JP2017079884A - スライドファスナー用スライダー及びその製造方法 - Google Patents

スライドファスナー用スライダー及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】胴体及び引手の外観表面のほぼ全域に、規則性のある模様を施して加飾性を向上させた、密着性が良好なスライドファスナー用スライダー及びその製造方法を提供する。【解決手段】スライドファスナー用スライダー10は、上下に対向して配置される上翼板(21及び下翼板22と、上翼板及び下翼板を結する案内柱と、上翼板の上面に設置される引手取付柱24と、を有する胴体20と、胴体に対して回動可能に設けられる引手30と、を備える。胴体20及び引手30の表面には、同一の水圧転写膜40,41がそれぞれ設けられている。【選択図】図1

Description

本発明は、スライドファスナー用スライダー及びその製造方法に関する。
従来のスライドファスナー用スライダーでは、加飾性を向上させるため、塗装や鍍金などが行われている。また、スライダー胴体の表面や引手の表面に、ホログラムを設け、加飾性を向上させたものが開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。特許文献1に記載のスライダーでは、引手にホログラムを施すことが記載されている。特許文献2に記載のスライダーでは、本体と引手の表面にペイント塗布層を形成し、その上にホログラム層を形成し、さらに、透明樹脂の蒸着層を形成する。
また、特許文献3に記載のスライドファスナー用ファスナーエレメントでは、ファスナーエレメントの表面に硬化性樹脂よりなるアンダーコート層を設け、アンダーコート層の上に熱転写により形成した絵付け層を設け、絵付け層の上に硬化性樹脂よりなるオーバーコート層を設けたものが記載されている。
さらに、特許文献4に記載の自動車内部のルーフ側部に設けられるアシストグリップでは、グリップ本体の表面に水圧転写により塗膜層を形成することが記載されている。
独国202011104714U1号公報 大韓民国10−1265512号公報 日本国特開平04−367603号公報 日本国特開2011−136650号公報
ところで、スライドファスナー用スライダーでは、加飾性を向上するため、胴体及び引手のほぼ全域に、共通の模様を施すことが望まれている。特許文献1に記載のスライダーでは、胴体の加飾について開示されておらず、特許文献2に記載のスライダーにおいても、ホログラム層の具体的な製造方法について開示されていない。また、特許文献3に記載の熱転写により絵付け層を形成することは、スライダー胴体や引手のような凹凸のある表面には、スライダー全面に均一に被覆することが不可能である。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、胴体及び引手の外観表面のほぼ全域に、共通の模様を施して加飾性を向上させた、密着性が良好なスライドファスナー用スライダー及びその製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 上下に対向して配置される上翼板及び下翼板と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱と、前記上翼板の上面に設置される引手取付部と、を有する胴体と、
前記胴体に対して回動可能に設けられる引手と、を備えるスライドファスナー用スライダーであって、
前記胴体及び引手の表面には、同一の水圧転写膜がそれぞれ設けられていることを特徴とするスライドファスナー用スライダー。
(2) 前記胴体及び前記引手の表面に設けられる前記水圧転写膜は、同一転写膜層からなる共通のホログラム模様を有することを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用スライダー。
(3) 前記引手は、掴み部と、前記引手取付部が挿通する貫通孔を形成する環部と、を有し、
前記水圧転写膜は、前記環部の軸部の表面を除く全面に亘って少なくとも形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載のスライドファスナー用スライダー。
(4) 前記引手取付部は、一端部が前記胴体に一体的に成形されると共に、他端部に上翼板側に向いた自由端部を備え、
