本実施形態における水晶デバイスは、図1及び図2に示されているように、パッケージ110と、パッケージ110に接合された水晶素子120とを含んでいる。パッケージ110は、基板110aの上面と枠体110bの内側面によって囲まれた凹部Kが形成されている。このような水晶デバイスは、電子機器等で使用する基準信号を出力するのに用いられる。
基板110aは、矩形状であり、上面に実装された水晶素子120を実装するための実装部材として機能するものである。基板110aの上面には、水晶素子120を実装するための一対の電極パッド111が設けられている。
また、基板110aの下面の四隅には、外部端子112が設けられている。また、四つの外部端子112の内の二つが、水晶素子120と電気的に接続されている。また、水晶素子120と電気的に接続されている一対の外部端子112は、基板110aの下面の対角に位置するように設けられている。
基板110aは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料である絶縁層からなる。基板110aは、絶縁層を一層用いたものであっても、絶縁層を複数層積層したものであってもよい。基板110aの表面及び内部には、枠体110bの上面に設けられた電極パッド111と、基板110aの下面に設けられた外部端子112とを電気的に接続するための配線パターン(図示せず)及びビア導体(図示せず)が設けられている。
枠体110bは、基板110aの上面に配置され、基板110aの上面に凹部Kを形成するためのものである。枠体110bは、例えばアルミナセラミックス又はガラス−セラミックス等のセラミック材料からなり、基板110aと一体的に形成されている。
電極パッド111は、水晶素子120を実装するためのものである。電極パッド111は、基板110aの上面に一対で設けられており、枠体110bの内側にある基板110aの内周縁の一辺に沿うように隣接して設けられている。
外部端子112は、電気機器等の外部の実装基板上の実装パッド(図示せず)と接合するために用いられている。外部端子112は、基板110aの下面の四隅に設けられている。また、外部端子112は、第一外部端子112a、第二外部端子112b、第三外部端子112c及び第四外部端子112dによって構成されている。第三外部端子112cは、第三ビア導体114cを介して、封止用導体パターン117と電気的に接続されている。また、外部端子112の少なくとも一つは、電子機器等の実装基板上の基準電位であるグランド電位と接続されている実装パッドと接続されている。これにより、封止用導体パターン117に接合された蓋体130がグランド電位となっている第三外部端子112cに接続される。よって、蓋体130による凹部K内のシールド性が向上する。
配線パターン113は、電極パッド111とビア導体114とを電気的に接続するためのものである。配線パターン113は、第一配線パターン113a及び第二配線パターン113bによって構成されている。第一配線パターン113aの一端は、第一電極パッド111aと電気的に接続されており、第一配線パターン113aの他端は、第一ビア導体114aと電気的に接続されている。また、第二配線パターン113bの一端は、第二電極パッド111bと電気的に接続されており、第二配線パターン113bの他端は、第二ビア導体114bと電気的に接続されている。
また、配線パターン113は、平面視して、枠体110bと重なるようにして設けられている。このようにすることによって、水晶デバイスは、配線パターン113と水晶素子120との間で浮遊容量が発生することを抑えるので、水晶素子120にこの浮遊容量が付与されることがないため、発振周波数が変動してしまうことを抑えることができる。また、水晶デバイスに外力が加わり、枠体110bの長辺方向に曲げモーメントが発生しても、基板110aに加えて枠体110bが設けられていることにより、枠体110bが設けられている箇所は、変形しにくくなる。よって、枠体110bと平面視して重なる位置に設けられた配線パターン113は、断線しにくくなり、発振周波数が出力されなくなることを抑制することができる。
また、第一配線パターン113aは、第一電極パッド111a及び第一ビア導体114aと電気的に接続されている。第一配線パターン113aは、第一電極パッド111aから近接された枠体110bの長辺方向に向かって延出されており、第一配線パターン113aの一部が露出されている。第二配線パターン113bは、第二電極パッド111b及び第二ビア導体114bと電気的に接続されている。第二配線パターン113bは、第二電極パッド111bから近接された枠体110bの長辺方向に向かって延出されており、第二配線パターン113bの一部が露出されている。
このように、配線パターン113の一部が、電極パッド111から枠体110bの長辺方向に向かって延出し、凹部Kで露出するようにして設けられていることにより、水晶素子120を実装した際に、導電性接着剤140が仮に電極パッド111上から溢れ出たとしても、導電性接着剤140と濡れ性の良い配線パターン113上に沿って流れ易くなっているため、パッケージ110の中心方向に流れ出ることがなく導電性接着剤140が励振用電極122に付着してしまうことを抑えることができる。
