにより実施することができる。
(a)長さがスロット11よりも長い2本の直線状の脚部と、該脚部の一端側をアーチ状に接続する頭部とを有するU字状のセグメント導体を複数用意し、次いで用意した前記セグメント導体20x,20x’の前記脚部21x,21x’の先端におけるエナメル被膜を剥離除去し、該脚部先端に導体を露出させた導体露出部21ax,21ax’を形成させる口出し工程。

(b)前記ステータコア10のスロット11に、該スロットの内壁面に沿うように折り曲げられたスロット絶縁紙40を収容させるとともにセグメント導体20x,21x’の脚部21x,21x’の先端を前記ステータコア10の一端側からスロット絶縁紙40の内側に差し入れ、前記先端がステータコア10の他端面よりも突出するようにしてセグメント導体をスロット11に収容させる導体収容工程(図4(ロ)参照)。

(c)前記導体収容工程によってスロット11に収容させたセグメント導体20x,21x’をステータコア10の端面よりも脚部突出方向僅かに外側において周方向Bに向かって傾倒するように折り曲げた後に、前記導体露出部21ax,21ax’を含む先端部分を逆向きに折り曲げて前記屈曲部211となる部分を形成させる導体屈曲工程(図4(ハ)参照)。

(d)電気的に接続すべきセグメント導体20x,21x’の導体露出部21ax,21ax’どうしを接近させてこれらを溶接し、該セグメント導体どうしを電気的に接続して、ステータコアにコイルが装着されたコイル装着体を作製する導体接続工程。
なお、前記口出し工程(a)における絶縁被覆の除去は、カッターナイフや回転砥石などの切削工具を用いて実施さすることができる。
また、前記導体収容工程(b)は、例えば、複数のセグメント導体20x,20x’を、前記脚部21x,21x’の先端が上方となり前記頭部22x,22x’が下方に位置するようにして前記ステータコア10への装着状態と同様になるように配置し、この配置されたセグメント導体の上方にスロット絶縁紙40がスロット11に収容されたステータコア10を配置して、前記セグメント導体と前記ステータコアとを上下方向に相対移動させて実施することができる。
このような方法を採用することで全てのセグメント導体を一度にステータコア10に収容させることができる。
なお、本実施形態においては、このような一度の操作で全てのセグメント導体をステータコアに装着する方法に代えて、単にセグメント導体を一つずつ順番にステータコア10に収容させる方法で導体収容工程(b)を実施しても良い。
前記導体屈曲工程(c)は、例えば、前記脚部21x,21x’の先端部をスロット11から突出している部分の根元において折り曲げて周方向Bに傾倒させ、該脚部21x,21x’の先端が一旦溶接位置を通り過ぎる状態となるまで折り曲げた後に、前記導体露出部21ax,21ax’が溶接位置において軸方向Aにまっすぐに立ち上がる状態となるように再び脚部の先端側を根元の折り曲げ方向とは逆向きに折り曲げて実施することができる。
前記導体接続工程(d)は、例えば、前記導体露出部21ax,21ax’を溶接することで実施でき、該溶接としては、ティグ溶接などのアーク溶接、ガス溶接といった融接方法;スポット溶接などの圧接方法;半田等のロウ材を用いたロウ付け方法;などにより実施することができる。
この導体接続工程(d)により全てのセグメント導体を溶接した後は、ステータコアの一端側(図4において下側)に前記頭部22x,22x’による第一コイルエンド20aが形成されるとともに前記一端側とは逆側となるステータコアの他端側において前記屈曲部211による第二コイルエンド20bが形成されることになる。
前記導体接続工程(d)によって作製されたコイル装着体は、第二コイルエンド20bにおいて導体が一部露出した状態になっていることからそのままの状態ではステータとして用いることができない。
従って、本実施形態においては、このコイル装着体に対して以下のワニス処理工程を実施し、導体露出箇所に絶縁被膜を形成させて前記駆動用モータのステータを作製する。
該ワニス処理工程は、例えば、下記(1)〜(4)の工程を順に行うことにより実施することができる。
