JP2017077583A - 金属板圧延用ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】被圧延材の金属粒子がロール表面に凝着しないロールの提供【解決手段】Ni、TiおよびCrから選択される1種以上を含有する、金属板を圧延するのに用いるロールであって、ロール基材と、ダイアモンド結合およびグラファイト結合が混在したアモルファス構造のダイアモンドライクカーボン被覆層と、前記ロール基材と前記ダイアモンドライクカーボン被覆層との接着界面に形成した金属炭化物または純金属からなる中間層とを備える、金属板圧延用ロール。【選択図】 図3

Description

本発明は、金属板圧延用ロールに関する。
表面品質が重視される金属板の冷間圧延には、圧延時の荷重制御が比較的容易である、直径150mm以下の小径ワークロールが用いられる。このワークロール材には、熱処理によって表面の硬度を高めたダイス鋼、ハイス鋼などの鋼材が多用される。
特許文献1には、耐摩耗性を向上させるために、ワークロール表面にTiNなどの硬質セラミックス皮膜層を設ける技術が記載されている。
特開平4−253511号公報
ワークロールによって金属板の圧延を繰り返し行うと、ロール表面に凝着物が付着することがある。このような凝着物の凹凸は、被圧延材に転写され、被圧延材の表面疵となり、表面品質が低下する。このような問題は、高い表面性状が要求される用途において顕在化する。また、ワ−クロール表面の凝着物は、中間ロールまたはバックアップロールにも転写されるため、これらのロールの洗浄または交換が必要となり、生産性を著しく阻害することがある。このため、ロール表面への凝着物の付着を防止する必要がある。
本発明者らは、純ニッケル金属板の圧延に用いられるワークロール表面を詳細に調べた結果、その凝着物の多くがニッケルを主成分とするものであった。すなわち、凝着物の原因は、主として、被圧延材中の成分であるものと判明した。そして、この付着物が少ないうちは、特に問題とならないが、その凝着物が次第に大きくなっていくことによって上記の問題が顕在化する。対処方法として、圧延時の圧下率を低下させれば、被圧延材中に含まれる元素のロール表面への付着量を減らすことができ、凝着物による表面性状の低下の問題は発生しにくくなる。しかし、圧延パス回数が増加し、生産効率の低下が余儀なくされる。
なお、上記のメカニズムは、純ニッケル金属板の圧延ロールに限られず、純チタン金属板、チタン合金板の圧延ロールにおいても同様であり、ワークロールに形成される凝着物の主成分は、チタンであった。
特許文献1には、凝着物の付着を防止について全く考慮されていない。
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであり、ワークロール表面の凝着を防止することができる金属板圧延用ロールを提供することを目的としている。
本発明者らは、純ニッケル板の圧延に用いられたワークロール(鍛鋼材、表面処理なし)を分割し、表面状態をSEM−EDS装置にて解析した。なお、図1に示すように、このワークロールは、中間ロール2およびバックアップロール3とともに構成された6段ミルのワークロール4である。6段ミルにおいて、純ニッケル板のワーク1は、所定の間隔で設置されたワークロール対4、4の間を通過することにより圧延される。図2に示すように、ワークロール4は、例えば、中央にロール部4a、その両外側に小径部4b、両端に大径部4cを備え、ロール部4aの中央部にワーク(図示省略)の摺動部4dがある。本発明者らは、摺動部4dについて圧延中心部、圧延端部などを切断した供試材を観察した結果、ロール表面には、Niの凝着物が付着しており、その凝着物の表層にはFeおよびCrも観察された。なお、ロールのバレル方向位置にもよるが、最大5μm厚み程度の凝着物が観察された。
