JP2017079650A - 構造油脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジアシルグリセロールの生成を抑えつつ、グリセロールの1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合が高い構造油脂を製造する新たな方法の提供。【解決手段】構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の75質量%以上がグリセロールの1,3位に結合した構造油脂の製造方法であって、1,3位選択性リパーゼを用いて油脂を部分加水分解して得られ、ジアシルグリセロール中に1,2−ジアシルグリセロールを65質量%以上含む部分加水分解油と、ω3系高度不飽和脂肪酸を含み、且つ酸価が125〜180mgKOH/gである脂肪酸類とを、1,3位選択性リパーゼを用いてエステル化反応させる工程を含む、製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、グリセロールの2位よりも1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合が高い構造油脂の製造方法に関する。
構造油脂(構造脂質とも称される)は、天然油脂の栄養学的改善や物性改良、或いは代替を目的としてグリセリンの特定の位置に特定の脂肪酸を組み込んだ分子設計された油脂である。例えば、魚油では、グリセロールのsn−2の位置に高度不飽和脂肪酸が多く分布するのに対して、グリセリド構造の1位および/または3位にn−3系長鎖多価不飽和脂肪酸を多くもつ油脂であって、n−3系長鎖多価不飽和脂肪酸の総量の40モル%未満がグリセリドの2位に結合したトリグリセリドからなる血中脂質濃度を低減する作用のある油脂(特許文献1)等が提案されている。
前記特許文献1では、トリオレインと魚油の加水分解脂肪酸濃縮物とを1,3位置特異性のリパーゼを利用してエステル交換し、グリセリドのsn-1,3位の脂肪酸をω3系高度不飽和脂肪酸に変換させている。しかし、この方法ではグリセリドから遊離した脂肪酸と未反応のω3系高度不飽和脂肪酸を分離し難く、ω3系高度不飽和脂肪酸のロスが多くコストが高くなる原因となる。
一方、エステル交換反応ではなく、エステル化反応によりグリセロールのsn−1,3の位置にω3系高度不飽和脂肪酸を結合させる方法も提案されている。例えば、トリアシルグリセロールの1,3位に特異的または優先的に作用し、かつ他の脂肪酸よりもドコサヘキサエン酸(C22:6、DHA)に対する作用性が低いリパーゼの存在下、グリセリンとDHA含有脂肪酸混液とを反応させ、まずDHA以外の脂肪酸を優先的にグリセリンの1,3位に結合させ、1,3位−ジアシルグリセロールを生成し、次に、先に1または3位にエステル化されているDHA以外の脂肪酸がアシルグリセロールの2位にアシル基転移し、1,2位−ジアシルグリセロールまたは3,2位−ジアシルグリセロールになり、最後に、アシル基転移後のジアシルグリセロールの1または3位に、遊離脂肪酸画分に濃縮されているDHAが結合することにより、トリアシルグリセロールの2位に結合したDHAよりもトリアシルグリセロールの1,3位に結合したDHAの含有率が高いトリアシルグリセロールを製造する方法(特許文献2)が報告されている。
エステル化反応は、エステル交換反応よりも未反応のω3系高度不飽和脂肪酸を再利用し易い点で優位である。
特開平9−13075号公報 特開2008−278781号公報
しかしながら、特許文献2の方法では、エステル化反応油中にジアシルグリセロールが多く残り易いという問題がある。また、実際には、1,3位−ジアシルグリセロールから1(3),2位−ジアシルグリセロールへのアシル基転移は進み難く、効率良く所望のDHA濃度を達成することは難しいと考えられた。
したがって、本発明は、ジアシルグリセロールの生成を抑えつつ、グリセロールの1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合が高い構造油脂を製造する新たな方法を提供することに関する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行ったところ、1,3位選択性リパーゼを用いて油脂を部分的に加水分解して得られる部分加水分解油と、所定の酸価(AV)を有するω3系高度不飽和脂肪酸類とを1,3位選択性リパーゼを用いてエステル化反応させることで、ジアシルグリセロールの副生成を抑えることができ、且つグリセロールの1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合が高い構造油脂が簡便に得られることを見出した。
すなわち、本発明は、構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の75質量%以上がグリセロールの1,3位に結合した構造油脂の製造方法であって、1,3位選択性リパーゼを用いて油脂を部分加水分解して得られ、ジアシルグリセロール中に1,2−ジアシルグリセロールを65質量%以上含む部分加水分解油と、ω3系高度不飽和脂肪酸を含み、且つ酸価が125〜180mgKOH/gである脂肪酸類とを、1,3位選択性リパーゼを用いてエステル化反応させる工程を含む、製造方法を提供するものである。