前記自由端部と、該自由端部と対向する前記自由端部の周囲の前記上翼板の表面とは、前記水圧転写膜の模様が連続していることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
(5) 前記胴体は、前記上翼板と前記下翼板との間に、エレメントを挿通可能なエレメント挿通路を備え、
前記エレメント挿通路の後口から少なくとも前記案内柱に達する領域には、前記水圧転写膜が形成されていないことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダー。
(6) 上下に対向して配置される上翼板及び下翼板と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱と、前記上翼板の上面に設置される引手取付部と、を有する胴体と、
前記胴体に対して回動可能に設けられる引手と、を備えるスライドファスナー用スライダーの製造方法であって、
前記引手を前記胴体に回転可能に取り付ける工程と、
前記胴体及び前記引手の相対的な姿勢を変えながら、水圧転写により、前記胴体及び引手の表面に、同一の水圧転写膜を形成する工程と、
を備えることをスライドファスナー用スライダーの製造方法。
(7) 前記水圧転写膜形成工程は、側面視で前記上翼板の表面が下方を向くように前記胴体を傾斜した状態で、前記引手を、水面に前記水圧転写膜が浮遊する水槽に完全に投入した後、側面視で前記上翼板の表面が鉛直方向を向くように前記胴体の姿勢を変え、前記胴体を完全に水槽に投入することを特徴とする(6)に記載のスライドファスナー用スライダーの製造方法。
(8) 前記水圧転写膜形成工程は、正面視で前記引手取付部の一方の側面が下方を向くように前記胴体を傾斜した状態で、前記引手を、水面に前記水圧転写膜が浮遊する水槽に完全に投入した後、正面視で前記引手取付部の一方の側面が鉛直方向を向くように前記胴体の姿勢を変え、前記胴体を完全に水槽に投入することを特徴とする(6)または(7)に記載のスライドファスナー用スライダーの製造方法。
(9) 前記水圧転写膜形成工程は、前記胴体が、該胴体の後口からエレメント挿通路内に挿入された保持部材によって保持された状態で行われることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載のスライドファスナー用スライダーの製造方法。
本発明のスライドファスナー用スライダーによれば、胴体及び引手の表面には、同一の水圧転写膜がそれぞれ設けられているので、胴体及び引手の外観表面のほぼ全域に、共通の模様を施して、スライドファスナー用スライダーの加飾性を向上させることができ、さらに、下地層との密着性がよく、摺動させても剥げない構成とすることができる。
また、本発明のスライドファスナー用スライダーの製造方法によれば、引手を胴体に回転可能に取り付ける工程と、胴体及び引手の相対的な姿勢を変えながら、水圧転写により、胴体及び引手の表面に、同一の水圧転写膜を形成する工程と、を備えるので、胴体及び引手の外観表面のほぼ全域に、共通の模様を施して、スライドファスナー用スライダーの加飾性を向上させることができ、さらに、下地層との密着性がよく、摺動させても剥げない構成とすることができる。
本発明の一実施形態に係るスライドファスナー用スライダーを説明する斜視図である。 ホログラム模様が形成された領域を表した胴体を示し、(a)は、その側面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その後面図であり、(d)はその背面図であり、(e)は、その前面図であり、(f)は、(a)のII−II線に沿った断面図であり、(g)は、(a)のII´−II´線に沿った断面図であり、(h)は、(a)のII´´−II´´線に沿った断面図である。 ホログラム模様が形成された領域を表した引手を示し、(a)は、その正面図であり、(b)は、その背面図であり、(c)は、その側面図であり、(d)は、(a)のIII−III線に沿った断面図である。 水槽に浮かべられた状態の水圧転写フィルムを示す図である。 (a)〜(d)は、水圧転写されるスライドファスナー用スライダーを側面から見た説明図である。 (a)〜(d)は、水圧転写されるスライドファスナー用スライダーを正面から見た説明図である。 変形例のホログラム模様が形成された領域を表した引手を示し、(a)は、その正面図であり、(b)は、その背面図であり、(c)は、その側面図であり、(d)は、(a)のVII−VII線に沿った断面図である。 変形例のホログラム模様が形成された領域を表した胴体を示し、(a)は、その側面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その後面図であり、(d)はその背面図であり、(e)は、その前面図であり、(f)は、(a)のVIII−VIII線に沿った断面図であり、(g)は、(a)のVIII´−VIII´線に沿った断面図であり、(h)は、(a)のVIII´´−VIII´´線に沿った断面図である。 本発明の変形例に係る異なる柄のスライドファスナー用スライダーを説明する斜視図である。
