JP2017078104A - プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents

プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017078104A
JP2017078104A JP2015205814A JP2015205814A JP2017078104A JP 2017078104 A JP2017078104 A JP 2017078104A JP 2015205814 A JP2015205814 A JP 2015205814A JP 2015205814 A JP2015205814 A JP 2015205814A JP 2017078104 A JP2017078104 A JP 2017078104A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymerization
propylene
polymer
block copolymer
stage
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015205814A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6519439B2 (ja
Inventor
陽 坂倉
Akira Sakakura
陽 坂倉
正顕 伊藤
Masaaki Ito
正顕 伊藤
茂雄 水上
Shigeo Mizukami
茂雄 水上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Polypropylene Corp
Original Assignee
Japan Polypropylene Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Polypropylene Corp filed Critical Japan Polypropylene Corp
Priority to JP2015205814A priority Critical patent/JP6519439B2/ja
Publication of JP2017078104A publication Critical patent/JP2017078104A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6519439B2 publication Critical patent/JP6519439B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)

Abstract

【課題】第一段階の重合工程でプロピレン単位の含有割合が多いプロピレン系重合体成分を、第二段階の重合工程でプロピレン単位の含有割合が少ないプロピレン共重合体成分を合成して高剛性かつ高衝撃強度のプロピレン系ブロック共重合体を連続的に製造する際に、ゲル、フィッシュアイが低減したプロピレン系ブロック共重合体を、高い生産効率で製造する方法の提供。
【解決手段】第一の重合反応器の下流側に重合体受器及び移送配管を介して第二の重合反応器が連結する重合装置を用い、重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内及び第二の重合反応器内に、酸素、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン又は酢酸メチルから選ばれる一種以上のキラー剤(D)を供給するプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。好ましくは第一段重合工程がバルク又は気相での重合法であり、第二段重合工程が気相重合法で行うブロック共重体の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法に関し、更に詳しくは、第一段階の重合工程でプロピレン単位の含有割合が多いプロピレン系重合体成分を、第二段階の重合工程でプロピレン単位の含有割合が少ないプロピレン共重合体成分を合成することによって高剛性かつ高衝撃強度のプロピレン系ブロック共重合体を連続的に製造する方法に関するものである。
結晶性ポリプロピレンは、剛性及び耐熱性に優れた特性を有する反面、耐衝撃強度、特に低温における衝撃強度が弱いという問題があった。この点を改良する方法として、プロピレンとα−オレフィンまたはその他のオレフィンを段階的に重合させてブロック共重合体を生成させる方法が知られている。
しかし、段階的に重合させるための連続重合方法においては、第一段重合工程の重合反応器において触媒成分の重合時間(重合器内滞留時間)に分布が生じ、比較的短時間で第一段重合工程から排出された重合体(ショートパス重合体)に含まれる触媒成分が第二段重合工程の重合反応器に入ると、プロピレン−α−オレフィン共重合体の含量が多い重合体が生成する。このような重合体は混練によっても十分に分散せず、ゲルやフィッシュアイの原因となり、その結果、製品外観を損ねたり、機械的強度を低下させたりする原因となる。
また、プロピレン系ブロック共重合体の衝撃強度を高めるためには第二段重合工程で生成する共重合体成分の割合を高くすることが有効であるが、共重合体成分の割合が高くなるとショートパスしていない通常の粒子でも、重合器内の壁面等に付着しやすく、一旦生成した付着物は除熱が不十分なため塊状重合体を生成し、運転の障害となることがある。また重合体のべたつきが増加し、生成した重合体の流動性が悪化して重合器からの抜き出しや移送等に障害となる。
このようなショートパス重合体に起因するゲル、フィッシュアイの生成や、共重合体の含量が多い重合体のべたつきを低減する方法として、第二段重合工程に電子供与性化合物を添加する方法が提案されている(特許文献1)。電子供与性化合物の添加効果は以下のように推定される。添加された電子供与性化合物は、重合体の比較的表面近傍の重合活性点に選択的に作用し、これらの活性点を失活させるが、ショートパス重合体は粒子径が小さく完全に失活しやすいため、通常粒子径の重合体が完全に失活しない添加量でも選択的に失活する。また通常の重合体も表面の活性点が選択的に失活するために共重合体は内部で生成し、共重合体含量が高くなっても表面の付着性増大が比較的抑制される。これらの方法は、電子供与体化合物を添加しない場合に比べ、べたつきの抑制には一定の効果が認められるが、ゲル、フィッシュアイの低減に関してはまだ十分なものとは言えず、更なるゲル、フィッシュアイの低減のために電子供与体化合物を多量に添加すると、第二段重合工程での活性低下が著しく、共重合体の重合割合を高くできない等の欠点があった。
一方で、衝撃強度改良のため第二段重合工程での共重合体の割合を高くするためには、第一段重合工程での触媒効率が高いときはそれに応じて第二段重合工程での触媒効率を上げる必要が生じる。そのためには、第二段重合工程での活性を維持しておく必要があり、電子供与性化合物の添加量を抑えないと、所望の触媒効率を得ることができないことになる。ところが、電子供与性化合物の添加量を少なくすると、製品のゲル、フィッシュアイが増加して製品の性能悪化が生じる傾向となり、また、重合体粒子間の付着が発生して安定運転ができない状態となる。これらの不具合を抑制するために、該電子供与性化合物の添加位置について提案されている。
しかしながら、重合体粒子が連続して移送される流路への添加(特許文献2、3)は、重合体と電子供与性化合物との接触効率が不十分なため、ゲル、フィッシュアイの状況が製品中で不均一であり、また、第二段重合工程の未反応モノマー循環ガスの流路への添加(例えば、特許文献4)は、電子供与性化合物の添加量の調整は容易であるが、第一段重合工程からの重合体が第二段重合工程へ導かれる際の第二段重合工程入口と第二段重合工程への該循環ガス供給口の位置関係では重合体と電子供与性化合物の接触が不十分な重合体が発生するため、改善の余地がある。
一方、電子供与性化合物を第一段重合工程または第二段重合工程のいずれか、あるいは両方へ添加する方法が提案されている(特許文献5、6)。しかしこの方法では、該電子供与性化合物によって第一重合工程でのショートパス重合体以外の重合体へも失活作用が発生し、第一重合工程での触媒効率低下を招き、生産性を低下させるおそれがある。
また、電子供与性化合物を、第一段重合工程と第二段重合工程を連結する移送路上に設けた脱ガス槽または第二段重合工程のいずれか、あるいは両方へ添加する方法(特許文献7)、及び、電子供与性化合物を、第一段重合工程と第二段重合工程を連結する移送路上に設けた重合体受器へ添加する方法(特許文献8)が提案されている。これらの方法においては、第一段重合工程と第二段重合工程を連結する移送路上に、第一段重合工程から排出された重合体粒子の移送速度を落とすか又は移送を停止して重合体粒子を一時的に停留させた槽内に電子供与性化合物を添加することによって、ゲル、フィッシュアイを低減させることができるが、より一層ゲル、フィッシュアイを低減させることが望まれている。
さらに、衝撃強度及び耐ブロッキング性改良のため第二段重合工程で得られるプロピレン−α−オレフィン共重合体成分の固有粘度ηは高い方が好ましいが(特許文献9、10)、当該プロピレン−α−オレフィン共重合体の固有粘度ηが高い場合には、フィッシュアイが著しく増大するため、前記特許文献1乃至8に開示された技術では、フィッシュアイを低減させるには、はなはだ不十分であった。
特開昭61−69821号公報 特開平04−296314号公報 特開2002−60450号公報 特開平04−296313号公報 特開2008−150465号公報 特開2008−150466号公報 特開2009−292879号公報 特開2011−84612号公報 特開平06−093061号公報 特開2000−186159号公報
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、第一段階の重合工程でプロピレン単位の含有割合が多いプロピレン系重合体成分を、第二段階の重合工程でプロピレン単位の含有割合が少ないプロピレン共重合体成分を合成することによって高剛性かつ高衝撃強度のプロピレン系ブロック共重合体を連続的に製造する際に、ゲル、フィッシュアイが低減したプロピレン系ブロック共重合体を、高い生産効率で製造することができる方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の触媒を用いた第一工程と第二工程とからなるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法において、少なくとも二基の重合反応器が重合体受器及び移送配管を介して連結する重合装置を用い、かつ重合体受器から第二工程を行う重合反応器への移送配管及び第二工程を行う重合反応器にキラー剤(電子供与体化合物)を供給することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の第一の発明によれば、少なくとも二基の重合反応器を備え、第一の重合反応器の反応工程下流側に重合体受器及び移送配管を介して第二の重合反応器が連結してなる重合装置を用いてプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法であって、
プロピレン及び任意にα−オレフィンを含む第一の重合原料を、前記第一の重合反応器内で、オレフィン重合用触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒の存在下で重合させてプロピレン系重合体成分を合成する第一段重合工程、