本発明によれば、グリセロールの1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合が高く、且つトリアシルグリセロールを高濃度に含む構造油脂が簡便に得られる。本発明の方法では、エステル化反応油から未反応のω3系高度不飽和脂肪酸を蒸留で容易に回収でき、また蒸留留分中のω3系高度不飽和脂肪酸濃度が高いため、ω3系高度不飽和脂肪酸をロスすることなく有効に原料脂肪酸等として再利用が可能である。
本発明の構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の75質量%以上がグリセロールの1,3位に結合した構造油脂の製造方法では、1,3位選択性リパーゼを用いて油脂を部分加水分解して得られ、ジアシルグリセロール中に1,2−ジアシルグリセロールを65質量%以上含む部分加水分解油と、ω3系高度不飽和脂肪酸を含み、且つ酸価が125〜180mgKOH/gである脂肪酸類とを、1,3位選択性リパーゼを用いてエステル化反応させる工程を含む。
なお、本明細書において「油」と「油脂」は同義であり、油(油脂)を構成する物質にはトリアシルグリセロールのみならずモノアシルグリセロールやジアシルグリセロールも含まれる。すなわち、本発明において油(油脂)は、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。
また、本明細書において、ω3系高度不飽和脂肪酸とは、炭素数が18以上、好ましくは20以上であり、不飽和結合数が3以上、好ましくは5以上である長鎖脂肪酸である。ω3系高度不飽和脂肪酸は、好ましくはエイコサペンタエン酸(C20:5、EPA)とドコサヘキサエン酸(C22:6、DHA)である。
〔1,3位選択性リパーゼ〕
本発明で用いられる1,3位選択性リパーゼは、トリアシルグリセロールのsn−1位とsn−3位に特異性を示すリパーゼである。1,3位選択性リパーゼは、特に制限されず、動物由来、植物由来、微生物由来のリパーゼを用いることができ、例えば、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のリパーゼが挙げられる。
1,3位選択性リパーゼは、当該リパーゼを担体に固定化した固定化リパーゼを用いることが、リパーゼ活性を有効利用できる点、コストの点から好ましい。固定化リパーゼは、たとえば、Lipozyme RM IM、ノボザイムジャパン製が挙げられる。
固定化担体としては、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられる。なかでも、保水力が高い点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより酵素の吸着量を高くできるという点から、多孔質であることが好ましい。
固定化担体として用いる樹脂の粒子径は50〜2000μmが好ましく、更に100〜1000μmが好ましい。細孔径は10〜150nmが好ましく、更に10〜100nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、更にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、Rohm and Haas社製Duolite A−568)がリパーゼ吸着性向上の点から好ましい。
このとき、用いるリパーゼの質量は、担体質量に対して10〜300%、更に20〜250%、更に30〜200%が好ましい。固定化の際、リパーゼを溶液状態にするが、緩衝剤を用いてpH5〜7に調整して用いることが好ましい。固定化時の温度は0〜60℃、更に5〜40℃が好ましい。
固定化リパーゼの活性を高めるために、リパーゼの固定化前に予め脂溶性脂肪酸又はその誘導体を担体に吸着させる処理を施しても良い。処理を施す方法としては、例えば、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等の有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加える方法が挙げられる。
使用する脂溶性脂肪酸としては、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基が置換していても良い脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、リシノール酸等が挙げられる。またその誘導体としては、これらの脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステル、リン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加した誘導体が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、それらのエチレンオキサイド付加体、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体は、2種以上を併用しても良い。
〔部分加水分解油〕