以下、本発明の一実施形態に係るスライドファスナー用スライダーについて、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本実施形態において、スライダーの前後方向とは、スライダーの摺動方向に平行な方向であり、スライドファスナーにおいて左右のエレメントを噛合させるときに摺動させる方向を前方とし、左右のエレメントを解離させるときに摺動させる方向を後方とする。また、スライダーの左右方向とは、スライドファスナーを構成した際のファスナーテープ面に平行で、且つ、スライダー前後方向に対して直角な方向をいい、スライダーの上下方向とは、スライドファスナーを構成した際のファスナーテープの表裏方向と同じ方向をいう。
また、本実施形態において、スライダー(胴体及び引手)の側面視とは、スライダーを左右方向から見た状態をいい、スライダー(胴体及び引手)の正面視とは、胴体の上翼板を上方から見た状態をいう。
本実施形態のスライドファスナー用スライダー10は、図1〜図3に示すように、左右一対のファスナーテープのファスナーエレメント(図示せず)が挿通される胴体20と、胴体20に対して回動可能に設けられる引手30と、を備える。なお、本実施形態のスライダー10は、金属製で、ファスナーエレメント列に食い込む爪を有していない自由スライダーである。
胴体20は、図2にも示すように、上下に平行に対向して配置される上翼板21及び下翼板22と、上翼板21及び下翼板22を前端部において連結する案内柱23と、上翼板21の表面(上面)に設置される門型形状の引手取付柱24と、上翼板21と下翼板22の両側縁から互いに接近する方向に延び、ファスナーエレメントをガイドするフランジ25と、を有する。なお、フランジ25はファスナーエレメントの形態によって、上翼板21または下翼板22の一方のみに設置してもよい。
また、胴体20の前部には、案内柱23により分離された左右の肩口20aが形成されると共に、胴体20の後部には、後口20bが形成されている。さらに、上翼板21と下翼板22との間には、左右の肩口20aと後口20bとを連通するY字形状のエレメント挿通路20cが設けられており、このエレメント挿通路20cは、スライドファスナーを構成したときに、左右のファスナーエレメントを挿通させる通路となる。
引手取付柱24は、上翼板21の表面の肩口20a側から後口20b側へ向かって延設される片持状に形成されており、上翼板12に一体的に固定されている固定端部24aと、固定端部24aから延出した自由端部24bとを有している。固定端部24aは、上翼板12の肩口20a側において、幅方向中間部から突出されている。
引手30は、図3にも示すように、板状体であって、掴み部31と、引手取付柱24が挿通する貫通孔33を形成する環部32と、を有する。なお、掴み部31には、持ちやすいように貫通する孔部を備える。
したがって、スライダー10は、引手30の貫通孔33を介して、胴体20の引手取付柱24に引手30を支持させた後、自由端部24bが上翼板12の上面に当接又は近接するように、引手取付柱24を加締める。これにより、胴体20及び引手30は、互いに不分離に組み立てられる。
また、本実施形態のスライドファスナー用スライダー10において、胴体20及び引手30の表面には、下地塗装膜、水圧転写膜40、41、及び上塗り塗装膜がこの順で、外観表面のほぼ全面に亘って形成されている。水圧転写膜40、41は、後述するように、同一の水圧転写フィルム42を用いて水圧転写によって得られる、厚さが一様のものであり、共通の規則性を持ったホログラム模様を有する。このホログラム模様を持った水圧転写膜40、41は、上面と下面との距離と、微細な凹凸との組み合わせにより光が干渉して発現し、見る角度により色調が変化する。