(1)熱硬化性を有し、活性エネルギー線によっても硬化反応を生じさせることが可能なワニスを用意し、該ワニスを適度な粘度に調整するワニス準備工程。

(2)下記のワニス滴下工程(2a)、及び、余滴工程(2b)を実施する事により、コイル装着体を構成している前記絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させる被膜形成工程。
(2a)前記第二コイルエンド(導体露出部)側が下側になり、前記第一コイルエンド(頭部)側が上側になるようにしてコイル装着体を配置し、前記第一コイルエンド20aに対して前記ワニス準備工程で準備されたワニスを上側から滴下し、前記第一コイル20aを構成しているセグメント導体(頭部)の表面に前記ワニスによる被膜(ウェット被膜)を形成させるワニス滴下工程。

(2b)前記ワニス滴下工程に引き続いて前記ワニスの滴下を継続させることにより、前記ステータコア10のスロット内にもワニスを含浸させ、さらに該スロットの下端から溢れ出させたワニスで前記第二コイルエンド20bにおいてもセグメント導体表面にウェット被膜を形成させる余滴工程。

(3)前記余滴工程後、両コイルエンド20a,20bに対して活性エネルギー線を照射し、前記ウェット被膜を形成しているワニスの粘度を増大させてゲル化させるワニス増粘工程。

(4)前記ワニス増粘工程によってゲル化された被膜(ゲル被膜)を熱硬化させる熱硬化工程。
なお、前記ワニス準備工程(1)において用いる熱硬化性のワニスが、活性エネルギー線の照射によって硬化反応を示すかどうかが当該ワニスの成分などから不明である場合は予めワニス単体に対し、赤外光、可視光、紫外光といった光線、電子線、X線などの活性エネルギー線を照射し、該ワニスの粘度が向上するかどうかを確認すればよい。
また、前記ワニスは、上記例示の活性エネルギー線、又は、上記例示以外の活性エネルギー線の内、何れか一つに対して硬化反応を示せばよく、全ての活性エネルギー線によって硬化可能である必要性はない。
本実施形態のワニス処理工程においては、これらの中でも照射源を比較的容易に調達し易く、前記ワニス増粘工程において厳重な管理を要しない点において前記光線により硬化可能なワニスを用いることが好ましい。
このような感光性且つ熱硬化性を有するワニスとしては、例えば、ラジカル重合可能なモノマーを主成分とし、該モノマー中に光の照射によってラジカルを発生させるラジカル発生剤を分散させたものを挙げることができる。
本実施形態のワニスは、光硬化性ワニスの主成分として広く用いられている単官能、又は、2官能以上の(メタ)アクリレートをその主たる成分とすることができる。
前記単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチルー2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、上記以外の2官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ネオペンチルグリコールにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリンにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンにエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
さらには、前記ワニスには、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アミノ(メタ)アクリレート等の重合性オリゴマーを含有させることができる。
また、必要に応じ、本実施形態の前記ワニスには、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(ビニルエステル樹脂)、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ビニル樹脂といった樹脂や、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどの(メタ)アクリレート以外のモノマーを含有させることができる。