本発明では、部分加水分解油は、1,3位選択性リパーゼを用いて油脂を部分加水分解して得られ、ジアシルグリセロール中に1,2−ジアシルグリセロールを65質量%以上含む。
部分加水分解の対象となる油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよいが、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油又は分別油等の油脂類を挙げることができる。これらの油脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
なかでも、使用性の点から、低温耐性に優れた液状油脂を用いるのが好ましく、更にω3系高度不飽和脂肪酸の含有量の低い食用油脂を油脂の起源として用いるのが好ましく、更に大豆油、菜種油、サフラワー油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油等の植物種子油から選ばれる1種又は2種以上を用いるのが好ましく、更に大豆油又は菜種油が好ましい。なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.3.8−27による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。
以下、部分加水分解の対象となる油脂を、第1の油脂ともいう。
第1の油脂を構成する脂肪酸は特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、油脂を構成する脂肪酸のうち60〜100質量%が不飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくは70〜99質量%、更に75〜97質量%、更に80〜95質量%が不飽和脂肪酸であるのが外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが生理効果の点から好ましい。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
また、第1の油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は、低温での結晶析出抑制の点で、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下、更に15質量%以下、更に10質量%以下であるのがより好ましい。また、油脂の工業的生産性の点で、0.5質量%以上であることが好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、更に16〜22のものが好ましい。
第1の油脂は、それぞれの原料となる植物、又は動物から搾油後、油分以外の固形分をろ過や遠心分離等により除去するのが好ましい。次いで、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、油脂は、アルカリを添加混合した後、水洗し脱水することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、油脂は、活性白土等の吸着剤と接触させた後、吸着剤をろ過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。更に、脱臭は、不快な臭いや呈味物質を除去し、風味・色相・保存安定性の良好な精製油を得る工程であり、高温・減圧条件下で水蒸気を吹き込みながら有臭成分を除去する水蒸気脱臭を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、油脂は、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。
第1の油脂に作用させる1,3位選択性リパーゼの加水分解活性は、20U/g以上であることが好ましく、更に100〜10000U/gの範囲、更に500〜5000U/gの範囲であることが好ましい。ここで酵素の1Uは、40℃において、油脂:水=100:25(質量比)の混合液を攪拌混合しながら30分間加水分解をさせたとき、1分間に1μmolの遊離脂肪酸を生成する酵素の分解能を示す。1,3位選択性リパーゼは、充填塔に充填した状態での使用や攪拌槽での使用のどちらでもよいが、固定化酵素の破砕抑制の点から充填塔に充填した状態で使用することが好ましい。
固定化酵素量は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、第1の油脂100質量部に対して、1〜30質量%、更に2〜20質量%が好ましい。また、水の量は、第1の油脂100質量部に対して0.5〜200質量部、更に1〜100質量部、更に2〜80質量部が好ましい。水は、蒸留水、イオン交換水、脱気水、水道水、井戸水等いずれのものでも構わない。必要に応じて、酵素の安定性が維持できるようにpH3〜9の緩衝液を用いてもよい。
反応温度は、酵素の活性をより有効に引き出し、ジアシルグリセロールの転移反応を抑制し、分解により生じた遊離脂肪酸が結晶とならない温度である0〜70℃、更に20〜50℃とすることが好ましい。
反応系内の圧力は特に規定されず、常圧または減圧下で行うことができる。常圧の場合は空気との接触が出来るだけ回避されるように窒素気流下とすることが、反応性の点から好ましい。