なお、本発明における水圧転写膜は、表面全体に一様なホログラム模様を有する均一層であってもよく、或いは、本実施形態のように、ホログラム模様がそれぞれ独立して複数配置された、実質的に均一層でないものであってもよい。即ち、本発明の水圧転写膜は、同じ水圧転写フィルムから作製されるものであれば、いずれも場合も本発明に含まれる。
ここで、図2及び図3では、胴体20及び引手30に水圧転写膜40、41が形成された領域を、点線の斜線で示している。具体的に、胴体20の水圧転写膜40は、エレメント挿通路20cを除くほぼ全面に形成されている。即ち、水圧転写膜40は、上翼板21の上面(引手取付柱24と対向する面を除く)及び側面、下翼板22の下面及び側面、フランジ25の側面、前面及び後面、案内柱23の前面及び両側面の一部(フランジ25と対向していない部分の側面)と、引手取付柱24の上面及び両側面と、に形成されている。特に、図2(f)に示すように、エレメント挿通路20c内には、肩口20a側以外の部分、即ち、後口20bから少なくとも案内柱23に達する領域Aには、水圧転写膜が形成されない。
また、水圧転写は、胴体20に引手30を取り付けた状態で行われるので、図1に示すように、引手取付柱24の自由端部24bと、該自由端部24bと対向する自由端部24bの周囲の上翼板21の表面とは、水圧転写膜40の模様が連続している。
また、図3に示すように、引手30に形成される水圧転写膜41は、全面に亘って形成されている。即ち、引手30の水圧転写膜41は、上面、下面、両側面、及び、貫通孔33の内面に形成される。
なお、本実施形態では、水圧転写膜40、41のみ図示し、下地塗装膜、及び上塗り塗装膜を図示省略している。
次に、本実施形態のスライドファスナー用スライダー10の製造方法について説明する。
まず、下地塗装膜が形成された胴体20及び引手30を用意し、上述したように、引手取付柱24を加締めることで、引手30を胴体20に回転可能に取り付ける。
次に、不分離に組立てられた胴体20及び引手30に対して、胴体20及び引手30の相対的な姿勢を変えながら、水圧転写により、胴体20及び引手30の表面に、同一の水圧転写膜40,41を形成する。
図4に示すように、水槽51に浮かべられた状態の水圧転写フィルム42は、ベース層43、水圧転写膜40、41を成形する転写膜層44、及び接着剤層45を有する。そして、ベース層43は、水槽51に浮かべることで、水中に溶け込んでなくなる。転写膜層44は、ベース層43が水中に溶け込んだ後、微視的には水面でブロック状に分離していくので、転写される表面に凹凸があったとしても下地塗装膜との密着性が良好となる。
また、接着剤層45は、通常時は粘着性を持たないが、接着剤層を溶かす溶剤を噴霧することで、粘着性を持った状態となる。
そして、図4に示す状態の水圧転写フィルム42に対して、引手30が取り付けられた胴体20を水槽51に徐々に投入していく。その際、図5(a)及び図6(a)に示すように、胴体20は、該胴体20の後口20bからエレメント挿通路20cの図2(f)に示した上述した領域A内に挿入された保持部材50によって保持される。保持部材50は、エレメント挿通路20c内に圧入、若しくは、内部で弾性的に拡がることで、胴体20を固定するような形式で保持する。また、引手30は、上翼板21と引手取付柱24との間に形成された開口部26によって保持され、自重により吊り下げられた状態となる。
そして、スライダー10の側面視で上翼板21の表面が下方を向き、正面視で引手取付柱24の一方の側面が下方を向くように胴体20を傾斜した状態で、肩口20a側が下方となるようにして、水槽51に投入される。即ち、胴体20は、側面視で鉛直方向に対して上翼板21の表面を傾斜角α(図5(a)参照)、正面視で鉛直方向に対して引手取付柱24の表面(引手取付柱24の長手方向)を傾斜角β(図6(a)参照)傾けて、水槽51に投入される。これにより、引手30の表面に転写膜層44が付着して、水圧転写膜41が形成されていく。この時、引手30は、前述したように、自重により吊り下げられ、具体的には、引手の長手方向が鉛直方向に指向している。即ち、引手30は、胴体20に対して、傾斜角α、傾斜角βの角度を持って傾斜している状態となる。