よって、ワークロール表面に付着した凝着物は、被圧延材のNiであることが分かった。また、観察されたFeおよびCrについては、バックアップロールまたは中間ロールに由来する成分が、ワークロールに転写されたものであると推定される。
すなわち、バックアップロールまたは中間ロールが摺動条件下で摩耗し、その摩耗粉がワークロールへ転写されし、ワークロール表面で凝集し、凝着した可能性が考えられる。また、製造ラインは、純ニッケル板の冷延だけでなく、SUS鋼板などの冷延も行われる。このとき、ワークロールは、被圧延材の種類によって変更されるが、中間ロール、バックアップロールなどの共通部品は変更されない。このため、純ニッケル板の冷延前に、SUS鋼板などが冷延された場合には、SUS鋼板由来のFe、Crなどの元素が中間ロール、バックアップロールなどの圧延装置に残存し、それががワークロールへ転写されし、ワークロール表面で凝集し、凝着した可能性が考えられる。
一方、本発明者らは、特許文献1に記載される技術に従って、TiN層をワークロール表面に形成して純ニッケル金属板の圧延を実施し、圧延に用いたワークロールについて、上記と同様に、表面状態をSEM−EDS装置にて解析したところ、ワークロールへのニッケルの凝着が確認された。これは、TiNは高硬度であり、耐摩耗性の面では優れている反面、摩擦係数が0.6〜0.8と高く、圧延時(摺動時)に被圧延材由来の成分が付着したと考えられる。このため、被圧延材の表面性状を維持するためには、圧延荷重の低減、圧延速度の低下などを余儀なくされ、生産効率の悪化が避けられない。
なお、被圧延材のNiは、TiNを構成するTi粒子と、室温近傍においても化学的に親和性を有しており、特に凝着しやすいと考えられる。
そこで、本発明者らは、高い硬度を有し、十分な耐久性を有するとともに、摩擦係数が低く、被圧延材由来の成分の凝着が発生しないような表面処理方法について検討した結果、ダイアモンドライクカーボン(以下「DLC」と記す。)に着目した。DLCとは、ダイアモンド結合およびグラファイト結合が混在したアモルファス構造の物質である。DLCは、アモルファス構造を有しているため、結晶粒界を持たず、TiNなどの硬質膜と比べて非常に平滑な表面を有する。そして、DLCの摩擦係数は、ダイアモンド結合/グラファイト結合比にも拠るが、高い場合でも0.15以下であり、TiNに代表される従来の硬質保護膜よりも格段に低い。特に、ニッケルと、DLCは、化学的に非親和であることも大きな理由であると考えられる。
ところで、ロール基材に用いられる中炭素鋼材は、その線熱膨張係数(以下、「β」と呼ぶ。)が約10〜11×10−6/℃であるのに対して、DLCのβは、1.0〜2.0×10−6/℃であり、大きな差異がある。このため、ロール基材表面に直接DLCを被覆した場合には、接着界面に内部残留応力が存在することになる。すなわち、DLC被覆層側には引張応力が、ロール基材側には圧縮応力がそれぞれ負荷される。従って、DLC被覆層がロール基材から剥離するおそれがある。DLC被覆層の剥離が発生すると、被圧延材の表面性状を劣化させる。このため、DLC被覆層とロール基材との密着性を強化する必要がある。
そこで、本発明者らは、βがDLC被覆層およびロール基材の中間帯域にある硬質保護膜を、DLCとロール基材界面に中間層として組み込むこととを検討した。本発明者らがロール基材表面に直接DLCを被覆した場合の密着力を測定したところ、最大でも30Nに留まる。しかし、中間層として、炭化珪素(β=3.7)、炭化チタン(同8.0)、クロム(同4.9)、珪素(同3.0)、ニオブ(同7.0)を適用した場合、密着力が最小でも40Nまで上昇する傾向を確認した。