なお、前記ワニスは、揮発性の比較的高いモノマーを含有させる方が、加熱時に当該モノマーが揮発してワニスの粘度低下を防止する機能を発揮する反面、ワニス処理作業の安全性、臭気の問題、排気処理の手間などを考慮すると揮発性が高いモノマーを過度に含有させないようにすることが好ましい。
より具体的には、本実施形態のワニスは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルやスチレンなどの揮発性の比較的高いモノマーの含有量を低く抑え、JIS K2265「クリーブランド開放法」で測定される引火点が150℃以上であることが好ましい。
前記ワニス準備工程においては、ワニスを低粘度なものとする方が、前記ワニス滴下工程や前記余滴工程におけるコイル表面上でのワニスの濡れ広がりや、コイル線間等への含浸を良好にさせうる。
一方で、ワニスを高粘度なものとする方が、前記ウェット被膜の厚みを厚くさせることができるとともに線間での保持も良好になり、前記ワニス増粘工程や前記熱硬化工程におけるコイル表面などからのワニスの脱離を抑制させることができる。
従って、良好なる作業性を確保しつつ電気的な信頼性の高いステータを作製するのに有利となる点においては、前記ワニスがある程度の粘度となっていることが好ましく、一般的な電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用モータに用いられるようなステータを作製する場合であれば、前記ワニスの粘度は25℃において0.05Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましく、1.0Pa・s以上5.0Pa・s以下であることがより好ましい。
なお、ここでいう「粘度」の値とは、JIS K5600−2−3に規定されているコーン・プレート型粘度計(E型粘度計)を用いた測定方法により測定される値を意図しており、具体的には、実施例において示すような方法によって測定される値を意図している。
前記ワニスを上記のような好適な粘度に調整するには、溶媒、反応性希釈剤による希釈や、増粘剤を適宜添加すればよい。
このような引火点や粘度に関して好適な特性を有するワニスの具体的な例を挙げると、前記ビニルエステル樹脂と前記(メタ)アクリレートとを主成分とするものが挙げられる。
より具体的には、前記ワニスは、含有する全ての樹脂及び全てのモノマーの合計質量(X1)に占める、ビニルエステル樹脂と(メタ)アクリレートとの合計質量(X2)の割合(X2/X1×100%)が90質量%以上であることが好ましく、前記割合が95質量%以上であることがより好ましい。
さらに、前記ワニスは、含有するビニルエステル樹脂の質量(M1)と(メタ)アクリレートの質量(M2)との比率(M1:M2)が20:80〜70:30となっていることが好ましく、前記比率が40:60〜60:40となっていることがより好ましい。
前記ワニス滴下工程(2a)や前記余滴工程(2b)においては、前記ステータコアや前記コイルが常温(例えば、15℃〜30℃)の状態で実施することも可能であるが、例えば、前記ステータコアや前記コイルを40℃〜100℃程度に加熱しておいて線間へのワニスの含浸性を高めたり、続くワニス増粘工程におけるワニスの反応性を向上させておいたりすることも可能である。
なお、前記余滴工程(2b)は、最終的に前記導体露出部において前記ワニスの硬化物による絶縁被膜が50μm〜1000μmの厚みで形成されるように実施することが好ましい。
前記絶縁被膜は厚みが薄い方が乾燥時にアウトガスを生じにくく結果としてボイドの形成が抑制されることになる。
そして、前記導体露出部における絶縁被膜の形成厚みが50μm以上であることが好ましいのは、絶縁被膜の厚みを50μm以上確保することで、この部分を絶縁耐圧に優れたものとすることができ、ピンホール等の欠陥の発生防止も図ることができるためである。
また、前記導体露出部における絶縁被膜の形成厚みが1000μm以下であることが好ましいのは、絶縁被膜の厚みを1000μm以下とすることで、この部分にクラックを発生させるおそれを低減させることができるためである。