つぎに、図5(b)、(c)及び図6(b)、(c)に示すように、引手30の全体が水槽51に完全に水没した後に、側面視で上翼板21の表面が鉛直方向を向き、正面視で引手取付柱24の一方の側面が鉛直方向を向くように胴体20の姿勢を変える。即ち、胴体20は、側面視で傾斜角α分だけX1方向に回転し、正面視で傾斜角β分だけX2方向に回転する。そして、図5(c)及び図6(c)に示すように、この姿勢の状態で、胴体20の全面が水槽51に完全に水没するまで、スライダー10を水槽51に沈める。これにより、胴体20の表面にも転写膜層44が付着して、水圧転写膜40が形成される。その後、図5(d)及び図6(d)に示すように、胴体20及び引手30を水槽51から取り出される。
したがって、胴体20及び引手30の外観表面のほぼ全域に、共通のホログラム模様を有する水圧転写膜40,41が形成される。
また、図5(b)及び図5(c)に示すように、膜形成の際に、胴体20の姿勢を途中で変えることで、引手30の環部32が対向する引手取付柱24の側面の領域Bが変わることで、引手取付柱24の両側面全体に亘って、一様な水圧転写膜40が形成される。
同様に、図6(b)及び図6(c)に示すように、膜形成の際に、胴体20の姿勢を途中で変えることで、引手取付柱24の内面と対向する引手30の環部32の表面の領域Cが変わることで、引手30の環部32の表面の全体に亘って、一様な水圧転写膜41が形成される。
なお、スライダー10を水槽51に投入する前の胴体20の傾斜角α、βは、引手取付柱24の両側面、及び引手30の環部32の表面に一様な水圧転写膜41が形成されるように適宜設定される。
また、水圧転写の際、エレメント挿通路20c内には、図2(f)に示すように、エレメント挿通路20cの後口19から少なくとも案内柱23に達する領域Aに、水圧転写膜が形成されない。これにより、エレメント挿通時に膜剥がれによる塵などの発生の懸念がなくなる。
なお、下地塗装膜や上塗り塗装膜の製造方法は、任意であるが、本実施形態では、低コストで大量生産可能なバレル薄膜塗装装置を用いて行われている。
また、下地層は、塗装の他に鍍金であってもよく、例えば、光の反射率の異なる下地層とすることで、水圧転写膜40,41の模様が同じであっても、鮮やかさの違うホログラム現象を発現することができ、バリエーションの充実を図ることができる。
以上説明したように、本実施形態のスライドファスナー用スライダー10によれば、胴体20及び引手30の表面には、同一の水圧転写膜40,41がそれぞれ設けられているので、胴体20及び引手30の外観表面のほぼ全域に、共通の模様を施して、スライドファスナー用スライダー10の加飾性を向上させることができ、スライダー10が取り付けられる商品全体に高級感を与えることができる。さらに、水圧転写膜40,41は、下地層との密着性がよく、摺動させても剥げない構成とすることができる。
また、胴体20及び引手30の表面に設けられる水圧転写膜40,41は、同一転写膜層44からなる共通のホログラム模様を有するので、見る角度により色調が変化し規則性のある模様を提供することができる。
さらに、引手30は、掴み部31と、引手取付柱24が挿通する貫通孔33を形成する環部32と、を有し、水圧転写膜41は、全面に亘って形成されているので、引手30の加飾性をより向上することができる。
また、引手取付柱24の自由端部24bと、該自由端部24bと対向する自由端部24bの周囲の上翼板21の表面とは、水圧転写膜40の模様が連続しているので、胴体20の加飾性をより向上することができる。
加えて、胴体20は、上翼板21と下翼板22との間に、エレメントを挿通可能なエレメント挿通路20cを備え、エレメント挿通路20cの後口20bから少なくとも案内柱23に達する領域Aには、水圧転写膜40が形成されていないので、エレメント挿通時に膜剥がれによる塵などの発生を防止することができる。
また、本実施形態のスライドファスナー用スライダー10の製造方法では、引手取付柱24を加締めることで、引手30を胴体20に回転可能に取り付ける工程と、胴体20及び引手30の相対的な姿勢を変えながら、水圧転写により、胴体20及び引手30の表面に、同一の水圧転写膜40,41を形成する工程と、を備える。これにより、胴体20及び引手30の外観表面のほぼ全域に、共通の模様を施して、スライドファスナー用スライダー10の加飾性を向上させることができ、スライダー10が取り付けられる商品全体に高級感を与えることができる。さらに、水圧転写膜40,41は、下地層との密着性がよく、摺動させても剥げない構成とすることができる。