上述の密着力が大幅に上昇したメカニズムとして以下を推察する。すなわち、βがDLC被覆層とロール基材の中間帯域にある中間層を設けることによって、ロール基材表面に直接DLCを被覆した場合のような過度な内部残留応力が生じず、DLC被覆層/中間層/ロール基材の各接着界面の内部残留応力は相対的に小さく抑えられる。内部残留応力を完全に無くすことは理論的に不可能であるものの、相対的に小さく抑え、さらに多層構造内部で段階的に当該負荷を分散させることにより、DLC剥離に至る密着力しきい値が高くなると推察される。
さらに、中間層として、炭化珪素や炭化チタンを適用した場合、炭素を主な構成元素とするDLCと、所定の炭素濃度を含むロール基材の双方接着界面にて親和力を持たせることが可能になる。ここで親和力とは炭素の共有結合性に起因する化学結合を意味する。また、純金属のクロム、珪素およびニオブは、金属炭化物を化合物形成しやすく、接着界面では金属炭化物薄膜層からなる密着力強化層を形成する。
本発明は、上記の知見に基づきなされたものであり、下記の金属板圧延用ロールを要旨とする。
(1)Ni、TiおよびCrから選択される1種以上を含有する、金属板を圧延するのに用いるロールであって、ロール基材と、ダイアモンド結合およびグラファイト結合が混在したアモルファス構造のダイアモンドライクカーボン被覆層と、前記ロール基材と前記ダイアモンドライクカーボン被覆層との接着界面に形成した金属炭化物または純金属からなる中間層とを備える、金属板圧延用ロール。
(2)前記ダイアモンドライクカーボン被覆層表面の摩擦係数が、0.15以下である、上記(1)の金属板圧延用ロール。
(3)前記ダイアモンドライクカーボン被覆層の厚さが、1〜10μmである、上記(1)または(2)の金属板圧延用ロール。
(4)前記ダイアモンドライクカーボン被覆層が、ダイアモンド型結晶構造を有する炭素化合物とグラファイト型結晶構造を有する炭素化合物の結晶比率で、前記ダイアモンド型結晶構造を有する炭素化合物の割合が60〜80%である、上記(1)〜(3)のいずれかの金属板圧延用ロール。
(5)99.5質量%以上のNiまたはTiを含有する、金属板を圧延するのに用いるロールである、上記(1)〜(4)のいずれかの金属板圧延用ロール。
(6)前記中間層が、炭化珪素、炭化チタン、Cr、SiおよびNbから選択される一種以上からなる、上記(1)〜(5)のいずれかの金属板圧延用ロール。
本発明によれば、ワークロール表面の凝着を防止することができるとともに、ワークロール表面に形成したDLC被覆層の剥離を効果的に防止することができる。このため、本発明の金属板圧延用ロールは、被圧延材の表面性状を長時間維持することが可能である。
6段ミルの装置構成の例を示す図。 ワークロールの例を示す図。 本発明のワークロールの例を示す断面図。 比較例3のワークロールの断面写真(走査型電子顕微鏡像)。 実施例におけるワークロールおよび被圧延材の表面状態を示す写真。(a)比較例1のワークロールの表面状態、(b)比較例3のワークロールの表面状態、(c) 比較例3のワークロールを用いて圧延した被圧延材の表面状態。
本発明は、Ni、TiおよびCrから選択される1種以上を含有する、金属板を圧延するのに用いるロールに関するものである。本発明のロールは、ロール表面に凝着しやすい元素を含む金属板を圧延する場合においても、これらの凝着を防止することができる。Ni、TiおよびCrから選択される1種以上を含有する金属板としては、例えば、99.5質量%以上の純Ni、99.5質量%以上の純Ti、Ti合金、ステンレス鋼などが挙げられる。本発明は、図1に示す、ワークロール1のほか、中間ロール2およびバックアップロール3など、圧延に関係するあらゆるロールに適用することができる。ただし、被圧延材(ワーク)と直接接触するワークロール1に適用することが好ましい。