第1の油脂の部分加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式で行うことができる。油脂と水の装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよい。加水分解反応装置に供給される油脂及び水は、必要により予め脱気又は脱酸素した油脂及び水を用いることが油脂の酸化抑制の点から好ましい。
第1の油脂の部分加水分解反応は、遊離脂肪酸濃度3〜40%の範囲で行うのが好ましい。斯かる範囲で行うことで、後述するようにジアシルグリセロールが多く生成し、且つジアシルグリセロール中の1,2−ジアシルグリセロールの濃度が高くなる。部分加水分解反応は、以下の式(1)で示される遊離脂肪酸濃度によって管理し、所定の分解率に到達した時点で終了すればよい。
遊離脂肪酸濃度(%)=部分加水分解油の酸価(AV)/第1の油脂の脂肪酸平均分子量/56.1/10・・・・(1)
部分加水分解反応の遊離脂肪酸濃度は、ジアシルグリセロールの転移反応抑制の点から、5〜30%、更に10〜25%が好ましい。
部分加水分解反応により得られる分解油には、脂肪酸の他に未反応の油脂、即ちトリアシルグリセロールと、ジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールが含まれる。とりわけ、ジアシルグリセロール中には1,2−ジアシルグリセロールが多く含まれる。
本発明においては、部分加水分解反応後、分解油の蒸留操作を行うことなく後述するエステル化反応に用いることができるが、蒸留操作を行って脂肪酸濃度を低減するのが好ましい。蒸留条件は特に制限されない。
蒸留操作後、後述するエステル化反応に供する部分加水分解油中の遊離脂肪酸の含有量は、未反応のω3系高度不飽和脂肪酸を高濃度で回収する点から、5質量%以下、更に3質量%以下、更に1.5質量%以下が好ましい。
エステル化反応に供する部分加水分解油中のジアシルグリセロールの含有量は、ジアシルグリセロールの転移反応抑制の点から、5〜30質量%、更に10〜25質量%が好ましい。
また、ジアシルグリセロール中の1,2−ジアシルグリセロールの含有量は65質量%以上であるが、同様の点から、68質量%以上が好ましい。
〔脂肪酸類〕
本発明で用いられる脂肪酸類は、ω3系高度不飽和脂肪酸を含み、且つ酸価が125〜180mgKOH/gである。
脂肪酸類は、脂肪酸の他、アシルグリセロール(トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール)等を含んでいても良い。
脂肪酸類の酸価(AV)は125〜180mgKOH/gであるが、エステル化反応でのジアシルグリセロール生成抑制の点から、135mgKOH/g以上、更に145mgKOH/g以上であるのが好ましい。
エステル化反応でω3系高度不飽和脂肪酸が作用しやすいように、脂肪酸類には、ω3系高度不飽和脂肪酸が40質量%以上含まれるのが好ましく、更に45〜60質量%含まれるのが好ましい。
また、脂肪酸類中のドコサヘキサエン酸の含有量は、同様の点から、38質量%以上が好ましく、更に43〜58質量%が好ましい。
本発明では、油脂を加水分解して脂肪酸類を得るのが好ましい。
ここで、加水分解の対象となる油脂(以下、第2の油脂ともいう)は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよいが、ω3系高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有する油脂が好ましい。このような油脂としては、魚油、藻油等の微生物油が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。魚油とは、水産動物油脂であり、例えば、イワシ、ニシン、サンマ、サバ、カツオ、マグロ、クジラ、イカ、たら肝臓等の原料から採取することができる。また、藻油は、緑藻綱、珪藻綱等に属する藻類から採取することができる。 また、油脂を構成する脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の比率を高めた所謂ω3系高度不飽和脂肪酸濃縮油を用いてもよい。構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の比率を高める方法としては、従来公知の方法、例えば、リパーゼを用いてω3系高度不飽和脂肪酸の以外の脂肪酸を優先的に遊離・除去する方法や溶剤分別法等が挙げられ、いずれの方法も使用できる。
第2の油脂中、油脂を構成する全脂肪酸に対するω3系高度不飽和脂肪酸の含有量は、エステル化反応でω3系高度不飽和脂肪酸が作用しやすいようにする点から、10質量%以上であることが好ましく、更に15〜43質量%、更に20〜38質量%であることが好ましい。
また、第2の油脂を構成する全脂肪酸に対するドコサヘキサエン酸の含有量は、同様の点から、10質量%以上であることが好ましく、更に13〜38質量%、更に18〜41質量%、更に16〜36質量%であることが好ましい。
第2の油脂を加水分解する方法としては、高温高圧分解法と酵素分解法が挙げられる。