このような観点から絶縁皮膜の前記厚みは、100μm〜500μmであることが特に好ましい。
前記ワニス増粘工程(3)は、前記のように光線を照射して実施することが好ましい。
なかでも、ワニス増粘工程(3)は、高いエネルギーの光線を照射可能な機器が容易に調達可能である点において紫外光を用いて実施することが好ましい。
この光照射は、前記第一コイルエンド20a、前記第二コイルエンド20b、又は、ステータコア10の内周面におけるスロット11の線状開口部11aの何れに対して実施してもよく、何れに対して実施しても後段の熱硬化工程においてセグメント導体の表面からのワニスの脱落防止に効果を発揮する点においては同じである。
ただし、本実施形態のワニス処理工程においては、熱硬化工程におけるワニスの脱落防止の他に前記導体露出部に絶縁被膜を形成させることをも目的としているために、少なくとも、前記導体露出部側となる第二コイルエンド20bには光照射を実施することが好ましく、前記第一コイルエンド20a、前記第二コイルエンド20b、及び、線状開口部11aの全てに対して紫外光を照射することが好ましい。
即ち、より厚みの厚い絶縁被膜を導体露出部に形成させて駆動用モータの電気的な信頼性を確保する上においては、少なくとも、第二コイルエンド20bに光照射を実施することが好ましい。
また、該ワニス増粘工程は、前記ワニスとして、紫外光の散乱に有効となるマイカ、セリサイト、タルクなどの板状鉱物粒子、酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物粒子を含有するワニスを用い、該ワニスによる被膜内において光を多重反射させることにより被膜全体における硬化度の均一化を図るようにして実施してもよい。
なお、ワニス増粘工程におけるワニスのゲル化は、熱硬化時の温度条件において0.05Pa・s以上の粘度を示すように実施することが好ましい。
このためには、ワニス増粘工程は、少なくとも常温(25℃)における粘度が10Pa・s以上となるようにワニスをゲル化させることが好ましく、前記粘度が50Pa・s以上となるようにワニスをゲル化させることが特に好ましい。
従って、ワニス増粘工程におけるワニスのゲル化は、常温(25℃)におけるゲル化前の粘度を、η0(Pa・s)、ゲル化後の常温(25℃)におけるワニスの粘度をη1(Pa・s)、熱硬化時の温度条件におけるゲル化後のワニスの粘度をη2(Pa・s)とした場合に、下記関係式(1)、(2)の内の何れかを満足させることが好ましく、下記関係式(1)、(2)の両方を満足させるように実施することがより好ましい。

η1 ≧ (η0×200) ・・・(1)
η2 ≧ η0 ・・・(2)
前記熱硬化工程(4)は、前記コイルに通電してジュール熱によるワニスの熱硬化を実施させる方法や、単にコイル装着体を加熱炉に収容して該加熱炉内で加熱する方法などにより実施することが可能である。
このワニスの硬化物により形成させる被膜(硬化被膜)は、十分な絶縁性を有することが好ましい。
なお、本明細書中における「絶縁性」とは、約0.1mm厚みの試料に対してJIS C2103の6.6.3項に規定の絶縁破壊電圧の試験を実施した際に、10kV/mmの絶縁破壊強さを示すことを意味する。
そして、本実施形態における硬化被膜は、50kV/mm以上、望ましくは70kV/mm以上の絶縁破壊強さを示すワニス硬化物で形成させることが好ましく、少なくとも、前記導体露出部においては、最小被膜厚み[t(mm)]と前記ワニス硬化物の絶縁破壊強さ[VBD(kV/mm)]とが、下記関係式(3)を満足させていることが好ましい。

(2×t×VBD) ≧ 10kV ・・・(3)
なお、本実施形態においては、絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させる被膜形成工程(2)と、該被膜形成工程で絶縁被覆導体表面に形成された前記ワニスによるウェット被膜に対して活性エネルギー線を照射し、前記ワニスの粘度を増大させてゲル化させるワニス増粘工程(3)とを各1回とする必要はなく、要すれば、これらを繰り返して実施するようにしてもよい。