前記プロピレン系重合体成分を、前記第一の重合反応器から前記第二の重合反応器へ移送する移送工程、及び、
プロピレン及びα−オレフィンを含む第二の重合原料を、前記第二の重合反応器内で、前記プロピレン系重合体成分の存在下で重合させて、前記プロピレン系重合体成分よりもプロピレン単位の含有割合が少ないプロピレン−α−オレフィン共重合体成分を合成する第二段重合工程を含み、
前記移送工程において前記重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内に、及び、前記第二段重合工程において前記第二の重合反応器内に、酸素、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン及び酢酸メチルから選ばれる少なくとも一種のキラー剤(D)を供給することを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第二の発明によれば、前記第一の発明において、キラー剤(D)が酸素であることを特徴とするプロピレンブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第三の発明によれば、前記第一又は第二の発明において、第一段重合工程は、バルク重合法または気相重合法で行い、第二段重合工程は、気相重合法で行うことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第四の発明によれば、前記第一〜第三のいずれかの発明において、前記第一段重合工程および/または前記第二段重合工程は、重合反応熱を、主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相重合法で行うことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第五の発明によれば、前記第一〜第四のいずれかの発明において、前記第一及び第二の重合反応器は、攪拌機を有する重合反応器であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第六の発明によれば、前記第一〜第五のいずれかの発明において、前記第一及び第二の重合反応器は、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する、横型の重合反応器であることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第七の発明によれば、前記第一〜第六のいずれかの発明において、オレフィン重合用触媒成分(A)は、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とする固体成分を含むことを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第八の発明によれば、前記第一〜第七のいずれかの発明において、有機アルミニウム化合物(B)は、トリエチルアルミニウムであることを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法が提供される。
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法により、ゲル、フィッシュアイが低減したプロピレン系ブロック共重合体を、高い生産効率で製造することができる。
図1は、本発明の製造方法、及び本発明の実施例1と比較例1で用いた横型気相反応器を用いた製造方法のフローシートを示す概略図である。
本発明は、少なくとも二基の重合反応器を備え、第一の重合反応器の反応工程下流側に重合体受器及び移送配管を介して第二の重合反応器が連結してなる重合装置を用いてプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法であって、
プロピレン及び任意にα−オレフィンを含む第一の重合原料を、前記第一の重合反応器内で、オレフィン重合用触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒の存在下で重合させてプロピレン系重合体成分を合成する第一段重合工程、
前記プロピレン系重合体成分を、前記第一の重合反応器から前記第二の重合反応器へ移送する移送工程、及び、
プロピレン及びα−オレフィンを含む第二の重合原料を、前記第二の重合反応器内で、前記プロピレン系重合体成分の存在下で重合させて、前記プロピレン系重合体成分よりもプロピレン単位の含有割合が少ないプロピレン−α−オレフィン共重合体成分を合成する第二段重合工程を含み、
前記移送工程において前記重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内に、及び、前記第二段重合工程において前記第二の重合反応器内に、酸素、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン及び酢酸メチルから選ばれる少なくとも一種のキラー剤(D)を供給することを特徴とする。
以下、その内容について詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法に用いられる、重合装置の一例を示す概略説明図である。
図1の重合装置においては、第一段重合工程を行う第一の重合反応器として横型重合器10、第二段重合工程を行う第二の重合反応器として横型重合器20を備え、当該横型重合器10と横型重合器20とが、重合体受器30及び移送配管32を含む移送部を介して連結している。
第一の重合反応器と第二の重合反応器の間に設けられる重合体受器30とは、第一段重合工程から排出された重合体粒子の移送速度を落とすか又は移送を停止して重合体粒子を一時的に停留させる内部空間を有する部材であり、例えば脱ガス槽等がこれに該当する。
キラー剤添加用配管は2系統ある。そのうちの一つはキラー剤添加用配管7であり、これは重合体受器30と横型重合器20とを連結する移送配管32に接続し、移送配管32内にキラー剤を供給可能とする。もう一つはキラー剤添加用配管8であり、これは横型重合器20に通じる原料ガス供給用配管28に接続し、横型重合器20内にキラー剤を供給可能とする。
本発明の製造方法で実施されるプロセスは、第一段重合工程及び第二段重合工程を含む多段重合反応を根幹としており、第一段重合工程において、プロピレン単独またはプロピレンと比較的少量のα−オレフィンを含む混合物から選ばれる重合原料を、オレフィン重合用触媒を用いて重合することで、比較的結晶性が高いポリプロピレン系重合体成分を合成した後、第二段重合工程において、プロピレンと前記第一段重合工程で用いた重合原料よりも多量のα−オレフィンを含む重合原料を、前記第一段重合工程で得られたプロピレン系重合体成分の存在下で重合することで、前記プロピレン系重合体成分よりもプロピレン単位の含有割合が少なくて比較的ゴム状の性質が強いプロピレン−α−オレフィン共重合体成分を合成することによって、プロピレン系ブロック共重合体を製造する。得られたプロピレン系ブロック共重合体は、結晶性が比較的高いポリプロピレン系重合体成分と、比較的ゴム状の性質が強いプロピレン−α−オレフィン共重合体成分との混合組成物であり、高剛性かつ高衝撃強度を有する。
プロピレンと共に重合原料を構成するα−オレフィンモノマーは、特に制限なく、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンを例示することができ、そのなかでもプロピレンを除く炭素数が2〜8のα−オレフィンが主として用いられる。
本発明のポリオレフィンの製造方法に用いられるオレフィン重合用触媒としては、特に制限はなく、公知の各種触媒が用いられる。これらの触媒としては、たとえば、三価若しくは四価のチタンのハロゲン化物またはアルコラート、アルコキシチタンハロゲン化物と塩化マグネシウム、アルコキシマグネシウムなどを用いて調整されたオレフィン重合用触媒成分を含むチーグラーナッタ系触媒、例えばシクロペンタジエニル基を有するチタン、ジルコニウム、ハフニウム系化合物を含むメタロセン系化合物をオレフィン重合用触媒成分として含むメタロセン系触媒など公知のオレフィン重合用触媒を例示できる。
本発明においては、オレフィン重合用触媒成分(A)の一例としては、チタン、マグネシウム、ハロゲン、及びカルボン酸誘導体又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物類から選ばれる少なくとも一つの化合物、を必須成分として含有する固体成分(A1)が挙げられる。
また(A)は必要に応じて、(A1)に、(A2)電子供与体、(A3)有機アルミニウム化合物、(A4)ビニルシラン化合物を接触させてなる固体成分であってもよい。
(1)成分(A1)
本発明で用いられるチタン、マグネシウム、ハロゲン、及びカルボン酸誘導体又は少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物類から選ばれる少なくとも一つの化合物、を必須成分とする固体成分(A1)そのものは、公知のものである。
本発明において使用されるマグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、金属マグネシウム、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライド、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムのカルボン酸塩等が挙げられる。これらの中でも、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム等の一般式:Mg(OR2−m(ここで、Rは、炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xは、ハロゲンを示し、mは、0≦m≦2である。)で表されるマグネシウム化合物が好ましい。
また、チタン源となるチタン化合物としては、一般式:Ti(OR4−n(ここで、Rは、炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10程度のものであり、Xは、ハロゲンを示し、nは、0≦n≦4である。)で表される化合物が挙げられる。
具体例としては、TiCl、TiBr、TiI、Ti(OC)Cl、Ti(OCCl、Ti(OCCl、Ti(O−i−C)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(O−n−CCl、Ti(OC)Br、Ti(OC)(O−n−CCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OC)Cl、Ti(O−i−CCl、Ti(OC11)Cl、Ti(OC13)Cl、Ti(OC、Ti(O−n−C、Ti(O−n−C、Ti(O−i−C、Ti(O−n−C13、Ti(O−n−C17、Ti(OCHCH(C)C等が挙げられる。
また、TiX’(ここで、X’は、ハロゲンである。)に、後述する電子供与体を反応させた分子化合物をチタン源として用いることもできる。そのような分子化合物の具体例としては、TiCl・CHCOC、TiCl・CHCO、TiCl・CNO、TiCl・CHCOCl、TiCl・CCOCl、TiCl・CCO、TiCl・ClCOC、TiCl・CO等が挙げられる。
