JP2017081917A - 新規nk3受容体アゴニスト - Google Patents

新規nk3受容体アゴニスト Download PDF

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Abstract

【課題】タキキニン類の分泌の過剰もしくは欠乏に伴う疾患の治療薬、例えば、疼痛、性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害の改善に向けた薬剤等として有用な、高活性・高選択的かつ生体内で持続的に作用することが期待される新規ニューロキニン3受容体(NK3受容体)選択的リガンドの提供。
【解決手段】式(I)でで示される化合物又はその医薬上許容される塩。式(I)X1−A2−A3−X4−X5−Met−NH[X1は1又は2の分子量500〜5,000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体で直接又はリンカーを介して修飾された、R1−A1或いはジカルボン酸残基を表し;R1はH又は特定の化学基;A1及びA2は特定のD又はLアミノ酸残基;A3はNメチル化された特定のLアミノ酸、X4及びX5は、Gly−Leu或いは、そのジペプチド等価体]
【選択図】なし

Description

本発明は、ニューロキニン3受容体(NK3受容体)アゴニスト作用を有するペプチド及びその用途に関する。より詳細には本発明は、NK3受容体への選択的且つ強力な結合親和性及びアゴニスト作用を有し、且つ生体内で持続的に作用することが可能なペプチド及びその用途に関する。
視床下部前方のキスペプチンニューロン集団は、エストロジェンの正のフィードバック作用により性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)のサージ状分泌を制御する排卵中枢であり、キスペプチン類は排卵誘発を調節する新しい薬剤として期待されている。
一方、近年、卵胞発育に関与するとされるGnRHのパルス状分泌に関する種々の報告がなされており、視床下部弓状核のキスペプチンニューロンがニューロキニンB(NKB)およびダイノルフィンを同時に発現し(非特許文献1)、GnRHのパルス状分泌を促す中枢としての役割を担っていることが報告された(非特許文献2)。また、このニューロンにおける発火活動を、多ニューロン発火活動(MUA)の一過性の上昇(MUAボレー)として記録することに成功し、MUAボレーは黄体形成ホルモン(LH)パルスと完全に同期していることが報告されている(非特許文献3及び4)。
こうした背景のもと、本発明者らは、NKBの受容体として知られるNK3受容体リガンド(アゴニスト)が、GnRHパルスおよびLHパルスを調節し、卵胞発育を制御する薬剤になりうると想定し、新規NK3受容体リガンドの創製に着手した。
これまでに報告されているNK3受容体選択的アゴニストとして、[MePhe]−NKBおよびsenktideが挙げられる(非特許文献5及び6)。すでに研究用試薬として市販されているこれらのペプチドは、タキキニン類およびニューロキニン受容体が関連する各種基礎研究等に利用されている。本発明者らは、これまでに[MePhe]−NKBの活性および受容体選択性の構造要求特性に関する知見を得る目的で構造活性相関研究を展開し、この過程でNK3受容体に対し高活性かつ高選択性で作用する新規NKB誘導体を見出している(特許文献1及び2、非特許文献7〜9)。
これまでに見出したペプチドは優れたNK3受容体選択的リガンドではあるが、その効果を維持するためには反復投与の必要があった。畜産をはじめとする生殖生理の制御を必要とする臨床応用を考えた場合、薬剤投与後の持続的効果の提供は重要な課題となる。また、持続的効果を期待して薬剤の連続投与や適切な基剤に封入した持続性製剤を利用することが想定されるが、クリアランスが速い薬剤の場合には相当量の原薬を必要とすることから、同等の活性を維持しつつクリアランスの遅い薬剤の開発が必要であった。
国際公開2014/061772号 国際公開2015/083816号
Goodman RL, Lehman MN, Smith JT, Coolen LM, de Oliveira CV, Jafarzadehshirazi MR, Pereira A, Iqbal J, Caraty A, Ciofi P, Clarke IJ. Endocrinology, 148, 5752-5760 (2007) Maeda K, Ohkura S, Uenoyama Y, Wakabayashi Y, Oka Y, Tsukamura H, Okamura H. Brain Res. 1364, 103-115 (2010) Ohkura S, Takase K, Matsuyama S, Mogi K, Ichimaru T, Wakabayashi Y, Uenoyama Y, Mori Y, Steiner RA, Tsukamura H, Maeda KI, Okamura H. J. Neuroendocrinol. 21, 813-821(2009) Wakabayashi Y, Nakada T, Murata K, Ohkura S, Mogi K, Navarro VM, Clifton DK, Mori Y, Tsukamura H, Maeda KI, Steiner RA, Okamura H. J. Neurosci. 30, 3124-3132 (2010) Drapeau G, D'Orleans-Juste P, Dion S, Rhaleb NE, Rouissi NE, Regoli D. Neuropeptides. 10(1) 43-54 (1987) Laufer R, Gilon C, Chorev M, Selinger Z. J Biol Chem. 261:10257-10263 (1986) Misu R, Noguchi T, Ohno H, Oishi S, Fujii N. Bioorg. Med. Chem. 21(8) 2413-2417 (2013) Misu R, Oishi S, Yamada A, Yamamura T, Matsuda F, Yamamoto K, Noguchi T, Ohno H, Okamura H, Ohkura S, Fujii N. J Med Chem. 57(20) 8646-8651 (2014) Misu R, Yamamoto K, Yamada A, Noguchi T, Ohno H, Yamamura T, Okamura H, Matsuda F, Ohkura S, Oishi S, Fujii N. MedChemComm, 6(3) 469-476 (2015)
本発明は、高活性・高選択的かつ生体内で持続的に作用することが期待される新規NK3受容体選択的リガンドを提供することを目的とする。
これまでにNK3受容体選択的アゴニストの1つとしてsenktideが報告されている。本発明者らは、これまでに報告されているタキキニン類の構造活性相関情報に基づき、senktideのアスパラギン酸(Asp)をグルタミン酸(Glu)に置換した誘導体が、強力かつ高選択的なNK3受容体アゴニスト活性を示すことを見出している。そこで、このようなペプチドをリード化合物として、より生体内で持続的に作用し得る誘導体の開発を試みた。
まず、本発明者らは、血中のエステラーゼにより切断され得るsenktide誘導体として、エステル結合を介してGlu側鎖に種々の鎖長からなるポリエチレングリコール(PEG)鎖を共有結合した誘導体を作成した。これらのペプチドは予想に反して血漿中での分解を受けず、senktide誘導体を再生しなかった。しかしながら、これらのペプチドは、PEG鎖がペプチド配列に共有結合したままの構造においても、NK3受容体アゴニスト活性を維持していることが判明した。
かかる知見に基づいて、本発明者らは、PEG修飾した種々のsenkitide誘導体を作成し、NK3受容体アゴニスト活性を評価するとともに、in vivo評価を行った。その結果、senktideと同等の生物活性を維持しつつ、長時間にわたるin vivo活性の持続が認められる新規誘導体を見出して本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]式(I)
[式中、X1は、1又は2の分子量500〜5,000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体で直接又はリンカーを介して修飾された、R1−A1もしくはジカルボン酸残基を表し;
R1は、水素原子、アセチル基、オキサリル基、スクシニル基、アミノカルボニル基、ヒドロキシアミノカルボニル基、ヒドラジノカルボニル基、メトキシジカルボニル基、アミノジカルボニル基、アミノスルホニル基、N,N−ジカルボキシメチルアスパラギン酸残基、もしくは、N−カルボキシメチルアスパラギン酸残基を表し;
A1は、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、L−グルタミン、D−グルタミン、もしくは、L−α−アミノアジピン酸残基を表し;
A2は、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、もしくは、D−グルタミン酸残基を表し;
A3は、L−N−メチルフェニルアラニン、L−N−メチルバリン、L−N−メチルイソロイシン、L−N−メチルチロシン、もしくは、L−N−メチルトリプトファン残基を表し;
X4−X5は、Gly−Leu、もしくは、そのジペプチド等価体を表し;
Glyは、グリシン残基を表し;
Leuは、ロイシン残基を表し;
Met−NHは、メチオニンアミドを表す]で示される化合物又はその生理学的に許容される塩。
[2]PEG又はその誘導体による修飾が、エステル結合又はアミド結合によるものである、上記[1]に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
[3]リンカーが下記式で表される基である請求項1又は2に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
[式中、mは1又は2であり;