例えば、被膜形成工程(2)とワニス増粘工程(3)とを実施した後に、再び被膜形成工程(2)とワニス増粘工程(3)とを実施することで、硬化被膜の厚みを一定以上に確保し易くなるばかりでなく、被膜が2重に形成されることによりピンホールの発生を抑制することができる。
また、コイル装着体における絶縁被覆導体間(コイル線間)の空隙にワニスを充填して絶縁被覆導体どうしを強固に固定させようとすると当該絶縁被覆導体にワニスを厚塗りすることが必要になるが、そのような場合にも被膜形成工程(2)とワニス増粘工程(3)とを複数回ずつ実施することが有利になる。
このように複数の被膜形成工程(2)とワニス増粘工程(3)とを実施する場合、各被膜形成工程(2)で形成させる被膜の厚みは共通させる必要はなく、各ワニス増粘工程(3)で実施する活性エネルギー線の照射範囲や照射強度を異ならせるようにしてもよい。
なお、前記被膜形成工程(2)については、必ずしも、ワニス滴下工程(2a)と余滴工程(2b)との両方を複数回実施しなくても上記効果を得ることが可能である。
例えば、一度目の被膜形成工程(2)においてワニス滴下工程(2a)と余滴工程(2b)との両方を実施し、前記導体露出部たる第二コイルエンド20bが上側となるようにコイル装着体を上下反転させ、ワニス増粘工程(3)を実施した後に、二度目の被膜形成工程を前記導体露出部に対するワニス滴下工程(2a)のみとしてもよい。
そして、この場合には、2回目のワニス増粘工程を、例えば、第二コイルエンド側にのみ活性エネルギー線を照射させるようにして実施しても良い。
この場合、第二コイルエンド20bにおいては、前記ワニスによる被膜が2層となって前記導体露出部におけるピンホールの形成が防止される一方で第一コイルエンド20aにおいては、前記ワニスによる被膜が単層でしか形成されないことになる。
しかし、前記第一コイルエンド20aにおいては、そもそも絶縁被覆導体の被覆が剥離されてはいないことから、前記ワニスによる被膜が単層であっても十分な絶縁信頼性が確保され得る。
なお、2回目以降の被膜形成工程(2)においては、ゲル化を生じてはいるものの同じワニスで形成された被膜が下地となることから、絶縁被覆導体に被膜を形成させる1回目のために被膜形成工程(2)に比べ、ワニスの濡れ性(下地との親和性)が良好なものとなり易く、ウェット被膜の厚みを厚くさせ易くなる。
しかも、2回目の以降のワニス増粘工程(3)において照射される活性エネルギー線により、1回目の被膜形成工程(2)で形成された被膜は、さらなるゲル化を生じるため、熱硬化工程における流動が抑制されることになる。
このことについて、熱硬化工程前に前記ワニスによって100μmの厚みの被膜を形成させる場合を例にして、より詳しく説明すると、被膜形成工程(2)とワニス増粘工程(3)とを2回実施して、1層50μmの被膜を2層形成させて合計100μmの厚みとすると、下層側の被膜は活性エネルギー線の照射が2回実施されるので上層に比べてゲル化させた状態とすることができ熱硬化工程における流動性を上層に比べて抑制させることができる。
そして、上層側については、その下地が同じワニスで形成されていることで熱硬化工程における流動が抑制されることになる。
上記のごとく、本実施形態においては、このようにして、前記熱硬化工程前に、絶縁被覆導体の表面に前記ワニスで前記被膜を形成させる被膜形成工程と、該被膜に活性エネルギー線を照射して前記ワニスの粘度を増大させるワニス増粘工程とを交互に2回以上実施して多層構造を有する前記被膜を形成させることで熱硬化工程における絶縁被覆導体からのワニスの脱離をより確実に防止することができる。
本実施形態の駆動用モータ製造方法においては、上記のように作製されたステータをロータなどともにケーシングに収容させる工程が実施される。
なお、この工程は、従来のモータ製造方法と同様にして実施することができる。
従来のこの種のステータを作製するのに際しては、特開2003−244909号公報などに記載のように、前記第二コイルエンドに該当する導体露出部側を樹脂粉体中に埋設させた状態でコイルを例えば150℃程度に加熱し、この熱により樹脂粉体を導体露出部に熱融着させて絶縁被膜を形成させた後にワニス処理が行われている。