また、TiCl(TiClを水素で還元したもの、アルミニウム金属で還元したもの、あるいは有機金属化合物で還元したもの等を含む)、TiBr、Ti(OC)Cl、TiCl、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライド、シクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド等のチタン化合物の使用も可能である。これらのチタン化合物の中でも、TiCl、Ti(OC、Ti(OC)Cl等が好ましい。
ハロゲンは、上述のマグネシウムおよび(または)チタンのハロゲン化合物から添加されるのが普通であるが、他のハロゲン源、例えば、AlCl、AlBr、AlI等のアルミニウムのハロゲン化物、BCl、BBr、BI等のホウ素のハロゲン化物、SiCl等のケイ素のハロゲン化物、PCl、PCl等のリンのハロゲン化物、WCl等のタングステンのハロゲン化物、MoCl等のモリブデンのハロゲン化物といった公知のハロゲン化剤から添加することもできる。触媒成分中に含まれるハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素またはこれらの混合物であってもよく、特に塩素が好ましい。
カルボン酸誘導体としては、一般的にカルボン酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミドなどが挙げられる。またカルボン酸誘導体とはカルボン酸化合物であってもよい。
カルボン酸誘導体として用いることのできるカルボン酸化合物としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類などを例示することができる。
これらのカルボン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
これらのカルボン酸誘導体は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、無水フタル酸に代表されるフタル酸無水物類、安息香酸エチルに代表される安息香酸エステル化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類などである。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物類としては、特開平3−294302号公報及び特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることができる。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物類の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンを上げることができる。
(2)成分(A2)
本発明で必要に応じて用いられる電子供与体(A2)の代表的な例としては、特開2001−323023号公報、特開2004−124090号公報等に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランなどのアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、フェノール化合物類、カルボン酸化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、などを用いることが望ましい。
(3)成分(A3)
本発明で必要に応じて用いることのできる有機アルミニウム化合物(A3)は、具体例としては、R 3−sAlXまたはR 3−tAl(OR(ここで、RおよびRは、炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子であり、Rは、炭化水素基であり、Xは、ハロゲンであり、sおよびtは、それぞれ0≦s<3、0<t<3である。)で表されるものがある。
具体的には、(イ)トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、(ロ)ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジイソブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのアルキルアルミニウムハライド、(ハ)ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、(ニ)ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド等が挙げられる。
これら(イ)〜(ニ)の有機アルミニウム化合物に、他の有機金属化合物、例えば、R 3−uAl(OR(ここで、RおよびRは、同一または異なってもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、uは、0<u≦3である。)で表されるアルミニウムアルコキシドを併用することもできる。例えば、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドの併用、ジエチルアルミニウムモノクロライドとジエチルアルミニウムエトキシドとの併用、エチルアルミニウムジクロライドとエチルアルミニウムジエトキシドとの併用、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムエトキシドとジエチルアルミニウムモノクロライドとの併用等が挙げられる。
(4)成分(A4)
本発明で必要に応じて用いられるビニルシラン化合物(A4)としては、特開2003−292522号公報等に開示された化合物等を用いることができる。これらのビニルシラン化合物は、モノシラン(SiH)の水素原子の少なくとも一つがビニル基類で置換され、残りの水素原子の一部ないし全部がその他の遊離基に置き換えられた構造を持つ化合物であり、下記一般式(1)で表すことができる。
[CH=CH−]SiX (OR (1)
(一般式(1)中、Xは、ハロゲンを表し、Rは、水素または炭化水素基を表し、Rは、水素、炭化水素基または有機ケイ素基を表し、m≧1、0≦n≦3、0≦j≦3、0≦k≦2、m+n+j+k=4である。)
一般式(1)中、mは、ビニル基の数を表し、1以上4以下の値を取る。より好ましくは、mの値は、1又は2であることが望ましく、特に好ましくは2である。
一般式(1)中、Xは、ハロゲンを表し、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することができる。複数存在する場合は、お互いに同一であっても異なっても良い。この中で、塩素が特に好ましい。nは、ハロゲンの数を表し、0以上3以下の値を取る。より好ましくは、nの値は、0以上2以下であることが望ましく、特に好ましくは0である。
一般式(1)中、Rは、水素又は炭化水素基を表し、好ましくは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基、より好ましくは水素又は炭素数1〜12の炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。好ましいRの例としては、水素、メチル基やブチル基に代表されるアルキル基、シクロヘキシル基に代表されるシクロアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、などを挙げることができる。特に好ましいRの例としては、水素、メチル基、エチル基、フェニル基、などを挙げることができる。jは、Rの数を表し、0以上3以下の値を取る。より好ましくは、jの値は、1以上3以下であることが望ましく、更に好ましくは2以上3以下であり、特に好ましくは2である。jが2以上である場合、複数存在するRは、お互いに同一であっても異なっても良い。
一般式(1)中、Rは、水素、炭化水素基または有機ケイ素基を表す。Rが炭化水素基である場合は、Rと同一の化合物群から選択することができる。Rが有機ケイ素基である場合は、炭素数1〜20の炭化水素基を有する有機ケイ素基であることが好ましい。Rとして用いることのできる有機ケイ素基の具体的な例としては、トリメチルシリル基に代表されるアルキル基含有ケイ素基、ジメチルフェニルシリル基に代表されるアリール基含有ケイ素基、ジメチルビニルシリル基に代表されるビニル基含有ケイ素基、およびプロピルフェニルビニルシリル基の様なそれらを組み合わせてなるケイ素基、などを挙げることができる。また、kは、Rの数を表し、0以上2以下の値を取る。ビニルトリエトキシシランの様にkの値が3に相当する化合物の場合では、本発明におけるビニルシラン化合物(A4)としての性能は、発現せず、好ましくは、kの値は0以上1以下であることが望ましく、特に好ましくは0である。kの値が2である場合、二つのRは、お互いに同一であっても異なっても良い。また、kの値に関わらず、RとRは、同一であっても異なっても良い。
これらのビニルシラン化合物類は、単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することもできる。好ましい化合物の例としては、CH=CH−SiMe、[CH=CH−]SiMe、CH=CH−Si(Cl)Me、CH=CH−Si(Cl)Me、CH=CH−SiCl、[CH=CH−]Si(Cl)Me、[CH=CH−]SiCl、CH=CH−Si(Ph)Me、CH=CH−Si(Ph)Me、CH=CH−SiPh、[CH=CH−]Si(Ph)Me、[CH=CH−]SiPh、CH=CH−Si(H)Me、CH=CH−Si(H)Me、CH=CH−SiH、[CH=CH−]Si(H)Me、[CH=CH−]SiH、CH=CH−SiEt、CH=CH−SiBu、CH=CH−Si(Ph)(H)Me、CH=CH−Si(Cl)(H)Me、CH=CH−Si(Me)(OMe)、CH=CH−Si(Me)(OSiMe)、CH=CH−Si(Me)−O−Si(Me)−CH=CH、などを挙げることができる。これらの中でも、CH=CH−SiMe、[CH=CH−]SiMe、がより好ましく、[CH=CH−]SiMeが最も好ましい。
本発明における触媒成分(A)は、本重合で使用する前に、予備重合処理して用いることが好ましい。
触媒成分(A)の予備重合処理は、本重合時に用いる後述の有機アルミニウム化合物(B)と同様の有機アルミニウム化合物の存在下で実施できる。使用する有機アルミニウム化合物の添加量は、使用する触媒成分(A)の種類によって異なるが、通常、チタン原子1モルに対して、有機アルミニウム化合物を0.1〜40モル、好ましくは0.3〜20モルの範囲で用い、10〜80℃で10分〜48時間かけてα−オレフィンを不活性溶媒中で反応させ、触媒成分(A)1グラム当たり0.1〜100グラム、好ましくは0.5〜50グラムの重合体を形成させる。
予備重合処理においては、必要に応じて、本重合に用いる後述の電子供与体(C)と同様の電子供与体を用いることもできる。電子供与体が有機ケイ素化合物の場合、有機アルミニウム化合物1モルに対して、0.01〜10モルの範囲で用いてもよい。
触媒成分(A)の予備重合処理に用いられるα−オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等であり、これらは、単独のみならず、他のα−オレフィンとの2種以上の混合物であってもよい。また、その重合に際して生成する重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を、併用することもできる。