*aはX1との結合部位を示し;
*bはPEG又はその誘導体との結合部位を示す。
[4]R1がスクシニル基、A1がL−グルタミン酸又はL−グルタミン残基、A2がL−フェニルアラニン残基、A3がL−N−メチルフェニルアラニン残基、X4−X5がGly−Leuである、上記[1]〜[3]に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
[5]PEG又はその誘導体の分子量が750〜2,000である、上記[1]〜[4]に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
[6]PEG又はその誘導体が、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、及びメトキシポリエチレングリコールアミンから選択される、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
[7]上記[1]〜[6]に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩を含有してなる医薬。
[8]ニューロキニン受容体アゴニストである、上記[7]記載の医薬。
[9]ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、上記[8]記載の医薬。
[10]繁殖中枢制御剤である、上記[7]記載の医薬。
[11]卵胞発育促進及び/又は改善用である、上記[7]記載の医薬。
[12]タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、上記[7]記載の医薬。
[13]該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、上記[12]記載の医薬。
[14]上記[1]記載の化合物又はその生理学的に許容される塩を含有してなる試薬。
[15]下記式で表される化合物又はその生理学的に許容される塩。
本発明化合物は、senktideと同等以上の生物活性を維持しつつ、長時間にわたるin vivo活性の持続が認められる。従って、本発明により得られた高活性・高選択的NK3受容体アゴニストは、タキキニン類の分泌の過剰もしくは欠乏に伴う疾患の治療薬、例えば、疼痛、性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害の改善に向けた薬剤、これらの疾患の治療薬開発に向けた基礎科学実験用試薬等として有用である。
GnRHをパルス状に分泌させる弓状核キスペプチンニューロンの神経活動を反映するMUAボレーに対するsenktide(対照ペプチド)及び本発明のペプチド(ペプチド9;実施例2)の影響を調べた結果を示す図である。縦軸は20秒当たりのスパイクの数を示し、横軸は経過時間(秒)を示す。矢印の時点で試験化合物を投与した。R値は作用持続時間を、V値はMUAボレーの数を示している。 卵胞期のヤギの血中黄体形成ホルモン(LH)濃度に対する本発明のペプチド(ペプチド12;実施例5)の影響を調べた結果を示す図である。縦軸は血中のLH濃度(ng/ml)を示し、横軸は経過時間(時間)を示す。矢印の時点で試験化合物を投与した。 黄体期のヤギの血中黄体形成ホルモン(LH)濃度に対する本発明のペプチド(ペプチド12;実施例5)の影響を調べた結果を示す図である。縦軸は血中のLH濃度(ng/ml)を示し、横軸は経過時間(時間)を示す。矢印の時点で試験化合物を投与した。
本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、「L-」と示される場合はL体を示し(例えば、「L-Ala」はL体のAla)、「D-」と示される場合はD体を示し(例えば、「D-Ala」はD体のAla)、「DL-」と示される場合はD体及びL体のラセミ体を示すものとする(例えば、「DL-Ala」はD体のAla及びL体のAlaのラセミ体混合物)。本発明においてアミノ酸残基はD体であってもL体であってもよいが、好ましくはL体である。
Gly又はG :グリシン
Ala又はA :アラニン
Val又はV :バリン
Leu又はL :ロイシン
Ile又はI :イソロイシン
Ser又はS :セリン
Thr又はT :スレオニン
Cys又はC :システイン
Met又はM :メチオニン
Glu又はE :グルタミン酸
Asp又はD :アスパラギン酸
Lys又はK :リジン
Arg又はR :アルギニン
His又はH :ヒスチジン
Phe又はF :フェニルアラニン
Tyr又はY :チロシン
Trp又はW :トリプトファン
Pro又はP :プロリン
Asn又はN :アスパラギン
Gln又はQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
MePhe :N−メチルフェニルアラニン
MeVal :N−メチルバリン
MeIle :N−メチルイソロイシン
MeTyr :N−メチルチロシン
MeTrp :N−メチルトリプトファン
MeLeu :N−メチルロイシン
MeAsp :N−メチルアスパラギン酸
Aad :2−アミノアジピン酸
さらに、本明細書中で使用する略語は特に断りの無い限り下記に示すものを意味する。
Me :メチル基(-CH3
Succinyl :-CO-CH2CH2-COOH
Oxalyl :-CO-COOH
Ac :アセチル基(-COCH3
Ph :フェニル基(-C6H5
本発明は、ニューロキニン受容体、具体的にはNK3受容体に特異的なアゴニスト作用を有する化合物を提供する。具体的には、式(I)
[式中、X1は、1又は2の分子量500〜5,000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体で直接又はリンカーを介して修飾された、R1−A1もしくはジカルボン酸残基を表し;好ましくは、
R1は、水素原子、アセチル基、オキサリル基、スクシニル基、アミノカルボニル基、ヒドロキシアミノカルボニル基、ヒドラジノカルボニル基、メトキシジカルボニル基、アミノジカルボニル基、アミノスルホニル基、N,N−ジカルボキシメチルアスパラギン酸残基、もしくは、N−カルボキシメチルアスパラギン酸残基を表し;
A1は、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、L−グルタミン、D−グルタミン、もしくは、L−α−アミノアジピン酸残基を表し;
A2は、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、もしくは、D−グルタミン酸残基を表し;
A3は、L−N−メチルフェニルアラニン、L−N−メチルバリン、L−N−メチルイソロイシン、L−N−メチルチロシン、もしくは、L−N−メチルトリプトファン残基を表し;
X4−X5は、Gly−Leu、もしくは、そのジペプチド等価体を表し;
Glyは、グリシン残基を表し;
Leuは、ロイシン残基を表し;
Met−NHは、メチオニンアミドを表す]で示される化合物(本明細書中、化合物(I)とも称する)又はその生理学的に許容される塩を提供する。
式(I)中、X1は、1又は2の分子量500〜5,000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体で直接又はリンカーを介して修飾された、R1−A1もしくは、ジカルボン酸残基を表す。ここで、R1は任意の基であり得るが、好ましくは、R1は、水素原子、アセチル基、オキサリル基、スクシニル基、アミノカルボニル基、ヒドロキシアミノカルボニル基、ヒドラジノカルボニル基、メトキシジカルボニル基、アミノジカルボニル基、アミノスルホニル基、N,N−ジカルボキシメチルアスパラギン酸残基、もしくは、N−カルボキシメチルアスパラギン酸残基を表し、A1は、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、L−グルタミン、D−グルタミン、もしくは、L−α−アミノアジピン酸残基を表す。X1としてのジカルボン酸残基としては、2つのカルボキシル基もしくはこれに相当する修飾基を有する構造であれば特に限定されない。好ましくは、R1はスクシニル基であり、A1はL−グルタミン酸又はL−グルタミン残基である。
本発明において、式(I)中、X1は、1又は2の分子量500〜5,000、好ましくは750〜5,000、より好ましくは750〜2,000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体で修飾されていることを特徴とする(以下、PEG修飾あるいはPEG化とも称する)。X1におけるPEG修飾は修飾可能な任意の位置で行われるが、好ましくはR1又はA1に対して、より好ましくはA1に対して行われる。PEGによる修飾はX1、即ちR1又はA1(好ましくはA1)に対して直接あるいはリンカーを介して行われる。ここで、リンカーとしては、1又は2のPEGと結合し得る部位及びR1又はA1(好ましくはA1)と結合し得る部位を有していれば特に限定されないが、具体的には下記式で表される基が挙げられる。
[式中、mは1又は2であり;
*aはX1との結合部位を示し;
*bはPEG又はその誘導体との結合部位を示す。
例えばアミノ酸残基、好ましくはアスパラギン酸残基やグルタミン酸残基、より好ましくはアスパラギン酸残基が挙げられる。PEGの分子量が小さすぎる/大きすぎる場合には、生殖中枢における神経活動の持続的な亢進作用が得られにくい。
ここでPEG又はその誘導体とは、通常、下記式にて表される。ペプチド鎖(又はリンカー)への結合には水酸基(−OH)あるいはアミノ基(−NH)が用いられる。
式中、Rは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル)を示す。
PEGの誘導体としては、上記以外に、PEGを基本骨格に有し、その両末端にチオール基、マレイミド基、スクシンイミジルエステル基等の官能基を有する化合物も例示される。
一般に市販で入手可能なPEGはエチレンオキシド等のモノマーを重合し得られたポリマー混合物をおおまかな分子量ごとに分離した混合物であり、高分子PEGには分子量分布があり、±10〜30%程度の分子量のばらつきがある。その平均分子量を用いて表記するのが一般的であり、例えばPEG1000は平均分子量が1,000のものを、PEG2kは平均分子量が2,000のものを意味する。