そのため、従来のステータ製造方法においては、導体露出部に対する絶縁被膜の形成直後にワニス処理を実施しようとすると、コイルやステータコアが高温状態であるために熱硬化性のワニスがコイルやステータコアとの接触後、早期に硬化してしまい、コイル線間にワニスが十分に含浸されずに電気的な信頼性を確保することが困難になったり、不要箇所に硬化被膜が形成されて該硬化被膜の除去に多大な手間を生じさせたりしている。
一方で、樹脂粉体による絶縁被膜の形成後に十分な冷却期間を設けるとワニスの早期硬化を防止し得るものの一つのステータが完成するまでの時間を長期化させることになるためステータを容易に製造することが難しいという問題については解消させることが困難である。
本実施形態の製造方法においては、ワニスをゲル化させることから、該ワニスの硬化被膜を従来よりも厚く確保させることができ樹脂粉体による導体露出部の絶縁被膜形成を省略させ得る。
従って、前記ワニス滴下工程や前記余滴工程をコイルやステータコアがワニスの硬化開始温度に対して十分低温となっている状態で実施することができるため、不要箇所に付着したワニスの除去も容易で且つワニスが行き渡らない箇所が形成されることを防止することができる。
また、紫外光等の活性エネルギー線の照射によるワニスのゲル化は、短時間で実施可能であるために、本実施形態の製造方法によれば、従来の方法に比べてステータを完成させるまでの時間を長期化させるおそれを抑制させ得る。
このように本実施形態のワニス処理方法は、作業性が良好で、且つ、自動車用の駆動モータに対して電気的な信頼性を付与させることが可能となる。
なお、作業性が良好で、且つ、電気的な信頼性を付与させることが可能となるという本発明の効果は、セグメント導体によって形成されたコイルを有するステータを作製する場合のみに発揮されるものではなく、巻線によって形成されたコイルを有するステータを作製する場合においても同じく発揮される効果である。
さらに、ワニス処理において上記のような効果が発揮されるのは、ステータに対してワニス処理を実施する場合に限定されるものではなく、ロータ(回転子)に対してワニス処理を行う場合においても同じである。
また、上記効果は、自動車用の駆動モータにおいてのみ発揮されるものではなく、モータやジェネレータといった各種の回転電機全般に対して広く発揮される効果である。
なお、本実施形態のワニス処理方法や回転電機製造方法は、上記例示以外にも種々変更を加えうることは説明するまでもなく当然の事柄である。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
(ワニス)
ワニス処理を行うためのワニスとして、以下の(A)〜(C)を混合して感光性且つ熱硬化性を有するワニスを調製した。
(A)日東シンコー社製のコイルワニス(型名「NV−2040」、25℃における粘度:80mPa・s)100質量部
(B)日東シンコー社製の促進剤(型名「No.2」)0.3質量部
(C)日東シンコー社製の触媒(型名「No.15」)1質量部
(粘度測定)
上記の「NV−2040」の粘度は、以下のような測定により求めた。
測定器:東機産業社製のE型粘度計、型名「RE80U」
コーンの角:48分
コーンの直径:48mm
コーン回転数:100rpm
(評価実験1:ワニス処理模擬実験)
(試料1Aについての評価)
幅:3.2mm、厚み:1.8mmの平角エナメル線(日立マグネットワイヤ社製、商品名:OFC−AIW(P2C))を約10cm長さに切り出し、2%伸長後、片端から2cmの区間にわたってエナメル被膜を剥離して銅導体を露出させた部分(導体露出部)を形成させ評価用試料(試料1A)とした。
前記ワニス((A)〜(C)混合物)を収容させた槽を用意し、前記試料1Aを導体露出部が下端となるように保持した状態で前記の槽に室温で浸漬させ、導体露出部全体が液面下に没した時点で前記試料1Aを引き上げ、その状態で10分間保持した。
次いで、この試料1Aを上下逆向きにしてワニスの付着した導体露出部側が上端となるようにし、このワニス付着箇所に対し250Wの超高圧水銀灯による光照射を3分間実施し、導体露出部を被覆しているワニスの粘度を増大させた。