触媒成分(A)の予備重合処理に用いられる不活性溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび流動パラフィン等の液状飽和炭化水素や、ジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコーンオイル等重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶媒である。これらの不活性溶媒は、1種の単独溶媒または2種以上の混合溶媒のいずれでもよい。これらの不活性溶媒の使用に際しては、重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物等の不純物を取り除いた後で使用することが好ましい。
予備重合処理は、複数回行っても良く、この際用いるモノマーは、同一であっても異なっていても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うこともできる。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば、乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
本発明において、上記触媒成分(A)と共に用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、特に制限はなく、公知の各種化合物が用いられる。これらの化合物としては、例えば、トリアルキルアルミニウム、ハロゲン含有有機アルミニウム化合物、ヒドリド含有有機アルミニウム化合物、アルコキサイド含有有機アルミニウム化合物、アルミノキサンなど公知の化合物を例示できる。
また上記触媒成分(A)と共に必要に応じて用いられる電子供与体(C)としては、特に制限はないが、例えば、特開2001−323023号公報、特開2004−124090号公報等に開示されている化合物を挙げることができる。一般的には、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランなどのアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、フェノール化合物類、カルボン酸化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、などを用いることが望ましい。
より好ましくは、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランなどのアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物である。
本発明は、上記第一段及び第二段重合工程を含む多段重合を、第一の重合反応器の反応工程下流側に重合体受器及び移送配管を介して第二の重合反応器が連結してなる重合装置を用いて行う。
すなわち、第一段重合工程を第一の重合反応器内で行って相対的に結晶性が高いポリプロピレン系重合体成分を合成し、当該ポリプロピレン系重合体成分を第一の重合反応器から重合体受器及び移送配管を含む移送部を通じて第二の重合反応器へ移送し、第二段重合工程を第二の重合反応器内でポリプロピレン系重合体成分の存在下で行ってゴム状の性質が強いプロピレン−α−オレフィン共重合(ゴム状重合体)を合成するというように、第一の重合反応器と第二の重合反応器において、それぞれ性質の異なる重合体成分を合成し、結果として、性質が異なる重合体成分の混合組成物としてのポリプロピレン系ブロック共重合体を得る。
これによって、結晶性ポリプロピレンからなる連続相とゴム状粒子(ポリエチレンを含む)からなる分散相によって、耐衝撃性、特に低温耐衝撃性にすぐれたプロピレン系ブロック共重合体が製造できる。ここで、ランダム共重合の共重合組成の制御、分子量の制御、含有量の制御などによって、目的に応じた特性を有するプロピレン系ブロック共重合体が製造できる。
第一段重合工程及び第二段重合工程では、水素などの連鎖移動剤を用いて重合体のメルトフローレート(MFR)を制御することができる。プロピレン系ブロック共重合体のMFRは、成形方法や用途により設定されるが、通常、0.1以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であり、1000以下、好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下である。
第二段重合工程では、プロピレンとα−オレフィンとの混合物を一つ以上の重合反応器で重合させて、ゴム状重合体を製造する。α−オレフィンとしては、エチレンが好ましい。この第二段重合工程ではプロピレン/α−オレフィンの重合比(質量比)が90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、特に好ましくは70/30〜30/70の割合であるプロピレンのゴム状重合体を製造する。但し、この工程での重合量は、全重合量の5質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、90質量%以下、好ましくは70質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
上記の第一段重合工程及び第二段重合工程を含む多段重合プロセスに適用される重合方法は特に制限はなく、ポリオレフィン製造の分野における各種公知の重合方法が使用できる。例えば、第一段重合工程が単量体のプロピレン自身を媒質として重合を行う塊状重合法(バルク重合法)で第二段重合工程が媒質を使用せずにガス状の単量体中で重合を行う気相重合法の組み合わせ、第一段重合工程と第二段重合工程がそれぞれ気相重合法の組み合わせなどが挙げられる。
重合反応器は、通常、固体触媒とモノマーが連続的に重合反応器に供給されるとともに、重合した重合体は、連続的または間欠的に重合反応器から抜き出される。また、重合反応器内のモノマーガスを取り出し、次いで、外部の圧縮機や凝縮機で液化して、この液化モノマーを重合反応器内に噴霧し、その蒸発潜熱で重合熱(反応熱)を除去する方法を採用することができる。本発明においては、反応熱を主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相重合法を用いて重合することが好ましい。
重合反応器の形式は、流動槽型、攪拌機を有する縦型、攪拌翼を有する横型などを例示できる。さらに、気相重合法において、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する横型重合反応器を用いることが好ましい。
本発明において用いられる重合装置は、第一の重合反応器及び第二の重合反応器が、それぞれ少なくとも一基の重合反応器から構成されており、装置全体としては二基以上の重合反応器を備える。各段階の重合工程は二基以上の重合反応器を並列接続して行っても良く、その場合には同一段階の重合工程を行う重合反応器の反応工程下流側で重合中間体の移送経路が合流し、次段階の重合工程へと続いていく。
本発明においては、第一段重合工程の反応工程上流側および/または第二段重合工程の反応工程下流側に、さらに別の重合工程が付加されていてもよい。その場合に用いる重合装置においては、第一段重合工程を行う第一の重合反応器の反応工程上流側および/または第二段重合工程を行う第二の重合反応器の反応工程下流側に、別の重合反応器を連結することができる。
本発明においては、前記移送工程時に重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内にキラー剤を供給し、さらに、前記第二段重合工程時に第二の重合反応器内にもキラー剤を供給することが極めて重要である。すなわち、上記の第一段重合工程及び第二段重合工程を含む多段重合プロセスにおいて、重合中間体が重合体受器から第二の重合反応器へ向かって移動しているとき、及び、第二の重合反応器内で第二段重合工程が進行しているときに、当該重合中間体に対しキラー剤を添加する。これを言い換えれば、重合中間体が重合体受器よりも反応工程下流側に到達して第二段重合工程の開始直前の状態にあるときと、第二段重合工程が開始し進行している状態にあるときの両時点で、当該重合中間体に対しキラー剤を添加するということができる。
重合中間体に対し上記タイミングでキラー剤を添加することによって、特に、ゲル、フィッシュアイを低減する効果を高くすることができる。
本発明においては、特定の電子供与性化合物から選ばれるキラー剤を用いる。具体的にはキラー剤として、酸素、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、又は酢酸メチルを使用する。これらのキラー剤は、単独で使用してもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
これらのうち酸素は、標準状態で気体である点で好ましい。気体のキラー剤は、製造後の製品からのキラー剤の除去が容易であるためである。
また、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、及び酢酸メチルは、標準状態で液体であり、分子量が30〜80である点で好ましい。分子量が80以上のキラー剤は、キラー剤自体の使用重量が大きくなるばかりでなく、キラー剤の沸点が高くなることにより、製造後の製品からのキラー剤の除去が難しくなるためである。
以上の5種類のキラー剤は、いずれも、入手のしやすさ及び経済性の理由からも好ましい。これらの中でも、キラー剤として酸素を使用することが好ましい。
キラー剤は、加圧ガスに同伴させながら上記移送配管へ供給するのが好ましい。加圧ガスとしては、触媒毒とならない不活性ガス、例えば窒素、炭素数1〜4の飽和炭化水素の他、エチレンあるいはプロピレン、更にはこれらのガスの混合物を用いることができる。但し、エチレンとプロピレンを含有する混合物の場合には、移送配管内やそれ以降の重合体移送経路に粘着性の共重合体が生成しないように、移送配管中のガス組成がエチレン/プロピレンのモル比が0.1以下あるいは0.9以上となるガスであることが好ましい。
プロピレン系ブロック共重合体の製造において、ゲルの発生や重合器内の付着は、第二段重合工程において、通常滞留重合体に比べショートパス重合体の活性が著しく高いことに起因する。従って、ゲルの低減や重合器内の付着防止には、第二段重合工程に入るショートパス重合体のみ、あるいは第二段重合工程(共重合反応)の早い段階でショートパス重合体を、電子供与性化合物であるキラー剤によって失活させることが有効であり、特に第二段重合工程に入る直前にショートパス重合体の失活操作が行われるのが望ましい。
キラー剤は、重合体粒子の粒径の違いによって粒子を失活させる効果に差があり、通常滞留重合体に対してはその一部分を失活させるのに対し、通常滞留重合体よりも粒径が小さいショートパス重合体に対しては、その大部分又は全てを失活させる。
このキラー剤は、例えば、第一段重合工程中の重合体成分に添加することが考えられる。しかし、この場合、第一段重合工程のショートパス重合体の失活と共に通常滞留粒子への失活作用も働くことから、第一段重合工程全体の重合活性を不必要に低下させることとなるため好ましくない。
また、キラー剤を、第一段重合工程から第二段重合工程に重合体を移送する配管に供給する方法がある。しかし、第一段重合工程から第二段重合工程に通じる移送配管内を移動中の重合中間体にキラー剤を添加するだけでは、重合中間体全体、言い換えるとショートパス重合体全体にキラー剤を均一に接触させる目的としては、必ずしも十分な方法とは言えない。