高温高圧分解法とは、油脂に水を加えて、高温、高圧の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法である。また、酵素分解法とは、油脂に水を加えて、油脂加水分解酵素を触媒として用い、低温の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法である。なかでも、ω3系高度不飽和脂肪酸のトランス化抑制の点から、油脂加水分解酵素を用いた酵素分解法が好ましい。
油脂加水分解酵素としては、リパーゼが好ましく、特に制限されず、前記の動物由来、植物由来、微生物由来のリパーゼを用いることができる。なかでも、加水分解効率の点から、非選択性リパーゼを用いるのが好ましく、更にキャンディダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)によって生産される非選択性リパーゼを用いるのが好ましい。
第2の油脂を加水分解反応後、遊離脂肪酸を取り除く。遊離脂肪酸を除去する方法は、アルカリ分解、蒸留等、特に制限されないが、工業的生産性の点から蒸留処理は薄膜式蒸発装置を用いて行うのが好ましい。薄膜式蒸発装置としては、薄膜を形成する方法によって、遠心式薄膜蒸留装置、流下膜式蒸留装置、ワイプトフィルム蒸発装置(Wiped film distillation)等が挙げられる。
第2の油脂を加水分解反応後、蒸留して遊離脂肪酸を取り除いた蒸留油を、更に加水分解反応するのが好ましい。油脂加水分解酵素としては、リパーゼが好ましく、特に制限されず、前記の動物由来、植物由来、微生物由来のリパーゼを用いることができる。なかでも、加水分解効率の点から、キャンディダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)によって生産される非選択性リパーゼやアルカリゲネス属(Alcaligenes sp.)によって生産される1,3位を優先的に加水分解するリパーゼを用いるのが好ましい。
また、効率性の観点より、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camembertii)によって生産される部分グリセリドリパーゼを組み合わせて用いてもよい。部分グリセリドリパーゼは、モノアシルグリセロール及びジアシルグリセロールを加水分解するが、トリアシルグリセロールを加水分解し難いリパーゼである。
加水分解反応は、常法に従って行うことができる。
加水分解後は、前記の酸価(AV)の範囲を満たす条件で、蒸留操作を行ってもよいが、好ましくは蒸留操作を行うことなく、脂肪酸類を後述するエステル化反応に用いる。未蒸留の脂肪酸類をエステル化反応原料とできればコストの点でも好ましい。
〔エステル化反応〕
本発明において、1,3位選択性リパーゼを用いて、部分加水分解油と脂肪酸類とをエステル化する方法は、常法に従って行うことができる。
エステル反応に用いる固定化酵素の量は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、部分加水分解油と脂肪酸類の総量100質量部に対して、1〜30質量%、更に2〜20質量%が好ましい。
エステル化反応を行なう際の脂肪酸類に対する部分加水分解油の質量比[部分加水分解油/脂肪酸類]は、生産効率が高くなる点から、0.2〜5、更に0.5〜4、更に1〜3が好ましい。
エステル化反応の反応温度は、反応速度を向上する点、酵素の失活を抑制する点から、0〜100℃、更に20〜80℃、更に30〜60℃とするのが好ましい。
また、反応時間は、ジアシルグリセロールの転移反応抑制の点、工業的な生産性の点から、1〜120時間、更に2〜60時間、更に3〜30時間が好ましい。
エステル化反応は、効率的にトリアシルグリセロールを得る点から、反応生成水を反応系外に除去しながら行われることが好ましい。例えば、減圧;ゼオライト、モレキュラーシーブス等の吸収剤の利用;反応槽中への乾燥した不活性ガスの通気等の方法により、系外に除去されるのが好ましい。
1,3位選択性リパーゼと原料(部分加水分解油と脂肪酸類)の接触手段としては、浸漬、攪拌、固定化リパーゼを充填したカラムにポンプ等で通液する方法等が挙げられる。攪拌する場合、生産効率の点、リパーゼの破砕抑制の点から、10〜1000r/minが好ましく、更に50〜700r/min、更に100〜600r/minが好ましい。
反応系内の圧力は減圧下が好ましく、1〜10000Pa、更に10〜5000Pa、更に100〜3000Paが好ましい。
エステル化反応を行った後の反応物中には、油脂、即ちトリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールと、未反応物として脂肪酸が含まれるが、本発明の方法によれば、ジアシルグリセロールの副生を抑えることができる。また、反応物中のω3系高度不飽和脂肪酸は、グリセロールの2位よりも選択的に1,3位に結合する。
本発明では、エステル化反応後、蒸留操作を行なって、反応油からモノアシルグリセロール及び脂肪酸を除去するのが好ましい。
蒸留処理は薄膜式蒸発装置を用いて行うのが好ましい。薄膜式蒸発装置としては、薄膜を形成する方法によって、遠心式薄膜蒸留装置、流下膜式蒸留装置、ワイプトフィルム蒸発装置(Wiped film distillation)等が挙げられる。