また、露出された配線パターン113の一部が、基板110aの第二中心点P2を通り基板110aの長辺と平行な直線CLに対して、線対称となるように設けられている。このように露出された第一配線パターン113aと露出された第二配線パターン113bとが、基板110aの第二中心点P2を通り基板110aの長辺と平行な直線CL1に対して、線対称となる位置に設けられていることにより、水晶素子120を実装する際に導電性接着剤140が仮に電極パッド111上から溢れ出たとしても、溢れ出た導電性接着剤140の量が均等になり易く、水晶素子120が傾いてしまうことを抑えることができる。
ビア導体114は、外部端子112と、配線パターン113又は封止用導体パターン117とを電気的に接続するためのものである。ビア導体114の両端は、外部端子112と、配線パターン113又は封止用導体パターン117と接続されている。ビア導体114は、第一ビア導体114a、第二ビア導体114b及び第三ビア導体114cによって構成されている。このようにすることで、外部端子112は、ビア導体114を介して、配線パターン113又は封止用導体パターン117と電気的に接続されている。
封止用導体パターン117は、接合部材131を介して蓋体130と接合する際に、接合部材131の濡れ性をよくする役割を果たしている。封止用導体パターン117は、第3ビア導体114cを介して、外部端子112の少なくとも一つである第三外部端子112cと電気的に接続されている。封止用導体パターン117は、例えばタングステン又はモリブデン等から成る導体パターンの表面にニッケルメッキ及び金メッキを順次、枠体110bの上面を環状に囲む形態で施すことによって、例えば10〜25μmの厚みに形成されている。
ここで、基板110a及び枠体110bの作製方法について説明する。基板110a及び枠体110bがアルミナセラミックスから成る場合、まず所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得た複数のセラミックグリーンシートを準備する。また、セラミックグリーンシートの表面或いはセラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内に、従来周知のスクリーン印刷等によって所定の導体ペーストを塗布する。さらに、これらのグリーンシートを積層してプレス成形したものを、高温で焼成する。最後に、導体パターンの所定部位、具体的には、電極パッド111、外部端子112及び封止用導体パターン117となる部位にニッケルメッキ又、金メッキ、銀パラジウム等を施すことにより作製される。また、導体ペーストは、例えばタングステン、モリブデン、銅、銀又は銀パラジウム等の金属粉末の焼結体等から構成されている。
(水晶素子)
水晶素子120は、図1及び図2に示されているように、導電性接着剤140を介して基板110a上の電極パッド111上に実装されている。水晶素子120は、安定した機械振動と水晶効果により、電子装置等の基準信号を発振する役割を果たしている。水晶素子120は、図3に示したように、水晶素板121と、水晶素板121の上下面に設けられた凸部124と、凸部124の上面及び下面に設けられた励振用電極122と、水晶素板121の一辺に沿って設けられた引き出し電極123とから構成されている。また、水晶素子120は、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術によって、水晶素板121及び凸部124が一体的に形成されている。水晶素板121は、平面視して、略矩形形状となっている。
ここで、図1および図4に示すように、水晶素板121の上面を平面視して、水晶素板121の第一中心点P1を通る直線CLとする。水晶素板121は、図3に示したように、水晶素板121の上面を平面視して、この直線CLに対し線対称となっている。水晶素板121の第一中心点P1は、平面視して、基板110aの第二中心点P2に対して、水晶素板121の一辺と対向する一辺側に位置するように設けられている。また、水晶素板121の第一中心点P1は、平面視して、基板110aの第二中心点P2と凸部124の第三中心点P3との間に位置するように設けられている。
水晶素板121は、安定した機械振動をする圧電材料が用いられ、例えば、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有している水晶部材が用いられている。凸部124は、略直方体形状に形成されている。このとき、水晶素板121の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに回転させた面と平行となっている。例えば、水晶素板121の主面は、X軸およびZ軸に平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに約37°回転させた面と、平行となっている。