この光照射した試料1Aを、再びワニス付着部分が下端となるように保持した状態でオーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を行い、ワニスの熱硬化を実施し、前記導体露出部に前記ワニスの硬化物からなる絶縁被膜を形成させた。
そして、導体露出部の中間位置(エナメル線の末端から1cm内側の位置)においてエナメル線の3.2mm幅の面に形成された絶縁被膜の厚みを測定した。
(試料1Bについての評価)
また、光照射を実施しなかった点を除いて試料1Aと同様に作製した試料1Bに関しても同様に絶縁被膜の厚みを測定した。
結果を、下記表1に示す。
Figure 2014226013
(評価実験2:ワニスの含浸及び脱離防止)
(試料2Aについての評価)
試料1A、1Bと同じ平角エナメル線(日立マグネットワイヤ社製、商品名:OFC−AIW(P2C)、幅:3.2mm、厚み:1.8mm)を20cm長さに切断したもの4本とを用意し、この4本の平角エナメル線を2列2段に束ねた試料(試料2A)を作製した。
なお、図5に示すように、この試料2A(TA2)は、束ねた4本の平角エナメル線(E)の両端部を糸で縛って作製し、且つ、厚み0.13mmで大きさ数ミリ角のスペーサー(図示せず)を所定の間隔で挟み込むことによって線間に隙間を形成させるようにして作製した。
作製した試料2Aを室温(25℃)とし、長さ方向が垂直方向となるように支持し、上端に室温状態の前記ワニスを0.2ml滴下し、同じ姿勢のまま10分間保持した後に、オーブンに収容させた。
そして、該オーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を行い、ワニスの熱硬化を実施し、平角エナメル線の線間において前記ワニスの硬化物からなる被膜を形成させた。
このときオーブン中にアルミホイルを試料2Aの下方に配置しておき、60分間の前記加熱後にアルミホイルを目視にて観察することで、熱硬化中におけるワニスの脱離の有無を確認した。
また、前記加熱後に試料2Aを分解し、ワニスの滴下を行った上端から、下端に向けてどの程度の距離までワニスが到達しているかを計測し、この到達距離[D1(cm)]を試料長さ(20cm)で除した百分率によりワニスの含浸性を評価した。
(試料2Bについての評価)
試料2Aと同様にして作製した試料2Bに対し、試料2Aと同様に上端に前記ワニスを0.2ml滴下し、同じ姿勢のまま10分間保持した後に、この試料2Bの下方から250Wの超高圧水銀灯による光照射を3分間実施した。
この光照射した試料2Bを、試料2Aと同様にアルミホイルをセットしたオーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱し、該加熱中におけるワニスの脱離状況を確認した。
また、試料2Aと同様に試料上端からのワニスの到達距離により含浸性についての評価を行った。
(試料2Cについての評価)
試料2A、試料2Bと同様にして作製した試料2Cに対し、試料2Aと同様に上端に前記ワニスを0.2ml滴下し、同じ姿勢のまま10分間保持した後にオーブン中で90℃30分、150℃30分の合計60分の加熱を実施して前記ワニスを熱硬化させ、ワニスの脱離状況の確認とワニスの含浸性の計測とを実施した。
ただし、この試料2Cは、温度が150℃となるように加熱してワニスの前記滴下を実施した。
結果を、下記表2に示す。
Figure 2014226013
(評価実験3:不揮発性ワニスの評価)
評価実験1で用いたワニスに比べ揮発成分の少ない下記の2種類のワニスを用いたこと、平角エナメル線を導体露出部を形成させたもの以外にそのままの状態のもの(全長にわたって絶縁被覆がなされているもの)をも用いて評価実験を行ったこと、光照射の条件を下記のように変更したこと、及び、一部の評価実験をワニスの被覆・光照射を交互に2回繰り返して実施したこと以外は、上記評価実験1と同様にして実験を行った。
結果を、下記表3に示す。
(使用ワニス)
ワニスA:
日東シンコー社製、商品名「NV―890UV」(ビニルエステル樹脂を主たる樹脂成分とし、該樹脂成分と(メタ)アクリレートとが、ほぼ同量となるように配合された光硬化性及び熱硬化性を有するワニス、25℃における粘度:2.0Pa・s、引火点:172℃)