図3に示すように、本発明の金属板圧延用ロール4は、そのロール部4aの表面に、ダイアモンドライクカーボン被覆層40を備えている。すなわち、ロール部4aは、ダイアモンドライクカーボン被覆層40と基材部41とで構成され、ダイアモンドライクカーボン被覆層40と基材部41との界面に中間層42を備えている。ダイアモンドライクカーボン(DLC)被覆層40とは、ダイアモンド結合(立方晶、sp3結合)およびグラファイト結合(六方晶、sp2結合)が混在したアモルファス構造を有している。このため、DLCは、超硬合金なみの高硬度を備えるとともに、アルミナ等の金属酸化膜、TiC等の金属炭化膜、TiN等の金属窒化膜と比較して各段位に摩擦係数が小さいため、高い潤滑性を備えている。特に、ta-C:H型(水素化テトラヘドラルアモルファスカーボン)の組成を有するDLC被覆層を用いることが好ましい。
ダイアモンドライクカーボン被覆層表面の摩擦係数は、Ni、Ti、Crなどの凝着を防止するためには、0.2以下とすることが好ましい。より好ましいのは、0.15以下であり、更に好ましいのは、0.1以下である。
DLC被覆層の組成は、特に限定しない。よって、結晶比率で、グラファイト結合の存在率sp2およびダイアモンド結合の存在率sp3の比(sp3/sp2)が0.60〜0.80であればよい。
DLC被覆層の厚さは、硬質保護膜としての機能を確保するためには、1μm以上とすることが好ましい。一方、DLC被覆層が厚すぎる場合には、「てこの原理」に基づき、DLC被覆層と基材部との界面に負荷される引張応力が強くなり過ぎて、DLC被覆層が基材部から剥がれる場合がある。このような事態は、特に、高荷重圧延などのように、圧延時の剪断応力が所定値を超えた場合に生じやすい。このため、DLC被覆層の厚さは、10μm以下とすることが好ましい。
DLCの高潤滑性は、定量的には摩擦係数の低さを指標に捉えることができる。そして、低摩擦係数の所以は、DLCを構成するグラファイトが亀甲状の層状構造を有し、同じ層内では極めて強い結合(σ結合とも称される共有結合)を示すのに対し、層間(亀甲の上下面)では脆弱な結合(π結合とも称されるファンデルワールス力)に留まる。このため、後者の結合力がDLC表面に負荷された剪断応力を下回った場合、比較的容易に層間の滑り現象(数Åオーダの滑り)が生じ、当該結合が解離する。その結果、DLC被覆膜層の高潤滑性が得られる。
そして、ワークロール表面には圧延時に必ず剪断応力が作用するので、DLCが摩耗し、圧延環境下でもDLCが剥離せず、残存する条件で成膜されなければならない。係る成膜条件の下限値が1μm以上のDLC厚みであれば、少なくとも所期生産工程(鋼板の圧延総長)を処理することが可能である。
なお、DLC被覆層の厚さは、ロールの基材部を成膜装置の内に晒す時間によって調整できる。ここで、例えば、物理蒸着法(PVD法)を用いてDLCを基材部に成膜する際には、成膜温度が、基材部を構成する鋼材の焼戻し温度を上回る場合がある。成膜温度が焼戻し温度を上回っても、成膜時間が短時間であれば、特段問題が生じないが、あまりに長時間になると、ロールの基材部を構成する鋼材が成膜装置の内部で焼き戻された結果、想定外の軟化を引き起こす危険性がある。この点、DLC被覆層の厚さが10μm以下であれば、比較的短時間で成膜できるため、成膜温度が高くても、ロールの基材部への影響は無視できる程に小さくすることができる。また、DLC被覆層は、耐熱温度が低いため、本発明のロールは、熱間圧延には適さず、温間圧延または冷間圧延に適している。
DLC被覆層は、例えば、化学蒸着法(CVD法)、物理蒸着法(PVD法)等のドライ成膜手法を用いて、ロールの基材部表面に直接または、緩衝膜を介し成膜することができる。近年の成膜装置技術の発展に伴い、水素含有量が制御された超高硬度膜のほか、クロム、珪素などを硬質粒子としてマトリックスに組み込んだ硬質膜も実用化されている。PVD法またはCVD法の処理条件は、ロールの基材部を構成する鋼材の熱処理後の鋼材組織と、鋼材構造を損なわない範囲であれば、周知慣用の条件に従えばよく、特定条件には限定されない。例えば、PVDではアークイオンプレーティング法が、CVDではプラズマCVD法がロール円周部全面に均質かつ均一にDLCを成膜する上で望ましい。