また、キラー剤を、第一段重合工程と第二段重合工程を連結する移送部の途中に重合体受器を設け、当該重合体受器内に供給する方法がある。この方法は、第一段重合工程よりも反応工程下流側で、かつ、重合体受器内で停留している重合中間体に対し、キラー剤を十分に拡散させて均一に接触させることができる。しかし、可能な限り第二段重合工程に入る直前にショートパス重合体の失活操作を行うという観点では、重合体受器内にキラー剤を添加するよりも、重合体受器が設置された位置より反応工程下流側の移送配管にキラー剤を添加する方法の方が望ましい。
そこで本発明においては、前記移送工程時に重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内にキラー剤を供給し、さらに、前記第二段重合工程時に第二の重合反応器内にもキラー剤を供給する。
この方法によれば、移送工程時に重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内にキラー剤を供給することによって第二段重合工程に入る直前にショートパス重合体の失活操作を行うだけでなく、第二段重合工程時に第二の重合反応器内にもキラー剤を供給し、共重合反応の早い段階でもショートパス重合体の失活操作を行うことによって、重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内を移動中の重合中間体にキラー剤を添加するだけでは、重合中間体中のショートパス重合体全体にキラー剤を均一に接触させることが難しいという問題を解決することができる。
従って、キラー剤の供給ポイントないし供給タイミングを、上記2箇所ないし上記2時点に設定することによって、ゲル、フィッシュアイを低減させる効果を高くすることができる。
特に、分子量が高いゴム状重合体を含むプロピレン系ブロック共重合体を製造する場合には、第二段重合工程中の連鎖移動剤の添加量を少なくする方法をとることができ、ゴム状重合体の分子量を高くすることができたか否かは、プロピレン系ブロック共重合体のコールドキシレンソルブル固有粘度(ηcxs)または第一段重合工程で得られたポリプロピレン系重合体成分のメルトフローレート(MFR)と第二段重合工程で得られたプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレートから算出される第二段重合工程で合成されたプロピレン−α−オレフィン共重合体成分のMFR計算値によって判断することができる。
しかし、第二段重合工程中の連鎖移動剤の添加量が少ない場合には、第二段重合工程中に失活されていないまま存在するショートパス重合体によって、異常な反応が促進されることになる。
本発明によれば、このような異常な反応を回避する為に、第二段重合工程に入る直前及び第二段重合工程の早期において、確実にショートパス重合体を失活させる事ができる。
キラー剤の供給量は、特に限定されないが、第二工程の重合量がプロピレン系ブロック共重合体に対して20質量%以上の場合、供給するキラー剤の総量が、使用する有機アルミニウム化合物(B)に対して、0.5倍モル以上、より好ましくは0.8倍モル以下、さらに好ましくは1倍モル以上であり、20倍モル以下、好ましくは10倍モル以下、より好ましくは5倍モル以下である。キラー剤の供給量が過小な場合は、ゲル、フィッシュアイの低減効果が小さく、重合体のべたつきの改善効果が不十分になるおそれがある。またキラー剤の供給量が過剰な場合は、第二段重合工程の活性低下が顕著となるおそれがある。
移送配管内へのキラー剤の供給量と、第二段重合工程へのキラー剤の供給量の割合(移送配管内への供給量:第二段重合工程への供給量)は、20:80〜80:20の範囲内とするのが好ましい。
なお、上記移送配管へ添加するキラー剤(D)の種類と、第二工程を行う重合反応器へ添加するキラー剤(D)の種類は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
以上、第一工程から第二工程までは、一連のシークエンス動作により自動的に実施される。
以下、本発明の製造方法の一実施形態を、前述した図1の重合装置を参酌しながら説明する。
第一段重合工程の横型重合器10(第一の重合反応器)は細長く、上流端12と下流端14を持ち、図1に示すように、一般的には水平位置で設置されている。軸118は、横型重合器10内部で上流端12から下流端14へ水平に延び、攪拌の為の翼(攪拌翼)が軸118に取り付けられている。攪拌翼は、重合体粒子を横型重合器10内でその中へ導入される他物質と混合する。
横型重合器10の上流部配管1および2より供給された触媒成分は、攪拌翼にて重合体粒子と混合されながら重合を開始する。重合の際、発生する重合熱は、頂部配管17から供給される原料液化プロピレンの蒸発潜熱により除去される。横型重合器10内の未反応の気化プロピレンは、配管13にて重合器外へ出され、凝縮機15によりその一部分が凝縮液化され、気液分離槽11で液相と気相へ分離される。液相部は、重合熱除去のため配管17へ導入される。気相部は、配管4から供給される分子量調節のための水素やα−オレフィン等と混合され、圧縮機16によって昇圧され、横型重合器10底部に設置された配管18を経由して供給される。
横型重合器10内で生成した重合体は、重合体受入弁Wを所定時間だけ開くことにより、重合体受器30内に間欠的に導入される。該重合体受器30内に重合体と共に導入されたガスは、ガス排出弁Zを開くことによりガス排出配管42へ排出される。
ガス排出弁Zを閉じた後、加圧ガス導入弁Yを開いて加圧ガス供給配管41より重合体受器30に加圧ガスを導入する。
次に、重合体受器30下方の重合体排出弁Xを開き、重合体受器30内の重合体を第二段重合工程の横型重合器20(第二の重合反応器)へ移送する。
本実施形態では、キラー剤添加用配管7が、重合体受器30から横型重合器20(第二の重合反応器)へ通じる移送配管32と合流している。すなわち、本実施形態においては、重合体受器30から横型重合器20へ移送される途中の重合体と、キラー剤とを効率良く接触させる。
重合体受器30からの重合体排出が終了した後、加圧ガス導入弁Yと重合体排出弁Xを閉じることにより横型重合器10から横型重合器20への重合体の移送操作の1サイクルが終了する。
なお、このあと重合体受入弁Wを開ける前に、ガス排出弁Zを開き、重合体受器30内の残存ガスを排出した後、該ガス排出弁Zを閉じ、次いで加圧ガス導入弁Yを開いて加圧ガスを導入し、重合体受器30内の圧力を横型重合器10の重合圧力と同じ圧力まで昇圧した後、閉じる工程を付け加えることができる。
上記の一連の操作を繰り返す事により、横型重合器10から横型重合器20への重合体の移送を移送経路の閉塞なしに円滑に行うことができる。
横型重合器20は、横型重合器10と同様の構造と機能を有している。ただし、本実施形態では、キラー剤添加用配管8が、原料ガス供給用配管28と合流している。すなわち、本実施形態においては、横型重合器20中で合成途中の重合体と、キラー剤とを効率良く接触させる。
横型重合器20で製造されたプロピレン系ブロック共重合体は、配管40より系外へ排出され、重合体の乾燥工程等へ運ばれる。
ここで一例として示した横型重合器は、触媒成分が重合器の上流部へ供給され、それが重合により重合体粒子として成長しながら、重合器の下流側へ移動するという、他の重合器様式とは大きく異なる特徴を有する。
このような特徴を有する横型重合器は、完全混合槽型の重合器に比べ、重合器一台当たりの見掛けの槽数が高く、特に重合器出口付近に存在する比較的滞留時間の短い重合体(ショートパス重合体)の濃度は非常に少ないものとなる。よって、これまで以上のゲル・フィッシュアイの低減を目的としている本発明においては、横型重合器にて実施することが好ましい。特に、ここで示したような、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する横型重合器が好ましい。
以下、重合反応の条件設定について説明する。
第一段重合工程は、実質気相状態で、プロピレンを単独重合又は少量の他のオレフィンと共重合させて、結晶性のプロピレン重合体を製造する工程である。
温度や圧力の様な重合条件は、本発明の効果を阻害しない限り任意に設定する事が出来る。具体的には、重合温度は好ましくは0℃以上、更に好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下である。重合圧力は大気圧以上、好ましくは600kPa以上、更に好ましくは1000kPa以上、特に好ましくは1600kPa以上であり、好ましくは4200kPa以下、更に好ましくは3500kPa以下、特に好ましくは3000kPa以下を例示できる。ただし、重合圧力は重合温度におけるプロピレンの蒸圧力より低く設定するべきではない。
滞留時間は重合器の構成や製品インデックスに合わせて任意に調整する事が出来る。一般的には、30分から10時間の範囲内で設定される。
第二段重合工程は、プロピレン重合体成分よりもプロピレン含有割合が少ないプロピレン共重合体成分を製造する工程である。第二段重合工程は、より好適には、プロピレンと他のオレフィンとの混合物を一つ以上の重合反応器で重合させる工程である。他のオレフィンとしてはα−オレフィンが好ましい。α−オレフィンとしてはエチレンが好ましく、エチレン以外の他のコモノマーを共存させてもよい。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンを用いることができる。
第二段重合工程の重合温度は30〜110℃、好ましくは50〜90℃程度である。重合圧力は100kPaから5000kPaの範囲が通常用いられる。第一段重合工程から第二段重合工程に移る際に、プロピレンガスまたはプロピレンとα−オレフィンの混合ガスと水素ガスをパージして次の工程に移ることが好ましい。第二段重合工程で、分子量調節剤は、目的に応じて用いても用いなくても良い。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明における各物性値の測定方法を以下に示す。
(各種物性測定法)
a)MFR(単位:g/10分):第一段重合工程で合成されたプロピレン系重合体成分、及び、第二段重合工程で最終的に得られたプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)を、JIS−K6921の方法に従い、230℃、21.18Nの条件で測定した。また、第二段重合工程で合成されたプロピレン−α−オレフィン共重合体成分のMFRは、上記プロピレン系重合体成分のMFRとプロピレン系ブロック共重合体のMFRから計算した。
b)α−オレフィン含有率(重量%):赤外線吸収スペクトル法により測定した。
c)第二段重合体含量(wt%):
第一段重合工程から第二段重合工程に移送された反応中間体と、第二段重合工程から取り出した最終生成物の物質収支を、第二段重合体含量とみなした。
d)コールドキシレンソルブル固有粘度の測定([ηcxs]、単位:dl/g):150℃の熱キシレン溶液を23℃まで冷却し、析出した成分を濾別して得た溶液を蒸発乾固させてキシレン可溶分を得た。このキシレン可溶分は、第二段重合工程で合成されたプロピレン−α−オレフィン共重合体成分を多量に含む画分である。得られたキシレン可溶分についてウベローデ型粘度計を用い、テトラリンを溶媒として135℃で、固有粘度を測定した。