凸部124は、水晶素板121の上下方向の厚みよりも厚くすることで、凸部124の一部分を逆圧電効果および圧電効果で厚みすべり振動させたときに、厚みすべり振動の振動状態が大きく異なる状態にするためのものである。凸部124は、水晶素板121の上面に設けられた第一凸部124aと水晶素板121の下面に設けられた第二凸部124bによって構成されている。
凸部124は、平面視して、水晶素板の第一中心点P1を通る直線CLに対して、線対称となっている。また、凸部124の第三中心点P3は、水晶素板121を平面視して、直線CL上に位置している。このとき、凸部124の第三中心点P3は、水晶素板121の第一中心点P1と重なっておらず、水晶素板121の第一中心点P1が凸部124の第三中心点P3と比較して、水晶素板121の一方の短辺側に位置している。つまり、水晶素板121の上面を平面視して、凸部124の第三中心点P3から水晶素板121の一方の短辺までの距離は、水晶素板121の第一中心点P1から水晶素板121の一方の短辺までの距離よりも長くなっている。このような構成にすることで、図3に示したように、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、導電性接着剤140で水晶素子120を接着する箇所を水晶素板121の一方の短辺の両端部にすることで、導電性接着剤140により接着される部分から凸部124の第三中心点P3までの距離を長くすることができ、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140が接着することによる凸部124の振動阻害をより低減させることが可能となる。よって、水晶デバイスは、導電性接着剤140で接着することにより等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
凸部124の両主面には、一対の励振用電極122(122a,122b)が設けられている。凸部124は、この一対の励振用電極122に電圧が印加されると、励振用電極122に挟まれている凸部124の一部分が逆圧電効果および圧電効果により所定の周波数で厚みすべり振動をする。一般的に、厚みすべり振動の周波数は、凸部124の上下方向の厚みによって厚みすべり振動のしやすさが異なるため、凸部124の上下方向の厚みによって決定される。従って、30MHz以下のような低い周波数帯で厚みすべり振動させる場合、厚みすべり振動をさせるためには、30MHzより高い周波数帯で厚みすべり振動させる場合と比較し、振動エネルギーを要することとなる。このため、高い周波数帯で厚みすべり振動させる場合と比較し、励振用電極122で挟まれていない振動部にまで、振動漏れが生じている。
凸部124の周囲にある水晶素板121は、励振用電極122に電圧を印加したときに凸部124へ振動エネルギーを集中させつつ、水晶素子120を基板110に実装したときに実装による厚みすべり振動への影響を低減させるためのものである。凸部124の周囲にある水晶素板121は、凸部124に沿って設けられており、その上下方向の厚みが凸部124の上下方向の厚みより薄くなっている。凸部124の周囲にある水晶素板121は、凸部124の外縁に沿って設けられている傾斜部と、傾斜部の外縁に沿って設けられている平板部と、から構成されている。
傾斜部は、凸部124の外縁に沿って設けられている。また、傾斜部は、その上下方向の厚みが凸124部から凸部124の周囲にある水晶素板121にかけて徐々に薄くなっている。傾斜部は、結晶軸の位置関係によってエッチングされやすさが異なることを利用し、凸部124の周囲にある凸部124の周囲にある水晶素板121との間に形成されている。このように、凸部124とこの凸部124の周囲にある水晶素板121との間を設けることで、導電性接着剤140を用いて水晶素子120を基板110aに実装する際に、凸部124の周囲にある水晶素板121を導電性接着剤140で接着することによる凸部124への影響を軽減させることができる。なお、ここで、それぞれの結晶軸との位置関係によってエッチングされやすさが異なるため、水晶素子120を平面視したとき、傾斜部の幅全て同じとなっておらず、場所によって異なっている。
このように凸部124と、凸部124の周囲にあり、凸部124より上下方向の厚みが薄い水晶素板121と、からなる水晶素板121を用いることで、凸部124の一部分を逆圧電効果および圧電効果で厚みすべり振動させたときに、凸部124とこの凸部124の周囲にある水晶素板121とで厚みすべり振動の振動状態が大きく異なる状態にすることができる。従って、このような構成にすることで、平板状の水晶素板を用いた場合と比較して、凸部122のみに振動エネルギーをより集中させることが可能となる。この結果、このような水晶素板121を用いた水晶素子120では、振動エネルギーの分散または漏れにより等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