PEGの1単位(−CHCHO−)の構造(以下、PEGの単位構造とも称する)の分子量は44であり、従って、例えばPEG500の場合は、PEGの単位構造の数(n)は500/44≒11.4となる。実験的にもn=11やn=12を頂点する、正規分布上のnの値が観測される。同様にPEG5000の場合のPEGの単位構造の数は5000/44≒113.6となりn=113やn=114を頂点する、正規分布上のnの値が観測される。
PEG化がR1に対して行われる場合には、X1の一例として以下の構造が挙げられる(Rがメチル基、R1がオキサリル基、A1がグルタミン酸又はグルタミン残基の場合)。
式中、nは、PEGの単位構造を示し、分子量500〜5,000となるように設定される任意の整数であり、通常11〜113である。好ましくは分子量750〜5,000となるように設定される任意の整数であり、通常17〜113である。より好ましくは分子量750〜2,000となるように設定される任意の整数であり、通常17〜46である。Xは−O−又は−NH−である。
PEG化がA1に対して行われる場合には、X1の一例として以下の構造が挙げられる(Rがメチル基、R1がスクシニル基、A1がグルタミン酸又はグルタミン残基の場合)。
式中、nは、PEGの単位構造を示し、分子量500〜5,000となるように設定される任意の整数であり、通常11〜113である。好ましくは分子量750〜5,000となるように設定される任意の整数であり、通常17〜113である。より好ましくは分子量750〜2,000となるように設定される任意の整数であり、通常17〜46である。Xは−O−又は−NH−である。
PEG化がリンカーを介してA1に対して行われる場合には、X1の一例として以下の構造が挙げられる(Rがメチル基、R1がスクシニル基、A1がグルタミン酸又はグルタミン残基、リンカーがアスパラギン酸残基の場合)。
式中、nは、PEGの単位構造を示す。n個のPEGは同一でも異なっていてもよいが同一であることが好ましく、又、簡便である。nは、PEG1分子が、分子量500〜5,000となるように設定される任意の整数であり、通常11〜113である。好ましくは分子量750〜5,000となるように設定される任意の整数であり、通常17〜113である。より好ましくは分子量750〜2,000となるように設定される任意の整数であり、通常17〜46である。2個のXは同一で−O−又は−NH−である。
上記式(I)中、A2は、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、もしくは、D−グルタミン酸残基を表す。好ましくはL−フェニルアラニン残基である。
上記式(I)中、A3は、L−N−メチルフェニルアラニン、L−N−メチルバリン、L−N−メチルイソロイシン、L−N−メチルチロシン、もしくは、L−N−メチルトリプトファン残基を表す。好ましくはL−N−メチルフェニルアラニン残基である。
上記式(I)中、X4−X5は、Gly−Leu、もしくは、そのジペプチド等価体を表す。Gly−Leuはグリシンとロイシンがペプチド結合によって結合したジペプチドの残基を表し、以下の構造で示される。
Gly−Leuのジペプチド等価体とはGly−Leuのペプチド結合(-CONH-)が他の結合に置き換えられたものであって、当該他の結合としては、-CH=CH-, -CH2-CH2-, -CH2-CH=, -C(=N-OH)-NH-, -C(=NH)-NH-等が挙げられる。このようなジペプチド等価体を本明細書中GlyψLeuと表記する場合がある。
X4−X5として、好ましくはGly−Leuである。
化合物(I)として、好ましくはX1であるR1−A1においてR1がスクシニル基、A1がグルタミン酸又はグルタミン残基であり、A2がL−フェニルアラニン残基、A3がN−メチルフェニルアラニン残基、X4−X5がGly−Leuであり、A1がPEG修飾されている化合物であり、より好ましくは下記表に示す式(II)で表される化合物(以下、化合物(II)とも称する)である。
MPEG500、MPEG750、MPEG1k、MPEG2k、及びMPEG5kは、それぞれ平均分子量500、750、1,000、2,000及び5,000のポリエチレングリコールモノメチルエーテルから誘導される残基を意味する。(AA)は式(I)中のA1に対応するアミノ酸の種類を意味し、当該アミノ酸が直接もしくはアミノ酸等のリンカーを介してPEG修飾されている。
化合物(I)及び化合物(II)を含め、以下、本発明化合物あるいは本発明のペプチドとも称する。
本発明化合物は塩の形態であってもよい。このような塩としては、例えば金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)等の無機塩、アンモニウム塩等が、また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸を伴う無機酸との塩、又は酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が好ましい。
本発明化合物は、ペプチドであり、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。PEG化はアミノ酸原料に対して行っても、合成後のペプチドに対して行ってもよいが、好ましくは、アミノ酸原料に対して行うことが簡便である。PEG化は、当分野で通常実施されている方法を用いて行うことができ、具体的には通常縮合反応により行われる。以下の反応が例示されるが、所望するペプチド乃至使用する原料に応じて適宜代替可能な試薬に変更することができ、容量や反応温度、反応時間等の反応条件も適宜設定することができる。
R1をPEG化する場合、例えばR1がオキサリル基の場合にはPEG又はその誘導体と塩化オキサリルとを有機溶媒(例、乾燥ジエチルエーテル等)中で反応させる。
A1をPEG化する場合、例えばA1がグルタミン酸残基の場合には両末端を保護基(例、Fmoc及びBn)で保護したグルタミン酸とPEG又はその誘導体とを、有機溶媒中(例、ジクロロメタン等)、塩基(例、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等)及び縮合剤(例、HATU、DCC、EDCl・HCl/HOBt)の存在下反応させ、次いで所望によりパラジウム炭素等の触媒を用いた水素化により脱保護する。
より詳細には実施例に記載の方法及びそれに準じた方法によって実施することができる。
ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明化合物を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを所望配列通りに縮合させることを繰り返し、目的のペプチドを製造することができる。所望配列を有する生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離法としてはたとえば、以下の(1)〜(5)に記載された方法が挙げられる。
(1)M. Bodanszky 及び M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis),Interscience Publishers, New York (1966年)
(2)Schroeder及びLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(3)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(4)矢島治明 及び榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(5)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶等を組み合わせて本発明のペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
なお、原料化合物は塩であってもよく、このような塩としては、本発明のペプチドの塩として上述したものと同様のものが挙げられる。
保護されたアミノ酸又はペプチドの縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、トリスフォスフォニウム塩類、テトラメチルウロニウム塩類、カルボジイミド類等がよい。トリスフォスフォニウム塩類としてはベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyBroP)、7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト(PyAOP)、テトラメチルウロニウム塩類としては2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-ヘキサフルオロフォスフェイト(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-ヘキサフルオロフォスフェイト(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾル-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TBTU)、2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TNTU)、O-(N-スクシミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TSTU)、カルボジイミド類としてはDCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)等が挙げられる。