ワニスB:
日東シンコー社製、商品名「NV―891UV」(「NV―890UV」に比べて樹脂成分を多めに配合して高粘度化させたワニス、25℃における粘度:3.0Pa・s、引火点:172℃)
(光照射条件)
試料への露光は、図6に示すように、800W超高圧水銀灯(HL)2本を15cmの間隔で平行に並べ、この2本の水銀灯(HL)の中間地点から高さ10cmのところに試料下端が位置し、且つ、この下端側がワニス被覆部分(W)となるようにして試料(TP)を10秒間垂直に保持することにより実施した。
Figure 2014226013
上記の結果からも、本発明によれば作業性が良好で、且つ、回転電機に対して電気的な信頼性を付与させることが可能なワニス処理方法が提供され、製造容易で電気的信頼性に優れた回転電機が提供され得ることがわかる。
10:ステータコア、11:スロット、20:コイル、20x:セグメント導体

Claims (11)

  1. 回転電機用コアに絶縁被覆導体からなるコイルを装着した後に前記絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させ、該被膜を熱硬化させて前記コイルをワニス処理するワニス処理方法であって、
    活性エネルギー線によっても硬化可能なワニスで前記被膜を形成させ、活性エネルギー線を前記被膜に照射して前記ワニスの粘度を増大させた後に前記熱硬化を実施することを特徴とするワニス処理方法。
  2. 前記コイルが、2本の脚部と該脚部の一端を接続する頭部とを有するセグメント導体によって形成され、且つ絶縁被覆が除去されて導体を露出させた前記脚部の他端どうしがコイルエンドにおいて電気的に接続されて形成されており、前記露出している導体表面に前記被膜を形成させて前記熱硬化を実施する請求項1記載のワニス処理方法。
  3. 前記熱硬化前に、絶縁被覆導体の表面に前記ワニスで前記被膜を形成させる工程と、該被膜に活性エネルギー線を照射して前記ワニスの粘度を増大させる工程とを交互に2回以上実施して前記ワニスによる被膜を多層構造にする請求項1又は2に記載のワニス処理方法。
  4. 前記ワニスの引火点が150℃以上である請求項1乃至3の何れか1項に記載のワニス処理方法。
  5. 回転電機用コアに絶縁被覆導体からなるコイルを装着した後に前記絶縁被覆導体の表面に熱硬化性のワニスで被膜を形成させ、該被膜を熱硬化させて前記コイルのワニス処理を実施する回転電機製造方法であって、
    前記ワニス処理を活性エネルギー線によっても硬化可能なワニスを用いて実施し、活性エネルギー線を前記被膜に照射して前記ワニスの粘度を増大させた後に前記熱硬化を実施することを特徴とする回転電機製造方法。
  6. 前記熱硬化前に、絶縁被覆導体の表面に前記ワニスで前記被膜を形成させる工程と、該被膜に活性エネルギー線を照射して前記ワニスの粘度を増大させる工程とを交互に2回以上実施して前記ワニスによる被膜を多層構造にする請求項5記載の回転電機製造方法。
  7. 前記コイルが、2本の脚部と該脚部の一端を接続する頭部とを有するセグメント導体によって形成され、且つ絶縁被覆が除去されて導体を露出させた前記脚部の他端どうしがコイルエンドにおいて電気的に接続されて形成されており、前記露出している導体表面に前記被膜を形成させて前記熱硬化を実施する請求項5又は6記載の回転電機製造方法。
  8. 製造する回転電機が電気自動車又はハイブリッド自動車の駆動用モータであり、前記ワニス処理を実施するコイルが前記駆動用モータのステータコイルである請求項5乃至7の何れか1項に記載の回転電機製造方法。
  9. 前記ワニスの引火点が150℃以上である請求項5乃至8の何れか1項に記載の回転電機製造方法。
  10. 請求項5乃至9の何れか1項に記載の回転電機製造方法において前記被膜の形成に用いられ、熱硬化性を有するとともに活性エネルギー線によっても硬化可能で、25℃での粘度が0.05Pa・s以上10.0Pa・s以下であることを特徴とするワニス。
  11. 引火点が150℃以上である請求項10記載のワニス。
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