ここで、水晶素板121の各寸法の実施例について説明する。水晶素板121は、平面視して、略矩形形状となっており、長辺の寸法が、0.5mm〜3.2mmとなっており、短辺の寸法が、0.2mm〜2.5mmとなっている。凸部124は、平面視して、略矩形形状となっており、水晶素板121の長辺に平行な寸法が、0.3mm〜2.7mmとなっており、水晶素板121の短辺に平行な寸法が、0.2mm〜2.4mmとなっている。また、凸部124は、その上下方向の厚みが、30μm〜167μmとなっている。この凸部124の周囲にある水晶素板121は、その上下方向の厚みが、27.30μm〜151.82μmとなっている。
ここで、このような水晶素板121の形成方法について説明する。このような水晶素板121の形成方法は、例えば、水晶ウエハ用意工程、第一エッチング工程、第二エッチング工程から構成される。水晶ウエハ用意工程では、まず、互いに直交しているX軸とY軸とZ軸とからなる結晶軸を有した水晶ウエハを用意する。このとき、水晶ウエハの上下方向の厚みは、凸部124の上下方向の厚みとなっている。また、水晶ウエハの主面が凸部124の主面と同じカットアングルとなるようになっている。従って、水晶ウエハの主面は、X軸とZ軸とに平行となっている面を、X軸を中心に、X軸の負の方向を見て反時計回りに所定の角度回転させた面と平行となっている。第一エッチング工程では、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術が用いられる。まず、水晶ウエハの両主面上に保護金属膜が設けられ、この保護金属膜上に感光性レジストが塗付され、所定のパターンに露光・現像される。このとき、水晶ウエハを平面視すると、凸部124となる部分にのみ感光性レジストおよび保護金属膜が残っている。その後、所定のエッチング溶液に浸漬させ、エッチングされた水晶ウエハの上下方向の厚みが凸部124の周囲にある水晶素板121の上下方向の厚みと同じになるまで、水晶ウエハをエッチングする。最後に、水晶ウエハに残っている感光性レジストおよび保護金属膜を剥離させる。第二エッチング工程では、第一エッチング工程後の水晶ウエハの両主面に保護金属膜を設け、保護金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光・現像する。このとき、水晶ウエハを平面視すると、水晶素板121となる部分には感光性レジストおよび保護金属膜が残っている。その後、所定のエッチング溶液に浸漬させ、水晶ウエハをエッチングする。上述したようにすることで、複数の水晶素板121がその一部が連結された状態で水晶ウエハ内に形成される。
水晶素板121に設けられている励振用電極122及び引き出し電極123は、水晶素板121の外部から電圧を印加するためのものである。励振用電極122及び引き出し電極123は、特に図示しないが、例えば、第一金属層と、第一金属層上に積層されている第二金属層と、からなる。第一金属層は、水晶と密着性のよい金属が用いられ、例えば、ニッケル、クロム、ニクロムまたはチタンのいずれか一つが用いられる。水晶と密着性のよい金属を用いることで、水晶に密着しにくい金属材料であっても、第二金属層に用いることができる。第二金属層は、金属材料の中で比較的、電気抵抗率が低く、安定した金属材料が用いられる。第二金属層は、例えば、金、金を含む合金、銀または銀を含む合金のいずれか一つが用いられる。このように、金属材料の中で比較的、電気抵抗率が低い金属材料を用いることで、励振用電極122及び引き出し電極123は、自身の電気抵抗率を低くすることができ、この結果、水晶素子120の等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。また、このように、安定した金属材料を用いることで、周囲の酸素と酸化し、その分だけ励振用電極122及び引き出し電極123の重さが変化し、水晶素子120の周波数が変化することを低減させることが可能となる。
励振用電極122(122a,122b)は、水晶素子120に電圧を印加するためのものである。励振用電極122は、一対となっており、第一凸部124aの上面に一方の励振用電極122aが設けられ、第二凸部124bの下面に他方の励振用電極122bが設けられている。励振用電極122は、水晶素子120を平面視して、略矩形形状となっている。
励振用電極122の第四中心点P4は、平面視して、凸部123の第三中心点P3よりも、一辺と対向する一辺側に位置するように設けられている。このようにすることにより、水晶素子120を実装する際に、導電性接着剤140で水晶素子120を接着する箇所を水晶素板121の一方の短辺の両端部にすることで、導電性接着剤140により接着される部分から凸部124の第三中心点P3までの距離をさらに長くすることができ、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140が接着することによる凸部124の振動阻害をより低減させることが可能となる。よって、水晶デバイスは、導電性接着剤140で接着することにより等価直列抵抗値が大きくなることをさらに低減させることが可能となる。