圧力は、揮発性の有臭成分を除去する点、設備コストや運転コストを小さくする点、蒸留能力を上げる点、蒸留温度を最適に選定できる点から、減圧下が好ましく、更に0.5〜200Pa、更に2〜100Paが好ましい。
温度は、揮発性の有臭成分を除去する点、風味を良好とする点から、180〜280℃、更に190〜260℃、更に195〜250℃が好ましい。
滞留時間は、揮発性の有臭成分を除去する点、風味を良好とする点から、5〜120秒、更に10〜90秒、更に15〜60秒が好ましい。
本発明の処理の結果、グリセロールの1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合が高く、且つトリアシルグリセロールを高濃度に含む構造油脂が得られる。
一方、蒸留処理後の蒸留留分には、ω3系高度不飽和脂肪酸が多く含まれる。そのため、本発明の方法によれば、ω3系高度不飽和脂肪酸をロスすることなく、有効に利用することができる。蒸留留分中のドコサヘキサエン酸の含有量は、原料脂肪酸類として再利用することを考慮して、41質量%以上、更に45質量%以上、更に48質量%以上が好ましい。
本発明の構造油脂において、構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の75質量%以上がグリセロールの1,3位に結合しているが、この1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合は、生理機能発現に有利に働く点から、81質量%以上、更に83質量%以上が好ましい。
1,3位に結合しているω3系高度不飽和脂肪酸の割合は、構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の総量に対する、グリセロールの1,3位に結合したω3系高度不飽和脂肪酸の割合を百分率で表したものである。
油脂の1,3位の脂肪酸組成は、油脂を構成する全ての脂肪酸組成と、油脂の2位に結合している脂肪酸の組成を分析することで求めることができる。詳細は後記実施例に記載した。
構造油脂を構成する脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の含有量は、生理機能発現に有利に働く点から、5〜15質量%、更に6〜14質量%であることが好ましい。
本発明の構造油脂において、構成脂肪酸中のドコサヘキサエン酸の総質量に対する、グリセロールの1,3位に結合したドコサヘキサエン酸の割合(1,3位DHA含有率)は、生理機能発現に有利に働く点から、75質量%以上、更に81〜89.5質量%であることが好ましい。
また、構造油脂を構成する脂肪酸中のドコサヘキサエン酸の含有量は、油脂特性の点から、4.2質量%以上が好ましく、更に4.2〜13質量%、更に5〜13質量%、更に6〜12質量%が好ましい。このような割合で構成脂肪酸中にドコサヘキサエン酸を含み、且つグリセロールの1,3位に結合したドコサヘキサエン酸の割合が75質量%以上と高い構造油脂は、ドコサヘキサエン酸の多くがグリセロールの1位又は3位のいずれか一方に結合していると考えられ、生体内でのドコサヘキサエン酸の効率的利用の観点から好ましい。
本発明の構造油脂において、トリアシルグリセロールの含有量は91質量%以上、好ましくは91〜96質量%、より好ましくは92〜96質量%である。
また、構造油脂中、ジアシルグリセロールとモノアシルグリセロールの合計の含有量は、9質量%以下、好ましくは4〜8質量%である。
本発明の方法により得られる構造油脂は、必要に応じて精製工程を行って、一般の食用油脂と同様に使用することができる。
〔分析方法〕
(i)構成脂肪酸組成の測定
日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)(2.4.1.2−1996)」に従って測定した。トリヘンイコサノイン(和光純薬工業製)を内部標準として、試料から脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルをガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、構成脂肪酸の分析を行った。構成脂肪酸から脂肪酸平均分子量を算出した。
(ii)グリセリド組成の測定
「グリセリド組成」は、ガラス製サンプル瓶に、サンプル10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓した後、70℃で15分間加熱した。これに蒸留水1.0mL、ヘキサン2.0mLを加えて、混合後、ヘキサン層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、グリセリド組成の分析を行った。
(iii)酸価(AV)の測定
日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」に従って測定した。
(iv)2位の脂肪酸組成及び1,3位の脂肪酸組成の測定
高濃度のエタノール存在下で高い1,(3)位選択性を示し、既存リパーゼ剤で脂肪酸選択性が低いノボザイム435(ノボザイムズジャパン製)を用いた。グリセリドの1,3位結合脂肪酸を分解することで2−モノグリセリドの脂肪酸組成を求め、1,3位の脂肪酸組成を算出した。