また、水圧転写膜形成工程は、側面視で上翼板21の表面が下方を向くように胴体20を傾斜した状態で、引手30を、水面に水圧転写膜40,41が浮遊する水槽51に完全に投入した後、側面視で上翼板21の表面が鉛直方向を向くように胴体20の姿勢を変え、胴体20を完全に水槽に投入する。これにより、引手取付柱24の両側面全体に亘って、一様な水圧転写膜40が形成され、胴体20の加飾性をより向上することができる。
また、水圧転写膜形成工程は、正面視で引手取付柱24の一方の側面が下方を向くように胴体20を傾斜した状態で、引手30を、水面に水圧転写膜が浮遊する水槽51に完全に投入した後、正面視で引手取付柱24の一方の側面が鉛直方向を向くように胴体20の姿勢を変え、胴体20を完全に水槽に投入する。これにより、引手30の環部32の表面の全体に亘って、一様な水圧転写膜41が形成され、引手30の加飾性をより向上することができる。
また、水圧転写膜形成工程は、胴体20が、該胴体20の後口20bからエレメント挿通路20c内に挿入された保持部材50によって保持された状態で行われるので、水圧転写膜形成工程に使用される保持部材50によってスライダー10の加飾性が損なわれることがない。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、本発明の水圧転写膜形成工程は、上記実施形態のものに限定されず、胴体20及び引手30の相対的な姿勢を変えながら、水圧転写により、胴体20及び引手30の表面に、同一の水圧転写膜40,41を形成するものであればよい。
即ち、図5に示したように、胴体20を、側面視で上翼板21の表面を鉛直方向に対して傾けた状態でのみ水槽51に投入し、引手30の全体が水槽51に完全に水没した後に、側面視で上翼板21の表面が鉛直方向を向けて、胴体20を完全に水槽51に投入する。
したがって、本発明の引手30の水圧転写膜41は、図7に示すように、環部32の軸部32aの表面を除く全面に亘って少なくとも形成されていればよい。この場合にも、引手30のほぼ全面に亘って水圧転写膜41が形成されているので、引手30の加飾性を向上することができる。
また、胴体20の水圧転写膜40は、水圧転写の性質上、膜が形成されにくい部分が生じるが、少なくとも図2に斜線で示した部分に形成されていればよい(なお、エレメント通路20c内に斜線で示した肩口側の部分については、外観性の観点から、水圧転写膜が形成されていてもよいが、エレメント挿通時に膜剥がれ防止の観点から、水圧転写膜は形成されていなくてもよい。)。ただし、水圧転写膜形成工程を工夫することで、図8に斜線で示したように、図2に斜線で示した部分に加えて、開口部26を規定する上翼板21の上面と引手取付柱24の互いの対向面、フランジ部25の互いに対向する面、案内柱23のフランジ部25と対向する面、エレメント挿通路20c内にも形成することは可能である。
ただし、図2及び図8のいずれにおいても、加締められた引手取付柱24の自由端部25と、上翼板21の上面との互いの対向面には、隙間が狭いため水圧転写膜40を形成することは現実的に不可能である。
さらに、図9に示すように、本実施形態の変形例のような規則性を持ったホログラム模様を有するスライダー10であってもよい。
また、本発明が適用されるスライダーとしては、上記実施形態のように、引手取付柱によって引手取付部を構成する自由スライダーに限定されず、他のタイプのスライダーにも適用することができる。例えば、停止爪と引手を設置した後、上翼板に取り付けられるカバーによって引手取付部を構成するタイプのスライダーや、引手取付柱を加締めずに、引手取付柱の自由端部と上翼板との間に別部材を取り付けることによって引手取付部を構成するタイプのスライダーにも適用することができる。また、下翼板にも引手取付柱(引手取付部)を設けて、引手を上翼板と下翼板の両方に取り付けるタイプのスライダーにも適用することができる。
なお、引手取付柱を下翼板に設置した場合には、下翼板側の引手取付柱、及び該引手取付柱に回動可能に取り付けられる引手にも水圧転写膜が、ほぼ全面に形成される。ただし、この場合にも、加締められた引手取付柱の自由端部と、下翼板の下面との互いの対向面には、隙間が狭いため水圧転写膜を形成することは現実的に不可能であり、また、貫通孔を形成する下翼板の下面と引手取付柱との対向面には、水圧転写膜を形成しなくてもよい。
10 スライドファスナー用スライダー
20 胴体
21 上翼板
22 下翼板
23 案内柱
24 引手取付柱(引手取付部)
30 引手
31 掴み部
32 環部
33 貫通孔