これらによる縮合にはラセミ化抑制剤(例えば、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB), 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt), 1−ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt), 3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン(HOOBt)等)の添加が好ましい。縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえば無水又は含水のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノール、フェノール等のアルコール類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ピリジン等の三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類あるいはこれらの適宜の混合物等が用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5から6倍過剰で用いられる。固相合成の場合にはニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸又はアセチルイミダゾール等を用いて未反応アミノ酸をアシル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニル(Z)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トリチル(Trt)等が挙げられる。
原料アミノ酸のカルボキシル基の保護基としては、例えば、tert-ブチル(But)基、ベンジル(Bzl)基、C1−6アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C7−14アラルキル基の他、アリル、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル及びベンジルオキシカルボニルヒドラジド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジド等が挙げられる。
セリン及びスレオニンの水酸基は、例えばエステル化又はエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えばアセチル基等の低級(C2−4)アルカノイル基、ベンゾイル基等のアロイル基等、及び有機酸から誘導される基等が挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、例えばベンジル、テトラヒドロピラニル、But、Trt等である。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えばBzl、2,6-ジクロルベンジル、2−ニトロベンジル、Br-Z、But等が挙げられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えばp-トルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、2,4-ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル(Bom)、tert-ブトキシメチル(Bum)、Boc、Trt、Fmoc等が挙げられる。
アルギニンのグアニジノ基の保護基としては、例えばTos、Z、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルフォニル(Mtr)、p-メトキシベンゼンスルフォニル(MBS)、2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルフォニル(Pmc)、メシチレン-2-スルフォニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NO2等が挙げられる。
リジンの側鎖アミノ基の保護基としては、例えばZ、Cl-Z、トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソサイクロヘキシリデンエイル(Dde)等が挙げられる。
トリプトファンのインドリル保護基としては、例えばホルミル(For)、Z、Boc、Mts、Mtr等が挙げられる。
アスパラギン、グルタミンの保護基としては、例えばTrt、キサンチル(Xan)、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)等が挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、HOBt、HOAtとのエステル)等が挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応する亜リン酸アミドが挙げられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えばPd黒あるいはPd炭素等の触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、臭化トリメシルシラン(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ素、三臭化ホウ素あるいはこれらの混合液等による酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン等による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元等も挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾールのようなカチオン捕捉剤や、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール等の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオール等の存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニア等によるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護及び保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化等は公知の保護基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
本発明化合物は、C末端にメチオニンアミドを有する。ペプチドのアミド体を得る方法としては、アミド体合成用樹脂を用いて固相合成するか又はカルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(又はアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
本発明化合物が、エナンチオマー、ジアステレオマー等のコンフィギュレーショナル アイソマー(配置異性体)、コンフォーマー(配座異性体)等として存在する場合には、これらも本発明化合物として含有されると共に、所望により、自体公知の手段、前記の分離、精製手段によりそれぞれを単離することができる。また、本発明化合物がラセミ体である場合には、通常の光学分割手段によりS体及びR体に分離することができる。本発明化合物に立体異性体が存在する場合には、この異性体が単独の場合及びそれらの混合物の場合も本発明化合物に含まれる。
また、本発明化合物は、溶媒和物(例、水和物)又は無溶媒和物(例、非水和物)であってもよい。
本発明化合物は、同位元素(例、H、14C、35S、125I)等で標識されていてもよい。
さらに、本発明化合物は、HをH(D)に変換した重水素変換体であってもよい。
本明細書におけるペプチドはペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのN末端アミノ酸において「H−」と標記された場合は、末端アミノ基が誘導体化されていないことを示す。ペプチドのC末端アミノ酸において「−NH」と標記された場合は末端カルボキシル基がアミド化されていることを示す。
本発明化合物は、結晶であってもよく、該結晶の結晶形は単一であっても複数であってもよい。結晶は、自体公知の結晶化法を用いて製造することができる。
本発明化合物は、薬学的に許容され得る共結晶または共結晶塩であってもよい。ここで、共結晶または共結晶塩とは、各々が異なる物理的特性(例えば、構造、融点、融解熱、吸湿性、溶解性および安定性等)を持つ、室温で二種またはそれ以上の独特な固体から構成される結晶性物質を意味する。共結晶または共結晶塩は、自体公知の共結晶化法に従い製造することができる。
本発明化合物の結晶は、物理化学的性質(例、融点、溶解度、安定性)及び生物学的性質(例、体内動態(吸収性、分布、代謝、排泄)、薬効発現)に優れ、医薬として極めて有用である。
本発明化合物は、NK3受容体アゴニスト作用を有する。該作用から、本発明化合物は、哺乳動物(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等)に対し、タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患や病態の予防又は治療薬として有用である。従って、本願発明は、本発明化合物の有効量を、それを必要とする対象(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等;特にヒト)に投与することを含む、タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患を治療する方法を提供する。
このような疾患、病態としては、例えば、性ホルモン分泌の過剰・欠乏、過少による性機能不全症・発育不全、良性腫瘍、悪性腫瘍、代謝異常等が挙げられる。