試料150mgとエタノール1.5gを混合し、ノボザイム435(ノボザイムズジャパン製)を66mg加えて30℃で3時間反応させた。その後、リパーゼを濾別して、エタノールを減圧留去することで反応液を得た。
続いて、固相カラム(Sep−Pak Silica WAT051900、日本ウォーターズ製)を使って、2−モノグリセリドを分画した。固相カラムをヘキサン80%、ジエチルエーテル20%の混合溶剤10mLでコンデショニングした。ヘキサン80%、ジエチルエーテル20%の混合溶剤1mLに反応液100mgを溶解し、固相カラムに通液した。次いで、ヘキサン80%、ジエチルエーテル20%の混合溶剤30mL通液し、遊離脂肪酸及びジグリセリドを分離した。その後、メタノールを10mL通液した。メタノールを減圧留去して2−モノグリセリド画分を回収した。その後、トリヘンイコサノイン(和光純薬工業製)を内部標準として、構成脂肪酸組成の測定と同じ操作を行い2−モノグリセリド画分の構成脂肪酸の分析を行った。
この結果を用いて、1,3位の構成脂肪酸組成(質量%)を次式(1)より算出した。
1,3位の構成脂肪酸組成(質量%)={グリセリドの構成脂肪酸組成(質量%)×3−2位モノグリセリドの構成脂肪酸組成(質量%)}/2・・・・(1)
また、1,3位に結合した脂肪酸の割合を1,3位含有率(質量%)として、次式(2)より算出した。
1,3位含有率(質量%)={1,3位の構成脂肪酸組成(質量%)×2}/{グリセリドの構成脂肪酸組成(質量%)×3}×100・・・・(2)
<固定化リパーゼAYの製造方法>
リパーゼを固定化する担体としてDuoliteA−568(佐々木化学製)を用いた。担体1000gをN/10のNaOH溶液10L中で1時間攪拌し、ろ過した。その後、10Lのイオン交換水中で1時間攪拌しろ過、500mMのリン酸緩衝液(pH7)10LでpH平衡化を2時間行いろ過した。その後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)10LでpH平衡化を2時間しろ過する操作を2回行なった。この後、エタノール5Lでエタノール置換を30分行いろ過した。その後、−3℃で析出する高融点成分を除いた大豆脂肪酸を1000g含むエタノール5Lを加え30分間、脂肪酸を担体に吸着させ、ろ過した。その後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)5Lで30分ずつ4回洗浄し、エタノールを除去し、ろ過して担体を回収した。その後市販のリパーゼ(Candida cylindracea属由来のリパーゼAY「アマノ」30SD−K、天野エンザイム製)1000gを50mMのリン酸緩衝液(pH7)9000gに溶解した酵素液と5時間接触させ、リパーゼの固定化を行なった。その後、ろ過し、リパーゼが固定化された担体を50mMのリン酸緩衝液(pH7)10Lで洗浄を行なうことにより、固定化していない酵素やタンパクを除去した。その後、マグロ原油を4000g加え12時間攪拌した。以上の操作はいずれも20℃で行なった。その後、ろ過してヘキサンで油脂を洗浄し、脱溶剤して固定化リパーゼAYを得た。
<固定化リパーゼQLMの製造方法>
固定化リパーゼAYと同じ製造法で、リパーゼの種類をアルカリゲネス(Alcaligenes)属由来のリパーゼ(リパーゼQLM、名糖産業製)に変えて、固定化リパーゼQLMを得た。
<固定化リパーゼGの製造方法>
固定化リパーゼAYと同じ製造法で、リパーゼの種類をペニシリウム(Penicillium)属由来の部分グリセリドリパーゼ(リパーゼG「アマノ」50、天野エンザイム製)に、リン酸緩衝液(pH7)を酢酸緩衝液(pH5)変えて、固定化リパーゼGを得た。
<菜種油由来の部分加水分解油の製造方法>
1.部分加水分解
第1の油脂として菜種油を用いた。菜種油2000g、蒸留水を100gを4ツ口フラスコに仕込み、温度30℃、400r/minで攪拌しながら1,3位選択性リパーゼ(Lipozyme RM IM、ノボザイムジャパン製、以下同じ)を100g作用させて、2時間部分的に加水分解して1,3位分解油を得た。遊離脂肪酸濃度は17〜20%であった。
その後、Lipozyme RM IMを濾別して、菜種油由来の1,3位分解油を得た。
2.蒸留
上記1で得た1,3位分解油を、ワイプトフィルム蒸発装置(2−03型:神鋼環境ソリューション製)を用いて、温度設定180℃、真空<2Pa、流量150mL/hの条件で薄膜蒸留処理し、部分加水分解油を得た。部分加水分解油の分析値を表1に示す。
<マグロ油由来の脂肪酸類の製造方法>
1.酵素加水分解反応
EPAを7.9質量%、DHAを28.5質量%含むマグロ原油を4ツ口フラスコでバッチ攪拌反応により、DHAを加水分解しにくいリパーゼで加水分解反応し、グリセリド中のDHA濃度を高めた。
次いで、マグロ原油を2000g、蒸留水を2000g仕込み、温度40℃、400r/minで攪拌しながら、固定化リパーゼAYを200g添加し加水分解反応を2時間行った。固定化酵素をろ別した後、遠心分離(日立工機製、ローターR9A、8000r/min×10min)して甘水を分離した。その後、油相を減圧脱水してマグロ原油分解油を得た。この操作を2回繰り返し、マグロ原油分解油を得た。