基材部の化学組成は、所定の機械的性能(表面硬さ:Hvで800以上、表面粗さ:Raで0.06程度)を有しておれば、特に限定はないが、例えば、JIS規格では、SKD系列、SKH系列などが鋼材分類として挙げられる。
中間層は、金属炭化物または純金属からなるものである。このような中間層を前記ロール基材と前記ダイアモンドライクカーボン被覆層との接着界面に形成することで、DLC被覆層とロール基材との密着性を強化することが可能となる。特に、中間層としてβがDLC被覆層およびロール基材の中間帯域にある硬質保護膜を設けることが好ましい。なお、ロール基材に用いられる中炭素鋼材βは約10〜11×10−6/℃であり、DLCのβは、1.0〜2.0×10−6/℃である。従って、中間層として、炭化珪素(β=3.7)、炭化チタン(同8.0)、クロム(同4.9)、珪素(同3.0)、ニオブ(同7.0)を設けることが好ましい。
これにより、ロール基材表面に直接DLCを被覆した場合に接着界面に生じる内部残留応力を緩和することが可能となる。特に、中間層として、炭化珪素および炭化チタンの一種以上を適用した場合、炭素を主な構成元素とするDLCと、所定の炭素濃度を含むロール基材の双方接着界面にて親和力を持たせることが可能になる。ここで親和力とは炭素の共有結合性に起因する化学結合を意味する。一方、純金属のクロム、珪素およびニオブは、金属炭化物を化合物形成しやすく、接着界面では金属炭化物薄膜層からなる密着力強化層を形成する。
まず、DLC被覆層を形成した場合の効果を確認するべく、鍛鋼製ワークロール(比較例1)、超鋼製ワークロール(比較例2)、および、鍛鋼製基材部表面にDLC被覆層を設けたワークロール(比較例3)を用意し、図1に示す6段ミルにて、被圧延材として純ニッケル箔(板厚0.2mm、板幅600mm、ニッケル純度≧99.5%)を板厚0.1mmまで圧延(パス回数:1パス、圧延荷重:70〜80ton総圧延長:10,000m)し、被圧延材の表面性状を確認した。なお、ワークロールの形状は、図2に示す形状とし、ロール部の胴長:1,000mm、ロール部の直径:80mmとした。
比較例3のワークロールは、鍛鋼製ワークロール表面を、プラズマCVD成膜装置内に装入し、ta-C:H型(水素化テトラヘドラルアモルファスカーボン)の組成を有するDLC被覆層を成膜した。このDLC被覆層の膜厚は、1.3μmであった。また、比(sp3/sp2)は75%であった。図4に示すように、比較例3のワークロールの表面には、均一なDLC被覆層が形成されていた。
図5に示すように、比較例1の鍛鋼製ワークロールでは凝着が目立つが(図5(a)参照)、比較例3のDLC被覆鍛鋼製ワークロールでは凝着確認されず(図5(b)参照)、また、圧延された純ニッケル箔に表面不良が発生していなかった(図5(c)参照)。
次に、DLC被覆層とロール基材との間に表1に示す中間層を設けた場合の効果を確認する実験を行った。
比較例4のワークロールは、鍛鋼製ワークロール表面を、プラズマCVD成膜装置内に装入し、ta-C:H型(水素化テトラヘドラルアモルファスカーボン)の組成を有するDLC被覆層を成膜した。本発明例1〜7のワークロールは、鍛鋼製ワークロール表面を、プラズマCVD成膜装置内に装入し、表1に示す中間層を成膜した後、ta-C:H型(水素化テトラヘドラルアモルファスカーボン)の組成を有するDLC被覆層を成膜した。なお、本発明例6では、中間層として、0.05μmの厚さのCrを成膜した後に0.05μm厚さのSiCを成膜し、本発明例7では、中間層として、0.05μmの厚さのNbを成膜した後に0.05μm厚さのTiCを成膜した。いずれの例でも、DLC被覆層の膜厚は2.0μmであり、比(sp3/sp2)は75%であった。いずれの例においても、ワークロールの表面には、均一なDLC被覆層が形成されていた。