図1および図3に示したように、励振用電極122は、水晶素子120を平面視して、水晶素板121の中心点P1を通過する仮想直線CLに対し、線対称となっている。このような構成にすることで、励振用電極122に電圧を印加したとき、励振用電極122に蓄えられる電荷が仮想直線CLに対し線対称となり、励振用電極122に挟まれている水晶素板121の一部を厚みすべり振動させるための振動エネルギーを、仮想直線CLに対して線対称に分布させることができる。従って、本実施形態では、振動エネルギーを直線CLに対し線対称に分布させることができるため、仮想直線CLに対し左右の振動バランスを向上させることができる。このため、仮想直線CLに対し左右の振動バランスの低下により等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、励振用電極122aは、水晶素子120を平面視して、その励振用電極122の第四中心点P4が仮想直線CL上に位置しつつ、凸部124の第三中心点P3と重ならない位置に設けられている。また、励振用電極122の第四中心点C4は、水晶素板121の第一中心点P1と異なる位置にあり、水晶素板121の一方の短辺より離れた位置に位置している。このような構成にすることで、図3に示したように、水晶素板121の一方の短辺の両端部を導電性接着剤140で接着し、水晶素子120を水晶デバイスとして用いる場合、励振用電極122で挟まれている凸部124の一部分を、水晶素板121の一方の短辺より離れた位置にすることができる。励振用電極122に電圧が印加されたときに励振用電極122に挟まれている凸部124の一部分が最も振動する構成となっているので、この励振用電極122に挟まれている凸部124の一部分をより導電性接着剤140で接着される部分より、遠くすることができる。この結果、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140の接着による振動阻害を低減させることができ、導電性接着剤140で接着することによる等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
励振用電極122aは、図1および図3に示したように、水晶素子120を平面視したとき、水晶素板121の長辺に平行な励振用電極122の長さが、水晶素板121の長辺に平行な凸部124の長さより短くなっている。従って、水晶素子120を平面視したとき、近接している水晶素板121の短辺に平行な励振用電極122aの辺と水晶素板121の短辺に平行な凸部124の辺との間には、凸部124の一部分が露出した状態となっている。
また、励振用電極122は、図3に示すように、水晶素子120を平面視したとき、凸部124の内縁側に位置するように設けられている。励振用電極122の凸部124の上下方向で挟まれている凸部124の一部分が圧電効果および逆圧電効果により振動している。このような構成にすることで、励振用電極122に挟まれている凸部124の一部分が振動するときに、第一励振用電極122aの外縁から振動部122の外縁に向かって振動漏れが生じ、この漏れでた振動が、凸部124の外縁に設けられている傾斜部の傾斜面で反射した場合であっても、励振用電極122aが平面視して振動部122の内縁側に位置するように設けられているので、凸部124の縁部に設けられている傾斜部の影響を低減させることが可能となる。この結果、凸部124の縁部に設けられている傾斜部の影響、具体的には、傾斜部による振動阻害による等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、水晶素子120を平面視して、凸部124を挟むように位置している二辺間の長さ、具体的には、水晶素板121の短辺に平行な凸部124の辺と水晶素板121の短辺に平行な励振用電極122aの辺との長さは、5μm以上55μm以下であることが望ましい。励振用電極122に電圧を印加したとき、励振用電極122で凸部124の上下方向で挟まれている部分から挟まれていない部分へ振動漏れが生じ、その漏れた振動が凸部124の外縁に沿って設けられている傾斜部で反射し、励振用電極122で挟まれている部分の振動を阻害してしまい、等価直列抵抗値が大きくなる虞がある。
ここで、励振用電極122及び引き出し電極123を形成する方法について説明する。ここでは、励振用電極122及び引き出し電極123を、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、一体的に形成する場合を例に説明する。まず、水晶素板121となる部分が連結されている状態の水晶ウエハを用意し、この水晶ウエハの両主面上に励振用電極122及び引き出し電極123となる金属膜を形成する。次に、この金属膜上に感光性レジストを塗布し、所定のパターンに露光・現像する。このとき、現像後、感光性レジストは、励振用電極122及び引き出し電極123となる部分、具体的には、励振用電極122及び引き出し電極123となる部分に残っている状態となっている。最後に、残っている感光性レジストを除去することで、水晶ウエハの水晶素板121に励振用電極122及び引き出し電極123が形成される。なお、励振用電極122及び引き出し電極123をそれぞれ別々に形成してもよいし、フォトリグラフィー技術およびエッチング技術でなく、スパッタリング技術または蒸着技術を用いて形成してもよいし、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術とスパッタリング技術または蒸着技術を組み合わせて形成してもよい。