さらに、本発明化合物は、卵胞発育を制御する繁殖中枢に対して刺激作用を有し、中枢性に作用してキスペプチン/ニューロキニン神経の神経活動を持続的に亢進する。該作用から、本発明化合物は、哺乳動物(例、ヒト、サル、ネコ、ブタ、ウマ、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ウサギ等)に対し、卵胞発育促進及び/又は改善用の医薬として有用である。また、化合物(I)は繁殖中枢に作用する繁殖中枢制御剤として有用であり、従って、本願発明は、本発明化合物の有効量を家畜(例、ウシ、ヤギ、ヒツジ等)に投与することを含む、該家畜の繁殖を制御する方法を提供する。本願発明により卵胞発育に関与するLHパルスの頻度を亢進させることができ、家畜(例、ウシ、ヤギ、ヒツジ等)の生産サイクルの短縮が可能となる。
本発明化合物は、そのままあるいは薬理学的に許容される担体とともに、自体公知の手段、例えば、日本薬局方に記載の方法に従って製剤化することによって、医薬として用いられる。
本発明化合物を含有してなる医薬は、毒性が低く、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている自体公知の手段に従って、本発明化合物をそのままあるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠、舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、液剤、トローチ剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等)、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤)、ペレット、経鼻剤、経肺剤(吸入剤)、点滴剤等の医薬製剤として、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
また、これらの製剤は、速放性製剤又は徐放性製剤等の放出制御製剤(例、徐放性マイクロカプセル)であってもよい。
なお、医薬製剤中の本発明化合物の含有量は、製剤全体の約0.01ないし約100重量%である。
本発明化合物の投与量は、投与対象、症状、投与方法等により適宜選択される。例えば、本発明化合物を経口投与する場合、ヒト(体重60kgとして)に対する投与量は、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。本発明化合物を非経口的に投与する場合、ヒト(体重60kgとして)に対する投与量は、一日につき約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.5〜10mgである。この量を1日1〜数回に分けて投与することができる。
本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等が挙げられる。更に必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
結合剤としては、例えば結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
等張化剤としては、例えばブドウ糖、D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられる。
緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。
無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられる。
防腐剤としては、例えばパラヒドロキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
着色剤としては、例えば水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号及び3号、食用黄色4号及び5号、食用青色1号及び2号等の食用色素)、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラ)等が挙げられる。
甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア等が挙げられる。
吸着剤としては、例えば有孔デンプン、ケイ酸カルシウム(商品名:フローライトRE)、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(商品名:ノイシリン)、軽質無水ケイ酸(商品名:サイリシア)が挙げられる。
湿潤剤としては、例えばプロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
経口剤を製造する際には、必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性を目的として、コーティングを行ってもよい。
コーティングに用いられるコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤が挙げられる。
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウ等から選ばれる1種又は2種以上を併用してもよい。
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE〔オイドラギットE(商品名)〕、ポリビニルピロリドン等の合成高分子;プルラン等の多糖類が挙げられる。
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系高分子;メタアクリル酸コポリマーL〔オイドラギットL(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーLD〔オイドラギットL−30D55(商品名)〕、メタアクリル酸コポリマーS〔オイドラギットS(商品名)〕等のアクリル酸系高分子;セラック等の天然物が挙げられる。
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS〔オイドラギットRS(商品名)〕、アクリル酸エチル−メタクリル酸メチル共重合体懸濁液〔オイドラギットNE(商品名)〕等のアクリル酸系高分子が挙げられる。
上記したコーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、コーティングの際に、例えば、酸化チタン、三二酸化鉄等のような遮光剤を用いてもよい。
NK3受容体は、種々の生体内現象に関与していることが知られている。従ってNK3受容体アゴニスト作用を有する化合物(I)は、NK3受容体が関与する種々の生体内現象を解明するのに役立つツールとなり得る。従って本発明化合物は、研究用試薬としても有用である。
本発明は、更に以下の実施例および試験例によって詳しく説明されるが、これらの例は単なる実施であって、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
製造例1 保護ペプチド樹脂の構築
NovaSyn(登録商標)TGR樹脂(384.6 mg, 0.10 mmol)またはRink Amide樹脂(166.6 mg, 0.10 mmol)上、Fmoc保護アミノ酸(0.30 mmol)もしくはFmoc保護ジペプチド等価体、HOBt・H2O (46.0 mg, 0.30 mmol)及びDIC (46.4 μL, 0.30 mmol)を用いたFmoc固相合成法により保護ペプチド樹脂を構築した。N−メチルアミノ酸へのアシル化には、Fmoc保護アミノ酸(0.30 mmol)、HATU (114.0 mg, 0.30 mmol)/(i-Pr)2NEt (52.2 μL, 0.30 mmol)を用いた。
製造例2 ペプチド鎖N末端のスクシニル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂(0.10 mmol)を構築後、20% ピペリジン/DMFでFmoc基を除去し、DMF中、無水コハク酸(50.0 mg, 0.50 mmol)及び(i-Pr)2NEt(87.2 μL, 0.50 mmol)を添加し、室温下1.5時間反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得た。
製造例3 保護ペプチド樹脂の脱保護と精製
得られた樹脂をTFA/m-cresol/thioanisole/EDT/H2O(80:5:5:5:5)の反応溶液中、2時間処理し、側鎖保護基の除去を伴う樹脂からの切り出しを行った。樹脂を濾去し、濾液中のTFAをトルエンと共沸することにより留去した後、冷ジエチルエーテルを加えることでペプチドを析出させた。得られた粗ペプチドの洗浄操作を3回行った後、HPLCにより精製し、目的のペプチドを得た。
製造例4 ペプチド鎖N末端のアセチル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、DMF中、無水酢酸とピリジンを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得る。
製造例5 ペプチド鎖N末端のオキサリル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、ジクロロメタン中、tert-butyl chloro(oxo)acetateと(i-Pr)2NEtを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得る。
製造例6 ペプチド鎖N末端のカルバモイル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、ジクロロメタン中、chlorosulfonyl isocyanateとピリジンを添加し、室温下で反応させる。その後H2Oを添加して反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得る。
製造例7 ペプチド鎖N末端のヒドロキシカルバモイル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、THF/ジクロロメタン(1:1)中、p-nitrophenyl chloroformateと(i-Pr)2NEtを添加し、室温下で反応させた。その後DMF溶媒中、ヒドロキシルアミン塩酸塩と(i-Pr)2NEtを添加して反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得る。