上記のワークロールについて、密着性およびナノ硬度を測定し、評価した。その結果も表1に併記した。なお、ワークロールの形状は、図2に示す形状とし、ロール部の胴長:1,000mm、ロール部の直径:80mmとした。
<密着性(スクラッチ試験)>
外径200μmのダイアモンド製触針を荷重0〜100N間で、室温、走査速度10mm/分、荷重速度100N/分で走査し、異常振動信号が検出された荷重値と、走査動画写真にて硬質保護層の剥離または破壊が確認された時点の荷重値とを比較して、低い方の荷重値を「密着力」とする。
<摩擦係数>
バウデン方式で評価した動摩擦係数(荷重5N,SUJ2球の摺動)を求め、摩擦係数とした。
<ナノ硬度>
ナノインデンテーション法によって、ナノ硬度を求めた。すなわち、ナノ硬度の測定には、ナノインデンター(Agilent Technologies社製、XP/DCM)を用いた。押込圧子;ダイアモンド製バーコビッチ型を用い、以下の条件で測定した。押込方法;連続剛性方式、荷重;200μN、振動周波数;45Hz、振動振幅幅;2nm、最大押込深さ;500nm、室温、測定15箇所(間隔は70μm)の平均値、押込深さ200nm地点の硬度を以て、ナノ硬度と定義した。
表1に示すように、中間層を設けなかった比較例4においては、密着力が30N程度に留まっているが、中間層を設けた本発明例1〜7においては、密着力が40Nを超えていた。
本発明によれば、ワークロール表面の凝着を防止することができるとともに、ワークロール表面に形成したDLC被覆層の剥離を効果的に防止することができる。このため、本発明の金属板圧延用ロールは、被圧延材の表面性状を長時間維持することが可能である。
1 ワーク
2 中間ロール
3 バックアップロール
4 ワークロール
4a ロール部
4b 小径部
4c 大径部
4d 摺動部
40 ダイアモンドライクカーボン被覆層
41 基材部
42 中間層

Claims (6)

  1. Ni、TiおよびCrから選択される1種以上を含有する、金属板を圧延するのに用いるロールであって、
    ロール基材と、
    ダイアモンド結合およびグラファイト結合が混在したアモルファス構造のダイアモンドライクカーボン被覆層と、
    前記ロール基材と前記ダイアモンドライクカーボン被覆層との接着界面に形成した金属炭化物または純金属からなる中間層とを備える、
    金属板圧延用ロール。
  2. 前記ダイアモンドライクカーボン被覆層表面の摩擦係数が、0.15以下である、請求項1に記載の金属板圧延用ロール。
  3. 前記ダイアモンドライクカーボン被覆層の厚さが、1〜10μmである、
    請求項1または2に記載の金属板圧延用ロール。
  4. 前記ダイアモンドライクカーボン被覆層が、ダイアモンド型結晶構造を有する炭素化合物とグラファイト型結晶構造を有する炭素化合物の結晶比率で、前記ダイアモンド型結晶構造を有する炭素化合物の割合が60〜80%である、請求項1から3までのいずれかに記載の金属板圧延用ロール。
  5. 99.5質量%以上のNiまたはTiを含有する、金属板を圧延するのに用いるロールである、請求項1から4までのいずれかに記載の金属板圧延用ロール。
  6. 前記中間層が、炭化珪素、炭化チタン、Cr、SiおよびNbから選択される一種以上からなる、請求項1から5までのいずれかに記載の金属板圧延用ロール。
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