蓋体130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような蓋体130は、凹部Kを、窒素雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止される。具体的には、蓋体130は、窒素雰囲気中や真空雰囲気中で、パッケージ110の枠体110b上に載置され、枠体110bの上面に設けられた封止用導体パターン117の表面と蓋体130の接合部材131とが溶融されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、枠体110bに接合される。
導電性接着剤140は、シリコーン樹脂等のバインダーの中に導電フィラーとして導電性粉末が含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、銀、チタン、ニッケル又はニッケル鉄のうちのいずれか、或いはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。また、バインダーとしては、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂又はビスマレイミド樹脂が用いられる。
蓋体130は、矩形状であり、真空状態にある凹部K、あるいは窒素ガスなどが充填された凹部Kを気密的に封止するためのものである。具体的には、蓋体130は、所定雰囲気で、枠体110b上に設けられた封止用導体パターン117の上面に載置される。蓋体130の下面に設けられた接合部材131に熱が印加されることで、封止用導体パターン117と溶融接合される。また、蓋体130は、例えば、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくともいずれかを含む合金からなる。
接合部材131は、枠体110bの封止用導体パターン117の上面から蓋体130の下面にかけて設けられている。接合部材131は、例えば、ガラスの場合には、300℃〜400℃で溶融するガラスであり、例えばバナジウムを含有した低融点ガラス又は酸化鉛系ガラスから構成されている。ガラスは、バインダーと溶剤とが加えられたペースト状であり、溶融された後固化されることで他の部材と接合する。接合部材131は、例えば、ガラスフリットペーストがスクリーン印刷法で塗布され乾燥することで設けられる。また、接合部材131は、枠体110bの上面に印刷する際に、枠体110bの四隅に接合部材131が重なるようにして、枠体110bの全周に印刷される。よって、四隅の接合部材131の厚みは、接合部材131が設けられている他の箇所の厚みよりも厚くなるように設けられている。また、この酸化鉛系ガラスの組成は、酸化鉛、フッ化鉛、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化亜鉛、酸化第二鉄、酸化銅及び酸化カルシウムとから構成されている。
接合部材131は、例えば、絶縁性樹脂の場合には、エポキシ樹脂又はポリイミド樹脂から構成されている。枠体110bと蓋体130との間に設けられた接合部材131の厚みは、30〜100μmとなっている。
接合部材131は、例えば、金錫の場合には、接合部材131の層の厚みは、10〜40μmであり、例えば、成分比率が、金が70〜80%、錫が20〜30%のものを使用しても良い。また、接合部材131は、例えば、銀ロウの場合には、接合部材131の層の厚みは、10〜40μmであり、例えば、成分比率が、銀が70〜80%、銅が20〜30%のものを使用しても良い。
本実施形態における水晶デバイスは、矩形状の基板110aと、基板110aの一辺に沿って設けられた電極パッド111と、矩形状の水晶素板121と、水晶素板121の上下面に設けられた矩形状の凸部124と、凸部124に設けられた励振用電極122と、励振用電極122と間を空けて水晶素板121の一辺に沿って設けられた矩形状である一対の引き出し電極123と、を有し、導電性接着剤140を介して電極パッド111上に実装された水晶素子120と、水晶素子120を気密封止するために設けられた蓋体130と、を備え、水晶素板121の第一中心点P1は、平面視して、基板110aの第二中心点P2に対して、一辺と対向する一辺側に位置するように設けられている。このようにすることにより、水晶素子120が傾きにくくなり、水晶素子120の外周縁が基板110a又は枠体110bに接触することを抑えることができる。水晶デバイスは、水晶素子120の発振周波数が変動してしまうことを低減することが可能となる。