製造例8 ペプチド鎖N末端のヒドラジンカルボニル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、THF中、p-nitrophenyl chloroformate、tert-butyl carbazateとN-methylmorpholineを混合した溶液とトリエチルアミンを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖(Boc保護体)を得る。
製造例9 ペプチド鎖N末端のメチルオキサリル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、ジクロロメタン中、methyl oxalyl chlorideとピリジンを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得る。
製造例10 ペプチド鎖N末端のオキサミド化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、ジクロロメタン中、oxamic acid、DICとHOBt・H2Oを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖を得る。
製造例11 ペプチド鎖N末端のスルホンアミド化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、ジクロロメタン中、chlorosulfonyl isocyanateとtert-ブタノールを混合した溶液とトリエチルアミンを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖(Boc保護体)を得る。
製造例12 ペプチド鎖N末端のカルボキシメチル化
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂を構築後、DMF中、tert-butyl bromoacetateと(i-Pr)2NEtを添加し、室温下で反応させることにより、目的の修飾保護ペプチド鎖(tert-Bu保護体)を得る。
製造例13 ペプチド鎖N末端のビス(カルボキシメチル)化
DMF溶媒中、N-Fmoc-L-Asp(O-tBu)-OH、トリエチルアミンと臭化ベンジルを混合し、室温下で反応させることにより、N-Fmoc-L-Asp(O-tBu)-OBnを得る。生成物に対して、DMF中、ジエチルアミンを添加し、室温下で反応させることにより、H-L-Asp(O-tBu)-OBnを得る。その後、生成物に対して、無水DMF溶媒中、tert-butyl bromoacetateと炭酸カリウムを添加し、室温下で反応させることにより、N,N-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルメチル)-L-アスパラギン酸 4-tert-ブチル 1-ベンジルを得る。生成物にEtOH溶媒中、10% Pd/Cを添加し、水素雰囲気下、室温下で反応させることにより、N,N-ビス(tert-ブチルオキシカルボニルメチル)-L-アスパラギン酸4-tert-ブチルを得る。これを製造例1のFmoc固相合成法に適用し、保護ペプチド樹脂に導入することで、目的の修飾保護ペプチド樹脂(tert-Bu保護体)を構築する。
式(I)中、X1におけるA1がPEG修飾(−O−を介してペプチド鎖に結合)している化合物(式(II)中、Xが−O−;実施例1〜3)を下記スキーム1に従って合成した。
[スキーム1]
実施例1 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のエステル結合を介したMPEG750修飾
Fmoc-Glu-OBn(2.0 g, 4.36 mmol)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル750(3.59 g, 4.79 mmol)、DCC(1.12 g, 5.45 mmol)及びDMAP(53.3 mg, 0.436 mmol)をジクロロメタン中で反応させることで、目的とするFmoc-Glu(O-MPEG750)-OBnを4.17 g得た。
次に得られた生成物(2.0 g, 1.68 mmol)に対し、脱水エタノール(29.2 mL)溶媒中、10% Pd/C(350 mg, 0.33 mmol)を水素雰囲気下で反応させることで目的のFmoc-Glu(O-MPEG750)-OHを955 mg得た。続いて、上記アミノ酸を用い、製造例1、製造例2、製造例3の手順により目的のペプチド8を得た。
実施例2 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のエステル結合を介したMPEG2k修飾
Fmoc-Glu-OBn(1.0 g, 2.17 mmol)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル2k(4.79 g, 2.39 mmol)、DCC(560 mg, 2.72 mmol)及びDMAP(26.6 mg, 0.217 mmol)をジクロロメタン中で反応させることで、目的とするFmoc-Glu(O-MPEG2k)-OBnを5.10 g得た。得られた生成物(5.10 g, 2.09 mmol)に対し、エタノール(30 mL)-クロロホルム(5.0 mL)混合溶媒中、10% Pd/C(222 mg, 0.209 mmol)を水素雰囲気下で反応させることで目的のFmoc-Glu(O-MPEG2k)-OHを3.89 g得た。続いて、製造例1の手順により得られた保護ペプチド樹脂A(0.5 mmol)に対し、上記アミノ酸(3.53 g, 1.5 mmol)、HATU(570 mg, 1.5 mmol)及び(i-Pr)2NEt(261 μL, 1.5 mmol)を用いた縮合、製造例2、製造例3の手順により目的のペプチド9(PEG2k ester)を得た。
実施例3 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のエステル結合を介したMPEG5k修飾
Fmoc-Glu-OtBu(531 mg, 1.25 mmol)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル5k(6.87 g, 1.37 mmol)、DCC(322 mg, 1.56 mmol)及びDMAP(15.3 mg, 0.125 mmol)をジクロロメタン中で反応させることで、目的とするFmoc-Glu(O-MPEG5k)-OBnを6.21 g得た。次に得られた生成物(2.0 g, 0.37 mmol)に対し、TFA(20 mL)溶媒中で反応させることで目的のFmoc-Glu(O-MPEG5k)-OHを1.92 g得た。続いて、製造例1の手順により得られた保護ペプチド樹脂A(0.05 mmol)に対し、上記アミノ酸(1.05 g, 0.20 mmol)、HOBt・H2O(459 mg, 3.0 mmol)及びDIC(464 μL, 3.0 mmol)を用いて60℃で2度縮合した。さらに製造例2の手順でN末端のスクシニル化を2度行い、製造例3の手順で樹脂から切り出すことにより目的のペプチド10を得た。
式(I)中、X1におけるA1がPEG修飾(−NH−を介してペプチド鎖に結合)している化合物(式(II)中、Xが−NH−;実施例4〜8)を下記スキーム2に従って合成した。
[スキーム2]
実施例4 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のアミド結合を介したMPEG500修飾
製造例1及び製造例3の手順で得られたペプチド(iv)(150 mg, 0.153 mmol)に対し、メトキシポリエチレングリコールアミン500(69 mg, 0.138 mmol)、WSC・HCl(44.1 mg, 0.230 mmol)、HOBt・H2O(35.2 mg, 0.230 mmol)及び(i-Pr)2NEt (40.1 μL, 0.230 mmol)をジクロロメタン中で反応させ、HPLC精製により目的物を得た。得られた生成物に対し、50% ジエチルアミン/ジクロロメタンを加え、1時間反応させることで、Fmoc基の脱保護を行った。そして製造例2の手順でペプチドN末端をスクシニル化することで目的のペプチド11を得た。
実施例5 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のアミド結合を介したMPEG750修飾
メトキシポリエチレングリコールアミン500に代えてメトキシポリエチレングリコールアミン750を使用する以外は、実施例4と同様にして、目的のペプチド12を得た。
実施例6 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のアミド結合を介したMPEG1k修飾
メトキシポリエチレングリコールアミン500に代えてメトキシポリエチレングリコールアミン1kを使用する以外は、実施例4と同様にして、目的のペプチド13を得た。
実施例7 ペプチド鎖N末端のアミド結合を介したMPEG2k修飾
メトキシポリエチレングリコールアミン500に代えてメトキシポリエチレングリコールアミン2kを使用する以外は、実施例4と同様にして、目的のペプチド14を得た。
実施例8 ペプチド鎖N末端のアミド結合を介したMPEG5k修飾
メトキシポリエチレングリコールアミン500に代えてメトキシポリエチレングリコールアミン5kを使用する以外は、実施例4と同様にして、目的のペプチド15を得た。
実施例9 ペプチド鎖N末端にオキサリル基を介したMPEG750修飾
式(I)中、X1におけるR1がPEG修飾(−O−を介してペプチド鎖に結合)している化合物を下記スキーム3に従って合成した。
[スキーム3]