2.蒸留
上記1で得た分解油を、ワイプトフィルム蒸発装置(2−03型:神鋼環境ソリューション製)を用いて、温度設定230℃、真空<2Pa、流量150mL/hの条件で薄膜蒸留処理し、遊離脂肪酸を留去した。
3.酵素加水分解反応
上記2で蒸留した残渣1500g、蒸留水1500gを4ツ口フラスコに仕込み、温度40℃、400r/minで攪拌しながら、固定化リパーゼQLMを150gと固定化リパーゼGを150g添加し、バッチ攪拌反応により加水分解反応することで、高濃度DHA脂肪酸を得た。経時でサンプリングして、固定化リパーゼをろ別後、油相を減圧脱水して酸価(AV)の異なる脂肪酸類を7種類得た。脂肪酸類の分析値を表1に示す。
<蒸留脂肪酸類の製造方法>
下記試験例7の脂肪酸類を、更にワイプトフィルム蒸発装置(2−03型:神鋼環境ソリューション製)を用いて、温度設定230℃、真空<2Pa、流量150ml/hの条件で処理した。得られた脂肪酸類の分析値を表1に示す。グリセリド分析結果から、MAG、DAG、TAGのピークはなく、脂肪酸濃度はほぼ100質量%であった。
〔試験例1〜7〕
1.エステル化反応
菜種油由来の部分加水分解油とマグロ油由来の脂肪酸類を表1に示す比率で4ツ口フラスコに仕込み、Lipozyme RM IMを部分加水分解油と脂肪酸類の合計に対して10%添加し、温度50℃、400r/minで攪拌しながら、真空度400Paの条件でエステル化反応を24時間行った。その後、Lipozyme RM IMを濾別して、反応油を得た。エステル化反応油の分析値を表1に示す。
2.エステル化反応油の蒸留
上記1で得たエステル化反応油を、ワイプトフィルム蒸発装置(2−03型:神鋼環境ソリューション製)を用いて、温度設定230℃、真空<2Pa、流量120mL/hの条件で薄膜蒸留処理した。
〔試験例8〕
マグロ油由来の脂肪酸類を蒸留脂肪酸類に変えた以外は、試験例1と同様に行いエステル化反応油を得て、次いで薄膜蒸留処理した。
試験例1〜8で得られた蒸留残渣及び蒸留留分の分析値を表1に示す。表1中、グリセロールの1,3位に結合したEPAの割合は1,3位EPA含有率(質量%)、DHAの割合は1,3位DHA含有率(質量%)、EPAとDHAの合計の割合は1,3位EPA+DHA含有率(質量%)で示した。
Figure 2017079650
表1より明らかなように、所定の部分加水分解油と未蒸留の酸価が125〜180mgKOH/gの範囲にある脂肪酸類を原料としてエステル化反応することにより、TAG濃度が高く、且つ1,3位EPA+DHA含有率は80質量%以上、1,3位DHA含有率は75質量%以上と高い、ω3高度不飽和脂肪酸が選択的に1,3位に結合した構造油脂が得られることが判った。グリセリド中のDHA濃度は4.4〜12.7質量%であったことから、DHAの多くはグリセロールの1位又は3位のいずれか一方に結合していると考えられた。
また、蒸留留分のDHA濃度は41質量%以上であり、これはエステル化原料として再利用可能であった。
これに対して、脂肪酸類の酸価が低いとグリセリド中のDHA濃度は高くなるが、TAG濃度が低く、1,3位EPA+DHA含有率及び1,3位DHA含有率も低下することが判った。また、蒸留した酸価が高い脂肪酸類を用いると、1,3位にDHAが選択的に結合しているが、グリセリド中のDHAが低くなることが判った。

Claims (8)

  1. 構成脂肪酸中のω3系高度不飽和脂肪酸の75質量%以上がグリセロールの1,3位に結合した構造油脂の製造方法であって、1,3位選択性リパーゼを用いて油脂を部分加水分解して得られ、ジアシルグリセロール中に1,2−ジアシルグリセロールを65質量%以上含む部分加水分解油と、ω3系高度不飽和脂肪酸を含み、且つ酸価が125〜180mgKOH/gである脂肪酸類とを、1,3位選択性リパーゼを用いてエステル化反応させる工程を含む、製造方法。
  2. 脂肪酸類がω3系高度不飽和脂肪酸を40質量%以上含有するものである請求項1記載の構造油脂の製造方法。
  3. 部分加水分解油がジアシルグリセロールを5〜30質量%含有するものである請求項1又は2記載の構造油脂の製造方法。
  4. 部分加水分解油が菜種油を部分加水分解して得られ、脂肪酸類が魚油を加水分解して得られるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の構造油脂の製造方法。
  5. エステル化反応を行う際の脂肪酸類に対する部分加水分解油の質量比[部分加水分解油/脂肪酸類]が0.2〜5である請求項1〜4のいずれか1項記載の構造油脂の製造方法。
  6. 構造油脂が油脂を構成する脂肪酸中にドコサヘキサエン酸を4.2〜13質量%含有するものである請求項1〜5のいずれか1項記載の構造油脂の製造方法。
  7. 構造油脂がトリアシルグリセロールを91〜96質量%含有するものである請求項1〜6のいずれか1項記載の構造油脂の製造方法。
  8. エステル化反応後、蒸留操作により留分としてω3系高度不飽和脂肪酸を回収し、脂肪酸類の一部又は全部として再利用する請求項1〜7のいずれか1項記載の構造油脂の製造方法。
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