e)フィッシュアイの測定(個/g):重合によって得られたパウダー状のプロピレン系ブロック共重合体100質量部に対して、酸化防止剤として、IRGANOX1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.10質量部、IRGAFOS168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.10質量部、中和剤としてカルシウムステアレート0.05質量部を加えた。得られた混合物を、以下の条件により溶融混練し、ストランドダイから押し出された溶融樹脂を、冷却水槽で冷却固化させながら引き取り、ストランドカッターを用いてストランドを直径約2mm、長さ約3mmに切断することで原料ペレットを得た。
押出機:テクノベル社製KZW−15−45MG2軸押出機
スクリュ:口径15mm、L/D=45
押出機設定温度:(ホッパ下から)40、80、160、200、220、220(ダイ)[℃]
スクリュ回転数:400rpm
吐出量:スクリュフィーダーにて1.5kg/hに調整
ダイ:口径3mmストランドダイ、穴数2個
得られたペレットを、コートハンガーダイを取り付けたフィルム成形機を用いて溶融押出成形することにより、厚さ60ミクロンのフィルムに成形した。ここで得られたフィルムを30cm×15cmのサイズに切り出し、レーザー式フィッシュアイカウンターを用いて、直径40μm以上のフィッシュアイの個数を測定した。この測定においては、200μm以上のフィッシュアイの個数、100μm以上〜200μm未満のフィッシュアイの個数、40μm以上〜100μm未満のフィッシュアイの個数、の3段階に区分してフィッシュアイの個数を測定した。測定されたフィッシュアイの総数を測定面積で除し、0.1mあたりのフィッシュアイの個数を算出した。
(実施例1)
1)固体成分の調製
攪拌装置を備えた容量10Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエン2Lを導入した。ここに、室温で、Mg(OEt)を200g、TiClを1L添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸ジ−n−ブチルを50mL導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応させた。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応させた。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温でTiClを1L添加し、温度を110℃に上げて2時間反応させた。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn−ヘプタンを用いて、トルエンをn−ヘプタンで置換し、固体成分(A1)のスラリーを得た。このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分(A1)のTi含量は2.7wt%であった。
次に、攪拌装置を備えた容量20Lのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体成分(A1)のスラリーを固体成分(A1)として100g導入した。精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A1)の濃度が25g/Lとなる様に調整した。SiCl 50mLを加え、90℃で1時間反応させた。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn−ヘプタンを導入して液レベルを4Lに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30mL、(i−Pr)Si(OMe)を30mL、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして80g添加し、40℃で2時間反応させた。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分にはTiが1.2wt%、(i−Pr)Si(OMe)が8.8wt%含まれていた。
2)予備重合処理
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合処理を行った。上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを10℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30分間反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(A)を得た。この固体触媒成分(A)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この固体触媒成分(A)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.0wt%、Mgが17.5wt%、(i−Pr)Si(OMe)が8.2wt%含まれていた。
3)第一段重合工程
図1に示した重合装置を参照しながら説明する。攪拌翼を有する横型重合器10(L/D=4.3、内容積130リットル)に上記予備重合処理した固体触媒成分(A)を0.74g/hr、有機アルミニウム化合物(B)としてトリエチルアルミニウムを固体触媒成分(A)中のMgに対してAl/Mgモル比が10となるよう連続的に供給した。反応温度62℃、反応圧力2.1MPa、攪拌速度32rpmの条件を維持しながら、重合器内の気相中の水素濃度を表1に示した水素/プロピレンモル比に維持するように、水素ガスを配管4より連続的に供給して、第1段重合体のMFRを調節した。
反応熱は配管17から供給する原料液化プロピレンの気化熱により除去した。横型重合器10から排出される未反応ガスは配管13を通して横型重合器10系外で冷却、凝縮させて配管17にて横型重合器10に還流した。
生成した第一段重合工程の重合体を、重合体の保有レベルが横型重合器10の容積の50容量%となる様に横型重合器10の下流末端部の配管31から間欠的に抜き出し、重合体受器30を経由して第二段重合工程の横型重合器20に供給した。
キラー剤(D)として酸素を配管7から供給した。
なお、重合体受器30から重合体の一部を間欠的に採取して、MFRおよび触媒単位重量当たりの重合体収量を測定する試料とした。
4)第二段重合工程
攪拌翼を有する横型重合器20(L/D=4.3、内容積130リットル)に、第一段重合工程(横型重合器10)からの重合中間体、および配管6から供給したエチレンを含むエチレン/プロピレン混合ガスを配管28から連続的に供給し、エチレンとプロピレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度30rpm、温度60℃、圧力1.9MPaであり、気相中のガス組成を表1に示すエチレン/プロピレンモル比および水素/エチレンモル比に調整した。キラー剤(D)として酸素を配管8から供給し、エチレン/プロピレン共重合体の分子量を調節するための水素ガスを配管6より供給した。
重合熱は配管27から供給される原料液化プロピレンの気化熱で除去した。横型重合器20から排出される未反応ガスは配管23を通して横型重合器20系外で冷却、凝縮させて横型重合器20に還流させた。第二段重合工程(横型重合器20)で生成したプロピレン系ブロック共重合体は、重合体の保有レベルが、横型重合器20の容積の50容量%となる様に配管40を通して横型重合器20から連続的に抜き出した。プロピレン系ブロック共重合体の生産速度は15kg/hrであった。
抜き出されたプロピレン系ブロック共重合体(製品パウダー)は未反応モノマーを除去し、一部はMFRの測定、および赤外線吸収スペクトル分析によるエチレン含有量の測定、ゲル、パウダーの流動性の測定に供した。結果を表1に示す。
(比較例1)
キラー剤(D)を、第二段重合工程の横型重合器20に配管8からのみ供給したこと以外は実施例1に準拠して、プロピレン系ブロック共重合体を製造した。結果を表1に示す。
下記表1及び表2は、実施例1及び比較例1について、第一段重合工程及び第二段重合工程の各種条件、キラー剤の条件、並びに得られるプロピレン系ブロック共重合体の物性をまとめたものである。
下記表1中、「ゲル(輝点)数」の「大」とは200μm以上のフィッシュアイの個数を、「ゲル(輝点)数」の「中」とは100μm以上〜200μm未満のフィッシュアイの個数を、「ゲル(輝点)数」の「小」とは40μm以上〜100μm未満のフィッシュアイの個数を、それぞれ意味する。
Figure 2017078104
Figure 2017078104
実施例1と比較例1でフィッシュアイの個数を比較すると、いずれの大きさのフィッシュアイについても、実施例1の方が比較例1よりも少なかった。この結果から、比較例1においては、キラー剤(D)を横型重合器20にのみ添加したことにより、フィッシュアイが多く発生したのに対し、実施例1においては、キラー剤(D)を移送配管32と横型重合器20にそれぞれ添加したことにより、フィッシュアイの発生を少なく抑えることができることが明らかになった。
また、実施例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体のコールドキシレンソルブル固有粘度ηcxs は4.8dl/gであり、一方、比較例1で得られたプロピレン系ブロック共重合体の固有粘度ηcxsの値と同じであった。また、実施例1において第二段重合工程で合成されたプロピレン−α−オレフィン共重合体成分のMFR計算値は0.087であり、一方、比較例1において第二段重合工程で合成されたプロピレン−α−オレフィン共重合体成分のMFR計算値は0.093であった。従って、実施例1は、コールドキシレンソルブル固有粘度ηcxs及びMFR計算値を見る限りフィッシュアイの発生しやすさは比較例1と同等であるにもかかわらず、上記したとおりゲル、フィッシュアイを減少させることができた。
さらに、実施例1の活性は70,600であり、比較例の活性69,900よりも僅かに高かった。従って実施例1は、生産効率を下げることなく、上記したとおりゲル、フィッシュアイを減少させることができた。
本発明によれば、ゲル、フィッシュアイが低減したプロピレン系ブロック共重合体を、高い生産効率で製造することができるので、当該プロピレン系ブロック共重合体を用いることにより、耐衝撃性に優れかつ外観の優れた射出成形品や押し出し成形品を得ることが可能である。
さらに本発明によれば、固有粘度が高いプロピレン系ブロック共重合体を製造するために、ゲル、フィッシュアイが発生しやすい重合条件で反応を行った場合でも、ゲル、フィッシュアイの発生を低減できる。
従って本発明は、産業上大いに有用である。
1,2:触媒成分供給配管
3,5:原料プロピレン補給配管
4,6:原料補給配管(水素・エチレンなど)
7,8:キラー成分(C)添加用配管
10:横型重合器(第一段重合工程)
11,21:気液分離槽
12,24:反応器上流末端
13,23:未反応ガス抜出し配管
14,22:反応器下流末端
15,25:凝縮機
16,26:圧縮機
17,27:原料液化プロピレン補給配管
18,28:原料混合ガス供給配管
20:横型重合器(第二段重合工程)
30:重合体受器
31:重合体抜出し配管(移送流路)
32:重合体受器30から横型重合器20への移送配管
41:加圧ガス供給配管
42:ガス排出配管
118,228:軸
W:重合体排出弁
X:重合体移送弁
Y:ガス導入弁
Z:ガス排出弁