塩化オキサリル(0.65 ml, 7.6 mmol)をジエチルエーテルに溶解した後、アルゴン雰囲気下でポリエチレングリコールモノメチルエーテル750(2.85 g, 3.8 mmol)をゆっくり滴下し、室温で3時間撹拌した。製造例1の手順により構築した保護ペプチド樹脂B(0.10 mmol)に、得られたオキサリル化MPEG750 (858 mg, 1.0 mmol)及び(i-Pr)2NEt(176 μL, 1.0 mmol)を添加し、室温下2時間反応させた。続いて、製造例3の手順で樹脂から切り出すことにより目的のペプチド6を得た。
式(I)中、X1におけるA1がその側鎖官能基上にリンカーを介してPEG修飾(−NH−を介してリンカーに結合)している化合物(実施例10〜13)を下記スキーム4に従って合成した。
[スキーム4]
実施例10 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖にアスパラギン酸を介した2分子のMPEG500修飾
Fmoc-Asp-OH (35.5 mg, 0.10 mmol)、メトキシポリエチレングリコールアミン500(110 mg, 0.22 mmol)、WSC・HCl(96 mg, 0.50 mmol)、HOBt・H2O(76.5 mg, 0.50 mmol) 及び(i-Pr)2NEt(87 μl, 0.50 mmol)をジクロロメタン中で反応させ、シリカゲルクロマトグラフィー精製することでFmoc-Asp(NH-MPEG500)-NH-MPEG500を得た。次に、Fmoc-Asp(NH-MPEG500)-NH-MPEG500に対し50% ジエチルアミン/ジクロロメタン溶液を加え、1時間反応させることでFmoc基を脱保護した。逆相クロマトグラフィー精製により、H-Asp(NH-MPEG500)-NH-MPEG500(v、90.5 mg)を得た。製造例1及び製造例3の手順で得られたペプチド(iv)(88.9 mg, 0.091 mmol)に対し、H-Asp(NH-MPEG500)-NH-MPEG500 (90.5 mg, 0.082 mmol)、WSC・HCl(23.9 mg, 0.124 mmol)、HOBt・H2O(19.0 mg, 0.124 mmol)及び(i-Pr)2NEt (21.6 μL, 0.124 mmol)をジクロロメタン中で反応させ、逆相クロマトグラフィー精製により目的物を得た。得られた生成物に50% ジエチルアミン/ジクロロメタン溶液を加え、1時間反応させることで、Fmoc基の脱保護を行った。引き続き、製造例2の手順でペプチドN末端をスクシニル化することで目的のペプチド18を得た。
実施例11 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖にアスパラギン酸を介した2分子のMPEG750修飾
メトキシポリエチレングリコールアミン500に代えてメトキシポリエチレングリコールアミン750を使用する以外は、実施例10と同様にして、目的のペプチド19を得た。
実施例12 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖にアスパラギン酸を介した2分子のMPEG1k修飾
メトキシポリエチレングリコールアミン500に代えてメトキシポリエチレングリコールアミン1kを使用する以外は、実施例10と同様にして、目的のペプチド20を得た。
実施例13 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖にアスパラギン酸を介した2分子のMPEG2k修飾
ペプチド(iv)(97.7 mg, 0.10 mmol)に対し、H-Asp(OtBu)-OtBu・HCl(31.0 mg, 0.11 mmol)、WSC・HCl(29.0 mg, 0.15 mmol)、HOBt・H2O(23.0 mg, 0.15 mmol)及び(i-Pr)2NEt (26.1 μL, 0.15 mmol)をジクロロメタン中で反応させ、HPLC精製により目的物(122.6 mg)を得た。得られた生成物に対し、TFA中で1時間反応させることで、tBu基の脱保護を行った。得られたペプチド(43.7mg, 0.04 mmol)に対し、メトキシポリエチレングリコールアミン2k(160.0 mg, 0.08 mmol)、WSC・HCl(23.2 mg, 0.12 mmol)、HOBt・H2O(18.4 mg, 0.12 mmol) 及び(i-Pr)2NEt(20.8 μl, 0.12 mmol)をジクロロメタン中で反応させた。溶媒を留去した後、HPLC精製により目的物(98.7 mg)を得た。これに50% ジエチルアミン/ジクロロメタン溶液を加え、1時間反応させることで、Fmoc基の脱保護を行った。引き続き製造例2の手順でペプチドN末端をスクシニル化することで目的のペプチド21を得た。
比較例1 ペプチド鎖N末端のMPEG(分子量500未満)修飾
Methyl-PEG12-NHS(NHS:N-ヒドロキシスクシンイミド活性エステル)を用いてPEG修飾したペプチドを下記スキーム5に従って合成した。
[スキーム5]
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂B(0.05 mmol)を構築後、DMF溶媒中、methyl-PEG12-NHS(50.3 mg, 0.075 mmol)及び(i-Pr)2NEt (26.2 μL, 0.15 mmol)を添加し、室温下1.5時間反応させた。続いて、製造例3の手順で樹脂から切り出すことにより目的のペプチド4を得た。
比較例2
製造例1〜3の手順と同様にして目的のペプチド1を合成した。
PEG修飾以外の化学修飾を施したペプチド(比較例3〜8)を下記スキーム6およびスキーム7に従って合成した。
[スキーム6]
比較例3 ペプチド鎖N末端アミノ酸への糖鎖修飾
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂A(0.025 mmol)を構築後、DMF溶媒中、Fmoc-Asn(Ac3AcNH-β-Glc)-OH(17.1 mg, 0.025 mmol)、HOBt・H2O(5.75 mg, 0.038 mmol)及びDIC(5.76 μL, 0.038 mmol)を添加し、室温下1.5時間反応させた。次に、DMF溶媒中、無水酢酸(11.8 μL, 0.125 mmol)、ピリジン(20.1 μL, 0.25 mmol)を加えて10分間反応に付し、糖鎖修飾アミノ酸が導入されなかったペプチドN末端をアセチル基で保護した。続いて、実施例2の手順によりスクシニル化を行った後、DMF-メタノール混合溶媒中で、ナトリウムメトキシド(20.25 mg, 0.375 mmol)による脱アセチル化を行った。最後に、製造例3の手順で樹脂から切り出すことにより目的のペプチド2を得た。
比較例4 ペプチド鎖N末端の脂肪酸修飾
製造例1の手順により保護ペプチド樹脂B(0.10 mmol)を構築後、DMF溶媒中、パルミチン酸(76.5 mg, 0.30 mmol)、HOBt・H2O (46.0 mg, 0.30 mmol)及びDIC(46.4 μL, 0.30 mmol)を添加し、室温下1.5時間反応した。続いて、製造例3の手順で樹脂から切り出すことにより目的のペプチド3を得た。
比較例5 ペプチド鎖N末端にオキサリル基を介した長鎖アルキル修飾
塩化オキサリル(2.6 ml, 29.2 mmol)をジエチルエーテルに溶解した後、アルゴン雰囲気下でヘキサデカノール(3.6 g, 14.6 mmol)をゆっくり滴下し、室温下で4時間撹拌した。次に製造例1の手順により保護ペプチド樹脂B(0.05 mmol)を構築後、ジクロロメタン溶媒中、得られたオキサリル化ヘキサデカノール(83.5 mg, 0.25 mmol)及び(i-Pr)2NEt(88 μL, 0.5 mmol)を添加し、室温下2時間反応させた。続いて、製造例3の手順で樹脂から切り出すことにより目的のペプチド5を得た。
比較例6 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖のエステル結合を介した長鎖アルキル修飾
Fmoc-Glu-OBn(459.5 mg, 1.0 mmol)、ヘキサデカノール(291mg, 1.2 mmol)、EDCI・HCl(230.0 mg, 1.2 mmol)及びDMAP(12.2 mg, 0.1 mmol)を、ジクロロメタン中室温下で2.5時間撹拌することで、Fmoc-Glu(O-C16H33)-OBnを得た。得られた生成物(210 mg, 0.30 mmol)に対し、エタノール(6.0 mL)-酢酸エチル(3.0 mL)混合溶媒中、10% Pd/C(16 mg, 0.015 mmol)存在下水素雰囲気下で反応させることでFmoc-Glu(O-C16H33)-OHを233 mg得た。続いて、上記アミノ酸を用い、製造例1、製造例2、製造例3の手順によりペプチド7を得た。
[スキーム6]

比較例7 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖にアスパラギン酸の修飾
ペプチド(iv)(97.7 mg, 0.10 mmol)に対し、H-Asp(OtBu)-OtBu・HCl(31.0 mg, 0.11 mmol)、WSC・HCl(29.0 mg, 0.15 mmol)、HOBt・H2O(23.0 mg, 0.15 mmol)及び(i-Pr)2NEt (26.1 μL, 0.15 mmol)をジクロロメタン中で反応させ、溶媒を留去後シリカゲルクロマトグラフィーにより目的物(61.2 mg)を得た。得られた生成物にTFAを加えて1時間反応させ、tBu基を脱保護した。このペプチド (33.2 mg, 0.028 mmol)に対し、50% ジエチルアミン/ジクロロメタンを加えて1時間反応させ、Fmoc基を脱保護した。製造例2の手順でペプチドN末端のスクシニル化を行った後、TFA中で1時間反応させることで、目的のペプチド16を得た。
比較例8 ペプチド鎖N末端グルタミン酸側鎖にN,N’-ジメチルアスパラギンの修飾