50 保持部材
51 水槽

Claims (9)

  1. 上下に対向して配置される上翼板(21)及び下翼板(22)と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱(23)と、前記上翼板の上面に設置される引手取付部(24)と、を有する胴体(20)と、
    前記胴体に対して回動可能に設けられる引手(30)と、を備えるスライドファスナー用スライダー(10)であって、
    前記胴体(20)及び引手(30)の表面には、同一の水圧転写膜(40,41)がそれぞれ設けられていることを特徴とするスライドファスナー用スライダー(10)。
  2. 前記胴体及び前記引手の表面に設けられる前記水圧転写膜は、同一転写膜層からなる共通のホログラム模様を有することを特徴とする請求項1に記載のスライドファスナー用スライダー(10)。
  3. 前記引手は、掴み部(31)と、前記引手取付部が挿通する貫通孔(33)を形成する環部(32)と、を有し、
    前記水圧転写膜は、前記環部の軸部の表面を除く全面に亘って少なくとも形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライドファスナー用スライダー(10)。
  4. 前記引手取付部は、一端部が前記胴体に一体的に成形されると共に、他端部に上翼板側に向いた自由端部(24b)を備え、
    前記自由端部と、該自由端部と対向する前記自由端部の周囲の前記上翼板の表面とは、前記水圧転写膜の模様が連続していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライドファスナー用スライダー(10)。
  5. 前記胴体は、前記上翼板と前記下翼板との間に、エレメントを挿通可能なエレメント挿通路(20c)を備え、
    前記エレメント挿通路の後口から少なくとも前記案内柱に達する領域(A)には、前記水圧転写膜が形成されていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライドファスナー用スライダー(10)。
  6. 上下に対向して配置される上翼板(21)及び下翼板(22)と、前記上翼板及び前記下翼板を連結する案内柱(23)と、前記上翼板の上面に設置される引手取付部(24)と、を有する胴体(20)と、
    前記胴体に対して回動可能に設けられる引手(30)と、を備えるスライドファスナー用スライダー(10)の製造方法であって、
    前記引手を前記胴体に回転可能に取り付ける工程と、
    前記胴体及び前記引手の相対的な姿勢を変えながら、水圧転写により、前記胴体(20)及び引手(30)の表面に、同一の水圧転写膜(40,41)を形成する工程と、
    を備えることをスライドファスナー用スライダー(10)の製造方法。
  7. 前記水圧転写膜形成工程は、側面視で前記上翼板の表面が下方を向くように前記胴体を傾斜した状態で、前記引手を、水面に前記水圧転写膜が浮遊する水槽(51)に完全に投入した後、側面視で前記上翼板の表面が鉛直方向を向くように前記胴体の姿勢を変え、前記胴体を完全に水槽に投入することを特徴とする請求項6に記載のスライドファスナー用スライダー(10)の製造方法。
  8. 前記水圧転写膜形成工程は、正面視で前記引手取付部の一方の側面が下方を向くように前記胴体を傾斜した状態で、前記引手を、水面に前記水圧転写膜が浮遊する水槽に完全に投入した後、正面視で前記引手取付部の一方の側面が鉛直方向を向くように前記胴体の姿勢を変え、前記胴体を完全に水槽に投入することを特徴とする請求項6または7に記載のスライドファスナー用スライダー(10)の製造方法。
  9. 前記水圧転写膜形成工程は、前記胴体が、該胴体の後口からエレメント挿通路内に挿入された保持部材(50)によって保持された状態で行われることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のスライドファスナー用スライダー(10)の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019202072A (ja) * 2018-05-25 2019-11-28 鄭栄 顔 カラーファスナースライダー及びその引き手の加工方法
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