Claims (8)

  1. 少なくとも二基の重合反応器を備え、第一の重合反応器の反応工程下流側に重合体受器及び移送配管を介して第二の重合反応器が連結してなる重合装置を用いてプロピレン系ブロック共重合体を製造する方法であって、
    プロピレン及び任意にα−オレフィンを含む第一の重合原料を、前記第一の重合反応器内で、オレフィン重合用触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒の存在下で重合させてプロピレン系重合体成分を合成する第一段重合工程、
    前記プロピレン系重合体成分を、前記第一の重合反応器から前記第二の重合反応器へ移送する移送工程、及び、
    プロピレン及びα−オレフィンを含む第二の重合原料を、前記第二の重合反応器内で、前記プロピレン系重合体成分の存在下で重合させて、前記プロピレン系重合体成分よりもプロピレン単位の含有割合が少ないプロピレン−α−オレフィン共重合体成分を合成する第二段重合工程を含み、
    前記移送工程において前記重合体受器から第二の重合反応器へ通じる移送配管内に、及び、前記第二段重合工程において前記第二の重合反応器内に、酸素、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン及び酢酸メチルから選ばれる少なくとも一種のキラー剤(D)を供給することを特徴とするプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  2. 前記キラー剤(D)は、酸素であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  3. 前記第一段重合工程は、バルク重合法または気相重合法で行い、前記第二段重合工程は、気相重合法で行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  4. 前記第一段重合工程および/または前記第二段重合工程は、重合反応熱を、主として液化プロピレンの気化熱により除去する気相重合法で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  5. 前記第一及び第二の重合反応器は、攪拌機を有する重合反応器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  6. 前記第一及び第二の重合反応器は、内部に水平軸周りに回転する攪拌機を有する、横型の重合反応器であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  7. オレフィン重合用触媒成分(A)は、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とする固体成分を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
  8. 有機アルミニウム化合物(B)は、トリエチルアルミニウムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
JP2015205814A 2015-10-19 2015-10-19 プロピレン系ブロック共重合体の製造方法 Active JP6519439B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015205814A JP6519439B2 (ja) 2015-10-19 2015-10-19 プロピレン系ブロック共重合体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015205814A JP6519439B2 (ja) 2015-10-19 2015-10-19 プロピレン系ブロック共重合体の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017078104A true JP2017078104A (ja) 2017-04-27
JP6519439B2 JP6519439B2 (ja) 2019-05-29