Fmoc-Asp-OH(86.8 mg, 0.245 mmol)、メチルアミン水溶液(63.5 μL, 0.735 mmol)、WSC・HCl(141 mg, 0.735 mmol)、HOBt・H2O(112 mg, 0.735 mmol) 及び(i-Pr)2NEt(127 μl, 0.735 mmol)をジクロロメタン中で反応させ、溶媒を留去後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製した。次に、得られた生成物に対して50%ジエチルアミン/DMF溶液を加えて1時間反応させることで、Fmoc基を脱保護した。ペプチド(iv)(239 mg, 0.245 mmol)に対し、上記アミノ酸、WSC・HCl(56.7 mg, 0.294 mmol)、HOBt・H2O(45.0 mg, 0.294 mmol)及び(i-Pr)2NEt (51.2 μL, 0.294 mmol)をDMF中で反応させ、目的物のペプチドを得た。得られた生成物に50%ジエチルアミン/ジクロロメタンを加え、1時間反応させることで、Fmoc基を脱保護した。製造例2の手順でペプチドN末端をスクシニル化することで目的のペプチド17を得た。
実施例1〜9及び比較例1〜6、並びに実施例10〜13及び比較例7〜8の各ペプチドをその質量分析値(MALDI-TOF MSによる分析)とともに下記表2-1、表2−2及び表3にまとめる。senktideは公知のNK3受容体アゴニストである。
試験例1 本発明化合物によるNK3受容体アゴニスト活性の評価
NK3受容体を強制発現したFlp-In CHO細胞を各種ペプチドで刺激した時における細胞内カルシウム濃度の変化を定量した。
まず、NK3受容体発現CHO細胞を、トリプシンを用いて回収し、4×104 cells/ウェルとなるように96穴プレートに播種した。37℃で一晩培養後、カルシウム指示薬100 μLを添加し、さらに1時間培養した。続いて、5倍濃縮で調製したペプチド溶液25 μLを滴下し、FlexStationにより細胞内カルシウム濃度の経時的変化を60秒間観察した。
試験例2 ヤギ血清中における本発明化合物の安定性評価
氷冷下、各動物組織液49 μLに対してペプチド溶液を1 μL加えて混合し、37℃でインキュベーションした。次に、インキュベーションの間、評価液を対応時間毎に20μL採取した。採取した評価液に対して、氷冷下でアセトニトリル60 μLを加えて組織タンパクを沈殿させた。振盪した後、遠心し(4℃, 13000 g, 10 min)、得られた上清をHPLCにて解析した。いずれも優れた安定性を示した。
試験例3 本発明化合物のヤギの生殖中枢の神経活動に及ぼす活性評価
卵巣摘出ヤギ4頭を供試し、外科的に記録電極を視床下部弓状核のキスペプチンニューロン近傍に留置した。約1ヶ月の回復期をおき、覚醒したヤギにおいて神経活動をMUAとしてリアルタイムに計測し、約2分程度続く一過性の神経活動の上昇(MUAボレー)が規則正しい周期で起きていることを確認した。MUAボレーは、GnRHをパルス状に分泌させるキスペプチンニューロンの神経活動を反映している。卵巣摘出ヤギでは、内因性のMUAボレーの周期の長さは約25分(±5分程度)であり、個体により多少異なるが、同一個体内では周期の長さはほぼ一定である。
試験当日、MUA計測機器をセットし、終日MUAを連続的に記録した。また、試料投与用の頚静脈カテーテルを留置した。まず、それぞれの個体で約2時間のコントロール時間中に起きた内因性MUAボレーを数本確認し、そのボレー間隔(分)の平均値(T)を計算した。次に、任意のMUAボレー発現後、1/2T分のタイミングで被検試料溶液を頚静脈内に一気に投与した。薬剤投与後、MUAボレーが4分以内に発現した場合をNK3受容体アゴニスト活性陽性とし、薬剤投与時点からボレー間隔がTの80%に回復するまでの時間を薬剤による効果の持続時間(R)とした。また、この持続時間R中に観測されたボレーの数(V)を計数した。
被検試料溶液は以下のように調製した。試験当日、DMSO中に10 mMの濃度で調整された被検試料50 μLを滅菌蒸留水4.45 mLに溶解した。析出せず、完全に溶解したことを確認後、0.5 mLの滅菌9%NaClを加え、溶液の最終濃度を被検試料:500 nmol/5 mL、NaCl:0.9%、DMSO:1%とした。ここから2 mL (200 nmol)を注射筒にとり、活性評価に供した。また、原則として、1被検試料について2〜3頭を用いて活性評価を行った。
一例として、本発明のペプチド(ペプチド9;実施例2)と対照ペプチドとしてのSenktideとを比較したチャートを図1に示す。さらに、試験例1及び3に基づいて、Senktide及び本発明化合物との生物活性を比較した結果を表4に示す。
PEG修飾、特に分子量500、好ましくは分子量750を超える鎖長、より好ましくは分子量750〜2,000の鎖長からなるPEG鎖を付したペプチドにおいて、ヤギへの末梢投与において中枢神経活動の持続的な活性化が認められた。
試験例4 本発明化合物のヤギへの投与による血中黄体形成ホルモン濃度に与える影響の評価
ペプチド12(200 nmol)を、卵胞期および黄体期のシバヤギ静脈血中に単回投与した。投与前2時間から投与後6時間後にわたって後数時間にわたって10分間隔で採血し、血中黄体形成ホルモン(LH)濃度を定量した。試験例4に基づいて、ペプチド12を卵胞期および黄体期のシバヤギへ投与した結果をそれぞれ図2および図3に示す。
ペプチド12の投与直後からLH濃度の上昇が認められ、この上昇効果は同量の既存の作動薬を投与した場合には見られなかったことから、ペプチド12が、既存の作動薬と比較して生体内安定性に優れ、長期にわたって性腺刺激ホルモンの分泌を促進したと考えられた。
[配列表フリーテキスト]
配列番号1;ペプチド1
配列番号2;ペプチド2
配列番号3;ペプチド3
配列番号4;ペプチド4
配列番号5;ペプチド5
配列番号6;ペプチド6
配列番号7;ペプチド7
配列番号8;ペプチド8
配列番号9;ペプチド9
配列番号10;ペプチド10
配列番号11;ペプチド11
配列番号12;ペプチド12
配列番号13;ペプチド13
配列番号14;ペプチド14
配列番号15;ペプチド15
配列番号16;ペプチド16
配列番号17;ペプチド17
配列番号18;ペプチド18
配列番号19;ペプチド19
配列番号20;ペプチド20
配列番号21;ペプチド21
本発明により得られた高活性・高選択的NK3受容体アゴニストは、タキキニン類の分泌の過剰もしくは欠乏に伴う疾患の治療薬、例えば、疼痛、性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害の改善に向けた薬剤、これらの疾患の治療薬開発に向けた基礎科学実験用試薬等として有用である。

Claims (14)

  1. 式(I)
    [式中、X1は、1又は2の分子量500〜5,000のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体で直接又はリンカーを介して修飾された、R1−A1もしくはジカルボン酸残基を表し;
    R1は、水素原子、アセチル基、オキサリル基、スクシニル基、アミノカルボニル基、ヒドロキシアミノカルボニル基、ヒドラジノカルボニル基、メトキシジカルボニル基、アミノジカルボニル基、アミノスルホニル基、N,N−ジカルボキシメチルアスパラギン酸残基、もしくは、N−カルボキシメチルアスパラギン酸残基を表し;
    A1は、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、D−グルタミン酸、L−グルタミン、D−グルタミン、もしくは、L−α−アミノアジピン酸残基を表し;
    A2は、L−フェニルアラニン、L−チロシン、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、もしくは、D−グルタミン酸残基を表し;
    A3は、L−N−メチルフェニルアラニン、L−N−メチルバリン、L−N−メチルイソロイシン、L−N−メチルチロシン、もしくは、L−N−メチルトリプトファン残基を表し;
    X4−X5は、Gly−Leu、もしくは、そのジペプチド等価体を表し;
    Glyは、グリシン残基を表し;
    Leuは、ロイシン残基を表し;
    Met−NHは、メチオニンアミドを表す]で示される化合物又はその生理学的に許容される塩。
  2. PEG又はその誘導体による修飾が、エステル結合又はアミド結合によるものである、請求項1に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
  3. リンカーが下記式で表される基である請求項1又は2に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。

    [式中、mは1又は2であり;
    *aはX1との結合部位を示し;
    *bはPEG又はその誘導体との結合部位を示す。
  4. R1がスクシニル基、A1がL−グルタミン酸又はL−グルタミン残基、A2がL−フェニルアラニン残基、A3がL−N−メチルフェニルアラニン残基、X4−X5がGly−Leuである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
  5. PEG又はその誘導体の分子量が750〜2000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
  6. PEG又はその誘導体が、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、及びメトキシポリエチレングリコールアミンから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物又はその生理学的に許容される塩を含有してなる医薬。
  8. ニューロキニン受容体アゴニストである、請求項7記載の医薬。
  9. ニューロキニン受容体が、NK3受容体である、請求項8記載の医薬。
  10. 繁殖中枢制御剤である、請求項7記載の医薬。
  11. 卵胞発育促進及び/又は改善用である、請求項7記載の医薬。
  12. タキキニン類及び/又はニューロキニン受容体がその発症や進行に関与する疾患の治療薬である、請求項7記載の医薬。
  13. 該疾患が、疼痛又は性ホルモン分泌の過剰・欠乏にともなう性機能障害である、請求項12記載の医薬。
  14. 請求項1記載の化合物又はその生理学的に許容される塩を含有してなる試薬。
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