また、本実施形態における水晶デバイスは、水晶素板121の第一中心点P1が、平面視して、基板110aの第二中心点P2と凸部124の第三中心点P3との間に位置するように設けられている。このようにすることにより、導電性接着剤140で水晶素子120を接着する箇所を水晶素板121の一方の短辺の両端部にすることで、導電性接着剤140により接着される部分から凸部124の第三中心点P3までの距離を長くすることができ、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140が接着することによる凸部124の振動阻害をより低減させることが可能となる。よって、水晶デバイスは、導電性接着剤140で接着することにより等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、本実施形態における水晶デバイスは、励振用電極122の第四中心点P4が、平面視して、凸部124の第三中心点P3よりも、一辺と対向する一辺側に位置するように設けられている。このようにすることにより、導電性接着剤140で水晶素子120を接着する箇所を水晶素板121の一方の短辺の両端部にすることで、導電性接着剤140により接着される部分から凸部124の第三中心点P3までの距離をさらに長くすることができ、導電性接着剤140による影響、具体的には、導電性接着剤140が接着することによる凸部124の振動阻害をさらに低減させることが可能となる。よって、水晶デバイスは、導電性接着剤140で接着することにより等価直列抵抗値が大きくなることをさらに低減させることが可能となる。
また、本実施形態における水晶デバイスは、第一中心点P1、第二中心点P2、第三中心点P3及び第四中心点P4が、仮想直線CLにおいて、同一直線状に位置するように設けられている。このようにすることで、水晶素子120を導電性接着剤140で固着し、励振用電極122に電圧を印加したとき、励振用電極122に蓄えられる電荷が仮想直線CLに対し線対称となり、励振用電極122に挟まれている水晶素板121の一部を厚みすべり振動させるための振動エネルギーを、仮想直線CLに対して線対称に分布させることができる。従って、本実施形態では、振動エネルギーを直線CLに対し線対称に分布させることができるため、仮想直線CLに対し左右の振動バランスを向上させることができる。このため、仮想直線CLに対し左右の振動バランスの低下により等価直列抵抗値が大きくなることを低減させることが可能となる。
また、本実施形態における水晶デバイスは、水晶素子を平面視して、励振用電極122が矩形状であり、凸部124を挟むように位置している水晶素板121の一辺に平行な凸部122の一辺と水晶素板121の一辺に平行な励振用電極122の一辺との距離が、5μm以上55μm以下となっている。このようにすることで、励振用電極122に電圧を印加したとき、励振用電極122で凸部124の上下方向で挟まれている部分から挟まれていない部分へ振動漏れが生じにくく、励振用電極122で挟まれている部分の振動を阻害することを抑えるため、等価直列抵抗値が大きくすることを低減することができる。
尚、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。上記実施形態では、枠体110bが基板110aと同様にセラミック材で一体的に形成した場合を説明したが、枠体110bが金属製であっても構わない。この場合、枠体は、銀−銅等のロウ材を介して基板の導体膜に接合されている。また、本実施形態では、枠体110bの上面に封止用導体パターン117が形成されている場合を説明したが、接合部材131が、ガラス又は絶縁性樹脂の場合には、封止用導体パターン117を設けることなく、枠体110bに接合されていても構わない。
上記実施形態では、基板110aの上面に枠体110bが設けられている場合について説明したが、基板に水晶素子を実装した後に、封止基部の下面に封止枠部が設けられた蓋体を用いて、水晶素子を気密封止する構造であっても構わない。蓋体は、矩形状の封止基部と、封止基部の下面の外周縁に沿って設けられている封止枠部とで構成されており、封止基部の下面と封止枠部の内側側面とで収容空間が形成されている。封止枠部は、封止基部の下面に収容空間を形成するためのものである。封止枠部は、封止基部の下面の外縁に沿って設けられている。
上記実施形態では、水晶素子は、AT用水晶素子を用いた場合を説明したが、水晶基部と、水晶基部の側面より同一の方向に延びる二本の平板形状の水晶振動部とを有する音叉型屈曲水晶素子を用いても構わない。水晶素子は、水晶素板と、その水晶素板の表面に設けられた励振電極と、引き出し用電極と、周波数調整用金属膜とにより構成されている。水晶素板は、水晶基部と水晶振動部とからなり、水晶振動部が第一水晶振動部及び第二水晶振動部とから成る。水晶基部は、結晶の軸方向として電気軸がX軸、機械軸がY軸、及び光軸がZ軸となる直交座標系としたとき、X軸回りに−5°〜+5°の範囲内で回転させたZ′軸の方向が厚み方向となる平面視略四角形の平板である。第一水晶振動部及び第二水晶振動部は、水晶基部の一辺からY′軸の方向に平行に延設されている。このような水晶素板は、水晶基部と各水晶振動部とが一体となって音叉形状を成しており、フォトリソグラフィー技術と化学エッチング技術により製造される。