Family

ID=58666048

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015205814A Active JP6519439B2 (ja) 2015-10-19 2015-10-19 プロピレン系ブロック共重合体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6519439B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002060450A (ja) * 2000-08-24 2002-02-26 Japan Polychem Corp プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法
JP2008150466A (ja) * 2006-12-15 2008-07-03 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体の気相連続製造方法
JP2008150465A (ja) * 2006-12-15 2008-07-03 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体の気相連続製造方法
JP2011084612A (ja) * 2009-10-14 2011-04-28 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002060450A (ja) * 2000-08-24 2002-02-26 Japan Polychem Corp プロピレン−エチレンブロック共重合体の製造方法
JP2008150466A (ja) * 2006-12-15 2008-07-03 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体の気相連続製造方法
JP2008150465A (ja) * 2006-12-15 2008-07-03 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体の気相連続製造方法
JP2011084612A (ja) * 2009-10-14 2011-04-28 Japan Polypropylene Corp プロピレン系ブロック共重合体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6519439B2 (ja) 2019-05-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
RU2382791C2 (ru) Многостадийный способ получения композиций этиленового полимера
JP2002544313A (ja) 高剛性プロピレンポリマーおよびその製造方法
TW200911846A (en) Process for producing propylene terpolymers
AU2014256451C1 (en) Two-stage process for producing polypropylene compositions
JP2011116978A (ja) プロピレン重合反応装置及びプロピレン系ブロック共重合体の製造方法
JP5201923B2 (ja) プロピレン系重合体の製造方法
JP2018188636A (ja) プロピレン・エチレン・1−ブテンターポリマー及びその製造方法
WO2019208836A1 (en) Polypropylene composition and molded article
JP2001261720A (ja) ポリオレフィンの製造方法および気相重合装置
JP2008150466A (ja) プロピレン系ブロック共重合体の気相連続製造方法
US9228078B2 (en) Process for preparing polyethylene blend comprising metallocene produced resins and Ziegler-Natta produced resins
JP5448702B2 (ja) プロピレン系ブロック共重合体の製造方法
JP2012214556A (ja) プロピレンエチレンブロック共重合用触媒およびプロピレンエチレンブロック共重合体の製造方法
JP3355819B2 (ja) プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法
JP6519439B2 (ja) プロピレン系ブロック共重合体の製造方法
JP5501384B2 (ja) 水平撹拌気相反応器で製造されるポリオレフィン材料の分子量分布の拡大法
JP4240870B2 (ja) プロピレン−エチレンランダム共重合体及びその製造方法
CN111087509B (zh) 一种柔性1-丁烯聚合物及其制备方法
JP5862501B2 (ja) 結晶化度が調整された結晶性プロピレン重合体の連続製造方法
JP3553745B2 (ja) プロピレンの連続重合方法
JP2009292963A (ja) オレフィン重合体の製造方法
JP4843188B2 (ja) ポリオレフィンの製造方法及び気相重合装置
JP7081448B2 (ja) プロピレン・エチレン・1-ブテンターポリマー及びその製造方法
JP3577394B2 (ja) プロピレンの連続重合方法
JP2000143933A (ja) カレンダ―加工用ポリプロピレン系組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171115

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180912

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181009

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181129

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190326

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190408

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6519439

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250